(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る光受信器の概略構成図である。
図1に示されるように、光受信器1は、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)及びDP−QPSKなどの通信方式において使用される差動型の光受信器であって、第1PD2と、第2PD3と、増幅器10と、を備えている。この光受信器1は、正相信号の光信号Pinp及び逆相信号の光信号Pinnから構成される一対の相補信号を受信する。第1PD2は、光信号Pinpを入力し、光信号Pinpを受光電流Iinpに変換する。この第1PD2のアノード端子は増幅器10の入力端子10aに接続され、第1PD2のカソード端子は電源電圧Vpdに接続されている。また、第2PD3は、光信号Pinnを入力し、光信号Pinnを受光電流Iinnに変換する。この第2PD3のアノード端子は増幅器10の入力端子10bに接続され、第2PD3のカソード端子は電源電圧Vpdに接続されている。
【0018】
増幅器10は、入力された一対の差動電流(差動電流信号)を一対の差動電圧(差動電圧信号)に変換し、変換した一対の差動電圧を出力する。増幅器10は、入力端子10a(差動入力端子の一方)と、入力端子10b(差動入力端子の他方)と、出力端子10cと、出力端子10dと、を備えている。この増幅器10では、第1PD2から出力された受光電流Iinpが入力電流として入力端子10aに入力し、第2PD3から出力された受光電流Iinnが入力電流として入力端子10bに入力する。そして、増幅器10は、電圧信号Voutpを出力電圧として出力端子10cから出力し、電圧信号Voutnを出力電圧として出力端子10dから出力する。
【0019】
図2は、増幅器10の回路図である。
図2に示されるように、増幅器10は、TIA20と、エミッタフォロア回路30と、アンプ40と、補償回路60と、を備えている。TIA20は、入力された電流を電圧に変換して、変換した電圧を出力信号として出力するトランスインピーダンスアンプであって、第1トランジスタ21と、第2トランジスタ22と、第1電流源23(ベース接地電流源)と、第2電流源24(ベース接地電流源)と、第1負荷抵抗器25と、第2負荷抵抗器26と、を備えている。
【0020】
第1トランジスタ21は、例えばNPN型トランジスタである。この第1トランジスタ21のベース端子21b(第1制御端子)には、所定のバイアス電圧を有するバイアス信号Vbiasが供給されている。第1トランジスタ21のエミッタ端子21e(一対の第1電流端子の一方)は、入力端子10a及び第1電流源23の一端に接続されている。第1トランジスタ21のコレクタ端子21c(一対の第1電流端子の他方)は、第1負荷抵抗器25を介して電源電圧Vccに接続されている。第1電流源23は、定電流源であって、トランジスタまたは抵抗器によって構成されている。第1電流源23の他端は接地電位GNDに接続されている。第1負荷抵抗器25は、例えば500Ω程度の抵抗値を有している。このように、第1トランジスタ21、第1電流源23及び第1負荷抵抗器25は、ベース接地増幅器(ベース接地回路)を成しており、第1TIAとして動作する。なお、入力端子10aの入力電位Vinは、バイアス信号Vbiasによって設定される。すなわち、入力電位Vinは、バイアス信号Vbiasの電圧から第1トランジスタ21のベース−エミッタ間電圧Vbe1を差し引いた電圧であって、例えば1V程度である。
【0021】
第2トランジスタ22は、例えばNPN型トランジスタである。この第2トランジスタ22のベース端子22b(第2制御端子)には、バイアス信号Vbiasが供給されている。第2トランジスタ22のエミッタ端子22e(一対の第2電流端子の一方)は、入力端子10b及び第2電流源24の一端に接続されている。第2トランジスタ22のコレクタ端子22c(一対の第2電流端子の他方)は、第2負荷抵抗器26を介して電源電圧Vccに接続されている。第2電流源24は、定電流源であって、トランジスタまたは抵抗器によって構成されている。第2電流源24の他端は接地電位GNDに接続されている。第2負荷抵抗器26は、例えば500Ω程度の抵抗値を有している。このように、第2トランジスタ22、第2電流源24及び第2負荷抵抗器26は、ベース接地増幅器(ベース接地回路)を成しており、第2TIAとして動作する。なお、入力端子10bの入力電位Vinは、バイアス信号Vbiasによって設定される。すなわち、入力電位Vinは、バイアス信号Vbiasの電圧から第2トランジスタ22のベース−エミッタ間電圧Vbe2を差し引いた電圧であって、例えば1V程度である。
【0022】
エミッタフォロア回路30は、入力電圧の電圧レベルをシフトするための回路であって、トランジスタ31と、トランジスタ32と、電流源33と、電流源34と、を備えている。トランジスタ31は、例えばNPN型トランジスタである。このトランジスタ31のベース端子31bは、第1トランジスタ21のコレクタ端子21cに接続されている。トランジスタ31のコレクタ端子31cは、電源電圧Vccに接続されている。トランジスタ31のエミッタ端子31eは、電流源33の一端に接続されている。この電流源33は、定電流源であって、その他端は接地電位GNDに接続されている。このように、トランジスタ31及び電流源33は、エミッタファロア回路として動作する。
【0023】
トランジスタ32は、例えばNPN型トランジスタである。このトランジスタ32のベース端子32bは、第2トランジスタ22のコレクタ端子22cに接続されている。トランジスタ32のコレクタ端子32cは、電源電圧Vccに接続されている。トランジスタ32のエミッタ端子32eは、電流源34の一端に接続されている。この電流源34は、定電流源であって、その他端は接地電位GNDに接続されている。このように、トランジスタ32及び電流源34は、エミッタファロア回路として動作する。
【0024】
アンプ40は、エミッタフォロア回路30を介してTIA20から出力された電圧信号を増幅する差動増幅器である。アンプ40の入力端子40aはトランジスタ31のエミッタ端子31eに接続されている。アンプ40の入力端子40bはトランジスタ32のエミッタ端子32eに接続されている。アンプ40の出力端子40cは、出力端子10cに接続されている。アンプ40の出力端子40dは、出力端子10dに接続されている。アンプ40は、例えばリミットアンプまたはAGC(Automatic Gain Control)アンプであって、必要な利得及び線形性によって組み合わせて構成することが可能である。なお、エミッタフォロア回路30及びアンプ40は、必要に応じて設けられる。
【0025】
補償回路60は、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとのオフセットを補償するための回路であって、アンプ61と、抵抗器62と、抵抗器63と、コンデンサ64と、コンデンサ65と、第3トランジスタ66と、第4トランジスタ67と、第3電流源68(補償電流源)と、を備えている。アンプ61は、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとを増幅する差動増幅器である。アンプ61の入力端子61aは、出力端子10cに接続されている。アンプ61の入力端子61bは、出力端子10dに接続されている。アンプ61の出力端子61cは、抵抗器62及びコンデンサ64から構成されるローパスフィルタを介して第3トランジスタ66のベース端子66b(第3制御端子)に接続されている。アンプ61の出力端子61dは、抵抗器63及びコンデンサ65から構成されるローパスフィルタを介して第4トランジスタ67のベース端子67b(第4制御端子)に接続されている。
【0026】
抵抗器62の一端はアンプ61の出力端子61cに接続されており、抵抗器62の他端はコンデンサ64の一端及び第3トランジスタ66のベース端子66bに接続されている。この抵抗器62は、例えば10KΩ程度の抵抗値を有している。抵抗器63の一端はアンプ61の出力端子61dに接続されており、抵抗器63の他端はコンデンサ65の一端及び第4トランジスタ67のベース端子67bに接続されている。この抵抗器63は、例えば10KΩ程度の抵抗値を有している。コンデンサ64の他端は接地電位GNDに接続されている。このコンデンサ64は、例えば10pF程度の容量値を有している。コンデンサ65の他端は接地電位GNDに接続されている。このコンデンサ65は、例えば10pF程度の容量値を有している。
【0027】
第3トランジスタ66は、例えばNPN型トランジスタである。この第3トランジスタ66のベース端子66bは、抵抗器62の他端及びコンデンサ64の一端に接続されている。第3トランジスタ66のエミッタ端子66e(一対の第3電流端子の一方)は、第3電流源68の一端に接続されている。第3トランジスタ66のコレクタ端子66c(一対の第3電流端子の他方)は、第1トランジスタ21のコレクタ端子21c及びトランジスタ31のベース端子31bに接続されている。第4トランジスタ67は、例えばNPN型トランジスタである。この第4トランジスタ67のベース端子67bは、抵抗器63の他端及びコンデンサ65の一端に接続されている。第4トランジスタ67のエミッタ端子67e(第4電流端子の一方)は、第3電流源68の一端に接続されている。第4トランジスタ67のコレクタ端子67c(第4電流端子の他方)は、第2トランジスタ22のコレクタ端子22c及びトランジスタ32のベース端子32bに接続されている。第3電流源68は、定電流源であって、その一端は第3トランジスタ66のエミッタ端子66eと第4トランジスタ67のエミッタ端子67eとに接続され、他端は接地電位GNDに接続されている。このように、第3トランジスタ66、第4トランジスタ67及び第3電流源68は、差動増幅回路(差動回路)を成しており、第1負荷電流IL1及び第2負荷電流IL2を分流するための分流回路として動作する。
【0028】
換言すると、増幅器10は、一対の差動電流信号を入力し、一対の差動電圧信号を出力する増幅器であって、TIA20と、補償回路60と、を備えている。TIA20は、差動電流信号を入力して差動電圧信号に変換する一対のトランスインピーダンスアンプを含む。補償回路60は、差動電圧信号のオフセットを補償する。一対のトランスインピーダンスアンプのそれぞれは、抵抗器、トランジスタ及びベース接地電流源で構成されるベース接地回路を含む。抵抗器、トランジスタ及びベース接地電流源は、電源電圧Vccと接地電位GNDとの間で直列接続されている。差動電流信号の一方がベース接地電流源を流れることにより、抵抗器を流れる電流が相対的に減少することにより変化する電圧を差動電圧信号の一方として出力し、補償回路は、差動電圧信号の一方を入力し、一方の差動電圧信号に係る抵抗器に流れる電流を差動電流信号の一方とは逆位相で増減する。また、補償回路60は、差動電圧信号の低周波数成分のみを負帰還する。
【0029】
補償回路60は、一対のトランジスタ(第3トランジスタ66及び第4トランジスタ67)と、一対のトランジスタに共通に接続される第3電流源68と、を有する差動回路を備える。差動回路は、トランスインピーダンスアンプのそれぞれに含まれる抵抗器を負荷抵抗器とし、一対のトランジスタは差動電圧信号を入力し、第3電流源68に係る補償電流を差動電圧信号とは逆位相で負荷抵抗器に流す。
【0030】
次に、増幅器10の動作を説明する。第1PD2は、受光した光信号Pinpの光量に応じた電流値の受光電流Iinpを増幅器10の入力端子10aに出力する。同様に、第2PD3は、受光した光信号Pinnの光量に応じた電流値の受光電流Iinnを増幅器10の入力端子10bに出力する。TIA20では、入力端子10aに入力された受光電流Iinpの電流値と第1トランジスタ21のコレクタ電流Ic1の電流値との和が一定になるので、受光電流Iinpの電流値が大きくなるに従い、コレクタ電流Ic1の電流値が減少する。このとき、トランジスタ31及び電流源33から構成されるエミッタフォロア回路の入力インピーダンスは高いので、第1トランジスタ21のコレクタ電流Ic1の電流値と第3トランジスタ66のコレクタ電流Ic3の電流値との和は第1負荷抵抗器25を流れる第1負荷電流IL1の電流値と略等しくなる。そして、第1負荷抵抗器25によって第1負荷電流IL1の電流値に応じた電圧降下が生じ、第1トランジスタ21のコレクタ電圧Vc1(第1電圧)の電圧値は電源電圧Vccから電圧降下分を差し引いた電圧値となる。すなわち、受光電流Iinpの電流値が大きくなるに従いコレクタ電圧Vc1の電圧値は大きくなり、受光電流Iinpの電流値が小さくなるに従いコレクタ電圧Vc1の電圧値は小さくなる。このように、第1トランジスタ21、第1電流源23及び第1負荷抵抗器25から構成される第1TIAによって、受光電流Iinpはコレクタ電圧Vc1に変換される。同様に、第2トランジスタ22、第2電流源24及び第2負荷抵抗器26から構成される第2TIAによって、受光電流Iinnは第2トランジスタ22のコレクタ電圧Vc2(第2電圧)に変換される。
【0031】
エミッタフォロア回路30では、トランジスタ31のベース端子31bにコレクタ電圧Vc1が入力されると、コレクタ電圧Vc1の電圧値からトランジスタ31のベース−エミッタ間電圧Vbeの電圧値を差し引いた電圧値を有する電圧信号Vopが、トランジスタ31のエミッタ端子31eから出力される。同様に、コレクタ電圧Vc2の電圧値からトランジスタ32のベース−エミッタ間電圧Vbeの電圧値を差し引いた電圧値を有する電圧信号Vonがトランジスタ32のエミッタ端子32eから出力される。そして、電圧信号Vop及び電圧信号Vonはアンプ40によって差動信号として増幅され、出力端子10cから電圧信号Voutpとして出力され、出力端子10dから電圧信号Voutnとして出力される。このとき、電圧信号Vop及び電圧信号Vonの同相雑音は、アンプ40の同相除去比によって除去される。
【0032】
ところで、第1PD2及び第2PD3の受光感度の違いなどに起因して、受光電流Iinpと受光電流Iinnとの間にオフセットが生じる場合がある。このオフセットは、光信号Pinp及び光信号Pinnのパワーに比例して大きくなることが知られている。そして、オフセットを有する受光電流Iinp及び受光電流Iinnが入力された場合、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間にオフセットが生じる。そこで、補償回路60は、TIA20の第1負荷電流IL1の電流値と、第2負荷電流IL2の電流値と、を調整することにより、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットの補償を行う。
【0033】
具体的に説明すると、アンプ61は、電圧信号Voutp及び電圧信号Voutnを差動信号として増幅する。そして、アンプ61によって増幅された差動信号の一方は、抵抗器62及びコンデンサ64を介して低周波数成分の第1オフセット制御信号Vcntpとして出力され、増幅された差動信号の他方は、抵抗器63及びコンデンサ65を介して低周波数成分の第2オフセット制御信号Vcntnとして出力される。第1オフセット制御信号Vcntpは、差動増幅器の一方の第3トランジスタ66のベース端子66bに入力される。また、第2オフセット制御信号Vcntnは、差動増幅器の他方の第4トランジスタ67のベース端子67bに入力される。これにより、第3トランジスタ66のコレクタ電流Ic3の電流値及び第4トランジスタ67のコレクタ電流Ic4の電流値が制御され、第1負荷電流IL1の電流値及び第2負荷電流IL2の電流値が調整される。
【0034】
例えば、受光電流Iinpの電流値が、受光電流Iinpの電流値と受光電流Iinnの電流値の平均電流値Iaveよりも所定のオフセット電流値Ioffだけ大きく、受光電流Iinnの電流値が平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ小さい場合、オフセットがない状態と比較してコレクタ電流Ic1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少し、コレクタ電流Ic2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加する。そして、第1負荷電流IL1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少し、第2負荷電流IL2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加する。その結果、電圧信号Voutpの電圧値が電圧信号Voutnの電圧値よりも大きくなる。
【0035】
このとき、第1オフセット制御信号Vcntpの電圧値は第2オフセット制御信号Vcntnの電圧値よりも大きくなる。この第1オフセット制御信号Vcntpを第3トランジスタ66のベース端子66bに供給し、第2オフセット制御信号Vcntnを第4トランジスタ67のベース端子67bに供給することによって、コレクタ電流Ic3の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加し、コレクタ電流Ic4の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少する。ここで、第1負荷電流IL1の電流値は、第1トランジスタ21のコレクタ電流Ic1の電流値と第3トランジスタ66のコレクタ電流Ic3の電流値との和である。また、第2負荷電流IL2の電流値は、第2トランジスタ22のコレクタ電流Ic2の電流値と第4トランジスタ67のコレクタ電流Ic4の電流値との和である。したがって、コレクタ電流Ic3の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加すると、第1負荷電流IL1の電流値もオフセット電流値Ioffだけ増加する。また、コレクタ電流Ic4の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少すると、第2負荷電流IL2の電流値もオフセット電流値Ioffだけ減少する。
【0036】
このため、第1負荷抵抗器25による電圧降下が大きくなり、第1トランジスタ21のコレクタ電圧Vc1の電圧値が小さくなる。また、第2負荷抵抗器26による電圧降下が小さくなり、第2トランジスタ22のコレクタ電圧Vc2の電圧値が大きくなる。以上のように、受光電流Iinpと受光電流Iinnとの間のオフセットにより生じた第1負荷電流IL1の電流値の変化分及び第2負荷電流IL2の電流値の変化分が、補償回路60によってキャンセルされる。その結果、電圧信号Voutpの電圧値と電圧信号Voutnの電圧値との差が小さくなり、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットが低減される。
【0037】
一方、受光電流Iinpの電流値が、平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ小さく、受光電流Iinnの電流値が平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ大きい場合、オフセットがない状態と比較してコレクタ電流Ic1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加し、コレクタ電流Ic2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少する。そして、第1負荷電流IL1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加し、第2負荷電流IL2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少する。その結果、電圧信号Voutpの電圧値が電圧信号Voutnの電圧値よりも小さくなる。
【0038】
このとき、第1オフセット制御信号Vcntpの電圧値は第2オフセット制御信号Vcntnの電圧値よりも小さくなる。この第1オフセット制御信号Vcntpを第3トランジスタ66のベース端子66bに供給し、第2オフセット制御信号Vcntnを第4トランジスタ67のベース端子67bに供給することによって、コレクタ電流Ic3の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少し、コレクタ電流Ic4の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加する。そして、コレクタ電流Ic3の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少すると、第1負荷電流IL1の電流値もオフセット電流値Ioffだけ減少する。また、コレクタ電流Ic4の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加すると、第2負荷電流IL2の電流値もオフセット電流値Ioffだけ増加する。
【0039】
このため、第1負荷抵抗器25による電圧降下が小さくなり、第1トランジスタ21のコレクタ電圧Vc1の電圧値が大きくなる。また、第2負荷抵抗器26による電圧降下が大きくなり、第2トランジスタ22のコレクタ電圧Vc2の電圧値が小さくなる。以上のように、受光電流Iinpと受光電流Iinnとの間にオフセットにより生じた第1負荷電流IL1の電流値の変化分及び第2負荷電流IL2の電流値の変化分が、補償回路60によってキャンセルされる。その結果、電圧信号Voutpの電圧値と電圧信号Voutnの電圧値との差が小さくなり、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットが低減される。
【0040】
図3の(a)は増幅器10の入力電流及び出力電圧の時間波形を示す図、(b)は増幅器10の入力電位の時間波形を示す図である。
図3の(a)において、横軸は時間[nsec]を示し、縦軸は、波形Aについては、入力電流Iinpの電流値から入力電流Iinnの電流値を差し引いた電流値[mA]を示し、波形Bについては、出力電圧Voutpの電圧値から出力電圧Voutnの電圧値[mV]を差し引いた電圧値を示している。
図3の(b)において、横軸は時間[nsec]を示し、縦軸は入力電位Vinの電圧値[V]を示している。
【0041】
図3の(a)に示されるように、増幅器10では、入力電流Iinpと入力電流Iinnとの間にオフセットを有する差動入力電流が入力されたとしても、出力電圧Voutpと出力電圧Voutnとの間にオフセットがほとんど生じていないことが分かる。また、
図3の(b)に示されるように、増幅器10は、1V程度の入力電位Vinによって動作していることが分かる。
【0042】
以上のように、増幅器10では、補償回路60は、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとに基づいて、第1オフセット制御信号Vcntp及び第2オフセット制御信号Vcntnを出力する。そして、第1オフセット制御信号Vcntpが、差動増幅回路を構成する第3トランジスタ66のベース端子66bに入力され、第2オフセット制御信号Vcntnが、差動増幅回路を構成する第4トランジスタ67のベース端子67bに入力されている。このため、コレクタ電流Ic3の電流値及びコレクタ電流Ic4の電流値を調整することができる。コレクタ電流Ic3は第1負荷電流IL1から分流され、コレクタ電流Ic4は第2負荷電流IL2から分流されているので、コレクタ電流Ic3及びコレクタ電流Ic4の電流値を調整することによって、第1負荷電流IL1及び第2負荷電流IL2の電流値を調整することができ、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットの補償が可能となる。また、第1トランジスタ21及び第2トランジスタ22の電流増幅率は、1程度であるので、コレクタ電流Ic3及びコレクタ電流Ic4の電流値の変化量は、受光電流Iinpと受光電流Iinnとの間のオフセット相当分に対応すればよく、電力消費が節約される。
【0043】
また、第1PD2及び第2PD3に印加される電圧は、電源電圧Vpdから増幅器10の入力電位Vinを差し引いた値となるが、増幅器10の入力電位Vinは1V程度と低いので、第1PD2及び第2PD3のバイアス電圧を十分に確保できる。
【0044】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る増幅器の回路図である。
図4に示されるように、第2実施形態の増幅器10は、第1電流源23及び第2電流源24の電流値を制御することによってオフセット補償を行う構成であって、TIA20及び補償回路60において、上述した第1実施形態の増幅器10と相違している。
【0045】
すなわち、第2実施形態の補償回路60では、アンプ61の出力端子61cは、抵抗器62及びコンデンサ64から構成されるローパスフィルタを介して第1電流源23に接続されている。アンプ61の出力端子61dは、抵抗器63及びコンデンサ65から構成されるローパスフィルタを介して第2電流源24に接続されている。このように、補償回路60は、第3トランジスタ66、第4トランジスタ67及び第3電流源68から構成される差動増幅回路を有していない。
【0046】
また、第2実施形態のTIA20では、第1電流源23及び第2電流源24は定電流源ではなく電圧制御型の可変電流源である。この第1電流源23は、第1オフセット制御信号Vcntpの電圧値に応じた電流値の電流Is1を出力するように制御する。同様に、第2電流源24は、第2オフセット制御信号Vcntnの電圧値に応じた電流値の電流Is2を出力するように制御する。第1電流源23及び第2電流源24は、例えばエミッタ接地のトランジスタによって構成され、そのベース端子に補償回路60から出力されたオフセット制御信号を入力する。
【0047】
換言すると、補償回路60は、差動電圧信号に基づいて第1電流源23及び第2電流源24に係る電流を差動電圧信号と同位相で第1負荷抵抗器25及び第2負荷抵抗器26に流す。
【0048】
次に、第2実施形態の増幅器10の動作を説明する。ここでは、オフセット補償動作を説明し、その他の動作の説明は第1実施形態の増幅器10と同様であるので省略する。第1実施形態と同様に、アンプ40から出力された電圧信号Voutp及び電圧信号Voutnは、アンプ61によって差動信号として増幅される。そして、アンプ61によって増幅された差動信号の一方は、抵抗器62及びコンデンサ64を介して低周波数の第1オフセット制御信号Vcntpとして出力され、増幅された差動信号の他方は、抵抗器63及びコンデンサ65を介して低周波数の第2オフセット制御信号Vcntnとして出力される。第2実施形態では、第1オフセット制御信号Vcntpは、第1電流源23の制御端子に入力される。また、第2オフセット制御信号Vcntnは、第2電流源24の制御端子に入力される。これにより、第1電流源23の電流Is1の電流値及び第2電流源24の電流Is2の電流値が制御され、第1負荷電流IL1の電流値及び第2負荷電流IL2の電流値が調整される。
【0049】
例えば、受光電流Iinpの電流値が、受光電流Iinpの電流値と受光電流Iinnの電流値の平均電流値Iaveよりも所定のオフセット電流値Ioffだけ大きく、受光電流Iinnの電流値が平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ小さい場合、オフセットがない状態と比較してコレクタ電流Ic1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少し、コレクタ電流Ic2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加する。ここで、コレクタ電流Ic1の電流値は第1負荷電流IL1の電流値と略等しく、コレクタ電流Ic2の電流値は第2負荷電流IL2の電流値と略等しい。このため、第1負荷電流IL1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少し、第2負荷電流IL2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加する。その結果、電圧信号Voutpの電圧値が電圧信号Voutnの電圧値よりも大きくなる。
【0050】
このとき、第1オフセット制御信号Vcntpの電圧値は第2オフセット制御信号Vcntnの電圧値よりも大きくなる。この第1オフセット制御信号Vcntpを第1電流源23に供給し、第2オフセット制御信号Vcntnを第2電流源24に供給することによって、電流Is1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加し、電流Is2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少する。ここで、電流Is1の電流値は、受光電流Iinpの電流値と第1負荷電流IL1の電流値との和と略等しい。したがって、電流Is1の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加すると、第1負荷電流IL1の電流値もオフセット電流値Ioffだけ増加する。同様に、電流Is2の電流値は、受光電流Iinnの電流値と第2トランジスタ22の第2負荷電流IL2の電流値との和と略等しい。したがって、電流Is2の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少すると、第2負荷電流IL2の電流値もオフセット電流値Ioffだけ減少する。
【0051】
このため、第1負荷抵抗器25による電圧降下が大きくなり、第1トランジスタ21のコレクタ電圧Vc1の電圧値が小さくなる。また、第2負荷抵抗器26による電圧降下が小さくなり、第2トランジスタ22のコレクタ電圧Vc2の電圧値が大きくなる。以上のように、受光電流Iinpと受光電流Iinnとの間のオフセットにより生じた第1負荷電流IL1の電流値の変化分及び第2負荷電流IL2の電流値の変化分が、補償回路60によってキャンセルされる。その結果、電圧信号Voutpの電圧値と電圧信号Voutnの電圧値との差が小さくなり、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットが低減される。
【0052】
一方、受光電流Iinpの電流値が、平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ小さく、受光電流Iinnの電流値が平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ大きい場合、オフセットがない状態と比較してコレクタ電流Ic1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加し、コレクタ電流Ic2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少する。そして、第1負荷電流IL1の電流値はオフセット電流値Ioffだけ増加し、第2負荷電流IL2の電流値はオフセット電流値Ioffだけ減少する。その結果、電圧信号Voutpの電圧値が電圧信号Voutnの電圧値よりも小さくなる。
【0053】
このとき、第1オフセット制御信号Vcntpの電圧値は第2オフセット制御信号Vcntnの電圧値よりも小さくなる。この第1オフセット制御信号Vcntpを第1電流源23に供給し、第2オフセット制御信号Vcntnを第2電流源24に供給することによって、電流Is1の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少し、電流Is2の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加する。そして、第1負荷電流IL1の電流値がオフセット電流値Ioffだけ減少し、第2負荷電流IL2の電流値がオフセット電流値Ioffだけ増加する。このため、第1負荷抵抗器25による電圧降下が小さくなり、第1トランジスタ21のコレクタ電圧Vc1の電圧値が大きくなる。また、第2負荷抵抗器26による電圧降下が大きくなり、第2トランジスタ22のコレクタ電圧Vc2の電圧値が小さくなる。以上のように、受光電流Iinpと受光電流Iinnとの間のオフセットにより生じた第1負荷電流IL1の電流値の変化分及び第2負荷電流IL2の電流値の変化分が、補償回路60によってキャンセルされる。その結果、電圧信号Voutpの電圧値と電圧信号Voutnの電圧値との差が小さくなり、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットが低減される。
【0054】
以上の第2実施形態の増幅器10によっても、上述した第1実施形態の増幅器10と同様の効果が奏される。また、第2実施形態の増幅器10では、第1電流源23及び第2電流源24が可変電流源であり、第1電流源23に第1オフセット制御信号Vcntpが入力され、第2電流源24に第2オフセット制御信号Vcntnが入力されている。このように、第1電流源23の電流Is1の電流値及び第2電流源24の電流Is2の電流値を制御することによって、第1負荷電流IL1及び第2負荷電流IL2の電流値を制御することができ、電圧信号Voutpと電圧信号Voutnとの間のオフセットの補償が可能となる。
【0055】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る増幅器の回路図である。
図5に示されるように、第3実施形態の増幅器10は、第1トランジスタ21及び第2トランジスタ22のベース電位を制御することによってオフセット補償を行う構成であって、TIA20及び補償回路60において、上述した第1実施形態の増幅器10と相違している。
【0056】
すなわち、第3実施形態の補償回路60では、アンプ61の出力端子61cは、抵抗器62及びコンデンサ64から構成されるローパスフィルタを介して第1トランジスタ21のベース端子21bに接続されている。アンプ61の出力端子61dは、抵抗器63及びコンデンサ65から構成されるローパスフィルタを介して第2トランジスタ22のベース端子22bに接続されている。このように、補償回路60は、第3トランジスタ66、第4トランジスタ67及び第3電流源68から構成される差動増幅回路を有していない。
【0057】
また、第3実施形態のTIA20では、第1電流源23及び第2電流源24は抵抗器である。この抵抗器の抵抗値は、例えば500Ω程度である。
【0058】
換言すると、補償回路60は、差動電圧信号をベース接地回路の第1トランジスタ21のベース端子21b及び第2トランジスタ22のベース端子22bに帰還する。
【0059】
次に、第3実施形態の増幅器10の動作を説明する。ここでは、オフセット補償動作を説明し、その他の動作の説明は第1実施形態の増幅器10と同様であるので省略する。第1実施形態と同様に、アンプ40から出力された電圧信号Voutp及び電圧信号Voutnは、アンプ61によって差動信号として増幅される。そして、アンプ61によって増幅された差動信号の一方は、抵抗器62及びコンデンサ64を介して低周波数の第1オフセット制御信号Vcntpとして出力され、増幅された差動信号の他方は、抵抗器63及びコンデンサ65を介して低周波数の第2オフセット制御信号Vcntnとして出力される。第3実施形態では、第1オフセット制御信号Vcntpは、第1バイアス信号Vbiasとして第1トランジスタ21のベース端子21bに入力される。また、第2オフセット制御信号Vcntnは、第2バイアス信号Vbiasとして第2トランジスタ22のベース端子22bに入力される。これにより、第1トランジスタ21のコレクタ電流Ic1の電流値及び第2トランジスタ22のコレクタ電流Ic2の電流値が制御され、第1負荷電流IL1の電流値及び第2負荷電流IL2の電流値が調整される。
【0060】
例えば、受光電流Iinpの電流値が、受光電流Iinpの電流値と受光電流Iinnの電流値の平均電流値Iaveよりも所定のオフセット電流値Ioffだけ大きく、受光電流Iinnの電流値が平均電流値Iaveよりもオフセット電流値Ioffだけ小さい場合、第1トランジスタ21のエミッタ電位は上昇し、第2トランジスタ22のエミッタ電位は降下する。すなわち、第1トランジスタ21のベース−エミッタ間のバイアス電圧が減少し第1トランジスタ21の等価抵抗値が大きくなる。一方、第2トランジスタ22のベース−エミッタ間のバイアス電圧が上昇し第2トランジスタ22の等価抵抗値は小さくなる。
【0061】
このとき、第1トランジスタ21の等価抵抗値が上昇することにより、第1負荷抵抗器25と第1トランジスタ21の等価抵抗とで形成される抵抗分割回路の中間ノードの電位Vc1は上昇する。一方、第2負荷抵抗器26と第2トランジスタ22の等価抵抗とで形成される抵抗分割回路の中間ノードの電位Vc2は降下する。補償回路60はこの二つのノードの電位Vc1,Vc2の上昇及び降下を増幅し、同位相で第1トランジスタ21のベース端子21bに制御信号Vcntpとして帰還し、第2トランジスタ22のベース端子22bにVcntnとして帰還する。すなわち、電位Vc1の上昇は制御信号Vcntpの上昇に現れ、電位Vc2の降下は制御信号Vcntnの降下に現れる。
【0062】
第1トランジスタ21への制御信号Vcntpが上昇すると、この第1トランジスタ21のベース−エミッタ間のバイアス電圧が上昇し、第1トランジスタ21の等価抵抗値を減少させる方向に作用する。逆に、第2トランジスタ22の制御信号Vcntnが降下すると、この第2トランジスタ22のベース−エミッタ間のバイアス電圧が降下し、第2トランジスタ22の等価抵抗値を増加させる方向に作用する。その結果、電位Vc1が降下し、電位Vc2は逆に上昇する。すなわち、補償回路60による帰還作用により、ノードVc1,Vc2の間に生じたオフセット電圧を補償することができる。
【0063】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態に係る増幅器の回路図である。
図6に示されるように、第4実施形態の増幅器10は、上述した第1実施形態の増幅器10に振幅調整を行う構成が追加された増幅器であって、振幅調整回路70をさらに備える点、及び、TIA20が第5トランジスタ27及び第6トランジスタ28をさらに備える点において、上述した第1実施形態の増幅器10と相違している。
【0064】
振幅調整回路70は、電圧信号Voutpの振幅及び電圧信号Voutnの振幅を調整するための回路であって、第1ピークホールド回路71と、第2ピークホールド回路72と、平均値検出器73と、差動アンプ74(第1差動アンプ)と、差動アンプ75(第3差動アンプ)と、を備えている。第1ピークホールド回路71及び第2ピークホールド回路72は、入力信号のピーク値を検出し、これを保持する回路である。第1ピークホールド回路71の入力端子はトランジスタ31のエミッタ端子31eに接続され、出力端子は差動アンプ74の非反転入力端子に接続されている。第2ピークホールド回路72の入力端子はトランジスタ32のエミッタ端子32eに接続され、出力端子は差動アンプ75の非反転入力端子に接続されている。平均値検出器73は、2つの入力信号の平均電圧値を検出する回路であって、一方の入力端子はトランジスタ31のエミッタ端子31eに接続され、他方の入力端子はトランジスタ32のエミッタ端子32eに接続され、出力端子は差動アンプ74の反転入力端子及び差動アンプ75の反転入力端子に接続されている。
【0065】
第5トランジスタ27は、例えばNPN型トランジスタである。この第5トランジスタ27のベース端子27b(第5制御端子)は、差動アンプ74の出力端子に接続されている。第5トランジスタ27のコレクタ端子27c(一対の第5電流端子の他方)は、電源電圧Vccに接続されている。第5トランジスタ27のエミッタ端子27e(一対の第5電流端子の一方)は、第1トランジスタ21のエミッタ端子21eとともに、入力端子10a及び第1電流源23の一端に接続されている。第6トランジスタ28は、例えばNPN型トランジスタである。この第6トランジスタ28のベース端子28b(第6制御端子)は、差動アンプ75の出力端子に接続されている。第6トランジスタ28のコレクタ端子28c(一対の第6電流端子の他方)は、電源電圧Vccに接続されている。第6トランジスタ28のエミッタ端子28e(一対の第6電流端子の一方)は、第2トランジスタ22のエミッタ端子22eとともに、入力端子10b及び第2電流源24の一端に接続されている。
【0066】
換言すると、ベース接地回路のそれぞれは、電流源に係る電流を前記直列回路からバイパスする他のトランジスタを備える。増幅器10は、差動電圧信号の一方のピーク値を検出し保持する第1ピークホールド回路71と、差動電圧信号の他方のピーク値を検出し保持する第2ピークホールド回路72と、差動電圧信号の一方と差動電圧信号の他方との平均値を検出する平均値検出器73と、一方のピーク値と平均値の差、及び他方のピーク値と平均値との差に基づきそれぞれの他のトランジスタに流れる電流を調整し、それぞれの直列回路を流れる電流をバイパスする振幅調整回路と、をさらに備える。
【0067】
次に、第4実施形態の増幅器10の動作を説明する。ここでは、振幅調整動作を説明し、その他の動作の説明は第1実施形態の増幅器10と同様であるので省略する。トランジスタ31のエミッタ端子31eから出力された電圧信号Vopは、第1ピークホールド回路71に入力され、電圧信号Vopのピーク値である第1振幅Vopaが検出され、保持される。トランジスタ32のエミッタ端子32eから出力された電圧信号Vonは、第2ピークホールド回路72に入力され、電圧信号Vonのピーク値である第2振幅Vonaが検出され、保持される。また、電圧信号Vop及び電圧信号Vonは、平均値検出器73に入力され、電圧信号Vopの第1振幅Vopa及び電圧信号Vonの第2振幅Vonaの平均値Vaveが検出される。
【0068】
そして、差動アンプ74において、第1振幅Vopaと平均値Vaveとの差、すなわち電圧信号Vopの振幅が検出される。また、差動アンプ75において、第2振幅Vonaと平均値Vaveとの差、すなわち電圧信号Vonの振幅が検出される。そして、差動アンプ74によって検出された信号は、第1振幅調整信号Vadjpとして第5トランジスタ27のベース端子27bに出力され、差動アンプ75によって検出された信号は、第2振幅調整信号Vadjnとして第6トランジスタ28のベース端子28bに出力される。すなわち、差動アンプ74は、第1振幅調整信号出力回路として動作し、差動アンプ75は、第2振幅調整信号出力回路として動作する。
【0069】
電圧信号Vopのピーク値を包絡した信号、すなわち、電圧信号Vopを整流した信号Vopaは電圧信号VopのDC成分及びAC成分のいずれをも含んでいる。このAC成分のみを取り出すために、差動アンプ74において、信号Vopaと平均値検出器73の出力Vaveとの差が演算され、差動アンプ74の出力である第1振幅調整信号Vadjpは、電圧信号Vopの振幅に対応したものとなる。同様に差動アンプ75の出力である第2振幅調整信号Vadjnは、電圧信号Vonの振幅に対応したものとなる。例えば、電圧信号Vopの出力が大きくなり第1振幅調整信号Vadjpが上昇すると、第5トランジスタ27のベース電位が上昇し、この第5トランジスタ27に流れる電流が増加する。そうすると、第1トランジスタ21に流れる電流が相対的に減少し、第1負荷抵抗器25における電位降下が減少する。
【0070】
すなわち、電圧信号Vopの電位が上昇すると同時にそのAC信号の振幅も減少する。ここで、電圧信号Vopの電位上昇は、補償回路60により相殺されるので、そのAC信号の振幅だけが減少することになる。したがって、出力振幅の調整が実現される。他方の電圧信号Vonについても、その第2振幅調整信号Vadjnが第6トランジスタ28のベース端子28bに帰還されるので、その振幅を補償することが可能となる。差動信号である電圧信号Vop及び電圧信号Vonにおいてその振幅の調整は二つの信号の平均値を基準とするので、その結果、電圧信号Vopの振幅及び電圧信号Vonの振幅は一致する。
【0071】
以上の第4実施形態の増幅器10によっても、上述した第1実施形態の増幅器10と同様の効果が奏される。また、第4実施形態の増幅器10は、振幅調整回路70を備えている。このため、受光電流Iinp及び受光電流Iinnがアンバランスであったとしても、振幅調整回路70によって電圧信号Vopの第1振幅Vopa及び電圧信号Vonの第2振幅Vonaが調整され、電圧信号Voutpの振幅及び電圧信号Voutnの振幅の差を低減することが可能となる。
【0072】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態に係る増幅器の回路図である。
図7に示されるように、第5実施形態の増幅器10は、上述した第2実施形態の増幅器10に振幅調整を行う構成が追加された増幅器であって、振幅調整回路70Aをさらに備える点、及び、TIA20が第5トランジスタ27及び第6トランジスタ28をさらに備える点において、上述した第2実施形態の増幅器10と相違している。
【0073】
さらに、第5実施形態に係る振幅調整回路70Aは、二つの差動増幅器76,77を備えている。差動増幅器76は差動増幅器74の出力を受け、この出力と参照信号Vrefとの差を第1振幅調整信号Vadjpとして第5トランジスタ27のベース端子27bに提供する。差動増幅器77は差動増幅器75の出力を受け、この出力と参照信号Vrefとの差を第2振幅調整信号Vadjnとして第6トランジスタ28のベース端子28bに提供する。振幅調整回路70Aにおいては、差動増幅器74,75の出力、すなわち、電圧信号Vop,Vonの振幅を、参照信号Vrefを基準として調整する。電圧信号Vop、Vonの振幅を、参照信号Vrefに対応する振幅に維持するようにこの振幅調整回路70Aは動作する。
【0074】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態に係る増幅器の回路図である。
図8に示されるように、第6実施形態の増幅器10は、上述した第3実施形態の増幅器10に振幅調整を行う構成が追加された増幅器であって、振幅調整回路70をさらに備える点、及び、TIA20が第5トランジスタ27及び第6トランジスタ28をさらに備える点において、上述した第3実施形態の増幅器10と相違している。なお、第6実施形態の増幅器10の動作は、第3実施形態の増幅器10の動作に、第4実施形態の増幅器10の振幅調整動作を追加したものであるので、その説明を省略する。
【0075】
以上の第6実施形態の増幅器10によっても、上述した第3実施形態の増幅器10と同様の効果が奏される。さらに、第6実施形態の増幅器10は、第4実施形態の増幅器10と同様に、振幅調整回路70を備えている。このため、第6実施形態の増幅器10においても、上述した第4実施形態の振幅調整回路70と同様の効果が奏される。
【0076】
なお、本発明に係る増幅器は上記実施形態に記載したものに限定されない。例えば、第1トランジスタ21、第2トランジスタ22、トランジスタ31、トランジスタ32、第3トランジスタ66、第4トランジスタ67、第5トランジスタ27及び第6トランジスタ28は、バイポーラトランジスタの他、MOSトランジスタなどを用いてもよい。
【0077】
また、第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態及び第5実施形態において、第1トランジスタ21のベース端子21b及び第2トランジスタ22のベース端子22bに、バイアス信号Vbiasが供給されているが、第1トランジスタ21のベース端子21bに第1バイアス信号が供給され、第2トランジスタ22のベース端子22bに第2バイアス信号が供給されてもよい。