特許第6011115号(P6011115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011115
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】被水防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/44 20060101AFI20161006BHJP
   E04H 5/02 20060101ALI20161006BHJP
   D06F 57/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   E04H15/44
   E04H5/02 B
   D06F57/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-167954(P2012-167954)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-25301(P2014-25301A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】308014341
【氏名又は名称】富士通セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(72)【発明者】
【氏名】河合 賢二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆史
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−031790(JP,U)
【文献】 特開2000−116990(JP,A)
【文献】 特開2000−157791(JP,A)
【文献】 実開平03−020991(JP,U)
【文献】 特開2001−221891(JP,A)
【文献】 実開昭55−145925(JP,U)
【文献】 特開2005−200993(JP,A)
【文献】 特開昭59−228790(JP,A)
【文献】 米国特許第04145851(US,A)
【文献】 実開昭57−008785(JP,U)
【文献】 特開平01−039460(JP,A)
【文献】 特開2010−071029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/44
E04H 5/02
D06F 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートを収容する容器と、
前記容器内に配置され、前記シートの端部に取り付けられた錘と、
制御装置からの指令を受けて前記錘を前記容器から放出し、前記シートを展開させる展開制御装置とを含む被水防止装置であって、
前記展開制御装置は、前記錘を前記容器に固定する保持部と、前記シートが保護対象装置上で広がるように前記錘を放出する放出制御部とを含み、
前記保持部は、前記容器内の圧力を高める高圧発生装置である
ことを特徴とする被水防止装置。
【請求項2】
前記高圧発生装置は、高圧ボンベ又は火薬を含むことを特徴とする請求項1に記載の被水防止装置。
【請求項3】
シートと、
前記シートを収容する容器と、
前記容器内に配置され、前記シートの端部に取り付けられた錘と、
制御装置からの指令を受けて前記錘を前記容器から放出し、前記シートを展開させる展開制御装置とを含む被水防止装置であって、
前記展開制御装置は、前記錘を前記容器に固定する保持部と、前記シートが保護対象装置上で広がるように前記錘を放出する放出制御部とを含み、
前記保持部は、前記錘を機械的に保持するリンク機構を有し、前記放出制御部は、前記リンク機構による前記錘の係止が解除されたときに、前記錘に対して前記容器の外に放出する力を付与するように構成されている
ことを特徴とする被水防止装置。
【請求項4】
水を検知する漏水センサを更に有し、前記制御装置は、前記漏水センサが水を検知したときに、前記展開制御装置に指令を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の被水防止装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記シートの展開時に警報を発令するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の被水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工場などでは、半導体製造装置や試験装置などが設置されたクリーンルームの屋根に工業用水や純水、薬液の配管が配設されることがある。この場合、地震などによって配管に亀裂が入って工業用水などが漏れると、例えば半導体製造装置が被水することがある。半導体製造装置が水すると、電気回路基板がショートしたり、センサ、電磁弁が故障したりし易くなる。特に、半導体製造装置が酸性の薬液に被水してしまうと、バルブが腐食してしまうので、バルブの交換が必要になる。
【0003】
ここで、従来の被水対策としては、工業用水を流す配管を2重構造にすることがある。ところが、2重配管は、コストアップの原因となる。さらに、2重の配管でも腐食や、地震の発生によって漏水する可能性がある。また、従来の別の被水対策では、半導体製造装置の上部に、鉄板などのカバーを設置することによって、半導体製造装置の被水を防止していた。ところが、半導体製造装置の上部のカバーは、メンテナンス時に邪魔になり、作業効率を低下させる原因になる。
【0004】
また、例えば、雨避けに用いられるオーニング装置では、伸縮自在な支持アームにテント幕を取り付け、支持アームを駆動させることによってテント幕を開いたり、閉じたりすることができる。このようなオーニング装置を使用する場合には、漏水の発生時にテントを展開させ、通常時はテント幕を閉じる。例えば、オーニング装置のような開閉するテント幕を半導体製造装置の上方に設置すれば、半導体製造装置のメンテナンス性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2000−96877
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のオーニング装置では、テント幕の展開速度が遅いので、急な漏水に対応することが困難であった。また、オーニング装置は、テント幕の展開機構の構成が複雑であるために大型化し易く、工場内に設置し難かった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、半導体製造装置等の被水対策において迅速性とメンテナンス性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一観点によれば、シートと、前記シートを収容する容器と、前記容器内に配置され、前記シートの端部に取り付けられた錘と、制御装置からの指令を受けて前記錘を前記容器から放出し、前記シートを展開させる展開制御装置とを含む被水防止装置であって、前記展開制御装置は、前記錘を前記容器に固定する保持部と、前記シートが保護対象装置上で広がるように前記錘を放出する放出制御部とを含み、前記保持部は、前記容器内の圧力を高める高圧発生装置であることを特徴とする被水防止装置が提供される。
また、実施形態の別の観点によれば、シートと、前記シートを収容する容器と、前記容器内に配置され、前記シートの端部に取り付けられた錘と、制御装置からの指令を受けて前記錘を前記容器から放出し、前記シートを展開させる展開制御装置とを含む被水防止装置であって、前記展開制御装置は、前記錘を前記容器に固定する保持部と、前記シートが保護対象装置上で広がるように前記錘を放出する放出制御部とを含み、前記保持部は、前記錘を機械的に保持するリンク機構を有し、前記放出制御部は、前記リンク機構による前記錘の係止が解除されたときに、前記錘に対して前記容器の外に放出する力を付与するように構成されていることを特徴とする被水防止装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
シートが容器に畳んで収容されるので、メンテナンス性に優れる。さらに、展開時は、放出制御部で錘を容器から放出させることによって、シートを迅速に展開させられる。従って、保護対象装置の被水を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置と、被水防止装置が設置される環境の概略の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の概略構成の一例を示す断面図である。
図3A図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の収容容器のアッパーケースを取り外した状態の一例を示す平面図である。
図3B図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の収容容器のアッパーケースを取り外した状態の変形例を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の動作の一例を示す断面図である(その1)。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の動作の一例を示す断面図である(その2)。
図6A図6Aは、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置のシートが展開した状態の一例を示す側面図である。
図6B図6Bは、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置のシートが展開した状態の一例を示す平面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の収容容器のアッパーケースを取り外した状態の変形例を示す平面図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態に係る被水防止装置の収容容器とシートの配置の変形例の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る被水防止装置の概略構成の一例を示す断面図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る被水防止装置の支持機構の一例を拡大し、さらに一部を破断させた図である。
図11A図11Aは、本発明の第2の実施の形態に係る被水防止装置の支持機構を駆動させた状態の一例を拡大して示す図である。
図11B図11Bは、本発明の第2の実施の形態に係る被水防止装置の支持機構を駆動させた状態の一例を拡大し、さらに一部を破断させた図である。
図12図12は、本発明の第3の実施の形態に係る被水防止装置の概略構成の一例を示す断面図である。
図13図13は、本発明の第3の実施の形態に係る被水防止装置の動作の一例を示す断面図である(その1)。
図14図14は、本発明の第3の実施の形態に係る被水防止装置の動作の一例を示す断面図である(その2)。
図15図15は、本発明の第4の実施の形態に係る被水防止装置の一例を示す断面図である。
図16図16は、本発明の第4の実施の形態に係る被水防止装置の動作の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1に被水防止装置を設置した半導体製造工場の概略図を示す。半導体製造工場では、クリーンルーム内などの床面1に半導体製造装置2、例えばスパッタリング装置が設置される。保護対象装置は、半導体製造装置2の代わりに、試験装置や検査装置でも良い。さらに、天井3の裏には、クリーンルーム内で使用する工業用水や純水、薬液の配管4が通されている。配管4は、半導体製造装置2の上方、又はその近傍に設置されている。さらに、半導体製造装置2の直上の天井3には、被水防止装置10の本体ユニット11が取り付けられている。被水防止装置10は、本体ユニット11と、本体ユニット11を制御する制御装置12と、漏水を検出する漏水センサ13とを含んで構成されている。
【0012】
図2の断面図に示すように、本体ユニット11は、アッパーケース21とロアーケース22を重ね合わせて形成した収容容器23を有する。アッパーケース21とロアーケース22は、中央部分が支柱24によって連結されており、側部には開口部20が斜め下向きに形成されている。開口部20は、アッパーケース21の外縁部21Aと、ロアーケース22の外縁部22Aをそれぞれ、斜め下向きに10°〜45°、例えば、45°の傾斜をもつように傾斜させることによって形成されている。さらに、開口部20は、収容容器23の周方向に連続して形成されている。
【0013】
収容容器23の各ケース21,22は、例えば、アルミニウムやFRP(Fiber Reinforced Plastics)を用いて製造されている。各ケース21,22の厚さは、火薬の爆発に伴う収容容器23の内圧上昇に耐えられる厚さ、例えば5mm程度になっている。
【0014】
さらに、収容容器23内には、折り畳まれた防水用のシート27と、シート27の展開に用いられる錘28と、シート27の展開を制御する展開制御装置25の放出制御部26とが収容されている。
【0015】
展開制御装置25は、収容容器23の開口部20を利用して形成された錘28の保持部29と、錘28を保持部29から外側に放出させる放出制御部26とを有する。
保持部29は、アッパーケース21の外縁部21Aと、ロアーケースの外縁部22Aを用いて形成されており、外縁部21A,22Aで錘28の上面及び下面をスライド移動可能に支持することによって錘28を収容容器23に固定させている。さらに、保持部29には、不図示の接着剤をさらに用いても良い。接着剤を用いると、収容容器23の開口部20に錘28をさらに確実に支持できる。
【0016】
また、展開制御装置25の放出制御部26は、高圧発生装置である火薬26Aと、火薬26Aに点火する点火装置26Bとを有する。薬26A及び点火装置26Bは、ロアーケース22に固定されており、点火装置26Bに制御装置12から指令の信号を入力することで火薬26Aに着火できる。
【0017】
防水用のシート27は、収容容器23内に折り畳んで収容されており、防水性及び耐熱性を有する素材を用いて製造されている。シート27の折り畳み方は、迅速にシート27を展開できるような形態であれば良い。また、シート27の中央部分は、支柱24に固定されており、シート27の外側の端部には錘28が取り付けられている。
【0018】
錘28は、収容容器23の側部に形成された保持部29に開口部20を塞ぐように配置されている。このような錘28は、例えば、ステンレスや鉄などの金属製の部材をゴムなどの樹脂で覆うか、ゴムのみで製造されている。図2と、図3Aのアッパーケース21を取り除いた平面図とに示すように、収容容器23が矩形の場合には、4つの長方形の錘28が、収容容器23の4辺のそれぞれに沿って1つずつ配置されている。そして、これら4つの錘28は、四角形の開口部20が隙間なく、又は殆ど隙間がないように配置される。その結果、錘28と収容容器23によって、火薬26A及びシート27が収容される内部領域30が密閉、又は密閉に近い状態になる。
【0019】
ここで、錘28の形状及び配置例は、図3Aに限定されない。例えば、図3Bに示すように、収容容器23の1つの辺を対して複数配置しても良い。この例では、収容容器23の各辺に2つずつ錘28Dが配置されている。1つの辺に配置される2つの錘28Dは、同じ長さ、即ち図3Aの錘28の半分の長さを有し、2つの錘28Dを密着して配置することによって開口部20の閉鎖している。さらに、収容容器23の1つの辺に配置される錘28の数は、3つ以上でも良い。収容容器23の辺毎に錘28の数を変えても良い。そして、隣り合う2つの錘28の一部が重なるように収容容器23に配置しても良い。このように錘28の数や配置を変えることによって、シート27の展開し易や、シート27の展開形状を制御することが可能になる。
【0020】
また、図1に示すように、漏水センサ13は、半導体製造装置2が設置された床面1などに配置され、例えば、漏水によって電流が検出される構成を有する。漏水センサ13の設置場所は、床面に限定されず、例えば半導体製造装置2の上でも良い。また、漏水センサ13の数は、2つ以上の複数でも良い。
【0021】
さらに、制御装置12は、漏水センサ13が漏水検知時に出力する信号を受けて、本体ユニット11内の点火装置26Bに点火信号を出力する機能と、点火時にアラームを発令する機能を有する。
【0022】
次に、被水防止装置10の作用について説明する。
地震や腐食によって配管4が破損して、クリーンルーム内に漏水が発生すると、漏水センサ13が漏水の発生を検出する。制御装置12は、例えば、漏水センサ13の電流値が予め定められた閾値を越えたら、漏水が発生したと判定し、本体ユニット11の展開制御装置25の点火装置26Bに点火信号を出力する。点火装置26Bは点火信号を受けて火薬26Aに点火する。
【0023】
図4に示すように、点火装置26Bが火薬26Aに点火することによって、収容容器23の内部領域30に高温のガスが発生する。収容容器23の側部の開口部20は、錘28によって封じされているので、収容容器23の内部領域30の圧力が急激に上昇する。ガスによって生じた圧力は、図4に矢印で示すように、錘28を収容容器23外側に押し出すように働く。その結果、錘28が保持部29をスライド移動して収容容器23の外部に押し出される。
【0024】
図5に示すように、収容容器23の側部が斜め下に傾斜しているので、錘28は、斜め下に向けて落下する。錘28が例えば、0.5kgの重さで、サイズが縦に5cm、横に15cm、重さが0.5kgの場合、火薬26Aの燃焼によって収容容器23の内圧が5気圧を超えると、錘28は375kgfの力で収容容器23の外側に放出される。このとき、錘28に取り付けられたシート27が、錘28に引っ張られるようにして、収容容器23の外に引き出される。
【0025】
そして、図6A及び図6Bに示すように、シート27は、錘28に引っ張られつつ、収容容器23を中心にして急速に展開し、半導体製造装置2を覆う。例えば、漏水の発生箇所が、半導体製造装置2の上方であった場合でも、漏水がシート27を伝って床面1に流れ落ちるので、漏水で半導体製造装置2が被水することはない。
【0026】
ここで、錘28を放出するときには、周囲の作業者の注意を喚起するために、制御装置12がアラームを発令する。アラームは、警告音でも良いし、メッセージでも良い。メッセージの例としては、「危険です。装置から3m以上離れて下さい」などがある。アラームの発令は、この実施の形態の必須の構成要素ではない。
【0027】
以上、説明したように、この実施の形態では、防水性のシート27を保護対象装置である半導体製造装置2の上方に畳んで配置しておき、シート27に取り付けられた錘28を火薬によって放出するようにした。この被水防止装置10では、シート27を急速に展開させ、半導体製造装置2を覆うようことが可能になる。従って、突発的な漏水が発生しても、半導体製造装置2が被水することを確実に防止できる。シート27は、折り畳まれて収容容器23に収容されているので、半導体製造装置2のメンテナンスや通常運転時の作業の邪魔にならない。これによって、被水防止の迅速性とメンテナンス性を両立できる。
【0028】
次に、被水防止装置10の変形例について説明する。
図7に平面形状を示す本体ユニット31のように、収容容器23Aを円形にしても良い。収容容器23Aの開口部20Aは、収容容器23Aの円周に沿ったリング形状になっており、開口部20Aに配置される錘28Aは円弧形の棒になっている。図7の例では、錘28Aは同形状のものが4つ配置されている。しかしながら、錘28Aは、2つ又は3つ、5つ以上の複数でも良い。また、少なくとも1つの錘28Aの長さを他に比べて変化させても良い。
【0029】
また、図8に平面形状を示す本体ユニット32にように、収容容器23Bから2方向にシート27を展開可能に構成しても良い。この場合の収容容器23Bは、2つの開口部20Bが反対方向に1つずつ形成されており、その各々に棒状の錘28Bが1つずつ配置されている。シート27は、一端が棒状の支柱24Aに固定されており、他端に錘28Bが取り付けられている。
【0030】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図9に示すように、被水防止装置40の本体ユニット11は、収容容器23に展開制御装置25Aが設けられている。展開制御装置25Aは、放出制御部26と、保持部である支持機構41とを有する。図9の一部を拡大すると共に、一部を破断させた図10に拡大して示すように、支持機構41は、ロアーケース22の外周部分に設けられ、錘28を収容容器23に機械的に保持するリンク機構である。
【0031】
具体的には、支持機構41は、ロアーケース22に斜めに固定されたメインフレーム42を有し、メインフレーム42に対して一対のアーム部43が開閉自在に支持されている。図10と、リンク機構を駆動させた状態を示す図11Bに示すように、各アーム部43は、L字形状を有し、一方の端部43A同士が、重なるように配置され、1つのピン44によってロッド45に回動自在に支持されている。さらに、各アーム部43の屈曲部は、2つの異なるピン46でメインフレーム42に1つずつ回動自在に支持されている。2つのピン46は、ロッド45を挟んで対称な位置に取り付けられている。そして、各アーム部43の他方の端部には爪43Bが形成されており、爪43Bが錘28の内面に突出させた係止部48に食い込むことによって錘28を支持している。
【0032】
ロッド45は、軸線が開口部20の傾斜に略平行に配置され、先端部がピン44で一対のアーム部43に連結されている。ロッド45の他端部は、面積を拡張させたエンド部45Aになっている。エンド部45Aとメインフレーム42との間には、コイルバネ47が挿入されている。コイルバネ47は、ロッド45を錘28から離れる方向に付勢している。図10に示すように、ロッド45に外力が加わっていない状態では、ロッド45は錘28から最も離れた位置に待機しており、この状態で一対のアーム部43は閉じて爪43Bが錘28を係止する。
【0033】
ここで、シート27は、収容容器23に形成された板状のガイド部材49とアッパーケース21の間に通されており、シート27が支持機構41と干渉しないようになっている。ガイド部材49は、例えば、アッパーケース21に固定されている。
【0034】
次に、被水防止装置40の作用について説明する。
図9に示す漏水センサ13が漏水を検知すると、制御装置12が点火信号を出力する。収容容器23内の火薬26Aが燃焼して内部領域30の内圧が上昇する。ロッド45のエンド部45Aの面積が例えば4cm2で、コイルバネ47が20kgfの外力で圧縮可能である場合、収容容器23の内圧が5気圧を超えると、コイルバネ47が圧縮してロッド45が錘28に向かって押し込まれる。
【0035】
その結果、図11Aと、図11Aの一部を拡大した図11Bに示すように、ロッド45にピン44で連結されている一対のアーム部43がピン46を支点にして回動して開く。その結果、錘28が開放され、例えば375kgfの力で勢い良く収容容器23の外側に放出される。錘28には、シート27が取り付けられているので、錘28に引っ張られるようにして、シート27が急速に展開し、半導体製造装置2を覆う。これによって、漏水による半導体製造装置2の被水が防止される。
【0036】
以上、説明したように、この実施の形態では、支持機構41を用いて錘28を収容容器23内で機械的に保持するようにしたので、錘28を確実に保持できる。その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0037】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。前記の各実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、前記の各実施の形態と重複する説明は省略する。
図12に示すように、水防止装置50は、展開制御装置25Cとして、保持部29と、放出制御部である高圧ボンベ51を有する。高圧ボンベ51は、ロアーケース22に少なくとも1つ取り付けられ、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスが例えば9気圧の圧力で充填されると共に、放出口51Aが電磁弁52で開閉可能になっている。
【0038】
高圧ボンベ51の放出口51Aは、錘28に向けて配置されており、開口部20と錘28の間の空間を仕切るための仕切り板54がいずれかのケース21,22に取り付けられている。仕切り板54は、シート27をガイドする役割と、高圧ボンベ51で発生させた圧力を効率良く錘28に作用させる役割を担う。錘28は、収容容器23の保持部29に不図示の接着剤などを用いて仮止めされている。このように、電磁弁52が取り付けられた高圧ボンベ51が、この実施の形態の展開制御装置25Cの放出制御部を構成する高圧発生装置となる。
【0039】
また、制御装置12は、漏水センサ13の出力を受けて、電磁弁52を開放させる指令信号を出力する機能と、指令信号出力時にアラームを発令する機能とを有する。
【0040】
次に、被水防止装置50の作用について説明する。
漏水センサ13が漏水を検知し、制御装置12が指令信号を出力すると、制御装置12からの指令信号に応じて電磁弁52が開く。これによって、高圧ボンベ51に充填されていた高圧ガスが放出される。高圧ガスは、図12に示す収容容器23と仕切り板54、錘28によって形成される小さい領域RA1に最初に放出される。その結果、領域RA1の圧力が急激に上昇し、速やかに高圧、例えば5気圧になる。
【0041】
これによって、図13に示すように、錘28が、例えば375kgfの力で勢い良く収容容器23の外側に放出される。錘28にはシート27が取り付けられているので、図14に示すように、錘28に引っ張られるようにして、シート27が急速に展開し、半導体製造装置2を覆う。これによって、漏水による半導体製造装置2の被水が防止される。
【0042】
以上、説明したように、この実施の形態では、高圧ボンベ51を用いて錘28を放出するようにしたので、パーティクルなどの発生を防止できる。錘28を速やかに放出させる観点からは、高圧ボンベ51は、錘28の数と同じ数で、かつ1つの錘28の近傍に1つずつ配置することが好ましい。その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0043】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。前記の各実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、前記の各実施の形態と重複する説明は省略する。
図15に示すように、被水防止装置60は、展開制御装置25Dの保持部として、錘28を機械的に保持する支持機構61(リンク機構)を有する。さらに、展開制御装置25Dは、放出制御部として、アッパーケース21に設けられた板材71と錘28の間に挿入されたコイルバネ72を有する。
【0044】
支持機構61は、メインケース42がアッパーケース21に取り付けられており、一対のアーム部43がピン44を介してアクチュエータ65のプッシャ66に回動可能に連結されたリンク機構を有する。リンク機構の詳細は、アクチュエータ65を有する点以外は、図10と同様である。アクチュエータ65は、制御装置12に指令信号を受けて電動でプッシャ66を錘28に向かう方向に突出可能な構成を有する。さらに、錘28が取り付けられたシート27は、ロアーケース22と、板状のガイド部材49Aとの間に通されている。
【0045】
また、放出制御部であるコイルバネ72は、アッパーケース21に設けられた板材71と錘28の間に少なくとも1つ挿入されている。図15の例では、コイルバネ72は、支持機構61の一対のアーム43を挟むように2つ平行に配置されている。コイルバネ72は、錘28を斜め下方の外側に付勢している。
【0046】
さらに、制御装置12は、漏水センサ13の出力を受けて、アクチュエータ65を駆動させる指令信号を出力する機能と、指令信号出力時にアラームを発令する機能とを有する。
【0047】
次に、被水防止装置60の作用について説明する。
漏水センサ13が漏水を検知し、制御装置12が指令信号を出力すると、図16に示すように、アクチュエータ65が駆動してプッシャ66を錘28に向けて突出させる。プッシャ66に連結されている一対のアーム部43がピン46を支点にして回動して開く。錘28は、2つのコイルバネ72によって均等に、斜め下方の外側に向けて付勢されているので、支持機構61による支持が解除されることによって、錘28が収容容器23の外側に、例えば375kgfの力で勢い良く放出される。錘28には、シート27が取り付けられているので、錘28に引っ張られるようにして、シート27が急速に展開し、半導体製造装置2を覆う。その結果、漏水による半導体製造装置2の被水が防止される。
【0048】
以上、説明したように、この実施の形態では、支持機構61を用いることによって錘28を確実に保持できる。さらに、コイルバネ72の復元力を用いることによって、支持が解除されたときに錘28を確実に、かつ速やかに放出することが可能になる。その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0049】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0050】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) シートと、前記シートを収容する容器と、前記容器内に配置され、前記シートの端部に取り付けられた錘と、制御装置からの指令を受けて前記錘を前記容器から放出し、前記シートを展開させる展開制御装置と、を含むことを特徴とする被水防止装置。
(付記2) 前記展開制御装置は、前記錘を前記容器に固定する保持部と、前記シートが保護対象装置上で広がるように前記錘を放出する放出制御部とを含むことを特徴とする付記1に記載の被水防止装置。
(付記3) 前記保持部は、前記容器内の圧力を高める高圧発生装置であることを特徴とする付記2に記載の被水防止装置。
(付記4) 前記高圧発生装置は、高圧ボンベ又は火薬を含むことを特徴とする付記3に記載の被水防止装置。
(付記5) 前記保持部は、前記錘を機械的に保持するリンク機構を有し、前記放出制御部は、前記リンク機構による前記錘の係止を解除するように構成されていることを特徴とする付記2に記載の被水防止装置。
(付記6) 前記保持部は、前記錘を機械的に保持するリンク機構を有し、前記放出制御部は、前記リンク機構による前記錘の係止が解除されたときに、前記錘に対して前記容器の外に放出する力を付与するように構成されていることを特徴とする付記2に記載の被水防止装置。
(付記7) 水を検知する漏水センサを更に有し、前記制御装置は、前記漏水センサが水を検知したときに、前記展開制御装置に指令を出力することを特徴とする付記1乃至付記6のいずれか一項に記載の被水防止装置。
(付記8) 前記制御装置は、前記シートの展開時に警報を発令するように構成されていることを特徴とする付記7に記載の被水防止装置。
【符号の説明】
【0051】
2 半導体製造装置(保護対象装置)
10 被水防止装置
12 制御装置
13 漏水センサ
23,23A,23B 収容容器
25、25A、25C、25D 展開制御装置
26B 火薬
26 放出制御部
27 シート
28 錘
29 保持部
41、61 支持機構(リンク機構)
51 高圧ボンベ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16