(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011260
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/12 20060101AFI20161006BHJP
F21S 8/10 20060101ALI20161006BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20161006BHJP
【FI】
F21S8/12 123
F21S8/10 180
F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-248867(P2012-248867)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-96336(P2014-96336A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠二
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−060201(JP,U)
【文献】
実開昭62−025403(JP,U)
【文献】
特開平11−306810(JP,A)
【文献】
特開2000−228110(JP,A)
【文献】
実開昭62−025402(JP,U)
【文献】
米国特許第6210027(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0118548(US,A1)
【文献】
特開2012−155965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21S 8/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を光源とするリフレクタタイプの車両用灯具であって、
前記光源は、出射光軸が車両前方方向を向くように設置されており、
リフレクタは、前記光源からの光を反射して配光パターンを形成する反射面を有し、
前記反射面は、前記光源の主光軸上に設けられる第1反射面と、前記第1反射面よりも前側に設けられた第2反射面とにより構成されており、
前記第1反射面は、車両前方から側方に向かって配光パターンを照射し、
前記第2反射面は、前記光源からの光を側方方向へ反射し、前記第1反射面よりも拡散幅の小さい配光パターンを照射する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1反射面は、光源側に設けられた反射面により車両前方方向へ光を反射し、
前記光源から他端側に遠ざかるに従って車両側方方向へ光を反射する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記リフレクタを形成する複数の反射面は、前記光源から近い位置に形成される前記第1反射面より、光源から遠ざかる位置に形成される前記第2反射面の方が照射範囲が狭い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源は、出射光軸が車両内側方向に傾斜して設置されている、ことを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子からなる光源と、リフレクタとを備えた車両用灯具であって、側方照射用の灯具や、コーナリングランプなどの車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は従来からある。特許文献1には、半導体発光素子からなる光源と、光源からの光を車両側方へ照射するリフレクタとを備えた車両用灯具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−164515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車両用灯具においては、側方方向へ光源からの光を照射するための反射面を十分に得られず、側方方向の広い範囲へ光源からの光を照射することが困難であった。
【0005】
この発明は、このような事情に基づきなされたものであり、視認性の高い側方への拡散配光パターンを得られる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、半導体発光素子を光源とするリフレクタタイプの車両用灯具であって、光源は、出射光軸が車両前方方向を向くように設置されており、リフレクタは、光源からの光を反射して配光パターンを形成する反射面を有し、反射面は、光源の主光軸上に設けられる第1反射面と、第1反射面よりも前側に設けられた第2反射面とにより構成されており、第1反射面は、車両前方から側方に向かって配光パターンを照射し、第2反射面は、光源からの光を側方方向へ反射し、第1反射面よりも拡散幅の小さい配光パターンを照射することを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、第1反射面は、光源側の反射面により車両前方方向へ光を反射し、光源から他端側に遠ざかるに従って車両側方方向へ光を反射する、ことを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項3にかかる発明)は、リフレクタを形成する複数の反射面は、光源から近い位置に形成される第1反射面より、光源から遠ざかる位置に形成される第2反射面の方が照射範囲が狭い、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項4にかかる発明)は、光源は、出射光軸が車両内側方向に傾斜して設置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかわる発明)の車両用灯具は、半導体発光素子からなる光源の第1反射面により水平方向に広く拡散した配光パターンを照射でき、光源から離れた位置に配置された第2反射面により拡散幅の狭い配光パターンを照射することができる。これにより、すれ違い配光パターンの側方に連続するように側方配光パターンを形成することができる。
【0011】
この発明(請求項2にかかわる発明)の車両用灯具は、第1反射面のうち、光源に近い位置に位置する反射面により、光源からの光を車両前方方向に向かうよう制御され、光源から他端側に離れるに従って、車両側方方向へ光源からの光を反射するように制御されている。これにより、強い光を車両前方方向に照射することができ、すれ違い配光パターンと違和感のない側方配光パターンを形成することができる。
【0012】
この発明(請求項3にかかわる発明)の車両用灯具は、第2反射面の照射範囲が、第1反射面の照射範囲よりも狭いため、適切な側方配光パターンを得ることができる。
【0013】
この発明(請求項4にかかわる発明)の車両用灯具は、光源の出射光軸が車両内側に傾斜していることにより、光源が直接外側から見え難くすることができ、光源からの直射光により、対向車や歩行者等への眩惑光を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】ランプユニットの光源を通る水平断面図である。
【
図4】実施形態におけるランプユニットのスクリーン上の配光パターンを示す図である。
【
図5】実施形態におけるランプユニットの路面パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1〜
図5は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態を示す。
図1中、符号1L、1Rは、この実施形態における車両用前照灯である。車両用前照灯1L、1Rは、車両Cの全部の左右両端部に搭載されている。
【0017】
図1および
図2において、車両用前照灯1L、1Rは、図示しないランプハウジングとアウターレンズにより灯室を形成し、該灯室内に、本発明のランプユニット20や、すれ違い配光用ランプユニット(図示せず)などを収納する。
【0018】
ここで、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、光源2の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、対向車線側、すなわち、この実施形態において、右側が+方向であり、左側が−方向である。また、Y軸は、光源2の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、光源2の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸であって、この実施形態において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0019】
ここで、ランプユニット20は、光源2と、リフレクタ3と、ヒートシンク部材4とを備えるものである。なお、ランプユニット20は、車両用前照灯1L、1Rの灯室11内に配置されており、この実施形態では右側の車両用前照灯1Rについて説明を行なう。左側の車両用前照灯1Lについては、右側の車両用前照灯1Rを反転させたものであるため、説明を省略する。
【0020】
光源2は、この例では、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源、すなわち、半導体発光素子(この実施例ではLED)を使用する。光源2は、基板(図示せず)と、前記基板に設けられている発光面(図示せず)と、発光面を封止する封止樹脂部材(図示せず)と、から構成されている。光源2は、ヒートシンク部材4に取り付けられている。光源2の発光面は、図示しない取付部材および基板を介して電流が供給されて発光する。
【0021】
光源2の発光面は、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。光源2は、リフレクタ3の焦点Fもしくはその近傍に位置している。光源2の発光面は、出射光軸Aが車両前方方向を向くように設置されており、この実施形態においては、光源2の出射光軸Aは、車両光軸Z−Zより車両内側へ傾けて設置されている。
【0022】
リフレクタ3は、放物面を基本とする自由曲面からなる複数の反射面からなる。リフレクタ3は、光源2の前方側(Z方向)を覆うように設けられており、光源2の近傍側から外側端部(X+方向)にかけて第1反射面3a、第2反射面3b、第3反射面3cとに分割されて反射面が形成されている。また、リフレクタ3は、ヒートシンク部材4にネジ等により固定されている。
【0023】
第1反射面3aは、光源2の中心Oの近傍に焦点Fを持つ放物面を基本とする自由曲面からなる反射面である。第1反射面3aは、光源2の最も近傍に配置されており、光源側領域に入射する光を車両前方方向(Z+方向)に反射し(光線L1a)、一端部から離れるに従って光源2から入射する光を車両側方(X+方向)に反射する(光線L1b)ように設定されている。
【0024】
第2反射面3bは、光源2の中心Oの近傍に焦点Fを持つ放物面を基本とする自由曲面からなる反射面である。第2反射面3bは、第1反射面3aよりも車両前方側(X+方向)に配置されており、光源2側の領域に入射する光を車両前方方向に反射し、一端部から離れるに従って光源2から入射する光を車両側方に反射する(光線L2)ように設定されている。しかし、この例に限定されることなく、第2反射面3bは、光源2側の領域から他端部にいたるまで、側方のみを照射する反射面としても良い。
【0025】
第3反射面3cは、光源2の中心Oの近傍に焦点Fを持つ放物面を基本とする自由曲面からなる反射面である。第3反射面3cは、第2反射面3bよりも車両前方側に配置されており、光源2側の領域に入射する光を車両前方方向に反射し、一端部から離れるに従って光源2から入射する光を車両側方に反射する(光線L3)ように設定されている。しかし、この例に限定されることなく、第3反射面3cは、光源2側の領域から他端部にいたるまで、側方のみを照射する反射面としても良い。
【0026】
ヒートシンク部材4は、板部と、板部の一面(後側の面)に一体に設けた複数枚のフィン部と、から構成されている。ヒートシンク部材4の板部の他面(前側の面)には、光源2が取付部材(図示しない)を介して取り付けられている。また、ヒートシンク部材4の板部の他面には、リフレクタ3がネジ等により固定されている。ヒートシンク部材4は、例えば熱伝導率が高い樹脂部材もしくはアルミダイカストなどの金属部材から構成されている。
なお、
図3は、
図2のA矢視図を示している。
【0027】
この本発明の実施形態における車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用および効果について説明する。
【0028】
光源2を点灯すると、
図2中に示すように、光源2からの光は、リフレクタ3の第1反射面3a、第2反射面3b、第3反射面3cに入射する。このとき、それぞれの反射面に入射した光は、
図2に示すように、光源2側の領域3a1に入射した光が車両前方方向へ反射され、他端側領域3a2(光源2から離れた位置)に向かうに従って車両側方方向へ反射されるように制御される。
【0029】
車両用灯具のスクリーン上の配光パターンである
図4に示すように、第1反射面3aからの反射光(光線L1a、L1b)は、側方配光パターンSP1として、すれ違い配光パターンLPのカットオフラインCLと同様の高さあるいは下側へ向けて、車両前方方向から側方へ広く拡散して照射され、すれ違い配光パターンLPと一部が重なるように照射される。
【0030】
第1反射面3aは、光源2からもっとも近い位置に配置されており、光源2の出射光軸Aが第1反射面3aに向いているため、第1反射面3aには大きい光源像が入射され、また強い光が入射されることとなり、拡散パターンに適した配光を車両前方に照射することができる。それにより、側方配光パターンSPとして光量を下げることなく大きく拡散した配光パターンを照射することができる。
【0031】
さらに、第1反射面3aは、光源2の近傍領域3a1により車両前方方向へ反射し、他端側へ向かうに従って側方方向へ反射するようになっているため、比較的強い光を車両前方側へ照射することができる。これにより、すれ違い配光パターンLPと重なる部分の光量を上げることができるため、すれ違い配光パターンLPと側方配光パターンSP1が違和感なく連続した配光パターンとして照射されることとなり、路面の視認性を向上させることができる。
【0032】
第2反射面3bからの反射光(光線L2)は、
図4に示すように、側方配光パターンSP2として、すれ違い配光パターンLPのカットオフラインCLと同様の高さあるいは下側へ向けて、第1反射面3aからの配光パターンSP1よりも拡散幅が抑えられた配光パターンとして照射される。
【0033】
第3反射面3cからの反射光(光線L3)は、
図4に示すように、側方配光パターンSP3として、すれ違い配光パターンLPのカットオフラインCLと同様の高さあるいは下側へ向けて、第2反射面3bからの配光パターンSP2よりも拡散幅が抑えられた配光パターンとして照射される。
【0034】
第2反射面3bおよび第3反射面3cは、第1反射面3aよりも光源2からの距離が離れているため、その分小さい光源像が反射面に入射され、拡散幅の小さい側方配光パターンSP2、SP3を形成するのに適している。この側方配光パターンSP2、SP3は側方配光パターンSP1の照射範囲内に照射され、すれ違い配光パターンLPとの違和感のない配光パターンの形成に寄与する。
【0035】
また、第2反射面3bおよび第3反射面3cは、第1反射面3aよりも車両前方側に配置されていることにより、光源2からの光を車両側方側へ照射することが容易となる。
【0036】
光源2の出射光軸Aが車両前方方向で、かつ、車両内側へ傾いており、リフレクタ3が光源2を覆うように配置されていることにより、光源2からの光を効率的に第1反射面3aに入射させることができる。また、リフレクタ3のそれぞれの反射面が車両側方を向くように配置されているため、側方配光パターンSP1、SP2、SP3を側方へ拡散照射することが容易となる。
【0037】
さらに、光源2が車両内側に傾斜していることにより、外部から直接光源2が見え難くなるため、車両用灯具の見映えが向上する。また、光源2からの直射光が、車両前方側へ照射しに難くなるため、光源2の直射光による対向車や歩行者等への眩惑光を抑制することができる。
【0038】
光源2は、車両前方を向くようにヒートシンク部材4に取り付けられて灯室11内に配置されており、反射面等の部材が光源2よりも車両前方に設けられているため、光源2が断線等により交換が必要となった際には、ハウジング6の車両後方側に設けられた開口部(図示せず)から、光源2を取り出し、交換を行なうことが容易である。
【0039】
なお、
図5は、路上を走行する車両Cの車両用前照灯1R内のランプユニット20からの光のコーナリングパターンを示したパターンを示した図である。
上述の実施形態においては、リフレクタ3の反射面は3つに分割した例により説明を行なったが、この反射面の分割数は限定されることはなく、2分割あるいは3分割以上であってもよい。
【0040】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
C……車両、20……ランプユニット、2……光源、3……リフレクタ、3a……第1反射面、3a1……光源側領域、3a2……他端側領域、3b……第2反射面、3c……第3反射面、4……ヒートシンク部材、LP……すれ違い配光パターン、CL……カットオフライン、SP1……第1反射面からの付加配光パターン、SP2……第2反射面からの付加配光パターン、SP3……第3反射面からの付加配光パターン、L1〜L3……光路、O1……車両軸、A……出射光軸。