(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記従駆動波形群は、前記主駆動波形群に対して前記第2休止時間を挟んで配置される第1従駆動波形群と、前記第1従駆動波形群に対して前記第1の時間より短い第3休止時間を挟んで前記第1従駆動波形群の後に配置される第2従駆動波形群と、を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動作音を低減させる従来の技術では、駆動回路が圧電素子に対して多数の駆動波形を印加できなければならず、駆動回路や制御が複雑になり、また、設計に時間がかかるという問題を有している。さらに、従来技術では、必ずしも効果的に動作音を抑制できない場合があった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、動作音を抑制し得る駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る駆動装置は、
駆動信号によって伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子に連結される支持シャフトと、
前記支持シャフトと摩擦係合し、前記支持シャフトに沿って移動可能な移動体と、
前記移動体を第1の方向に移動させる第1駆動信号を含む前記駆動信号を、前記圧電素子に対して印加する駆動部を有し、
前記駆動部は、前記第1駆動信号を前記圧電素子に対して、第1の時間を挟んで繰り返し印加することができ、
前記第1駆動信号は、前記移動体を前記第1の方向に移動させる主駆動波形群と、前記主駆動波形群に対して前記第1の時間より短い第2休止時間を挟んで、前記主駆動波形群の後に配置される従駆動波形群と、を有する。
【0008】
本発明の発明者らは、駆動装置で発生する動作音を低減するための技術を鋭意検討した結果、移動体を停止させた際に生じる慣性力等によって、移動体自身が振動する現象が、動作音の一因となっているとの知見を得た。特に、所定の時間(第1の時間)を挟んで移動体を断続的に移動させるような場合において、このような動作音が繰り返し発生するために、装置の使用者が動作音を感知しやすくなる傾向がある。
【0009】
本発明に係る駆動装置において、駆動部が圧電素子に印加する第1駆動信号は、主駆動波形群に対して第2休止時間を挟んで後に配置される従駆動波形群を有する。すなわち、駆動部は、移動体を第1の方向に移動させる主駆動波形群を印加した後に、第2休止時間を挟んで従駆動波形群を印加することにより、停止時に移動体に生じる振動を抑制し、移動体の振動によって生じる動作音を効果的に低減することが可能である。
【0010】
また、前記移動体は、前記第1の方向に略直交する第2の方向の一方の端部に形成されており前記支持シャフトと摩擦係合する係合部を有しても良く、
前記移動体は、前記係合部を介して前記支持シャフトに対して支持される片持ち支持構造であっても良い。
【0011】
移動体の構造は特に限定されないが、移動体が支持シャフトに片持ち支持される構造である場合には、シンプルな構造でありながら動作音の少ない駆動装置を実現することができる。
【0012】
また、例えば、前記従駆動波形群は、前記移動体を前記第1の方向に移動させる波形を含んでも良く、
前記移動体が停止した際に、前記移動体に生じる振動の周期をTとした場合、前記第2休止時間は、T/4より短くても良い。
【0013】
従駆動波形を印加するタイミングは、移動体の振動又は動作音を低減するタイミングであれば特に限定されないが、主駆動波形群の印加が終了してからT/4までの間に、移動体を第1の方向に移動させる従駆動波形群を印加することにより、移動体を振動させる力を効果的に解放し、移動体に生じる振動及びこれに伴う動作音の発生を、効果的に抑制することができる。
【0014】
また、例えば、前記従駆動波形群は、前記移動体を前記第1の方向とは反対方向に移動させる波形を含んでも良く、
前記移動体が停止した際に、前記移動体に生じる振動の周期をTとした場合、前記第2休止時間は、T/4より長く、3T/4より短くても良い。
【0015】
このように、主駆動波形群の印加が終了してからT/4から3T/4までの間に、移動体を第1の方向とは反対方向に移動させる従駆動波形群を印加しても、先ほどの例と同様に、移動体を振動させる力を効果的に解放し、移動体に生じる振動及びこれに伴う動作音の発生を、効果的に抑制することができる。
【0016】
前記従駆動波形群は、前記主駆動波形群に対して前記第2休止時間を挟んで配置される第1従駆動波形群と、前記第1従駆動波形群に対して前記第1の時間より短い第3休止時間を挟んで前記第1従駆動波形群の後に配置される第2従駆動波形群と、を有しても良い。
【0017】
このような駆動装置は、従駆動波形群の印加を、第1従駆動波形群と第2従駆動波形群に分割して行うことにより、従駆動波形群自体の印加の停止に伴い、移動体が振動することを防止し、第1駆動信号全体を印加した後に、移動体に生じる振動及びこれに伴う動作音の発生を、より効果的に抑制することができる。
【0018】
また、例えば、前記第2従駆動波形群は、前記第1従駆動波形群が前記移動体を移動させる方向と同じ方向に前記移動体を移動させる波形を含んでも良く、
前記移動体が停止した際に、前記移動体に生じる振動の周期をTとした場合、前記第3休止時間は、T/4より短くても良い。
【0019】
第2従駆動波形群を印加するタイミングは、移動体の振動又は動作音を低減するタイミングであれば特に限定されないが、第1従駆動波形群の印加が終了してからT/4までの間に、第1従駆動波形群と同じ方向に移動体を移動させる第2従駆動波形群を印加することにより、主駆動波形群及び第1従駆動波形群の印加の停止に伴い移動体に生じる振動及び動作音を、効果的に抑制することができる。
【0020】
また、例えば、前記第2従駆動波形群は、前記第1従駆動波形群が前記移動体を移動させる方向とは反対方向に前記移動体を移動させる波形を含んでも良く、
前記移動体が停止した際に、前記移動体に生じる振動の周期をTとした場合、前記第3休止時間は、T/4より長く、3T/4より短くても良い。
【0021】
このように、第1従駆動波形群の印加が終了してからT/4から3T/4までの間に、第1従駆動波形群とは反対方向に移動体を移動させる第2従駆動波形群を印加しても、先ほどの例と同様に、移動体を振動させる力を、従駆動波形群が移動体を移動させる力によって効果的に相殺し、移動体に生じる振動及びこれに伴う動作音の発生を、効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動装置10の概略図である。駆動装置10は、圧電素子12、支持シャフト14、錘16、移動体20及び駆動部30を有する。駆動装置10は、光学系22を備える移動体20を含み、撮像装置内において光学系22を移動させる機構の一部として使用されているが、本発明に係る駆動装置10の用途はこれに限定されるものではない。
【0024】
圧電素子12は、駆動部30によって印加される駆動信号によって伸縮する。圧電素子12としては、例えば圧電性を有する材料を、極性の異なる電極を交互に挟みながら積層した積層型圧電素子等を採用することができるが、特に限定されない。
【0025】
圧電素子12の一方の端部には支持シャフト14が連結されており、圧電素子12の他方の端部には、錘16が連結されている。錘16は、圧電素子12の伸縮に伴い、支持シャフト14に変位を与えるための慣性体として機能する。なお、錘16は、さらに別の部材に連結されていても良い。
【0026】
支持シャフト14は、圧電素子12の伸縮に伴い変位する。支持シャフト14は、
図1に示すように、支持シャフト14の軸方向である第1の方向50及び第3の方向54に変位する。ただし、支持シャフト14は、圧電素子12に連結されているため、圧電素子12の伸縮量の範囲内で往復運動する。
【0027】
支持シャフト14には、移動体20が摩擦係合している。移動体20は、支持シャフト14に沿って、第1の方向50及び第3の方向54に移動可能である。移動体20は、保持枠24と、当該保持枠24によって保持される光学系22とを有している。
図1及び
図2に示すように、移動体20は、略円板状の形状を有しており、移動体20の直径方向は、支持シャフト14の軸方向である第1の方向50に直交する第2の方向に沿うように配置されている。
【0028】
移動体20における第2の方向52の一方の端部には、支持シャフト14と摩擦係合する係合部26が形成されている。
図1に示すように、移動体20は、係合部26を介して、支持シャフト14に対して支持される片持ち支持構造である。
【0029】
移動体20は、支持シャフト14と一体となって変位することも可能であるが、支持シャフト14に対して相対移動することにより、圧電素子12の伸縮量の範囲を越えて移動することが可能である。例えば、支持シャフト14を低速で変位させた場合は、移動体20と支持シャフト14との係合は維持され、移動体20は支持シャフト14と伴に変位するが、支持シャフト14を高速で変位させた場合は、移動体20と支持シャフト14との間にすべり変位が発生し、移動体20と支持シャフト14との間に相対移動が生じる。したがって、第1の方向50へ向かう場合と第3方向へ向かう場合とで速度が異なる非対称な往復運動を、支持シャフト14に行わせることにより、駆動装置10は、支持シャフト14に摩擦係合する移動体20を、圧電素子12の伸縮量の範囲を越えて移動させることができる。
【0030】
駆動部30は、圧電素子12に対して駆動信号を印加する。より具体的には、駆動部30は、圧電素子12の電極間に印加される電圧値を変化させる駆動信号を生成し、圧電素子12に印加される電圧値を変化させることによって、圧電素子12の伸縮量及び伸縮速度を制御する。駆動部30が生成する駆動信号には、移動体20を第1の方向50に移動させる第1駆動信号42aと、移動体20を第3の方向54に移動させる第2駆動信号49が含まれる。
【0031】
駆動装置10が備えられる撮像装置内には、光学系22を透過した光が導かれる撮像素子(不図示)が配置されている。駆動部30は、第1駆動信号42a及び第2駆動信号49を圧電素子12に印加することにより、移動体20に保持された光学系22と撮像素子との光学的な距離を変化させることができる。
【0032】
本実施形態に係る駆動部30は、圧電素子12に対して、第1の時間を挟んで繰り返し印加する第1駆動信号42aと、圧電素子12に対して、第1の時間を挟んで繰り返し印加する第2駆動信号49とを出力することができる。駆動部30は、第1駆動信号42aと第2駆動信号49とを出力し、光学系22を移動させることにより、撮像装置において実施されるオートフォーカス動作時に必要となる光学系22の動作を実現することができる。
【0033】
図3は、本発明の実施形態とは駆動信号のみが異なり、その他の構成は同様である参考例に係る駆動装置において、オートフォーカス動作時に実現される移動体20の動きを表したものである。
図3の縦軸は、
図1及び
図2に示す移動体20における第2端部28の位置に対応しており、横軸は時間に対応している。なお、
図1に示すように、移動体20の第2端部28は、第2の方向52に沿って係合部26とは反対側の端部である。
【0034】
図3に示すように、オートフォーカス動作時において、駆動装置では、圧電素子12に対して第1駆動信号を周期的に印加し、移動体20を第1の方向50に沿って段階的に移動させる。次に、圧電素子12に対して第2駆動信号49を周期的に印加し、移動体20を第3の方向54に沿って段階的に移動させる。
【0035】
第1駆動信号42a及び第2駆動信号49を印加する周期T2は、特に限定されないが、例えば、20〜40ms程度とすることができる。また、第1駆動信号42a又は第2駆動信号49を一回印加した場合における移動体20の移動量ΔLは、撮像装置の構成に応じて適宜設定されるが、例えば、5〜30μm程度とすることができる。なお、移動体20が各位置に停止している間に、撮像素子が画像信号を取得し、取得された画像信号に基づき演算部が合焦の程度を算出することにより、撮像装置は、移動体20をどの位置に配置すればピントが合うのかを、検出することができる。
【0036】
図4は、
図3のグラフの一部を拡大し(
図4の上部)、駆動信号90の印加タイミング(
図4の下部)と共に示したものである。移動体20の第2端部28の動きを表すグラフ(
図4上部)と、駆動信号90の時間変化を表すグラフ(
図4の下部)とは、時間(横軸)を揃えて表示している。
図4に示すように、参考例に係る駆動装置では、第1駆動信号92の印加が終了した後も、移動体20の第2端部28が振動していることがわかる。
【0037】
図9(a)は、
図4における時刻A〜Gにおける移動体20の位置及び姿勢を模式的に表したものである。時刻Aでは、
図9(a)Aに示すように、第1駆動信号92の印加が継続されており、移動体20は上昇(第1の方向50への移動)を続けている。時刻Bでは、
図9(a)Bに示すように、第1駆動信号92の印加が終了し、移動体20は、移動(支持シャフト14に対する相対移動)を停止する。しかし、時刻Bにおいて、移動体20は、支持シャフト14と係合部26との摩擦力により停止するため、係合部26とは反対側の端部である第2端部28には、上方(第1の方向50)へ向かう慣性力(矢印f参照)が作用する。
【0038】
図9(a)B〜
図9(a)Gに示すように、停止時(時刻B)において移動体20に作用する力は、移動体20の係合部26を固定端とし、第2端部28を自由端とする振動を発生させる。
図4に示すように、移動体20が停止した際に移動体20に生じる振動の周期Tは、移動体20の第2端部28の動きを計測することによって観測することが可能である。本発明の発明者らは、振動の周期Tと、動作音の発生の有無又は動作音の周波数(周期)との間に、一定の対応関係があり、このような移動体20の振動が、駆動装置における動作音の一因であるとの知見を得た。
【0039】
図5は、本発明の第1実施形態に係る駆動装置10における移動体20の動き及び駆動信号40aにおける第1駆動信号42aの印加タイミングを、参考例における移動体20の動きと対比して示したグラフである。
図5においても、
図4と同様に、移動体20の第2端部28の動きを表すグラフ(
図5上部)と、駆動信号40aの時間変化を表すグラフ(
図5の下部)とは、時間(横軸)を揃えて表示している。
【0040】
図5上部の太点線グラフは、第1実施形態に係る振動装置における移動体20の第2端部28の動きを示しており、
図5上部の実線グラフは、参考例に係る第2端部28の動きを示している。なお、
図5は、参考例について
図3及び
図4を用いて説明したように、圧電素子12に対して第1駆動信号42aを周期的に印加した際における移動体20の動きの一部を表したものである。
【0041】
駆動信号40aのグラフ(
図5の下部)に示すように、第1駆動信号42aは、第1の時間Δt11を挟んで繰り返し印加され、これにより、移動体20は、第1の方向50に沿って段階的に移動する(
図3参照)。
図5に示すように、第1駆動信号42aは、参考例に係る第1駆動信号92(
図4参照)とは異なり、移動体20を第1の方向50に移動させる主駆動波形群44だけでなく、主駆動波形群44の後に配置される従駆動波形群46aを有する。
【0042】
図6は、
図5に示す第1駆動信号42aを、模式的に表したものである。第1駆動信号42aの従駆動波形群46aは、主駆動波形群44に対して第2休止時間Δt21を挟んで配置される。また、従駆動波形群46aは、主駆動波形群に対して第2休止時間Δt21を挟んで配置される第1従駆動波形群47aと、第1従駆動波形群47aに対して第3休止時間Δt31を挟んで配置される第2従駆動波形群48aとを有する。
【0043】
また、第1駆動信号42aにおいて、第1従駆動波形群47a及び第2従駆動波形群48aに含まれる波形56及びその周波数は、主駆動波形群44に含まれる波形56及びその周波数と同じである。すなわち、波形56は、移動体20(
図1参照)を第1の方向50に移動させるものであり、例えば100〜200kHz程度の周波数で、各駆動波形群44,47a,48a内に含まれる。このように、第1駆動信号42aを一種類の波形56で構成することにより、駆動部30をシンプルな構成とすることができ、また、駆動装置10の設計コストを抑制することが可能である。ただし、第1従駆動波形群47a及び第2従駆動波形群48aに含まれる波形は、主駆動波形群44に含まれる波形56と異なる波形であっても良く、第2実施形態で説明するように、移動体20を第3の方向54に移動させる波形58(
図8参照)とすることもできる。
【0044】
主駆動波形群44と従駆動波形群46a(第1従駆動波形群47a)の間に挿入される第2休止時間Δt21は、第1の時間Δt11(
図5)より短く、停止時における移動体20の振動を抑制する観点から、振動の周期Tより短いことが好ましい。特に、第1従駆動波形群47aが、主駆動波形群44と同様の方向(第1の方向50)に移動体20を移動させる波形を含む場合は、第2休止時間Δt21は、振動の周期Tの4分の1より短いことが好ましい。また、第2休止時間Δt21の最小値は特に限定されないが、例えば第2休止時間Δt21は、波形56の印加周期の1周期より長い時間とすることができる。また、第2休止時間Δt21は、主駆動波形群44の印加終了後に、確実に移動体20を一旦停止させる観点から、振動の周期Tの8分の1以上とすることが好ましい。
【0045】
第1従駆動波形群47aと第2従駆動波形群48aの間に挿入される第3休止時間Δt31は、第2休止時間Δt21と同様に、第1の時間Δt11(
図5)より短く、振動の周期Tより短いことが好ましい。特に、第2従駆動波形群48aが、第1従駆動波形群47aと同様の方向(第1の方向50)に移動体20を移動させる波形を含む場合は、第3休止時間Δt31は、振動の周期Tの4分の1より短いことが好ましい。また、第3休止時間Δt31の最小値についても、第2休止時間Δt21と同様に、波形56の印加周期より長ければ特に限定されない。
【0046】
第1従駆動波形群47a及び第2従駆動波形群48aは、移動体20の停止時の振動を抑制する目的で印加されるため、第1従駆動波形群47aの印加時間Δt71及び第2従駆動波形群48aの印加時間Δt81は、主駆動波形群44の印加時間Δt61より短いことが好ましい。また、なるべく早期に振動を停止させるために、従駆動波形群46aの開始から終了までの時間(Δt71+Δt31+Δt81)を、主駆動波形群44の印加時間Δt61より短くすることが好ましい。
【0047】
図9(b)は、
図5における時刻A’〜D’における移動体20の位置及び姿勢を模式的に表したものである。
図9(b)A’及び
図9(b)B’に示すように、移動体20は、第1駆動信号42aの主駆動波形群44が印加されている間(時刻A’)は上昇(第1の方向50へ移動)し、主駆動波形群44の印加が終了した時点(時刻B’)で停止する。その後、
図5、
図9(b)B’及び
図9(b)C’に示すように、移動体20の振動が始まり、第2端部28が上方(第1の方向50)へ向かって振動を開始する。
【0048】
第1駆動信号42aによる駆動では、
図9(b)B’〜
図9(b)C’に示すように、第2端部28が上方へ振動しているタイミングで、移動体20を上昇させる第1従駆動波形群47aが印加され、移動体20の係合部26が上方へ移動する。係合部26が上昇することにより、移動体20を振動させる力が解放されるため、移動体20の振動が抑制される。
【0049】
さらに、第1駆動信号42aによる駆動では、
図5の時刻C’〜時刻D’に示すように、第1従駆動波形群47aの印加が終了してから第3休止時間Δt31経過後に、第2従駆動波形群48aが印加される。
図9(b)C’に示すように、第1従駆動波形群47aの印加が停止した時点(時刻C’)においても、移動体20を振動させる力が残る場合がある。この場合、移動体20の係合部26が停止した時点(時刻C’)で、第2端部28が再度上方へ向かって振動する。
【0050】
しかし、
図9(b)C’〜
図9(b)D’に示すように、再び第2端部28が上方へ振動しているタイミングで、移動体20を上昇させる第2従駆動波形群48aが印加されることにより、移動体20の係合部26が上方へ移動し、移動体20を振動させる力が解放される。このようにして、第1駆動信号42aによる駆動では、移動体20を振動させる力が、従駆動波形群46aの印加によって解放されるため、第1駆動信号42aの印加終了時に移動体20に生じる振動が効果的に抑制される。
【0051】
図5及び
図6に示すように、主駆動波形群44と第1従駆動波形群47aの間に挿入される第2休止時間Δt21は、主駆動波形群44と第1従駆動波形群47aが同じ方向に移動体20を移動させる波形56を含む場合は、振動の周期Tの4分の1より短いことが好ましい。主駆動波形群44の印加が終了してから振動の周期Tの4分の1の時間が経過するまでの間に、移動体20を主駆動波形群44と同様の方向に移動させる第1従駆動波形群47aを印加することにより、移動体20を振動させる力を効果的に解放することができる。
【0052】
また、第1従駆動波形群47aと第2従駆動波形群48bの間に挿入される第3休止時間Δt31についても、第2休止時間Δt21と同様の理由から、第1従駆動波形群47aと第2従駆動波形群48aが同じ方向に移動体20を移動させる波形56を含む場合は、振動の周期Tの4分の1より短いことが好ましい。
【0053】
図10は、参考例に係る第1駆動信号によって移動体20を駆動した場合と、第1実施形態の実施例に係る第1駆動信号92によって移動体20を移動した場合における第2端部28の動きの実測結果を、対比して表示したものである。
図10の太線は参考例での第2端部の動きを表しており、
図10の細線は実施例での第2端部28の動きを表している。
【0054】
実測結果で用いた参考例に係る第1駆動信号92の印加時間は1.05ms(
図4下方参照)、実施例に係る第1駆動信号42aにおける主駆動波形群44の印加時間Δt61は0.84ms、第1従駆動波形群の印加時間Δt71は0.14ms、第2従駆動波形群の印加時間Δt81は0.07ms、第1の時間Δt11は32.86ms、第2休止時間Δt21及び第3休止時間Δt31は0.15msとした(
図5下方及び
図6参照)。なお、参考例に係る第1駆動信号92、実施例における主駆動波形群44、第1従駆動波形群47a、第2従駆動波形群48aには、共通の波形が、共通の周波数(143kHz)で含まれている。
【0055】
図10に示すように、参考例に係る第1駆動信号92を印加した場合、第1駆動信号92の印加が終わって移動体20の上昇が終了した後も、第2端部28が動き続けており、移動体20が振動していることが分かる。実測された移動体20の振動の周期Tは約1.2ms(833Hz)であり、動作音の発生も確認された。
【0056】
これに対して、実施例に係る第1駆動信号42aを印加した場合、第1駆動信号42aの印加が終わり移動体20の上昇が終了した後は、ほとんど第2端部28が動いておらず、移動体20の振動が抑制されていることがわかる。また、実施例では、移動体20の振動に伴う動作音の発生も確認されなかった。
【0057】
このように、
図5及び
図6に示すような駆動信号40aを圧電素子12に印加する駆動装置10は、停止時に移動体20に生じる振動を抑制し、移動体20の振動によって生じる動作音を効果的に低減することが可能である。また、駆動装置10は、停止時に移動体20に生じる振動を抑制することにより、光学系22を透過する光の像の乱れを低減できるため、これを搭載する撮像装置におけるオートフォーカスの高精度化及び高速化にも有利である。
【0058】
第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係る振動装置における移動体20の動き及び駆動信号40bにおける第1駆動信号42bの印加タイミングを、参考例における移動体20の動きと対比して示したグラフである。
図7においても、
図4及び
図5と同様に、移動体20の第2端部28の動きを表すグラフ(
図6上部)と、駆動信号40bの時間変化を表すグラフ(
図7下部)とは、時間(横軸)を揃えて表示している。
【0059】
図7上部の太点線グラフは、第2実施形態に係る振動装置における移動体20の第2端部28の動きを示しており、
図7上部の実線グラフは、参考例に係る第2端部28の動きを示している。第2実施形態に係る駆動装置は、駆動信号40bが第1実施形態の駆動信号40aと異なることを除き、その他の構成は第1実施形態の駆動装置10と同様であるため、重複部分についての説明は省略する。
【0060】
第2実施形態の駆動信号40bでも、第1実施形態の駆動信号40aと同様に、第1駆動信号42bが第1の時間を挟んで繰り返し圧電素子12に印加され、これにより、移動体20は、第1の方向に沿って段階的に移動する(
図3参照)。
図7に示す第1駆動信号42bは、主駆動波形群44だけでなく従駆動波形群46bを有する点や、従駆動波形群46bが第1従駆動波形群47bと第2従駆動波形群48bを含む点で、第1実施形態の第1駆動信号42aと共通である。
【0061】
しかし、
図7に示す第1駆動信号42bは、第2従駆動波形群48bが、移動体20を第3の方向54(
図1参照)に移動させる波形58を含む点で、第1実施形態の第1駆動信号42aと相違する。すなわち、第1駆動信号42bでは、主駆動波形群44と第1従駆動波形群47bは、移動体20を第1の方向40に移動させる波形56を含むが、第2従駆動波形群48bは、主駆動波形群44及び第1従駆動波形群47bとは反対方向に移動体20を移動させる波形58を含む。
【0062】
図8は、
図6に示す第1駆動信号42bを、模式的に表したものである。第1駆動信号42bの従駆動波形群46bは、主駆動波形群44に対して第2休止時間Δt22を挟んで配置される。また、従駆動波形群46bは、主駆動波形群に対して第2休止時間Δt22を挟んで配置される第1従駆動波形群47bと、第1従駆動波形群47bに対して第3休止時間Δt32を挟んで配置される第2従駆動波形群48aとを有する。
【0063】
主駆動波形群44及び第1従駆動波形群47bに含まれる波形56については、第1実施形態の第1駆動信号42bに含まれる波形56と同様である。第2従駆動波形群48bに含まれる波形58は、移動体20を第1の方向50とは反対方向である第3の方向54に移動させるものであれば特に限定されないが、例えば
図1に示す第2駆動部34が生成する第2駆動信号49(特にその主駆動波形群)に含まれる波形と共通とすることができる。
【0064】
図9(c)は、
図7における時刻A”〜G”における移動体20の位置及び姿勢を模式的に表したものである。第1駆動信号42bは、主駆動波形群44及び第1従駆動波形群については、第1実施形態の第1駆動信号42aと共通なので、時刻A”(
図9(c)A”)〜時刻C”(
図9(c)C”)までは、第1実施形態の時刻A’(
図9(b)A’)〜時刻C’(
図9(b)C’)と同様である。
【0065】
図7に示す第1駆動信号42bによる駆動では、
図5の時刻C”〜時刻E”に示すように、第1従駆動波形群47bの印加が終了してから第3休止時間Δt32経過後に、第2従駆動波形群48bが印加される。ここで、第1駆動信号42bにおける第3休止時間Δt32は、第1実施形態の第3休止時間Δt31よりも長く、移動体20の第2端部28が上方への振動を終え、下方へ向かって振動しているタイミングに合わせて、第2従駆動波形群48bが印加される。
【0066】
図9(c)D”〜
図9(c)E”に示すように、第2端部28が下方へ振動しているタイミングで、移動体20を下降(第3の方向54へ移動)させる第2従駆動波形群48bが印加されることにより、移動体20の係合部26が下方へ移動し、移動体20を振動させる力が解放される。このように、第1駆動信号42bによる駆動でも、第1実施形態の第1駆動信号42aによる駆動と同様に、移動体20を振動させる力を従駆動波形群46bの印加によって解放することができ、第1駆動信号42bの印加終了時に移動体20に生じる振動が効果的に抑制される。
【0067】
図7及び
図8に示すように、第1従駆動波形群47bと第2従駆動波形群48bの間に挿入される第3休止時間Δt32は、第2従駆動波形群48bが第1従駆動波形群47aと反対方向に移動体20を移動させる波形58を含む場合は、振動の周期Tの4分の1より長く、振動の周期Tの4分の3より短いことが好ましい。主駆動波形群44の印加が終了してから、振動の周期Tの4分の1の時間が経過した後であって、振動の周期Tの4分の3の時間が経過するまでの間に、移動体を主駆動波形群44と反対の方向に移動させる第2従駆動波形群48bを印加することにより、移動体20を振動させる力を効果的に解放することができる。
【0068】
その他の実施形態
上述の実施形態では、移動体20を第1の方向50に移動させる第1駆動信号42a,42bを例に説明を行ったが、
図3に示すようなオートフォーカス動作を行う場合には、移動体20を第3の方向54に移動させる第2駆動信号49についても、第1駆動信号42a,42bと同様の対応が可能である。すなわち、駆動部30は、
図6又は
図8に示すように、主駆動波形群44aと従駆動波形群46aを有する第2駆動信号49を生成し、これを圧電素子12に繰り返し印加することにより、振動及び動作音の少ない移動体20の移動を実現することができる。
【0069】
また、第2実施形態に係る第1駆動信号42bでは、第2従駆動波形群48bが、主駆動波形群33とは反対方向に移動体20を移動させる波形58を含むが、これとは異なり、第1従駆動波形群47bが、主駆動波形群44とは反対方向に移動体20を移動させる波形58を含んでいても良い。ただし、この場合は、主駆動波形群44と従駆動波形群46b(第1従駆動波形群47b)の間に挿入される第2休止時間Δt21,Δt22は、振動の周期Tの4分の1より長く、振動の周期Tの4分の3より短いことが好ましい。