(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該基材がポリオレフィン樹脂シートを含み、該基材の該プライマー層側の面に凹凸形状を有し、該プライマー層を設けた際の該表面保護層側の面の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6μmであり、該表面保護層が、炭素数13〜25の長鎖アルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されてなるウレタンアクリレート(A)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ヒドロキシ変性(メタ)アクリレート及びポリカプロラクトン含有多官能アルコールとを反応させることによって得られるウレタンアクリレート(B)を含み、かつ該ウレタンアクリレート(A)とウレタンアクリレート(B)との配合質量比が25:75〜75:25である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物である、鏡面化粧シート。
基板、接着剤層、及び化粧シートを順に有し、該化粧シートが基材、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該基材がポリオレフィン樹脂シートを含み、該基材の該プライマー層側の面に凹凸形状を有し、該プライマー層を設けた際の該表面保護層側の面の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6μmであり、該表面保護層が、炭素数13〜25の長鎖アルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されてなるウレタンアクリレート(A)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ヒドロキシ変性(メタ)アクリレート及びポリカプロラクトン含有多官能アルコールとを反応させることによって得られるウレタンアクリレート(B)を含み、かつ該ウレタンアクリレート(A)とウレタンアクリレート(B)との配合質量比が25:75〜75:25である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該接着剤層と該化粧シートの基材表面保護層を設ける面の反対側の面とが対向する鏡面化粧板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧シートは、基材、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該基材がポリオレフィン樹脂シートを含み、該基材の該プライマー層側の面に凹凸形状を有し、該プライマー層を設けた際の該表面保護層側の面の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6であることを特徴とするものである。本発明の化粧シートについて、
図1及び2を用いて説明する。
【0012】
(基材)
基材2は、ポリオレフィン樹脂シートを含む。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン/プロピレン共重合体樹脂、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体樹脂、オレフィン熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。耐候性や、耐擦傷性などの表面特性の観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、あるいはポリプロピレン結晶部を有し、かつプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン共重合体などが好ましく挙げられる。その他、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどを15モル%以上含むプロピレン−α−オレフィン共重合体、例えばエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体なども好ましく挙げられる。
【0013】
基材2は、プライマー層3側の面に凹凸形状5を有する。基材2がプライマー層3側の面に凹凸形状5を有することで、プライマー層3を設けた際の、該プライマー層3の表面保護層4側の面の表面粗さ(Ra値)を0.6〜1.6μmとすることができ、結果として優れた鏡面性を得ることができる。また、この凹凸形状5により、基材2とプライマー層3との優れた密着性も得られる。
【0014】
基材2の凹凸形状5を有する面の表面粗さ(Ra値)は、0.3〜1.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1μmである。基材2の凹凸形状5を有する面の表面粗さ(Ra値)が上記範囲内であると、優れた鏡面性と密着性とが得られる。本発明において、表面粗さ(Ra値)は、算術平均表面粗さであり、市販される表面粗さ測定機により任意の5点を測定し、その平均値を表面粗さ(Ra値)とした。
【0015】
基材2は、少なくとも二層のポリオレフィン樹脂シートを含む、複層構成のシートを用いることが好ましい。例えば、複層構成の基材2が二層構成をとる場合は、
図2に示されるように、基材21と基材22との間に、基材21、接着剤層23、装飾層6、及び基材22の順に有する構成をとることが好ましい。このような構成とすることで、優れた強度と柔軟性とを得ることができるので、優れた加工特性、及び耐久性や、装飾層の保護が期待できる。
この場合、二つ以上の樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよく、例えば、ポリエチレン/ポリエチレン、ポリエチレン/ポリプロピレン、あるいはポリプロピレン/ポリプロピレンの組み合せが好ましく挙げられる。
【0016】
基材2が複層構成をとる場合、凹凸形状5は、プライマー層に近い基材のプライマー層側の面に凹凸形状を有する。例えば、
図2に示される化粧シートにおいては、凹凸形状5は、プライマー層3に近い基材21のプライマー層3側の面に設けられる。本発明においては、プライマー層3を設けた際の、該プライマー層3の表面保護層4側の面の表面粗さ(Ra値)を0.6〜1.6μmとするためには、基材2が有する凹凸形状5の形成が重要であり、該凹凸形状5に起因してプライマー層3を設けた際の該プライマー層の表面保護層4側の面の表面粗さ(Ra値)をより容易に調整する観点から、基材2の凹凸形状5を有する面とプライマー層3とが接して設けられていることが好ましい。
【0017】
基材2は、着色剤により着色されていることが好ましい。意匠性の観点から、化粧シートを設ける基板などの下地の隠蔽を行うことができるからである。基材に用いうる着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが好ましく挙げられる。
基材中の着色剤の使用量は、該基材を押出し成形して得る際の製膜性や、基材の機械的強度を低下させない範囲であれば特に制限はない。
【0018】
基材2が複層構成をとる場合は、各層を構成する基材は、着色されたものでも、無着色のものでもよく、意匠性を向上させる観点から、少なくともいずれか一方が着色されたものであることが好ましい。
【0019】
基材2の厚さは、加工特性、機械的強度、扱いやすさの点から、通常50〜200μmであることが好ましく、80〜200μm程度がより好ましい。基材2が複層構成のシートの場合、各層を構成する基材の厚さの合計が上記範囲内にあればよく、これらの基材の厚さは同じでも異なっていてもよい。基材2が複層構成の場合の各層を構成する基材(二層構成の場合は基材21及び22)単独での厚さは、好ましくは25〜100μmであり、より好ましくは40〜100μmである。
【0020】
基材2の形成に用いられるポリプロピレン樹脂には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。
上記添加剤のうち、優れた加工特性を得る観点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどの無機充填剤を含有することが好ましい。これらの無機充填剤の含有量は、基材2に対して1〜60質量%の範囲が好ましい。
【0021】
接着剤層23は、上記のように基材2が複層構成をとる場合、各層を構成する基材(2層構成の場合は
図2に示される基材21及び22)をラミネートする際に、必要に応じて設けられる層である。接着剤層23に用いられる接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル/ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリスチレン系接着剤、セルロース系接着剤などが好ましく挙げられる。これらの接着剤は、1種単独で、あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0022】
(プライマー層)
プライマー層3は、基材2と表面保護層4との間に設けられ、これらの層の密着性を向上させ、かつ鏡面性を向上させる層であり、該プライマー層3を設けた際の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6μmとなることを要する。表面粗さ(Ra値)が0.6μm未満であると、優れた密着性が得られない。一方、表面粗さ(Ra値)が1.6μmより大きくなると、優れた鏡面性が得られない。プライマー層3を設けた際の表面粗さ(Ra値)は、優れた鏡面性と密着性とを得る観点から、0.6〜1.2μmであることが好ましい。
【0023】
プライマー層3を形成する材料としては、特に制限はないが、例えば2液硬化性樹脂組成物により形成されることが、優れた密着性と鏡面性とが得られる観点から好ましい。2液硬化性樹脂組成物としては、主剤に硬化剤を添加して硬化する樹脂であれば特に制限はなく、主剤がポリオール(多価アルコール)であり、硬化剤がイソシアネート硬化剤である、2液硬化性ウレタン樹脂が好ましい。
【0024】
主剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのポリオールのほか、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基を有するモノマーとの付加重合によって得られるアクリルポリオール;公知のジオール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類とアジピン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸、これらの酸エステルなどから選ばれる少なくとも一種との重縮合反応によって得られるポリエステルポリオール;前記のジオール類とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどとの付加重合によって得られるポリエーテルポリオールなどの官能基として水酸基を有するポリオールが好ましく挙げられる。これらは単独又は複数種を混合して使用できる。
【0025】
イソシアネート硬化剤としては、従来公知の化合物を適宜使用すればよく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート 、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、あるいは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(ないしは脂環式)イソシアネートなどのポリイソシアネートが用いられる。また、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート 3量体(trimer)なども用いられる。
【0026】
プライマー層3の厚さは、通常0.5〜20μm程度であり、1〜10μmが好ましい。プライマー層3の厚さが上記範囲内であると、優れた密着性が得られるとともに、該プライマー層3を設けた際の表面粗さ(Ra値)を0.6〜1.6μmの範囲内に調整しやすいので好ましい。
【0027】
(表面保護層)
表面保護層4は、本発明の化粧シートに耐候性、耐汚染性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性などの表面特性を付与し、かつ優れた鏡面性を付与する層である。表面保護層4を構成する材料としては、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂の硬化物が好ましく挙げられ、優れた鏡面性と表面保護特性とを得る観点から、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されることが好ましい。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
【0028】
電離放射線硬化性樹脂は、慣用されている、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどの重合性モノマーや、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーなどの重合性オリゴマー、ないしはプレポリマーの中から単独で、又は2種以上を組み合わせて、用いることができる。
【0029】
本発明においては、耐候性、耐汚染性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性などの表面特性や鏡面性に加えて、曲げ加工がより厳しい化粧金属板に用いても表面にクラックが入らない優れた加工特性が得られる観点から、電離放射線硬化性樹脂として、炭素数13〜25の長鎖アルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されてなるウレタンアクリレート(A)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとヒドロキシ変性(メタ)アクリレート及びポリカプロラクトン含有多官能アルコールとを反応させることにより得られるウレタンアクリレート(B)を含み、かつ該ウレタンアクリレート(A)とウレタンアクリレート(B)との配合質量比が25:75〜75:25である樹脂を採用することが好ましい。この二種のウレタンアクリレートを所定の配合質量比で配合した電離放射線硬化性樹脂は、一度表面に細かい擦り傷ができても、これを自己修復可能な性質を有しており、曲げ加工がより厳しい化粧金属板に用いて生じる表面のクラックを修復することも可能である。よって、クラックから薬品などの浸入を防止することができるので、優れた耐汚染性、耐水性、耐薬品性も得られる。
【0030】
ウレタンアクリレート(A)は、炭素数13〜25のアルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性してなるウレタンアクリレートであり、電離放射線硬化性を有する電離放射線硬化性樹脂である。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。本発明においては、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0031】
ウレタンアクリレート(A)は、例えば、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート((a)成分)、炭素数13〜25のアルキル基を有するアルコール((b)成分)、及びポリカプロラトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート((c)成分)を反応させることによって好ましく得ることができる。
【0032】
(a)成分は、例えば、ジイソシアネートモノマーを、イソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性などの方法によって変性することにより得られる。ここで用いられるジイソシアネートモノマーとしては、特に制限はなく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが好ましく挙げられる。
(b)成分としては、トリデカノール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが好ましく例示される。
(c)成分は、下記一般式(I)で示される化合物である。
【0034】
式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜25の整数、好ましくは2〜5の整数である。nが2〜5の整数であると、架橋間分子量の増大に伴う硬化不良が抑制され、かつ良好な耐擦傷性及び自己修復機能が発揮される。
【0035】
ウレタンアクリレート(B)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート((d)成分)とヒドロキシ変性(メタ)アクリレート((e)成分)及びポリカプロラクトン含有多官能アルコール((f)成分)とを反応させることにより得られるウレタンアクリレートである。
【0036】
(d)成分は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機化合物であり、有機イソシアネート1分子中に含まれるイソシアネート基の数は3個以上であることが好ましい。
1分子中にイソシアネート基を2個有する有機イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネートなどのジイソシアネートモノマーが好ましく挙げられる。
【0037】
1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ジイソシアネートモノマーをイソシアヌレート変性させた下記一般式(II)で表されるような化合物、ジイソシアネートモノマーをアダクト変性させた下記一般式(III)で表されるような化合物、ジイソシアネートモノマーをビウレット変性させた下記一般式(IV)で表されるような化合物、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、トリアミノノナントリイソシアネートなどのイソシアネートプレポリマーが挙げられる。
【0041】
(e)成分のヒドロキシ変性(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の水素原子を、ヒドロキシル基を有する原子団で置き換えた構造を有するものである。具体的には、下記一般式(V)で表されるようなポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート、下記一般式(VI)で表されるようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコーリセロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられ、中でもポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートは、カプロラクトン単位の繰り返し数が1〜25のいずれであってもよく、カプロラクトン単位の繰り返し数が大きすぎるとウレタン(メタ)アクリレートの硬化物の強度が低下するため、繰り返し数が5以下であることが好ましい。
【0044】
(f)成分のポリカプロラクトン含有多官能アルコールとしては、例えば、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオールのほか、5官能以上のポリカプロラクトンポリオールが好ましく挙げられる。ポリカプロラクトン含有多官能アルコールは、カプロラクトン単位の繰り返し数がいくつであってもよく、カプロラクトン単位の繰り返し数が大きすぎるとウレタン(メタ)アクリレートの硬化物の強度が低下するため、繰り返し数は5以下であることが好ましい。
また、ポリカプロラクトン含有多官能アルコールは、カプロラクトン単位の繰り返し数が異なる2種以上のポリカプロラクトン含有多官能アルコールの混合物であってもよい。
【0045】
(f)成分のポリカプロラクトン含有多官能アルコールは、官能基(−O−[CO(CH
2)
5O]
p−H)(式中、pは整数を示す)の数が多いほど好ましい。これは、官能基(−O−[CO(CH
2)
5O]
p−H)の数が多くなるほどウレタンアクリレートにおける活性エネルギー線硬化性官能基の数が増えるので、その架橋密度が増し、その結果、ウレタンアクリレートの硬化物の耐擦傷性が向上するからである。
【0046】
ウレタンアクリレート(B)は、原料としてポリカプロラクトン含有多官能アルコールを用いるため、活性エネルギー線硬化性官能基の数が増えて架橋密度が増しても、硬化したときにカールが生じたり加工性が低下したりするおそれが少ない。それに対し、原料としてポリカプロラクトン含有多官能アルコールに代えてポリカプロラクトン非含有の長鎖アルキル基多官能アルコールを用いたウレタンアクリレートは、活性エネルギー線硬化性官能基の数が増えて架橋密度が増すと、硬化したときにカールが生じたり、加工特性が低下することがある。すなわち、本実施形態のウレタンアクリレートは、ポリカプロラクトン鎖を有するアルコール成分を原料として用いているため、活性エネルギー線硬化性官能基の数が増えて架橋密度が増しても、硬化したときにカールが生じたり加工性が低下したりするおそれが少ないのである。
【0047】
電離放射線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート(A)及びウレタンアクリレート(B)を用いる場合、該ウレタンアクリレート(A)とウレタンアクリレート(B)との配合質量比は、25:75〜75:25であることが好ましい。この配合質量比の範囲内であれば、架橋硬化された塗膜が適度な柔軟性を有し、本発明の化粧シートを曲げ加工がより厳しい化粧金属板に用いても表面にクラックが入らない優れた加工特性を得ることができる。
【0048】
また、表面保護層4を形成する電離放射線硬化性樹脂が、該樹脂組成物を厚さ140μmのポリプロピレンフィルムに厚さ15μmとなるよう塗布し、硬化して得られた塗膜を25℃、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断する際の伸度を引張り伸度とした場合の引張り伸度が50〜90%であることが好ましい。
引張り伸度が50%以上であれば、本発明の化粧シートを曲げ加工がより厳しい化粧金属板に用いても表面にクラックが入らない優れた加工特性を得ることができ、引張り伸度が90%以下であれば耐候性、耐汚染性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性などの表面特性を優れたものとできる。
【0049】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、フェニルケトン系、ベンゾフェノン系、アントラキノン系などの光重合用開始剤が好ましく挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0050】
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性であることが好ましい。電子線硬化性の場合は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0051】
電離放射線硬化性樹脂組成物には、各種添加成分として、耐摩耗フィラー、マット形成フィラー、耐傷フィラーなどのフィラー(充填剤)、あるいは耐候性向上のために、紫外線吸収剤(UVA)やヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)などの耐候剤を含有させることができる。また、これらの耐候剤は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有する反応性紫外線吸収剤、あるいは反応性光安定剤(HALS)であることが耐候剤のブリードアウトが生じることなく、安定した耐候性が得られる点から好ましい。
【0052】
また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、各種添加成分として、得られる化粧シートにおける表面保護層4の隠蔽性向上、基材の黄変防止や耐光性の向上などを図る目的で、酸化チタン、アルミペースト、カーボンブラックなどの無機系着色顔料を適宜添加することができる。
【0053】
表面保護層4の厚さは、10〜45μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。表面保護層4の厚さが上記範囲内であると、耐候性、耐汚染性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性などの表面特性や鏡面性に加えて、曲げ加工がより厳しい化粧金属板に用いても表面にクラックが入らない優れた加工特性が得られる。
【0054】
(装飾層)
装飾層6は、化粧シートに装飾性を与えるものであり、均一に着色が施された隠蔽層(ベタ印刷層)でもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよいし、隠蔽層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。
【0055】
隠蔽層を設けることにより、基材2や化粧シートを設ける基板などの下地を隠蔽することができ、また、基材2が着色していたり色ムラがある場合に、意図した色彩を与えて表面の色を整えることができる。
また、絵柄層を設けることで、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など、あるいはこれらを複合した寄木、パッチワークなどの模様を化粧シートに付与することができる。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
【0056】
装飾層6に用いるインキ組成物としては、バインダー樹脂に顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂などが好ましく挙げられ、ポリウレタン樹脂がより好ましい。バインダー樹脂としては、これらの中から任意のものを、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、着色剤としては、基材2に用いられる着色剤として例示したものが好ましく挙げられる。
【0057】
装飾層6の厚さは、通常0.5〜20μm程度であり、1〜10μmが好ましい。装飾層6の厚さが上記範囲内にあれば、化粧シートに優れた意匠性を付与することができ、また隠蔽性を付与することができる。
【0058】
(裏面プライマー層)
裏面プライマー層7は、基材2と各種の被着材、すなわち基板9との接着性を向上させる目的で好ましく設けられる層であり、基材2の表面保護層4を設ける側の面とは反対側の面に設けられる。
裏面プライマー層7の形成に用いられる材料としては特に限定されず、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが好ましく挙げられ、なかでもウレタン樹脂が好ましい。なお、裏面プライマー層7に用いられる材料は被着材によって、適宜選択される。
また、裏面プライマー層7の厚さは、1〜5μm程度であることが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。厚さが上記範囲内であると、効率よく、プライマー層としての優れた性能を得ることができる。
【0059】
(製造方法)
本発明の鏡面化粧シートの製造方法は、工程(1)基材のポリオレフィン樹脂シートの一方の面にエンボス加工を施し凹凸形状を形成する工程、工程(2)該基材の凹凸形状を有する面側にプライマー層を、該プライマー層の表面保護層側の面の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6となるように設ける工程、及び工程(3)該プライマー層の上に表面保護層を設ける工程を順に経ることを特徴とするものである。
【0060】
工程(1)は、基材2のポリオレフィン樹脂シートの一方の面にエンボス加工を施し凹凸形状5を形成する工程である。
基材2のポリオレフィン樹脂シートは、ポリオレフィン樹脂に所望により着色剤やその他添加剤が添加されたポリオレフィン樹脂組成物を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法などの方法によりシート化することで得られる。また、必要に応じて、2軸延伸してもよい。
【0061】
例えば、
図1に示されるような化粧シートを得る場合は、基材2の一方の面に、隠蔽層及び/又は絵柄層からなる装飾層6を形成し、次いで、裏面プライマー層7を設ける。
装飾層6の形成方法は特に限定されず、例えば、上記のインキ組成物を用い、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法などの方法により塗布して形成すればよい。また、隠蔽層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法などの各種コーティング法などにより形成すればよい。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属などの部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いてもよい。
また、裏面プライマー層7を設ける場合は、裏面プライマー層7を形成する樹脂組成物を装飾層6の形成方法として例示した形成方法から適宜選択して塗布し、形成すればよい。
【0062】
また、基材2が複層構成をとる場合、例えば
図2に示されるように、基材2が二層構成の場合は、基材22の表面にコロナ放電処理などを施して易接着層を設け、該基材22に隠蔽層及び/又は絵柄層からなる装飾層6を形成し、ついで必要に応じて接着剤層23を設けた後に、基材21を押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどの方法により接着・圧着させて得ることができる。
また、裏面プライマー層7は、基材21を接着・圧着させる前に基材22に形成してもよいし、接着・圧着させた後に形成してもよい。
【0063】
凹凸形状5は、ポリオレフィン樹脂シートの所定の面にエンボス加工を施して、形成する。化粧シートが
図1に示される構成をとる場合は、基材2の装飾層6を設けた面とは反対側の面にエンボス加工して凹凸形状5を形成する。また、化粧シートが
図2に示される構成をとる場合は、基材21の基材22と対向する面とは反対側の面にエンボス加工して凹凸形状5を形成する。
エンボス加工は、基材2に装飾層6や裏面プライマー層7を形成する前に施してもよく、これらの層を形成した後に施してもよい。また、基材2が
図2に示されるような二層構成をとる場合は、基材21を接着・圧着させる前にエンボス加工を施してもよいし、接着・圧着させた後にエンボス加工を施してもよい。ただし、基材2が二層構成をとる場合は、凹凸形状5の状態を保持する観点から、基材21を接着・圧着させた後にエンボス加工を施すことが好ましい。
【0064】
エンボス加工としては、通常、加熱加圧によるエンボス加工法が好ましく用いられる。加熱加圧によるエンボス加工法は基材2の表面を加熱軟化させ、エンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様を賦形して、冷却し、固定化する方法であり、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。
エンボス加工に用いられるエンボス版としては、表面粗さ(Ra値)が、0.3〜2μm程度のものが好ましく用いられ、より好ましくは0.4〜1.5μmのものが好ましく用いられる。
【0065】
工程(2)は、基材2の凹凸形状を有する面側にプライマー層3を、該プライマー層3の表面保護層4側の面の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6となるように設ける工程である。
プライマー層3は、該プライマー層3を形成する樹脂組成物を、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法などの公知の方式で塗布して形成することができる。
【0066】
工程(3)は、上記の工程(2)で形成したプライマー層3の上に表面保護層4を設ける工程である。
表面保護層4は、上記の熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物をプライマー層3の上に塗布し、使用する樹脂組成物に適した硬化方法により硬化させて得られる。
硬化性樹脂組成物として電離放射線硬化性樹脂組成物を用いる場合、表面保護層4は、該電離放射線硬化性樹脂組成物をプライマー層3上に塗布し、該樹脂組成物を硬化して硬化物とすることにより、形成することができる。
【0067】
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが10〜45μm程度になるように、プライマー層3の表面にグラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法などの公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗付方式により、プライマー層3の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
【0068】
次いで、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して形成した未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の表面保護層4が形成される。
電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
【0069】
電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材2として電子線により劣化する素材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材2への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材2の劣化を最小限にとどめることができる。
照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)、さらに好ましくは30〜70kGy(3〜7Mrad)の範囲で選定される。
また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0070】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0071】
(化粧板)
本発明の化粧板は、基板、接着剤層、及び化粧シートを順に有し、該化粧シートが基材、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該基材がポリオレフィン樹脂シートを含み、該基材の該プライマー層側の面に凹凸形状を有し、該プライマー層を設けた際の該表面保護層側の面の表面粗さ(Ra値)が0.6〜1.6であり、該接着剤層と該化粧シートの基材表面保護層を設ける面の反対側の面とが対向する、すなわち、該化粧シートが本発明の化粧シートであることを特徴とするものである。本発明の化粧板について、
図3を用いて説明する。
【0072】
本発明の化粧板10に用いられる基板9としては、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材などを用途に応じて適宜選択することができる。本発明の化粧シートは優れた加工特性を有するため、この特性を有効に活用する観点から、加工条件が厳しい金属板を基板とすることが好ましい。
【0073】
金属板としては、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅などの金属材料が挙げられ、これらは溶融亜鉛めっき処理や電気亜鉛めっき処理などの表面処理が施されていてもよい。基板としての金属板の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱などの形状を任意に採用できる。
また、金属板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、金属板は隠蔽性を付与するために、該金属板に直接着色してコーティング層を設けてもよい。
【0074】
また、プラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧シートとの密着性を向上させるために、所望により、その片面または両面に、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン−紫外線処理法などの酸化法や、サンドブラスト法、溶剤処理法などの凹凸化法といった物理的または化学的表面処理を施すことができる。
【0075】
基板9と化粧シート1とを接着するための接着層8に用いられる接着剤としては、特に限定されず、例えば、ポリアミド系接着剤、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤などの熱可塑性樹脂接着剤、熱硬化性ウレタン系接着剤、エポキシ系樹脂などの硬化性樹脂接着剤などが好ましく挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤も適用し得る。これらのうち、熱可塑性樹脂接着剤が、クッション層としての機能を果たし、基板として金属板を用いた際の厳しい条件での加工時に表面保護層4のクラックを抑制する効果があるため好ましい。
また、接着層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系などの粘着剤を適宜選択して用いることができる。
接着層8の厚さは特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。この範囲とすることで、優れた接着性と、表面保護層4のクラック発生の抑制効果が得られる。
【実施例】
【0076】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0077】
(評価方法)
1.表面粗さの測定
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、表面粗さ測定機(「ハンディサーフE−35A(商品名)」,株式会社東京精密製)を用いて、表面粗さ(Ra値)を測定し、n=5(nは測定ポイント数である。)の平均値を化粧シートの表面粗さ(Ra値)とした。
2.密着性の評価
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、メタルハライドランプ(MWOM)による促進耐候試験(JIS K 5600−7−7:1999に準拠)を200時間、300時間、及び400時間実施した後、化粧シートをクロスカットし、その表面にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式化医者製)を貼付けて急激に剥離する操作を5回行った。このときの、剥離の状態を目視により観察し、下記の基準で評価した。
○ 剥離は確認されなかった。
× 剥離が確認された。
3.鏡面性の評価
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、蛍光灯(直管型)の下で該蛍光灯が化粧シートの表面に写りこむ像を目視により確認し、下記の基準で評価した。
◎ :表面が平滑であり、蛍光灯の像が直線で見えた。
○ :表面が平滑であり、蛍光灯の像が直線に見えるが、外観に微細な凹凸がわずかに確認された。
× :蛍光灯の像の波打ちが著しい、もしくは表面は平滑であるが、外観に凹凸が確認された。
4.異物の目立ちやすさの評価
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、表面保護層側からほこりやちりなどの異物の存在状況について目視により観察し、下記の基準で評価した。
○ :異物は確認されなかった。
△ :異物は若干確認されたが、実用上問題がなかった。
× :異物が確認された。
5.加工特性の評価
実施例及び比較例で得られた化粧シートを厚み0.8mm、40×40mmのアルミ板に貼付した化粧金属板に対して、JIS Z2248に規定された金属材料曲げ試験を試験温度25±5℃にて行った。試験方法は、次のとおりである。
試験用の化粧金属板を外側半径1mmで90°折り曲げ加工を行った。なお、JIS Z2248は、金属板の曲げ試験を規定するものであるが、本実施例では、化粧シートが貼付された金属板について、JIS Z2248に従って試験を行った。
このとき、折り曲げ部分における、割れや白化を目視観察し、下記の基準で評価した。
◎ 割れや白化はまったく確認されなかった。
○ 割れや白化はほとんど確認されなかった。
△ 軽微な割れや白化が確認されたが、実用上問題なかった。
× 著しい割れや白化が確認された。
【0078】
(電子線硬化性樹脂の合成例)
(1)ウレタンアクリレート(A)
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500mL容のフラスコにトルエン60.8質量部、ステアリルアルコール(「NAA−46(商品名)」,日本油脂株式会社製,水酸基価:207)8.4質量部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(「タケネートD−170N(商品名)」,武田薬品工業株式会社製,NCO%:20.9)50質量部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02質量部仕込み、同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA2D;ダイセル化学工業(株)製、水酸基価:163)83.5質量部、ジブチルスズラウレート0.02質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン81.1質量部を加え、固形分50質量%のウレタンアクリレート(A)を得た。
【0079】
(2)ウレタンアクリレート(B)
トルエン150質量部、イソホロンジイソシアネート(「VESTANAT IPDI(商品名)」,ダイセル・ヒュルス株式会社製)50質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(「ライトエステルHOA(商品名)」,共栄社化学株式会社製)28質量部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、40℃にまで昇温して12時間保持した。それから、ポリカプロラクトントリオール(「プラクセル320(商品名)」,ダイセル化学工業株式会社製)154質量部を加えて80℃で30分間保持した後、ジブチル錫ラウレート0.02質量部を加えて80℃で24時間保持し、最後にトルエン82質量部を加えて固形分50質量%のウレタンアクリレート(B)を得た。
【0080】
実施例1
着色ポリプロピレン樹脂シート(「PB023(商品名)」,三菱樹脂株式会社製,厚さ:80μm)の一方の面に木目模様の装飾層(厚さ:5μm)、ポリエステルウレタン樹脂接着剤(「E−295L(商品名)」,大日精化工業株式会社製)を塗布して接着剤層を形成し、透明ポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)をTダイ押し出し法で積層して、基材2を用意した。このときの、該基材2の透明ポリプロピレン樹脂シートの表面粗さ(Ra値)は0.37μmであった。
該基材2の透明ポリプロピレン樹脂シートの面にエンボス版Iを用いてエンボス加工を施して、凹凸形状5を形成した。このときの凹凸形状5の表面粗さ(Ra値)は0.71μmであった。2液硬化性樹脂組成物(主剤:ポリウレタン樹脂を100質量部に対して硬化剤:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を5質量部を添加した樹脂組成物)を塗布量2.5g/m
2で塗布してプライマー層3を形成した。この時点におけるプライマー層3の表面粗さ(Ra値)は、0.70μmであった。
プライマー層3の上に、電子線硬化性樹脂組成物(上記の電離放射線硬化性樹脂の合成例で得られたウレタンアクリレート(A)を25質量部,ウレタンアクリレート(B)を75質量部,反応性UVAを組成物中に1質量%,及び反応性HALS(「LS−3410(商品名)」,チバジャパン(株)製)を組成物中に1質量%を含む樹脂組成物)をグラビア印刷によって塗布し、塗膜を形成した。次いで、165keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させ、表面保護層4(厚さ:15μm)を形成し、鏡面化粧シート1を得た。得られた化粧シートについて上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0081】
実施例2〜4
実施例1において、表面保護層4の厚さを第1表に示される厚さにした以外は、実施例1と同様にして鏡面化粧シートを得た。得られた化粧シートについて上記の評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
比較例1
実施例1において、該基材2の透明ポリプロピレン樹脂シートの面にエンボス加工を施さず、プライマー層3を設け、表面保護層4を設けた後、エンボス版Iを用いてエンボス加工を施した以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて上記の評価を行った。評価結果を第2表に示す。
【0084】
比較例2及び3
実施例1において、エンボス版をエンボス版Iよりも表面粗さの大きいエンボス版II、及びエンボス版Iよりも表面粗さの小さいエンボス版IIIを用いた以外は、実施例1と同様にして、各々比較例2及び3の化粧シートを得た。得られた化粧シートについて上記の評価を行った。評価結果を第2表に示す。
【0085】
比較例4及び5
比較例2及び3において、該基材2の透明ポリプロピレン樹脂シートの面にエンボス加工を施さず、プライマー層3を設け、表面保護層4を設けた後、エンボス加工を施した以外は比較例2及び3と同様にして、各々比較例4及び5の化粧シートを得た。得られた化粧シートについて上記の評価を行った。評価結果を第2表に示す。
【0086】
比較例6
実施例1において、エンボス加工を行わなかった以外は実施例1と同様にして、化粧シートを得た。得られた化粧シートについて上記の評価を行った。評価結果を第2表に示す。
【0087】
【表2】
*1,比較例6では基材にエンボス加工を施していないので、積層して得られた時点での基材の表面粗さ(Ra値)である。