(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基台から突出した複数の針を有する針体治具と、前記突出した複数の針を挿通可能とする挿通孔を有する可動板体とを、挿通孔内に針を挿通させることにより、組み合わせ可能としてなり、前記突出した複数の針に可動板体の挿通孔が挿通され、針と挿通孔による係止部分によって針の軸方向の任意位置に可動板体が係止可能とされ、前記可動板体を少なくとも2つ有し、最も基台側に配置された可動板体を、他の可動板体の挿通孔に前記針を挿通するための案内板とし、他の可動板体を、試料取り出し用の板として構成される針状構造体を使用し、
前記針に試料を刺し通して前記試料取り出し用の板上に試料を乗せた状態として保持し、また、前記試料取り出し用の板を上方に引き上げ、前記試料取り出し用の板上に試料を載置したまま、前記試料取り出し用の板を抜き出すことで試料を取り出し、
前記試料取り出し用の板が抜き出された後、前記案内板あるいは前記案内板よりも上方に位置する前記試料取り出し用の板から前記針の針先が覗くように前記案内板を上昇させ、次いで、前記針先を利用して、前記針体治具に組み合わせる前記可動板体の挿通孔と前記針とを位置合わせして、前記可動板体を前記案内板あるいは前記案内板よりも上方に位置する前記試料取り出し用の板に重ねて配置し、その後、前記案内板とともに、または、前記案内板と前記案内板よりも上方に位置する前記試料取り出し用の板とともに、前記可動板体を下方の所望の位置に移動して試料取り出し用の板とすることを特徴とする針状構造体を用いた試料保持方法。
前記挿通孔は、前記可動板体の前記基台側の面における開口が、前記可動板体の前記基台とは反対側の面における開口よりも大きくなるように形成されている請求項1または請求項2に記載の針状構造体を用いた試料保持方法。
前記針体治具は、平板状の基部とその基部から一体的に突出形成された複数の針を備える針状物部材を、直接あるいは別体のスペーサ部材を介して、複数枚積層させた状態で固定され一体化された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の針状構造体を用いた試料保持方法。
前記基台は、複数の針が突出する主面における輪郭線を構成する少なくとも1辺が、他の基台との連結を可能とする連結辺を構成してなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の針状構造体を用いた試料保持方法。
平板状の基部とその基部から一体的に突出形成された複数の針を備える針状物部材を、前記針が前記可動板体の挿通孔に挿通した状態で保持することにより、可動板体の挿通孔を針の位置決めに利用して、前記針状物部材が、直接あるいは別体のスペーサ部材を介して、複数枚積層させた状態で固定され一体化された針体治具を組み立てることを特徴とする請求項8に記載の針状構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、技術思想を逸脱しない範囲において種々変形を行なって実施することが可能である。また、添付の図面においては、説明のために上下、左右の縮尺を誇張して図示することがあり、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。また、描かれている針の本数は、一例であり、図面によってその表示されている本数が異なる場合がある。
【0023】
図1〜
図3を参照しつつ本発明の好適な実施形態に係る針状構造体システムについて説明する。
【0024】
図1は、本発明の針状構造体システムを説明するための概略斜視図であって、針体治具と可動板体とを組み合わせる前の状態を示す図であり、
図2(A)は、針体治具と可動板体とを組み合わせて構成した針状構造体システムの正面図であり、
図2(B)は、
図2(A)に示される針状構造体システムの針に試料を刺し通して試料を固定した状態を示す正面図であり、
図3は、可動板体を針から引き抜いて可動板体の上に乗った試料を一体的に取り出す状態を示す正面図である。
【0025】
本発明の針状構造体システムは、
図1に示されるように、基台2から突出した複数の針15を有する針体治具100と、平板状の可動板体400とを有し構成されている。
【0026】
平板状の可動板体400には、図示のごとく肉厚方向に針15を挿通可能とする複数の挿通孔401が形成されており、この挿通孔内401に針15を挿通させることにより、針体治具100と可動板体400とを組み合わせて一体化できるようになっている。
【0027】
一体化された針状構造体システムの一例が
図2(A)に示されており、可動板体400は、複数の針15の実質的な軸方向に移動可能に挿通された状態で、かつ、通常、任意の場所で係止できるように構成されている。すなわち、突出した複数の針15に可動板体400の挿通孔401が挿通され、針15と挿通孔401とにより形成される係止部分によって針の軸方向の任意位置で可動板体400が係止できるように構成されている。
【0028】
針15と挿通孔401とが係止される係止部分における係止力は、針15の外形寸法、挿通孔401の孔径寸法等の設定によって、適宜、調整することができる。係止部分は、すべての針15とすべての挿通孔401との関係で係合が生じる必要はなく、一部の針15と一部の挿通孔401との関係でのみ係合が生じるようにしてもよい。可動板体400が係止して静止できればよいからである。
【0029】
特に、針15の本数が多い場合には、係止箇所が増えるために、全体の係止力は増える傾向にあり、針15の外形寸法に対する挿通孔401の孔径は大きめに設定することが可能となる。また、可動板体400は、その主面が、基台2の上部面と実質的に平行に固定できるように構成されることが望ましい。ここで、実質的に平行とは、平行状態から±30°の傾斜角度までを許容するものである。この許容範囲を定めるにあたっては、針15の外形寸法と挿通孔401とに生じる隙間と、針状構造体システム内にある針15の本数等が密接に関係しているが、±30°を超える傾斜角度になると、針15が塑性変形を起こしてしまうおそれがあり、さらに繰り返し使用に耐えることが困難となる傾向が生じてしまう。
【0030】
可動板体400および針体治具100の具体的構成の詳細な説明は後述することとし、本発明の針状構造体システムがどのようなものかを理解し易いように、まず先に針状構造体システム使用方法の一例を
図2(A)〜
図3を参照しつつ説明しておく。
【0031】
図2(A)には、
図1の状態から一体化された針状構造体システムの一例が示されており、突出した複数の針15に可動板体400の挿通孔401が挿通され、針15と挿通孔401とによる係止部分によって針15の軸方向(長手方向)の任意位置で可動板体400が係止できるように構成されている。
【0032】
図2(A)においては、針体治具100の基台2の上面部からわずかに離れた状態で可動板体400が係止され固定されているが、係止位置は基台2の上面部と接触するように固定してもよいし、さらに、
図2(A)で示される位置よりもさらに針先端側で係止させるようにしてもよい。また、係止できる位置は、針15の軸方向(長手方向)に亘って全域に存在するようにすることが望ましいが、限定された一部とすることもできる。
【0033】
次いで、
図2(B)に示されるように、組み合わされた針状構造体システムの針15の針先側から試料200を刺し通して可動板体400の上に試料200を乗せた状態にする。この状態で試料200に対して、可動板体400を通じて、例えば、冷却操作、加熱操作、保冷操作、脱気操作、加振操作等の所望の操作が行われ得る。試料200としては、高分子材料や、器官、筋肉等の細胞試料等を例示することができる。
【0034】
次いで、所望の操作が完了した後、
図3に示されるように、可動板体400を上方に引き上げ、可動板体400の上に試料200を載置したまま、可動板体400を取り出す操作(針15から抜きだす操作)が行われる。これにより、針15から試料200を取り出す操作を極めて簡単にかつ効率良く行うことができる。また、取り出しの際の試料200へのダメージも軽減させることができる。
【0035】
上記の針状構造体システムの使用方法は、可動板体400を1枚使用した例であったが、可動板体400の使用枚数には特に制限はなく、2枚以上の複数枚としてもよい。可動板体400を2枚使用した他の使用方法の一例を、
図4(A)〜
図6を参照しつつ説明する。
【0036】
図4(A)に示されるように、突出した複数の針15に、2枚の可動板体400a,400bの挿通孔401a,401bが挿通され、針15と挿通孔401a,401bとによる係止部分によって針の軸方向の任意位置で可動板体400a,400bが係止される。
【0037】
この実施形態において、例えば、基台2側に配置された第1の可動板体400a(便宜上、第1と称す)は、後述の説明から分かるように案内板としての作用を発揮することができ、この第1の可動板
体400aよりも針先側に配置された第2の可動板体400b(便宜上、第2と称す)は、試料取り出し用の板としての作用を発揮することができる。第1の可動板体400aと第2の可動板体400bとは、通常、同一仕様の同一物から形成されるが、本願において要求される機能を発揮できる範囲で異なる仕様としてもよい。例えば、材質、形状、挿通孔401a,401bの形態や大きさ等を変えることができる。
【0038】
また、第1の可動板体400aと第2の可動板体400bとは図示のごとく重ねた状態で配置されてもよいし、互いの間隔を空けた状態で配置されてもよい。
【0039】
次いで、
図4(B)に示されるように、組み合わされた針状構造体システムの針15の針先側から試料200を刺し通して上方に位置する第2の可動板体400bの上に試料200を乗せた状態にする。この状態で試料200に対して、可動板体400を通じて、例えば、冷却操作、加熱操作、保冷操作、脱気操作、加振操作等の所望の操作が行われ得る。
【0040】
次いで、
図5(A)に示されるように第2の可動板体400bを上方に移動させ、試料200を針15から抜き取る操作が行なわれる。すなわち、第2の可動板体400bを上方に引き上げて第2の可動板体400bの上に試料200を載置したまま、取り出すように操作される。これにより、針15から試料200を取り出す操作を極めて簡単にかつ効率良く行うことができる。また、取り出しの際の試料200へのダメージも軽減することが可能となる。
【0041】
次いで、
図5(B)に示されるように基台2の近傍にあった第1の可動板体400aを針15の針先近傍まで上昇させる。第1の可動板体400aの上面よりわずかに針先が覗く程度の位置とするのがよい。
【0042】
次いで、
図6に示されるように第1の可動板体400aの上に第2の可動板体400bを重ねて配置する。この際、第1の可動板体400aの上面よりわずかに覗いている針先を利用して、針15と第2の可動板体400bの挿通孔401bを位置合わせすることができるので、第2の可動板体400bの針15への挿着が極めて容易となる。
【0043】
次いで、第1の可動板体400aと第2の可動板体400bとを重ねたまま針15の下方に移動させて前述した
図4(A)に示される初期状態にすることができる。第1の可動板体400aと第2の可動板体400bの下方への移動は、重ねたまま一緒にしてもよいし、個別にすることもできる。
【0044】
また、3枚以上の可動板体を用いて、例えば、最も基台2側に挿着された可動板体を案内板として作用させ、他の可動板体は試料取り出し用の板として作用させるようにしてもよい。また、全ての可動板体を試料取り出し用の板としての作用させるようにしてもよい。また、3枚以上の可動板体の内、2枚以上の可動板体を案内板として作用させてもよい。
【0045】
このような操作が可能となる本発明の針状構造体システムを構成する可動板体400および針体治具100の各構成について、以下に詳細に説明する。
【0046】
(可動板体400(400a,400b)についての説明)
平板状の可動板体400は、加熱可能な板体から構成されることが望ましく、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等の金属や、あるいはシリコン、リン酸カルシウム、チッカアルミ、ボロンナイトライド等のセラミックスから構成され、その厚さは、50〜5000μm、好ましくは、150〜1000μmとされる。
【0047】
また、加熱を必要とせず、試料等を針から引き抜く際の操作にのみ可動板体400を使用する場合には、金属以外の樹脂板等を用いることができ、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、フッ素、テフロン樹脂等を例示することができる。
【0048】
また、平板状の可動板体400の主面の大きさは、少なくとも、針体治具100の複数の針15が存在するエリアを包含する大きさ程度あればよく、具体的な大きさは、操作性や機能性を考慮して適宜設定することができる。多角形形状や円形状等いずれであってもよい。例えば、四角形状に構成した場合には、一辺の長さを5〜50mm程度とすることができる。
【0049】
また、可動板体400を把持し易いように把持部を設けるようにしてもよい。また、可動板体そのものを加熱や冷却しやすいようにその大きさを大きめに設定して伝熱面積を拡張させることもできる。
【0050】
また、可動板体そのものに電極を施し、可動板体そのものを抵抗体として構成することにより、可動板体400を加熱することができ、可動板体400に載置された試料200等を迅速に加熱することが可能になる。
【0051】
可動板体400に形成されている複数の挿通孔401(401a,401b)は、通常、基台2から突出して形成されている針15の配置パターンに合わせて挿通可能に配置して形成すればよい。挿通孔401の大きさは、針15の胴部(尖った針先部分以外の箇所)が図示のごとく略ストレートとなっている場合には、針15の胴部の外径寸法よりもわずかに大きめの寸法となるように設定すればよい。また、針15の胴部が、針の基部から針先端に向けて徐々に狭まるテーパー形状になっている場合には、可動板体400を係止して固定させたい位置等を考慮して、挿通孔401の大きさを適宜設定することができる。
【0052】
また、挿通孔401の形態は、針15の胴部の断面形態に類似する形態とすることが一般的であるが、必ずしも類似形態に限定されるものではない。針15が挿通孔401内に挿通でき、かつ、針15と挿通孔401による係止部分が形成できればよい。例えば、針15の胴部の断面形態を四角形状とし、挿通孔401を円形形状とすることもできるし、針15の胴部の断面形態を円形形状とし、挿通孔401を四角形状とすることもできる。
【0053】
また、
図1や
図7(A)に示されるように、針15の数に合わせてその数だけ挿通孔401を形成することが一般的ではあるが、
図7(B)に示されるように、針15の数に対応させた主孔401´(実際に針を挿通させる孔)を形成させ、これらの主孔401´を一列に繋いだ一連の挿通孔402とすることもできる。また、
図7(C)に示されるように、複数の針15を纏めて挿通させる長穴状の挿通孔403とすることもできる。長穴状の挿通孔403は、さらに細分化して複数の長穴に分けても良い。
【0054】
可動板体400を金属板として挿通孔401を形成するには、例えば、エッチング、レーザ加工、放電加工、プレス、電解研磨、化学研磨、電鋳めっき等により形成することができる。
【0055】
このようにして針15を挿通可能とする挿通孔401を有する可動板体400を準備することができる。
【0056】
また、
図8に示されるように、孔径(開口)を厚さ方向に変えて孔径(開口)の大きな方(開口の寸法B)を基部側に向け、孔径(開口)の小さな方(開口の寸法A)を針先方向に向けるように配置するのも好ましい態様の一つである。針15に挿通孔401を挿通させ易く、また、可動板体400の上に載置された試料200等を落下し難くするためである。
【0057】
なお、(ウエット)エッチング法により挿通孔401を形成する場合には、後述する針形態をエッチング形成する手法を参考にされたい(
図15参照)
【0058】
次いで、針体治具100の構成について説明する。
(針体治具100の構成についての説明)
【0059】
<針体治具100の第1の実施形態>
本発明で使用することができる第1の実施形態の針体治具100は、
図9に示される針状物部材10とスペーサ部材50とを、例えば、
図12(A)の中央部に示されるごとく交互に複数配置し、これらを積層した状態で固定することによって構成される(
図12(B)参照)。このようにして、基台から突出した複数の針を有する針体治具を準備することができる。
【0060】
針状物部材10とスペーサ部材50とは交互に配置することが好ましいが、必ずしも交互配置に限定されるものではない。例えば、積層方向に部分的にスペーサ部材50を介在させない箇所が存在するようにしてもよいし(針状物部材10同士が重なる箇所が存在する)、積層方向に部分的に針状物部材10を介在させない箇所が存在するようにしてもよい(スペーサ部材50同士が重なる箇所が存在する)。例えば、針状物部材10とスペーサ部材50とを積層して基台2(
図12(B)参照)を形成する際に、基台2の端部に、スペーサ部材50を多く配置するようにすることができる。これにより基台2の端部に平坦なスペースを確保することができ、かつ針体治具の載置の安定性を向上させることができる(基台自体の大きさは大きくなるが針を基台の中央部に集中させることができるため)。
【0061】
針状物部材10は、
図9に示されるように平板状の基部11と、基部11の上面11aから一体的に突出形成された複数の針15を有している。ここでいう、「一体的に突出形成された」とは、基部11と針15とが同一材質から構成されており、かつ基部11と針15とが一度も分離された状態で存在したことがない状態を言う。一例として、1枚の金属板状体を被加工ベース体として、この被加工ベース体を本発明で用いる針状物部材10の所定形状に、エッチング加工あるいはプレス加工、あるいはプラズマやアーク等の熱による切断加工や、レーザや高圧流体や超音波等のエネルギーによる切断加工を行い、針状物部材10を得た場合に、上記の「一体的に突出形成された」状態が作り出される。針15の側面は、直線性を持たせることが通常であるが、突き刺された物が重力に従い下方に落下することをくい止めるストッパーの役割として、適宜、突起を形成しても良い。
【0062】
本実施形態において、平板状の基部11は、前述した複数の針15が突出する上面11aと、組み合わせ使用される後述のスペーサ部材50の平面と当接することのできる2つの平行 な側面11b、11cと、上面11aの反対面である下面11dと、
図9において複数の針15が配列される方向の端部に位置する2つの端面11e、11fとを有している。
【0063】
本実施形態において、スペーサ部材50は、
図9に示されるように針状物部材10の基部11と同様な形態の平板状の板体51を有し構成され、板体51は、前述した針状物部材10の基部11の側面11b、11cと当接することができる2つの平行 な側面51b、51cと、上面51aと、上面51aの反対面である下面51dと、長手方向の端部に位置する2つの端面51e、51fとを有している。スペーサ部材50は、主として、(1)針状物部材10とスペーサ部材50との積層方向(以下、単に「積層方向α」と称すことがある)における針15の配列ピッチP2を規定する役割と(
図12(B)参照)、(2)針体治具100の土台となる基台2(
図12(B)参照)の一部を構成する役割を有する。
【0064】
図9を参照しつつ針状物部材10の平板状の基部11の大きさについて説明すると、その厚さT(側面11bと11cとで規定)は、50〜250μm程度とされ、高さH(上面11aと下面11dとで規定)は、2〜30mm程度とされ、幅L(両端面11e、11fで規定)は、5〜50mm程度とされる。
【0065】
図9を参照しつつ針状物部材10の針15の大きさおよび配列等の仕様について説明すると、針の幅W1は、50〜250μm程度とされ、針の奥域幅W2(「積層方向α」の幅W2)は、前述した基部11の厚さTと同程度とされ、針の高さN
Hは、2〜20mm程度とされ、針の配列ピッチP1は、75〜400μm程度とされる。
【0066】
図9に示される針15の先端形状は、針の先端を尖らすための2つのテーパ面15aを有し構成され、これらのテーパ面15aが先端で合流した箇所が針先端の稜線15bを形成するような山形の形状となっている。
図9で示される針先角度θは、15〜120°程度とされる。
【0067】
しかしながら、針15の先端形状は、この形状に限定されるものではなく、対象物が穿刺可能な形態であればよい。円錐形状の先端や、多角錐形状の先端や、鋸歯形状の先端や、
図13に示されるように針15の先端の肉厚が半分程度に欠けた状態の形態のもの(ハーフエッチング形状)であってもよい。
【0068】
図9に示されるスペーサ部材50の板体51の大きさについて説明すると、その厚さT´(側面51bと51cとで規定)は、50〜250μm程度とされ、高さH´(上面51aと下面51dとで規定)は、2〜30mm程度とされ、幅L´(両端面51e、51fで規定)は、5〜50mm程度とされる。
【0069】
針状物部材10の平板状の基部11の大きさと、スペーサ部材50の板体51の大きさとの関係について説明すると、両者は、対応する厚さTおよびT´の寸法を除いて、対応する他の寸法(HとH´の大きさ、LとL´の大きさ)は同じとすることが望ましい。繋ぎ目部分に凹凸が少ない基台2(
図12(B)参照)を形成するためである。なお、基台2は、前述したように針状物部材10の基部11と、スペーサ部材50の板体51との積層体から形成される。TおよびT´の寸法を独立させるのは、基部11の厚さTは、針15の厚さと直接関連しており針仕様を定める上で独自性が必要であり、また、スペーサ部材50の板体51の厚さT´は、積層方向αの針の配列ピッチP2(
図12(B);
図14参照)を定める上で独自性が必要となるからである。もちろん、TおよびT´の寸法は結果として同じになってもよい。積層方向αの針の配列ピッチP2は、
図16に示されるごとく針の配列によっても、異なるが、通常、上記の針の配列ピッチP1と同程度とすればよく、例えば、75〜400μm程度とされる。
【0070】
なお、本実施の形態では、
図9に示されるように、針状物部材10の基部11の片方の端部11e、およびスペーサ部材50の板体51の片方の端部51eに、それぞれ、位置合わせ用の切り欠き溝13、53が形成されている。切り欠き溝13、53の形状は、図示のごとくV溝形状が好ましいが、この形状に限定されることなく例えばU溝形状、円弧溝形状等であってもよい。これらの切り欠き溝13、53は、
図12(A)に示されるように、針状物部材10とスペーサ部材50との積層体の位置合わせに用いられる。例えば、
図12(A)に示される細長い三角柱の位置合わせ用部材60を用いて、この位置合わせ用部材60が、位置合わせ用の切り欠き溝13、53の中に収納されるように位置合わせを行うことによって、極めて簡易にかつ迅速に針状物部材10とスペーサ部材50との積層体の位置合わせができる(
図12(B)参照)。
【0071】
また、針状物部材10の基部11の側面11b、11cおよびスペーサ部材50の板体51の側面51b、51cには、それぞれ、積層方向αに貫通された2つの貫通孔16,56が形成されている。ただしこの貫通孔は2つに特定する必要はなく、2つ以上であれば、複数の貫通孔を持つことが可能である。これらの2つの貫通孔16、56は、同一の大きさでかつ同一のピッチで形成されている。このような貫通孔16、56は、針状物部材10とスペーサ部材50とを積層させて集合体を形成した時に、積層方向αに貫通したトンネル状の穴が形成され、このトンネル状の穴に棒状の固定棒(例えば、ピン、ボルト等)を挿入することによって、針状物部材10とスペーサ部材50との積層体を固定させ一体化させることができる(
図14(B)参照)。また、このような貫通孔16、56を針状物部材10とスペーサ部材50との積層体の位置合わせに用いるようにしてもよい。すなわち、貫通孔16、56に挿通可能な棒状体を準備してこの棒状体に、針状物部材10とスペーサ部材50の貫通孔16、56を順次、挿通するようにすればよい。
【0072】
また、他の位置合わせ手法として、貫通孔16、56の径を積層順に徐々に小さく形成しておき、これらを積層した時にできるトンネル状の穴を積層体の片端から見たときに、テーパー状に視認できるようにしておくこともできる。
【0073】
針状物部材10は、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等の金属から構成され、スペーサ部材50は、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等の金属、あるいはシリコン、リン酸カルシウム、チッカアルミ、ボロンナイトライド等 のセラミックスから構成される。
【0074】
好ましい態様として、針状物部材10およびスペーサ部材50は共に同種の金属材料から構成され、しかもこれらが容易に拡散接合できる金属材料から構成されるのがよい。同種の金属材料から構成することにより、以下のメリット、すなわち、異種金属同士の接続により両者の使用環境での自然電位の違いにより局部電池が形成され、卑な金属が腐食してしまうという危惧がなくなる。また、拡散接合できれば、接着剤フリーの接続となり、溶液中や特殊な温度条件でも不都合なく使用することが可能となる。また、固定のための部品を用いる必要なく、生産性も向上する。拡散接合とは、接合する材料同士を密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、加圧・加熱し、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。このような好適な材料として、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト合金等及び、セラミックスを例示することができる。
【0075】
図14(A)〜(D)にはそれぞれ、針状物部材10とスペーサ部材50との積層体を形成した後、積層体を種々の方法で固定させ一体化させた状態の模式的断面図が示される。
【0076】
図14(A)は、積層体を固定させ一体化させる手法として、拡散接合の手法を用いた場合であって、針状物部材とスペーサ部材との積層体を形成した後、積層体の接合界面を拡散接合し、積層体を固定させ一体化させている。
【0077】
図14(B)は、積層体を固定させ一体化させる手法として、積層体の積層方向αに形成されたトンネル状の穴の中に棒状の固定棒(例えば、ピン、ボルト等)を挿入する手法を用いた場合であって、トンネル状の穴を形成するための貫通孔を有する針状物部材10とスペーサ部材50との積層体を形成した後、積層体の積層方向αに形成されたトンネル状の穴の中に棒状の固定棒を挿入して積層体を固定させ一体化させている。固定一体化の手法は、図示のごとくナット94とボルト93の使用によって両端部から締め付けるように行ってもよいし、単純に、棒状の固定棒を圧入するだけで固定を行なうようにしてもよい。
【0078】
図14(C)は、積層体を固定させ一体化させる手法として、クランプ部材95を用いた場合であって、針状物部材10とスペーサ部材50との積層体を形成した後、積層体の積層方向αの両端部をクランプ部材95を用いて挟持し、固定させ一体化させている。
【0079】
図14(D)は、積層体を固定させ一体化させる手法として、いわゆるスポット溶接やアーク溶接手法を用いた場合であって、針状物部材10とスペーサ部材50との積層体を形成した後、積層体の積層方向αの両端部を挟持した状態で積層体を溶接することによって固定させ一体化させている。接合状態は拡散接合に類似する形態となる。
【0080】
なお、
図14(B)や
図14(C)示されるような形態では、使用後に積層体をばらして、個々の部材を洗浄したり、積層部品の一部を交換したりした後に、再度、積層体として組み合わせて使用することも可能となる。
【0081】
上記の第1の実施形態の針体治具100(基台2から突出した複数の針50を有する針体治具100)は、好適には、以下の工程を経て製造される。すなわち、(1)原材料となる金属薄板の主平面にマスクを形成した後、金属薄板の露出部分をエッチングして平板状の基部とその基部から一体的に突出した複数の針を備える針状物部材を形成する針状物部材形成工程と、(2)スペーサ部材を準備する工程と、(3)前記針状物部材形成工程により形成された針状物部材と、準備されているスペーサ部材とを、積層して積層物を形成し、当該積層物を固定させ一体化させてなる工程を有し構成される。
【0082】
<針状物部材形成工程>
図15(A)〜(F)を参照しつつ、本発明の針体治具100を構成する際に用いられる針状物部材10を(ウエット)エッチング法で形成する場合について説明する。
【0083】
まず、
図15(A)に示されるように、原材料となる金属薄板19が準備される。
図15(A)において、金属薄板19の主平面19aは図面の奥行き 方向となり、図面では金属薄板の厚さtが表示されている。金属薄板の厚さtは、そのまま針状物部材の基部11の厚さTおよび針19の幅W2となる(
図9参照)。金属薄板19は、予め脱脂洗浄処理しておくことが望ましい。次工程におけるフォトレジスト膜の密着性を向上させ、品質・仕上がりを向上させるためである。
【0084】
次いで、
図15(B)に示されるように、金属薄板の両主平面19aにそれぞれマスク形成のためのフォトレジスト膜80が形成される。フォトレジスト膜80は塗布形成してもよいし、フィルム状のフォトレジスト膜80を貼り付けるようにしてもよい(いわゆるラミネート)。2つの主平面19aのうち片側にのみフォトレジスト膜80を形成することも可能であるが、加工精度を担保するためには、図示のごとく両主平面19aにそれぞれフォトレジスト膜80を形成することが望ましい。フォトレジスト膜80はネガ型、ポジ型、いずれであってもよい。
【0085】
次いで、
図15(C)に示されるように、フォトレジスト膜80の上に、露光用のパターンが形成されたパターンフィルム原版81を配置し、露光処理が行われる。
図15(C)の断面図で示される露光のパターンは、例えば、
図10のA−A線矢視断面の針15群の断面図として見て頂きたい。フォトレジスト膜80がネガ型の場合、露光部分が現像液に対して不溶解性となり、現像後に露光部分が残る。フォトレジスト膜80がポジ型の場合、露光部分が現像液に対して溶解し、現像後に未露光部分が残る。
図15における図示例では、ネガ型の場合が示されている。
【0086】
次いで、
図15(D)に示されるように、フォトレジストの現像処理が行われ、現像後、露光部分が所定のパターンの(レジスト)マスク85として残り、露光されていない箇所は、レジストが除去されて金属薄板19の表面が露出する。
【0087】
次いで、
図15(E)に示されるように、エッチング処理が行われる。すなわち、マスキングされた金属薄板にエッチング液を付けることによって、上記の現像操作で露出された金属薄板19の部分だけがエッチングされて、所望の形状に金属薄板が加工される。エッチング液は、使用する金属薄板の種類に応じて適宜選定するようにすればよい。
【0088】
次いで、
図15(F)に示されるように、エッチング処理後に金属薄板19に残っているレジスト(マスク)85を除去し、洗浄・乾燥することによって、針状物部材10が形成される(例えば、
図10に示されるごとく針状物部材10が形成される)。なお、このエッチング処理によって、位置合わせ用の切り欠き溝13および2つの貫通孔16も同時に形成することが好ましい。
【0089】
なお、
図13に示されるように針15の先端の肉厚が半分程度に欠けた状態の形態のものを製造するには、針の先端部分を覆う両側のマスクの内、肉厚を薄くする側の片側のマスクを部分的に除くようにすればよく、これにより、いわゆるハーフエッチングができる。
【0090】
なお、上記の針状物部材形成工程におけるエッチングは、好適例としてウエットエッチングを挙げて説明したが、金属薄板の肉厚が極めて薄いものであれば、反応性気体やイオン、ラジカルを用いたドライエッチングを採用することもできる。
【0091】
<スペーサ部材を準備する工程>
スペーサ部材50は、針状物部材10に比べれば、形状が複雑でないために、特にその製法に限定はない。しかしながら、スペーサ部材50は、針状物部材10と一体化使用されるため高い寸法精度が要求され、上記の針状物部材形成工程に準じてエッチング法で形成することが好ましい。その際、位置合わせ用の切り欠き溝53および2つの貫通孔56も同時に形成することが好ましい。
【0092】
<針状物部材と、スペーサ部材とを積層して積層物を形成し、当該積層物を固定させる工程>
図12(A)に示されるように、前記針状物部材形成工程により形成された針状物部材10と、準備されたスペーサ部材50とを、複数枚積層して積層物を形成し、この積層物を、例えば、前述した
図14(A)〜
図14(D)に示される種々の方法で固定させ一体化させて、
図12(B)に示されるごとく本発明の突出した複数の針を備える針体治具100を得ることができる。勿論、
図12(A)〜
図12(D)に示される以外の方法で積層体を固定させ一体化させるようにしてもよい。
【0093】
なお、針状物部材10と、スペーサ部材50とを、複数枚積層して積層物を形成するに際しては、平板状の可動板体400の挿通孔401を針の位置決めに利用して針体治具を組み立てるようにしてもよい。すなわち、まず最初に、全ての針状物部材10の針15を所定位置の挿通孔401に挿通させた状態で保持し、次いで、針状物部材10の間にスペーサ部材50を順次介在させて配置することにより、針体治具の組み立てを容易にすることができる。
【0094】
本発明の突出した複数の針を備える針体治具100の針15の配列例を
図16を参照しつつ説明する。
図16(A)および(B)は、それぞれ、針体治具に配置された針の配列例を示す平面図であり、
図16(A)には正方形ピッチ配列の状態が示され、
図16(B)には三角形ピッチ配列の状態が示される。
図16(A)に示される正方形ピッチ配列(P1=P2)が好ましいが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。なお、
図16(B)に示される三角形ピッチ配列を正三角形ピッチ配列(P1:P2=2:√3)とするのも好ましい態様の一つである。
【0095】
<針体治具の第1の実施形態の変形例>
上述してきた第1の実施形態の針体治具100は、針状物部材10とスペーサ部材50とを、例えば、交互に複数配置し、これらを積層した状態で固定することによって構成していたが、スペーサ部材50を用いることなく、針状物部材10のみを直接積層することによって、針体治具100を形成するようにしてもよい。すなわち、
図17に示されるように、針状物部材10の基部11にスペーサ部材として機能を持たせることによって、スペーサ部材の使用を省略することができる。つまり、針状物部材10の平板状の基部11の厚さTを、針状物部材10の針15の奥域幅W2(「積層方向α」の幅W2)よりも大きくすることにより、基部11にスペーサ部材として機能を持たせることができる。このような針状物部材10(
図17)は、例えば、
図13に示される針15の先端部のみハーフエチングを、針15の基部まで全体的にハーフエッチングすることにより形成することができる。
【0096】
なお、針状物部材10を、複数枚積層して積層物を形成するに際しては、平板状の可動板体400の挿通孔401を針の位置決めに利用して針体治具を組み立てるようにしてもよい。すなわち、全ての針状物部材10の針15を所定位置の挿通孔401に挿通させた状態で保持させることにより、針体治具の組み立てを容易にすることができる。
【0097】
<針体治具の第2の実施形態>
針体治具の第2の実施形態について
図18(A)、(B)を参照しつつ説明する。
【0098】
図18(A)は、第2の実施形態の針体治具を作る状態を模式的に示す斜視図であり、
図18(B)は、出来上がった第2の実施形態の針体治具を模式的に示す斜視図である。
【0099】
図18(B)に示される針体治具101は、例えば、
図18(A)に示されるように、複数の微細な孔351をあけた、例えば金属板からなる四角板形状の基台350に、その孔351と同一径の微細な棒状の金属等からなる針360を刺し込み、カシメて固定する方法や、孔351の径よりも微細な棒状の金属等からなる針360を刺し込み、孔351と360との接触部位を溶接や、接着剤により固定等して製作することができる。
【0100】
このようにして形成された第2の実施形態の針体治具は、
図19に示されるように、針体治具101の基台350から突出した複数の針360に、可動板体400に形成された挿通孔401を挿通させることにより、針体治具101と可動板体400とを組み合わせて一体化できるようになっている。
【0101】
なお、
図18(A)に示されるがごとく、四角板形状の基台350に形成された複数の微細な孔351に、微細な棒状の金属等からなる針360を刺し込む作業を行うにあたっては、図示していない平板状の可動板体400の挿通孔401を針の位置決めに利用することも可能である。これにより、針体治具の組み立てを容易にすることができる。
【0102】
また、
図20〜
図21に示されるように、上述してきた本発明の針状構造体システムに用いられる針体治具100(101)を複数個準備し、これらを互いに連結して用いることもできる。針体治具100(101)の連結手段は公知の種々の手法を用いることが可能であり、例えば、レーザー溶接、スポット溶接、アーク溶接、エポキシやポリイミドなどの樹脂による接着などによって形成することができる。
【0103】
複数の針体治具100(101)を連結して長物状の治具とすることにより、例えば、1つの針体治具では収まりきれない細長い試料等を針に穿刺して固定すること等が可能となる。
【0104】
図20(A)は、2つの針体治具100(101)を連結して使用する状況を示す平面図であり、
図20(B)は、
図20(A)の正面図である。2つの針体治具100(101)を連結する場合、連結される互いの基台2は、複数の針が突出する主面における輪郭線を構成する少なくとも1辺2aが、他の基台との連結を可能とする連結辺2aを構成している。連結辺2aにおいては、その辺2aの近傍まで実質的に針が突出形成されていること(換言すれば、針が突出していない基台の端部スペースをできるだけ小さくすること)が望ましい。基台2の連結部における針密度が極端に小さくなるのを防止し、連結部近傍における試料の穿刺を確実におこなうことができるようにするためである。「辺2aの近傍まで実質的に針が突出形成されていること」とは、上記の作用効果が奏するように形成されることであり、具体的には、
図20(A)、(B)において、針ピッチPと、連結辺2aから最も近い針との間隙Qと、の関係が、Q=(1/5)P〜2Pの関係にあることを言う。
【0105】
図21(A)は、3つ以上の複数の針体治具(図示例は5つ)を連結して使用する状況を示す平面図であり、
図21(B)は、
図21(A)の正面図であり、
図21(C)は、
図21(A)の変形例を示す正面図である。
【0106】
図21(A)、(B)に示されるように3つ以上の複数の針体治具(図示例は5つ)を連結して使用する場合、基台2は、複数の針15が突出する主面における輪郭線を構成する少なくとも対向する2辺2aが、他の基台との連結を可能とする連結辺2aを構成している。上述したように連結辺2aにおいては、その辺2aの近傍まで実質的に針が突出形成されていること(換言すれば、針が突出していない基台の端部スペースをできるだけ小さくすること)が望ましい。「辺2aの近傍まで実質的に針が突出形成されていること」とは、上記
図20を参照しつつ説明した定義と同義である。なお、
図21(A)、(B)の図示例では、5つの基台2が全て同様の形態を有し、対向する2辺2aの近傍まで実質的に針が突出形成されているように構成されているが、基台2間に挟まれていない最初と最後の基台2は、上記
図20に示されるように片側のみ連結辺2aを形成するように構成してもよい。
【0107】
また、
図21(C)に示されるように、複数の針15が突出する主面における輪郭線を構成する全ての辺2aを、他の基台との連結を可能とする端部スペースの小さい連結辺2aとして構成してもよい。この場合には、直線的に連結する以外に種々の連結形態のバリエーションが可能となる。例えば、屈曲するように連結された長物状の形態をとることが可能となる。
【0108】
なお、複数の針体治具を連結して使用する場合、可動板体400は、連結後の針の配置パターンに合わせてつくるようにすることができる。この場合、可動板体400は連結後の針体治具に合わせて作製した1枚の板体とすることもできるし、連結前の個々の針体治具に合わせて作製した個々の板体とすることもできる。
【0109】
上述してきた針状構造体システムは、前記針体治具と前記可動板体とを、突出した複数の針に可動板体の挿通孔を挿通するように組み立てることにより製造することができる。
【0110】
以下に具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【実施例】
【0111】
[実施例]
(針状物部材10の作製)
原材料となる厚さt=150μmのステンレス製金属薄板19を準備し、この金属薄板19の両主平面に、それぞれ、厚さ15μmのネガ型フォトレジストフィルムを貼り付けた。
【0112】
次いで、フォトレジストフィルムの上に、露光用のパターンが形成されたパターンフィルム原版を配置し、露光処理を行なった。次いで、現像処理して所定パターンのマスクを形成した後、エッチング液として、塩化鉄(II)溶液を用いて、エッチング処理を行った後、残余のレジスト(マスク)を除去し、洗浄・乾燥することによって、
図9に示されるごとく針状物部材10を得た。得られた針状物部材10の各部の寸法は以下のとおりとした。
【0113】
・L=15mm
・H=4.5mm
・T=150μm
・W1=150μm
・W2=150μm
・N
H=10mm
・P1=400μm
・針15の総本数:21本
・針先角度θ=17.5度
・切り欠き溝13:V溝として形成した
【0114】
(スペーサ部材50の作製)
図9に示されるようなスペーサ部材50を上記の針状物部材10の製造と同様なエッチング法で作製した。得られたスペーサ部材50の各部の寸法は以下のとおりとした。
【0115】
・L´=15mm
・H´=4.5mm
・T´=250μm
・切り欠き溝53:V溝として形成した(切り欠き溝13と同じ大きさ)
【0116】
上記の要領で作製した針状物部材10と、スペーサ部材50とを、
図12(A)に示すごとく複数枚交互に積層し、さらに基台2の積層方向αの両端部に平坦なスペースを確保するべく、スペーサ部材50を、前後各10枚ずつ積層して積層物を形成した。
【0117】
なお、積層物の形成に際しては、三角柱の位置合わせ用部材60を用いて、この位置合わせ用部材60が、位置合わせ用の切り欠き溝13、53の中に収納されるように配慮して位置合わせをした。ついで、不活性ガス雰囲気中で、積層物を加圧・加熱し、接合面に生じる原子の拡散を利用して拡散接合することにより、
図12(B)に示されるごとく一体化された針体治具100を得た。積層方向αの針15のピッチP2(
図12(B);
図14参照)は、400μmとした。また、積層方向αの基部の長さL2は、13.15mmとした。
【0118】
なお、得られた針体治具100の針15の長さN
Hは、目標値10mmに対して、その位置精度は±50μmの範囲に収めることができ、きわめて寸法精度に優れるものであることが確認できた。また、針の先端角度θは、上記の設定角度以外、15〜120度の任意の角度で再現することができ、針先端角度をある程度自由に変えることが確認できた。
【0119】
(可動板体400の作製)
上記針体治具100の針15の配置パターンに合わせて配置形成された21×21個の挿通孔401を備える可動板体400を作製した。
【0120】
すなわち、可動板体400の原材料となる厚さt=150μmのステンレス製金属薄板(大きさ:300×300mm) を準備し、この金属薄板の両主平面に、それぞれ、厚さ15μmのネガ型フォトレジストフィルムを貼り付けた。
【0121】
次いで、フォトレジストフィルムの上に、針15の配置パターンに合わせて形成されたパターンフィルム原版を配置し、露光処理を行なった。次いで、現像処理して所定パターンのマスクを形成した後、エッチング液として、塩化鉄(II)溶液を用いて、エッチング処理を行った後、残余のレジスト(マスク)を除去し、洗浄・乾燥することによって、
図1に示されるごとく挿通孔401を備える可動板体400を得た。挿通孔401は、大きさ180μm×180μm の四角形状であって、配列ピッチは針15に合わせて縦方向および横方向それぞれ400μmとした。
【0122】
(針体治具100と可動板体400との組み立て工程)
次いで、上記のごとく準備した針体治具100と可動板体400とを組み立てた。すなわち、可動板体400の挿通孔401内に針15を挿通させることにより、針体治具100と可動板体400とを組み立てて、
図2(A)に示されるような針状構造体システムを形成した。
【0123】
可動板体400は、複数の針15の実質的な軸方向に移動可能に挿通された状態を保つことができ 、しかも、針15と挿通孔401とによる係止部分によって針の軸方向の任意位置で係止して固定されることが確認できた。実際に、
図2(A)〜
図3に示される操作が容易に行えることも確認できた。さらに、2枚の可動板体400を用いて、実際に
図4(A)〜
図6に示される操作が容易に行えることも確認できた。
【0124】
また、可動板体そのものに配線を施し、可動板体そのものを抵抗体として構成することにより、可動板体400を加熱することができることも確認できた。
【0125】
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明の針状構造体システムは、基台から突出した複数の針を有する針体治具と、前記突出した複数の針を挿通可能とする挿通孔を有する可動板体とを、挿通孔内に針を挿通させることにより、組み合わせ可能として構成されているので、予め、針体治具と可動板体とを組み合わせておいて、その後、針に試料を刺し通して試料を固定するように用いれば、その後の試料等の引き抜きは、容易にできる。つまり、可動板体を針から上方に抜き取るようにすれば可動板体の上に試料等が乗ったまま一体的に取り出せるので、試料等を針から引き抜く際の操作が容易にできる。
【0126】
さらに、可動板体そのものを加熱や冷却することによって、針に刺し通されている試料に対して解凍や冷凍のための熱を伝わり易くすることができる。さらに、可動板体の挿通孔を針の位置決めに利用して針体治具を組み立てることによって、針体治具の製造を容易にすることができる。