特許第6011242号(P6011242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011242
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】電解加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 3/04 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   B23H3/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-233894(P2012-233894)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-83630(P2014-83630A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】595054589
【氏名又は名称】大信精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】虫上 悟志
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−307239(JP,A)
【文献】 実開昭59−097828(JP,U)
【文献】 特開2008−290240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(1)に形成された第1穴(11)に筒状の絶縁スリーブ(3)を挿入し、前記絶縁スリーブ(3)に電極(2)を挿入し、前記電極(2)と前記被加工物(1)との間に電流を流すことにより前記被加工物(1)の一部を溶融除去する電解加工装置において、
前記電極(2)は、筒状に形成されるとともに、電解液が流通する電極本体流通穴(211)および前記電極本体流通穴(211)から外周側に電解液を流出させる電極本体流出穴(212)を有する電極本体(21)と、前記電極本体(21)の側面に装着された電極チップ(22)と、前記電極チップ(22)を前記電極本体(21)に固定するボルト(23)とを備え、
前記絶縁スリーブ(3)は、前記電極本体流出穴(212)に対向する位置に形成されて、電解液を外周側に流出させる絶縁スリーブ流出穴(311)を有し、
さらに、前記絶縁スリーブ(3)は、前記電極(2)が挿入されるとともに、前記絶縁スリーブ流出穴(311)を有する絶縁スリーブ本体(31)と、前記被加工物(1)の外表面に当接することにより、前記被加工物(1)に対する前記絶縁スリーブ本体(31)の位置決めを行う絶縁ホルダ(32)とを、接合して構成されていることを特徴とする電解加工装置。
【請求項2】
前記第1穴(11)は、断面円形であり、
前記被加工物(1)は、前記第1穴(11)から径方向外側に向かって延びる断面円形の第2穴(12)を有し、
前記電極チップ(22)は、円板状で且つ外周面(221)が円弧状曲面であり、前記第2穴(12)に対向して配置されることを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極チップと被加工物との間に電流を流すことにより被加工物の一部を溶融除去する電解加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電解加工装置として、特許文献1に示されたものがある。この特許文献1に示された電解加工装置の電極は、円筒状の電極本体と、電極本体の側面に装着された電極チップとにより、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−307239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電極チップを電極本体の組み付け穴に圧入しているため、電極チップを交換する度に組み付け穴の内径が大きくなってしまい、電極チップを交換可能な回数が制限されてしまう。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、電極チップの交換可能回数を増加可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、被加工物(1)に形成された第1穴(11)に筒状の絶縁スリーブ(3)を挿入し、絶縁スリーブ(3)に電極(2)を挿入し、電極(2)と被加工物(1)との間に電流を流すことにより被加工物(1)の一部を溶融除去する電解加工装置において、電極(2)は、筒状に形成されるとともに、電解液が流通する電極本体流通穴(211)および電極本体流通穴(211)から外周側に電解液を流出させる電極本体流出穴(212)を有する電極本体(21)と、電極本体(21)の側面に装着された電極チップ(22)と、電極チップ(22)を電極本体(21)に固定するボルト(23)とを備え、絶縁スリーブ(3)は、電極本体流出穴(212)に対向する位置に形成されて、電解液を外周側に流出させる絶縁スリーブ流出穴(311)を有し、さらに、絶縁スリーブ(3)は、電極(2)が挿入されるとともに、絶縁スリーブ流出穴(311)を有する絶縁スリーブ本体(31)と、被加工物(1)の外表面に当接することにより、被加工物(1)に対する絶縁スリーブ本体(31)の位置決めを行う絶縁ホルダ(32)とを、接合して構成されていることを特徴とする。
【0007】
これによると、電極チップ(22)を電極本体(21)にボルト(23)にて固定するため、電極本体(21)のねじ部が破損しない限り、何度も電極チップ(22)を交換可能である。したがって、電極チップ(22)の交換可能回数を増加させることができる。
また、外径寸法が異なる絶縁スリーブ本体(31)と絶縁ホルダ(32)を別々に加工できるため、切削により除去する量が少なくなり、加工時間を短縮することができる。
また、絶縁スリーブ本体(31)は第1穴(11)に当接して曲げ応力を受けるため割れやすいが、絶縁スリーブ本体(31)は強度の高い材料を用い、絶縁ホルダ(32)は安価な材料を用いることにより、絶縁スリーブ全体としてのコストアップを回避ないしは抑制しつつ、絶縁スリーブ本体(31)の割れを防止ないしは抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電解加工装置において、第1穴(11)は、断面円形であり、被加工物(1)は、第1穴(11)から径方向外側に向かって延びる断面円形の第2穴(12)を有し、電極チップ(22)は、円板状で且つ外周面(221)が円弧状曲面であり、第2穴(12)に対向して配置されることを特徴とする。
【0009】
これによると、電極チップ(22)の外周エッジ部と、第1穴(11)と第2穴(12)とが交差する交差エッジ部とが、相似形になり、両エッジ部間の距離が均一になるため、交差エッジ部の全域において均一な加工を施すことができる。
【0015】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る電解加工装置および被加工物を模式的に示す正面断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
図2】(a)は図1の電極本体の正面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
図3】(a)は図1の電極チップの正面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(b)のC−C断面図である。
図4】(a)は図1の絶縁スリーブ本体の正面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、被加工物1は、導電性金属よりなり、断面が円形の円柱状の空間である第1穴11と、第1穴11から径方向外側に向かって延びる断面が円形の円柱状の空間である第2穴12とを有している。なお、第1穴11と第2穴12とが交差する部位を、以下、交差エッジ部13という。
【0019】
電解加工装置は、図示しない電源の負極に接続される電極2、電極2を覆う絶縁スリーブ3、および、電極2を保持する電極ホルダ4を備えている。
【0020】
図1図2に示すように、電極2は、円筒状に形成された導電性金属製の電極本体21と、電極本体21の側面に装着された導電性金属製の電極チップ22と、電極チップ22を電極本体21に固定する電極用ボルト23とを備えている。
【0021】
電極本体21の内部には、電解液が流通する電極本体流通穴211が形成されている。また、電極本体21には、電極本体流通穴211に流入した電解液を電極本体21の外周側に流出させる2つの電極本体流出穴212、および、電極用ボルト23が螺合される雌ねじ部213が形成されている。
【0022】
図1図3に示すように、電極チップ22は、第2穴12に対向して配置されている。そして、電極チップ22は、円板状で且つチップ外周面221が円弧状曲面であり、チップ外周面221を囲む外周エッジ部は公差エッジ部13と相似形になっている。
【0023】
電極チップ22には、電極用ボルト23を通すボルト挿入穴222,および、電極用ボルト23の頭部が収容される頭部収容部223が形成されている。また、電極チップ22には、電極本体流出穴212に挿入される2つの突起部224が形成されている。そして、突起部224が電極本体流出穴212に挿入されることにより、電極本体21に対する電極チップ22の取付向きが決められるようになっている。
【0024】
図1図4に示すように、絶縁スリーブ3は、電極2が挿入される有底円筒状の絶縁スリーブ本体31と、被加工物1の外表面に当接することにより被加工物1に対する絶縁スリーブ本体31の位置決めを行う絶縁ホルダ32とを、絶縁スリーブ用ボルト33にて接合して構成されている。
【0025】
絶縁スリーブ本体31は、電気絶縁性に富み且つ強度の高い材料、例えばテフロン(登録商標)よりなる。また、絶縁スリーブ本体31には、電極本体流出穴212に対向する位置に、電極本体流通穴211を通過した電解液を外周側に流出させる絶縁スリーブ流出穴311が形成されている。また、電極チップ22は絶縁スリーブ流出穴311内に配置されている。換言すると、絶縁スリーブ本体31の径方向に沿って見たときに、電極チップ22および電極本体流出穴212が絶縁スリーブ流出穴311内に位置している。
【0026】
絶縁ホルダ32は、電気絶縁性に富み且つ安価な材料、例えばポリ塩化ビニルよりなる。また、図1に示すように、絶縁ホルダ32は、絶縁ホルダフランジ部321および絶縁ホルダ貫通穴322を有する段付き円筒状になっている。そして、絶縁スリーブ本体31の一端側が絶縁ホルダ貫通穴322に挿入され、絶縁ホルダ32に螺合された絶縁スリーブ用ボルト33により絶縁スリーブ本体31と絶縁ホルダ32が結合されている。
【0027】
ここで、絶縁ホルダフランジ部321が被加工物1の外表面に当接することにより、絶縁スリーブ流出穴311が第2穴12に対向する位置になるように、被加工物1に対する絶縁スリーブ本体31の位置が決められる。
【0028】
電極ホルダ4は、電極ホルダ本体41と、電極ホルダ用ボルト42とからなる。電極ホルダ本体41は、導電性金属よりなり、電極ホルダ貫通穴411が形成されている。そして、電極ホルダ貫通穴411と絶縁ホルダ貫通穴322が同軸になるようにして、電極ホルダ本体41と絶縁ホルダ32とが図示しないボルトにて結合されている。
【0029】
また、電極本体21の一端側が電極ホルダ貫通穴411に挿入され、電極ホルダ4に螺合された電極ホルダ用ボルト42により電極本体21と電極ホルダ本体41が結合されている。ここで、電極本体21と電極ホルダ本体41は、電極チップ22および電極本体流出穴212が絶縁スリーブ流出穴311に対向するように位置決めして結合されている。
【0030】
上記構成において、電極ホルダ貫通穴411に流入した電解液は、電極本体流通穴211、電極本体流出穴212、および絶縁スリーブ流出穴311を介して、第2穴12に流れる。そして、この電解液の流れに沿って電極チップ22から被加工物1に電解電流が流れ、電極チップ22に対向する交差エッジ部13が溶融して、交差エッジ部13のバリが除去される。
【0031】
本実施形態では、電極チップ22を電極本体21に電極用ボルト23にて固定するため、電極本体21の雌ねじ部213が破損しない限り、何度も電極チップ22を交換可能である。したがって、電極チップ22の交換可能回数を増加させることができる。
【0032】
また、電極チップ22の外周エッジ部は公差エッジ部13と相似形になっているため、両エッジ部間の距離が均一になり、交差エッジ部13の全域において均一な加工を施すことができる。
【0033】
さらに、外径寸法が異なる絶縁スリーブ本体31と絶縁ホルダ32を別々に加工できるため、切削により除去する量が少なくなり、加工時間を短縮することができる。
【0034】
さらにまた、絶縁スリーブ本体31は第1穴11に当接して曲げ応力を受けるため割れやすいが、絶縁スリーブ本体31は強度の高い材料を用い、絶縁ホルダ32は安価な材料を用いているため、絶縁スリーブ全体としてのコストアップを回避ないしは抑制しつつ、絶縁スリーブ本体31の割れを防止ないしは抑制することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、絶縁スリーブ本体31を有底円筒状にしたが、絶縁スリーブ本体31は、円筒状のパイプとそのパイプの一端側を閉塞するプラグとを別々に加工した後、パイプとプラグを接合してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 被加工物
2 電極
3 絶縁スリーブ
11 第1穴
21 電極本体
22 電極チップ
23 ボルト
211 電極本体流通穴
212 電極本体流出穴
311 絶縁スリーブ流出穴
図1
図2
図3
図4