【実施例】
【0037】
9種類のカーボンブラック(CB1〜CB9)を使用して20種類のゴム組成物(実施例1〜9、比較例1〜11)を調製した。このうち4種類のカーボンブラック(CB1〜CB4)は市販グレード、5種類のカーボンブラック(CB5〜CB9)は試作品であり、それぞれのコロイダル特性を表1に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1において、各略号はそれぞれ下記のコロイダル特性を表わす。
・N
2SA:JIS K6217−2に基づいて測定された窒素吸着比表面積
・IA:JIS K6217−1に基づいて測定された沃素吸着量
・CTAB:JIS K6217−3に基づいて測定されたCTAB吸着比表面積
・DBP:JIS K6217−4(非圧縮試料)に基づいて測定されたDBP吸収量
・24M4:JIS K6217−4(圧縮試料)に基づいて測定された24M4−DBP吸収量
・Dst:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線の最大値であるモード径
・△D50:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線において、その質量頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅(半値幅)
・α:上述したDst及びN
2SAを下記式(2)の関係に当てはめたときの係数α
Dst=α×(N
2SA)
-0.61 (2)
(式中、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N
2SAは窒素吸着比表面積(m
2/g)である。)
・N
2SA/IA:窒素吸着比表面積N
2SAと沃素吸着量IAの比
【0040】
表1において、カーボンブラックCB1〜CB4は、それぞれ以下の市販グレードを表わす。またカーボンブラックCB5〜CB9は以下の製造方法により調製した。
・CB1:東海カーボン社製シースト300
・CB2:東海カーボン社製シーストNH
・CB3:東海カーボン社製シースト116HM
・CB4:東海カーボン社製シーストF
【0041】
カーボンブラックCB5〜CB9の製造
円筒反応炉を使用して、表2に示すように全空気供給量、燃料油導入量、燃料油燃焼率、原料油導入量、反応時間を変えて、カーボンブラックCB5〜CB9を製造した。
【0042】
【表2】
【0043】
タイヤ用ゴム組成物の調製及び評価
上述した9種類のカーボンブラック(CB1〜CB9)を用いて、表3,4に示す配合からなる20種類のゴム組成物(実施例1〜9、比較例1〜11)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、55Lのニーダーで15分間混練した後、そのマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを55Lのニーダーに供し硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、スチールコード被覆用ゴム組成物を得た。なお、表3,4において、ジエン系ゴム100重量部に対する有機酸コバルト塩のコバルト量としての配合量を括弧を付して「Co含有量」の欄に記載した。
【0044】
得られたスチールコード被覆用ゴム組成物の一部を下記に示すムーニー粘度試験に供し加工性を評価した。次いで、ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作製し、動的粘弾性試験を行い、発熱性(60℃のtanδ)を評価した。
【0045】
また、得られたスチールコード被覆用ゴム組成物でスチールコードを被覆したベルト層を有する空気入りタイヤとして、サイズの異なる2種のタイヤ(サイズ225/50/R17及び195/65R15)を製作し、操縦安定性及び耐久性をそれぞれ下記に示す試験方法で評価した。
【0046】
ムーニー粘度
スチールコード被覆用ゴム組成物のムーニー粘度(ML
1+4)を、JIS K6300に準拠してムーニー粘度計にてL型ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、温度100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、それぞれのムーニー粘度の逆数を算出し比較例1を100とする指数として表3,4の「加工性」の欄に示した。この「加工性」の指数が大きいほどムーニー粘度が低く、成形加工性が優れることを意味する。
【0047】
発熱性(60℃におけるtanδ)
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における損失正接tanδを測定した。得られた結果は、それぞれのtanδの逆数をとり比較例1を100とし、表3,4の「発熱性」の欄に示した。「発熱性」の指数が大きいほど発熱性が小さく、タイヤにしたとき転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0048】
操縦安定性
得られた空気入りタイヤ(サイズ225/50/R17)を標準リム(サイズ17×7.5Jのホイール)に組み付け、国産2.5リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧230kPaの条件で乾燥路面からなる1周2.6kmのテストコースを実車走行させ、そのときの操縦安定性を専門パネラー3名による感応評価により採点した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表3,4の「操縦安定性」の欄に示した。この指数が大きいほど操縦安定性能が優れていることを意味する。
【0049】
耐久性
得られた空気入りタイヤ(サイズ195/65R15)を標準リム(サイズ15×6Jのホイール)に装着し、空気圧200kPaの空気を充填して、ドラム径1707mmで、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機にかけて、荷重3600Nを負荷し、速度80km/hで2時間走行させた後、速度を120km/hに上げて24時間走行させた。その後、24時間走行する毎に速度を10km/hずつ上げ、タイヤ故障を起こすまでの走行距離を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表3,4の「耐久性」に示した。この指数が大きいほど耐久性が優れることを意味する。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
なお、表3,4において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS#3
CB1〜CB9:上述した表1に示したカーボンブラック
有機酸Co塩−1:ナフテン酸コバルト、DIC社製ナフテン酸コバルト、コバルト含有量10重量%
有機酸Co塩−2:OMG社製マノボンドC22.5、コバルト含有量22重量%
有機酸:三共油化工業社製ナフテン酸、コバルト含有量0重量%
シリカ:東ソーシリカ社製ニップシールAQ (CTAB=160m
2/g)
アロマオイル:ジャパンエナジー社製プロセスX−140
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX6PPD
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーDZ−G
硫黄:不溶性硫黄、四国化成社製ミュークロンOT−20、硫黄分80%
【0053】
表3,4から明らかなように実施例1〜9のタイヤ用ゴム組成物は、加工性、発熱性、操縦安定性、及び耐久性が従来レベル以上に向上することが確認された。
【0054】
表3から明らかなように、比較例1のゴム組成物はカーボンブラックCB1のN
2SAが70m
2/g超、ストークス径Dstが145nm未満、かつ比N
2SA/IAが1.00未満であるため、実施例1〜5のタイヤ用ゴム組成物に比べ、タイヤにしたときの加工性、低転がり抵抗、操縦安定性及び耐久性のバランスが劣る。比較例2のゴム組成物は、カーボンブラックCB2のストークス径Dstが145nm未満であるため、タイヤにしたときの操縦安定性及び耐久性が悪化する。比較例3のゴム組成物は、カーボンブラックCB3のストークス径Dstが145nm未満、比N
2SA/IAが1.00未満であるため、ゴム組成物の加工性及びタイヤにしたときの耐久性が悪化する。比較例4のゴム組成物は、カーボンブラックCB4のN
2SAが45m
2/g未満かつ比N
2SA/IAが1.00未満であるので、タイヤにしたときの操縦安定性及び耐久性が悪化する。
【0055】
表4から明らかなように、比較例5のゴム組成物は、補強性充填剤(カーボンブラック)の配合量が40重量部より少ないのでゴム組成物の加工性とタイヤにしたときの操縦安定性及び耐久性が悪化する。比較例6のゴム組成物は、補強性充填剤(カーボンブラック)の配合量が80重量部より多いので、ゴム組成物の加工性及びタイヤにしたときの低転がり性、耐久性が悪化する。
【0056】
比較例7はカーボンブラックの配合量が10重量部より少ないのでゴム組成物の加工性及びタイヤにしたときの耐久性能が悪化する。なお、比較例7及び実施例8は補強性充填剤としてカーボンブラックとシリカとを併用したものである。
【0057】
比較例8は有機酸コバルト塩を配合しないのでタイヤにしたときの操縦安定性及び耐久性が悪化する。比較例9はコバルト含有量が0.1重量部より少ないのでタイヤにしたときの操縦安定性及び耐久性が悪化する。比較例10はコバルト含有量が0.4重量部より多いのでゴム組成物の加工性及びタイヤにしたときの低転がり性、耐久性能が悪化する。比較例11はコバルト含有量が0重量%である有機酸を用いているのでタイヤにしたときの操縦安定性及び耐久性が悪化する。