特許第6011178号(P6011178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6011178-回路遮断器の投入操作機構 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011178
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】回路遮断器の投入操作機構
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/46 20060101AFI20161006BHJP
   H01H 33/50 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01H33/46 A
   H01H33/50
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-199133(P2012-199133)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-56644(P2014-56644A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】野尻 尚
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−009126(JP,A)
【文献】 特開平11−040016(JP,A)
【文献】 実開平04−088638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/46
H01H 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主接点に連結して開閉軸の軸上に設けた変換レバーに対し、駆動軸を介して蓄勢する投入スプリング、前記駆動軸の軸上に設けた投入カム、投入ラッチ、および投入ボタンを連係配備し、前記投入スプリングを蓄勢した状態で、投入ボタンの操作により投入スプリングを放勢して変換レバーを投入位置に駆動するようにした回路遮断器の投入操作機構において、
投入ボタンの誤操作による再投入動作を防止するインターロック手段として、前記変換レバーの側面に添わせて傾動式のストッパ片を付設し、該ストッパ片の先端を前記投入ラッチと連動する投入レバーの押し当て片を挟んで投入ボタンの操作ロッドと対向する位置に配置するとともに、前記ストッパ片は、その後端を変換レバーの側面に軸支し、かつ復帰ばねによりインターロック位置に向けてばね付勢するとともに、該ストッパ片の側縁に対向して変換レバー側には、投入待機状態でストッパ片の先端を投入レバーの押し当て片から外れた位置に保持する係止段部を設けたことを特徴とする回路遮断器の投入操作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速度再投入形の真空遮断器を対象とした回路遮断器の投入操作機構に関し、詳しくは手動投入ボタンの誤操作による遮断器の再投入動作を防止するインターロック構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
頭記した真空遮断器の投入操作機構として、真空バルブの可動接点に絶縁ロッドを介して連結した変換レバーに、駆動軸を介して電動機,手動ハンドルなどで蓄勢する投入スプリング、前記駆動軸の軸上に設けた投入カム、投入ラッチ、および投入ボタンを連係配備し、主接点の遮断(開極)状態で前記投入スプリングを蓄勢し、投入ボタンの操作により投入スプリングを放勢して変換レバーを投入位置に駆動するようにした投入操作機構が公知である(例えば、特許文献1の図16図17参照)。
【0003】
一方、高速度再投入形の真空遮断器においては、所定の動作責務を確保するために、主接点の閉路状態では次回の遮断器動作(遮断→投入)に備えて投入スプリングを蓄勢して投入待機状態を形成するようにしており、この投入待機状態では投入ボタンによる再投入操作が可能である。ところで、遮断器の閉路時に投入ボタンを操作すると、蓄勢状態にある投入スプリングが無負荷状態で放勢されるので、その放勢動作に伴い操作機構のリンクやピンなどに過大な荷重が加わって損傷を起こすおそれがある。
【0004】
このために、従来の真空遮断器では、主接点の閉路時に投入ボタンを誤って操作しようとしても、再投入動作が起きないように投入ボタンをインターロックする手段を備えており、このインターロック機構として、前記特許文献1の図1図2図5に示す実施例に開示されている操作機構では、押ボタン式の投入ボタン(12)に対向して投入レバー(11)の背後に出没するストッパ片(26)を配備して支持部材(28)に保持するとともに、このストッパ片(26)を引っ張りコイルばねの連結部材(29)を介して変換レバー(15)に連繋し、真空バルブ(17)の閉極時には変換レバー(15)に連動するストッパ片(26)を投入レバー11の背後に突き出して投入ボタン12の押込み操作,および投入スプリング(4)の放勢を阻止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−237556号公報(図1図2図5図16図17参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、先記の特許文献1に開示されている投入ボタンのインターロック構造では次記のよう課題がある。すなわち
(1)ストッパ片(26)と変換レバー15との間を引っ張りコイルばねの連結部材(29)を介して連係した構造では、遮断器の繰り返し開閉動作で引っ張りコイルばねのフック部が疲労して折損し易く、この折損の発生により投入ボタンのインターロック機能が働かなくなって遮断器の投入操作に支障を来すおそれがある。
(2)そのほか、前記ストッパ片(26),該ストッパ片を回動自在に支える支持部材(28)、および引っ張りコイルばねの保持部材(29)を上下に並べて投入ボタン(12)と変換レバー(15)との間の空間に介在配置させているために、部品点数,占有スペースの高さが増大して操作機構の小型,コンパクト化が困難となる問題もある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決して故障発生に対する信頼性の向上、および占有スペースの高さを縮減して機構の小型,コンパクト化が図れるように改良した回路遮断器の投入操作機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、主接点に連結して開閉軸の軸上に設けた変換レバーに対し、駆動軸を介して蓄勢する投入スプリング、前記駆動軸の軸上に設けた投入カム、投入ラッチ、および投入ボタンを連係配備し、前記投入スプリングを蓄勢した状態で、投入ボタンの操作により投入スプリングを放勢して変換レバーを投入位置に駆動するようにした回路遮断器の投入操作機構において、
投入ボタンの誤操作による再投入動作を防止するインターロック手段として、前記変換レバーの側面に添わせて傾動式のストッパ片を付設し、該ストッパ片の先端を前記投入ラッチと連動する投入レバーの押し当て片を挟んで投入ボタンの操作ロッドと対向する位置に配置するとともに、前記ストッパ片は、その後端を変換レバーの側面に軸支し、かつ復帰ばねによりインターロック位置に向けてばね付勢するとともに、該ストッパ片の側縁に対向して変換レバー側には、投入待機状態でストッパ片の先端を投入レバーの押し当て片から外れた位置に保持する係止段部を設けるようにする(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、投入ボタンにインターロックするストッパ片を、変換レバーの側面に添わせて軸支直結したので、先記特許文献1のように折損し易い引っ張りコイルばねの保持部材が必要なく、これにより少ない部品点数と簡素な組立構造で故障発生が少ない高信頼性のインターロック機構を実現できる。
【0011】
しかも、ストッパ片を変換レバーの幅範囲内でその側面に配置したので、特許文献1の操作機構のように変換レバーと切り離してその上方に位置する投入ボタンとの間の空間に配置した従来構造と比べて操作機構の高さを縮減して遮断器操作機構の小型,コンパクト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】真空遮断器に適用した本発明の実施例による投入操作機構の構成図であり、遮断器の投入操作後に投入スプリングが蓄勢され、かつ投入ボタンとストッパ片とがインターロックされた状態を表す図である。
図2図1の状態から遮断器の引き外し動作で主接点が開極した投入操作前の投入待機状態を表す図である。
図3図2の投入待機状態から投入ボタンを押して投入ラッチの係合を外した投入操作開始直後の状態を表す図である。
図4図3状態から投入スプリングが放勢して主接点が閉極した直後で、投入ボタンが未だ押されている状態を表す図である。
図5図4の状態から投入ボタンが戻り、これに連動して投入レバー,投入ラッチが復帰した状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1図5に示す実施例に基づいて説明する。
各図において、1は真空遮断器の真空バルブ、1aは固定接触子、1bは可動接触子、2は連結棒3を介して前記可動接触子1bに連結した変換レバー、4は開閉軸、5は投入スプリング(引っ張りコイルばね)、6は電動機、手動ハンドルなどに連結して投入スプリング5を蓄勢する駆動軸、7は駆動軸6の軸上に設けて後記する投入ラッチに対向させたレバーアーム、8は投入カム、9は投入ボタン、10は前記レバーアーム7の先端に設けたラッチローラ7aに対向して配置した投入ラッチ、11は投入ラッチ10に連動する投入レバー、12は本発明により変換レバー2に設けた再投入防止用のストッパ片であり、これら部品で先記した特許文献1と同様な機能を備えた投入操作機構を構成している。
【0014】
次に、前記の投入操作機構を構成している各部品の構造を補足説明する。
まず、変換レバー2は開閉軸4の軸上に結合してその一端側に真空バルブ1が連結されており、該開閉軸4を挟んで真空バルブ1と反対側には先記の投入カム6に対向する投入ローラ2aを備えている。なお、図示してないが変換レバー2の先端側には引き外し機構が連係配置されている。
【0015】
投入スプリング5は、その引っ張りコイルばねの一端(上端)がフレームに固定され、他端が前記駆動軸6の軸上に設けたクランクアーム(不図示)の先端に結合されている。
投入ボタン9は、操作ロッド9aをU字形のガイドフレーム9bに嵌挿して変換レバー2の側方に配置されている。なお、9cは復帰ばねである。
【0016】
投入ラッチ10は、投入レバー11と連結して支軸10aに揺動可能に軸支し、復帰ばね10b(捩じりコイルばね)を介して反時計方向に付勢されている。また、投入レバー11は下方に延在し、その先端部にはL形に屈曲形成した押し当て片11aを投入ボタンの操作ロッド9aの先端に向けて対峙させている。
【0017】
一方、ストッパ片12は短冊状の板で、その後端部が変換レバー2の側面(開閉軸4の近傍位置)に軸支され、復帰ばね12a(捩じりコイルばね)を介して時計方向に押圧付勢されている。また、このストッパ片12の後端部の側縁に対向して変換レバー2に係止段部2bを形成し、該係止段部2bでストッパ片12の先端が前記投入ボタン9の操作ロッド9aに向けて延在するように担持しており、図1に示した主接点の閉極状態では、ストッパ片12と、開閉軸4,および投入ボタン9の操作ロッド9aが一直線上に並ぶように配置されている。
【0018】
次に、前記構成になる投入操作機構の動作について説明する。まず、真空バルブ1の主接点が開極し、かつ投入スプリング5が蓄勢されている図2の投入待機状態では、駆動軸6に結合したレバーアーム7のラッチローラ7aが投入ラッチ10の先端に当たって投入スプリング5が蓄勢状態に保持されている。
【0019】
この投入待機状態で、次に投入ボタン9を手動で押込み操作すると、投入ボタン9の操作ロッド9aが投入レバー11の押し当て片11aを押し、これにより投入ラッチ10とラッチローラ7aとの係合が外れて、いままで蓄勢されていた投入スプリング5の拘束が釈放される(図3参照)。
【0020】
これにより、投入スプリング5が放勢し、その放勢ばね力を受けて駆動軸6と一緒に投入カム8が時計方向に180°回転し、その回転途上で投入カム8が変換レバー2の投入ローラ2aを下方に押す。その結果、変換レバー2は開閉軸4を支点に時計方向に回動して真空バルブ1の主接点が閉極する(図4参照)。なお、変換レバー図4の閉極位置に傾動すると、変換レバーは図示されてない別ラッチ機構によりこの閉極位置に拘束保持される。
【0021】
また、図4の投入状態では、投入ボタン9の押込み操作により投入レバー11はその上端側の支軸10aを支点に時計方向に回動し、この回動に伴い投入レバー11の押し当て片11aがストッパ片12を復帰ばね12aに抗して上方に押し上げる。したがって、ストッパ片12は、その先端が投入ボタン9の操作ロッド9aから上方側に逸れるようになるので、投入ボタン9の押込み操作が阻害されることはない。
【0022】
続いて、投入ボタン9から手を離すと、図5で示すように操作ロッド9aが復帰ばね9cに押されて後退し、これに伴って投入レバー11,投入ラッチ10も元の位置に復帰するとともに、いままで図4の位置に押し上げられていたストッパ片12が復帰ばね12aのばね力で時計方向回動して投入レバー11の押し当て片11aの背後に移動し、かつ変換レバー2の係止段部2bに当たってこの位置に係止保持される。これにより、投入ボタン9の操作ロッド9a,投入レバー11の押し当て片11a,およびストッパ片12が図示のように開閉軸4を通る直線上に並んで、投入ボタン9とストッパ片12とがインターロックされた状態となる。
【0023】
そして、この図5の状態から駆動軸6を介して投入スプリング5を蓄勢すると、図1の状態に移行して投入ラッチ10の先端がラッチローラ7aに当たり、投入スプリング5は蓄勢状態に保持される。
【0024】
したがって、投入スプリング5が蓄勢された図1の投入状態で投入ボタ9を押し込もうとしても、その操作ロッド9aは投入レバー11の押し当て片11aを挟んでその背後に移動したストッパ片12が投入ボタン9の押込みを阻止する。これにより投入ボタン9の誤操作による回路遮断器の不要な再投入動作を防止できる。
【0025】
しかも、図示実施例の投入操作機構では、遮断器の遮断,投入操作に伴い揺動する変換レバー2の側面にストッパ片12に直接軸支してその先端を投入ボタン9の操作ロッド9aに対向させるようにしたので、先記した特許文献1のインターロック機構のように、別置の支持部材(28)に支持したストッパ片(26)と変換レバー(15)との間を折損し易い引っ張りコイルばねの保持部材(29)を介して連係する必要がなく、これにより少ない部品点数と簡素な組立構造で故障発生が少なくて信頼性の高いインターロック機構を実現できるほか、ストッパ片12を変換レバー2の幅範囲内でその側面に配置したので、特許文献1の構造と比べて操作機構の高さを縮減して遮断器操作機構の小型,コンパクト化が図れる。
【符号の説明】
【0026】
1 真空遮断器の真空バルブ
2 変換レバー
2a 投入ローラ
2b ストッパ片の係止段部
4 開閉軸
5 投入スプリング
6 駆動軸
7 レバー
7a ラッチローラ
8 投入カム
9 投入ボタン
9a 操作ロッド
10 投入ラッチ
11 投入レバー
11a 押し当て片
12 ストッパ片
12a 復帰ばね
図1
図2
図3
図4
図5