(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上側クォーターインナーパネルには、前記シートベルトアンカ取付部の前方位置から前記上側クォーターインナーパネルの上端部に向かって延びる脆弱部が形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車体後部の上側構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、ルーフサイドレールのインナーパネルを延ばした延出部を設けた場合、車両重量が増加することとなる。また、特許文献1の構造は、クォーターインナーパネルのシートベルトアンカ取付部を局所的に補強して、クォーターインナーパネルの変形を抑えることを目的としているので、このような構造では、ルーフサイドレールのインナーパネルの延出部の厚さ、及び補強パネルのような補強部材の厚さを増加させる必要がある。このことによって車両重量が増加することとなる。
【0007】
また、従来の車体後部の上側構造のように、クォーターインナーパネルが車体側面と車体後面との間に跨って車体後方角部分を形成している場合、クォーターインナーパネルは、大型の成型機を用いて板材等を湾曲させることによって作製されることとなる。このような構造を有するクォーターインナーパネルの成型性は悪く、このクォーターインナーパネルは、車体後方角部分で大きな曲率半径(R)を有することとなる。このような構造において、例えば、モヒカン方式のルーフ構造を有する車体に採用する場合、車体後方角部分より前方の位置であって車体後縁から離れた位置にて、クォーターインナーパネルの上端部とルーフインナーパネルのルーフモヒカン部とが接合されることとなる。そのため、車体後方角部分を補強するために、クォーターインナーパネル等の板厚の増加、補強部品追加等の対策を別途施す必要がある。このことによって車両重量が増加することとなる。さらに、曲率半径が増加することによって、車室空間が減少することとなり、車室内における内装部材のレイアウトの制約になっている。
【0008】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両重量を増加させず、かつ車室空間を増加させながら、車体の耐荷重性能を高めることができる車体後部の上側構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の一態様に係る車体後部の上側構造は、車体側面と車体後面との間における角部分の上部を補強するように構成された車体後部の上側構造において、前記車体側面の上側領域に配置され、かつシートベルトアンカ取付部を有する上側クォーターインナーパネルと、前記車体側面の上側領域にて前記上側クォーターインナーパネルの下方に配置される下側クォーターインナーパネルと、前記車体後面の上側領域にて前記上側クォーターインナーパネルの後方に配置される上側バックピラーインナーパネルと、前記車体後面の上側領域にて前記下側クォーターインナーパネルの後方かつ前記上側バックピラーインナーパネルの下方に配置される下側バックピラーインナーパネルとを備え、前記上側クォーターインナーパネルの下端部と前記下側クォーターインナーパネルの上端部とが、前記シートベルトアンカ取付部の下方で車両前後方向に沿って配置された複数の前側接合部によって接合され、前記上側クォーターインナーパネルの後端部と前記上側バックピラーインナーパネルの車幅方向外側端部とが、車両上下方向に沿って配置された複数の上側接合部によって接合され、前記上側バックピラーインナーパネルの下端部と前記下側バックピラーインナーパネルの上端部とが、車幅方向に沿って配置された複数の後側接合部によって接合され、前記下側クォーターインナーパネルの後端部と前記下側バックピラーインナーパネルの車幅方向外側端部とが、車両上下方向に沿って配置された複数の下側接合部によって接合されて
おり、前記前側接合部と前記後側接合部とが互いに上下方向にズレて配置されている。
【0010】
本発明の一態様に係る車体後部の上側構造では、前記複数の上側接合部が2列に並んで配置され、前記上側接合部の2列は、前記角部分の上部を挟むように互いに間隔を空けて配置されている。
【0012】
本発明の一態様に係る車体後部の上側構造では、前記シートベルトアンカ取付部は、前記上側クォーターインナーパネルの車室内側面に突出して形成され、前記上側クォーターインナーパネルの車室外側面にて前記シートベルトアンカ取付部に補強部材が取付けられ、前記シートベルトアンカ取付部が、前記上側クォーターインナーパネルと前記上側バックピラーインナーパネルとの境界から車両前側斜め下方に向かって延びるように形成され、前記上側クォーターインナーパネル及び前記下側クォーターインナーパネルには、前記前側接合部を跨ぐように延びる絞り部が形成されている。
【0013】
本発明の一態様に係る車体後部の上側構造では、前記上側クォーターインナーパネルには、前記シートベルトアンカ取付部の前方位置から前記上側クォーターインナーパネルの上端部に向かって延びる脆弱部が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。本発明の一態様に係る車体後部の上側構造は、車体側面と車体後面との間における角部分の上部を補強するように構成された車体後部の上側構造において、前記車体側面の上側領域に配置され、かつシートベルトアンカ取付部を有する上側クォーターインナーパネルと、前記車体側面の上側領域にて前記上側クォーターインナーパネルの下方に配置される下側クォーターインナーパネルと、前記車体後面の上側領域にて前記上側クォーターインナーパネルの後方に配置される上側バックピラーインナーパネルと、前記車体後面の上側領域にて前記下側クォーターインナーパネルの後方かつ前記上側バックピラーインナーパネルの下方に配置される下側バックピラーインナーパネルとを備え、前記上側クォーターインナーパネルの下端部と前記下側クォーターインナーパネルの上端部とが、前記シートベルトアンカ取付部の下方で車両前後方向に沿って配置された複数の前側接合部によって接合され、前記上側クォーターインナーパネルの後端部と前記上側バックピラーインナーパネルの車幅方向外側端部とが、車両上下方向に沿って配置された複数の上側接合部によって接合され、前記上側バックピラーインナーパネルの下端部と前記下側バックピラーインナーパネルの上端部とが、車幅方向に沿って配置された複数の後側接合部によって接合され、前記下側クォーターインナーパネルの後端部と前記下側バックピラーインナーパネルの車幅方向外側端部とが、車両上下方向に沿って配置された複数の下側接合部によって接合されて
おり、前記前側接合部と前記後側接合部とが互いに上下方向にズレて配置されている。そのため、車体側面と車体後面との間における角部分上部は、互いに別部材である上側クォーターインナーパネル及び上側バックピラーインナーパネルを接合することによって構成され、かつ互いに別部材である下側クォーターインナーパネル及び下側バックピラーインナーパネルを接合することによって構成されている。このように構成された各部材の板厚や材質をほぼ等しくすることで、従来と比較して、角部分上部の強度と他の部分の強度との差異が小さくなっている。従って、別途部材を設けることなく、車体に荷重が加えられた場合に角部分上部への応力集中が防止され、応力が角部分上部及びその周辺部分に分散することとなる。よって、車体の重量を増加させずに、車体の耐荷重性能を高めることができる。また、角部分上部は、互いに別部材である上側クォーターインナーパネル及び上側バックピラーインナーパネルによって構成され、かつ互いに別部材である下側クォーターインナーパネル及び下側バックピラーインナーパネルによって構成されているので、従来のように1つの板材を湾曲して形成したクォーターインナーパネルの曲率半径(R)と比較して、本発明の角部分上部の曲率半径を小さくすることができる。そのため、例えば、モヒカン方式のルーフ構造を有する車体に採用する場合、上側クォーターインナーパネルの上端部とルーフのモヒカン部との接合部を、上側クォーターインナーパネルの後端部近傍まで延ばすことができて、従来と比較して、車体後方角部分を補強するために、角部分上部及びその周辺部分を構成する部材の板厚の増加させること、補強部品を追加すること等の対策を減らすことができる。さらに、角部分上部の曲率半径(R)を小さくすることによって、車室空間を増加させることができて、車室内における内装部材のレイアウトの自由度を高めることができる。よって、車両重量を増加させず、かつ車室空間を増加させながら、車体の耐荷重性能を高めることができる。
【0015】
また、前記前側接合部と前記後側接合部とが互いに上下方向にズレて配置されているので、応力が集中し易い前側接合部及び後側接合部が互いに離れて位置することとなる。そのため、前側接合部及び後側接合部への応力集中を防止して、応力を角部分上部及びその周辺部分に分散させることができる。例えば、上側クォーターインナーパネル、下側クォーターインナーパネル、上側バックピラーインナーパネル、及び下側バックピラーインナーパネルを板材により構成し、これらの板厚を従来と比較して薄くし、前側接合部、上側接合部、後側接合部、及び下側接合部をスポット溶接により構成した場合、スポット溶接による各接合部の剥がれが発生し難くなる。よって、車両重量を増加させずに、車体の耐荷重性能を高めることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る車体後部の上側構造では、前記複数の上側接合部が2列に並んで配置され、前記上側接合部の2列は、前記角部分の上部を挟むように互いに間隔を空けて配置されているので、角部分上部への応力集中を防止しながら、角部分上部に車体の構造上必要とされる剛性を十分に確保することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る車体後部の上側構造では、前記シートベルトアンカ取付部は、前記上側クォーターインナーパネルの車室内側面に突出して形成され、前記上側クォーターインナーパネルの車室外側面にて前記シートベルトアンカ取付部に補強部材が取付けられ、前記シートベルトアンカ取付部が、前記上側クォーターインナーパネルと前記上側バックピラーインナーパネルとの境界から車両前側斜め下方に向かって延びるように形成され、前記上側クォーターインナーパネル及び前記下側クォーターインナーパネルには、前記前側接合部を跨ぐように延びる絞り部が形成されているので、シートベルトアンカ取付部及び絞り部によって、角部分上部及びシートベルトアンカ取付部への応力集中を防止しながら、角部分及びシートベルトアンカ取付部に車体の構造上必要とされる剛性、例えば、NVH(Noise,Vibration,and Harshness)に対する性能を確保するための剛性を十分に確保することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る車体後部の上側構造では、前記上側クォーターインナーパネルには、前記シートベルトアンカ取付部の前方位置から前記上側クォーターインナーパネルの上端部に向かって延びる脆弱部が形成されているので、脆弱部を起点として角部分上部及びその周辺部分の全体の変形が促されることとなる。そのため、角部分上部への応力集中を防止して、応力を角部分上部及びその周辺部分に分散させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る車体後部の上側構造について以下に説明する。
図1に示すように、車体後部1の側面(以下、「車体側面」という)1aには、車幅方向に貫通するサイドドア開口1bが形成されている。車体後部1の後面(以下、「車体後面」という)1cには、前後方向に貫通するバックドア開口1dが形成されている。サイドドア開口1bとバックドア開口1dとの間にはバックピラー構造体1eが設けられている。バックピラー構造体1eは、車体側面1aと車体後面1cとの間における角部分を含んでおり、車体後部1は、この角部分の上部(以下、「角上部」という)1fを補強する構造を含んでいる。さらに、車体後部1の上面1gにはルーフ構造体1hが設けられている。
【0021】
バックピラー構造体1eの詳細について説明する。
図2〜
図4に示すように、バックピラー構造体1eは、車体側面1aの上側領域に配置される上側クォーターインナーパネル2を有している。なお、車体側面1aの上側領域は、サイドドア開口1bの上下方向中央に対して上側に位置している。バックピラー構造体1eは、車体側面1aの上側領域にて上側クォーターインナーパネル2の下方に配置される下側クォーターインナーパネル3を有している。バックピラー構造体1eは、車体後面1cの上側領域にて上側クォーターインナーパネル2の後方に配置される上側バックピラーインナーパネル4を有している。なお、車体後面1cの上側領域は、バックドア開口1dの上下方向中央に対して上側に位置している。バックピラー構造体1eは、車体後面1cの上側領域にて下側クォーターインナーパネル3の後方かつ上側バックピラーインナーパネル4の下方に配置される下側バックピラーインナーパネル5を有している。
【0022】
ここで、上側クォーターインナーパネル2の詳細について説明する。
図2〜
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2は平面視略L字状に形成されている。
図2及び
図3に示すように、上側クォーターインナーパネル2の下端縁は略水平方向に沿って形成されており、このような下端縁を含む上側クォーターインナーパネル2の下端部2aは、下側クォーターインナーパネル3と重ねて配置されている。
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の後端部には、角上部1fを構成するように車室外側から車室内側に突出する後側フランジ2bが形成されている。この後側フランジ2bは、上側バックピラーインナーパネル4に重ねて配置されている。上側クォーターインナーパネル2の上端部には、車室外側から車室内側に突出する上側フランジ2cが形成されている。
図2に示すように、上側フランジ2cは、後述するルーフ構造体1hのルーフパネル6と重ねて配置されている。
図2〜
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の前端部2dは、サイドドア開口1bとルーフ構造体1hとの間に設けられたルーフサイドレール7と重ねて配置されている。上側クォーターインナーパネル2の下端部2aと前端部2dとの間には、サイドドア開口1bの後方上側角部を構成するように開口縁部2eが湾曲して形成されている。
【0023】
図2〜
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2には、シートベルト(図示せず)を支持するシートベルトアンカ(図示せず)を取付けるためのシートベルトアンカ取付部2fが形成されている。シートベルトアンカ取付部2fは、上側クォーターインナーパネル2の上下方向中間に配置され、かつ上側クォーターインナーパネル2と上側バックピラーインナーパネル4との境界からから前側斜め下方に向かって延びるように形成されている。シートベルトアンカ取付部2fは、
図2及び
図3に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室内側面2gにて凸状に形成されており、
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにて凹状に形成されている。
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにて凹状のシートベルトアンカ取付部2f内には、補強部材としてパッチ8が取り付けられている。
【0024】
図2〜
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2のシートベルトアンカ取付部2fの下方には、上側絞り部2iが設けられている。上側絞り部2iは、
図2及び
図3に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室内側面2gにて凹状に形成され、かつ
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにて凸状に形成されている。
図2〜
図4に示すように、上側絞り部2iは、平面視で上側クォーターインナーパネル2のクォーターインナーパネル2の下端縁から上方に向かって延びるように略U字状に形成されている。
【0025】
図2〜
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2には、シートベルトアンカ取付部2fの前方位置から前方斜め上方に向かって延びる脆弱部として細長凹部2jが形成されている。細長凹部2jは、
図2及び
図3に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室内側面2gにて凹状に形成され、かつ
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにて凸状に形成されている。
【0026】
下側クォーターインナーパネル3の詳細について説明する。
図4に示すように、下側クォーターインナーパネル3の上端縁は略水平方向に沿って形成されており、
図2〜
図4に示すように、このような上端縁を含む下側クォーターインナーパネル3の上端部3aは、上側クォーターインナーパネル2の下端部2aと重ねて配置されている。下側クォーターインナーパネル3の後端部には、角上部1fを構成するように車室外側から車室内側に突出する後側フランジ3bが形成されている。この後側フランジ3bは、上側バックピラーインナーパネル4及び下側バックピラーインナーパネル5に重ねて配置されている。下側クォーターインナーパネル3の前端部3cはサイドドア開口1bの後縁部を形成している。
【0027】
下側クォーターインナーパネル3には、その上端縁から下方に向かって延びる下側絞り部3dが設けられている。下側絞り部3dは、
図2及び
図3に示すように、下側クォーターインナーパネル3の車室内側面3eにて凹状に形成され、かつ
図4に示すように、下側クォーターインナーパネル3の車室外側面3fにて凸状に形成されている。上側クォーターインナーパネル2の下端部2aと下側クォーターインナーパネル3の上端部3aとが重なった状態では、下側クォーターインナーパネル3の下側絞り部3dは、上側クォーターインナーパネル2の上側絞り部2iと一緒になって絞り部9を形成することとなる。
【0028】
上側バックピラーインナーパネル4の詳細について説明する。
図2〜
図4に示すように、上側バックピラーインナーパネル4は平面視略L字状に形成されている。
図2及び
図3に示すように、上側バックピラーインナーパネル4の下端縁は略水平方向に沿って形成されており、このような下端縁を含む上側バックピラーインナーパネル4の下端部4aは、下側バックピラーインナーパネル5と重ねて配置されている。上側バックピラーインナーパネル4の車幅方向外側端部には、角上部1fを構成するように後方から前方に突出する外側フランジ4bが形成されている。この外側フランジ4bは、上側クォーターインナーパネル2及び下側クォーターインナーパネル3に重ねて配置されている。
図2〜
図4に示すように、上側バックピラーインナーパネル4の車幅方向中央側端部4cは、バックドア開口1dとルーフ構造体1hとの間に設けられたルーフリヤレール10と重ねて配置されている。上側バックピラーインナーパネル4の下端部4aと車幅方向中央側端部4cとの間には、バックドア開口1dの上側角部を構成するように開口縁部4dが湾曲して形成されている。
【0029】
下側バックピラーインナーパネル5の詳細について説明する。
図4に示すように、下側バックピラーインナーパネル5の上端縁は略水平方向に沿って形成されており、
図2〜
図4に示すように、このような上端縁を含む下側バックピラーインナーパネル5の上端部5aは、上側バックピラーインナーパネル4の下端部4aと重ねて配置されている。下側バックパネルインナー5の車幅方向外側端部5bは、下側クォーターインナーパネル3と重ねて配置されている。下側バックインナー5の車幅方向中央側端部5cは、バックドア開口1dの車幅方向外側端部を形成している。
【0030】
さらに、ルーフ構造体1hの詳細について説明する。ルーフ構造体1hはルーフパネル6を有している。
図2及び
図3に示すように、ルーフパネル6の車幅方向端部には、前後方向に延びるモヒカン部6aが形成されている。モヒカン部6aはルーフパネル6の下側面6bから下方に突出して形成されている。このようなルーフパネル6のモヒカン部6aが、上側クォーターインナーパネル2の上側フランジ2cと重ねて配置されている。
【0031】
ここで、本実施形態に係る車体後部1の上側構造における接合について説明する。
図2〜
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の下端部2aと下側クォーターインナーパネル3の上端部3aとが、スポット溶接を用いて形成された複数の前側接合部11によって接合されている。複数の前側接合部11は、車体側面1aの上側領域の上下方向中間で前後方向に沿って配置されており、上側クォーターインナーパネル2のシートベルトアンカ取付部2fは、複数の前側接合部11の上方に位置している。なお、絞り部9は前側接合部11を跨ぐように配置されることとなる。
【0032】
図2及び
図4に示すように、上側クォーターインナーパネル2の後側フランジ2bの周辺部と上側バックピラーインナーパネル4の外側フランジ4bとが、スポット溶接を用いて形成された複数の第1の上側接合部12aによって接合されている。また、下側クォーターインナーパネル3の後側フランジ3bの周辺部と上側バックピラーインナーパネル4の外側フランジ4bとが、スポット溶接を用いて形成された第1の上側接合部12aによって接合されている。このような複数の第1の上側接合部12aは、車両上下方向に沿って1列に配置されている。上側クォーターインナーパネル2の後側フランジ2bと上側バックピラーインナーパネル4の外側フランジ4bの周辺部とは、スポット溶接を用いて形成された複数の第2の上側接合部12bによって接合されている。複数の第2の上側接合部12bは、車両上下方向に沿って1列に配置されている。第1の上側接合部12aの列及び第2の上側接合部12bの列は、角上部1fを挟むように互いに間隔を空けて配置されている。
【0033】
上側バックピラーインナーパネル4の下端部4aと下側バックピラーインナーパネル5の上端部5aとは、スポット溶接を用いて形成された複数の後側接合部13によって接合されている。このような複数の後側接合部13は、車体後面1cの上側領域の上下方向中間で、複数の前側接合部11に対して下方にズレて配置されている。
【0034】
下側クォーターインナーパネル3の後側フランジ3bと下側バックピラーインナーパネル5の車幅方向外側端部5bとが、スポット溶接を用いて形成された複数の下側接合部14によって接合されている。複数の第2の上側接合部12bと複数の下側接合部14とは略一列に並んで配置されている。
【0035】
図2及び
図3に示すように、上側クォーターインナーパネル2の上側フランジ2cとはルーフパネル6のモヒカン部6aとが、スポット溶接によって接合されている。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、車体側面1aと車体後面1cとの間における角上部1fは、互いに別部材である上側クォーターインナーパネル2及び上側バックピラーインナーパネル4を接合することによって構成され、かつ互いに別部材である下側クォーターインナーパネル3及び下側バックピラーインナーパネル5を接合することによって構成されているので、従来と比較して、角部分の強度と他の部分の強度との差異が小さくなっている。そのため、別途部材を設けることなく、車体に荷重が加えられた場合に角上部1fへの応力集中を防止でき、かつ応力を角上部1f及びその周辺部分に分散することができる。よって、車体の重量を増加させずに、車体の耐荷重性能を高めることができる。また、角上部1fは、互いに別部材である上側クォーターインナーパネル2及び上側バックピラーインナーパネル4によって構成され、かつ互いに別部材である下側クォーターインナーパネル3及び下側バックピラーインナーパネル5によって構成されている。このように構成された各部材の板厚や材質をほぼ等しくすることで、従来のように1つの板材を湾曲して形成したクォーターインナーパネルの曲率半径(R)と比較して、本発明の角上部1fの曲率半径を小さくすることができる。そのため、上側クォーターインナーパネル2の上側フランジ2cとルーフパネル6のモヒカン部6aとの接合部を、上側クォーターインナーパネル2の後端部近傍まで延ばすことができて、従来と比較して、車体後方角部分を補強するために、角上部1f及びその周辺部分を構成する部材の板厚の増加させること、補強部品を追加すること等の対策を減らすことができる。さらに、角上部1fの曲率半径(R)を小さくすることによって、車室空間を増加させることができて、車室内における内装部材のレイアウトの自由度を高めることができる。よって、車両重量を増加させず、かつ車室空間を増加させながら、車体の耐荷重性能を高めることができる。
【0037】
本実施形態によれば、第1の上側接合部12aの列及び第2の上側接合部12bの列は、角上部1fを挟むように互いに間隔を空けて配置されているので、角上部1fへの応力集中を防止しながら、角上部1fに車体の構造上必要とされる剛性を十分に確保することができる。
【0038】
本実施形態によれば、後側接合部13が前側接合部11の下方にズレて配置されているので、応力が集中し易い前側接合部11及び後側接合部13が互いに離れて位置することとなる。そのため、前側接合部11及び後側接合部13への応力集中を防止して、応力を角上部1f及びその周辺部分に分散させることができる。例えば、上側クォーターインナーパネル2、下側クォーターインナーパネル3、上側バックピラーインナーパネル4、及び下側バックピラーインナーパネル5の板厚を従来と比較して薄くし、スポット溶接による前側接合部11、第1の上側接合部12a、第2の上側接合部12b、後側接合部13、及び下側接合部14の剥がれが発生し難くなる。よって、車両重量を増加させずに、車体の耐荷重性能を高めることができる。
【0039】
本実施形態によれば、上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにてシートベルトアンカ取付部2fに補強部材としてパッチ8が取付けられ、シートベルトアンカ取付部2fが、上側クォーターインナーパネル2と上側バックピラーインナーパネル4との境界から車両前側斜め下方に向かって延びるように形成され、上側クォーターインナーパネル2及び下側クォーターインナーパネル3には、前側接合部11を跨ぐように延びる絞り部9が形成されている。そのため、シートベルトアンカ取付部2f及び絞り部9によって、角上部1f及びシートベルトアンカ取付部2fへの応力集中を防止しながら、角部分1f及びシートベルトアンカ取付部2fに車体の構造上必要とされる剛性、例えば、NVH(Noise,Vibration,and Harshness)に対する性能を確保するための剛性を十分に確保することができる。
【0040】
本実施形態によれば、上側クォーターインナーパネル2には、シートベルトアンカ取付部2fの前方位置から上側クォーターインナーパネル2の上端に向かって延びる脆弱部として細長凹部2jが形成されている。そのため、細長凹部2jを起点として角上部1f及びその周辺部分の全体の変形が促されることとなる。そのため、角上部1fへの応力集中を防止して、応力を角上部1f及びその周辺部分に分散させることができる。
【0041】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0042】
例えば、本発明の第1変形例として、部材間の接合は、スポット溶接の代わりに、ガス溶接、アーク溶接、ティグ溶接、プラズマ溶接、セルフシールドアーク溶接、エレクトロスラグ溶接、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、プロジェクション溶接、シーム溶接、アプセット溶接、フラッシュ溶接、バットシーム溶接、ろう接、ろう付け、摩擦撹拌接合等が用いられてもよい。また、スポット溶接の代わりに、ネジ、ボルト等の締結部材が用いられてもよい。
【0043】
本発明の第2変形例として、複数の後側接合部13が複数の前側接合部11の上方に配置されていてもよい。
【0044】
本発明の第3変形例として、上側クォーターインナーパネル2の上側絞り部2iが、上側クォーターインナーパネル2の車室内側面2gにて凸状に形成され、かつ上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにて凹状に形成されており、さらに、下側クォーターインナーパネル3の下側絞り部3dが、下側クォーターインナーパネル3の車室内側面3eにて凸状に形成され、かつ上側クォーターインナーパネル2の車室外側面3fにて凹状に形成されてもよい。すなわち、絞り部9が、上側クォーターインナーパネル2の車室内側面2g及び下側クォーターインナーパネル3の車室内側面3eにて凸状に形成され、かつ上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2h及び下側クォーターインナーパネル3の車室外側面3fにて凹状に形成されていてもよい。
【0045】
本発明の第4変形例として、細長凹部2jの代わりに、脆弱部として貫通孔、複数の絞り部等が形成されていてもよい。
【0046】
本発明の第5変形例として、細長凹部2jが、シートベルトアンカ取付部2fの前方位置から上方又は後方斜め上方に向かって延びるように形成されていてもよい。
【0047】
本発明の第6変形例として、細長凹部2jが、上側クォーターインナーパネル2の車室内側面2gにて凸状に形成され、かつ上側クォーターインナーパネル2の車室外側面2hにて凹状に形成されていてもよい。