(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011189
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】書籍保護カバー及び該カバーが取り付けられた書籍並びに保護カバー付き書籍の製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 3/18 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
B42D3/18 K
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-204679(P2012-204679)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58117(P2014-58117A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】秋山 千明
(72)【発明者】
【氏名】橋田 智之
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 英明
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−151172(JP,U)
【文献】
特公昭49−13474(JP,B1)
【文献】
登録実用新案第3047325(JP,U)
【文献】
実開昭59−35067(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3052517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 2/00− 9/06
B42C 1/00−99/00
B42D 1/00−15/00
B42D 15/04−19/00
B65D 65/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性フィルムで構成される書籍保護カバーであって、前記書籍保護カバーは書籍の表表紙、裏表紙、背部を覆い、前記書籍保護カバーは前記表表紙の内側に折り返され、かつ、前記裏表紙の内側に折り返されていることを特徴とする書籍保護カバー。
【請求項2】
前記熱収縮性フィルムの厚さが20μm〜60μmである請求項1に記載の書籍保護カバー。
【請求項3】
前記熱収縮性フィルムがポリエステル系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムのいずれかからなる請求項1または2に記載の書籍保護カバー。
【請求項4】
前記書籍保護カバーは、前記表表紙の内側に折り返されている部分、および、前記裏表紙の内側に折り返されている部分において、袋状に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の書籍保護カバー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された書籍保護カバーが取り付けられた書籍。
【請求項6】
保護カバー付き書籍の製造方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載された書籍保護カバーを書籍に取り付ける工程と、前記書籍保護カバーを熱収縮させる工程とを有する保護カバー付き書籍の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍を熱収縮性フィルムでカバーすることによって保護する書籍保護カバー及び該カバーが取り付けられた書籍並びにその保護カバー付き書籍の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、本の立ち読み防止及び汚れ防止対策として、特に、コミック本についてはシュリンク包装を利用したブックカバーが使用されている。
【0003】
上記シュリンク包装に使用されるシュリンクフィルムは通常、透明であるため、カバーをかけても本の表表紙、背、裏表紙は一目でわかり、商品を探しやすいという利点があり、加えてバージン性を保証することができる。
【0004】
コミック本用のシュリンク包装は、筒状のシュリンクフィルム内に本を入れ、本の周囲(表表紙、背部、裏表紙、小口)をヒーティングガン等で加熱することにより、シュリンクフィルムを熱収縮させ、シュリンクフィルムを本に密着させる。
【0005】
また、本に表紙部分にシュリンクフィルムを被せて卓上シュリンク包装機に投入し、本の上縁および下縁に相当する部分のシュリンクフィルムをシールした後、カットし、内部に設けられたヒータによってシュリンクフィルムを熱収縮させ本に密着させる自動シュリンク包装装置も知られている(例えば特許文献1)。
【0006】
上記したシュリンク包装はいずれも本の外周(胴部)にシュリンクフィルムを密着させ本を開くことができないようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3067592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の書籍用シュリンク包装は、中身を開かずとも売れるようなコミック本には有効であるが、実用書、図鑑等の装丁本には適用することができないという問題がある。
【0009】
詳しくは、実用書を購入しようとする人は、必要とする技術内容がそこに掲載されているかどうかを確かめてから購入することが多く、コミック本のように本の周囲をシュリンクフィルムでカバーしてしまうと中身が分からないため敬遠されてしまう。
【0010】
また、図鑑については、掲載されている例えば、生物、岩石、乗り物、絵画等がいかに正確に表現されているかが購入の決め手になるため、やはり中身が見えないと敬遠されてしまう。
【0011】
このような事情から、実用書、図鑑等の装丁本についてはカバーをしないか、またはカバーをした場合には、中身を見たいという要望がある毎にカバーを取り外さなければならない。
【0012】
また、書店から出版社に返品する場合を想定すると、この種の本は、週刊誌とは異なり返品前の陳列期間が長いため、カバーがない状態で陳列され返品された場合には出版社側でカバー、帯を新品に交換した後、必要な書店に再版するという繁雑な作業が必要となる。
【0013】
本発明は以上のような従来の書籍保護カバーにおける課題を考慮してなされたものであり、中身を見せる必要のある実用書、図鑑等の装丁本を低コストで保護することができ、常にきれいな状態で書店に並べておくことができる書籍保護カバー及び該カバーが取り付けられた書籍並びにその保護カバー付き書籍の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、熱収縮性フィルムで構成される書籍保護カバーであって、前記書籍保護カバーは書籍の表表紙、裏表紙、背部を覆い、前記書籍保護カバーは前記表表紙の内側に折り返され、かつ、前記裏表紙の内側に折り返されている書籍保護カバーである。
【0015】
本発明において、前記熱収縮性フィルムの厚さは20μm〜60μmであることが好ましい。
【0016】
本発明において、前記熱収縮性フィルムはポリエステル系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムのいずれかから選択することができる。
【0017】
本発明において、前記書籍保護カバーは、前記表表紙の内側に折り返されている部分、および、前記裏表紙の内側に折り返されている部分において、袋状に形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記構成を有する書籍保護カバーが取り付けられた書籍を要旨とする。
【0019】
また、本発明は、保護カバー付き書籍の製造方法であって、上記構成を有する書籍保護カバーを書籍に取り付ける工程と、前記書籍保護カバーを熱収縮させる工程とを有する保護カバー付き書籍の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の書籍保護カバーによれば、本の中身を見ることができ、しかも低コストで本を保護することができる。
【0021】
本発明に係る書籍保護カバーが取り付けられた書籍によれば、返品された場合に書籍保護カバーだけを交換すればよく、出版社側でカバー、帯を新品に交換する必要がないという長所を有する。
【0022】
本発明の保護カバー付き書籍の製造方法によれば、簡単な方法で書籍を書籍保護カバーで包装することができるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る書籍保護カバーを示した斜視図である。
【
図2】本発明に係る書籍保護カバーを書籍に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る書籍保護カバー(以下保護カバーと略称する)を示した斜視図であり、書籍に被せる前の状態を示している。
【0026】
保護カバー1は、少なくとも一軸延伸されたシュリンク包装用のプラスチックフィルムから構成されており、本の表表紙部分を覆う表表紙カバー部2と、背部分を覆う背側カバー部3と、裏表紙部分を覆う裏表紙カバー部4と、表表紙カバー部2から折り返された表表紙折返し部5と、裏表紙カバー部4から折り返された裏表紙折返し部6とを有している。上記表表紙折返し部5及び上記裏表紙折返し部6はともに袋状に形成されている。
【0027】
また、表表紙折返し部5は熱シール(図中、記号×を付した部分)によって表表紙カバー部2の上縁および下縁に接着されており、裏表紙折返し部6もまた熱シールによって裏表紙カバー部4の上縁および下縁に接着されている。
【0028】
上記プラスチックフィルムとしてはポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系のいずれかのシュリンクフィルムを使用することができる。
【0029】
保護カバー1の厚さは20μm〜60μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30μm〜50μmである。
【0030】
プラスチックフィルムが薄いと破れ易く、また、厚すぎるとプラスチックフィルムの収縮応力が大きくなり、熱収縮後においてカバーを施した本の表紙に反りが発生する虞がある。
【0031】
保護カバー1の熱収縮率は、70℃の温湯中での主収縮方向(本の胴部を囲む方向)の熱収縮率が10〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。
【0032】
熱収縮率が小さすぎると本との間に緩みが生じて本に密着させることができない虞があり、また、大きすぎる場合には熱収縮後に表表紙、裏表紙に反りが発生する虞がある。
【0033】
図2は上記保護カバー1を包装対象となる本7に取り付けた状態を示す斜視図である。なお、本7における符号7aは表表紙、7bは背部、7cは裏表紙、7dは小口を示している。また、8は本7に付随している本カバーであり、8aは表表紙カバー見返し、8bは裏表紙カバー見返し、9は帯である。
【0034】
本7の保護カバー1との間には熱収縮率を見込んだ隙間が設けられており、包装対象の本の表紙幅をLとするとき、保護カバー1の横幅L′は1.01L〜1.3Lの範囲に設定される。
【0035】
また、包装対象の本の高さをHとするとき、保護カバー1の縦長さH′は1.01H〜1.15Hの範囲に設定される。
【0036】
保護カバー1が取り付けられた本7は、次に書籍包装用のシュリンク装置(図示しない)に投入される。このシュリンク装置は、保護カバー1を本7に取り付ける工程と、保護カバー1をヒータによって熱収縮させる工程とを経時的に実行するように構成されている。
【0037】
熱収縮工程によって保護カバー1が熱収縮すると、その保護カバー1は本7の表表紙7a、裏表紙7cに密着するが、小口7dについては包装の対象となっていないため、シュリンク包装を行った後でも本の中身を自由に見ることができる。
【0038】
なお、本7には通常、本カバー8、帯9が付装されているため、保護カバー1は表紙とともにこれらを含めて包装する。
【0039】
また、この保護カバー1には、簡単に取り外しができるように、例えば背側カバー部3にノッチを入れてもよく、また、縦方向にミシン目を入れることもできる。
【0040】
また、保護カバー1には例えば販売店名の文字やロゴ、装飾のための着色や図柄、分類のための記号等を印刷することができる。
【実施例】
【0041】
包装対象の本としてハリーポッター英語版を用意し、上記構成を有する保護カバー1の素材として下記に示す各シュリンクフィルムを使用した。
【0042】
【表1】
【0043】
保護カバー1の横幅L′は1.1Lとし、縦長さH′は1.03Hとした。
【0044】
保護カバー1を取り付けた本をシュリンク装置に投入し保護カバー1を熱収縮させ本の表紙に密着させた。
上記各シュリンクフィルムを用いて包装を行った結果、いずれもたるむことなく本の表紙を密着包装することができた。
【符号の説明】
【0045】
1 保護カバー
2 表表紙カバー部
3 背側カバー部
4 裏表紙カバー部
5 表表紙折返し部
6 裏表紙折返し部
7 本
7a 表表紙
7b 背部
7c 裏表紙
7d 小口
8 本カバー
8a 表表紙カバー見返し
8b 裏表紙カバー見返し
9 帯