特許第6011211号(P6011211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコールの特許一覧

<>
  • 特許6011211-足被覆体 図000002
  • 特許6011211-足被覆体 図000003
  • 特許6011211-足被覆体 図000004
  • 特許6011211-足被覆体 図000005
  • 特許6011211-足被覆体 図000006
  • 特許6011211-足被覆体 図000007
  • 特許6011211-足被覆体 図000008
  • 特許6011211-足被覆体 図000009
  • 特許6011211-足被覆体 図000010
  • 特許6011211-足被覆体 図000011
  • 特許6011211-足被覆体 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011211
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】足被覆体
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   A41B11/00 D
   A41B11/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-216520(P2012-216520)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70302(P2014-70302A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100183058
【弁理士】
【氏名又は名称】李 京佳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智子
(72)【発明者】
【氏名】梅本 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴裕
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−100981(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3149831(JP,U)
【文献】 特開2009−299531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00−11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を被覆する足被覆体であって、
サポートライン部を含み、
前記サポートライン部は、
前記足被覆体の着用時に拇趾球に接する位置から、足の甲部を通って、踵の外側に接する位置までの領域に配置され、
前記サポートライン部の復元力は、前記足被覆体における前記サポートライン部以外の部分よりも大きいことを特徴とする足被覆体。
【請求項2】
前記サポートライン部の両端部が、前記足被覆体の足裏側まで延びていることを特徴とする請求項1記載の足被覆体。
【請求項3】
前記サポートライン部の幅は、拇趾球を少なくとも半分程度覆うように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の足被覆体。
【請求項4】
前記足被覆体の足裏部は、前記足被覆体における足裏部以外の部分よりも難伸縮であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の足被覆体。
【請求項5】
前記足被覆体の足指部が、親指を覆う指袋と、その他の指を覆う指袋とに分離していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の足被覆体。
【請求項6】
前記サポートライン部が、
第1のサポートライン部と第2のサポートライン部とを有し、
前記第1のサポートライン部は、前記足被覆体の着用時に拇趾球に接する位置から、足の甲部を通って、踵の外側に接する位置までの領域に配置され、
前記第2のサポートライン部は、前記足被覆体の着用時に小指の付け根部分に接する位置から、足の甲部を通って、踵の内側に接する位置までの領域に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の足被覆体。
【請求項7】
前記足被覆体がソックスであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の足被覆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足被覆体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行時に生じる膝痛、腰痛等の不具合を解消することを目的として、足部を矯正する靴下が用いられている。例えば、下記特許文献1では、第5中骨全体部から足背中央部を通過し、足底アーチ部に到達する部分、足背中央部で左右足首部に分かれる部分、第1中足骨頭足背部から足底拇趾球部にそれぞれ難伸縮性領域を設けた靴下が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4654340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1の靴下では、難伸縮性領域によって足部が固定されるため、足関節の動きの自由度が低下し、歩きにくかった。また、前記特許文献1の靴下では、足部が固定されるため、着用感が窮屈であった。そして、歩きやすくするためには、足がより動きやすくなるように足の動きを補助する必要があるが、前記特許文献1の靴下に限らず、従来の技術は、足部を特定の位置に固定するものであり、足の動きを補助するものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、窮屈感を感じず、かつ、足の動きを補助して歩きやすくすることが可能な、足被覆体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の足被覆体は、
足を被覆する足被覆体であって、
サポートライン部を含み、
前記サポートライン部は、
前記足被覆体の着用時に拇趾球に接する位置から、足の甲部を通って、踵の外側に接する位置までの領域に配置され、
前記サポートライン部の復元力は、前記足被覆体における前記サポートライン部以外の部分よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、窮屈感を感じず、かつ、足の動きを補助して歩きやすくすることが可能な、足被覆体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るソックス100を示す図である。図1(a)は、ソックス100を親指側から見た斜視図、図1(b)は、ソックス100を小指側から見た斜視図である。
図2図2(a)および(b)は、前記第1の実施形態に係るソックス100の着用状態を示す図である。
図3図3(a)、(b)および(c)は、前記第1の実施形態に係るソックス100の歩行時における作用を説明する図である。
図4図4は、前記第1の実施形態に係るソックス100を足裏側から見た図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係るソックス200を示す図である。図5(a)は、ソックス200を親指側から見た斜視図、図5(b)は、ソックス200を足裏側から見た図である。
図6図6は、本発明の第3の実施形態に係るソックス300を、親指側から見た斜視図である。
図7図7(a)および(b)は、高齢者と一般成人とで、歩行時の足首の動きを比較する図である。
図8図8(a)および(b)は、着用評価に用いた指標を説明する図である。
図9図9(a)および(b)は、着用評価の結果を示すグラフである。
図10図10(a)および(b)は、着用評価の結果を示す図である。
図11図11(a)、(b)および(c)は、サポートライン部のバリエーションの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の足被覆体について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係るソックス100を示す。図1(a)は、ソックス100を親指側から見た斜視図であり、図1(b)は、ソックス100を小指側から見た斜視図である。本実施形態のソックス100は、サポートライン部101を含む。本実施形態において、サポートライン部101は、ソックス100の着用時に拇趾球に接する位置Sから、足の甲部を通って、踵の外側に接する位置Tまでの領域(図中の斜線で示す領域)に配置されている。本発明において、「拇趾球」とは、親指の付け根の部分をいう。また、本発明において、踵の「外側」とは、小指側を意味する。そして、本実施形態において、サポートライン部101の復元力は、ソックス100におけるサポートライン部101以外の部分よりも大きい。ここで、「復元力」とは、サポートライン部101等の足被覆体を構成する部材または素材が伸ばされた時、元に戻ろうとする力である。
【0011】
図2に、本実施形態に係るソックス100の着用状態を説明する図を示す。図2(a)および(b)は、着用者が立位状態で、足裏全面が接地している状態を示している。図2(a)および(b)に示すように、サポートライン部101は、着用者の拇趾球と踵の外側とをつなぐように配置されている。そして、サポートライン部101は、前述のとおり、他の部分よりも復元力が大きい。これにより、本実施形態に係るソックス100を着用することにより、図1および図2に矢印で示すように、着用者の足裏全面が接地している状態で、拇趾球と踵の外側との間で互いに引き合う力が働く。
【0012】
図3に、本実施形態に係るソックス100の歩行時における作用を説明する図を示す。図3(a)に示すように、本実施形態に係るソックス100では、サポートライン部101において、拇趾球の位置Sと踵の外側の位置Tとの間で互いに引き合う力が働いている。これにより、足が地面に接地する前、および、足を蹴り上げる際、それぞれの状態に応じて、サポートライン部101において力が働く向きが変化し、足首の動きを補助することができる。すなわち、図3(b)に示すように、足が地面に接地する前の状態においては、踵の外側Tを支点に、拇趾球Sを引っ張る力が働き(図3(b)に示す矢印の方向)、つま先が上がりやすくなる。また、図3(c)に示すように、足を蹴り上げる際には、拇趾球Sを支点に、踵の外側Tを引っ張る力が働き(図3(c)に示す矢印の方向)、踵が上がりやすくなって蹴り上げやすくなる。このように、本発明に係るソックスを着用することにより、足首の動きが補助され、歩きやすくなる。また、本発明は、足首の動きを補助するものであり、例えば、テーピング、サポーター等のように足首を固定するものではないため、着用時に窮屈感がない。
【0013】
図7に、高齢者と一般成人(30代の成人)とで、歩行時の足首の動きを比較する図を示す。図7(a)は、歩行時のつま先の上がり方を比較する図であり、図7(b)は、歩行時の蹴り上げを比較する図である。図7(a)に二点鎖線で示す線は、外踝Rを通る地面に対する水平線、および、外踝Rとつま先Qとを結ぶ線である。これに対し、図7(b)に二点鎖線で示す線は、外踝Rとつま先Qとを結ぶ線、および、つま先Qを通る地面に対する水平線である。そして、図7(a)において、前記二点鎖線で構成される角度θは、着地前につま先が上がる角度を示し、図7(b)において、前記二点鎖線で構成される角度γは、蹴り上げ時の踵が上がる角度を示す。図7(a)に示すように、高齢者の場合、30代の成人と比較してつま先が上がる角度が小さくなっていることがわかる。また、図7(b)に示すように、高齢者の場合、30代の成人と比較して、蹴り上げ時の踵が上がる角度が小さくなっていることがわかる。このように、高齢者の場合、加齢によって足首を動かす筋力が低下し、歩行時のつま先の上がり方も、蹴り上げも小さくなっている。そのため、高齢者の歩行時の足首の動きを向上させて歩きやすくするためには、つま先を上げる動きと蹴り上げとの両方を補助する必要がある。さらに、高齢者に限らず、足首の筋力が衰えていない世代であっても、歩行時につま先を上げる動きと蹴り上げとが補助されれば、足取りが軽くなり、歩きやすくなる。本発明によれば、どの世代であっても、本発明の足被覆体を着用するだけで、足首の動きが補助されるため、歩きやすさを実現することができる。また、高齢者の場合、つま先の上がり方が小さいため、例えば段差につまずいて転倒してしまうことがあるが、本発明によれば、つま先の上がり方が大きくなるため、転倒を防止することも可能となる。
【0014】
図4に、本実施形態に係るソックス100を足裏側から見た図を示す。図4に示すように、本実施形態において、サポートライン部101は、足裏側まで延びていることが好ましい。これにより、拇趾球および踵を足裏側から引き上げることができるため、サポートライン部101の引き上げ力がより強くなり、足首の動きを補助する効果を高めることができる。
【0015】
本実施形態において、サポートライン部101は、ソックス100の編み組織を部分的に変更することによって形成されている。その他、抜触加工によって、サポートライン部101に相当する部分をソックス100の生地に形成するようにしてもよい。また、サポートライン部101は、復元力を有する素材をソックス100に取り付けて形成されていてもよい。この場合、サポートライン部101に使用する素材は、復元力を有する素材であれば特に制限されないが、例えば、ストレッチテープ、パワーネット、ストレッチレース等の素材があげられる。また、樹脂をソックス100に塗布してサポートライン部101を形成してもよい。これらの方法によって、サポートライン部101に復元力を付与することができる。
【0016】
本実施形態において、サポートライン部以外のソックス本体部に使用する素材は、特に制限されないが、例えば、綿、アクリル、ナイロン、ポリウレタン等の素材があげられる。なお、これらの素材を商品の仕様に応じて複数用いてもよい。
【0017】
本実施形態において、サポートライン部101の幅は、拇趾球を少なくとも半分程度覆うことが可能な幅であることが好ましい。これにより、サポートライン部101が拇趾球全体を引き上げるため、サポートライン部101の引き上げ力を拇趾球に効果的に及ぼすことができる。前記サポートライン部101の幅は、拇趾球を半分程度もしくはそれ以上覆うことが可能な幅に設定されていればよく、特に制限されないが、例えば、1cm〜5cmの範囲が好ましく、より好ましくは、1.5cm〜3cmの範囲である。
【0018】
本発明において、サポートライン部101の復元力は、ソックス100におけるその他の部分よりも大きければよい。
【0019】
本発明において、サポートライン部101に、ソックス100におけるその他の部分よりも大きい復元力を持たせるために、サポートライン部101は、緊締力を有することが好ましい。前記緊締力は、例えば、足を空中に浮かした状態で、つま先の親指側が外踝側に付勢されることが好ましい。これにより、サポートライン部101に適度な復元力を持たせることができる。
【0020】
本実施形態において、ソックス100の足裏部105は、ソックス100における、足裏部105以外の部分よりも難伸縮であることが好ましい。これにより、サポートライン部101が伸びた際に、足裏部105がサポートライン部101に引かれて伸びることによって、サポートライン部101の復元力が小さくなるのを防ぐことができ、サポートライン部101の力を足に効果的に及ぼすことができるため、好ましい。この場合、足裏部105は、難伸縮性の素材で形成してもよいし、ソックス100における足裏部105の編み組織を部分的に変更することにより難伸縮性としてもよい。ただし、商品の仕様に応じて、足裏部105を、ソックス100の本体部分(サポートライン部101と足裏部105とを除く部分)と同程度の伸縮性を持たせるようにしてもよい。この場合には、上記のように難伸縮である場合よりもサポートライン部101の復元力は小さくなるものの、本発明の足の動きを補助するという効果を得ることができる。
【0021】
本実施形態において、ソックス100は、足首を覆う部分を有するが、本発明はこれに限られず、足首を覆う部分がないタイプのソックスにも適用することができる。また、本発明において、サポートライン部は、本実施形態のように帯状ではなく、複数のサポート部が断続的に並ぶことによって形成されていてもよい。例えば、サポートライン部は、図11(a)に示すように、複数の円形のサポート部が間隔をあけずに直線状に並ぶことによって形成されていてもよいし、図11(b)に示すように、複数の四角形のサポート部が間隔をあけて直線状に並ぶことによって形成されていてもよい。また、図11(c)に示すように、細幅のサポートラインを複数並べてサポートライン部を形成するようにしてもよい。
【0022】
(第2の実施形態)
図5に、本発明の足被覆体の第2の実施形態に係るソックス200を示す。図5(a)は、前記ソックス200を親指側から見た斜視図であり、図5(b)は、前記ソックス200を足裏側から見た図である。
【0023】
図5に示すように、本実施形態に係るソックス200は、第1のサポートライン部201Aと、第2のサポートライン部201Bとを有する。本実施形態において、第1のサポートライン部201Aは、ソックス200の着用時に拇趾球に接する位置Sから、足の甲部を通って、踵の外側に接する位置Tまでの領域に配置され、第2のサポートライン部201Bは、ソックス200の着用時に小指の付け根部分に接する位置Mから、足の甲部を通って、踵の内側に接する位置Nまでの領域に配置されている。ここで、踵の「内側」とは、親指側を意味する。このサポートライン部の配置は、左右を正しく着用した場合の配置であり、左右を間違えて着用した場合には、第2のサポートライン部201Bが、前記第1のサポートライン部201Aの位置に配置され、第1のサポートライン部201Aとある程度同様の機能を果たすというメリットが期待できる。なお、一般的に、歩行動作を行う際に、着用者の足は踵の外側から拇趾球側へ向かって順に接地するため、この接地方向に沿うように設けられた第1のサポートライン部201Aを設けるだけで、足の動きを補助する効果を充分得ることができる。一方で、第2のサポートライン部201Bの復元力が大きすぎると、第1のサポートライン部201Aの足の動きを補助する効果が充分得られないおそれがあるため、第2のサポートライン部201Bの復元力が、第1のサポートライン部201Aの復元力よりも大きくならないように設定することが好ましい。
【0024】
(第3の実施形態)
図6に、本発明の足被覆体の第3の実施形態に係るソックス300を示す。図6は、前記ソックス300を親指側から見た斜視図である。
【0025】
図6に示すように、本実施形態に係るソックス300は、足指部302が、親指を覆う指袋302Aと、その他の指を覆う指袋302Bとに分離している、いわゆる2本指ソックスである。本実施形態のその他の態様は、前記第1の実施形態と同様である。
【0026】
本実施形態のように2本指ソックスとすることにより、ソックスの中での指の位置が定まるため、サポートライン部101の力をより効果的に足部に及ぼすことができる。また、2本指ソックスとすることにより、左右どちらの足に着用するかがわかりやすくなるため、例えば高齢者などが左右を間違えて着用することを防止することができる。
【0027】
本実施形態では、2本指ソックスを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、3〜5本指ソックスであってもよい。
【0028】
(着用客観評価)
[評価1]
図6に示すタイプの本発明の実施形態3に係るソックス300を作製し、着用評価を行った。本評価では、前記ソックス300をモニターが着用して歩行し、歩行時の足首の動き(つま先の上がり方の大きさ、および、蹴り上げの大きさ)を測定した。本評価において、モニターは、60〜70代の女性11名とした。また、比較例として、サポートライン部を有さない2本指ソックス(従来品のソックス)についても、同様にして、歩行時の足首の動きを測定した。
【0029】
図8に、本評価で用いた指標を説明する図を示す。図8(a)は、モニターのうちの1名について、着地前のつま先の上がり方の大きさを測定した結果の図であり、図8(b)は、同じく蹴り上げの大きさを測定した結果の図である。図8において、点Pは、前額面上の膝関節と外踝Rとの中点(膝関節外側と外踝Rとの中点とも表現できる)を示しており、点Qは、つま先を示している。図8に二点鎖線で示す線は、点Pと外踝Rとを結ぶ仮想線、および、点Qと外踝Rとを結ぶ仮想線を示している。そして、図8において、前記二点鎖線で構成される角度(角度αおよびβ)は、外踝Rに対して点Pおよび点Qがなす角度であり、角度αは、着地直前の状態における角度、角度βは、離地直後における角度を示す。角度αが小さいほどつま先が上がっていることを示し、角度βが大きいほど蹴り上げが大きいことを示すため、角度βから角度αを差し引いた値が大きいほど、足首の稼働範囲(つま先の上がり方と蹴り上げの大きさ)が大きくなっているということができる。
【0030】
本評価では、前記従来品のソックスを着用した場合と、本発明のソックス300を着用した場合とについて、角度βから角度αを差し引いた値を各モニターごとに算出し、算出された値の平均値をそれぞれ求めた。その結果を、図9(a)に示す。図9(a)に示すように、従来品のソックスを着用した場合の平均値が約8°であったのに対して、本発明に係るソックス300の平均値は、約12°であった。
【0031】
また、図9(b)は、10名のモニターについて、靴を着用した状態で、前記と同様にして足首の動きを測定した結果を示すグラフである。図9(b)に示すように、前記従来品のソックスを着用した場合の平均値は、約11°であったのに対して、本発明に係るソックス300の平均値は、約14°であった。
【0032】
なお、本評価において、従来品のソックス着用時の平均値と、ソックス300着用時の平均値とを、対応のあるt検定を用いて比較した。その結果、図9(a)に示す靴の着用がない場合と、図9(b)に示す靴の着用がある場合とのいずれの場合においても、ソックス300を着用した場合の方が、値が有意に大きいことが認められた。本評価において、有意水準(図9において符号δを用いて示す)は、5%未満とした。
【0033】
本評価により、本発明のソックス300を着用することにより、足首の動きが大きくなることがわかった。
【0034】
[評価2]
図6に示すタイプの本発明の実施形態3に係るソックス300を作製し、着用評価を行った。本評価では、前記ソックス300をモニターが着用して歩行し、歩行時の足首の動き(つま先の上がり方の大きさ、および、蹴り上げの大きさ)を測定した。本評価において、モニターは、68歳女性とした。また、比較例として、サポートライン部を有さない2本指ソックス(従来品のソックス)についても、同様にして、歩行時の足首の動きを測定した。
【0035】
図10に、本評価の結果を示す。図10において、角度θおよび角度γは、前記図7で示したものと同様である。まず、図10(a)について、本発明にかかるソックス300と従来品のソックスとを比較すると、本発明に係るソックス着用時の方が、従来品のソックス着用時と比べ、前記角度θが大きく、つま先が上がっていることがわかる。次に、図10(b)について比較すると、本発明に係るソックス着用時の方が、従来品のソックス着用時と比べ、角度γが大きく、踵が高く上がり蹴り上げが大きくなっていることがわかる。これにより、本発明のソックス300は、歩行時のつま先を上げる動き、および、蹴り上げをサポートする効果があることがわかった。
【0036】
(着用主観評価)
図6に示すタイプの本発明の実施形態3に係るソックス300を作製し、着用評価を行った。モニターは、50〜74歳の15名とした。また、比較例として、同じモニター15名に、サポートライン部のない2本指ソックス(従来品のソックス)を着用してもらった。
【0037】
その結果、15名中12名が、本発明に係るソックス300の方がつま先が上がりやすいと回答した。また、15名中10名が、本発明に係るソックス300の方が、蹴り上げやすいと回答した。また、15名中12名が、本発明に係るソックス300の方が足が軽いと回答した。そして、15名中14名が、本発明係るソックス300の方が歩きやすいと回答した。さらに、15名中14名が、本発明に係るソックス300の方が、総合的に快適であると回答した。
【0038】
また、本発明に係るソックス300の着用感について、モニターにコメントを求めたところ、「すり足にならずに、つま先が上がる」、「しっかり蹴れる」、「足を持ち上げてくれるような感じがする」、「軽く歩ける」、「安定して歩ける」、「長時間歩いても疲れなかった」、「階段も楽にのぼれた」、「20分ほどの上り坂も楽に歩けた」という回答が得られた。また、靴を着用して歩行した場合、さらに本発明のサポート効果がわかりやすくなるというコメントがあった。これにより、本発明に係るソックスは、歩行時に足首の動きを補助するため、つま先があがりやすく、かつ、蹴り上げやすくなり、足首を快適に動かすことが可能となることが確認できた。
【0039】
以上、実施の形態の具体例として、ソックスをあげて本発明を説明したが、本発明の足被覆体は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、本発明は、上記の実施形態のようなソックス以外にも、タイツ、ストッキング、その他各種の足被覆体に適用できる。また、本発明は、普段に着用するソックスとしてのみではなく、例えば、足の動きを補助してパフォーマンスを高めるためのスポーツ用のソックスとしても、使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、窮屈感を感じず、かつ、足首を快適に動かすことが可能で歩きやすくなる、足被覆体を提供することができる。したがって、本発明は、歩行を補助するための足被覆体において、有効に利用することができるが、その用途は限定されず、広い分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100、200、300 足被覆体(ソックス)
101、201A、201B サポートライン部
302 足指部
302A、302B 指袋
105 足裏部

S 拇趾球に接する位置
T 踵の外側に接する位置
M 小指の付け根部分に接する位置
N 踵の内側に接する位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11