特許第6011237号(P6011237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011237
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】誘電体共振部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 7/04 20060101AFI20161006BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20161006BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01P7/04
   H01P1/205 B
   H01P11/00 300
   H01P11/00 200
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-230669(P2012-230669)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-82699(P2014-82699A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130029
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 信洋
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝史
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−066780(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052328(WO,A1)
【文献】 実開昭60−145706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側に位置する第1の面及び第2の面と、前記第1の面の外周縁と前記第2の面の外周縁との間に位置する複数の側面と、を有する誘電体ブロック;該誘電体ブロックに前記第1の面から前記側面に沿って形成された孔;該孔の内面に形成された内導体;及び、前記第2の面及び前記側面に形成された外導体、を含んでなる誘電体共振部品であって、
前記誘電体ブロックは、その内部において、前記内導体及び前記外導体から隔絶されて形成された空洞部分を有することを特徴とする誘電体共振部品。
【請求項2】
前記空洞部分は、前記孔を囲むように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の誘電体共振部品。
【請求項3】
前記空洞部分と前記第1の面、前記第2の面、前記側面及び前記孔の内面との間の距離が0.5mm乃至5mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の誘電体共振部品。
【請求項4】
前記誘電体共振部品は、更に、前記孔に対応して形成される共振器と結合する入出力電極を含んでなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項5】
前記誘電体共振部品は、複数の前記孔を含んでなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項6】
前記誘電体ブロックは、第1の接合面を有する第1部分と第2の接合面を有する第2部分とをこれら第1及び第2の接合面同士の間に介在する接合剤により接合してなり、前記第1の接合面及び前記第2の接合面のそれぞれは、前記第1の面と前記第2の面との間において前記側面を横切るように位置していることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項7】
前記接合剤は、無機系接合剤であることを特徴とする、請求項6に記載の誘電体共振部品。
【請求項8】
前記接合剤は、前記第1部分及び前記第2部分と同じ組成成分を含有する接合剤であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の誘電体共振部品。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の誘電体共振部品を製造する方法であって、
前記空洞部分の形成された前記誘電体ブロックを前記第1の面と前記第2の面との間において前記側面を横切る分割面により分割したものに相当する第1部分及び第2部分を用意する工程と、
これらの第1部分及び第2部分を、これらの前記分割面に対応する第1及び第2の接合面同士の間に介在する接合剤により接合する工程と、
前記誘電体ブロックに前記孔を形成する工程と、
前記孔の内面に前記空洞部分から隔絶された前記内導体を形成する工程と、
前記第2の面および前記側面に前記空洞部分から隔絶された前記外導体を形成する工程と、
を有することを特徴とする、誘電体共振部品の製造方法。
【請求項10】
前記第1部分及び第2部分を用意する工程は、誘電体材料を成形することで、前記空洞部分の形成に寄与する第1の凹部を有する前記第1部分、及び前記空洞部分の形成に寄与する第2の凹部を有する前記第2部分を得る工程を含むことを特徴とする、請求項9に記載の誘電体共振部品の製造方法。
【請求項11】
前記誘電体ブロックに前記孔を形成する工程は、前記第1部分及び第2部分を用意する工程において誘電体材料を成形する際に、前記第1部分に前記孔の形成に寄与する第1の孔部を形成し、前記第2部分に前記孔の形成に寄与する第2の孔部を形成することで、行われることを特徴とする、請求項10に記載の誘電体共振部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体ブロックに1つまたは複数の共振器を作り込んでなる、誘電体共振器、誘電体フィルタ及び誘電体送受共用器等の誘電体共振部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの移動体通信機器に用いられる誘電体フィルタや誘電体送受共用器としては、誘電体ブロックに、所要の結合が得られるように複数の共振器(誘電体共振器)を作り込んでなる、一体型の誘電体共振部品がしばしば用いられる。誘電体共振器は、誘電体ブロックに貫通孔を形成し、該貫通孔の内面に内導体を付することで形成することができる。
【0003】
近年、移動体通信機器、特に基地局用途のものにおいて、高性能化が要請されており、これに伴い該移動体通信機器に用いられる誘電体共振部品にも高性能化が要請されている。そのため、誘電体ブロックの幅(共振器配列方向の寸法)W及び高さ(共振器配列方向と共振器貫通孔の方向との双方と直交する方向の寸法)Hで決まる面積(共振部品面積)を大きくし誘電体共振器の無負荷Q値を向上させる手法が考えられる。しかしながら、誘電体ブロックの長さ(共振器貫通孔の方向の寸法)Lに対して高さHが極端に大きくなると誘電体共振部品の重心が高くなり形状的に安定せず、リフローなどによる半田実装が不安定になり歩留まりが低下するという問題があった。また、移動体通信機器には低背化の要請もあるが、上記高性能化のために誘電体ブロックの高さHを大きくすることは低背化の要請に反するものとなる。
【0004】
一方、特許文献1には、誘電体フィルタにおいて、誘電体ブロックに共振器孔と平行な調整用空孔を設けることで共振周波数の調整を行うことが記載されている。また、特許文献2には、誘電体フィルタにおいて、誘電体ブロックに凹部を設け実効的な比誘電率を下げ無負荷Q値を改善する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−274812号公報
【特許文献2】特開2011−66780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、誘電体ブロックを整一な直方体形状に維持すべく共振器長を合わせるためだけの目的で周波数調整用空孔を設けているのであって、無負荷Q値向上に関しては考慮されておらず示唆もされていない。従って、周波数調整用空孔は、誘電体ブロックを貫通しており、特に短絡面部(たとえば図3の下面部)において孔端部は導体でシールドされていない。そのため、短絡面部において電磁界エネルギーの漏れが生じ無負荷Q値は低下してしまう。そもそも、特許文献1では、短絡面部の電磁界エネルギー(特に磁気エネルギー)の漏洩による周波数低下の特性を利用しており、無負荷Q値の向上を目的とするものではない。
【0007】
一方、特許文献2では、誘電体ブロックに凹部を設け、凹部を塞ぐように、内導体接続導体及び外導体接続導体を介して内導体及び外導体の双方と電気的に接続されたシールド部材が接合されている。この場合、共振部品を大きくせず低背化でき、無負荷Q値を向上させることができる。しかし、シールド部材は典型的には金属からなるが、その場合、シールド部材と誘電体ブロックとで線膨張係数が異なるため、温度変化が激しい環境下では接合部の信頼性が低下することがある。
【0008】
本発明の目的は、以上の如き技術的課題を解決して、共振部品面積をさほど大きくしなくても低背化を実現でき、無負荷Q値が高く、しかも温度変化が激しい環境下でも信頼性が低下しにくい誘電体共振部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
互いに反対側に位置する第1の面及び第2の面と、前記第1の面の外周縁と前記第2の面の外周縁との間に位置する複数の側面と、を有する誘電体ブロック;該誘電体ブロックに前記第1の面から前記側面に沿って形成された孔;該孔の内面に形成された内導体;及び、前記第2の面及び前記側面に形成された外導体、を含んでなる誘電体共振部品であって、
前記誘電体ブロックは、その内部において、前記内導体及び前記外導体から隔絶されて形成された空洞部分を有することを特徴とする誘電体共振部品、
が提供される。
【0010】
本発明の一態様においては、前記空洞部分は、前記孔を囲むように形成されている。本発明の一態様においては、前記空洞部分と前記第1の面、前記第2の面、前記側面及び前記孔の内面との間の距離が0.5mm乃至5mmである。
【0011】
本発明の一態様においては、前記誘電体共振部品は、更に、前記孔に対応して形成される共振器と結合する入出力電極を含んでなる。本発明の一態様においては、前記誘電体共振部品は、複数の前記孔を含んでなる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記誘電体ブロックは、第1の接合面を有する第1部分と第2の接合面を有する第2部分とをこれら第1及び第2の接合面同士の間に介在する接合剤により接合してなり、前記第1の接合面及び前記第2の接合面のそれぞれは、前記第1の面と前記第2の面との間において前記側面を横切るように位置している。
【0013】
本発明の一態様においては、前記接合剤は、無機系接合剤である。本発明の一態様においては、前記接合剤は、前記第1部分及び前記第2部分と同じ組成成分を含有する接合剤である。
【0014】
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
上記の誘電体共振部品を製造する方法であって、
前記空洞部分の形成された前記誘電体ブロックを前記第1の面と前記第2の面との間において前記側面を横切る分割面により分割したものに相当する第1部分及び第2部分を用意する工程と、
これらの第1部分及び第2部分を、これらの前記分割面に対応する第1及び第2の接合面同士の間に介在する接合剤により接合する工程と、
前記誘電体ブロックに前記孔を形成する工程と、
前記孔の内面に前記空洞部分から隔絶された前記内導体を形成する工程と、
前記第2の面および前記側面に前記空洞部分から隔絶された前記外導体を形成する工程と、
を有することを特徴とする、誘電体共振部品の製造方法、
が提供される。
【0015】
本発明の一態様においては、前記第1部分及び第2部分を用意する工程は、誘電体材料を成形することで、前記空洞部分の形成に寄与する第1の凹部を有する前記第1部分、及び前記空洞部分の形成に寄与する第2の凹部を有する前記第2部分を得る工程を含む。本発明の一態様においては、前記誘電体ブロックに前記孔を形成する工程は、前記第1部分及び第2部分を用意する工程において誘電体材料を成形する際に、前記第1部分に前記孔の形成に寄与する第1の孔部を形成し、前記第2部分に前記孔の形成に寄与する第2の孔部を形成することで、行われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電体共振部品を構成する誘電体ブロックが、その内部において、内導体及び外導体から隔絶されて形成された空洞部分を有することにより、共振部品面積をさほど大きくしなくても低背化を実現でき、無負荷Q値が高く、しかも温度変化が激しい環境下でも信頼性が低下しにくい誘電体共振部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による誘電体共振部品の第1の実施形態を示す模式的斜視図である。
図2図1の誘電体共振部品の誘電体ブロックの第1の面の側から見た模式的分解斜視図である。
図3図1の誘電体共振部品の誘電体ブロックの第2の面の側から見た模式的分解斜視図である。
図4図1の誘電体共振部品の模式的断面図である。
図5】本発明による誘電体共振部品の第2の実施形態を示す模式的斜視図である。
図6図5の誘電体共振部品の誘電体ブロックの第1の面の側から見た模式的分解斜視図である。
図7図5の誘電体共振部品の誘電体ブロックの第2の面の側から見た模式的分解斜視図である。
図8図5の誘電体共振部品の模式的断面図である。
図9】本発明実施例の誘電体フィルタの通過及び反射特性を示す図である。
図10】本発明実施例及び従来例の誘電体フィルタの帯域近傍の通過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明による誘電体共振部品の第1の実施形態を示す模式的斜視図である。図2及び図3は、それぞれ図1の誘電体共振部品の模式的分解斜視図である。図4は、図1の誘電体共振部品の模式的断面図である。本実施形態では、誘電体共振部品は1つの共振器を有する誘電体共振器である。
【0020】
図1に示されるように、誘電体ブロック1は、長さL、幅W及び高さHの略直方体の基本形状を持つ。長さL、幅W及び高さHについては、Lは3〜30mm、Wは3〜30mm、Hは3〜30mmがそれぞれ好ましい。具体例としては、長さLはたとえば約20.3mmであり、幅Wはたとえば約28mmであり、高さHはたとえば約22mmである。半田による誘電体共振部品の実装時の安定性の観点から、L>H/2、L>W/2が好適であり、後述する空洞部7の形成の便宜上、L<3xH、L<3xWが好適である。
【0021】
誘電体ブロック1は、互いに反対側に位置する第1の面11及び第2の面12、並びにこれら第1及び第2の面11,12の間に位置する4つの側面13,14,15,16を有する。側面13,14,15,16は、第1の面11の外周縁と第2の面12の外周縁との間に位置する。
【0022】
誘電体ブロック1には、第1の面11から第2の面12にかけて側面13,14,15,16に沿って孔(貫通孔)17が形成されている。貫通孔17の内面には内導体2が形成されている。また、第1の面11を除く誘電体ブロック1の外面である側面13,14,15,16及び第2の面12には、外導体3が形成されている。かくして、第1の面11は開放端面とされ、第2の面12は短絡端面とされている。貫通孔17に対応して共振器が形成される。第1の面11には、外導体3から絶縁され且つ共振器と容量Cをもって結合する入出力電極(端子電極)4が形成されている。内導体2、外導体3及び入出力電極4は、例えば銀膜からなる。
【0023】
誘電体ブロック1は、その内部において、内導体2、外導体3及び入出力電極4から隔絶されて形成された空洞部分7を有する。即ち、空洞部分7は、誘電体ブロック1により包囲されており、誘電体ブロック1の外面及び貫通孔17の内面には達していない。図2乃至図4に示されるように、空洞部分7は、貫通孔17を囲むように、該貫通孔17の周面の外方において全周囲にわたって、形成されている。かくして、空洞部分7は、貫通孔17と4つの側面13,14,15,16とを分離するように形成されている。
【0024】
空洞部分7は、その表面(即ち、誘電体ブロック1の内面により形成される面)が第1の面11、第2の面12、側面13,14,15,16及び貫通孔17の内面から適宜の距離を隔てるように形成されている。この適宜の距離、即ち第1の面11、第2の面12、側面13,14,15,16及び貫通孔17の内面のそれぞれと空洞部分7の表面との間の誘電体ブロック1の部分の適宜の厚みDは、0.5〜5mmが好ましく、例えば1.5mmであるが、これに限定されるものではない。また、厚みDは部分的に異なっていてもよい。誘電体ブロック1における第1の面11、第2の面12、側面13,14,15,16及び貫通孔17の内面と空洞部分7の表面との間の距離即ち厚みDは、小さいほど後述の無負荷Q値向上の観点からは有利であるが、構造上の強度を確保するためには0.5mm以上が好ましい。
【0025】
本実施形態においては、誘電体ブロック1は、図2乃至図4に示されるように、第1の接合面10Aを有する第1部分1Aと第2の接合面10Bを有する第2部分1Bとをこれら第1及び第2の接合面10A,10B同士の間に介在する接合剤1Cにより接合してなる。
【0026】
ここで、第1の接合面10A及び第2の接合面10Bのそれぞれは、第1の面11と第2の面12との間において側面13,14,15,16を横切るように位置している。本実施形態では、第1の接合面10A及び第2の接合面10Bは、いずれも第1の面11及び第2の面12と平行であり、L方向に関して第1の面11及び第2の面12からほぼ等距離の位置にある。
【0027】
即ち、誘電体ブロック1は、L方向のほぼ中央において第1部分1Aと第2部分1Bとに分割されているものとみなすことができ、この分割の面を分割面と称する。この分割面は、第1の接合面10A、第2の接合面10B及びこれらの間に介在する接合剤1Cの層に対応する仮想的な面である。
【0028】
第1部分1A及び第2部分1Bには、それぞれ、接合剤1Cでの接合により上記空洞部分7を形成するための第1の凹部7A及び第2の凹部7Bが設けられている。接合剤1Cの層の端面は、内導体2及び外導体3により被覆されているので、外部へ露出してはいない。
【0029】
分割面の位置は、上記のものに限定されない。また、凹部は第1部分1A及び第2部分1Bのうちの少なくとも一方にあればよく、他方にはなくともよい(この場合、他方は平板状のものとなる)。
【0030】
誘電体ブロック1の主体部である第1部分1A及び第2部分1Bとしては、無機系誘電体たとえばMgSiOを主成分とするフォルステライト系セラミックであって比誘電率εが10程度の誘電体セラミックスからなるものを使用することができる。
【0031】
接合剤1Cは、無機系接合剤たとえばセラミック接着剤であり、好ましくは第1部分1A及び第2部分1Bと同じ組成成分(同種の誘電体材料)を含有し、これにガラス成分等の接合機能を有する材料を混合した接合剤である。即ち、接合剤1Cは、絶縁性を有し、例えば銀膜からなる内導体2、外導体3及び入出力電極4の形成時に機械的強度を損なわないものが好適であり、望ましくは、誘電体ブロックの第1部分1A及び第2部分1Bと同種の誘電特性を持つもの、たとえば同種の誘電体材料にガラス成分等の接合機能を有する材料を混ぜたものが良い。
【0032】
例えば、接合剤1Cは、主成分として第1部分1A及び第2部分1Bと同様な材料損失が優れる誘電体セラミックスを含み、副成分としてSiO,Al,B等のガラス成分を含む。ガラス成分としては、RO(R:アルカリ土類金属),ZnOなどを含んでも構わないが、FeやBiは、誘電体ブロック主体部と反応すると主体部の誘電特性に影響を与えることがあるため、含まないのが好ましい。
【0033】
接合剤1Cの層厚は、大きすぎると無負荷Q値の低下或いは強度低下を招く恐れがあるので、2mm以下が好適である。接合剤1Cの接合強度は、実装時の機械的衝撃に耐えるように、シェア強度≧5000gfが好適である。
【0034】
但し、接合剤1Cは、これらに限定されるものではない。
【0035】
以上のようにして、内導体2及び外導体3から隔絶されて形成され、誘電体ブロック1の内面により包囲された空洞部分を有する誘電体共振部品が形成される。
【0036】
以上のような誘電体共振部品は、以下の製造方法により製造することができる:
(1)第1部分1A及び第2部分1Bを用意する工程
空洞部分7の形成された誘電体ブロック1を第1の面11と第2の面12との間において側面13,14,15,16を横切る分割面により分割したものに相当する第1部分1A及び第2部分1Bを用意する;
ここでは、好ましくは、誘電体材料を成形することで、空洞部分7形成に寄与する第1の凹部7Aを有する第1部分1A、及び空洞部分7の形成に寄与する第2の凹部7Bを有する第2部分1Bを得る。誘電体材料の成形は、例えば、次のような方法で第1又は第2の凹部を形成しながら、行うことができる;
a.射出成形法:
スラリー化した誘電体材料を射出成形法により一体成形し、脱脂、焼成する;これにより、凹部を備えた第1部分1A及び第2部分1Bが製造される;この方法の利点としては、深い凹部の形成が容易であることが挙げられる;
b.粉末成形法:
粉末材料を用い、凸部を備えた金型を用いて圧縮成形し、その後、脱脂、焼成を行う;この方法の利点としては、比較的安価な金型で成形できることが挙げられる;
c.グリーン加工法:
粉末成形法と同様にして粉末材料を圧縮成形し、但し凹部はエンドミル等で研削加工する;その後、脱脂、焼成を行う;この方法の利点としては、比較的安価な金型で成形でき、深い凹部も形成可能であることが挙げられる;
(2)接合工程
接合剤1Cとして、誘電体ブロックの第1部分1A及び第2部分1Bと同種の誘電特性を持つもの、たとえば同種の誘電体材料にガラス成分等の接合機能を有する材料を混ぜたものを用い、第1部分1A及び第2部分1Bの分割面に対応する第1及び第2の接合面10A,10Bに接合剤1Cを塗布し、これら接合面同士の間に接合剤1Cを介在させ、ガラスの融点以上の温度で融着させ、第1部分1Aと第2部分1Bとを接合することで、内部に空洞部分7を有する誘電体ブロック1を形成する。接合剤1Cの熱処理温度は、誘電体ブロック主体部の誘電特性が影響を受けないようにするため、1200℃以下が好ましい。また、この熱処理により主体部と接合剤とが反応する場合には、この反応により形成される反応層が誘電体共振器部品の電気特性に影響を与えないようにするために、反応層厚が200nm以下となるように熱処理することが好ましい。尚、第1及び第2の接合面10A,10Bの表面粗さは、強固な接合を保持するためにRa<10μmであることが好ましい;
(3)貫通孔形成工程
誘電体ブロック1に貫通孔を形成する;尚、この貫通孔は、第1部分1A及び第2部分1Bを用意する工程において、誘電体材料の成形を行う際に、同時成形により、第1部分1Aに貫通孔17の形成に寄与する第1の孔部17Aを形成し、第2部分1Bに貫通孔17の形成に寄与する第2の孔部17Bを形成することで、行うのが好ましい;
(4)内導体形成工程
貫通孔17の内面に空洞部分7から隔絶された内導体2を形成する;内導体2は、第1部分1Aと第2部分1Bとを接合剤1Cで融着させた後に形成されるので、接合剤1Cの存在が内導体2における電気的不連続をもたらすことはない;
(5)外導体形成工程
第2の面12及び側面13,14,15,16に空洞部分7から隔絶された外導体3を形成する;外導体3は、第1部分1Aと第2部分1Bとを接合剤1Cで融着させた後に形成されるので、接合剤1Cの存在が外導体3における電気的不連続をもたらすことはない。
【0037】
同軸型誘電体共振器の無負荷Qは、以下の式(1)
1/Q=1/Q+1/Q+1/Q ・・・ (1)
によって表される。ここで、Qは無負荷Q、Qは誘電体損に基づくQ、Qは導体損に基づくQ、Qは放射に基づくQである。
【0038】
また、Qは、以下の式(2)
=(2/δ)/[2/L+(1/a+1/b)/(ln{b/a})] ・・・ (2)
によって近似的に表される。ここで、δは表皮深さ、aは貫通孔の半径、bは約W/2及びH/2である。
【0039】
また、Lは、以下の式(3)
L=C/4f(ε1/2 ・・・ (3)
で表される。ここで、Cは光速、fは共振周波数、εは比誘電率である。
【0040】
本実施形態においては、空洞部分7内には空気が充填されているため、共振器誘電体の実効的な比誘電率は10より小さくなっている。そのため、式(3)においてLが大きくなり、式(2)のQが大きくなり、式(1)における無負荷Q(Q)が大きくなる。
【0041】
かくして、W及びH(式(2)におけるbに対応)を大きくしなくても、無負荷Qの高い、高性能な共振器を得ることができる。同様の観点から、空洞部分7の占める容積は、誘電体ブロック1の内部容積(空洞部分7の容積を含み貫通孔内容積を含まない)に対して0.5倍以上が好ましい。
【0042】
本実施形態において、入出力電極4は第1の面11の近傍の誘電体(誘電体ブロック1の第1部分1Aの一部分)を介して内導体2と静電容量Cによって結合しており、入出力電極4を外部回路に接続することで誘電体共振器として機能する。
【0043】
本実施形態に属する一実施例の共振器をルーズカップリングさせて近似的な無負荷Q値を測定した。即ち、先ずグリーン加工法により第1部分1A及び第2部分1Bを製造し、その際に同時成形により第1部分1Aに第1の孔部17Aを形成し且つ第2部分1Bに第2の孔部17Bを形成し、次いで第1部分1A及び第2部分1Bの第1及び第2の接合面10A,10Bの間に接合剤1Cを介在させ、次いで加熱融着により第1部分1Aと第2部分1Bとを接合して、誘電体ブロック1を得た。誘電体ブロック1の長さL、幅W及び高さHは、表1のとおりであった。第1の面11、第2の面12、側面13,14,15,16及び貫通孔17の内面のそれぞれと空洞部分7の表面との間の距離即ち誘電体ブロック1の厚みDは、1.0mm、1.5mm、2.0mmとした。
【0044】
第1部分1A及び第2部分1Bとしては、MgSiOを主成分とするフォルステライト系セラミックを用いた。また、接合剤1Cとしては、MgSiOを主成分とし、これにSiOを主成分とするガラス成分を添加したものを用いた。融着時の温度は1200℃とした。
【0045】
比較のために、誘電体ブロック1を第1部分1A及び第2部分1Bに分割せず且つ空洞部分7を形成しない従来例についても、同様にして近似的な無負荷Q値を測定した。従来例では、Lを共振周波数が本実施例と同じになるように設定した。測定結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、本実施例の誘電体共振器は従来例の誘電体共振器に比べて無負荷Q値が高いことがわかる。また、誘電体ブロック1の厚みDが薄くなるほど実効的な比誘電率は小さくなり、無負荷Qが大きくなっていることがわかる。
【0048】
即ち、本実施例の誘電体共振器は従来例の誘電体共振器に対して最大約30%の無負荷Q値の向上が認められた。従って、幅W及び高さHで決まる共振部品面積を大きくしなくても無負荷Q値の高い共振器を得ることができ、これにより低背化を維持しつつ高性能な誘電体共振部品を実現することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
図5は、本発明による誘電体共振部品の第2の実施形態を示す模式的斜視図である。図6及び図7は、それぞれ図5の誘電体共振部品の模式的分解斜視図である。図8は、図5の誘電体共振部品の模式的断面図である。本実施形態では、誘電体共振部品は5つの共振器を有する5段の誘電体フィルタである。
【0050】
誘電体ブロック1は、長さL、幅W及び高さHの略直方体の基本形状を持つ。長さLはたとえば約13.3mmであり、幅Wはたとえば約83mmであり、高さHはたとえば約22mmである。長さL、幅W及び高さHについては、Lは3〜30mm、Wは5〜120mm、Hは3〜30mmがそれぞれ好ましい。
【0051】
誘電体ブロック1には、複数の貫通孔17が互いに平行に形成されており、これらのそれぞれに対応して共振器が形成される。これらの共振器の基本的構成は、ほぼ同等であり、第1の実施形態のものと同等である。複数の貫通孔17のそれぞれの内面に内導体2が形成されている。誘電体ブロック1の第1の面11には、複数の貫通孔17に対応してそれぞれ形成される共振器のうちの互いに隣接する2つ同士を結合させる結合手段としての結合電極5が、それぞれ内導体2と接続されて、形成されている。結合電極5としては、内導体2、外導体3及び入出力電極4と同様なものを使用することができる。
【0052】
誘電体ブロック1は、その内部において、内導体2、外導体3及び入出力電極4から隔絶されて形成された空洞部分7を有する。即ち、空洞部分7は、誘電体ブロック1を構成する誘電体により包囲されており、誘電体ブロック1の外面及び貫通孔17の内面には達していない。図6乃至図8に示されるように、複数の貫通孔17のそれぞれの周囲に形成された空洞は、互いに連なっており、共通の1つの空洞部分7として形成されている。即ち、空洞部分7は、各貫通孔17を囲むように、該貫通孔17の周面の外方において全周囲にわたって、形成されている。かくして、空洞部分7は、各貫通孔17を他の貫通孔及び4つの側面13,14,15,16から分離するように形成されている。
【0053】
本実施形態においては、誘電体ブロック1は、図6乃至図8に示されるように、第1の接合面10Aを有する第1部分1Aと第2の接合面10Bを有する第2部分1Bとをこれら第1及び第2の接合面10A,10B同士の間に介在する接合剤1Cにより接合してなる。
【0054】
ここで、第1の接合面10A及び第2の接合面10Bのそれぞれは、第1の面11と第2の面12との間において側面13,14,15,16を横切るように位置している。本実施形態では、第1の接合面10A及び第2の接合面10Bは、いずれも第1の面11及び第2の面12と平行であり、L方向に関して第1の面11及び第2の面12からほぼ等距離の位置にある。
【0055】
即ち、誘電体ブロック1は、L方向のほぼ中央において第1部分1Aと第2部分1Bとに分割されているものとみなすことができ、この分割の面を分割面と称する。この分割面は、第1の接合面10A、第2の接合面10B及びこれらの間に介在する接合剤1Cの層に対応する仮想的な面である。分割面の位置は、上記のものに限定されない。また、凹部は第1部分1A及び第2部分1Bのうちの少なくとも一方にあればよい。
【0056】
誘電体ブロック1の主体部である第1部分1A及び第2部分1Bとしては、無機系誘電体たとえばMgSiOを主成分とするフォルステライト系セラミックであって比誘電率εが10程度の誘電体セラミックスからなるものを使用することができる。接合剤1Cは、無機系接合剤たとえばセラミック接着剤である。接合剤1Cは、好ましくは第1部分1A及び第2部分1Bと同じ組成成分(同種の誘電体材料)を含有し、これにガラス等の接合機能を有する材料を混合した接合剤である。
【0057】
第1部分1A及び第2部分1Bには、それぞれ、接合剤1Cでの接合により上記空洞部分7を形成するための第1の凹部7A及び第2の凹部7Bが設けられている。接合剤1Cの層の端面は、内導体2及び外導体3により被覆されているので、外部へ露出してはいない。
【0058】
本実施形態では、幅Wの方向に5つの共振器が配列された5段の誘電体フィルタが構成される。2つの入出力電極4のそれぞれは、両端の共振器の結合電極5のそれぞれと結合している。作り込む共振器の数を変更することで、5段以外の誘電体フィルタ、例えば2段の誘電体フィルタを構成することも可能であり、段数は限定されない。
【0059】
第1の面11、第2の面12、側面13,14,15,16及び貫通孔17の内面のそれぞれと空洞部分7の表面との間の距離即ち誘電体セラミックの適宜の厚みDは、例えば1.5mmである。但し、これに限定されるものではなく、また全て同じにしなくてもよい。
【0060】
その他は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
上記の第1の実施形態に係る誘電体共振器の場合と同様な第1部分1A及び第2部分1B並びに接合剤1Cを用いて、同様な工程にて、本第2の実施形態に係る誘電体フィルタを製造し、特性を評価した。
【0062】
このようにして得られた幅Wの方向に5つの共振器が配列された5段の誘電体フィルタの通過特性及び反射特性を図9に示す。図9より、中心周波数1985MHz、通過帯域幅60MHzのフィルタが構成されていることがわかる。本実施例の帯域近傍の通過特性を図10に実線で示す。比較のために、誘電体ブロック1を第1部分1A及び第2部分1Bに分割せず且つ空洞部分7を形成しない従来例の誘電体フィルタの通過特性も図10に破線で示す。従来例の誘電体フィルタでは、中心周波数を本実施例のものと同じにするために、長さLを本実施例とは異なる(L=8.7mm)ものとしたが、幅W、高さH、孔数などのフィルタ構成はすべて本実施例と同じとした。図10より、本実施例は従来例に比べ通過損失が少なく、その差は、0.11dBであることがわかる。通過帯域内(60MHz)で最も通過損失(挿入損失)が大きい値は、従来例が0.8dBに対し本実施例は0.69dBであった。
【0063】
以上より、本実施例によれば同じ高さHでも特性の良い(損失の少ない)誘電体フィルタを提供することができることが分かる。以上のような誘電体フィルタにおける本発明の特徴が、2つの誘電体フィルタを共通の誘電体ブロックに作り込んでなる誘電体送受共用器にも適用できることは、容易に理解されるであろう。
【0064】
加えて、本発明実施例の場合、空洞部分7を有するためセラミック使用量が低減される。従って、原材料使用量が少ないためコストダウンの効果がある。本実施例の場合、従来例に比べセラミック使用量が52%削減できた。
【符号の説明】
【0065】
1 誘電体ブロック
1A 第1部分
1B 第2部分
1C 接合剤
10A 第1の接合面
10B 第2の接合面
11 第1の面
12 第2の面
13,14,15,16 側面
17 貫通孔
17A 第1の孔部
17B 第2の孔部
2 内導体
3 外導体
4 入出力電極(端子電極)
5 結合電極
7 空洞部分
7A 第1の凹部
7B 第2の凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10