(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部搬送羽根は、前記回転筒体の内周面に螺旋状に設けられた内部螺旋羽根であり、前記外部搬送羽根は、当該内部螺旋羽根とは螺旋方向が逆の螺旋状に設けられた外部螺旋羽根であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の現像装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
<カラープリンター>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例であるタンデム型カラープリンター(以下、カラープリンターとする)の主要部の構成を説明するための正面側から見た模式図である。このカラープリンターは、外部の端末装置等から入力される画像データに基づいて、電子写真方式によりカラーまたはモノクロのトナー画像を形成する。
【0019】
図1に示すカラープリンターには、周回移動域が水平方向に沿って長くなった中間転写ベルト18が設けられている。中間転写ベルト18は、水平方向の一方の端部(
図1において右側の端部)に設けられた駆動ローラー17aと、水平方向の他方の端部(
図1において左側の端部)に設けられた従動ローラー17bとに巻き掛けられており、駆動ローラー17aが回転駆動されることにより、矢印X1で示す方向に周回移動する。
【0020】
中間転写ベルト18の下側の走行部には、走行方向に沿って配置された4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kが対向している。
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kには、矢印Z1で示す方向にそれぞれ回転される感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kが、中間転写ベルト18に対向して、正面側から背面側にわたって水平状態で設けられている。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナーによって画像を形成する。
【0021】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、トナー画像を形成するためのトナーの色のみがそれぞれ異なっていること以外は概略同様の構成になっていることから、中間転写ベルト18の下側の走行部における走行方向上流側の端部に対向して配置された画像形成ユニット10Yの構成のみを詳細に説明して、他の画像形成ユニット10M、10C、10Kの構成の詳細な説明は省略する。
【0022】
画像形成ユニット10Yには、感光体ドラム11Yの下部に対向する帯電ローラー12Yが設けられている。帯電ローラー12Yは、感光体ドラム11Yの表面を一様に帯電する。感光体ドラム11Yの下方には、帯電された感光体ドラム11Yの表面にレーザー光Lを照射する露光装置13Yが設けられている。露光装置13Yは、画像データに対応して変調されたレーザー光Lを感光体ドラム11Yの表面に照射する。これにより、帯電された感光体ドラム11Yの表面に、画像データに対応した静電潜像が形成される。
【0023】
画像形成ユニット10Yには、感光体ドラム11Yおけるレーザー光Lの照射位置に対して回転方向下流側に、感光体ドラム11Yの表面に形成された静電潜像を現像する現像装置30Yが設けられている。現像装置30Yは、感光体ドラム11Yの軸方向(画像形成装置の正面側〜背面側)に沿って配置されている。
現像装置30Yは、Y色の非磁性トナー(以下、単に「トナー」とする)と、磁性のキャリア(以下、単に「キャリア」とする)とを含む2成分現像剤を用いて、感光体ドラム11Yの表面に形成された静電潜像をY色のトナーによって現像する。これにより、感光体ドラム11Yの表面に、Y色のトナー画像が形成される。現像装置30Yの具体的な構成については後述する。
【0024】
他の各画像形成ユニット10M、10C、10Kのそれぞれも、感光体ドラム11M、11C、11Kの周囲に、帯電ローラー、露光装置、および、現像装置30Yと同様の構成の現像装置30M、30C、30Kが、それぞれ設けられている。
中間転写ベルト18の周回移動域の内側には、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kとは中間転写ベルト18を挟んでそれぞれ対向する1次転写ローラー15Y、15M、15C、15Kが設けられている。
【0025】
感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kのそれぞれに形成されたトナー画像は、転写バイアス電圧が印加された1次転写ローラー15Y、15M、15C、15Kによって形成される電界の作用により、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kから中間転写ベルト18上にそれぞれ1次転写される。
なお、フルカラー画像を形成する場合には、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面に形成されたそれぞれのトナー画像が中間転写ベルト18上の同じ領域に多重転写されるように、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれの画像形成動作タイミングがずらされる。
【0026】
モノクロ画像を形成する場合には、選択された1つの画像形成ユニット(例えばKトナー用の画像形成ユニット10K)のみが駆動されることによって、その画像形成ユニットに設けられた感光体ドラム上にトナー画像が形成されて、中間転写ベルト18における所定領域上に転写される。
トナー画像が中間転写ベルト18に転写された後に感光体ドラム11Yの表面に残留するトナーは、画像形成ユニット10Yに設けられたクリーニング部16Yによって、感光体ドラム11Yから除去される。クリーニング部16Yは、例えば回転ブラシによって構成されている。
【0027】
中間転写ベルト18には、右側の端部において駆動ローラー17aに巻き掛けられた部分に2次転写ローラー19が圧接されており、両者の間に転写ニップTNが形成されている。
カラープリンターの下部には、複数枚の記録シートPが収容された給紙カセット21が設けられている。給紙カセット21に収容された記録シートPは、給紙ローラー22によって1枚ずつシート搬送経路23に繰り出されて、タイミングローラー対24によって、トナー画像が1次転写された中間転写ベルト18の走行に同期した所定のタイミングで、転写ニップTNへ搬送される。
【0028】
転写ニップTNへ搬送される記録シートPは、周回移動される中間転写ベルト18の外周面(搬送面)に密着した状態で転写ニップTNを通過する。中間転写ベルト18上に転写されたトナー画像は、記録シートPが転写ニップTNを通過する間に、転写バイアス電圧が印加された2次転写ローラー19によって形成される電界の作用により、記録シートPに2次転写される。
【0029】
トナー画像が記録シートPに2次転写された後の中間転写ベルト18上に残留するトナー(廃トナー)は、中間転写ベルト18の左側の端部に巻き掛けられた従動ローラー17bの近傍において、上側の走行部に対向して配置されたベルトクリーニング装置27によって除去される。ベルトクリーニング装置27は、例えば一対の回転型ブラシによって、中間転写ベルト18上に残留するトナーを掻き落すようになっている。
【0030】
転写ニップTNに対して記録シートPの搬送方向の下流側(転写ニップTNの上側)には、定着装置25が設けられており、転写ニップTNにおいてトナー画像が2次転写された記録シートPは、定着装置25へ搬送される。
定着装置25は、ヒータランプが内蔵された加熱ローラー25aと、加熱ローラー25aに圧接された加圧ローラー25bとを有している。加熱ローラー25aと加圧ローラー25bとの間には定着ニップFNが形成されており、定着ニップFNを記録シートPが通過する。
【0031】
記録シートPは、定着ニップFNを通過する間に、記録シートP上のトナー画像が、加熱ローラー25aによって加熱されるとともに、加熱ローラー25aおよび加圧ローラー25bによって加圧されることにより記録シートPに定着される。
トナー画像が定着された記録シートPは、排紙ローラー26によって、排紙トレイ29上に排出される。
【0032】
<現像装置の構成>
図2は、画像形成ユニット10Yに設けられた現像装置30Yの構成を説明するための横断面の模式図である。なお、
図2は、現像装置30Yにおける感光体ドラム11Yの軸方向のほぼ中央部における横断面を示している。
図2に基づいて現像装置30Yの構成について説明する。なお、他の各画像形成ユニット10M、10C、10Kのそれぞれに設けられた現像装置30M、30C、30Kも、画像形成ユニット10Yの現像装置30Yと同様の構成になっているために、それらの構成の詳細な説明については省略する。
【0033】
現像装置30Yは、感光体ドラム11Yの軸方向(画像形成装置の正面側から背面側方向)に沿って水平状態に配置されたハウジング31を有している。ハウジング31の内部には、トナーおよびキャリアを含む2成分現像剤(以下、単に「現像剤」とする)が収容されている。
ハウジング31には、感光体ドラム11Yに軸方向のほぼ全長にわたって対向する開口部31aが設けられており、開口部31a内には、感光体ドラム11Yに沿って現像ローラー34が配置されている。また、ハウジング31の内部には、現像ローラー34に対して感光体ドラム11Yとは反対側に、円筒形状の撹拌搬送部材33が現像ローラー34に沿って設けられている。
【0034】
撹拌搬送部材33は、現像ローラー34とは一定の間隔をあけた状態で平行に配置されており、ハウジング31の内部の現像剤を、撹拌および混合しつつ循環させる。
現像ローラー34は、ハウジング31の開口部31a内において、感光体ドラム11Yの外周面とは一定の間隔をあけて平行に配置された円筒状の現像スリーブ34aと、現像スリーブ34aの内部を同心状態で挿通する円柱状の磁石ローラー34bとを有している。
【0035】
現像ローラー34の磁石ローラー34bは、感光体ドラム11Y側に位置する周面部分が、ハウジング31の開口部31aから外部に突出した状態で、ハウジング31に対して回転しないように固定されている。現像スリーブ34aは回転可能に支持されており、磁石ローラー34bの外周面に沿って、感光体ドラム11Yとの対向部分同士が逆方向(カウンター方向)になるように、
図2に矢印Fで示す方向に回転する。
【0036】
撹拌搬送部材33は、円筒状の現像スリーブ34aとの対向部分同士が逆方向になるように、
図2に矢印Eで示す方向に回転される。撹拌搬送部材33が回転されると、現像剤が、撹拌搬送部材33の一方の端部から内部に流入して、撹拌搬送部材33の内部を軸方向に沿って一方の端部から他方の端部へ搬送されて、他方の端部から撹拌搬送部材33の外部に流出する。撹拌搬送部材33の外部に流出した現像剤は、撹拌搬送部材33の回転により、撹拌搬送部材33の内部における現像剤の搬送方向とは逆方向に搬送される。撹拌搬送部材33の具体的な構成については後述する。
【0037】
現像スリーブ34aの内部に設けられた磁石ローラー34bには、撹拌搬送部材33に近接した部分以外の部分に、磁力発生手段としての5つの磁極(第2N極N2、第1S極S1、第1N極N1、第2S極S2、第3N極N3)が、周方向に間隔をあけて配置されている。各磁極は、磁石ローラー34bの軸方向に沿って、現像スリーブ34aのほぼ全長にわたって配置されている。
【0038】
磁石ローラー34bにおける感光体ドラム11Yに最も近接した部分には、主極である第1N極N1が配置されている。この第1N極N1は、現像スリーブ34aの外周面上を搬送される現像剤のキャリアによって、感光体ドラム11Yの現像領域に接触する磁気ブラシが形成されるように、他の磁極よりも大きな磁力になっており、例えば100mTの磁力に設定されている。
【0039】
第1N極N1(主極)に対して現像スリーブ34aの搬送方向上流側には、第1S極S1が設けられている。また、第1N極N1(主極)に対して現像スリーブ34aの搬送方向下流側には第2S極S2が設けられている。第1S極S1および第2S極S2のそれぞれは、現像スリーブ34aの回転によって現像剤を搬送するための搬送極になっており、それぞれが例えば40mTの磁力に設定されている。
【0040】
第1S極S1に対して現像スリーブ34aの搬送方向上流側である磁石ローラー34bの上部には、第2N極N2が設けられている。この第2N極N2は、ハウジング31の内部において現像剤のキャリアを引き付けるように、ハウジング31の内部に位置している。第2N極N2の磁力は、例えば40mTに設定されている。
磁石ローラー34bの下部に設けられた第2S極S2に対して現像スリーブ34aの搬送方向下流側には、第3N極N3が設けられている。この第3N極N3は、現像スリーブ34aの外周面を搬送される現像剤をハウジング31内に戻すように、ハウジング31の内部に位置している。
【0041】
ハウジング31における開口部31aの上側には、現像スリーブ34aにて搬送される現像剤量を規制するブレード状の規制部材35が、現像スリーブ34aの軸方向に沿って設けられている。規制部材35は、現像スリーブ34aの外周面とは一定の間隔をあけた状態で、現像スリーブ34aのほぼ全長にわたって対向している。
ハウジング31内の現像剤は、磁石ローラー34bの上部の第2N極N2によって現像剤中のキャリアが引き付けられ、現像スリーブ34aの回転によって、現像スリーブ34aの外周面上に担持されて搬送される。現像スリーブ34aの外周面上を搬送される現像剤は、現像スリーブ34aの回転によって、規制部材35によって所定量になるように規制された後に、感光体ドラム11Yとの対向位置へ搬送される。
【0042】
現像スリーブ34aによって感光体ドラム11Yとの対向位置に現像剤が搬送されると、第1N極N1(主極)によって磁気ブラシが形成され、感光体ドラム11Y上の静電潜像が現像剤のトナーによって現像される。その後、現像スリーブ34aの回転によって、現像スリーブ34a上の現像剤は、ハウジング31の内部へ搬送されて、第3N極N3によってハウジング31の内部に戻される。
【0043】
図3は、撹拌搬送部材33の外観を示す斜視図である。撹拌搬送部材33は、現像ローラー34の現像スリーブ34aとは平行に配置された円筒形状の回転筒体33aと、回転筒体33aの外周面に設けられた6本(6条)の外部螺旋羽根(外部搬送羽根)33bと、
図2に示すように、回転筒体33aの内周面に設けられた2本(2条)の内部螺旋羽根(内部搬送羽根)33cとを有している。
【0044】
本実施形態では、撹拌搬送部材33は、例えば、回転筒体33aの軸心を含む平面によって2分した半円周形状の半体部分を、それぞれ合成樹脂によって個別に成型して、成型された半体部分同士を結合することによって形成されている。
図4は、撹拌搬送部材33を構成する一方の合成樹脂製の半体部分を示す斜視図である。
図4に示す撹拌搬送部材33の一方の半体部分は、回転筒体33aの構成部分である半円周形状部分の外周面に、6条の外部螺旋羽根33bの構成部分が一体成型によって形成されるとともに、その半円周形状部分の内周面に、2条の内部螺旋羽根33cの構成部分が一体成型によって形成されている。
【0045】
撹拌搬送部材33の他方の半体部分にも、同様に、回転筒体33aの構成部分である半円周形状部分の外周面に、6条の外部螺旋羽根33bの構成部分が一体成型によって形成されるとともに、その半円周形状部分の内周面に、2条の内部螺旋羽根33cの構成部分が一体成型によって形成されている。
それぞれの半体部分同士は、円筒形状の回転筒体33aが形成されるように結合される。これにより、
図3に示すように、外周面の6条の外部螺旋羽根33bのそれぞれが連続状態になるとともに、内周面の2条の内部螺旋羽根33cのそれぞれが連続状態になって、撹拌搬送部材33になる。
【0046】
回転筒体33aは、
図2に示すように、現像スリーブ34aよりも大きな一定の外径を有している。回転筒体33aの内径も一定になっており、例えば17mmに形成されている。回転筒体33aの軸方向長さは、現像スリーブ34aの軸方向長さにほぼ等しくなっており、回転筒体33aの正面側および背面側の各端部が、現像スリーブ34aの正面側および背面側の各端部にそれぞれ対向している。
【0047】
図3に示すように、回転筒体33aの外周面に設けられた6本の外部螺旋羽根33bは、それぞれが同様の構成の螺旋形状に構成されており、回転筒体33aの軸方向の両側の端部を除いて、それぞれが一定のピッチおよび一定の高さで連続している。それぞれの外部螺旋羽根33bは、1/6ピッチ分ずつ順番にずれて配置されている。外部螺旋羽根33bのそれぞれの回転筒体33aからの高さ(径方向の突出長さ)は、例えば2mmになっている。
【0048】
図2および
図4に示すように、回転筒体33aの内周面に設けられた2条の内部螺旋羽根33cは、外部螺旋羽根33bの螺旋方向とは反対方向(逆巻き)になっており、それぞれが同様の構成の螺旋形状に構成されている。内部螺旋羽根33cのそれぞれは、回転筒体33aの軸方向の両側の端部を除いて、一定のピッチおよび一定の高さで連続しており、内部螺旋羽根33c同士は、相互に半ピッチ分だけずれた状態で配置されている。各内部螺旋羽根33cは、回転筒体33aの内周面から所定の高さに形成されており、回転筒体33aの軸心部は空洞になっている。
【0049】
図3および
図4に示すように、回転筒体33aの正面側(
図3およぞ
図4の左下側)の端部には、回転筒体33aの外部を搬送された現像剤が回転筒体33aの内部に流入する複数の流入口33sが周方向に一定の間隔をあけて設けられている。また、回転筒体33aの背面側(
図3およぞ
図4の右上側)の端部には、回転筒体33aの内部を搬送された現像剤が回転筒体33aの外部に流出する複数の流出口33tが周方向に一定の間隔をあけて設けられている。
【0050】
図3に示すように、回転筒体33aにおける正面側の端部は、フランジ部33dによって閉鎖されている。フランジ部33dは、
図4に示すように、回転筒体33aを構成する一方の半円周形状部分と一体成型によって形成されている。
図4に示すように、回転筒体33aを構成する一方の半円周形状部分には、回転筒体33aの背面側の端部を閉鎖するフランジ部33eが一体成型によって形成されている。このフランジ部33eは、回転筒体33aにおける背面側の端部を閉鎖している。
【0051】
正面側のフランジ部33dには、回転筒体33aとは同軸状態で回転筒体33aの外側に突出した回転軸33fが設けられている。背面側のフランジ部33eにも、回転筒体33aとは同軸状態で回転筒体33aの外側に突出した回転軸33gが設けられている。回転軸33fおよび回転軸33gは、フランジ部33dおよび33eのそれぞれと一体成型によって形成されている。
【0052】
背面側の回転軸33gは、図示しないモーターの回転が伝達されて回転される。これにより、回転筒体33aは、
図2に矢印Eで示す方向に回転される。回転筒体33aが矢印E方向に回転されると、回転筒体33aの外部の現像剤は、6条の外部螺旋羽根33bによって、背面側から正面側に向って搬送され、回転筒体33aの内部の現像剤は、2条の内部螺旋羽根33bによって、正面側から背面側に向って搬送される。
【0053】
図2に示すように、現像装置30Yのハウジング31は、現像スリーブ34aが配置された開口部31aの下側から、現像スリーブ34aの下方を通って、撹拌搬送部材33の下部および撹拌搬送部材33における現像スリーブ34aとは反対側部分を覆う周壁部31cと、撹拌搬送部材33の上方を覆う上壁部31dと、を有している。上壁部31dにおける感光体ドラム11Y側の側縁部は、開口部31aの上側に位置しており、この側縁部に、前述した規制部材35が設けられている。
【0054】
ハウジング31の周壁部31cは、全体にわたって一定の厚さになっており、撹拌搬送部材33の下部から、現像スリーブ34aとは反対側に位置する部分までは、各外部螺旋羽根33bの外周部とは一定の間隔になっている。
周壁部31cにおける下部の外側面には、磁石体36が設けられている。磁石体36は、一定の厚さの帯板状に形成されており、撹拌搬送部材33の直下に位置した状態で、撹拌搬送部材33の軸方向の全長にわたって配置されている。
【0055】
磁石体36は、いずれか一方の磁極(N極またはS極)が、回転筒体33a内の底部に位置する現像剤のキャリアに対して重力方向に所定の磁力を作用させる磁力発生手段になっており、回転筒体33aに対向した状態になっている。
磁石体36の磁力は、撹拌搬送部材33の回転筒体33aが予め設定された速度で回転した場合に、回転筒体33a内のキャリアに作用する遠心力によって、回転筒体33a内の底部のキャリアが回転筒体33aとともに上方に移動することを抑止するように設定されている。
【0056】
磁石体36における1つの磁極の磁力は、磁石体36と回転筒体33aの内周面との距離、磁石体36が設置されたハウジング31の周壁部31cの厚さ、キャリアの磁性等に基づいて設定されるが、通常、10〜60mT程度の範囲の値になっている。
ハウジング31における周壁部31cの外側面には、感光体ドラム11Yとは反対側の側部における撹拌搬送部材33の軸方向の中央部に対応した位置に、ハウジング31内の現像剤のトナー濃度Tc(トナー重量/現像剤重量)を検出するトナー濃度センサー38が設けられている。トナー濃度センサー38としては、例えば、現像剤の透磁率を検出する透磁率センサーが用いられており、トナー濃度センサー38によって検出されるトナー濃度Tcが、予め設定された濃度よりも低下した場合には、ハウジング31内にトナーが補給されるようになっている。
【0057】
他の各画像形成ユニット10M、10C、10Kのそれぞれに設けられた現像装置30M、30C、30Kも、画像形成ユニット10Yの現像装置30Yと同様の構成になっている。従って、
図1に示すように、ハウジング31の周壁部31cにおける下部の外側面に、所定の磁力に設定された磁石体36がそれぞれ設けられており、また、周壁部31cにおける所定位置にトナー濃度センサー38が設けられている。
【0058】
<現像装置の動作>
次に、現像装置30Yの動作について説明する。
現像装置30Yが、感光体ドラム11Y上の静電潜像の現像を実行する場合には、撹拌搬送部材33の回転筒体33aが所定の速度で回転されるとともに、現像ローラー34の現像スリーブ34aも、所定の速度で回転される。
【0059】
回転筒体33aが回転されると、正面側の端部に設けられた流入口33sから回転筒体33aの内部に流入した現像剤は、回転筒体33aと一体となって回転する内部螺旋羽根33cによって、流出口33tが設けられた背面側の端部へ、撹拌および混合されつつ搬送される。回転筒体33aの内部を搬送される現像剤のトナーは、キャリアと撹拌および混合されることによって帯電状態になる。
【0060】
この場合、回転筒体33aの内部の現像剤には、回転筒体33aの回転によって発生する遠心力が作用するために、現像剤が遠心力によって回転筒体33aの内周面に押し付けられた状態になる。
しかしながら、回転筒体33a内の底部のキャリアには、回転筒体33aの下方に配置された磁石体36における1つの磁極の磁力が重力方向に作用しているために、キャリアに作用する重力および磁石体36の磁力によって、回転筒体33a内の底部のキャリアが、回転する回転筒体33aとともに上方へ移動することが抑止される。
【0061】
この場合、磁石体36の磁力が大きすぎると、回転筒体33aの底部のキャリアが磁石体36に引き付けられるために、回転筒体33a内部における現像剤の軸方向に沿った搬送性に影響を与えるおそれがある。このために、回転筒体33a内の底部のキャリアが、遠心力によって上方へ移動することを抑止することができ、しかも、回転筒体33a内部における現像剤の軸方向に沿った搬送性に影響を与えるおそれがないように、磁石体36の磁力が設定されている。
【0062】
回転筒体33a内の底部に位置するキャリアが、回転状態の回転筒体33aとともに上方へ移動することが抑止されると、回転筒体33a内の現像剤(キャリアおよびトナー)は、回転筒体33aが回転しても、回転筒体33aの底部に位置されるために、回転筒体33aとともに回転する内部螺旋羽根33cに接触して、背面側の流出口33tへ搬送される。これにより、回転筒体33aの内部において、現像剤が、内部螺旋羽根33cによって軸方向に搬送されない滞留状態になるおそれがない。従って、現像剤は、回転筒体33aの内部を、ほぼ一定の搬送量を維持して、流出口33tが設けられた背面側の端部へ搬送される。
【0063】
このようにして、流出口33tが設けられた背面側の端部へ、搬送量が低下することなく搬送された現像剤は、流出口33tから回転筒体33aの外部に流出し、内部螺旋羽根33cとは螺旋方向が反対になった6条の外部螺旋羽根33bによって、正面側の流入口33sに向って搬送される。
外部螺旋羽根33bによって搬送される現像剤は、現像スリーブ34aとの間を通過する間に、現像スリーブ34aの回転によって、現像スリーブ34aの外周面上に担持されて搬送される。そして、現像スリーブ34aの外周面上を現像剤が搬送される間に、感光体ドラム11Yの静電潜像が、帯電状態になったトナーによって現像される。
【0064】
回転筒体33aの外部の現像剤が、外部螺旋羽根33bによって、背面側の流出口33tから正面側の流入口33sにまで搬送されると、流入口33sを通って、回転筒体33aの内部に流入する。その後、現像剤は、前述したように、回転筒体33aの内部を搬送された後に、回転筒体33aの外部を逆方向に搬送されることにより、ハウジング31の内部を循環する。
【0065】
回転筒体33aの内部においては、現像剤は、前述したように、ほぼ一定の搬送量を維持して搬送されるために、外部螺旋羽根33bにおける搬送方向の上流側に、ほぼ一定量の現像剤が供給される。このために、外部螺旋羽根33bによって回転筒体33aの外部を搬送される際に、現像剤中のトナーによって感光体ドラム11Y上の静電潜像が現像されても、外部螺旋羽根33bによる現像剤の搬送方向の下流側端部(正面側端部)において、現像剤中のトナー量が著しく低下することが抑制される。その結果、ハウジング31の内部を循環する現像剤の循環量(g/sec)をほぼ一定にすることができる。
【0066】
これにより、現像スリーブ34aにおける正面側端部において、現像剤中のトナー量が低下することによってトナーの帯電量が増加するおそれがない。その結果、感光体ドラム11Y上に形成されるトナー画像において、正面側端部に対応する部分のトナー濃度が、背面側端部に対応する部分のトナー濃度よりも大きく低下した濃度傾斜が生じることを抑制できる。
【0067】
他の現像装置30M、30C、30Kにおいても、現像装置30Yと同様に動作するために、現像装置30M、30C、30Kの内部における現像剤の循環量がほぼ一定になる。これにより、感光体ドラム11M、11C、11Kのそれぞれに形成されるトナー画像において、正面側端部に対応する部分のトナー濃度が背面側端部に対応する部分のトナー濃度よりも大きく低下した濃度傾斜が生じることを抑制できる。
【0068】
<現像剤>
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置30Y、30M、30C、30Kにおいて使用される2成分現像剤のトナーおよびキャリアは、特に限定されるものではなく、一般的に使用されている公知のトナーおよびキャリアを使用することができる。
【0069】
トナーは、通常、バインダー樹脂中に着色剤を混合し、また、必要に応じて荷電制御剤、離型剤等を混合して所定の粒径に造粒した後に、外添剤をコーティング処理することによって製造される。トナーは、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等の一般的な公知の方法で製造することができる。トナーの粒径としては、特に限定されるものではないが、3〜15μm程度が好ましい。
【0070】
トナーに使用されるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を使用することができる。特に、これらの樹脂単体もしくは複合体により、軟化温度が80〜160℃の範囲、ガラス転移点が50〜75℃の範囲とすることが好ましい。
【0071】
また、着色剤としては、一般に使用される公知のものを使用することができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシニアンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができる。着色剤は、通常、上記のバインダー樹脂100重量部に対して2〜20重量部の割合で用いることが好ましい。
【0072】
また、上記の荷電制御材としても、公知のものを使用することができる。例えば、正帯電性トナー用の荷電制御材としては、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。また、負帯電性トナー用荷電制御材としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属を含有したアゾ系染料、サリチル酸金属化合物、カーリックスアレン化合物等がある。荷電制御材は、上記のバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0073】
また、上記の離型材としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等を、単独で、あるいは、2種類以上組み合わせて使用することができる。離型材としては、上記のバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0074】
また、トナーに外添する粒子としては、一般に使用されている公知のものを使用することができる。流動性の改善を目的としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動化剤を使用することができ、特に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコンオイル等で撥水化した流動化剤が好適である。このような流動化剤は、通常、上記のトナー100重量部に対して、0.1〜5重量部の割合で添加して用いられる。外添剤の平均一次粒径は10〜100nmであることが好ましい。
【0075】
キャリアも、特に限定されず、一般的に使用されている公知のバインダー型キャリア、コート型キャリア等を使用することができる。キャリアの粒径としては、特に限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。
バインダー型キャリアでは、磁性体微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けたりすることもできる。バインダー型キャリアの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電微粒子、表面コーティング層の種類によって制御することができる。
【0076】
バインダー型キャリアに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が例示される。
バインダー型キャリアの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネラレルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネラレルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化鉄を有する鉄あるいは合金等の粒子を用いることができる。その形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。特に、高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマクネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類および含有量を適宜選択することにより、所望の磁性を有する磁性樹脂キャリアを得ることができる。磁性体微粒子は、磁性樹脂キャリア中に50〜90重量%の量で添加することが好ましい。
【0077】
バインダー型キャリアの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、これらの樹脂を表面にコートして硬化させてコート層を形成することにより、帯電付与能力を向上させることができる。
バインダー型キャリア表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリアと微粒子とを均一に混合し、磁性樹脂キャリアの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的および熱的な衝撃力を与え、微粒子を磁性樹脂キャリア中に打ち込むようにして固定することにより行われる。
【0078】
この場合、微粒子は磁性樹脂キャリア中に完全に埋設されるのではなく、その一部を磁性樹脂キャリア表面から突き出すようにして固定される。帯電性微粒子としては、有機あるいは無機の絶縁性材料が用いられる。具体的には、有機系の絶縁性材料として、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂およびこれら架橋物等の有機絶縁性微粒子を用いることができ、帯電レベルおよび極性については、素材、重合触媒、表面処理等により、希望するレベルの帯電及び極性を得ることができる。また、無機系の絶縁性材料としては、シリカ、二酸化チタン等の負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正帯電特性の無機微粒子等が用いられる。
【0079】
一方、コート型キャリアは、磁性体からなるキャリアコア粒子を樹脂コートしたキャリアであり、コート型キャリアにおいてもバインダー型キャリア同様、キャリア表面に正または負の帯電性の帯電性微粒子を固着させることもできる。コート型キャリアの極性等の帯電性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子により制御することができ、バインダー型キャリアと同様の材料を用いることができる。特に、コート樹脂はバインダー型キャリアのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
【0080】
逆極性粒子、トナーおよびキャリアの組み合わせによるトナーおよび逆極性粒子の帯電極性は、それぞれを混合撹拌して現像剤とした後に現像剤からトナーまたは逆極性粒子を分離するための電界の方向から容易に知ることができる。
現像装置30Y、30M、30C、30Kのそれぞれのハウジング31内においては、トナーとキャリアとの混合比は、所望のトナー帯電量が得られるように調整され、トナーとキャリアの合計量に対するトナー比は、3〜30重量%、好ましくは4〜20重量%が適している。
【0081】
<実施例>
次に、本実施形態1のカラープリンターの現像装置30Yにおいて、現像剤の循環量がほぼ一定になっていることにより、感光体ドラム11Y上に形成されるトナー画像に濃度傾斜の発生が抑制されることを、実施例1〜3によって検証した。以下、実施例1〜3について説明する。
【0082】
実施例1では、本実施形態における現像装置30Yを、
図5の表に示す条件の構成とした。すなわち、撹拌搬送部材33における回転筒体33aの内径を17mm、回転筒体33aの厚みを1.5mmとした。回転筒体33aの内周面には、2条の内部螺旋羽根33cが設けられており、回転筒体33aの軸心部は空洞になっている。回転筒体33aの外周面には6条の外部螺旋羽根33bが設けられており、それぞれの高さを2mmとした。さらに、ハウジング31の周壁部31cにおける磁石体36が設けられた部分と外部螺旋羽根33bとの距離(間隔)を1.5mm、磁石体36が設けられた周壁部31cの厚さを1.5mm、磁石体36の磁力を50mTとした。
【0083】
また、このような構成の現像装置30Yにおいて、
図6に示す現像条件A、B、Cのそれぞれでトナー画像を連続して形成して記録シートSに転写した。現像条件Aでは、現像装置30Yにおいて使用される2成分現像剤は、粒子径が6.5μmのトナーと、粒子径が30μmのキャリアとを含んでおり、また、キャリアの磁化を45(emu/cm
3)とした。このような現像剤を使用して、トナー濃度センサー38によって検出されるハウジング31内のトナー濃度Tcが7%になるようにトナー補給制御を行った。
【0084】
現像条件Bは、キャリアの磁化を、60(emu/cm
3)としたこと以外は、現像条件Aと同じ条件とした。
現像条件Cは、トナー濃度センサー38によって検出されるトナー濃度Tcが9%になるようにトナー補給制御を行って、現像条件Bよりも、現像剤におけるトナー量を多くしたこと以外は、現像剤Bと同じ条件とした。
【0085】
現像条件A、B、Cのそれぞれにおいて、感光体ドラム11Yの表面に、感光体ドラム11Yの軸方向に沿った所定領域内にトナーを一様に付着させたベタ画像を形成した。この場合、撹拌搬送部材33における回転筒体33aの回転速度を300r.p.m.に設定して、1分間に30枚のプリント速度で30枚の記録シートPにトナー画像を連続して形成した。それぞれの記録シートP上に形成されたトナー画像について、感光体ドラム11Yの軸方向における一方の端部に対応する部分のトナー濃度が、他方の端部に対応する部分のトナー濃度よりも大きく低下した濃度傾斜状態になっているかを、目視によって評価した。
【0086】
なお、濃度傾斜状態の評価は、全ての記録シートPのトナー画像において、濃度傾斜が目視で確認できない場合を最適状態(◎)、いずれかのトナー画像において目視によって濃度傾斜が確認できたが、その濃度傾斜が許容できる場合を適切状態(○)、いずれかのトナー画像において目視によって濃度傾斜が確認でき、しかも、その濃度傾斜が許容できない場合を不適切状態(×)とした。
【0087】
本実施例1の評価結果を
図7に示す。
図7に示すように、本実施例1では、現像条件A、B、Cのいずれであっても、全てのトナー画像について、目視によって濃度傾斜が確認できない最適状態(◎)であった。従って、本実施例1では、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石体36の磁力によって抑制されていると推測することができる。
【0088】
次に、実施例2として、
図5の表に示すように、磁石体36の磁力を30mTとしたこと以外は、実施例1と同じ構成の現像装置30Yにおいて、
図6に示す現像条件A、B、Cのそれぞれで、実施例1と同様にして記録シートS上にトナー画像を形成して、目視によってそれぞれのトナー画像の濃度傾斜の評価を行った。濃度傾斜の評価結果を
図7の表に示す。
【0089】
図7に示すように、本実施例2では、現像条件Bの場合には、全てのトナー画像に濃度傾斜が目視で確認できない最適状態(◎)であり、また、現像条件AおよびCの場合には、濃度傾斜が目視で確認できるトナー画像があったが、その濃度傾斜は許容できる適切状態(○)であった。
このように、磁石体36の磁力を低下させると、現像条件Aのように、キャリアの磁化が小さい場合には、磁石体36によるキャリアの引き付け力が弱まるために、撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量は若干低下していると考えられる。また、現像条件Cのように、トナー濃度の増加した場合にもキャリアに作用する磁力が低下するために、撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量は若干低下していると考えられる。しかし、いずれの場合にも、撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石体36の磁力によって抑制されているために、トナー画像の濃度傾斜は適切状態であった。
【0090】
さらに、実施例3として、
図5の表に示すように、現像装置30Yにおける回転筒体33aの厚みを1mm、6条の外部螺旋羽根33bの高さを1.5mmとした。また、ハウジング31の周壁部31cにおける磁石体36が設けられた部分と外部螺旋羽根33bとの距離(間隔)を1mm、周壁部31cにおける磁石体36が設けられた部分の厚さを1mmとして、磁石体36から回転筒体33aの内周面までの距離を、実施例1および2の場合よりも短くした。さらに、このような構成において、磁石体36の磁力を、実施例1および2の場合よりも低い20mTとした。
【0091】
このような構成の現像装置30Yにおいて、
図6に示す現像条件A、B、Cのそれぞれで記録シートS上にトナー画像を形成して、目視により、それぞれのトナー画像の濃度傾斜の評価を行った。濃度傾斜の評価結果を
図7の表に示す。
図7に示すように、本実施例3では、現像条件A、B、Cのいずれの場合にも、全てのトナー画像において、濃度傾斜が目視で確認できない最適状態(◎)であった。従って、本実施例3でも、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石体36の磁力によって抑制されていると推測することができる。
【0092】
比較例として、
図5の表に示すように、磁石体36が設けられていないこと以外は、実施例1と同じ構成になった現像装置30Yにおいて、
図6に示す現像条件A、B、Cのそれぞれで記録シートS上にトナー画像を形成して、それぞれのトナー画像について、目視によって濃度傾斜の評価を行った。濃度傾斜の評価結果を
図7の表に示す。
図7の表に示すように、この比較例では、現像条件A、B、Cのいずれであっても、濃度傾斜が目視で確認され、しかも、それぞれの濃度傾斜は許容できない不適切状態(×)であった。従って、この比較例1では、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部における現像剤の搬送量が低下していると推測することができる。
【0093】
以上のように、本実施形態の現像装置30Yによって形成されるトナー画像に濃度傾斜が発生することを抑制できることが検証され、また、比較例では、トナー画像に濃度傾斜が発生することが検証された。このことから、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石体36の磁力によって抑制されて、現像装置30Yにおける現像剤の循環量がほぼ一定になっていると考えられる。
【0094】
なお、本実施形態においては、磁石体36は、撹拌搬送部材33の真下(直下)に配置する構成であったが、磁石体36の位置は、回転筒体33a内の下部のキャリアに対して重力方向に所定の磁力を作用させることができるのであれば、特に限定されない。
また、ハウジング31の外部に設けられた磁石体36は、撹拌搬送部材33の軸方向に沿って連続して設けられている必要はない。磁石体36の磁力によって、回転筒体33a内の下部のキャリアが回転筒体33aの回転による遠心力で回転筒体33aとともに上方へ移動することを規制できるのであれば、断続的に設けてもよい。
【0095】
[実施形態2]
<カラープリンター>
図8は、本実施形態2に係るカラープリンターの主要部の構成を説明するための模式図である。このカラープリンターでは、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれによって形成されたトナー画像が、直接、記録シートP上に転写されるように構成されている。このために、前記実施形態1のプリンターに設けられた中間転写ベルト18に替えて、記録シートPを担持して搬送するシート搬送ベルト41が設けられている。このシート搬送ベルト41は、
図8に矢印X1で示す方向(前記実施形態1における中間転写ベルト18の周回移動方向と同方向)に周回移動するように、
図8において左側の端部に配置された駆動ローラー17aと、
図8において右側の端部に配置された従動ローラー17bとに巻き掛けられている。
【0096】
シート搬送ベルト41における上側の走行部には、シート搬送ベルト41の下方に設けられた給紙カセット21からシート搬送経路23に繰り出される記録シートPが、タイミングローラー対24によって、シート搬送ベルト41の走行に同期した所定のタイミングで、従動ローラー17bに巻き掛けられた左側の端部へ搬送されて、上側の走行部に担持されて、その走行部と一体となって搬送される。
【0097】
シート搬送ベルト41における上側の走行部の上方には、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kが走行方向に沿って順番に設けられている。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは同様の構成になっている。
シート搬送ベルト41における上側の走行部の走行方向の最上流側に配置された画像形成ユニット10Yの下部には、矢印Z2で示す方向に回転する感光体ドラム11Yが、シート搬送ベルト41の上側の走行部に対向して設けられている。感光体ドラム11Yの回転方向Z2は、シート搬送ベルト41の上側の走行部との対向部分がその走行部と同方向になっている。
【0098】
感光体ドラム11Yの周囲には、シート搬送ベルト41に対向する部分に対して感光体ドラム11Yの回転方向下流側部分に、クリーニング部16Yが設けられており、このクリーニング部16Yから、感光体ドラム11Yの回転方向に沿って、帯電ローラー12Y、露光装置13Y、現像装置30Yが、順番に設けられている。
現像装置30Yは、感光体ドラム11Yの最上部に対向して配置されており、感光体ドラム11Yの最上部において、実施形態1の現像装置30Yと同様に、感光体ドラム11Y上に形成された静電潜像を、Yトナーによって現像する。
【0099】
他の各画像形成ユニット10M、10C、10Kのそれぞれも、感光体ドラム11M、11C、11Kの周囲に、帯電ローラー、露光装置、および、現像装置30Yと同様の構成になった現像装置30M、30C、30Kがそれぞれ設けられている。現像装置30M、30C、30Kのそれぞれは、感光体ドラム11M、11C、11Kの上部に対向して配置されており、感光体ドラム11M、11C、11K上に形成された静電潜像を、感光体ドラム11M、11C、11Kの最上部において、M、C、Kのトナーによってそれぞれ現像する。
【0100】
シート搬送ベルト41の周回移動域の内側には、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれとはシート搬送ベルト41を挟んで対向する転写ローラー42Y、42M、42C、42Kが設けられている。各転写ローラー42Y、42M、42C、42Kのそれぞれは、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上に形成されたそれぞれのトナー画像を、記録シートPの搬送タイミングに合わせて、シート搬送ベルト41によって搬送される1枚の記録シートPの同一領域上に順番に転写する。
【0101】
シート搬送ベルト41の上側の走行部によって搬送される記録シートPは、シート搬送ベルト41に対して、上側の走行部の走行方向下流側の側方(
図8において左側の側方)に配置された定着装置25へ搬送される。記録シートP上のトナー画像は、定着装置25における加熱ローラー25aと加圧ローラー25bとの間に形成された定着ニップFNを通過する間に、記録シートPに定着される。トナー画像が定着された記録シートPは、排紙ローラー26によって排紙トレイ29上に排出される。
【0102】
<現像装置の構成>
図9は、画像形成ユニット10Yに設けられた現像装置30Yの構成を説明するための横断面模式図である。現像装置30Yは、前記実施形態1の現像装置30Yと同様に、2成分現像剤が収容されたハウジング31を有しており、ハウジング31内の上部に撹拌搬送部材33が設けられ、ハウジング31の下部に現像ローラー34が設けられている。
【0103】
ハウジング31の下部には、下方の感光体ドラム11Yに対向して開口部31aが設けられており、開口部31a内に、現像ローラー34が感光体ドラム11Yに沿って配置されている。ハウジング31内の上部には、撹拌搬送部材33が現像ローラー34とは一定の間隔をあけた状態で、現像ローラー34に沿って設けられている。ハウジング31の上部は、ハウジング31内の撹拌搬送部材33の上部を、一定の間隔をあけて覆う周壁部31cになっている。
【0104】
撹拌搬送部材33の構成は、ハウジング31内の上部に配置されていること以外は、前記実施形態1の撹拌搬送部材33と同様になっており、従って、回転筒体33aの外周面に6条の外部螺旋羽根33bが設けられ、回転筒体33aの内周面に2条の内部螺旋羽根33cが設けられている。撹拌搬送部材33は、
図9に矢印Eで示す方向に回転されるようになっている。
【0105】
現像ローラー34も、ハウジング31の下部において感光体ドラム11Yに対向した状態で開口部31a内に配置されたこと以外は、前記実施形態1の現像ローラー34と同様になっており、現像スリーブ34aが、
図9に矢印Fで示す方向に回転されるようになっている。
ハウジング31の下部には、現像スリーブ34a上を搬送される現像剤量を規制する規制部材35が現像スリーブ34aに沿って設けられている。規制部材35は、現像スリーブ34aと感光体ドラム11Yとの対向部分に対して現像スリーブ34aの回転方向の上流側に配置されており、現像スリーブ34aとは一定の間隔が形成されている。
【0106】
現像ローラー34の磁石ローラー34bは、撹拌搬送部材33に近接した上部以外の部分に、前記実施形態1と同様に、5つの磁極(第2N極N2、第1S極S1、第1N極N1、第2S極S2、第3N極N3)が、周方向に間隔をあけて配置されている。
磁石ローラー34bに設けられた第1N極N1(主極)は、磁石ローラー34bが感光体ドラム11Yに対して最も近接した位置に配置されている。第1N極N1(主極)の磁力は、実施形態1と同様に、100mTになっている。
【0107】
第1N極N1(主極)に対して現像スリーブ34aの回転方向上流側に配置された第1S極S1は、規制部材35に対して現像スリーブ34aの回転方向下流側に位置しており、従って、ハウジング31の外部に位置している。
第1S極S1に対して現像スリーブ34aの回転方向上流側に配置された第2N極N2は、規制部材35に対して現像スリーブ34aの回転方向上流側であるハウジング31内において、撹拌搬送部材33の下部に近接して配置されている。この第2N極N2は、上方に配置された撹拌搬送部材33内のキャリアに対して重力方向に所定の磁力を作用させる磁力発生手段を兼用している。
【0108】
第2N極N2の磁力は、撹拌搬送部材33の回転筒体33aが予め設定された速度で回転した場合に、回転筒体33a内のキャリアが、回転筒体33aの遠心力によって回転筒体33aとともに上方へ移動することが抑止されるように設定されている。本実施形態2では、第2N極N2の磁力は、前記実施形態1よりも大きな50〜60mTの範囲の値になっている。
【0109】
第1N極N1(主極)に対して現像スリーブ34aの回転方向下流側には第2S極S2が設けられており、第2S極S2に対して現像スリーブ34aの回転方向下流側に第3N極N3が設けられている。
ハウジング31の上部の周壁部31cの外側面には、撹拌搬送部材33の軸方向の中央部に対向して、トナー濃度センサー38が設けられている。
【0110】
本実施形態2では、前記実施形態1の現像装置30Yにおいてハウジング31の外側面に設けられた磁石体36は設けられていない。しかし、撹拌搬送部材33の下方に配置された磁石ローラー34bの第2N極N2が、実施形態1の磁石体36の1つの磁極と同様の機能を有している。
他の各画像形成ユニット10M、10C、10Kに設けられた現像装置30M、30C、30Kのそれぞれも、現像装置30Yと同様の構成になっており、従って、現像ローラー34の磁石ローラー34bにおける第2N極N2が、撹拌搬送部材33の下方に位置しており、第2N極N2の磁力が、撹拌搬送部材33における回転筒体33a内のキャリアに対して重力方向に作用するようになっている。
【0111】
<現像装置の動作>
本実施形態の現像装置30Yでは、撹拌搬送部材33の回転筒体33a内に流入口33sから流入した2成分現像剤が、回転筒体33aの内周面に設けられた2条の内部螺旋羽根33cによって、回転筒体33aにおける流出口33tが設けられた背面側の端部へ向かって撹拌および混合されつつ搬送される間に、撹拌搬送部材33の下方に設けられた現像ローラー34における磁石ローラー34bの第2N極N2の磁力が、回転筒体33aの底部のキャリアに作用する。
【0112】
従って、回転筒体33aが所定の速度で回転して、回転筒体33a内の現像剤に遠心力が作用した場合にも、前記実施形態1と同様に、回転筒体33a内の底部のキャリアに第2N極N2の磁力および重力が作用することによって、回転筒体33aとともに上方へ移動することが抑止される。これにより、回転筒体33a内の現像剤(キャリアおよびトナー)は、回転筒体33aの下部に位置されて、回転筒体33aとともに回転する内部螺旋羽根33cによって背面側の流出口33tへ向けて搬送される。
【0113】
このように、現像剤は、回転筒体33aの内部を、ほぼ一定の搬送量を維持して、流出口33tが設けられた背面側の端部へ搬送されるために、前記実施形態1と同様に、ハウジング31内を、ほぼ一定の循環量で現像剤を循環させることができる。その結果、感光体ドラム11Y上に形成されるトナー画像に、正面側端部に対応する部分のトナー濃度が背面側端部に対応する部分のトナー濃度よりも大きく低下した濃度傾斜が生じることを抑制することができる。
【0114】
他の現像装置30M、30C、30Kも、現像装置30Yと同様の構成であって同様に動作する。従って、感光体ドラム11M、11C、11Kのそれぞれに形成されるトナー画像には、各感光体ドラム11M、11C、11Kの正面側端部に対応する部分のトナー濃度が、背面側端部に対応する部分のトナー濃度よりも大きく低下した濃度傾斜が発生することを抑制することができる。
【0115】
<実施例>
次に、本実施形態2のカラープリンターの現像装置30Yにおいて、現像剤の循環量がほぼ一定になっていることにより、感光体ドラム11Y上に形成されるトナー画像に濃度傾斜が発生することを抑制できることを、実施例4〜5によって検証した。以下、実施例4〜5について説明する。
【0116】
実施例4では、本実施形態2における現像装置30Yを、
図10の表に示す条件の構成とした。すなわち、撹拌搬送部材33は、実施例1と同様に、2条の内部螺旋羽根33cが設けられた回転筒体33aの内径を17mm、回転筒体33aの厚みを1.5mm、6条の外部螺旋羽根33bの高さを2mmとした。内周面に2条の内部螺旋羽根33cが設けられた回転筒体33aの軸心部は空洞になっている。
【0117】
現像ローラー34は、磁石ローラー34bにおける第2N極N2が外部螺旋羽根33bに対して1.5mmの間隔になるように配置した。第2N極N2の磁力は、60mTとした。
このような構成の現像装置30Yにおいて、前記実施形態1における実施例1と同様に、
図6の表に示す現像条件A、B、Cで、30枚の記録シートS上にトナー画像を形成して、それぞれのトナー画像について、濃度傾斜の評価を行った。濃度傾斜の評価結果を
図11の表に示す。
【0118】
図11の表に示すように、本実施例4では、現像条件A、B、Cのいずれの場合も、全てのトナー画像において濃度傾斜が目視で確認できない最適状態(◎)であった。従って、本実施例4では、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石ローラー34bにおける第2N極N2の磁力によって抑制されていると推測することができる。
【0119】
次に、実施例5として、
図10の表に示すように、回転筒体33aの厚みを1mm、6条の外部螺旋羽根33bの高さを1.5mmとし、さらに、外部螺旋羽根33bと磁石ローラー34bとの距離を1mmとした。これにより、磁石ローラー34bの第2N極N2から回転筒体33aの内周面までの距離が、実施例4の場合よりも短くなっている。このような状態で、磁石ローラー34bにおける第2N極N2の磁力を、実施例4よりも低い50mTとした。
【0120】
このような構成の現像装置30Yにおいて、前記実施例4と同様に、
図6に示す現像条件A、B、Cのそれぞれで、30枚の記録シートS上にトナー画像を形成して、それぞれのトナー画像について、目視によって濃度傾斜の評価を行った。濃度傾斜の評価結果を
図11の表に示す。
図11の表に示すように、本実施例5でも、現像条件A、B、Cのいずれの場合にも、全てのトナー画像において濃度傾斜が目視で確認できない最適状態(◎)であった。従って、本実施例5でも、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石ローラー34bにおける第2N極N2の磁力によって抑制されていると推測することができる。
【0121】
以上のように、本実施形態2でも、現像装置30Yによって形成されるトナー画像に濃度傾斜が発生することを抑制できることが検証された。このことから、現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、磁石ローラー34bにおける第2N極N2の磁力によって抑制されて、現像装置30Yにおける現像剤の循環量がほぼ一定になっていると考えられる。
【0122】
[実施形態3]
<カラープリンター>
図12は、本実施形態3に係るカラープリンターの主要部の構成を説明するための模式図である。このカラープリンターでも、前記実施形態2と同様に、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれによって形成されたトナー画像が、直接、記録シートP上に転写されるように、シート搬送ベルト41が設けられている。
【0123】
シート搬送ベルト41は、正面側から見て右側の端部が、左側の端部よりも上側に位置するように傾斜して配置されている。シート搬送ベルト41は、上側に位置する右側の端部に配置された駆動ローラー17aと、下側に位置する左側の端部に配置された従動ローラー17bとに巻き掛けられている。
シート搬送ベルト41は、上側に位置する走行部分が、上側の端部に位置する駆動ローラー17aに向って矢印X2で示す方向に走行している。この上側の走行部には、下方の給紙カセット21からシート搬送経路23に繰り出された記録シートPが、タイミングローラー対24によって、シート搬送ベルト41の走行に同期した所定のタイミングで、シート搬送ベルト41における従動ローラー17bに巻き掛けられた下端部へ搬送されて、上側の走行部に担持されて、その走行部と一体となって搬送される。
【0124】
シート搬送ベルト41における上側の走行部の上方には、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kが走行方向に沿って順番に設けられている。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、ほぼ同様の構成になっている。
シート搬送ベルト41における上側の走行部の最も上流側(シート搬送ベルト41の下端部の近接位置)に配置された画像形成ユニット10Yには、矢印Z3で示す方向に回転する感光体ドラム11Yが設けられている。従って、感光体ドラム11Yは、シート搬送ベルト41に対向して配置されており、シート搬送ベルト41および感光体ドラム11Yにおける相互に対向する部分同士が同方向に移動している。
【0125】
感光体ドラム11Yの周囲には、シート搬送ベルト41に対向する部分から感光体ドラム11Yの最上部にかけて、感光体ドラム11Yの回転方向に沿って、クリーニング部16Y、帯電ローラー12Y、露光装置13Yが、順番に設けられている。さらに、感光体ドラム11Yにおける最上部よりも回転方向下流側に位置する上部に対向して、現像装置30Yが設けられている。
【0126】
現像装置30Yは、実施形態1の現像装置30Yとほぼ同様の構成になっており、2成分現像剤が収容されたハウジング31と、感光体ドラム11Yに対向して配置された現像ローラー34と、ハウジング31内において現像ローラー34に対して感光体ドラム11Yとは反対側に配置された撹拌搬送部材33とを有している。
他の画像形成ユニット10M、10C、10Kも、画像形成ユニット10Yとほぼ同様の構成になっており、それぞれが、矢印Z3で示す方向に回転する感光体ドラム11M、11C、11Kと、その周囲に、帯電ローラー、露光装置、および、現像装置30Yとほぼ同様の構成になった現像装置30M、30C、30Kがそれぞれ設けられている。
【0127】
現像装置30M、30C、30Kのそれぞれも、感光体ドラム11M、11C、11Kにおける最上部よりも回転方向下流側に位置する上部に対向して配置されており、ハウジング31内において感光体ドラム11M、11C、11Kに対向して配置された現像ローラー34と、ハウジング31内において現像ローラー34に対して感光体ドラム11M、11C、11Kとは反対側に配置された撹拌搬送部材33とを有している。
【0128】
この場合、シート搬送ベルト41による記録シートPの搬送方向に沿って相互に隣接して配置された画像形成ユニット10Yおよび画像形成ユニット10Mは、画像形成ユニット10Mの現像装置30Mにおける撹拌搬送部材33が、画像形成ユニット10Yの現像装置30Yにおける現像ローラー34に近接するように、感光体ドラム11Yの上方に配置されている。
【0129】
同様に、シート搬送ベルト41による記録シートPの搬送方向に沿って隣接して配置された画像形成ユニット10Mおよび画像形成ユニット10Cは、画像形成ユニット10Cの現像装置30Cにおける撹拌搬送部材33が、画像形成ユニット10Mの現像装置30Mにおける現像ローラー34に近接するように、感光体ドラム11Mの上方に配置されている。
【0130】
さらに同様に、シート搬送ベルト41による記録シートPの搬送方向に沿って隣接して配置された画像形成ユニット10Cおよび画像形成ユニット10Kは、画像形成ユニット10Kの現像装置30Kにおける撹拌搬送部材33が、画像形成ユニット10Cの現像装置30Cにおける現像ローラー34に近接するように、感光体ドラム11Cの上方に配置されている。
【0131】
シート搬送ベルト41の周回移動域の内部には、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kのそれぞれと対向する転写ローラー42Y、42M、42C、42Kが設けられている。各転写ローラー42Y、42M、42C、42Kのそれぞれは、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上に形成されたそれぞれのトナー画像を、記録シートPの搬送タイミングに合わせて、シート搬送ベルト41によって搬送される1枚の記録シートPの同一領域上に順番に転写する。
【0132】
シート搬送ベルト41の上側の走行部によって搬送される記録シートPは、シート搬送ベルト41の上側の端部の上方に配置された定着装置25へ搬送される。記録シートP上のトナー画像は、定着装置25における加熱ローラー25aと加圧ローラー25bとの間に形成された定着ニップFNを通過する間に、記録シートPに定着される。トナー画像が定着された記録シートPは、排紙ローラー26によって、排紙トレイ29上に排出される。
【0133】
<現像装置の構成>
図13は、シート搬送ベルト41による記録シートSの搬送方向に沿って隣接して配置された画像形成ユニット10Yの現像装置30Yおよび画像形成ユニット10Mの現像装置30Mの構成を説明するための断面図である。
記録シートSの搬送方向上流側に配置された現像装置30Yは、感光体ドラム11Yの最上部よりも回転方向下流側に位置する上部に対向してハウジング31の開口部31aが形成されており、この開口部31a内に、現像ローラー34が感光体ドラム11Yに沿って配置されている。現像ローラー34は、現像スリーブ34a内に配置された磁石ローラー34bの磁極の位置が、実施形態1における現像装置30Y磁石ローラー34bの磁極と若干異なること以外は、同様の構成になっている。
【0134】
現像装置30Yでは、ハウジング31の内部に配置された撹拌搬送部材33が、現像ローラー34に対して、実施形態1の現像装置30Yにおける撹拌搬送部材33よりも上方に位置している。ハウジング31の周壁部31cは、開口部31aの下側の側縁から撹拌搬送部材33の下側に位置する部分にかけて、実施形態1よりも小さな傾斜角度になっている。また、上壁部31dはほぼ水平状態になっており、開口部31a側に位置する側縁部の上側の側縁部に規制部材35が設けられている。
【0135】
現像装置30Yには、実施形態1と同様に、ハウジング31における周壁部31cの下部の外側面に磁石体36が設けられている。この磁石体36は、実施形態1の磁石体36と同様に、所定の速度で回転する回転筒体33a内の底部のキャリアが、遠心力によって回転筒体33aとともに上方へ移動することを抑止する。
なお、現像装置30Yには、前記実施形態1と同様に、トナー濃度センサー38が設けられている。
【0136】
他の画像形成ユニット10M、10C、10Kのそれぞれに設けられた現像装置30M、30C、30Kは、磁石体36が設けられていないこと以外は、現像装置30Yと同様の構成になっている。
現像装置30Yでは、現像ローラー34の磁石ローラー34bは、規制部材35に対して現像スリーフ34aの回転方向上流側に位置する上部に、現像剤のキャリアを引き付ける第2N極N2が設けられている。
【0137】
第2N極N2に対して現像スリーフ34aの回転方向下流側に設けられた第1S極S1は、規制部材35に対して現像スリーフ34aの回転方向下流側に位置しており、画像形成ユニット10Yの感光体ドラム11Yの上方に配置された画像形成ユニット10Mの現像装置30Mにおける撹拌搬送部材33の下部に近接している。第1S極S1は、現像装置30Mの撹拌搬送部材33における回転筒体33a内に位置するキャリアに対して重力方向に磁力を作用させる磁力発生手段を兼用している。
【0138】
この第1S極S1の磁力は、現像装置30Mにおける撹拌搬送部材33が、所定の速度で回転する場合に、回転筒体33a内の底部のキャリアが、遠心力によって回転筒体33aとともに上方へ移動することを抑止できるように設定されている。このために、現像装置30Yにおける磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力は、実施形態1における現像装置30Yの磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力(=40mT)よりも大きく、例えば50mTになっている。
【0139】
第1S極S1に対して現像スリーフ34aの回転方向下流側に配置された第1N極N1(主極)は、磁石ローラー34bが感光体ドラム11Yに対して最も近接した位置に設けられており、第1N極N1(主極)に対して現像スリーブ34aの回転方向下流側には第2S極S2が設けられており、第2S極S2に対して現像スリーブ34aの回転方向下流側に第3N極N3が設けられている。
【0140】
現像装置30M、30C、30Kのそれぞれも同様であり、現像装置30Mにおける磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力が、現像装置30Cの撹拌搬送部材33における回転筒体33a内の底部に位置するキャリアに対して重力方向に作用する磁力発生手段を兼用し、現像装置30Cにおける磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力が、現像装置30Kの撹拌搬送部材33における回転筒体33a内の底部に位置するキャリアに対して重力方向に作用する磁力発生手段を兼用している。
【0141】
<現像装置の動作>
本実施形態3において、記録シートSの搬送方向の最上流部に配置された現像装置30Yは、前記実施形態1の現像装置30Yと同様であり、従って、撹拌搬送部材33の回転筒体33aが所定の速度で回転されて、回転筒体33a内の底部のキャリアに遠心力が作用しても、ハウジング31における周壁部31cの下部外面に設けられた磁石体36の磁力により、回転筒体33a内の底部のキャリアが回転筒体33aとともに上方に移動することが抑止される。
【0142】
また、隣接する画像形成ユニット同士では、下側に位置する現像装置の磁石ローラー34bの第1S極S1が、上側に位置する回転筒体33a内のキャリアを重力方向に引き付ける作用を有する構成になっている。
すなわち、画像形成ユニット10Yに対して、記録シートSの搬送方向下流側に隣接して配置された画像形成ユニット10Mの現像装置30Mでは、撹拌搬送部材33の回転筒体33a内の底部のキャリアに対して、画像形成ユニット10Yの現像装置30Yにおける磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力が重力方向に作用して、回転筒体33a内の底部のキャリアが回転筒体33aとともに上方に移動することが抑止される。
【0143】
同様に、画像形成ユニット10Cの現像装置30Cでは、回転筒体33a内の底部のキャリアが、遠心力によって、回転筒体33aとともに上方に移動することが、現像装置30Mにおける磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力によって抑止され、画像形成ユニット10Kの現像装置30Kでは、回転筒体33a内の底部のキャリアが、遠心力によって回転筒体33aとともに上方に移動することが、現像装置30Cにおける磁石ローラー34bの第1S極S1の磁力によって抑止される。
【0144】
以上のように、本実施形態3のカラープリンターでは、現像装置30Y、30M、30C、30Kのそれぞれにおいて、現像動作の実行時に、撹拌搬送部材33の回転筒体33a内の底部のキャリアが、遠心力によって回転筒体33aとともに上方に移動することが抑止されるために、それぞれの回転筒体33a内を搬送される現像剤の搬送量が低下するおそれがない。これにより、ハウジング31内における現像剤の循環量が低下することが抑制されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kのそれぞれに形成されるトナー画像に濃度傾斜が生じることが抑制される。
【0145】
<実施例>
次に、本実施形態3のカラープリンターにおいて、画像形成ユニット10Yに対して記録シートSの搬送方向の下流側に隣接して配置された画像形成ユニット10Mの現像装置30Mにおいて、現像剤の循環量がほぼ一定になっていることにより、感光体ドラム11M上に形成されるトナー画像に濃度傾斜が発生することを抑制できることを、実施例6によって検証した。以下、実施例6について説明する。
【0146】
実施例6では、現像装置30Mに対して記録シートSの搬送方向の上流側に配置された現像装置30Yを、
図14の表に示す条件の構成とした。すなわち、撹拌搬送部材33は、実施例1と同様に、回転筒体33aの内周面に2条の内部螺旋羽根33cが設けられており、回転筒体33aの軸心部は空洞になっている。回転筒体33aは、内径を17mm、厚みを1mmとし、6条の外部螺旋羽根33bの高さを1.5mmとした。また、現像ローラー34の磁石ローラー34bにおける第1S極S1の磁力を50mTとしている。
【0147】
現像装置30Yに対して記録シートSの搬送方向の下流側に配置された現像装置30Mは、現像装置30Yと同様に、
図14の表に示す条件の構成とし、ハウジング31の周壁部31cが、現像装置30Yの現像ローラー34における磁石ローラー34bの第1S極S1との距離が5mmになるように配置した。
このような構成の現像装置30Mにおいて、
図6の表に示す現像条件A、B、Cで、実施例1と同様にして、30枚の記録シートS上にトナー画像を形成して、それぞれのトナー画像における濃度傾斜の評価を行った。濃度傾斜の評価結果を
図15の表に示す。
【0148】
図15の表に示すように、本実施例6では、現像条件Bでは、全てのトナー画像に濃度傾斜が目視で確認できない最適状態(◎)であった。また、現像条件AおよびCでは、濃度傾斜が目視で確認できるトナー画像があったが、その濃度傾斜は許容できるために適切状態(○)であった。
本実施例6では、現像条件Aのように、キャリアの磁化が小さくなると、磁石ローラー34bにおける第1S極S1によるキャリアを引き付ける力が弱まるために、撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量は若干低下していると考えられる。また、現像条件Cのように、トナー濃度が増加することによってもキャリアに作用する磁力が低下するために、撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量は若干低下していると考えられる。しかし、いずれの場合にも、撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が抑制されており、トナー画像の濃度傾斜は適切状態であった。
【0149】
以上のように、本実施形態3でも、現像装置30Mによって形成されるトナー画像に濃度傾斜が発生することが抑制されることが検証された。このことから、現像装置30Mにおける撹拌搬送部材33の内部での現像剤の搬送量の低下が、現像装置30Yにおける現像ローラー34の磁石ローラー34bに設けられた第1S極S1の磁力によって抑制されて、現像装置30Mにおける現像剤の循環量がほぼ一定になっていると考えられる。
【0150】
[変形例]
上記各実施形態において、回転筒体33aの内周面に内部螺旋羽根33aを設ける構成としたが、このような構成に限らず、回転筒体33aの内部に、回転軸の外周面に螺旋羽根が設けられた搬送スクリューを設ける構成としてもよい。この場合には、回転筒体33aの軸心に沿って回転軸が配置されて、螺旋羽根の外周縁が、回転筒体33aの内周面に近接した状態とされる。
【0151】
また、本発明に係る現像装置を有する画像形成装置は、タンデム型カラープリンターに限るものではなく、モノクロ画像を形成するプリンターであってもよい。また、プリンターに限らず、カラーまたはモノクロの画像を形成できる複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等にも適用できる。