(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置がある。この画像形成装置は、一般に感光体ドラムを一様に帯電させて初期化し、この感光体ドラムに光書込みによって静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー像化して、そのトナー像を直接または間接に用紙等の転写材に転写して定着器で定着させる。
【0003】
このような電子写真方式の画像形成装置には、トナーのみから成る一成分現像剤を用いるものと、トナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いるものとがある。近年、要望が強い印字(以下、印刷ともいう)処理の高速化に対処するには二成分現像剤を用いる方式の方がよく対応できる。
【0004】
上記の二成分現像剤のキャリアは、現像器内でトナーと混合撹拌されてトナーに所定の電荷を与える。電荷を与えられたトナーはキャリアの表面に一時的に付着してキャリアの表面を被覆する。
【0005】
磁性体の現像ローラに付着したキャリアは電荷を帯びたトナーを感光体上に運び、感光体上の静電潜像にトナーを転移させて静電潜像上にトナー像を現像させる。
【0006】
表面のトナーを放出したキャリアは現像ローラ上に残り、再び現像器内に戻って現像器に補給される新たなトナーと再び混合撹拌され、トナーに電荷を与え、そのトナーを感光体上に運ぶ、というように繰り返し使用される。
【0007】
現像器へのトナーの補給はトナー供給装置から行われる。トナー供給装置から現像器へのトナーの補給路には、コイルスクリューを内蔵したパイプや、更にはトナーの重力による自然落下経路を併用した補給路が用いられる。
【0008】
そして現像器にはトナー混合撹拌機構が内蔵されている。トナー混合撹拌機構は2つあり、1つはトナー供給装置から供給(補給)されたトナーを、トナー濃度の低下した二成分現像剤(以下、単に現像剤という)と混合撹拌しながら搬送する循環搬送スクリューである。
【0009】
2つ目は、循環搬送スクリューで送り込まれた現像剤を攪拌搬送しながら磁性体現像ローラに供給して、残余の現像剤を循環搬送スクリューに送り戻す供給搬送スクリューである。
【0010】
ここで、現像器の現像剤中のトナー濃度が高すぎると地汚れ等が発生する。逆にトナー濃度が低すぎると高濃度な画像が得られない。したがって高画質な画像を得るためには、トナー像担持体に供給される現像器内の現像剤のトナー濃度を一定範囲内に制御することが必要である。
【0011】
そこで、このような現像剤を使って画像形成を行う電子写真方式の画像形成装置の現像器では、印字して消費したトナー量を測定するためのトナー濃度センサが設けられている。そしてトナー濃度が所定以下に低いことが検知されると現像器にトナーを補給するようにしている。
【0012】
一般に、トナー濃度センサには透磁率を検知する磁気センサが使用される。この透磁率の検知には、コイルのインダクタンス成分を利用するものや、周波数型、磁気ブリッジ型など、いくつかの方式がある。
【0013】
いずれにしても、トナー濃度センサとしては、現像器の内壁面の一部に検知面を露出させ、この検知面周辺の現像剤中のキャリアからの透磁率の変化を検知する。すなわち、トナー濃度が高いと透磁率が下りセンサ出力は弱くなる。トナー濃度が低いと透磁率が上がりセンサ出力は強くなる。
【0014】
そして補給基準電圧値(補給電圧閾値)よりもセンサ出力が上回った場合トナーを不足分だけ補給し、出力が基準電圧値よりも下回れば補給を停止する。この時のトナー量は補給される時間当たり定量の補給が好ましい。
【0015】
トナーの補給が不足すると現像剤のキャリアがトナーと共に例えば感光体ドラム等のトナー像担持体に移転するキャリア引き等の不具合が起きる。また、トナーの補給が過多になると、トナー飛散等の不具合が発生する。
【0016】
キャリア引きは、上記のようにトナーの補給不足で生じるだけでなく、適正なトナー補給量であっても経時的に発生することは避けられない。キャリア引き等により現像器内部のキャリア量が減少した場合、トナー濃度とトナー濃度センサの出力電圧との関係が基準設定値に対してずれを生じてくる。
【0017】
このため、トナー補給のタイミングにずれを生じて、適正なトナー濃度を維持できなくなる。適正なトナー濃度を維持できなくなると、結果として高質な画像を経時的に維持することが出来なくなってしまうという問題を生じる。
【0018】
ここで、トナー濃度センサの誤検知によるトナー濃度過多を防ぎ、安定したトナー濃度を維持するために、トナー補給と同時に濃度検知を行うことをせず、補給されたトナーがトナー濃度センサを最初に通過するときのトナー濃度を検知するようにした画像形成装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0019】
これは、トナー補給口から補給されたトナーが最初にトナー濃度センサを通過する前のタイミングではトナー濃度検知を行なわないため、補給されたトナーの濃度を確実に検知することができる、というものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、印字と印刷は同義に用いている。
【0029】
図1は、本発明の実施例1及び2に係るフルカラーの画像形成装置(以下、単にプリンタ、又は本体装置という)の内部構成を説明する断面図である。
【0030】
図1に示すプリンタ1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置であり、画像形成部2、転写ベルトユニット3、トナー供給部4、給紙部5、ベルト式定着ユニット6、及び両面印刷用搬送ユニット7で構成されている。
【0031】
上記画像形成部2は、いわゆる背面転写方式で転写ベルト8の下部走行部表面8aにトナー画像を転写するために、その転写ベルト8の下部走行部表面8aに接して同図の右から左へ4個の現像装置9(9k、9c、9m、9y)を多段式に並設した構成をとっている。
【0032】
この画像形成部2は、
図1に示す印刷実行時位置から、それより下方の保守位置に、昇降可能にプリンタ1本体のフレームに保持されている。上記4個の現像装置9のうち上流側(図の左側)の3個の現像装置9y、9m及び9cは、それぞれ減法混色の三原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色トナーによるモノカラー画像を形成する。
【0033】
また、現像装置9kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。上記の各現像装置9は、画像を現像するトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下イエロー(Y)のトナー用の現像装置9yを例にしてその構成を説明する。
【0034】
現像装置9は、最上部に像担持体としての感光体ドラム10を備えている。この感光体ドラム10は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム10の周面に当接し又は近傍を取り巻いて、クリーナ11、帯電ローラ12、光書込ヘッド13、及び現像器14の現像ローラ15が配置されている。
【0035】
現像器14は、外部を覆うユニット筐体16、内部に設けられた隔壁17、現像ローラ15、第1攪拌搬送部材18、及び第2攪拌搬送部材19を備えている。第1及び第2攪拌搬送部材18及び19は、ここでは特には図示しないが、スクリュー軸と、このスクリュー軸と一体に構成されて回転するフィンから成る。
【0036】
この現像器14には、トナー供給部4のトナー補給容器20(20y、20m、20c、20k)から、同図にはY、M、C、Kで示すようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれかのトナーが供給される。
【0037】
転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右方向に扁平なループ状になって延在する無端状の上述した転写ベルト8と、この転写ベルト8を掛け渡されて転写ベルト8を図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ21と従動ローラ22を備えている。
【0038】
上記の転写ベルト8には、一次転写ローラ23がユニットと一体に組み込まれている。一次転写ローラ23は転写ベルト8を介して感光体ドラム10に圧接し、下方を循環移動する転写ベルト8の下部走行部表面8aにトナー像を直接転写(一次転写)する。
【0039】
転写ベルト8は、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への二次転写部24まで搬送する。二次転写部24は、駆動ローラ21に隣接して下流側(図では上方)に配置された転写補助ローラ25と、この転写補助ローラ25に転写ベルト8を介して圧接する二次転写ローラ26とで形成されている。
【0040】
転写ベルト8には、ベルトクリーナ27が配置されている。ベルトクリーナ27は、転写ベルト8の従動ローラ22に掛け渡されている表面に当接するクリーニングブレード28を備えている。また、ベルトクリーナ27の左方から下方にかけて隣接して、廃トナー回収容器29が着脱自在に配置されている。
【0041】
ベルトクリーナ27は、クリーニングブレード28により転写ベルト8の表面に残留する廃トナーを擦り取って除去し、その廃トナーを不図示の搬送スクリューにより廃トナー回収容器29に送り込んでいる。
【0042】
トナー供給部4は、転写ベルト8の上部走行部の上方に配置される4個のトナー補給容器20(20y、20m、20c、20k)を着脱自在に備えている。4個のトナー補給容器20には前述したようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーが収容されている。
【0043】
これら4個のトナー補給容器20は、
図1では転写ベルトユニット3の向う側に隠れて見えないが、それぞれ装着部のトナー供給口に続くトナー供給路を介して、それぞれに対応する現像装置9の現像器14と連結されている。
【0044】
このトナー供給部4は、特には図示しないが、
図1に示す印刷実行時位置から、それより上方の保守位置に、昇降可能に装着部を介してプリンタ1本体のフレームに保持されている。
【0045】
給紙部5は、上下2段に配置された2個の給紙カセット30(30a、30b)を備えている。2個の給紙カセット30の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ31、給送ローラ32、捌きローラ33、待機搬送ローラ対34が配置されている。
【0046】
待機搬送ローラ対34の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト8、転写補助ローラ25、二次転写ローラ26による前述した用紙への二次転写部24が形成されている。
【0047】
この二次転写部24の下流(図では上方)側にはベルト式熱定着ユニット6が配置され、ベルト式熱定着ユニット6の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着ユニット6から搬出する搬出ローラ対36、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー37に排紙する排紙ローラ対38が配設されている。
【0048】
両面印刷用搬送ユニット7は、外面(図の右方外側面)がプリンタ1の内部を側面から外部に開放又は遮蔽する開閉部材を兼ねている。
【0049】
この両面印刷用搬送ユニット7は、排紙ローラ対38の直前から図の右横方向に分岐する返送開始路39a、それから下方に曲がる返送中間路39b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる返送終端路39cから成る返送路39を備えている。
【0050】
また、返送路39の途中には、5組の返送ローラ対41(41a、41b、41c、41d、41e)が配置されている。上記返送終端路39cの出口は、給紙部5の下方の給紙カセット30bに対応する待機搬送ローラ対34への搬送路に合流している。
【0051】
図2は、上記構成のプリンタ1の制御部(プリンタ制御装置)に関わる主要部の回路ブロック図である。同図に示すように、プリンタ制御装置42には、一方の通信線43を介して現像装置9(9m、9c、9y、9k)が接続され、他方の通信線44を介してトナー供給装置45が接続されている。
【0052】
プリンタ制御装置42は、印刷枚数カウンタ46とトナー濃度制御部47を備えている。また、
図1にも示した現像装置9には、後述する下部現像槽にトナー濃度センサ48を備えている。また、トナー供給装置45は駆動モータ49を備えている。
【0053】
現像装置9のトナー濃度センサ48は、現像装置内の現像剤の透磁率を検出して、トナー濃度の違いに応じた出力電圧を出力する。この出力は、プリンタ制御装置42のトナー濃度制御部47に送信される。
【0054】
プリンタ制御装置42は、トナー濃度制御部47が受信するトナー濃度センサ48の出力と基準電圧とを比較し、基準電圧よりも出力電圧が高い場合には、トナー供給装置45に駆動モータ49を駆動させ、トナー補給容器20のトナーを現像装置9に補給するようにしている。
【0055】
ここで、トナー供給装置45は、
図1に示したトナー供給部4の各トナー補給容器20と、これらのトナー補給容器20にそれぞれ対応する現像装置9の下部現像槽との間に連結されたトナー供給路を備え、駆動モータ49は、トナー補給容器20及びトナー供給路内に配設されたトナー搬送スクリューを回転駆動する。
【0056】
これにより、プリンタ制御装置42の制御のもとに、トナー供給のタイミングに応じて、トナー供給装置45は駆動モータ49を回転駆動して、トナー補給容器20のトナーを対応する現像装置9の下部現像槽に供給(補給)する。
【0057】
なお、本例の現像剤(二成分現像剤)において、キャリアはフェライトキャリアにシリコン系の樹脂をコーティングした体積平均粒径45μの球形キャリアである。また、トナーは植物由来樹脂をメイン樹脂として、顔料、WAX、帯電制御剤等を添加して混練した構成の体積平均粒径7μのトナーである。
【0058】
図3(a)は上記構成のプリンタ1の現像器14を感光体ドラム10と共に示す拡大断面図であり、
図3(b)は現像器14を
図3(a)の矢印bで示す向に切断して内部構成と現像剤の還流経路を示す断面図である。
【0059】
なお、
図3(a),(b)には
図1及び
図2の構成と同一の構成部分には
図1及び
図2と同一の番号を付与して示している。また、
図3(b)では
図3(a)に示すクリーニングブレード61の図示を省略し、トナー濃度センサ48も極く簡略に示している。
【0060】
図3(a)に示すように、現像器14は、外壁を形成するユニット筐体16と内部の隔壁17とで仕切られる2つの現像槽51(上現像槽51a、下現像槽51b)を備えている。上現像槽51aには、前述した現像ローラ15と第2の攪拌搬送部材19が配置されている。
【0061】
現像ローラ15には、ドクターブレード52が当接している。下現像槽51bには前述した第1の攪拌搬送部材18が配置されている。この現像槽51aにはトナー濃度センサ48がその検知面53を槽内に露出して配置されている。
【0062】
第2の攪拌搬送部材19は、回転軸54とこの回転軸54に螺旋状に固設された螺旋状フィン55とで構成されている。第1の攪拌搬送部材18は、回転軸56とこの回転軸56に螺旋状に固設された螺旋状フィン57とで構成されている。
【0063】
第2の攪拌搬送部材19は、矢印cで示すように図の反時計回り方向に回転し、現像槽51a内の現像剤を螺旋状フィン55で攪拌しながら矢印eで示すように
図3(a)の紙面奥行き方向手前から向こう側(
図3(b)では右から左)へ搬送し、その現像剤を現像ローラ15に供給する。
【0064】
現像ローラ15は、現像剤のトナーのみを感光体ドラム10に供給して、感光体ドラム10周面上の静電潜像をトナー像化(現像)する。トナーのみを感光体ドラム10に引き取られた現像ローラ15上の現像剤のキャリアは、現像槽51a内の現像剤に混合され、
図3(a)の紙面奥行き方向向こう側、
図3(b)では左端部の出口62で現像槽65bに送り戻す。
【0065】
現像槽51b内の第1の攪拌搬送部材18は、
図3(a)の矢印dで示すように図の反時計回り方向に回転し、現像槽51b内の現像剤を螺旋状フィン57で攪拌しながら
図3(a),(b)の矢印f(f1、f2、f3)で示すように
図3(a)の紙面奥行き方向向こう側から手前、
図3(b)では左から右方へ搬送しながら、供給口63で、現像剤を現像槽51aに送り出す。このように、現像剤の還流とトナーの補給が繰り返されて、トナーによる現像が逐次進行する。
【0066】
上記のトナー濃度センサ48の検知面53は槽内に露出して配置されているので、現像剤が検知面53に滞留しやすい。現像剤が検知面53に滞留するとトナー濃度センサ48の検知精度が低下する。
【0067】
このトナー濃度センサ48の検知精度の低下を防止するために、現像槽51b内の第1の攪拌搬送部材18の回転軸56には、トナー濃度センサ48の検知面53に対向して回転する位置に、ブレード保持部58とこのブレード保持部58に保持された弾性体シート(ブレード)59から成るクリーニングブレード61が固設されている。
【0068】
クリーニングブレード61は、攪拌搬送部材17の回転軸56と共に回転し、トナー濃度センサ48の検知面53を弾性体シート59により摺擦して、検知面53に滞留しようとする現像剤を払い飛ばして、直後に搬送されてくる現像剤と入替える。
【0069】
これにより、トナー濃度センサ48の検知面53に現像剤が滞留することによって生じる虞のあるトナー濃度の誤検知を防止している。
【0070】
もし、現像剤のトナー濃度が規定以下に薄くなっていれば、トナー濃度センサ48がトナー濃度低下を検出する。トナー濃度低下が検出されると、トナー供給部4の当該現像器14に対応するトナーホッパー27から補給口を介してトナーTnが補給される。
【0071】
ところで、本例のトナー濃度センサ48は、現像剤の二成分中のキャリアの磁性分を検知している。つまり磁気センサである。現像剤のトナー濃度が高いときはキャリアに付着しているトナーが多いときである。したがって、トナー濃度センサ48とキャリアの間の透磁率が下がり、トナー濃度センサ48の検知出力電圧は低下する。
【0072】
一方、現像剤のトナー濃度が低いときはキャリアに付着しているトナーが少ないときである。したがって、トナー濃度センサ48とキャリアの間の透磁率が上り、トナー濃度センサ48の検知出力電圧が上昇する。
【0073】
図4は、現像剤のトナー濃度とトナー濃度センサの出力電圧との関係を示す特性図である。同図は横軸にトナー濃度(%)を4%から16%まで2%刻みで示し、縦軸にトナー濃度センサの出力電圧値(V)を0Vから5Vまで示している。
【0074】
なお、同図の特性図に示すトナー濃度(%)の実測値を表すプロットは、トナー濃度5%から14%までの範囲のものを示している。同図に示すように、トナー濃度が5%から14%まで順次高くなるに従って、トナー濃度センサの出力電圧は、およそ3.8Vのあたりから、およそ1.2Vのあたりまで、直線的に順次低下している。
【0075】
ところで、上記のようなトナー濃度とトナー濃度センサの出力電圧との関係は、現像装置9内のキャリア量によって異なるものである。ここで、前述したように、キャリアは体積平均粒径45μの球形であり、トナーは体積平均粒径7μの粒であり、キャリアに比べトナーの比重は小さい。しかも、現像剤中に含まれるトナーの比率は一般的基準で6%程度である。
【0076】
したがって、キャリア量に対するトナー量は極端に少なく、トナー濃度センサ位置におけるトナー濃度の違い(トナー量の違い)で生じる現像剤量の嵩の違いは問題とならない。そこで、以下の説明では、キャリア量と現像剤量を同義に用いて説明する。
【0077】
ここで、通常、画像形成装置の現像剤を構成するキャリアは、内部に磁石を配置した現像ローラに磁力で捕獲されているが、トナーの帯電量が高くなった場合等には、トナーと一緒に感光体ドラムに付着するキャリア引きが生じ、印刷枚数が増えるに従ってキャリア量が減少するということが起こる。この現象は避けることが出来ない。
【0078】
図5は、本例の現像剤を使用して、3種類のトナー濃度の現像剤の現像剤量とトナー濃度センサの出力電圧の関係を示す図である。同図は横軸に現像剤量(キャリア量と考えて差し支えない)を100gから300gまで示し、縦軸にトナー濃度センサの出力電圧を1.5vから5vまで示している。
【0079】
また、グラフ65は、トナー濃度が9%の現像剤を用いたときの現像剤量とトナー濃度センサの出力電圧との関係を示し、グラフ66は、トナー濃度が10%の現像剤を用いたときの現像剤量とトナー濃度センサの出力電圧との関係を示し、グラフ67は、トナー濃度が11%の現像剤を用いたときの現像剤量とトナー濃度センサの出力電圧との関係を示している。
【0080】
なお、同図において、グラフ65、66及び67が、ともに
図4のように直線グラフでなく曲線を描いているのは、現像剤量とトナー濃度センサの出力電圧の関係は、特には図示しないが多項式で求められるものであるからである。
【0081】
同図において、横軸の右から左に示すように、9%、10%、11%それぞれの濃度の現像剤において現像剤量(キャリア量)が250gから150gへと減少していくにつれて、トナー濃度センサの出力電圧は、それぞれおよそ4.2vから2.4v、3.5vから2.05v、3.0vから1.7vへと減少していく。
【0082】
このように、濃度が同一の現像剤でありながら、現像剤量(キャリア量)が減少していくと、トナー濃度センサの出力電圧が低下していく、換言すれば、トナー濃度が変わらないにもかかわらず、トナー濃度センサの出力電圧が変動するのは、トナー濃度センサの検知面を通過する現像剤の状態が、その現像剤量によって異なるために生じる現象であり、この現象は避けることができない。
【0083】
このまま放置すれば、例えば印刷枚数などに基づく経時的な現像剤量(キャリア量)の減少によって、同一トナー濃度に対してトナー濃度センサの出力電圧の低下によって、制御部はトナー濃度が高いと判定する。
【0084】
つまり、トナー濃度センサの出力電圧が基準値を超えたことを示したときは、すでにトナー濃度が適正濃度よりも低くなったときであり、ここでトナーの補給を開始しても、適正濃度に達しないうちに、トナー濃度センサの出力電圧が基準値を示すためトナーの補給が停止される。すなわち、いつまで経っても適正なトナー濃度が得られない。
【0085】
このように、現像剤量(キャリア量)の減少という現象を放置すると、適正なトナー濃度が得られず、そうかといって、キャリアの減少量を直接検出してキャリアを補給するなどということは、技術的にも実用的にも困難である。
【0086】
本発明者は、上述したような不具合を防止し、現像装置の寿命までトナー濃度を一定に保ち、結果として形成される画像の品質を維持することができる画像形成装置、そのトナー濃度制御方法及びプログラムを提供するために本発明を案出した。以下、本発明の実施例1について説明する。
【実施例1】
【0087】
図6は、本発明の実施例1の原理を説明するための異なるトナー濃度の現像剤に対する現像剤量とトナー濃度センサ48の出力電圧との関係を示す特性図である。同図においてグラフ68は、現像装置9が新品の時の特性図であり、現像装置9に投入されている現像剤量は200g、現像剤のトナー濃度が10%の例として示してある。つまりトナー量は20gである。
【0088】
また、グラフ69は、現像装置9が新品の時の現像剤に2gのトナーを追加して、現像剤量を202g、現像剤のトナー濃度を概算で11%とした場合の特性図である。
【0089】
図7は、
図2に示す制御部により
図6に示す原理図に基づいてプリンタ1の現像装置9のトナー濃度を常に適正な濃度となるように制御する処理のフローチャートである。
【0090】
図7の処理において、制御部は、
図1に示す本体装置1に電源が投入され、使用する用紙の紙質、枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると、印刷を開始する(ステップS1)。
【0091】
次に、制御部は、現在画像の形成中であるか否か判別する(ステップS2)。そして、画像の形成中であるときは(S2の判別がYes)、トナー濃度を測定する(ステップS4)。この処理は、トナー濃度センサ48を駆動して、その出力電圧を参照する処理である。
【0092】
続いて、制御部は、いま参照したトナー濃度センサ48の出力電圧が設定電圧以上であるか否かを判別する(ステップS5)。ここで設定電圧とは、トナー濃度が10%以下となったことを示すトナー濃度センサ48の出力電圧(検知電圧閾値)である。
【0093】
この検知電圧閾値の初期値は、新品の現像装置9に投入された現像剤量を200g、そのトナー濃度を10%としたときのトナー濃度センサ48の出力電圧であり、略2.5vになるように設定されている。
【0094】
制御部は、上記の判別で、トナー濃度センサ48の出力電圧が設定電圧以上でないときは(S4の判別がNo)、ステップS1の印刷動作の処理に戻る。また、トナー濃度センサ48の出力電圧が設定電圧以上であるときは(S4の判別がYes)、トナーの補給を行う(ステップS6)。ここでのトナーの補給は、濃度ムラを起こさぬような適量が補給される。
【0095】
続いて、制御部は、ステップS4に戻って、トナー濃度センサ48の出力を参照し、ステップS5で当該出力電圧が設定電圧以上であるか判別する、ということを繰り返して、ステップS5で設定電圧以上でないとなってから、ステップS1の処理に戻る。
【0096】
一方、ステップS2の判別で、画像形成中でないときは(S3の判別がNo)、カウンタが規定値を超えたか否か判別する(ステップS3)。この処理は、
図2に示すプリンタ制御装置4の印刷枚数カウンタ46で計数されている印刷枚数が規定値(例えば、2000枚)を超えたか否かを判別する処理である。
【0097】
この判別で、印刷枚数が規定値を超えていなければ(S3の判別がNo)、前述したステップS4以下の処理に移行する。一方、印刷枚数が規定値を超えていれば(S3の判別がYes)、トナーの定量補給を行う(ステップS7)。
【0098】
この処理は、現在の現像剤量の変動量を知るための試験用トナーとしての定量補給(強制補給)であり、本例の場合は、2gのトナーを補給する。この処理で制御部は、トナー供給装置45の駆動モータ49の回転時間を制御して、一定量2gのトナーを補給することが出来る。
【0099】
上記に続いて制御部は、トナー濃度センサ48から入力する出力電圧を読み取って(ステップS8)、その出力電圧が後述する想定出力値を示しているか否かを判別する(ステップS9)。
【0100】
そして、出力電圧が想定出力値を示していれば(S9の判別がYes)、ステップS1の処理に戻ってステップS1以下の処理を繰り返す。一方、出力電圧が想定出力値を示していないときは(S9の判別がNo)、トナー濃度を制御するための設定電圧を変更する(ステップS10)。
【0101】
ここで想定出力値とは、新品の現像装置9のトナー濃度10%で200gの現像剤量に対するトナー濃度センサ48の出力電圧に対して、トナー濃度が11%になったときの202gの現像剤量に対するトナー濃度センサ48の出力電圧を指している。
【0102】
すなわち、
図6において、一定量2gのトナーを補給する前のトナー濃度センサ48の出力電圧が2.5vであったとする。これは、いまの現像剤がトナー濃度10%で200gの現像剤量であるとした場合のグラフ68のa点に対応する出力電圧、例えば2.5vである。
【0103】
そして、一定量2gのトナーを補給した後のトナー濃度センサ48の出力電圧は、現像剤がトナー濃度11%で202gの現像剤量となっているはずのグラフ69のb点でなければならない。このb点に対応する出力電圧、例えば2.1vが想定出力値である。
【0104】
ところが、一定量2gのトナー補給後の実際のトナー濃度センサ48の出力電圧が仮にc点であったとすれば、この間の横軸における差分Gだけ現像剤量が減少していることを示していることになる。
【0105】
減少量Gだけ現像剤量が減少している、つまり、いま現像槽にある現像剤は減少量Gだけ現像剤量が減っている。したがって、10%のトナー濃度を正しく検出するトナー濃度センサ48の出力電圧はグラフ68のd点で示す出力電圧、例えば2.4vに変更する必要がある。
【0106】
このトナー濃度センサ48の出力電圧を変更するためのトナー濃度検知電圧閾値(設定電圧)を変更する処理が、ステップS10の処理である。
【0107】
このように、一定量のトナーを追加することで示すであろうトナー濃度センサ48の出力電圧を想定出力値として、実際の出力電圧が想定出力値である場合と想定出力値でない場合とで、トナー濃度を制御するパラメータである設定電圧を変更しないか変更するかして、トナー濃度を制御することで、キャリア量の変化に関わり無く、常に一定にトナー濃度を制御することが出来る。
【実施例2】
【0108】
この実施例2では、一定量のトナーを補給するのではなく、一定量のトナーを消費することで、想定出力電圧と実際の出力電圧を比較しようとするものである。
【0109】
例えばA4判用紙一枚にベタ印刷した場合に0.4gのトナーを消費するような画像形成装置であれば、A4判用紙5枚分のべた印刷をすれば、2gのトナーを消費する動作をさせることができる。
【0110】
この場合、ベタ印刷の画像は感光体ドラム10から転写ベルト8に一次転写するのみでよく、二次転写ローラ26を転写ベルト8から離間させて用紙に二次転写することはせずに、転写ベルト8上のべた画像をベルトクリーナ27でクリーニングすればよい。
【0111】
図8は、本発明の実施例2の原理を説明するための異なるトナー濃度の現像剤に対する現像剤量とトナー濃度センサ48の出力電圧との関係を示す特性図である。同図においてグラフ71は、現像装置9が新品の時の特性図であり、現像装置9に投入されている現像剤量は200g、現像剤のトナー濃度は10%である。つまりトナー量は20gである。
【0112】
また、グラフ72は、現像装置9が新品の時の現像剤から2gのトナーを消費して、現像剤量を198g、現像剤のトナー濃度を概算で9%とした場合の特性図である。なお、
図8のA点、B点、C点及びD点は、それぞれ
図6のa点、b点、c点及びd点に対応する。
【0113】
また、
図8に示す原理図に基づいてプリンタ1の現像装置9により制御の処理は、
図7に示したフローチャートにおいて、ステップS7のトナー定量補給を、トナー定量消費(トナー強制消費)に代えるだけで、その他の処理は同一である。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0115】
像担持体上の静電潜像を現像するトナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像槽と、
該現像槽の前記現像剤におけるトナーの濃度情報を出力するトナー濃度センサと、
前記現像槽にトナーを補給するトナー補給部と、
前記トナー補給部でのトナーの補給後の、前記トナー濃度センサによる前記現像剤におけるトナーの濃度情報の出力値と、トナーの補給によって想定された前記現像剤におけるトナーの濃度情報の想定出力値とを比較する比較部と、
前記比較部における比較結果に基づいて前記現像槽の前記現像剤におけるキャリアの量を判定するキャリア量判定部と、
前記キャリア量判定部での判定に基づいて、その後の前記現像槽の前記現像剤におけるトナーの濃度が所定の濃度になるように前記トナー補給部でのトナーの補給量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
[付記2]
【0116】
前記トナー濃度センサの出力に対してトナー補給の目安となる閾値を設定する閾値設定手段と、
前記トナー補給部に対し所定のタイミングで前記現像槽に一定量のトナーを強制供給させる強制供給制御手段と、を更に備え、
前記制御部は、前記キャリア量判定部での判定に基づいて、前記閾値設定手段による前記閾値を変更することにより、前記トナー補給部でのトナーの補給量を制御する
ことを特徴とする付記1記載の画像形成装置。
[付記3]
【0117】
前記トナー濃度センサの出力に対してトナー補給の目安となる閾値を設定する閾値設定手段と、
前記像担持体上にベタ画像が現像されるように前記静電潜像を形成する手段と、を更に備え、
前記制御部は、前記キャリア量判定部での判定に基づいて、前記閾値設定手段による前記閾値を変更することにより、前記トナー補給部でのトナーの補給量を制御する
ことを特徴とする付記1記載の画像形成装置。
[付記4]
【0118】
像担持体上の静電潜像を現像するトナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像槽と、
該現像槽の前記現像剤におけるトナーの濃度情報を出力するトナー濃度センサと、
前記現像槽にトナーを補給するトナー補給部と、
を有する画像形成装置のトナー濃度制御方法であって、
前記トナー補給部でのトナーの補給後の、前記トナー濃度センサによる前記現像剤におけるトナーの濃度情報の出力値と、トナーの補給によって想定された前記現像剤におけるトナーの濃度情報の想定出力値とを比較する工程と、
前記比較部における比較結果に基づいて前記現像槽の前記現像剤におけるキャリアの量を判定する工程と、
前記キャリア量判定部での判定に基づいて、その後の前記現像槽の前記現像剤におけるトナーの濃度が所定の濃度になるように前記トナー補給部でのトナーの補給量を制御する工程と、
を含むことを特徴とするトナー濃度制御方法。
[付記5]
【0119】
像担持体上の静電潜像を現像するトナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像槽と、
該現像槽の前記現像剤におけるトナーの濃度情報を出力するトナー濃度センサと、
前記現像槽にトナーを補給するトナー補給部と、
を有する画像形成装置により読み取り可能なトナー濃度制御プログラムであって、
前記トナー補給部でのトナーの補給後の、前記トナー濃度センサによる前記現像剤におけるトナーの濃度情報の出力値と、トナーの補給によって想定された前記現像剤におけるトナーの濃度情報の想定出力値とを比較する手順と、
前記比較部における比較結果に基づいて前記現像槽の前記現像剤におけるキャリアの量を判定する手順と、
前記キャリア量判定部での判定に基づいて、その後の前記現像槽の前記現像剤におけるトナーの濃度が所定の濃度になるように前記トナー補給部でのトナーの補給量を制御する手順と、
を含むことを特徴とするトナー濃度制御プログラム。