(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記のように、走行レンジで自動変速機をインターロックしてエンジンのアイドルアップを行う場合、その後、運転者による制動要求が解除された際に、アイドルアップが停止されるのと同時に、所定摩擦要素に供給されている油圧が解放されてインターロックが解除され、変速機が1速の状態となるが、このとき、アイドルアップが停止されてもアイドルアップ回転数で回転していたエンジンはすぐに回転数が下がらないため、この制動要求が解除された直後に、大きなクリープ力のために車両が急発進するおそれがある。
【0010】
本発明は、エンジンと変速機構との間に流体伝動装置が配設され、エンジンの排気通路に触媒装置が配設された車両のパワートレインシステムにおいて、冷間始動時、触媒装置の活性化促進のため、自動変速機をインターロックすることにより、非走行レンジから走行レンジへの切換後もアイドルアップを継続して実行可能とすると共に、制動要求が解除された際の滑らかな発進を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るパワートレインシステムの制御方法及びパワートレインシステムは、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
エンジンと、
車両を発進させるために締結される発進用摩擦要素を含む複数の摩擦要素を
備えた変速機構及び該変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置を有する自動変速機と、を備えた車両のパワートレインシステムの制御方法であって、前記エンジンの排気経路上に触媒装置が配設されて
おり、
前記エンジンのアイドル運転時に、前記触媒装置が非活性状態にあるときは、活性状態にあるときに比べてアイドル回転数を高くするアイドルアップステップと、
前記アイドルアップステップの実施中において、運転者による前記車両に対する制動要求があり、かつ、前記自動変速機のレンジが走行レンジであるときに、前記変速機構における発進用摩擦要素以外の所定摩擦要素を締結することにより、該変速機構をインターロック状態とするインターロックステップと、
前記インターロックステップの実施中において制動要求が解除されたときに、前記アイドルアップステップによるアイドル回転数を高くする制御を終了すると共に、前記所定摩擦要素を解放することにより前記インターロック状態を解除するインターロック解除ステップと、を実施し、
前記インターロック解除ステップは、エンジン回転数の低下に応じて前記所定摩擦要素の締結力を低下させるように行う
ことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記インターロック解除ステップは、前記所定摩擦要素の締結油圧を解放直前の所定圧まで第1速度で低下させるステップと、
該ステップに連続して、前記所定圧から前記第1速度よりも遅い第2速度で前記所定摩擦要素の締結油圧を低下させるステップと、により構成される
ことを特徴とする。
【0014】
さらに、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、
前記インターロックステップは、
前記アイドルアップステップの実施中において、運転者による前記車両に対する制動要求があり、かつ、前記自動変速機のレンジが走行レンジであるときに加え、前記自動変速機のレンジが走行レンジとなる前の非走行レンジであるときにも、前記所定摩擦要素を締結することにより、前記変速機構をインターロック状態とするものである
ことを特徴とする。
【0015】
さらにまた、本願の請求項4に記載の発明は、
エンジンと、
車両を発進させるために締結される発進用摩擦要素を含む複数の摩擦要素を
備えた変速機構及び該変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置を有する自動変速機と、を備えた車両のパワートレインシステムであって、前記エンジンの排気経路上に触媒装置が配設されて
おり、
前記エンジンのアイドル運転時に、前記触媒装置が非活性状態にあるときは、活性状態にあるときに比べてアイドル回転数を高くするアイドルアップを実施し、
前記アイドルアップ中において、運転者による前記車両に対する制動要求があり、かつ、前記自動変速機のレンジが走行レンジであるときに、前記変速機構における発進用摩擦要素以外の所定摩擦要素を締結することにより、該変速機構をインターロック状態とし、
前記インターロック状態において、制動要求が解除されたときに、アイドル回転数を高くする制御を終了すると共に、前記所定摩擦要素を解放することにより前記インターロック状態を解除し、
前記インターロック状態の解除は、エンジン回転数の低下に応じて前記所定摩擦要素の締結力を低下させるように行うコントローラを備えた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成により、本願各請求項に係る発明によれば、次の効果が得られる。
【0017】
まず、請求項1に係る発明によれば、冷間始動時に、非走行レンジから走行レンジへ切り換えた後もアイドルアップを継続して実施するため、触媒装置の活性化が促進される。そして、走行レンジへの切換時に、変速機構をインターロック状態にするため、出力軸にトルクが伝達されず、意図しない発進が生じる事態が回避できる。
【0018】
また、このインターロック状態で運転者による制動要求が解除されると、エンジン回転数の低下に応じて、インターロック状態とするために締結していた所定摩擦要素の締結力を低下させながら該摩擦要素を解放するため、エンジン回転数が高い状態でインターロック状態が解除されることによる急発進が防止でき、したがって、適度なクリープ力で滑らかに発進させることが可能となる。
【0019】
さらに、請求項2に係る発明によれば、インターロック解除の際に、所定摩擦要素の締結油圧を、まず、解放直前の所定圧まで第1速度で低減し、その後、第1速度より遅い第2速度で低減しながら解放するので、一般的に高めに設定されている所定摩擦要素の締結油圧を解放直前の油圧まですばやく低減できると共に、所定摩擦要素が実際に解放される際の油圧の制御幅を小さくすることができるため、インターロック解除制御の制御性が向上する。
【0020】
さらにまた、請求項3に係る発明によれば、走行レンジとなる前の非走行レンジのときも、所定摩擦要素を締結するように制御するので、この非走行レンジにおいて、所定摩擦要素が実際に締結されているか否かを判定する作動チェックを行うことが可能である。この作動チェックを行えば、続く走行レンジでアイドルアップを実施するか否かを、運転者によって実際に非走行レンジから走行レンジへシフト操作が行われる前に判断することできるため、確実にインターロック状態でアイドルアップを実施できる。
【0021】
最後に、請求項4に係る発明によれば、請求項1に係る方法の発明と同様の効果をパワートレインシステムにおいて得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るパワートレインシステムの制御方法及びパワートレインシステムの実施形態について説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車両のパワートレインシステムは、フロントエンジン・フロントドライブ車に適用されるものであって、横置きされたエンジン(図示せず)と、有段の自動変速機とを有しており、前記エンジンの排気経路上には、排気ガス中の有害成分を除去するための触媒装置(図示せず)が配設されている。
【0025】
図1は、自動変速機1の構成を示す骨子図であり、この自動変速機1は、主たる構成要素として、エンジン出力軸Aに取り付けられたトルクコンバータ2と、該トルクコンバータ2を介して前記エンジン出力軸Aに駆動されるオイルポンプ3と、前記トルクコンバータ2の出力回転が入力軸4を介して入力される変速機構5とを有し、前記オイルポンプ3や変速機構5が入力軸4の軸心上に配置された状態で、変速機ケース6に収納されている。
【0026】
そして、前記変速機構5の出力回転が、同じく入力軸4の軸心上に配置された出力ギヤ7からカウンタドライブ機構8を介して差動装置9に伝達され、左右の車軸9a、9bが駆動されるようになっている。
【0027】
前記トルクコンバータ2は、エンジン出力軸Aに連結されたケース2aと、該ケース2a内に固設されたポンプ2bと、該ポンプ2bに対向配置されて該ポンプ2bにより作動油を介して駆動されるタービン2cと、該ポンプ2bとタービン2cとの間に介設され、かつ、前記変速機ケース6にワンウェイクラッチ2dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ2eと、前記ケース2aとタービン2cとの間に設けられ、該ケース2aを介してエンジン出力軸Aとタービン2cとを直結するロックアップクラッチ2fとで構成されている。そして、タービン2cの回転が前記入力軸4を介して変速機構5に入力されるようになっている。
【0028】
一方、変速機構5は、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、「第1、第2、第3ギヤセット」という)10、20、30を有し、これらが変速機ケース6内における前記出力ギヤ7の反トルクコンバータ側において、トルクコンバータ側から順に配置されている。
【0029】
また、変速機構5を構成する摩擦要素として、前記出力ギヤ7のトルクコンバータ側に、第1クラッチ40(特許請求の範囲の「発進用摩擦要素」)及び第2クラッチ50が配置されていると共に、出力ギヤ7の反トルクコンバータ側には、第1ブレーキ60、第2ブレーキ70(特許請求の範囲の「所定摩擦要素」)及び第3ブレーキ80がトルクコンバータ側から順に配置されている。
【0030】
前記第1、第2、第3ギヤセット10、20、30は、いずれもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11、21、31と、これらのサンギヤ11、21、31にそれぞれ噛み合った各複数のピニオン12、22、32と、これらのピニオン12、22、32をそれぞれ支持するキャリヤ13、23、33と、ピニオン12、22、32にそれぞれ噛み合ったリングギヤ14、24、34とで構成されている。
【0031】
そして、前記入力軸4が第3ギヤセット30のサンギヤ31に連結されていると共に、第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23、第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のキャリヤ33が、それぞれ連結されている。そして、第1ギヤセット10のキャリヤ13に前記出力ギヤ7が連結されている。
【0032】
また、第1ギヤセット10のサンギヤ11及び第2ギヤセット20のサンギヤ21は、前記第1クラッチ40を介して入力軸4に断接可能に連結されており、第2ギヤセット20のキャリヤ23は、前記第2クラッチ50を介して入力軸4に断接可能に連結されている。
【0033】
さらに、第1ギヤセット10のリングギヤ14及び第2ギヤセット20のキャリヤ23は、前記第1ブレーキ60を介して変速機ケース6に断接可能に連結されており、第2ギヤセット20のリングギヤ24及び第3ギヤセット30のキャリヤ33は、前記第2ブレーキ70を介して変速機ケース6に断接可能に連結されており、さらに、第3ギヤセット30のリングギヤ34は、前記第3ブレーキ80を介して変速機ケース6に断接可能に連結されている。
【0034】
以上の構成により、この変速機構5によれば、
図2に示すように、第1、第2クラッチ40、50及び第1、第2、第3ブレーキ60、70、80の締結状態の組み合わせにより、P(駐車)、R(後退)、N(中立)、D(前進)の各レンジと、Dレンジでの1〜6速とが達成されるようになっている。なお、
図2の空欄部分は、摩擦要素が解放されていることを示し、また、この実施形態では、P、Nレンジで、第1ブレーキ60が締結されるようになっている。
【0035】
また、
図2には、本実施形態に係る自動変速機1のインターロック制御及びニュートラルアイドル制御を実施した際の摩擦要素の締結の組み合わせについても示している。インターロック制御を実施した際には、1速で締結される第1クラッチ40と第1ブレーキ60とに加え、第2ブレーキ70が締結され、これにより、変速機構5の入力軸4及び出力ギヤ7が固定されるインターロック状態が実現される。一方、ニュートラルアイドル制御を実施した際には、第1ブレーキ60と第2ブレーキ70とが締結されると共に、第1クラッチ40がスリップ状態にされ、これにより、変速機構5の出力ギヤ7が固定されるインターロック状態かつニュートラルアイドル状態が実現される。
【0036】
前記各摩擦要素40〜80の締結制御は油圧によって行われ、自動変速機1には、そのための油圧制御回路90が備えられており、その概略の構成を
図3に示している。
【0037】
この油圧制御回路90には、エンジン出力軸Aによってトルクコンバータ2を介して駆動されるオイルポンプ3(
図1参照)から元圧が供給され、この元圧を所定油圧のライン圧に調整するレギュレータバルブ91と、前記ライン圧を選択されたレンジに応じて該油圧制御回路90の変速制御部92における各種ソレノイドバルブ93…93に選択的に供給するマニュアルバルブ94とを備えており、DレンジやRレンジにおいて、前記ソレノイドバルブ93…93の作動に応じて、前記各摩擦要素40〜80に選択的に油圧が供給されることにより、前述の1〜6速と後退速とが実現される。
【0038】
さらに、
図4に示すように、この実施形態に係るパワートレインシステムはコントローラ100を有し、このコントローラ100は、運転者によって選択されている自動変速機1のレンジを検出するレンジセンサ101からの信号と、当該車両の車速を検出する車速センサ102からの信号と、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ103からの信号とを入力し、これらの信号に基づき、選択されたレンジや当該車両の運転状態に応じた変速段を決定し、その変速段が実現されるように、前記油圧制御回路90の変速制御部92における各種ソレノイドバルブ93…93に制御信号を出力する。
【0039】
また、このコントローラ100は、エンジンの冷間始動時に、触媒装置の活性化促進のためのアイドルアップを行うと共に、このアイドルアップを当該車両の発進前におけるPレンジからDレンジへの移行後も行うために変速機構5をインターロック状態とするインターロック制御と、一旦走行後に停車した際に、未だ触媒装置が非活性な場合に、この停車時にもアイドルアップを行うために、第1クラッチ40をスリップさせて変速機構5をニュートラルアイドル状態とするニュートラルアイドル制御とを行うようになっている。
【0040】
そして、これらの制御用として、前記各センサ101〜103からの信号に加えて、運転者によるブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ104、触媒装置の温度を検出する触媒温度センサ105、エンジン回転数センサ106からの信号もコントローラ100に入力される。
【0041】
ここで、コントローラ100は、ブレーキセンサ104からの入力信号に基づいて、インターロック状態において制動要求がなくなったと判断すると、エンジン回転数センサ106からの入力信号に基づいて、エンジン回転数の低下に応じて第2ブレーキ70に供給される油圧を低減させて、第2ブレーキ70の締結力を低下させるように、油圧制御回路90へ制御信号を出力する。
【0042】
次に、コントローラ100による、前記インターロック制御等を含むエンジンのアイドルアップ制御の具体的動作を、
図5のフローチャートに従って説明する。なお、以下の動作は、本発明に係るパワートレインシステムの制御方法に係る第1の実施形態を構成する。
【0043】
コントローラ100は、自動変速機1のレンジがPレンジの状態でエンジンのイグニッションスイッチがONされたときに制御動作を開始する。まず、ステップS1で、
図4に示す各センサ101〜105及び第1クラッチ圧センサ95からの信号を入力し、次いで、ステップS2で、Pレンジで締結される第1ブレーキ60を締結するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。
【0044】
次に、ステップS3で、車速センサ102の信号から車両が停車している(車速が0km/h)か否かを判定する。そして、車両が停車していると判定したときには、ステップS4で、エンジンのアイドル回転数を上昇させるアイドルアップ要求があるか否かを判定する。
【0045】
ここで、このアイドルアップ要求は、この実施形態では、触媒温度センサ105からの信号が示す触媒装置の温度が該触媒装置の活性化温度まで上昇していないときに、早期に活性化させる必要上、アイドルアップ要求があると判断する。なお、触媒装置の温度はエンジン始動後の経過時間と共に上昇するので、その経過時間に基づいてアイドルアップ要求があるか否かを判定してもよい。
【0046】
そして、エンジンの始動直後は触媒温度が低く、アイドルアップ要求があると判定されるので、コントローラ100は、次にステップS5で、前記ステップS3での停車判定時にレンジがDレンジであったか否かを判定する。
【0047】
また、エンジンの始動直後のレンジはPレンジであるから、前記ステップS5で、停車判定時にDレンジではなかったと判定し、次に、ステップS6で、現在のレンジがRレンジか否かを判定する。Rレンジではない、すなわちPレンジと判定したとき、ステップS7で、
図4に示すエンジン回転数制御装置110にアイドルアップするように信号を出力する。これにより、エンジン始動後、走行開始前のPレンジの状態でアイドルアップが行われ、触媒装置の活性化が促進される。一方で、前記ステップS6でRレンジであると判定されると、ステップS8で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップしないようにアイドルアップ禁止の信号を出力する。
【0048】
次に、ステップS9で、前記ステップS4での停車判定時にレンジがNレンジ(Pレンジも含む)であったか否かを判定し、エンジンの始動直後のレンジはPレンジであるから、前記ステップS9でYESと判定する。
【0049】
その後、ステップS10で、レンジセンサ101の信号からN−D操作が行われたか否か、すなわち運転者によってNレンジ(Pレンジ)からDレンジにシフト操作が行われたか否かを判定し、N−D操作が行われたと判定するまでは、Pレンジでのアイドルアップを継続する。
【0050】
ここで、Pレンジの状態でアイドルアップを実施する中、N−D操作が行われると、前記ステップS10で、N−D操作が行われたと判定され、Dレンジの状態でアイドルアップを継続する。その際に、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれているか、すなわちブレーキONか否かを、ブレーキセンサ104の信号に基づいてステップS11で判定し、ブレーキONと判定したときは、ステップS14で、後述のインターロック制御を実行する。一方で、前記ステップS11で、ブレーキONではないと判定したときは、運転者による制動意思がなくなったと考え、車両を発進させるため、ステップS12で、第1クラッチ40を締結すると共に、ステップS13で、アイドルアップを禁止するようにエンジン回転数制御装置110に信号を出力する。
【0051】
一方、一旦走行した後に停車した際に、触媒装置が未だ非活性状態であり、前記ステップS4でアイドルアップ要求があると判定された場合は、停車時はDレンジであるため、前記ステップS5で、停車判定時Dレンジであったと判定され、ステップS15で、ブレーキセンサ104の信号に基づいてブレーキONか否かを判定し、前記ステップS15で、ブレーキONと判定したときは、ステップS16で、後述のニュートラルアイドル制御を実行し、前記ステップS15でブレーキONではないと判定したときは、アイドルアップを禁止するようにエンジン回転数制御装置110に信号を出力する。
【0052】
次に、
図6を参照しながら、インターロック制御時の動作について説明する。
【0053】
まず、コントローラ100は、ステップS21で、第2ブレーキ70を締結すると共に、ステップS22で、第1クラッチ40を所定低減油圧で締結するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、変速機構5はインターロック状態となる。このインターロック状態でシフト操作せずにブレーキペダルが踏まれている間は、アイドルアップを継続する。なお、前記所定低減油圧とは、クラッチを確実に締結させる油圧であるが、正規油圧よりも低い油圧である。
【0054】
そして、Dレンジのままブレーキペダルの踏み込みがなくなる(ブレーキOFF)と、ステップS23で、Nレンジではないと判定し、ステップS24で、ブレーキOFFであると判定して、ステップS25で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップを終了するように信号を出力する。これにより、Dレンジでのアイドルアップが終了される。
【0055】
次に、ステップS26で、第1クラッチ40を正規油圧で締結させ、さらに、エンジン回転数の低下に応じて、ステップS27で、第2ブレーキ70に供給されている油圧を第1速度で解放直前の所定油圧まで低減し、続くステップS28で、第2ブレーキ70に供給されている油圧を前記第1速度よりも遅い第2速度で低減して解放するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。その後、第1クラッチ40が実際に締結されると共に第2ブレーキ70が解放されると、変速機構5はインターロック状態が解除され、自動変速機1は1速の状態となる。
【0056】
ここで、前記ステップS27及びステップS28における第2ブレーキ70に供給される油圧の制御は、例えば、コントローラ100に予め記憶された、エンジン回転数から第2ブレーキ圧を算出するための変換マップに基づいて、エンジン回転数センサ106に検出されたエンジン回転数から第2ブレーキ70に供給すべき油圧を演算して油圧制御回路90に指示し、第2ブレーキ70が所定の目標値に達するように制御する、いわゆるオープンループ制御であってもよい。
【0057】
また、同ステップでの油圧制御は、油圧制御回路90の変速制御部92から第2ブレーキ70へ油圧を供給するライン上に第2ブレーキ圧センサをさらに設けて、このセンサによって実際に第2ブレーキ70に供給されている油圧を検出してフィードバックし、上記変換マップ等に基づいて演算された目標油圧と実油圧との差分から、第2ブレーキ70が所定の目標値に達するように制御する、いわゆるフィードバック制御を行っても良い。
【0058】
次に、ステップS29で、車速センサ102の信号に基づいて、車両が所定車速(例えば、時速3km/h)以上になったか否かを判定し、所定車速以上になったと判定すると、ステップS30で、ニュートラルアイドル実施条件のフラグを設定(ON)して、
図5のメインルーチンに戻る。
【0059】
一方、前記インターロック状態で、運転者がNレンジへのシフト操作を行うと、前記ステップS23で、Nレンジであると判定され、ステップS31で、第1クラッチ40を解放すると共に、ステップS32で、第2ブレーキ70を解放するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、油圧制御回路90のマニュアルバルブ94によって両摩擦要素から油圧が同時に排出されて、変速機構5はインターロック状態が解除され、自動変速機1はNレンジの状態となるが、アイドルアップは継続する。その後、
図5のメインルーチンに戻る。
【0060】
次に、
図7を参照しながら、ニュートラルアイドル制御時の動作について説明する。
【0061】
まず、ステップS41で、フラグがONか否かを判定するが、一旦走行して前記ステップS33でフラグを設定しているため、前記ステップS41で、フラグONと判定する。次に、ステップS42で、第2ブレーキ70を締結すると共に、ステップS43で、変速機構5をニュートラルアイドル状態、すなわち、第1クラッチ40に供給される油圧を下げてスリップ状態にするように油圧制御回路90に制御信号を出力する。
【0062】
これにより、変速機構5は、特に問題が無ければ、アイドルアップを継続しながらニュートラルアイドル状態かつインターロック状態となるが、確認のために、ステップS44で、実際に変速機構5はインターロックが完了しているか否かを判定して、完了していると判定したときに、ステップS45で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップするように信号を出力する。
【0063】
なお、このインターロック完了判定は、例えば、第2ブレーキ70に供給されている油圧を検出する第2ブレーキ圧センサ(図示しない)を設けて、このセンサからの出力信号をコントローラ100に入力して、第2ブレーキ70に実際に供給されている油圧が正規油圧に達したときをインターロック成立として判定しても良い。
【0064】
ここで、何らかの異常により、例えば第2ブレーキ70が締結されない場合、前記ステップS44で、インターロックが完了していないと判定され、第2ブレーキ70が締結されてインターロックが完了するまでは、次の前記ステップS45のアイドルアップを実施しない。これにより、確実にインターロック状態でアイドルアップを行うことができるため、インターロック不成立の状態でエンジンが高回転で回転し、大きなクリープ力によって運転者の意に反して車両が発進する、という事態が回避される。
【0065】
次に、ステップS46で、ブレーキセンサ104の信号からブレーキがOFFか否か、すなわち運転者がブレーキペダルを離しているか否かを判定し、前記ステップS46でブレーキOFFと判定するまでは、変速機構5がニュートラルアイドル状態かつインターロック状態でアイドルアップが継続される。
【0066】
そして、運転者がブレーキペダルを離して、前記ステップS46で、ブレーキOFFと判定すると、ステップS47で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップを終了するように信号を出力し、ステップS48で、第2ブレーキ70を解放すると共に、ステップ49で、第1クラッチ40を締結するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、変速機構5はニュートラルアイドル状態及びインターロック状態が解除されて1速の状態となり、運転者のアクセルペダルの踏み込みに応じて発進することになる。
【0067】
その後、ステップS50で、ニュートラルアイドル実施条件のフラグを解除(OFF)して、
図5のメインルーチンに戻る。
【0068】
なお、一旦走行後にDレンジで停車する場合には、インターロック状態(入力軸4と出力ギヤ7を固定)ではなくニュートラルアイドル状態(出力ギヤ7のみを固定)でアイドルアップを行っているが、この場合には、第1クラッチ40に供給される油圧を低減して締結状態からスリップ状態にする制御を行うため、油圧制御が比較的容易であり、かつ、ニュートラルアイドル状態(第1クラッチ40の摩擦板間のスリップ摩擦によりロス発生)はインターロック状態(トルクコンバータ2内部の作動油の粘性によりロス発生)に比べてエンジンの負荷が小さくなるため、触媒装置をより早く活性化できる、すなわち、エンジン負荷が小さいほど、エンジンのピストンを押し下げる力が小さくて済むので、その分エンジンを触媒装置の活性化に有利な燃焼をさせることができるからである。
【0069】
以上のようにして、エンジンの冷間始動時等において、アイドルアップ要求がある場合は、運転者がブレーキペダルを踏み込んで自動変速機1をPレンジからDレンジに切り換えた後も、ブレーキペダルが踏み込まれている間は、アイドルアップが継続して実施され、触媒装置の活性化が促進される。また、自動変速機1が走行可能な状態(1速状態)でアイドルアップを行なうことによるクリープ力の増大に対しては、自動変速機1の変速機構5がインターロックされることにより対処され、運転者の意に反した車両の発進が防止される。
【0070】
また、油圧制御回路90が、運転者によるレンジを走行レンジから非走行レンジにするシフト操作に伴うマニュアルバルブ94の作動により、第1クラッチ40と第2ブレーキ70とが同時に排出される構成である場合にも、インターロック制御の際の第1クラッチ40に供給される油圧を正規油圧より低い所定低減油圧として締結したことにより、第1クラッチ40が第2ブレーキ70より早く解放されるため、第2ブレーキ70が解放されてインターロックが解除された状態で、第1クラッチ40が完全に解放されていない、1速に似た状態が生じないため、走行レンジから非走行レンジへの切り換えの瞬間に、乗員に違和感を与えるような前向きのショックが車両に発生するのを防止することができる。
【0071】
さらに、このインターロック状態で運転者による制動要求が解除されると、エンジン回転数の低下に応じて、インターロック状態とするために締結していた第2ブレーキ70の締結力を低下させながら第2ブレーキ70を解放するため、エンジン回転数が高い状態でインターロック状態が解除されることによる急発進が防止でき、したがって、適度なクリープ力で滑らかに発進させることが可能となる。
【0072】
さらにまた、一般的に締結時に摩擦要素に供給される油圧は、走行時に必要なトルクも伝達できるように高めに設定されており、締結状態から油圧を低減しても、実際に解放状態になるまでには、ある程度油圧に余裕がある。したがって、インターロック状態で制動要求が解除された際に、まず、速い第1速度で油圧を低減することで、高めに設定された第2ブレーキ70の締結油圧を解放直前の所定油圧まですばやく低減することができる。さらに、高めに設定された締結油圧から解放するよりも、解放直前の所定油圧から解放する方が、第2ブレーキ70が実際に解放される際の油圧の制御幅を小さくすることができるため、油圧を高精度に制御することができる。
【0073】
次に、本発明の第1の実施形態に係るパワートレインシステムを適用した車両を運転操作した際の車両状態の変化について説明する。
【0074】
図8は、エンジンの冷間始動直後にN−D操作後、再びNレンジに戻した場合の車両の状態をタイムチャートに表したものである。
【0075】
当初車両はNレンジにあるため、変速機構5は第1ブレーキ60のみが締結されており(S2)、ブレーキONにより停車して、エンジンの冷間始動直後でアイドルアップ要求がONであるため、エンジンはアイドルアップ回転数で回転している(S7)。なお、このとき、第1クラッチ40が解放されているため、変速機構5の入力軸4は、トルクコンバータ2により連れ回りしてエンジン回転数とほぼ同じ速度で回転している。
【0076】
このNレンジでのアイドルアップ中に、運転者がN−D操作を行うと、アイドルアップを継続したままインターロック制御が実施され(S14)、第2ブレーキ70が締結されると共に、第1クラッチ40が正規油圧よりも低い所定低減油圧で締結され(S21、S22)、変速機構5はインターロック状態となる。なお、この際に、第1クラッチ40に供給されている油圧が上がるにつれて入力軸4の回転が減速する。
【0077】
このインターロック状態で、運転者がNレンジに戻すシフト操作を行うと、第1クラッチ40及び第2ブレーキ70は解放するように指示され(S32、S33)、マニュアルバルブ94によって両摩擦要素から油圧が同時に排出開始されるが、それまで第1クラッチ40は正規油圧よりも低い所定低減油圧で締結されていたため、第1クラッチ40に供給されている油圧が第2ブレーキ70に供給されている油圧よりも早く排出されて、第1クラッチ40が先に解放される。
【0078】
そのため、変速機構5は、一時的に第1クラッチ40がトルクを伝達可能な状態(1速に似た状態)が生じることなく、アイドルアップを継続したままインターロック状態が解除される。なお、第1クラッチ40が解放されてインターロックが解除されると、入力軸回転数が再び上昇する。
【0079】
したがって、例えば、車庫から発進させようと一旦Dレンジにシフトさせたが、何らかの理由で発進を思い止まってNレンジに戻したような場合にも、Dレンジで停車中に、変速機構5をインターロック状態にしてアイドルアップを行うことによって、触媒装置の活性化促進のために、Dレンジでのアイドルアップを、意図しない発進等を招くことなく、良好に行うことができる。
【0080】
また、第1クラッチ40と第2ブレーキ70への油圧の供給が、油圧源から油圧制御回路90中のマニュアルバルブ94を介して行われ、走行レンジから非走行レンジへの切換時に、マニュアルバルブ94によって両摩擦要素から油圧が同時に排出される構成の場合にも、再びNレンジへ戻した際のショックを防止することができる。
【0081】
図9は、エンジンの冷間始動直後にN−D操作を行った後もしばらく停車してから発進する場合の車両の状態をタイムチャートに表したものである。
【0082】
当初のNレンジから、N−D操作後のDレンジでのインターロック状態までは、
図8の場合と同じであるため、説明を省略する。
【0083】
Dレンジでのインターロック状態で、運転者がブレーキペダルから足を離すと、アイドルアップが終了して(S25)、エンジン回転数が減速する。このとき、第1クラッチ40に供給される油圧を所定低減油圧から正規油圧に上げる(S26)。
【0084】
それと共に、エンジン回転数の減少(矢印Aを参照)に応じて、第2ブレーキ70に供給される油圧を、まずは第1速度で解放直前の所定油圧まで低減し(矢印aを参照)、続いて、第1速度よりも遅い第2速度で、第2ブレーキ70が解放されるまで低減する(矢印bを参照)ように、油圧制御回路90はコントローラ100から指示される(S27〜S28)。
【0085】
なお、第2ブレーキ70に供給される油圧を低減する上記第1速度は、
図9の矢印c及びdのように、より緩やかな速度で低減するように指示しても良い(矢印dを参照)。また、図示していないが、締結油圧は2段階での低減に限るものではなく、それ以上の段階で段階的に低減する、または、滑らかな曲線で漸次低減するようにしても良い。
【0086】
そして、実際に第1クラッチ40が締結され、第2ブレーキ70が解放されると、自動変速機1は1速の状態となり、運転者のアクセルペダルの踏み込みに応じて、車両が発進可能となる。その後、車両が所定車速以上になると、ニュートラルアイドル実施条件のフラグが設定される(S30)。
【0087】
したがって、例えば、車庫から発進する際のわずかなDレンジでの停車時間にも、アイドルアップを継続して実施することができ、触媒装置の活性化が促進される。そして、Dレンジへの切換時に、変速機構を出力ギヤ7が固定されたインターロック状態にするため、出力軸にトルクが伝達されず、意図しない発進が生じる事態が回避できる。
【0088】
また、このインターロック状態で運転者による制動要求が解除されると、エンジン回転数の低下に応じて、インターロック状態とするために締結していた第2ブレーキ70の締結力を低下させながら該第2ブレーキ70を解放するため、エンジン回転数が高い状態でインターロック状態が解除されることによる急発進が防止でき、したがって、適度なクリープ力で滑らかに発進させることが可能となる。
【0089】
さらに、第2ブレーキ70の締結力を低下させるため、インターロック解除の際に、第2ブレーキ70の締結油圧を、まず、解放直前の所定油圧まで第1速度で低下させ、続けて、第1速度よりも遅い第2速度で低下させるため、一般的に高めに設定されている第2ブレーキ70の締結油圧を解放直前の油圧まですばやく低減できると共に、第2ブレーキ70が実際に解放される際の油圧の制御幅を小さくすることができるため、インターロック解除制御の制御性が向上する。
【0090】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車両のパワートレインシステムは、第1の実施形態に係る車両のパワートレインシステムと同様の構成を有するため、共通する構成に関する
図1から
図2の説明を省略する。
【0091】
第2の実施形態の場合、油圧制御回路90の変速制御部92から第2ブレーキ70へ油圧を供給するライン上に第2ブレーキ圧センサを設け、該センサからの信号をコントローラ100に入力する。コントローラ100は、エンジンを冷間始動した直後で、運転者によってN−D操作が行われる前の自動変速機1がNレンジの際に、第2ブレーキ70も締結するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。そして、第2ブレーキ圧センサに基づいて、第2ブレーキ70に供給されている実油圧が正規油圧となっているか否かを判定する作動チェックを行う。
【0092】
このチェックの結果、第2ブレーキ70が正常に締結されていれば、N−D操作後も引き続きアイドルアップを実施し、一方で、正常に締結されていなければ、N−D操作の際に、現在実施しているアイドルアップを終了するように、エンジン回転数制御装置110に信号を出力する。
【0093】
したがって、第2の実施形態によれば、Nレンジで事前に変速機構5の第2ブレーキ70の作動チェックを行うため、続くDレンジでアイドルアップを実施するか否かを、運転者による実際のN−Dレンジ操作前に判断することができる。よって、第2ブレーキ70が正常に締結されない状態で、Dレンジにおいてアイドルアップすることによって生じるおそれのある急発進を防止することができる。
【0094】
図10は、第2の実施形態に係る車両について、エンジンの冷間始動直後にN−D操作後、Nレンジに戻した場合の車両の状態をタイムチャートに表したものである。なお、第1の実施形態に関する
図8とは、N−D操作前のNレンジにおける変速機構5の油圧制御方法の点でのみ異なる。
【0095】
当初のNレンジにおいて、変速機構5の第1ブレーキ60及び第2ブレーキ70が共に締結するように指示され、第2ブレーキ70が正常に作動しているか否かの作動チェックを行う。この作動チェック際に、第2ブレーキ70に供給されている実油圧が正規油圧であり、第2ブレーキ70が正常であると判定されると、N−D操作の際に、第1クラッチ40は所定低減油圧で締結するよう指示され、アイドルアップを継続する。
【0096】
なお、第2の実施形態において、第2ブレーキ70は、少なくともN−Dレンジ操作前のNレンジにおける作動チェックの際に締結するように指示されればよい。したがって、N−Dレンジ操作前のNレンジにおいて、作動チェックの時だけ第2ブレーキ70を締結して、その前後は第2ブレーキ70を解放するようにしてもよい。また、例えばDレンジからNレンジに戻した後など含めて、Nレンジのときは常に第2ブレーキ70を締結するようにしてもよい。
【0097】
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。