特許第6011195号(P6011195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011195
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20161006BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161006BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B65H5/06 P
   B65H5/06 H
   B41J2/01 305
   B41J11/42
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-208807(P2012-208807)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61984(P2014-61984A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 俊介
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−208265(JP,A)
【文献】 特開2012−148529(JP,A)
【文献】 特開2006−021370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B41J 2/01
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送路に給送する給送部と、
上記給送部によって上記搬送路に給送された上記被記録媒体を、複数のローラで挟持して搬送向きの下流側へ搬送する搬送部と、
上記搬送部より上記下流側に配置され、上記搬送向きに直交する走査方向に移動し、上記被記録媒体へ向けてインクを吐出することにより画像記録を行う記録部と、
上記記録部より上記下流側に配置され、上記被記録媒体を挟持して上記下流側へ排出する排出部と、
上記搬送部を、上記複数のローラが互いに当接する第1姿勢と、上記複数のローラが互いに離間する第2姿勢とに姿勢変化させる接離機構と、
上記記録部を上記走査方向に移動させる第1モータと、
上記給送部及び上記接離機構を駆動する第2モータと、
上記記録部が予め定められた切換位置に移動することにより、複数のギヤの噛合状態を、上記第2モータの駆動力を上記給送部に伝達する第1状態と、上記第2モータの駆動力を上記接離機構に伝達する第2状態とに切り換え可能な切換機構と、
上記第1モータ及び上記第2モータの駆動を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回り、且つ上記被記録媒体が上記搬送部に挟持されていることを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構を上記第1状態から上記第2状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる離間準備動作を実行し、
上記被記録媒体の先端が上記排出部を通過した後で且つ後端が上記搬送部を通過する前に、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構を上記第2状態から上記第1状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる給送準備動作を実行するインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記被記録媒体の先端が上記排出部に到達する前に、上記離間準備動作を実行する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記被記録媒体に記録される画像の解像度が基準解像度を上回る場合に、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回ると判断して、上記離間準備動作を実行する請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記記録部は、上記被記録媒体に、上記搬送向きの所定の幅毎に画像記録を行うものであり、
上記制御部は、直前に画像記録が行われた上記所定の幅の画像記録面に吐出されたインクの量が基準量を上回る場合に、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回ると判断して、上記離間準備動作を実行する請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記記録部は、上記被記録媒体に、上記搬送向きの所定の幅毎に画像記録を行うものであり、
上記制御部は、次に画像記録が行われる上記所定の幅の画像記録面に吐出されるインクの量が基準量を上回る場合に、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回ると判断して、上記離間準備動作を実行する請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記離間準備動作が完了した後に、次の上記所定の幅の画像記録面に対する画像記録を上記記録ヘッドに開始させる請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
被記録媒体を搬送路に給送する給送部と、
上記給送部によって上記搬送路に給送された上記被記録媒体を、複数のローラで挟持して搬送向きの下流側へ搬送する搬送部と、
上記搬送部より上記下流側に配置され、上記搬送向きに直交する走査方向に移動し、上記被記録媒体へ向けてインクを吐出することにより画像記録を行う記録部と、
上記記録部より上記下流側に配置され、上記被記録媒体を挟持して上記下流側へ排出する排出部と、
上記搬送部を、上記複数のローラが互いに当接する第1姿勢と、上記複数のローラが互いに離間する第2姿勢とに姿勢変化させる接離機構と、
上記記録部を走査方向に移動させる第1モータと、
上記給送部及び上記接離機構を駆動する第2モータと、
上記記録部が予め定められた切換位置に移動することにより、複数のギヤの噛合状態を、上記第2モータの駆動力を上記給送部に伝達する第1状態と、上記第2モータの駆動力を上記接離機構に伝達する第2状態とに切り換え可能な切換機構と、
上記第1モータ及び上記第2モータの駆動を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記被記録媒体を構成する繊維の方向と上記搬送向きとが交差すると判断し、且つ上記被記録媒体が上記搬送部に挟持されていることを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構の噛合状態を上記第1状態から上記第2状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる離間準備動作を実行し、
上記被記録媒体の先端が上記排出部を通過した後で且つ後端が上記搬送部を通過する前に、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構を上記第2状態から上記第1状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる給送準備動作を実行するインクジェット記録装置。
【請求項8】
上記切換位置は、上記主走査方向の一方側端部であり、
上記制御部は、上記記録部が上記走査方向の一方側端部から他方側端部へ移動している間に上記被記録媒体が搬送路内で詰まったことを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記走査方向の一方側端部に移動させ、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させ、上記第2モータを駆動させて上記接離機構を上記第1姿勢から上記第2姿勢に姿勢変化させる請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路に詰まった被記録媒体を容易に取り除くことのできるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送ローラ及び当該搬送ローラに押圧されるピンチローラ(以下、「挟持手段」とも表記する。)を離間させることで、挟持手段に挟持された被記録媒体(以下、「用紙」とも表記する。)を取り除くことが可能な画像記録装置が存在する。例えば特許文献1には、駆動伝達切換機構を構成する複数のギヤの噛合状態を、モータの駆動力が給紙ローラに伝達される状態と、モータの駆動力が挟持手段を離間させる接離機構に伝達される状態との間で切り換えながら画像記録を行う画像記録装置が開示されている。
【0003】
より具体的には、特許文献1には、駆動伝達切換機構に含まれる第2ギヤを第1位置から第2に位置に移動させた後に、モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させることによってモータの駆動力が接離機構に伝達可能となり、第2ギヤを第2位置から第1位置に移動させた後に、モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させることによってモータの駆動力が給紙ローラに伝達可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−148529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像記録装置は、画像記録を行う全ての用紙について以下の一連の動作を実行する。つまり、用紙が挟持手段に到達した後に第2ギヤを第2位置に移動させてから画像記録を行い、次の用紙を給紙する前に第2ギヤを第1位置に移動させる。なお、第2ギヤが移動する度にモータは正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行する。そのため、例えば、速度を重視して複数の用紙に連続して画像記録を行いたい場合等に、画像記録のスループットを向上させるのが難しいという課題を生じる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像記録のスループットの低下を抑制し、且つ搬送路に詰まった被記録媒体を容易に取り除くことができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の一形態に係るインクジェット記録装置は、被記録媒体を搬送路に給送する給送部と、上記給送部によって上記搬送路に給送された上記被記録媒体を、複数のローラで挟持して搬送向きの下流側へ搬送する搬送部と、上記搬送部より上記下流側に配置され、上記搬送向きに直交する走査方向に移動し、上記被記録媒体へ向けてインクを吐出することにより画像記録を行う記録部と、上記搬送部を、上記複数のローラが互いに当接する第1姿勢と、上記複数のローラが互いに離間する第2姿勢とに姿勢変化させる接離機構と、上記記録部を上記走査方向に移動させる第1モータと、上記給送部及び上記接離機構を駆動する第2モータと、上記記録部が予め定められた切換位置に移動することにより、複数のギヤの噛合状態を、上記第2モータの駆動力を上記給送部に伝達する第1状態と、上記第2モータの駆動力を上記接離機構に伝達する第2状態とに切り換え可能な切換機構と、上記第1モータ及び上記第2モータの駆動を制御する制御部とを備える。上記制御部は、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回り、且つ上記被記録媒体が上記搬送部に挟持されていることを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構を上記第1状態から上記第2状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる離間準備動作を実行する。
【0008】
上記構成によれば、予め切換機構を第2状態に切り換えておくことで、紙詰まり(以下、「JAM」と表記する。)が発生した場合に搬送部を構成する複数のローラを離間させることができる。その結果、JAM処理を容易に行うことができる。また、被記録媒体に吐出されるインク量が閾値を上回る(つまり、被記録媒体に着弾したインクに起因するJAMの発生確率が高い)場合に限定して切換機構の状態切り換えを行うので、状態切り換えに起因するスループットの低下を低減することができる。
【0009】
(2) 好ましくは、当該インクジェット記録装置は、上記記録部より上記下流側に配置され、上記被記録媒体を挟持して上記下流側へ排出する排出部を更に備えている。そして、上記制御部は、上記被記録媒体の先端が上記排出部に到達する前に、上記離間準備動作を実行する。
【0010】
被記録媒体の先端が排出部を通過した後にJAMが発生する確率は低いので、被記録媒体の先端が排出部に到達した後に離間準備動作をしないことにより、スループットの低下をさらに抑制できる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記制御部は、上記被記録媒体の先端が上記排出部を通過したことを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構を上記第2状態から上記第1状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる給送準備動作を実行する。
【0012】
被記録媒体の先端が排出部を通過した後にJAMが発生する確率は低いので、当該被記録媒体に対する画像記録が終了する前に給紙準備動作を実行しておくことにより、切換機構の状態切り換えに起因するスループットの低下が最小限に抑えられる。
【0013】
(4) 好ましくは、上記制御部は、上記被記録媒体の後端が上記搬送部を通過したことを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構を上記第2状態から上記第1状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる給送準備動作を実行する。
【0014】
被記録媒体の後端が搬送部を通過した後に搬送部を構成するローラを離間させる必要はないので、当該被記録媒体に対する画像記録が終了する前に給紙準備動作を実行しておくことにより、切換機構の状態切り換えに起因するスループットの低下が最小限に抑えられる。
【0015】
(5) 一例として、上記制御部は、上記被記録媒体に記録される画像の解像度が基準解像度を上回る場合に、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回ると判断して、上記離間準備動作を実行する。
【0016】
(6) 他の例として、上記記録部は、上記被記録媒体に、上記搬送向きの所定の幅毎に画像記録を行うものであり、上記制御部は、直前に画像記録が行われた上記所定の幅の画像記録面に吐出されたインクの量が基準量を上回る場合に、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回ると判断して、上記離間準備動作を実行する。
【0017】
(7) さらに他の例として、上記記録部は、上記被記録媒体に、上記搬送向きの所定の幅毎に画像記録を行うものであり、上記制御部は、次に画像記録が行われる上記所定の幅の画像記録面に吐出されるインクの量が基準量を上回る場合に、上記記録部から上記被記録媒体に吐出されるインクの量が閾値を上回ると判断して、上記離間準備動作を実行する。
【0018】
上記のいずれの判断基準によっても、被記録媒体に着弾したインクに起因するJAMの発生確率を推定することができる。その結果、JAMの発生確率の高い場合に限定して離間準備動作を実行できるので、スループットの低下を抑制できる。
【0019】
(8) 好ましくは、上記制御部は、上記離間準備動作が完了した後に、次の上記所定の幅の画像記録面に対する画像記録を上記記録ヘッドに開始させる。
【0020】
上記構成によれば、搬送部を構成するローラを離間させる準備が完全に整ってから画像記録が開始されるので、画像記録中に生じるJAM処理が容易になる。
【0021】
(9) 本発明の他の形態に係るインクジェット記録装置は、被記録媒体を搬送路に給送する給送部と、上記給送部によって上記搬送路に給送された上記被記録媒体を、複数のローラで挟持して搬送向きの下流側へ搬送する搬送部と、上記搬送部より上記下流側に配置され、上記搬送向きに直交する走査方向に移動し、上記被記録媒体へ向けてインクを吐出することにより画像記録を行う記録部と、上記搬送部を、上記複数のローラが互いに当接する第1姿勢と、上記複数のローラが互いに離間する第2姿勢とに姿勢変化させる接離機構と、上記記録部を走査方向に移動させる第1モータと、上記給送部及び上記接離機構を駆動する第2モータと、上記記録部が予め定められた切換位置に移動することにより、複数のギヤの噛合状態を、上記第2モータの駆動力を上記給送部に伝達する第1状態と、上記第2モータの駆動力を上記接離機構に伝達する第2状態とに切り換え可能な切換機構と、上記第1モータ及び上記第2モータの駆動を制御する制御部とを備える。上記制御部は、上記被記録媒体を構成する繊維の方向と上記搬送向きとが交差すると判断し、且つ上記被記録媒体が上記搬送部に挟持されていることを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記切換位置に移動させることによって上記切換機構の噛合状態を上記第1状態から上記第2状態に切り換えた後、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させる離間準備動作を実行する。
【0022】
上記構成のように、インクの吐出量に代えて、被記録媒体の繊維の方向と搬送向きとの関係によってもJAMの発生確率を推定することができる。ただし、インクの吐出量によるJAMの発生確率の推定と、被記録媒体の繊維の方向によるJAMの発生確率の推定とは相反するものではなく、両者を組み合わせてJAMの発生確率を推定してもよい。
【0023】
(10) 本発明のさらに他の形態に係るインクジェット記録装置は、被記録媒体を搬送路に給送する給送部と、上記給送部によって上記搬送路に給送された上記被記録媒体を、複数のローラで挟持して搬送向きの下流側へ搬送する搬送部と、上記搬送部より上記下流側に配置され、上記搬送向きに直交する走査方向に移動し、上記被記録媒体へ向けてインクを吐出することにより画像記録を行う記録部と、上記搬送部を、上記複数のローラが互いに当接する第1姿勢と、上記複数のローラが互いに離間する第2姿勢とに姿勢変化させる接離機構と、上記記録部を走査方向に移動させる第1モータと、上記給送部及び上記接離機構を駆動する第2モータと、上記記録部が上記走査方向の一方側端部に移動することにより、複数のギヤの噛合状態を、上記第2モータの駆動力を上記給送部に伝達する第1状態から、上記第2モータの駆動力を上記接離機構に伝達する第2状態に切り換え可能な切換機構と、上記第1モータ及び上記第2モータの駆動を制御する制御部とを備える。上記制御部は、上記記録部が上記走査方向の一方側端部から他方側端部へ移動している間に上記被記録媒体が搬送路内で詰まったことを条件として、上記第1モータを駆動させて上記記録部を上記走査方向の一方側端部に移動させ、上記第2モータに正転駆動及び逆転駆動を交互に少なくとも1回実行させ、上記第2モータを駆動させて上記接離機構を上記第1姿勢から上記第2姿勢に姿勢変化させる。
【0024】
上記構成によれば、予め離間準備動作を実行していなくても、JAM発生後に搬送部を構成するローラを離間できる。その結果、切換機構の状態切り換えに起因するスループットの低下を最小限に抑えると共に、JAM処理が容易になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、画像記録のスループットの低下を抑制し、且つ搬送路に詰まった被記録媒体を容易に取り除くことができるインクジェット記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、複合機10の斜視図である。
図2図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図3図3は、駆動伝達切換機構50と搬送部59と接離機構90とを模式的に示す正面図である。
図4図4は、駆動伝達切換機構50と接離機構90の動作を説明するための図であり、(A)には切換レバー55の平面図が示されており、(B)には搬送部59が第1姿勢の場合における第2伝達部57のプラネットギヤ157を模式的に示す左側面図が示されており、(C)には搬送部59が第1姿勢の場合における接離機構90の偏心カム160を模式的に示す左側面図が示されており、(D)には搬送部59が第2姿勢の場合における第2伝達部57のプラネットギヤ157を模式的に示す左側面図が示されており、(E)には搬送部59が第2姿勢の場合における接離機構90の偏心カム160を模式的に示す左側面図が示されている。
図5図5は、第1伝達部27及び第3伝達部74を模式的に示す右側面図である。
図6図6は、制御部130の構成を示すブロック図である。
図7図7は、制御部130による処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義される。
【0028】
[複合機10]
図1に示されるように、本発明の画像記録装置の一例である複合機10は、概ね薄型の直方体に形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11(本発明のインクジェット記録装置の一例)が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。プリント機能としては、記録用紙の両面に画像を記録する両面画像記録機能を有している。本実施形態において、複合機10は両面画像記録機能を有しているが、複合機10は片面画像記録機能のみを有していてもよい。
【0029】
プリンタ部11は、正面に開口13が形成された筐体14を有している。また、各種サイズの記録用紙を載置可能な給紙トレイ20及び排紙トレイ21(図2参照)が、開口13から前後方向8に挿抜可能である。
【0030】
複合機10の正面上部には、操作パネル17が設けられている。操作パネル17は、複合機10を操作するための装置である。複合機10は、操作パネル17或いは通信回線(有線、無線を問わない)を通じて接続された機器からの操作入力に基づいて動作する。
【0031】
図2に示されるように、プリンタ部11は、給紙トレイ20から記録用紙をピックアップして給送する給紙部15(本発明の給送部の一例)と、給紙トレイ20の上方に設けられており、給紙部15によって給紙された記録用紙にインク滴を吐出して記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)と、経路切換部41などを備えている。
【0032】
[給紙部15]
図2に示されるように、給紙部15は、給紙トレイ20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給紙部15は、給送ローラ25、給紙アーム26、及び第1伝達部27(図3参照)を備えている。給送ローラ25は、給紙アーム26の先端部で軸支されている。給紙アーム26は、基端部に設けられた軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給送ローラ25は、給紙トレイ20に当接及び離間が可能である。つまり、給送ローラ25は、給紙トレイ20に載置された記録用紙に当接可能である。
【0033】
給送ローラ25は、後述される第1伝達部27によって、給紙用モータ70(本発明の第2モータの一例、図3及び図6参照)の駆動力が伝達されて回転する。つまり、給紙用モータ70は、給送ローラ25へ駆動力を付与する。なお、給紙用モータ70は、後述する接離機構90(本発明の接離機構の一例、図3参照)へも駆動力を付与する。給送ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙のうち、一番上側の記録用紙に当接された状態で、当該記録用紙を以下で説明する湾曲路65Aへ送り出す。
【0034】
[第1搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、給紙トレイ20の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙トレイ21に至る第1搬送路65が形成されている。第1搬送路65は、給紙トレイ20の先端から第1搬送ローラ60に至る間に形成された湾曲路65Aと、第1搬送ローラ60から排紙トレイ21に至る間に形成された排紙路65Bとに区分される。
【0035】
湾曲路65Aは、給紙トレイ20に設けられた分離傾斜部22の上端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。湾曲路65Aは、プリンタ部11の内部側を中心とする円弧形状に概ね形成されている。給送ローラ25によって給紙トレイ20から給送される記録用紙は、湾曲路65Aを第1搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き)に沿って湾曲されつつ、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61による記録用紙の挟持位置へ案内される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって形成されている。
【0036】
排紙路65Bは、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61による記録用紙の挟持位置から排紙トレイ21に渡って延設された直線状の通路である。記録用紙は、排紙路65Bを第1搬送向きに沿って案内される。記録部24が設けられている箇所において、排紙路65Bの一部は、記録用紙を支持可能なプラテン42によって形成されている。また、排紙路65Bは、記録部24が設けられていない箇所において、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材82及び下側ガイド部材83によって形成されている。
【0037】
記録部24よりも第1搬送向きの下流側、且つ後述する第2搬送ローラ62よりも第1搬送向きの下流側に、分岐部36が存在する。排紙路65Bを搬送される記録用紙は、両面画像記録の際、分岐部36の下流側でスイッチバックされ、後述する第2搬送路67へ向けて搬送される。
【0038】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、排紙路65Bにおいて、第1搬送ローラ60の第1搬送向きの下流側に設けられている。記録部24は、記録ヘッド38を搭載して、第1搬送向きと交差(具体的には、直交)し且つプラテン42に支持される記録用紙の画像記録面に沿った左右方向9(本発明の走査方向の一例)へ往復移動可能なキャリッジ40を備えている。
【0039】
キャリッジ40は、例えば、プリンタ部11の内部に左右方向9に延設された2本のガイドレール(不図示)によって支持されている。2本のガイドレールは、前後方向8に所定間隔をあけて配置されている。キャリッジ40は、2本のガイドレールを跨ぐようにして配置されている。これにより、キャリッジ40は、2本のガイドレール上を左右方向9に摺動可能である。ガイドレールの上面に、ベルト駆動機構(不図示)が配設されている。ベルト駆動機構を構成するベルトは、キャリッジ40と連結されている。キャリッジ駆動モータ103(本発明の第1モータの一例、図6参照)からベルト駆動機構に駆動力が伝達されることにより、キャリッジ40は左右方向9に摺動される。つまり、キャリッジ駆動モータ103は、キャリッジ40へ駆動力を付与する。
【0040】
図2に示されるように、記録ヘッド38は、当該記録ヘッド38がプラテン42と対向するようにしてキャリッジ40に備えられている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ(不図示)からインクチューブ(不図示)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。記録ヘッド38の下面側のノズル面には、複数のノズル(不図示)が形成されている。各ノズルは、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各ノズルから各色インクが微小なインク滴として吐出される。
【0041】
キャリッジ40は、記録用紙が記録ヘッド38の下方の頭出し位置33に到達すると、左右方向9へ往復移動を開始する。これにより、記録ヘッド38が、記録部24の下方に設けられたプラテン42上を搬送される記録用紙に対して左右方向9に走査される。また、記録ヘッド38は記録用紙に対してインク滴を吐出する。これにより、記録用紙の上面(すなわち、画像記録面)に画像が記録される。なお、頭出し位置33は、画像記録開始時における記録用紙の先端の位置である。また、上記の頭出し位置33は、例えば、記録ヘッド38においてノズルが配置されている領域のうち、第1搬送向きの下流端の位置である。
【0042】
[搬送ローラ45、60、62]
図2に示されるように、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61(本発明の複数のローラの一例)で構成される搬送部59(本発明の搬送部の一例)が、第1搬送路65において、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19と記録部24との間に設けられている。ピンチローラ61は、第1搬送ローラ60の下方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1搬送ローラ60及びピンチローラ61は、給送ローラ25によって湾曲路65Aを搬送されてきた記録用紙を挟持して、排紙路65Bに沿って第1搬送向きに搬送する。これにより、当該記録用紙は、プラテン42上へ送られる。
【0043】
第2搬送ローラ62及び拍車63で構成される排出部64(本発明の排出部の一例)が、排紙路65Bにおいて、記録部24と上側ガイド部材82及び下側ガイド部材83との間に設けられている。拍車63は、第2搬送ローラ62の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2搬送ローラ62及び拍車63は、記録部24で画像を記録された記録用紙を挟持して第1搬送向きの下流側へ搬送する。
【0044】
各搬送ローラ60、62は、搬送用モータ71から駆動伝達機構(不図示)を介して回転駆動力が伝達されて回転される。つまり、搬送用モータ71は、各搬送ローラ60、62へ駆動力を付与する。当該駆動伝達機構は、遊星ギヤなどから構成されている。これにより、当該駆動伝達機構は、搬送用モータ71が正転及び逆転方向のいずれに回転されても、各搬送ローラ60、62を一回転方向へ回転させる。これにより、記録用紙は第1搬送向きへ搬送される。
【0045】
第3搬送ローラ45及び拍車46が、排紙路65Bにおいて、排出部64よりも第1搬送向きの下流側に設けられている。拍車46は、第3搬送ローラ45の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第3搬送ローラ45のローラ面に圧接されている。
【0046】
第3搬送ローラ45は、搬送用モータ71から駆動伝達機構(不図示)を介して正逆転方向の駆動力が伝達されて、正転または逆転される。例えば、片面記録が行われる場合、第3搬送ローラ45は正転される。これにより、記録用紙は第3搬送ローラ45及び拍車46に挟持されて第1搬送向きの下流側へ搬送され、排紙トレイ21に排紙される。一方、両面記録が行われる場合、第3搬送ローラ45及び拍車46が記録用紙の後端を挟持した状態で、第3搬送ローラ45の回転方向が正転から逆転へ切り換えられる。これにより、記録用紙は、第1搬送向きと逆向きに搬送され、以下で説明する経路切換部41によって後述する第2搬送路67へ向けて搬送される。
【0047】
[経路切換部41]
図2に示されるように、経路切換部41は、排紙路65Bにおいて、第2搬送ローラ62よりも第1搬送向きの下流側、且つ分岐部36よりも第1搬送向きの上流側に配置されている。経路切換部41は、補助ローラ47、48、フラップ49、及び軸87で構成されている。
【0048】
経路切換部41の軸87は、プリンタ部11のフレームなどに設けられている。フラップ49は、軸87から概ね第1搬送向きの下流側へ延出されており、軸87に回動可能に軸支されている。補助ローラ47及び補助ローラ48は、フラップ49に軸支されている。なお、補助ローラ47、48のローラ面は、拍車63及び拍車46と同様に拍車状に形成されている。
【0049】
フラップ49は、姿勢変化可能に構成されており、下側ガイド部材83よりも上方に位置する排出姿勢(図2に破線で示される姿勢)と、延出端部49Aが分岐部36よりも下方へ進入する反転姿勢(図2に実線で示される姿勢)との間で回動する。フラップ49は、通常状態において自重によって反転姿勢であり、排紙路65Bを搬送される記録用紙に持ち上げられることによって回動して排出姿勢に姿勢変化する。また、フラップ49は、記録用紙の後端が補助ローラ47を通過すると、自重によって回動して排出姿勢から反転姿勢に姿勢変化する。この状態において、第3搬送ローラ45の正転が継続されると、記録用紙は排紙トレイ21に排紙される。一方、第3搬送ローラ45の回転方向が正転から逆転に切り換えられると、記録用紙は第2搬送路67に向けて搬送される。なお、フラップ49は、モータなどによって回動される構成であってもよい。
【0050】
[第2搬送路67]
図2に示されるように、第2搬送路67は、分岐部36から分岐され、記録部24の下側且つ給紙部15の上側を通って、第1搬送路65における記録部24よりも第1搬送向きの上流側の合流部37で湾曲路65Aと合流するように延びた経路である。記録用紙は、第2搬送路67を第2搬送向きに案内される。ここで、第2搬送向きは、第2搬送路67を分岐部36から合流部37に向かう向きで、図2における矢印付きの二点鎖線で示される向きを指す。第2搬送路67は、上側を第2ガイド部材32によって形成されており、下側を第1ガイド部材31によって形成されている。
【0051】
[第4搬送ローラ68]
図2に示されるように、第4搬送ローラ68及び従動ローラ69が、第2搬送路67に設けられている。第4搬送ローラ68は、第2搬送路67において、従動ローラ69の下方で、且つ従動ローラ69に対向する位置に配置されている。第4搬送ローラ68は、後述される第3伝達部74によって、給紙用モータ70(図6参照)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、第3搬送ローラ45によって第2搬送路67に搬送されてきた記録用紙が第4搬送ローラ68と従動ローラ69との間に挟持されると、第4搬送ローラ68は当該記録用紙を第2搬送路67に沿って第2搬送向きに搬送する。これにより、当該記録用紙は、合流部37を介して湾曲路65Aへ送られる。
【0052】
[駆動伝達切換機構50]
図3に示されるように、プリンタ部11には、駆動伝達切換機構50(本発明の切換機構の一例)が設けられている。駆動伝達切換機構50は、複数のギヤで構成されており、これらのギヤの噛合状態を、給紙用モータ70の駆動力を給送ローラ25に伝達する給紙準備状態(本発明の第1状態の一例)と、給紙用モータ70の駆動力を接離機構90に伝達する離間準備状態(本発明の第2状態の一例)とに切り換え可能に構成されている。そして、駆動伝達切換機構50は、キャリッジ40がホームポジション(本発明の切換位置の一例)に移動したことにより、給紙準備状態と離間準備状態とを相互に切り換える。すなわち、駆動伝達切換機構50は、以下に詳述されるように、キャリッジ40の移動に基づいて給紙用モータ70の駆動力の伝達を給送ローラ25または後述する接離機構90へ選択的に切り換える。
【0053】
具体的には、駆動伝達切換機構50は、第1ギヤ51、第2ギヤ52、第3ギヤ53、第4ギヤ54(本発明の第4ギヤの一例)、切換レバー55、コイルばね56A、56B、第1伝達部27、第2伝達部57、及び第3伝達部74(図5参照)を備えている。
【0054】
第1ギヤ51は、給紙用モータ70から左右方向9に突出されている給紙用モータ70の軸104に軸支されている。これにより、第1ギヤ51は、給紙用モータ70から駆動伝達されて左右方向9を軸方向として回転される。
【0055】
第2ギヤ52は、左右方向9を軸方向として第1ギヤ51と噛合されている。第2ギヤ52は、第1ギヤ51との噛合を維持した状態で左右方向9に沿って少なくとも第1位置(図3(A)に示される第2ギヤ52の位置)及び第2位置(図3(B)、(C)に示される第2ギヤ52の位置)に移動可能である。第2ギヤ52のスラスト方向の一方の面(本実施形態においては左側の面)には、コイルばね56Aが取り付けられている。コイルばね56Aは、第2ギヤ52の軸方向に沿って配置されており、一端が第2ギヤ52の左側の面に取り付けられており、他端がプリンタ部11のフレーム105Aなどの固定面に取り付けられている。これにより、第2ギヤ52は、コイルばね56Aによって右側へ、つまり第1位置から第2位置に向かって付勢される。第2ギヤ52のスラスト方向の他方の面(本実施形態においては右側の面)には、後述する切換レバー55の当接部108が当接されている。第2ギヤ52は、切換レバー55の当接部108に押されると、後述するコイルばね56Bによって左側へ、つまり第2位置から第1位置に向かって付勢される。
【0056】
第3ギヤ53は、左右方向9を軸方向として回転されるギヤであり、第1位置の第2ギヤ52と噛合される。第4ギヤ54は、左右方向9を軸方向として回転されるギヤであり、第2位置の第2ギヤ52と噛合される。つまり、第2ギヤ52は、第1位置及び第2位置の間を移動することによって、噛合されるギヤを、第3ギヤ53及び第4ギヤ54のいずれかに切換可能に構成されている。
【0057】
[切換レバー55]
図3及び図4(A)に示されるように、切換レバー55は、突起106、保持部107、及び当接部108を備えている。当接部108は、左右方向9に沿って移動可能であるとともに、左右方向9を軸方向として回転可能な部材である。当接部108のスラスト方向の一方の面(本実施形態においては右側の面)には、コイルばね56Bが取り付けられている。コイルばね56Bは、第2ギヤ52の軸方向に沿って配置されており、一端が当接部108の右側の面に取り付けられており、他端がプリンタ部11のフレーム105Bなどの固定面に取り付けられている。これにより、当接部108は、コイルばね56Bによって左側へ、つまり後述する第4位置から第3位置に向かって付勢される。また、当接部108の右面は、コイルばね56Bの巻き方向に働く復元力を受ける。つまり、当接部108は、コイルばね56Bの巻き方向の復元力によって常時、前方(つまり図3の紙面手前側、図4の後方側から前方側)へと付勢される。突起106は、当接部108の左端部から概ね上向きに延びている。保持部107は、当接部108の上側に配置されており、図4(A)に示されるような傾斜面109及び凹部114を有する開口110が形成された平板形状の部材である。開口110には、突起106が挿通されている。
【0058】
突起106の開口110よりも上側の部分は、キャリッジ40の移動経路上に位置する。キャリッジ40は、記録用紙に画像を記録する場合、排紙路65Bの上方を左右方向9に移動する。一方、キャリッジ40は、左右方向9において排紙路65Bの外側の上方まで移動可能に構成されている。突起106は、左右方向9において排紙路65Bの外側の上方(以下、この位置を「ホームポジション」又は「切換位置」と表記することがある。)まで移動されてきたキャリッジ40に押されることによって、右向きに移動可能である。つまり、切換レバー55の突起106及び当接部108は、キャリッジ40に押されることによって、右向きに移動可能である。
【0059】
図3(A)に示されるように、キャリッジ40が突起106から離間している場合、第2ギヤ52は、コイルばね56Bに付勢されることによって、左方へ移動する。なお、コイルばね56Bの付勢力は、コイルばね56Aの付勢力よりも大きい。これにより、図4(A)に示されるように、当接部108は、突起106が開口110の左端113に当接するまで、左方へ移動する。突起106が開口110の左端113に当接すると、当接部108及び突起106は、図3(A)に示される位置となる。以下、切換レバー55の当接部108及び突起106の当該位置(つまり、図3(A)に示される位置)は、第3位置と表記される。図3(A)の状態において、第2ギヤ52は、第3ギヤ53と噛合されており、第1位置である。つまり、第3位置の切換レバー55の当接部108は、第2ギヤ52と当接することにより、第2ギヤ52を第1位置に保持可能である。
【0060】
図3(B)に示されるように、キャリッジ40が右向きに移動されることによって、突起106がキャリッジ40に押されると、まず当接部108が第3位置から右向きに移動する。これにより、コイルバネ56Bからの付勢力を受けない状態の第2ギヤ52は、コイルばね56Aに押されることによって、右方へ移動する。また、当接部108は、コイルばね56Bの復元力により装置後方側から前方側へと回転することによって、突起106は当接部108と同様に回転する。これにより、突起106は、図4(A)に破線で示されるように、開口110の凹部114に嵌る。このとき、当接部108及び突起106は、図3(B)に示される位置となる。以下、切換レバー55の当接部108及び突起106の当該位置(つまり、図3(B)に示される位置)は、第4位置と表記される。図3(B)の状態において、第2ギヤ52は、第4ギヤ54と噛合されており、第2位置である。つまり、第4位置の切換レバー55の当接部108は、第2ギヤ52と当接することにより、第2ギヤを第2位置に保持可能である。
【0061】
当接部108及び突起106が第4位置の状態において、キャリッジ40が更に右向きに移動されると、図4(A)に示されるように、突起106は傾斜面109に沿って右向きに移動する。これにより、突起106は、図4(A)に一点鎖線で示された位置となる。この状態において、キャリッジ40が左向きに移動されると、キャリッジ40が突起106から離間する。すると、当接部108は、コイルばね56Bに押されることによって、突起106と共に左向きに移動する。また、第2ギヤ52は、左向きに移動する当接部108に押されて左向きに移動する。なお、コイルばね56Aの付勢力はコイルばね56Bの付勢力よりも小さいため、第2ギヤ52は、コイルばね56Aの付勢力に抗いつつ左向きに移動する。これにより、当接部108は、図3(A)に示されるように第3位置に到達する。また、突起106も、図4(A)に実線で示されるように第3位置に到達する。
【0062】
以上より、切換レバー55の当接部108及び突起106は、第2ギヤ52と当接することにより、第3位置及び第4位置へ選択的に移動可能である。
【0063】
上述のように構成された駆動伝達切換機構50においては、第2ギヤ52が、第3ギヤ53から離れて第4ギヤ54と噛合される際、或いは第4ギヤ54から離れて第3ギヤ53と噛合される際に、各ギヤの歯の位置が一致しないため、第2ギヤ52と第3ギヤ53及び第4ギヤ54とが上手く噛み合わない場合がある。つまり、第2ギヤ52のギヤの切換が適切に行われない可能性がある。
【0064】
そこで、本実施形態においては、第2ギヤ52のギヤの切換の際(詳細には第2ギヤ52が第1位置及び第2位置の間を移動した直後)に、後述する制御部130(本発明の制御部の一例)によって、給紙用モータ70の正転駆動及び逆転駆動が交互に少なくとも一回実行される。つまり、給紙用モータ70は、正転駆動された後で逆転駆動される動作、或いは逆転駆動された後で正転駆動される動作を、少なくとも一回実行する。例えば、給紙用モータ70は、正転駆動された後で逆転駆動される動作を繰り返して5回実行する。また、給紙用モータ70の正転駆動及び逆転駆動の各々の駆動量は、少なくとも各ギヤの歯と歯の間の隙間以上の回転量である。
【0065】
このように、給紙用モータ70の正転駆動及び逆転駆動が交互に少なくとも1回実行されることにより、第2ギヤ52が正転及び逆転方向に交互に回転される。これにより、各ギヤの歯が互いに噛合可能に合わせられ、各ギヤの切換が円滑且つ確実に行われる。なお、後述する「制御部130による制御」の説明において、給紙用モータ70の上記の駆動は、「給紙用モータ70の正逆転」と記される。
【0066】
[第1伝達部27及び第3伝達部74]
図3及び図5に示されるように、給送ローラ25は、給紙用モータ70から第1ギヤ51、第2ギヤ52、第3ギヤ53、及び第1伝達部27を介して駆動力が伝達されることにより、回転する。つまり、第1伝達部27は、給紙用モータ70の駆動力を第3ギヤ53から給送ローラ25へ伝達する。図2及び図5に示されるように、第1伝達部27は、相互に噛合されてなる複数のギヤ115で構成されている。
【0067】
図3及び図5に示されるように、第4搬送ローラ68は、給紙用モータ70から第1ギヤ51、第2ギヤ52、第3ギヤ53、及び第3伝達部74を介して駆動力が伝達されることにより、回転する。つまり、第3伝達部74は、給紙用モータ70の駆動力を第3ギヤ53から第4搬送ローラ68へ伝達する。図5に示されるように、第3伝達部74は、相互に噛合されてなる複数のギヤ116で構成されている。
【0068】
駆動伝達切換機構50は、第3ギヤ53と噛合するサンギヤ153と、サンギヤ153の周囲を公転しながら自転するプラネットギヤ154と、を備えている。プラネットギヤ154は、給紙用モータ70が逆転することによって第3ギヤ53が矢印117の向きに回転したときに、サンギヤ153の周囲を公転する。これにより、プラネットギヤ154は、第3伝達部74を構成するギヤ116の1つに噛合する(図5の破線で示されるプラネットギヤ154)。一方、プラネットギヤ154は、給紙用モータ70が正転することによって第3ギヤ53が矢印118の向きに回転したときに、サンギヤ153の周囲を公転する。これにより、プラネットギヤ154は、第1伝達部27を構成するギヤ115の1つに噛合する(図5の実線で示されるプラネットギヤ154)。上記構成により、駆動伝達切換機構50は、正転する給紙用モータ70の駆動力を給送ローラ25に伝達し、逆転する給紙用モータ70の駆動力を第4搬送ローラ68に伝達する。つまり、駆動伝達切換機構50は、給紙用モータ70からの駆動力の伝達を給送ローラ25または第4搬送ローラ68へ選択的に切り換える。
【0069】
[第2伝達部57]
図3(C)に示されるように、後述される接離機構90は、給紙用モータ70から第1ギヤ51、第2ギヤ52、第4ギヤ54、及び第2伝達部57を介して駆動力が伝達されることにより、駆動する。
【0070】
図3及び図4(B)、(D)に示されるように、第2伝達部57は、第4ギヤ54と噛合するサンギヤ155と、サンギヤ155の周囲を公転しながら自転するプラネットギヤ156と、を備えている。プラネットギヤ156の軸157は、サンギヤ155の右側に配置された固定板158に形成された長孔159に挿通されている。これにより、プラネットギヤ156の軸157は、長孔159に沿って摺動可能である。また、長孔159は、軸157が摺動したとしてもサンギヤ153とプラネットギヤ156とが噛合状態を維持可能な形状である。
【0071】
サンギヤ155は、給紙用モータ70の回転による第4ギヤ54の回転によって回転する。プラネットギヤ156は、サンギヤ155の回転によって回転する。接離機構90は、プラネットギヤ156の回転によって駆動する。以上より、第2伝達部57は、給紙用モータ70の駆動力を第4ギヤ54から接離機構90に伝達する。
【0072】
[接離機構90]
図3に示されるように、接離機構90は、搬送部59を、ピンチローラ61と第1搬送ローラ60とが当接する第1姿勢(本発明の第1姿勢の一例)、及びピンチローラ61と第1搬送ローラ60とが離間する第2姿勢(本発明の第2姿勢の一例)に姿勢変化させる。ここで、第1姿勢の搬送部59は、図3(A)、(B)に示されており、第2姿勢の搬送部59は、図3(C)に示されている。なお、以下の説明においては、ピンチローラ61が移動することによって、接離機構90が姿勢変化する構成が説明されるが、第1搬送ローラ60が移動することによって、接離機構90が姿勢変化してもよい。
【0073】
図3及び図4(C)、(E)に示されるように、接離機構90は、プラネットギヤ156の軸157に設けられた偏心カム160と、偏心カム160の上側において偏心カム160と当接された固定板161と、ピンチローラ61の軸35からプラネットギヤ156の軸157へ向けて突出された凸部162とを備えている。図4(C)、(E)に示されるように、偏心カム160は、軸157から径が周期的に変化する円盤である。図3に示されるように、ピンチローラ61は、軸35に沿って所定間隔を空けて複数設けられている。そして、凸部162は、軸35においてピンチローラ61が設けられていない位置に形成されている。また、凸部162には、左右方向9に沿った孔163が形成されている。孔163には、プラネットギヤ156の軸157が挿通されている。
【0074】
図3(B)に示された状態(搬送部59が第1姿勢であり、偏心カム160が図4(C)に示された状態)において、給紙用モータ70からの駆動伝達によってプラネットギヤ156が回転すると、偏心カム160が回転する。これにより、偏心カム160の周面が固定板161に対して摺動される。偏心カム160の周面は軸157からの径が周期的に変化するので、偏心カム160は、図4(C)に示された状態から図4(E)に示された状態に変化する。つまり、軸157が下方に移動する。偏心カム160の回転の過程において、下方に移動した軸157が、孔163の下端に当接する。軸157が更に下方に移動すると、図3(C)に示されるように、凸部162は、軸157に押されることによって下方に移動する。つまり、ピンチローラ61が下方に移動する。これにより、搬送部59は、第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化する。なお、プラネットギヤ156は、軸157の下方への移動によって、長孔159に沿って下方に移動する。つまり、プラネットギヤ156は、図4(B)に示された状態から図4(D)に示された状態に変化する。
【0075】
なお、図3(C)に示された状態(搬送部59が第2姿勢であり、偏心カム160が図4(E)に示された状態)において、プラネットギヤ156が回転すると、偏心カム160が回転する。その結果、上記とは逆に、搬送部59が第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化する。
【0076】
[シート検知部120]
図2に示されるように、プリンタ部11は、給紙トレイ20から給紙され湾曲路65Aを第1搬送向きに搬送される記録用紙の先端(第1搬送向きの下流側の端部)及び後端(第1搬送向きの上流側の端部)が通過すると異なる検知信号を発生するシート検知部120を備えている。シート検知部120は、湾曲路65Aにおいて、合流部37よりも下流側で、且つ搬送部59よりも上流側に設けられている。
【0077】
シート検知部120は、例えば、検出子112A、112Bを有する回転体112と、発光素子(例えば発光ダイオード)及び当該発光素子から出力された光を受光する受光素子(例えばフォトトランジスタ)を有するフォトインタラプタ等の光センサ111とにより構成されている。回転体112は、軸123を中心に回転可能に設けられている。軸123は内側ガイド部材19に取り付けられている。検出子112Aは軸123から湾曲路65Aに向けて突出している。回転体112に外力が加えられていない状態において、検出子112Bは、光センサ111の発光素子から受光素子に至る光路に進入して、当該光路を通る光を遮断している。このとき、受光素子は制御部130にLOWレベル信号(つまり、信号レベルが閾値未満の信号)を出力する。一方、回転体112が記録用紙の先端に押されることによって回転すると、検出子112Bは当該光路から外れて、当該光路に光が通る。このとき、受光素子は制御部130にHIGHレベル信号(つまり、信号レベルが閾値以上の信号)を出力する。
【0078】
光センサ111は、受光素子で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号、本発明の検知信号の一例)を後述する制御部130(図6参照)に出力する。
【0079】
[第1ロータリーエンコーダ73]
図6に示されるように、複合機10は、第1ロータリーエンコーダ73を備えている。第1ロータリーエンコーダ73は、第1搬送ローラ60の軸(不図示)に取り付けられており、当該軸と一体に回転する周知のエンコーダディスク(不図示)と、周知の光センサ(不図示)とで構成されている。エンコーダディスクには、その回転中心と同心の円周方向に、光を透過する透過部と光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に複数配置されたパターン(不図示)が形成されている。光センサは、エンコーダディスクのうち、パターンが形成されている位置と対向する位置に設けられている。エンコーダディスクが搬送用モータ71の軸と共に回転すると、エンコーダディスクに形成されたパターンによってパルス信号が光センサによって生成される。生成されたパルス信号は、光センサから後述する制御部130へと出力される。なお、本実施形態において、給紙用モータ70の軸には、上述の第1ロータリーエンコーダ73と同様の第2ロータリーエンコーダ75が取り付けられている。
【0080】
[リニアエンコーダ76]
図6に示されるように、複合機10は、リニアエンコーダ76を備えている。リニアエンコーダ76は、エンコーダストリップ(不図示)と、光センサ(不図示)とを備えている。エンコーダストリップは、その長手方向を、キャリッジ40が支持されるガイドレールに左右方向9に沿わせた状態で取り付けられる。エンコーダストリップは、光を透過する透過部と光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に複数配置されたパターン(不図示)が、長手方向において形成されている。光センサは、エンコーダストリップのパターンと対向するようにキャリッジ40に取り付けられる。また、光センサは、制御部130と電気的に接続している。キャリッジ40が移動すると、エンコーダストリップに形成されたパターンに応じたパルス信号が光センサによって生成される。そして、生成されたパルス信号は、光センサから後述する制御部130へと出力される。
【0081】
[制御部130]
図6に示されるように、制御部130は、複合機10の全体動作を制御する。制御部130が後述するフローチャート(図7参照)にしたがった制御を行うことによって、本発明が実現される。制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス137によって接続されている。
【0082】
ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0083】
ASIC135には、給紙用モータ70、搬送用モータ71、及びキャリッジ駆動モータ103が接続されている。各モータを回転させるための駆動信号が、CPU131から所定のモータに応じた駆動回路に入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から対応するモータへ出力される。これにより、対応するモータが所定の回転速度で正転または逆転する。つまり、制御部130は、給紙用モータ70、搬送用モータ71、及びキャリッジ駆動モータ103の駆動をそれぞれ制御する。
【0084】
また、ASIC135には、第1ロータリーエンコーダ73及び第2ロータリーエンコーダ75の光センサから出力されるパルス信号が入力される。制御部130は、光センサからのパルス信号のエッジ数をカウントすることで、第1搬送ローラ60又は給紙用モータ70の回転量を算出する。つまり、制御部130は、カウントするパルス信号のエッジ数が、目標回転量を示すエッジ数に到達したか否かの判断をし、カウントしたパルス信号のエッジ数が目標回転量に到達したら、搬送用モータ71又は給紙用モータ70の回転を停止するなどのモータの回転制御を行う。これにより、モータによって駆動される各ローラの回転が制御され、ひいては記録用紙の搬送が制御される。
【0085】
また、ASIC135には、リニアエンコーダ76の光センサから出力されるパルス信号が入力される。制御部130は、光センサからのパルス信号のエッジ数をカウントすることで、キャリッジ40の位置を取得する。つまり、制御部130は、カウントするパルス信号のエッジ数が目標移動量を示すエッジ数に到達したか否かの判断をし、カウントしたパルス信号のエッジ数が目標移動量に到達したら、キャリッジ駆動モータ103の回転を停止するなどのモータの回転制御を行う。これにより、キャリッジ40の移動が制御される。
【0086】
また、ASIC135には、シート検知部120の光センサ111が接続されている。光センサ111から出力された電気信号は、制御部130に入力される。制御部130は、入力された信号の電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定値以上であるか否かを判断する。制御部130は、入力された信号が、所定値以上である場合にHIGHレベル信号と判断し、所定値未満の場合にLOWレベル信号と判断する。制御部130は、入力された信号がHIGHレベル(つまり、シート検知部120がON)の場合、記録用紙の先端が回転体112を通過した後であって、記録用紙の後端が回転体112を通過する前であると判断する。一方、制御部130は、入力された信号がLOWレベル(つまり、シート検知部120がOFF)の場合、記録用紙の先端が回転体112に到達する前の状態、或いは記録用紙の後端が回転体112を通過した後の状態であると判断する。
【0087】
[当接部108の位置の取得]
RAM133には、当接部108が第3位置に位置する場合に、“1”が記憶される(以下「第1フラグがON」と表記する。)第1フラグメモリ領域と、当接部108が第4位置に位置する場合に、“1”が記憶される(以下、「第2フラグがON」と表記する。)第2フラグメモリ領域と、が用意される。記録用紙を給紙する際は、当接部108は第3位置に位置する必要があるので、第1フラグはONとなっている。
【0088】
その後、リニアエンコーダ76の情報から、当接部108を第4位置に移動させる位置までキャリッジ40が移動したと判断すると、制御部130は、第1フラグをOFFにし(つまり、第1フラグメモリ領域の記録内容をクリアする)、一方で第2フラグをONにする。そして、キャリッジ40が、当接部108を第4位置よりもさらに右側まで移動させる位置まで移動し、その後反転して左側に移動すると、当接部108は、再び第3位置に戻ることになる。つまり、リニアエンコーダ76の情報から、上述のようにキャリッジ40が動いたと判断すると、制御部130は、第2フラグをOFFにし(つまり、第1フラグメモリ領域の記録内容をクリアする)、一方で第1フラグをONにする。制御部130は、RAM133に用意された第1フラグメモリ領域と第2フラグメモリ領域とに記憶される内容(具体的には“1”が記憶されているか否か)を参照することにより、当接部108の現在位置を取得することができる。
【0089】
[制御部130による制御]
以下、切換レバー55の当接部108の移動、給紙用モータ70の正転駆動及び逆転駆動の交互の実行、及び搬送部59の姿勢変化が、制御部130によって所定のタイミングで実行される処理の手順が、図7のフローチャートに基づいて説明される。なお、以下の説明において、切換レバー55の当接部108の初期状態は、第3位置であるとする。また、接離機構90の初期姿勢は、第1姿勢であるとする。さらに、駆動伝達切換機構50の初期状態は、給紙準備状態であるとする。
【0090】
制御部130は、記録用紙への画像記録指示を操作パネル17、或いは通信回線等を通じて取得すると、図7のフローチャートに示す一連の動作を実行する。ここで、画像記録指示には、画像記録処理の実行に必要な印刷情報が含まれる。印刷情報には、例えば、記録用紙に記録すべき画像(以下、「記録対象画像」と表記する)のページ数、記録対象画像の画像データ、画像データの解像度、記録用紙のサイズ、記録用紙の向き、及び裏面印刷の有無等を示す情報の一部又は全部が含まれる。
【0091】
まず、制御部130は、記録用紙の給紙を開始する(S10)。具体的には、制御部130は、給紙用モータ70を駆動することによって給送ローラ25を回転させ、記録用紙を給紙トレイ20から湾曲路65Aに送り出す。
【0092】
次に、制御部130は、シート検知部120及び第1ロータリーエンコーダ73から出力される信号に基づいて、記録用紙の先端が搬送部59に到達するまで待機する(S20:No)。具体的には、制御部130は、シート検知部120から出力される検知信号がLOWレベル信号からHIGHレベル信号に変化したことによって、記録用紙の先端がシート検知部120の位置に到達したこと、すなわち、記録用紙の先端が搬送路65の区間A(図2参照)に相当する距離を搬送されたことを認識する。次に、制御部130は、第1ロータリーエンコーダ73から出力されるパルス信号のエッジ数が、記録用紙の先端がシート検知部120の位置から搬送部59の位置までの距離に相当する数に到達することにより、記録用紙の先端が搬送部59に到達したこと、すなわち、記録用紙の先端が搬送路65の区間B(図2参照)に相当する距離を搬送されたと判断する。
【0093】
記録用紙の先端が搬送部59に到達すると(S20:Yes)、制御部130は、記録用紙の給紙を終了する(S30)。具体的には、制御部130は、給紙用モータ70を停止させる。次に制御部130は、取得した印刷情報に含まれる記録対象画像の解像度を示す値と、ROM132(或いは、EEPROM134)に記憶されている基準解像度を示す値とを比較する(S40)。ステップS40における記録対象画像の解像度は、記録部24から記録用紙に吐出されるインクの量の多少を表す指標として用いられるものである。そして、記録対象画像の解像度を示す値が基準解像度を示す値を上回る(つまり、吐出されるインクの量を示す値が閾値を上回る)場合(S40:Yes)、制御部130は、離間準備動作を実行する(S50)。
【0094】
なお、制御部130がステップS40においてYesと判断する場合とは、着弾したインクの影響で記録用紙がカールすることによって生じるJAM(以下、「着弾したインクに起因するJAM」と表記する。)の発生確率が高い状態の場合である。一方、記録対象画像の解像度を示す値が基準解像度を示す値以下(つまり、吐出されるインクの量が閾値以下)の場合(S40:No)、制御部130は、離間準備動作をスキップする。なお、制御部130がステップS40においてNoと判断する場合とは、着弾したインクに起因するJAMの発生確率が低い状態の場合である。
【0095】
ステップS50の離間準備動作とは、駆動伝達切換機構50を給紙準備状態から離間準備状態に切り換える動作を指す。すなわち、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103を駆動させてキャリッジ40を切換位置に移動させることで、当接部108を第3位置から第4位置に移動させる。これにより、第2ギヤ52が第1位置から第2位置へ向けて移動する。次に、制御部130は、給紙用モータ70を正逆転させることによって、第2ギヤ52と第4ギヤ54とが確実に噛合される結果、第2ギヤ52が第2位置に到達する。なお、後述するステップS120、S260で実行される離間準備動作は、上述の離間準備動作と共通するので、再度の説明は省略する。
【0096】
なお、ステップS40の判断を実行するタイミングは、図7の例に限定されない。例えば、制御部130は、ステップS10で印刷情報を取得したタイミングで記録対象画像の解像度と基準解像度とを比較し、比較結果を示すフラグをRAM133などに記憶させておいてもよい。そして、制御部130は、ステップS40において、当該フラグの値に応じて離間準備動作を実行するか否かを判断してもよい。すなわち、ステップS50における離間準備動作は、記録用紙の先端が搬送部59に到達し、且つ記録対象画像の解像度が基準解像度を上回る場合に実行される。
【0097】
次に、制御部130は、記録用紙を画像記録位置まで搬送する(S60)。具体的には、制御部130は、搬送用モータ71を駆動することによって搬送部59に記録用紙を搬送させ、記録用紙の先端が頭出し位置33に達した時点で搬送用モータ71を一旦停止させる。
【0098】
次に、制御部130は、記録用紙に対して画像記録を行う(S70)。具体的には、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103を駆動することによって、キャリッジ40を左右方向9に往復移動させる。また、制御部130は、キャリッジ40を移動させながら、記録ヘッド38にインクを吐出させる。すなわち、記録部24は、第1搬送向きの所定の改行幅毎に記録用紙に画像記録を行う。以下、ステップS70において説明された動作を、「所定の改行幅の画像記録」と表記する。
【0099】
なお、ステップS50において離間準備動作が実行される場合、制御部130は、記録用紙の搬送(S60)及び所定の改行幅の画像記録(S70)を、当該離間準備動作と平行して実行してもよい。より詳細には、制御部130は、当接部108を第3位置から第4位置に移動させた後、給紙用モータ70正逆転と同時(或いは、給紙用モータ70を正逆転させている間)にステップS60の処理を開始してもよい。これにより、駆動伝達切換機構50の状態切り換えに起因するスループットの低下を抑制できる。一方、制御部130は、ステップS50の離間準備動作が完了するのを待って、ステップS60の処理を開始してもよい。これにより、離間準備動作が完了する前にJAMが発生することがないので、煩雑なJAM処理をユーザに要求することがない。なお、上述の説明は、後述のステップS120で離間準備動作が実行された場合のステップS130、S70の開始タイミングにも同様に適用される。
【0100】
次に、制御部130は、JAMが発生したか否かを判断する(S80)。具体的には、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103又は搬送用モータ71の駆動電流が異常値を示したか否かを判断する。各モータの駆動電流が異常値を示す場合は、JAMが発生、つまり記録用紙が詰まっている状態となる。一例として、記録用紙とキャリッジ40とが衝突すると、制御部130は、キャリッジ40を目標位置に到達させようとして、キャリッジ駆動モータ103の駆動電流を増加させていく。しかし、記録用紙によってキャリッジ40の移動、つまりキャリッジ駆動モータ103の回転が妨げられるため、制御部130が駆動電流を増加させていくと、いずれ当該駆動電流が異常値を超す。他の例として、搬送中の記録用紙が詰まることがある。この場合も、上記と同様に、詰まった記録用紙によって搬送用モータの71の回転が妨げられため、制御部130は目標回転量に到達させようとして、搬送用モータ71の駆動電流を増加させていく。したがって、駆動電流を増加させていくと、いずれ当該駆動電流が異常値を超す。
【0101】
JAMが発生していないと判断した場合(S80:No)、制御部130は、記録用紙の次の所定の改行幅に記録すべき画像データが残っているか否かを判断する(S90)。記録用紙に記録すべき画像データが残っている場合(S90:Yes)、制御部130は、直前に実行された所定の改行幅の画像記録において実際に吐出されたインクの量を示す値と、ROM132(或いは、EEPROM134)に記憶されている基準量を示す値とを比較する(S100)。なお、ステップS100におけるインクの吐出量は、ステップS40の解像度と同様に、記録部24から記録用紙に吐出されるインクの量の多少を表す指標として用いられるものである。また、インクの吐出量を示す値には、実際にノズルから吐出されたインク量をカウントした値を用いてもよいし、記録対象画像の画像データから算出したインク量を用いてもよい。
【0102】
ステップS100において、実際に吐出されたインクの量を示す値が基準量を示す値を上回る(つまり、吐出されたインクの量が閾値を上回る)場合とは、着弾したインクに起因するJAMの発生確率が高い状態の場合である。一方、実際に吐出されたインクの量を示す値が基準量を示す値以下(つまり、吐出されたインクの量が閾値以下)の場合とは、着弾したインクに起因するJAMの発生確率が低い状態の場合である。
【0103】
そこで、制御部130は、直前に実行された所定の改行幅の画像記録において実際に吐出されたインクの量を示す値が基準量を示す値を上回り(S100:Yes)、且つ駆動伝達切換機構50が給紙準備状態である(S110:Yes)場合に、離間準備動作を実行する(S120)。ここで、駆動伝達切換機構50が給紙準備状態である場合とは、RAM133の第1フラグがONとなっているときである。つまり、制御部130は、第1フラグがONであるか否かを判断する。一方、ステップS100、S110の一方又は両方の条件を満たさない場合(S100:No、又はS110:No)、制御部130は、離間準備動作をスキップする。すなわち、本実施形態における離間準備動作は、画像記録が開始される前に(つまり、ステップS50のタイミングで)実行される必要は必ずしもなく、記録用紙の先端が搬送部59に到達してから排出部64に到達するまでの任意のタイミングで実行される。
【0104】
次に、制御部130は、搬送用モータ71を駆動することによって、搬送部59に記録用紙を所定の改行幅だけ更に搬送させる(S130)。次に、制御部130は、記録用紙の後端が搬送部59を通過したか否かを判断する(S140)。そして、記録用紙の後端が搬送部59を未だ通過していなければ(S140:No)、ステップS70に戻って次の所定の改行幅の画像記録が実行される。
【0105】
一方、記録用紙の後端が搬送部59を通過した場合(S140:Yes)、制御部130は、駆動伝達切換機構50が離間準備状態であるか否かを判断する(S150)。ここで、駆動伝達切換機構50が離間準備状態である場合とは、RAM133の第2フラグがONとなっているときである。つまり、制御部130は、第2フラグがONであるか否かを判断する。そして、制御部130は、駆動伝達切換機構50が離間準備状態であれば(S150:Yes)、給紙準備動作を実行し(S160)、離間準備状態でなければ給紙準備動作をスキップし(S150:No)、ステップS70に戻る。
【0106】
なお、給紙準備動作とは、駆動伝達切換機構50を離間準備状態から給紙準備状態に切り換える動作を指す。すなわち、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103を駆動させてキャリッジ40を切換位置に移動させることによって、当接部108を第4位置から第3位置に移動させる。これにより、第2ギヤ52が第2位置から第1位置へ向けて移動する。次に、制御部130は、給紙用モータ70を正逆転させることによって第2ギヤ52と第3ギヤ53とが確実に噛合される結果、第2ギヤが第1位置に到達する。なお、後述するステップS190で実行される給紙準備動作は、上述の給紙準備動作と共通するので、再度の説明は省略する。
【0107】
ここでステップS90に戻って、記録用紙に記録対象画像を全て記録した(つまり、搬送中の記録用紙に記録すべき画像データが残っていない)場合、制御部130は、記録用紙を排紙する(S170)。具体的には、制御部130は、搬送用モータ71を駆動することによって第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ63、及び第3搬送ローラ45を回転させて、記録用紙を排紙トレイ21又は第2搬送路67に搬送する。
【0108】
また、制御部130は、駆動伝達切換機構50が離間準備状態であれば(S180:Yes)、給紙準備動作を実行し(S190)、離間準備状態でなければ給紙準備動作をスキップする(S180:No)。なお、ステップS190における給紙準備動作は、ステップS170における排紙処理と平行して実行することができる。
【0109】
次に、制御部130は、次のページの記録対象画像が存在するか否かを判断する(S200)。そして、次のページの記録対象画像が存在する場合には(S200:Yes)、記録用紙の排紙を完了した(つまり、記録用紙の後端が第3搬送ローラ45及び拍車46を通過した)時点で排紙が終了され(ステップS210)、ステップS20に戻って次の記録用紙への画像記録が実行される。なお、次のページの記録対象画像をステップS170で排紙される記録用紙の裏面に印刷する場合は、ステップS20に代えて、ステップS170で排紙される記録用紙が第2搬送路67を通って再び搬送部59に搬送される点を除き、上述したステップS70〜S190と共通の処理が実行される。一方、次のページの記録対象画像が存在しない場合(S200:No)、制御部130は、当該画像記録処理を正常終了させる(S220)。
【0110】
ここでステップS80に戻って、画像記録処理中にJAMが発生したと判断した場合(S80:Yes)、制御部130は、駆動伝達切換機構50が離間準備状態であるか否かを判断する(S230)。駆動伝達切換機構50が離間準備状態であれば(S230:Yes)、制御部130は、給紙用モータ70を駆動することによって、搬送部59の第1搬送ローラ60とピンチローラ61とを離間させる(S240)。具体的には、給紙用モータ70の駆動力が第1ギヤ51、第2ギヤ52、第4ギヤ54、及び第2伝達部57を介して接離機構90に伝達された結果、搬送部59が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化する。そして、制御部130は、操作パネル17やスピーカ(不図示)を通じてユーザにJAMの発生を報知する等して、当該画像記録処理を異常終了させる(S270)。
【0111】
一方、ステップS230において、駆動伝達切換機構50が給紙準備状態である、つまり離間準備状態でなければ(S230:No)、制御部130は、JAM発生直前におけるキャリッジ40(図7では「CR」と表記)の移動方向を判断する(S250)。なお、ステップS250において、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103の回転方向に基づいて、キャリッジ40の移動方向を判断すればよい。
【0112】
キャリッジ40が切換位置から遠ざかる向き(図3の右から左であり、以下、「FWD向き」と表記する。)に移動していた場合(S250:Yes)、制御部130は、キャリッジ駆動モータ103を逆転駆動させてキャリッジ40を切換位置まで移動させることにより離間準備動作を実行し(S260)、給紙用モータ70を逆転駆動させて搬送部59を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させ(S240)、当該画像記録処理を異常終了させる(S270)。なお、制御部130は、第2ロータリーエンコーダ75の光センサから出力されるパルス信号のエッジ数をカウントし、カウント数が所定数以上になった時点で搬送部59が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化したと判断し、姿勢変化のための給紙用モータ70の逆転駆動を終了させる。一方、キャリッジ40が切換位置に近づく向き(図3の左から右であり、以下、「RVS向き」と表記する。)に移動していた場合(S250:No)、制御部130は、離間準備動作をスキップして、当該画像記録処理を異常終了させる(S270)。
【0113】
[実施形態の効果]
上記構成によれば、予め離間準備動作を実行して駆動伝達切換機構50を離間準備状態にしておくことで、JAMが発生した場合に第1搬送ローラ60とピンチローラ61とを離間させることができる。その結果、JAM処理を容易に行うことができる。
【0114】
なお、図7のフローにおける離間準備動作は、記録用紙に着弾したインクに起因するJAMの発生確率が高い(S40でYes、又はS100でYes)場合のみに実行され、JAMの発生確率が低い場合には実行されない。その結果、ステップS40、S100の判断を行わない場合と比較して、離間準備動作及び給紙準備動作の実行回数が減少するので、複数の用紙に連続して画像記録を行う場合等に、駆動伝達切換機構50の状態切り換えに起因するスループットの低下を低減することができる。
【0115】
ここで、ステップS40における記録対象画像の解像度、或いはステップS100における実際に吐出されたインクの量は、いずれも記録用紙に着弾したインクに起因するJAMの発生確率を推定する指標として用いられる。すなわち、基準解像度及び基準量を高く設定すれば離間準備動作が実行されにくくなるので、JAM処理は容易になる反面、スループットのある程度の低下は避けられない。一方、基準解像度及び基準量を低く設定すれば離間準備動作が実行されやすくなるので、スループットの低下は最小限に抑えられる反面、JAM処理に時間がかかる可能性がある。そこで、基準解像度及び基準量(閾値)は、JAM処理を容易にする観点と、スループットの低下を押さえる観点とのバランスを考慮して予め定められる値であり、ユーザによって任意に変更できるものであってもよい。
【0116】
また、記録用紙の後端が搬送部59を通過した後は、JAM処理において第1搬送ローラ60とピンチローラ61とを離間させる必要がなくなるので、当該記録用紙に対する画像記録が終了する前に給紙準備動作を実行(S160)しておくことにより、駆動伝達切換機構50の状態切り換えに起因するスループットの低下が最小限に抑えられる。同様に、ステップS190において記録用紙の排紙処理(S170)と平行して給紙準備動作を実行することにより、駆動伝達切換機構50の状態切り換えに起因するスループットの低下が最小限に抑えられる。
【0117】
さらに、JAMが発生する前に離間準備動作が実行されなかったとしても、JAMの発生直前にキャリッジ40がFWD向きに移動していれば(S250:Yes)、第1搬送ローラ60とピンチローラ61とを離間させることができる(S260)。言い換えれば、第1搬送ローラ60とピンチローラとを離間させることができないのは、記録用紙に着弾したインクに起因するJAMの発生確率が低いと判断され(S40でNo、及びS100でNo)、且つJAMの発生直前にキャリッジ40がRVS向きに移動している場合に限定される。すなわち、本実施形態によれば、スループットの低下を抑えるために駆動伝達切換機構50の状態切り換えの回数を減らしたとしても、JAM処理が煩雑になる可能性を低減することができる。
【0118】
[変形例]
なお、制御部130は、図7のステップS40において、記録対象画像の解像度から記録用紙に着弾するインクの量を推定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部130は、記録対象画像の画像データに基づいてノズルから吐出されるインクの量を算出し、算出したインクの量が予め定められた基準量を上回る場合に離間準備動作を実行し、算出したインクの量が基準量以下の場合に離間準備動作を実行しないようにしてもよい。また、ここで算出されるインクの量は、記録対象画像全体(1ページ分)の値であってもよいし、記録対象画像のうちの所定の改行幅に相当する部分に吐出される量を示す値であってもよい。
【0119】
また、制御部130は、図7のステップS40、S100において、記録用紙に着弾するインクの量を示す値によってJAMの発生確率を推定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部130は、記録用紙を構成する繊維の方向によってJAMの発生確率を推定してもよい。すなわち、制御部130は、ステップS40に代えて、記録用紙を構成する繊維の方向と第1搬送向きとが交差すると判断した場合に離間準備動作を実行し、記録用紙を構成する繊維の方向が第1搬送向きに沿っている(繊維の方向と第1搬送向きとが略平行である)と判断した場合に離間準備動作を実行しないようにしてもよい。
【0120】
例えば、制御部130は、記録用紙を構成する繊維の方向を、給紙トレイ20に載置されている記録用紙のサイズと向きとの組み合わせによって推定することができる。例えば、制御部130は、A4サイズの記録用紙が長手方向を第1搬送向きに向けて給紙トレイ20に載置されている場合、記録用紙を構成する繊維の方向が第1搬送向きに沿っていると判断し、A4サイズの記録用紙が短手方向を第1搬送向きに向けて給紙トレイ20に載置されている場合、記録用紙を構成する繊維の方向と第1搬送向きとが交差していると判断してもよい。上述のような記録用紙のサイズ及び向きの組み合わせと繊維の方向との関係は、予めROM132(或いはEEPROM134)等に記憶させておけばよい。または、制御部130は、記録用紙を構成する繊維の方向を、操作パネル17を通じてユーザから取得してもよい。
【0121】
また、制御部130は、図7のステップS40において、記録対象画像の解像度と基準解像度との比較結果と、記録用紙を構成する繊維の方向と第1搬送向きとの比較結果との両方を用いて、離間準備動作を実行するか否かが判断されてもよい。すなわち、制御部130は、上述の2つの条件のうちのいずれか一方が満たされた場合に離間準備動作を実行し、両方が満たされない場合に離間準備動作を実行しないようにしてもよい。
【0122】
また、図7のステップS100において、実際に吐出されたインクの量を用いて離間準備動作を実行するか否かが判断される例を説明したが、ここで用いられるインクの量は、「所定の改行幅の画像記録」の直前の1回で吐出されたインク量であってもよいし、直前の2回分又はそれ以上の回数で吐出されたインク量であってもよい。さらに、ステップS100の過去に吐出されたインク量に代えて、次の所定の改行幅の画像記録で吐出されるインク量と基準量とを比較して、離間準備動作を実行するか否かが判断されてもよい。すなわち、制御部130は、記録対象画像の画像データから次の所定の改行幅の画像記録で吐出されるインクの量を算出し、算出したインクの量が基準量を上回る場合に離間準備動作を実行し、算出したインクの量が基準量以下の場合に離間準備動作を実行しないようにしてもよい。
【0123】
また、図7のステップS140において、記録用紙の後端が搬送部59を通過したことを条件として、給紙準備動作が実行される例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部130は、ステップS140に代えて、記録用紙の先端が排出部64を通過したことを条件として、給紙準備動作を実行してもよい。記録用紙が第2搬送ローラ62と拍車63とに挟持された後のJAMの発生確率は、挟持される前と比較して格段に下がる。また、記録用紙の先端は、その後端が搬送部59を通過する前に、排出部64に到達する。すなわち、上記のような条件によって給紙準備動作のタイミングを制御することにより、スループットの低下をさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0124】
11・・・プリンタ部
15・・・給紙部
24・・・記録部
50・・・駆動伝達切換機構
59・・・搬送部
65・・・第1搬送路
70・・・給紙用モータ
90・・・接離機構
103・・・キャリッジ駆動モータ
130・・・制御部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7