【実施例】
【0132】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
具体的には、前述のシロキサン化合物(A)の前躯体Aを合成し、前躯体Aから誘導されるシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)の合成し、次いでシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)から誘導される、シロキサン化合物(A)に属するシロキサン化合物(A−1)、(A−9)〜(A−28)の合成を行った。
【0134】
これらシロキサン化合物(A)に白金化合物を加えた組成物(1−1)〜(1−10)を調製した。次いで、シロキサン化合物(A)に、シロキサン化合物(B)および白金化合物を加えた組成物(2−1)〜(2−9)を調製した。次いで、シロキサン化合物(A)に、シロキサン化合物(B)とシロキサン化合物(C)と白金化合物を加えた組成物を加えた組成物(3−1)〜(3−15)を調製した。次いで、シロキサン化合物(A)に、シロキサン化合物(C)と白金化合物を加えた組成物を加えた組成物(4−1)〜(4−10)を調製した。これら、組成物を加熱して硬化物を得、その透明性および耐熱性を評価した。
【0135】
尚、本実施例で得られたシロキサン化合物、組成物、およびその硬化物の物性評価は、以下に示す方法でおこなった。
【0136】
<NMR(核磁気共鳴)測定>
共鳴周波数400MHzの核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)を使用し、1H−NMR、19F−NMR、29Si−NMRの測定を行った。
【0137】
<粘度測定>
回転粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク製、品名、DV−II+PRO」と温度制御ユニット(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク製、品名、THERMOSEL)を用い25℃における粘度を測定した。
【0138】
<光透過率>
紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製 型番 UV−3150)を使用し、測定した。
【0139】
[シロキサン化合物(A)の合成]
最初に、本発明の組成物に使用するシロキサン化合物(A)の合成について説明する。具体的には、前述のシロキサン化合物(A)の前躯体Aの合成、前躯体Aから誘導するシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)の合成、次いでシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)から誘導するシロキサン化合物(A−1)、(A−9)〜(A−28)の合成について、順を追って説明する。
【0140】
1 前駆体Aの合成
温度計および還流冷却器を備えた1Lの三口フラスコに、テトラエトキシシラン200g(960mmol)および50質量%の水酸化コリン水溶液233g(960mmol)を採取し、室温(20℃)で12時間攪拌した。攪拌終了後に、2−プロパノールを100g加え、さらに30分間攪拌した。3℃まで冷却し、析出した粗生成物を濾別して2プロパノールによる洗浄を行った後、乾燥し、白色粉末として、以下の式で表される前駆体Aとしてのオクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサン・36水和物、151gを、収率、62質量%で得た。
【0141】
以下に、オクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサンの構造式を示した。
【化42】
【0142】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重メタノール,基準物質:テトラメチルシラン);δ3.23(s,9H),3.48−3.51(m, 2H),4.02−4.05(m,2H),
2 シリル化前躯体の合成
次いで、前述の前躯体Aをシリル化剤を用いてシリル化し、シリル化前躯体を得た。シリル化剤を換えて、異なる種類のシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)を合成した。
【0143】
2.1 前駆体A → シリル化前躯体(S−1)
前述の前躯体Aをシリル化し、シリル化前躯体(S−1)を得た。
【0144】
即ち、温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコにトルエン350g、メタノール30g、シリル化剤としてのテトラメチルジシロキサン26.5g(198mmol)、テトラメチルジビニルジシロキサン23.9g(198mmol)を入れ、3℃まで冷却した。次いで、攪拌しながら69質量%、硝酸54.1gを30分間かけて滴下した。30分間攪拌後に、メタノール100gに前述のオクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサン・36水和物100g(49.3mmol)を溶解したメタノール溶液を入れ、攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌し、シリル化反応を行った。攪拌終了後、水層を除去し、有機層を上水100gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノールで洗浄し、乾燥し、白色粉末として、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−1):テトラ(ヒドロジメチルシロキシ)テトラ(ビニルジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、46.0g(45.0mmol)を得た。尚、収率は91質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。
【化43】
【0145】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.18−0.24(m, 12H),4.70−4.72(m,1H),5.75−5.81(m,1H),5.93−5.96(m,1H),5.97−6.15(m,1H),
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.9,−1.7,−108.7, −109.0
2.2 前駆体A → シリル化前駆体(S−2)
前述の前躯体Aをシリル化し、シリル化前躯体(S−2)を得た。
【0146】
即ち、シリル化剤に、テトラメチルジシロキサン19.9g(149mmol)およびテトラメチルジビニルジシロキサン30.6g(248mmol)を用い、前述のシリル化前躯体(S−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、前躯体Aをシリル化し、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−2):トリ(ヒドロジメチルシロキシ)ヘプタ(ビニルジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、49.4g(43.0mmol)を得た。尚、収率は87質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。
【化44】
【0147】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.18−0.24(m, 36H),4.70−4.72(m,3H),5.75−5.81(m,5H),5.93−5.96(m,5H),5.97−6.15(m,5H),
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.9,−1.7,−108.7, −109.0
2.3 前駆体A → シリル化前駆体(S−3)
前述の前躯体Aをシリル化し、シリル化前駆体(S−3)を得た。
【0148】
即ち、シリル化剤に、テトラフェニルジシロキサン39.8g(297mmol)およびテトラメチルジビニルジシロキサン15.3g(99mmol)を用い、前述のシリル化前駆体(S−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−3):ヘプタ(ヒドロジフェニルシロキシ)トリ(ビニルジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、36.3g(21.0mmol)を得た。尚、収率は43質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=5:3である。
【化45】
【0149】
2.4 前駆体A → シリル化前駆体(S−4)
前述の前駆体Aをシリル化し、シリル化前駆体(S−4)を得た。
【0150】
即ち、シリル化剤に、テトラメチルジシロキサン53.0g(396mmol)を用い、前述のシリル化前駆体(S−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、前駆体Aをシリル化し、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−4):オクタ(ヒドロジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、43.8g(43.0mmol)を得た。尚、収率は87質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=8:0である。
【0151】
以下に、シリル化前駆体(S−4)の構造式を示す。
【化46】
【0152】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.25(s, 6H),4.70−4.72(m,1H),
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ―1.
3,−108.6
2.5 前駆体A → シリル化前駆体(S−5)
温度計、還流冷却器を備えた500mL三口フラスコにトルエン70g、メタノール6g、シリル化剤として、以下の式で表されるジシロキサン化合物38.7g(79.6mmol)を入れ、3℃まで冷却した。
【化47】
【0153】
尚、当該ジシロキサン化合物の合成は、前掲の非特許文献9の記載を参考にした。
【0154】
次いで、攪拌しつつ、濃度69質量%の硝酸11gを30分間かけて滴下した。30分間攪拌後に、メタノール20gにオクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサン・36水和物20g(9.9mmol)を溶解したメタノール溶液を入れ、攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌した。攪拌終了後、再度3℃まで冷却した後、テトラメチルジシロキサン5.32g(40mmol)を加え、攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌した。水層を除去し、有機層を上水100gで三回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノールで洗浄し、乾燥し、白色粉末として、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−5)、10.4g(5.0mmol)を得た。尚、収率は50質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=6:2である。
【化48】
【0155】
3 シロキサン化合物(A)の合成
次いで、前記シリル化前駆体(S−1)〜(S−5)を用い、シロキサン化合物(A−1、(A−9)〜(A−28)を合成した。各々のシロキサン化合物の合成例を以下に示す。
【0156】
3.1 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−1)
温度計および還流冷却器を備えた300mLの三口フラスコに、テトラヒドロフランを50.0g、前記シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を入れ、攪拌しがながら−78℃に冷却した。次いで、内温が−78℃に達した後にトリクロロイソシアヌル酸、3.41g(15.0mmol)を加えた。添加終了後に−78℃で30分間攪拌した後に、攪拌しながら室温まで昇温した。析出した不溶物を濾別し、テトラヒドロフラン溶液を得た。
【0157】
次いで、温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコに4−ブロモベンゼン、6.3g(40.0mmol)、ジエチルエーテル50gを入れ、攪拌しながら−78℃に冷却した。内温が−78℃に達した後に1.6mol/Lブチルリチウムヘキサン溶液28ml(45mmol)を30分間で滴下した。滴下終了後に30分間攪拌した後に、ヘキサメチルシクロトリシロキサン29.6g(133mmol)を加えた。攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌した。
【0158】
次いで、3℃に冷却し、内温が3℃に達した後に、前記テトラヒドロフラン溶液を10分間で滴下した。滴下終了後に攪拌しつつ、室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。攪拌終了後にジイソプロピルエーテル、50g、純水、50gを加え30分間攪拌後、2層分離した。次いで、水層を除去し、有機層を蒸留水、50gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム、10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に、150℃/0.1mmHgで減圧濃縮し、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−1)11.5gを収率は82質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。シロキサン化合物(A−1)の粘度測定を行ったところ、粘度は900mPa・sであった。
【化49】
【0159】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ−0.04−0.47(m, 72H)5.66−6.24(m,12H),7.21―7.45(m,12H),7.47−7.69(m,8H)
3.2 シリル化前駆体(S−2) → シロキサン化合物(A−9)
シリル化前駆体(S−2)、11.5g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾシクロブテン5.49g(30.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に、前述のシロキサン化合物(A−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、無色透明油状の以下の式で表されるシロキサン化合物(A−9)を 12.2gを収率は80質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化50】
【0160】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.05−0.07(m, 18H),0.13−0.15(m,30H),0.28−0.31(m,18H),3.15(s,12H),5.75−5.78(m,5H),5.88−5.93(m,5H),6.04−6.07(m,5H)7.01−7.03(m,3H),7.20―7.22(m,3H),7.36−7.38(m,3H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ―0.7,―1.0,―17.7,―109.0,−110.0
3.3 シリル化前駆体(S−1)→シロキサン化合物(A−10)
前記シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−フルオロブロモベンゼン5.22g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物A−10、8.07gを収率45質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1000mPa・sであった。
【化51】
【0161】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.07−0.35(m, 72H),5.75−6.08(m,12H),7.03(brs,8H),7.50(brs,8H)
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ−112.2
3.4 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−11)
シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−11) 8.55gを収率43質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1100mPa・sであった。
【化52】
【0162】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ−0.06−0.37(m, 72H),5.72−6.14(m,12H),7.57−7.66(m,16H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.93−1.70,―17.1,―109.3,−110.1
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ−63.3
3.5 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−12)
シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−12) 7.06gを収率35質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1100mPa・sであった。
【化53】
【0163】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.07−0.40(m, 72H),5.73−6.12(m,12H),7.46(m,4H),7.60(m,4H),7.76(m,8H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.7,―1.6,―17.2,―109.3,−110.2
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ−63.1
3.6 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−13)
シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3,5−ビス(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン11.72g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−13)16.1gを収率83質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1000mPa・sであった。
【化54】
【0164】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ−0.06−0.05(m, 72H),5.58−6.21(m,12H),7.77−8.02(m,12H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ8.4,―1.6,―16.4,―109.2,−110.0
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);−63.3
3.7 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−14)
前記シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3−トリフルオロメチルブロモベンゼン9.00g(40.0mmol)を用い、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを9.8g(44mmol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−14)18.7gを収率75質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3100mPa・sであった。
【化55】
【0165】
3.8 シリル化前駆体(S−3) → シロキサン化合物(A−15)
シリル化前駆体(S−3)、17.3g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の量を2.79g(18.3mmol)に変更し、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモビフェニル13.99g(60.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−15) 25.2gを収率70質量%で得た。尚、であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=5:3である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3800mPa・sであった。
【化56】
【0166】
シロキサン化合物(A−16)は以下のように合成する。具体的には市販のトリメチルシラノールとn−ブチルリチウム等の有機金属試薬などを作用させ、シロキシリチウム化合物を調整し、クロロ化前駆体を作用させる方法を用いた。
【0167】
3.9 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−16)
温度計および還流冷却器を備えた300mLの三口フラスコに、テトラヒドロフランを50.0g、前記シリル化前駆体(S−1)11.2g(10.0mmol)を入れ、攪拌しがながら−78℃に冷却した。次いで、内温が−78℃に達した後にトリクロロイソシアヌル酸、3.41g(15.0mmol)を加えた。添加終了後に−78℃で30分間攪拌した後に、攪拌しながら室温まで昇温した。析出した不溶物を濾別し、テトラヒドロフラン溶液を得た。
【0168】
次いで、温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコにトリメチルシラノールg3.6g(40.0mmol)、ジエチルエーテル50gを入れ、攪拌しながら−78℃に冷却した。内温が−78℃に達した後に1.6mol/Lブチルリチウムヘキサン溶液25ml(40mmol)を30分間で滴下した。
【0169】
次いで、前記テトラヒドロフラン溶液を10分間で滴下した。滴下終了後に攪拌しつつ、室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。攪拌終了後にジイソプロピルエーテル、50g、純水、50gを加え30分間攪拌後、2層分離した。次いで、水層を除去し、有機層を蒸留水、50gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム、10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に、150℃/0.1mmHgで減圧濃縮し、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−16)6.90gを収率は47%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。シロキサン化合物(A−16)の粘度測定を行ったところ、粘度は900mPa・sであった。
【化57】
【0170】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.09(brs,60H),0.20(brs,24H),5.76−6.16(m,12H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ15.5,7.7,―11.2,―101.9,−103.0
3.10 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−17)
トリメチルシラノールの代わりにt−ブチルジメチルシラノール5.29g(40.0mmol)を用いた以外は、(A−16)の合成例と同様に、前述のシロキサン化合物(A−17)を得る反応と同様の手順で操作を行い、無色透明油状の以下の式で表されるシロキサン化合物(A−17)を 7.66gを収率は44%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は900mPa・sであった。
【化58】
【0171】
<NMR測定結果>
1H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.04−0.21(m,72H),0.86(s,36H),5.75−6.16(m,12H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ11.0,0.3,―19.2,―109.2,−110.3
3.11シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−18)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の量を2.79g(18.3mmol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−18)、11.3gを収率82質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=5:3である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化59】
【0172】
3.12 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−19)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾシクロブテン3.74g(44.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−19)、10.5gを収率は70質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1200mPa・sであった。
【化60】
【0173】
3.13 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−20)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−フルオロブロモベンゼン5.22g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−20)、13.5gを収率80質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化61】
【0174】
3.14 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−21)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−21)、16.1gを収率85質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化62】
【0175】
3.15 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−22)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−22)、15.9gを収率84質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化63】
【0176】
3.16 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−23)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3,5−ビス(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン12.9g(44.0mmol)を用い、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−23)、13.2gを収率72質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は900mPa・sであった。
【化64】
【0177】
3.17 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−24)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の使用量を2.50g(11.0mmol)に変更、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を9.8g(44mmol)に変更、4−ブロモベンゼンの代わりに3ートリフルオロメチルブロモベンゼン7.42g(33.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−24)、14.9gを収率74質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は2300mPa・sであった。
【化65】
【0178】
3.18 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−25)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の使用量を1.67g(7.3mmol)に変更、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を4.9g(22mmol)に変更、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモビフェニル5.13g(22.0mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−25)、22.1gを収率70質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3900mPa・sであった。
【化66】
【0179】
3.19 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−26)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用いたこと以外は、A−16の合成例と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−26)、11.0gを収率80質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1200mPa・sであった。
【化67】
【0180】
3.20 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−27)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、トリメチルシラノールの代わりにt−ブチルジメチルシラノール5.29g(40.0mmol)を用いたこと以外は、A−16の合成例と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−27)、12.6gを収率82質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1200mPa・sであった。
【化68】
【0181】
3.21 シリル化前駆体(S−5)→シロキサン化合物(A−28)
シリル化前駆体(S−1)の代わりにシリル化前駆体(S−5)、20.8g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の使用量を1.67g(7.3mmol)に変更、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を4.9g(22mmol)に変更、4−ブロモベンゼンの使用量を4−ブロモベンゼン、3.2g(20.0mmol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−28)、15.8gを収率71質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3500mPa・sであった。
【化69】
【0182】
[硬化物の作製および透明性・耐熱性評価]
次いで、合成したシロキサン化合物(A−1)、(A−9)〜(A−28)に白金化合物1、2を加えた組成物、さらにシロキサン化合物(B−1)〜(B−5)またはシロキサン化合物(C−1)〜(C−4)を加えた組成物を調製し、加熱硬化させて硬化物を得た。
【0183】
用いた白金化合物1、2、シロキサン化合物(B−1)〜(B−5)またはシロキサン化合物(C−1)〜(C−4)について、表2に示す。
【表2】
【0184】
次いで、組成物の配合について、表3および表4の実施例1〜36に示す。
【表3】
【表4】
【0185】
表3および表4に示すように、組成物(1−1)〜(1−10)はシロキサン化合物(A)および白金化合物からなる組成物であり、組成物(2−1)〜(2−9)はシロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(B)および白金化合物からなる組成物であり、組成物(3−1)〜(3−15)は、シロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(B)、シロキサン化合物(C)および白金化合物からなる組成物であり、組成物(4−1)〜(4−10)は、シロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(C)および白金化合物からなる組成物である。尚、配合比は( )内に質量部またはppmで示した。
【0186】
[実施例1〜22]
表3の実施例1〜43に示した配合の組成物を、信越化学工業株式会社より市販される品名SH9555のシリコーンからなる型に室温(20℃)流し込み、組成物1−1および2−2については、150℃の加熱炉内で1時間加熱後さらに250℃で1時間加熱することで硬化物を、他の組成物については、150℃の加熱炉内で1時間加熱することで、実施例1〜35の硬化物を得た。組成物はいずれも、室温で流動性があり、肩に流し込むことが容易であった。
【0187】
得られた実施例1〜43の硬化物は、いずれも発泡およびクラックが観察されず、ゲル特有の粘着性(タック性)もなく、透明性があり概観良好で扱いやすいものであった。
【0188】
次いで、表3に示した組成物1−1〜1−9、2−1〜2−15、および3−1〜3−10を、ガラス基板上に塗布し、組成物1−1および2−2については、150℃の加熱炉内で1時間加熱後さらに250℃で1時間加熱することで硬化物を、他の組成物については、150℃の加熱炉内で1時間加熱することで、実施例1〜43の硬化物膜を得た。
【0189】
実施例1〜43の硬化物膜について、成膜直後、および140℃で1000時間連続化熱後において、紫外可視分光装置を用いた透明性評価を行った。波長450nmの入射光に対する光透過率を測定したところ、膜厚2.5μm換算で、成膜直後、140℃で1000時間経過後ともに、透過率90%以上であり、連続加熱による透明性の劣化は認められなかった。また、発泡およびクラックに発生も認められなかった。
【0190】
[比較例1]
LED、フォトダイオード、光導波路接続部および各種太陽電池の封止材として、信越化学工業株式会社が製造販売する、無溶剤タイプ且つA液とB液からなる2液タイプの熱硬化型有機シリコーンレジンである、品番SCR−1011(A/B)をガラス基板上に塗布した後、150℃の加熱炉内で1時間加熱後させることで硬化物をガラス基板上に得た。しかしながら、当該硬化物膜は、塗布直後は前記光透過率が90%以上で透明であったが、140℃で1000時間、連続加熱したところ、黄色く着色し透明性が失われた。
【0191】
このように、本発明の組成物が硬化してなる硬化物膜は、成膜直後および140℃で1000時間加熱後も透明性を維持し、発泡およびクラックともに発生もなく、透明性および耐熱ともに優れることがわかった。尚、白金化合物1、2を組成物から除いた場合、組成物は加熱したとしても粘性物のままであり、タック性があり、硬化物が得られなかった。