(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記階調パターンが形成されてから読み取られるまでの経過時間により、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する、
請求項1に記載の画像形成システム。
前記制御部は、前記画像形成部により、前記階調パターンとともに、キャリブレーションが有効か又は無効かを示すマークを形成させ、前記読取部により当該階調パターンとともに読み取られたマークに基づいて、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する、
請求項1に記載の画像形成システム。
前記制御部は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値と、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値との差が、閾値以上である場合、前記画像形成部の安定化制御を実行した後、前記キャリブレーションが無効なときの階調パターンを再度形成させて得られた測定値を用いて、キャリブレーションを実施する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の画像形成システム。
前記制御部は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値と、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値との差に応じて、今回の測定値に過去の測定値をマージし、キャリブレーションを実施する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の画像形成システム。
前記制御部は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値と、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値との差に応じて、キャリブレーションを実施する間隔を調整する、
請求項1〜5の何れか一項に記載の画像形成システム。
前記制御部は、前記レポートの電子データを作成し、外部のサーバーへ送信するか、前記画像形成部により前記レポートの画像を用紙上に形成させるか、又はその両方を実行する、
請求項1〜8の何れか一項に記載の画像形成システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャリブレーションは、稼働率が低い時間帯に実施されることが多いが、1つのジョブにおいて画像の階調特性を安定させるため、ジョブの実行中に実施されることもある。何れの場合も、キャリブレーションは水面下で実施され、ユーザーに対し、キャリブレーションの実施状況を知らせることはほとんど無い。用紙上に形成された画像から、ユーザーがキャリブレーションの効果や実施状況を判断することは難しく、ユーザーはキャリブレーションの有効性を把握する機会がほとんど無かった。
【0006】
本発明の課題は、キャリブレーションの有効性を示すレポートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、
階調補正テーブルを用いて、画像データの階調を補正する階調補正部と、
画像データに基づき、用紙上に画像を形成する画像形成部と、
一定間隔毎にキャリブレーションを実施して前記階調補正テーブルを更新し、各キャリブレーションの実施前に前記補正を無効に切り替えて、キャリブレーションが無効なときの階調パターンを前記画像形成部により形成させ、各キャリブレーションの実施後に前記補正を有効に切り替えて、キャリブレーションが有効なときの階調パターンを前記画像形成部により形成させる制御部と、
用紙上に形成された前記階調パターンを読み取る読取部と、を備え、
前記制御部は、
読み取られた前記階調パターンの濃度の測定値を取得して、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断し、
キャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値を用いて、各キャリブレーションを実施し、
キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの各階調パターンの測定値を用いて、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性をそれぞれ示すレポートを作成する、
画像形成システムが提供される。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記階調パターンが形成されてから読み取られるまでの経過時間により、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する、
請求項1に記載の画像形成システムが提供される。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記画像形成部により、前記階調パターンとともに、キャリブレーションが有効か又は無効かを示すマークを形成させ、前記読取部により当該階調パターンとともに読み取られたマークに基づいて、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する、
請求項1に記載の画像形成システムが提供される。
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、
前記制御部は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値と、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値との差が、閾値以上である場合、前記画像形成部の安定化制御を実行した後、前記キャリブレーションが無効なときの階調パターンを再度形成させて得られた測定値を用いて、キャリブレーションを実施する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の画像形成システムが提供される。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、
前記制御部は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値と、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値との差に応じて、今回の測定値に過去の測定値をマージし、キャリブレーションを実施する、
請求項1〜
3の何れか一項に記載の画像形成システムが提供される。
【0012】
請求項6に記載の発明によれば、
前記制御部は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値と、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値との差に応じて、キャリブレーションを実施する間隔を調整する、
請求項1〜5の何れか一項に記載の画像形成システムが提供される。
【0013】
請求項7に記載の発明によれば、
前記制御部は、各階調パターンの測定値を統計し、前記階調特性とともに統計結果を示すレポートを作成する、
請求項1〜6の何れか一項に記載の画像形成システムが提供される。
【0014】
請求項8に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記階調特性又は前記統計結果を図示したレポートを作成する、
請求項7に記載の画像形成システムが提供される。
【0015】
請求項9に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記レポートの電子データを作成し、外部のサーバーへ送信するか、前記画像形成部により前記レポートの画像を用紙上に形成させるか、又はその両方を実行する、
請求項1〜8の何れか一項に記載の画像形成システムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性を分離してレポートに示すことができる。ユーザーは、各階調特性を比較することができ、キャリブレーションの有効性及び階調特性の安定性を把握することができる。従って、キャリブレーションの有効性を示すレポートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の画像形成システムの実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る画像形成システムGの概略構成図を示す。
図1に示すように、画像形成システムGは、コントローラーg1、給紙ユニットg2、本体ユニットg3、読取部g4、後処理装置g5を備えて構成されている。
【0020】
コントローラーg1は、ネットワーク上のコンピューター端末からPDL(Page Description Language)データを受信し、当該PDLデータをラスタライズ処理してビットマップ形式の画像データを生成する。コントローラーg1は、C(シアン)、M(マジェンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の色毎に画像データを生成し、本体ユニットg3に出力する。
【0021】
給紙ユニットg2は、大容量の給紙トレイを複数備え、当該給紙トレイに収容された用紙を本体ユニットg3に搬送する。
【0022】
本体ユニットg3は、操作部3、表示部4、スキャナー6、画像形成部8等を備えている。本体ユニットg3は、スキャナー6により原稿を読み取って画像データを得るか、又はコントローラーg1から画像データを得て、当該画像データに基づき、画像形成部8により用紙上に画像を形成する。
【0023】
画像形成部8は、
図1に示すように、C、M、Y、Kの色毎に、露光部81、感光体82及び現像部83を、4セット備えている。また、画像形成部8は、中間転写ベルト84、2次転写ローラー85、定着装置86、反転機構87及び複数の給紙トレイ88を備えている。各色の感光体82は、中間転写ベルト84の回動方向に沿って並列に配置され、2次転写ローラー85及び定着装置86は、用紙Tの搬送経路上に設けられている。
【0024】
露光部81は、帯電し、回転する感光体82上を光走査して露光する。現像部83は、露光により感光体82上に形成された静電潜像を、トナーで現像する。このようにして4つの感光体82上に形成された各色の画像は、中間転写ベルト84上に重ねて転写され、カラー画像が形成される。カラー画像は、2次転写ローラー85により、給紙トレイ88又は給紙ユニットg2から給紙された用紙上に転写される。定着装置86は当該用紙を定着処理する。用紙の両面に画像を形成する場合、画像形成部8は、反転機構87により用紙の表裏を反転させ、もう一方の片面に画像を形成して、定着処理する。画像形成部8は、定着処理後の用紙を読取部g4に搬送する。
【0025】
読取部g4は、本体ユニットg3から搬送された用紙を後処理装置g5に搬送する。読取部g4は、本体ユニットg3の指示に従って、搬送中の用紙上の画像を読み取り、濃度を測定する。
読取部g4は、
図1に示すように、光源41、ミラー群42、レンズ43、CCD(Charge Coupled Device)44、駆動部45を備えて構成されている。
読取部g4は、光源41により用紙上を光走査し、その反射光をミラー群42によりレンズ43に導く。レンズ43は光を結像し、CCD44は駆動部45により駆動されて、結像された光を光電変換する。読取部g4は、この光電変換により得られた信号値を、濃度の測定値として本体ユニットg3に出力する。
【0026】
後処理装置g5は、読取部g4から搬送された用紙を後処理して排紙する。後処理としては、例えばステイプル処理、パンチ穴開け処理、折り処理、製本処理が挙げられる。後処理は必ず実行される処理ではなく、後処理装置g5は、本体ユニットg3から指示された場合のみ実行する。後処理が無い場合、後処理装置g5は搬送された用紙をそのまま排紙する。
【0027】
図2は、本体ユニットg3の機能ブロック図を示している。
図2に示すように、本体ユニットg3は、制御部1、記憶部2、操作部3、表示部4、通信部5、スキャナー6、画像処理装置7、画像形成部8を備えて構成されている。
【0028】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えている。制御部1は、記憶部2に記憶されているプログラムを読み出し、当該プログラムに従って画像形成システムGの各部を制御する。
例えば、制御部1は、ジョブの設定に従い、画像処理装置7により画像データを補正及び画像処理させて、画像形成部8により画像を形成させる。ジョブの設定に後処理の設定が含まれる場合、制御部1は後処理装置g5に指示して後処理させる。
【0029】
制御部1は、一定間隔毎にキャリブレーションを実施する。キャリブレーションは、階調パターンを形成し、当該階調パターンの濃度の測定値を得て、階調の補正に用いられる階調補正テーブルを更新する処理である。
【0030】
制御部1は、各キャリブレーションの実施前に階調の補正を無効に切り替えて、キャリブレーションが無効なときの階調パターンを画像形成部8により形成させる。また、制御部1は、各キャリブレーションの実施後に階調の補正を有効に切り替えて、キャリブレーションが有効なときの階調パターンを画像形成部8により形成させる。
制御部1は、読取部g4により読み取られた階調パターンの濃度の測定値を取得して、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する。
制御部1は、キャリブレーションが無効なときと判断された階調パターンの測定値により、各キャリブレーションを実施する。
また、制御部1は、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの各階調パターンの測定値を用いて、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性をそれぞれ示すレポートを作成する。
【0031】
記憶部2は、制御部1が読み取り可能なプログラム、ファイル等を記憶している。記憶部2としては、例えばハードディスク、ROM(Read Only Memory)等の記憶媒体を用いることができる。
記憶部2は、階調パターンを記憶している。また、記憶部2は、階調パターンの濃度の測定値を、キャリブレーションが有効か又は無効かにより分類して記憶する。
【0032】
操作部3は、操作キーや表示部4と一体に構成されたタッチパネル等を備え、これらの操作に応じた操作信号を制御部1に出力する。
表示部4は、制御部1の指示に従って操作画面等を表示する。
通信部5は、制御部1からの指示に従い、ネットワーク上のコンピューターと通信する。
【0033】
スキャナー6は、原稿の画像を読み取って、R(赤)、G(緑)、B(青)の色毎の画像データを生成し、画像処理装置7に出力する。
【0034】
画像処理装置7は、スキャナー6又はコントローラーg1から入力された画像データを補正し、画像処理を施して、画像形成部8に出力する。
画像処理装置7は、
図2に示すように、色変換部71、階調補正部72、中間調処理部73を備えている。
【0035】
色変換部71は、スキャナー6から入力されたR、G、Bの画像データを色変換処理し、C、M、Y、Kの画像データを出力する。色変換部71は、色補正のため、コントローラーg1から入力されたC、M、Y、Kの画像データを色変換処理し、C、M、Y、Kの画像データを出力することもできる。
【0036】
階調補正部72は、階調補正テーブルを用いて、色変換部71又はコントローラーg1から入力された画像データの階調を補正する。
階調補正テーブルは、画像の階調特性が目標の階調特性に一致するように、各階調値に対応する補正値が定められたLUT(Look Up Table)である。階調補正部72は、階調補正テーブルから、画像データの各画素の階調値に対応する補正値を得て、補正値からなる画像データを出力する。階調補正テーブルは、全階調値ではなく、代表値に対する補正値が定められたLUTであることもできる。階調補正部72は、複数の代表値間の階調値に対する補正値を、各代表値に対応する補正値を補間することにより得ることができる。
【0037】
階調補正部72は、制御部1により補正が有効に切り替えられた場合、階調の補正を行う。制御部1により補正が無効に切り替えられた場合、階調補正部72は、入力された画像データの階調を補正せずに、中間調処理部73に出力する。
【0038】
中間調処理部73は、階調補正部72から入力された画像データを中間調処理する。中間調処理は、例えばスクリーン処理、誤差拡散処理等である。
【0039】
画像形成部8は、画像処理装置7から入力された画像データに基づき、用紙上に画像を形成する。画像形成部8の詳細は上述したとおりであるので、省略する。
【0040】
図3を参照して、上記画像形成システムGが、ジョブの実行中にキャリブレーションを実施し、レポートを作成するときの処理手順を説明する。
はじめに、
図3に示すように、本体ユニットg3の制御部1が、キャリブレーションを実施する(ステップS11)。
図4は、制御部1がキャリブレーションを実施するときの処理手順を示している。
図4に示すように、制御部1は、階調補正部72による補正を無効に切り替え、キャリブレーションが無効なときの階調パターンを、画像形成部8により形成させる(ステップS21)。すなわち、キャリブレーションが無効なときの階調パターンは、キャリブレーションにより更新された階調補正テーブルが適用されず、階調も補正されていない。
【0041】
階調パターンは、C、M、Y、Kの色毎に、階調を段階的に異ならせた画像である。
制御部1は、
図5(a)に示すように、C、M、Y、Kの各色の階調パターンPy、Pm、Pc、Pkを、異なる用紙に形成させることができるし、
図5(b)に示すように、同じ用紙に形成することもできる。同じ用紙に形成することにより、ヤレ紙の枚数を減らすことができる。
【0042】
制御部1は、
図6(a)に示すように、非画像領域r1に各階調パターンPy、Pm、Pc、Pkを形成させ、画像領域r2にジョブの画像を形成させることもできる。非画像領域r1は、裁断代として設けられた領域である。各階調パターンPy、Pm、Pc、Pkを形成するためにジョブを中断する必要が無く、生産性が良い。ヤレ紙も無く、低コストである。
図6(a)は、異なる用紙の非画像領域r1を用いた例を示しているが、
図6(b)に示すように、制御部1は、同じ用紙の非画像領域r1に各色の階調パターンPy、Pm、Pc、Pkを形成させてもよい。
【0043】
制御部1は、用紙上に形成された階調パターンを読取部g4により読み取らせて、濃度の測定値を取得する(ステップS22)。キャリブレーションの実施後にキャリブレーションが有効なときの階調パターンも形成されるため、制御部1は読み取られた階調パターンがキャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する。制御部1は、測定値をキャリブレーションの有効又は無効により分類して記憶部2に保存する(ステップS23)。
【0044】
制御部1は、階調パターンが形成されてから読み取られるまでの経過時間により、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断することができる。
画像の形成から読み取りまでに要する時間は、用紙のサイズによって一定である。よって、制御部1は、キャリブレーションが無効なときの階調パターンを形成させてから、一定時間後に読み取られた階調パターンが、キャリブレーションが無効なときの階調パターンであると判断することができる。制御部1は、当該階調パターンから取得した測定値を、キャリブレーションが無効に分類して記憶部2に保存する。
【0045】
制御部1は、画像形成部8により、階調パターンとともに、キャリブレーションが有効か又は無効かを示すマークを形成させ、読取部g4により階調パターンとともに読み取られたマークに基づいて、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断することもできる。マークの形成により、ユーザーも、用紙上の階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを把握することができ、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの濃度を確認することができる。
【0046】
制御部1は、キャリブレーションが有効か又は無効かにより異なるマークを形成させることができる。例えば、
図7(a)に示すように無効を示すマークm1が黒い丸であり、
図7(b)に示すように有効を示すマークm2が白い三角であることができる。
また、制御部1は、有効又は無効のいずれかの場合のみマークを形成させることもできる。例えば、制御部1は、キャリブレーションが無効のとき、
図7(a)に示すマークm1を形成し、有効のときはマークm1を形成しない。制御部1は、階調パターンとともに読み取られたマークm1が有れば、キャリブレーションが無効なときの階調パターンと判断し、当該マークm1が無ければ、キャリブレーションが有効なときの階調パターンと判断することができる。
【0047】
また、制御部1は、キャリブレーションが有効か又は無効かによって、階調パターンを形成する位置を異ならせ、読み取られた階調パターンの位置によって、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断することもできる。
例えば、
図8に示すように、制御部1は、用紙の左側の非画像領域r1に、キャリブレーションが無効なときの階調パターンPy、Pm、Pc、Pkを形成させ、用紙の右側の非画像領域r1に、キャリブレーションが有効なときの階調パターンPy、Pm、Pc、Pkを形成させる。制御部1は、左側の非画像領域r1から読み取られた階調パターンはキャリブレーションが無効なときの階調パターンであり、右側の非画像領域r1から読み取られた階調パターンはキャリブレーションが有効なときの階調パターンと判断することができる。
【0048】
次に、制御部1は、キャリブレーションが無効に分類された測定値を用いて、階調補正テーブルを更新する(ステップS24)。
図9は、制御部1が階調補正テーブルを更新するときの処理手順を示している。
図9に示すように、制御部1は、今回のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値を記憶部2から取得する(ステップS31)。また、制御部1は、過去のキャリブレーションの実施前に形成されたキャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値を記憶部2から取得する(ステップS32)。制御部1は、過去の測定値として、前回の測定値を取得してもよいし、基準として設定した回の測定値を取得してもよい。
【0049】
制御部1は、今回の測定値と過去の測定値の差を、第1閾値及び第2閾値(第1閾値>第2閾値)のそれぞれと比較する。
今回の測定値と過去の測定値の差が、第1閾値未満であり、かつ第2閾値未満である場合(ステップS33;N、S35;N)、制御部1は、今回の測定値を用いて階調補正テーブルを新たに作成する(ステップS37)。
【0050】
具体的には、制御部1は、
図10に示すように、階調パターンの各階調の階調値を入力階調(%)とし、濃度の測定値を出力濃度として、キャリブレーションの実施前の階調特性h11を決定する。制御部1は、目標の階調特性h2に対して階調特性h11の逆特性を得る。
図11(a)は、測定値を階調値に変換して出力階調(%)としたときの逆特性h3を示している。制御部1は、逆特性h3をテーブル化し、
図11(b)に例示するような階調補正テーブルを得る。
【0051】
制御部1は、階調補正部72の階調補正テーブルを、新たに作成された階調補正テーブルに更新する(ステップS38)。更新された階調補正テーブルを用いて、階調パターンの階調を補正すると、キャリブレーションの実施後の階調特性として、
図12に示すように、目標の階調特性h2とほぼ一致する階調特性h12を得ることができる。
【0052】
一方、今回の測定値と過去の測定値の差が第1閾値以上である場合(ステップS33;Y)、制御部1は画像形成部8の安定化制御を実行する(ステップS34)。
測定値の変動が非常に大きいと、画像データの補正によって適正な階調特性とすることができず、画像形成部8の安定化制御が必要となる。この安定化制御が必要となるときの測定値の変動量が、第1閾値として設定されている。
【0053】
例えば、キャリブレーションを実施して更新された階調補正テーブルにより階調が補正され、形成された階調パターンの階調特性が、
図13に示す階調特性h13となる場合がある。本来、入力階調が100%である最大階調については、Dmaxの出力濃度であるべきところ、階調特性h13は、階調が補正されているにもかかわらず、出力濃度がDmaxを超えている。このような最大階調の変動は、補正によって対応できないため、安定化制御を実行し、プロセス自体を再調整する必要がある。
制御部1は、C、M、Y又はKのいずれか1色でも、差が第1閾値以上となるのであれば、安定化制御を実行する。
【0054】
安定化制御時、制御部1は画像形成部8により安定化制御用のパッチを形成させる。制御部1は、当該パッチの濃度の測定値に応じて、露光部81のレーザーパワー、感光体82の帯電電圧、現像部83のバイアス電圧等の設定を調整する。上述したような最大階調のずれがある場合、制御部1は、最大階調のパッチに対してDmaxの濃度値が得られるように設定を調整する。その他の安定化制御としては、感光体82の表面電位のムラや面積階調の調整等が挙げられる。
安定化制御を実行すると、画像の階調特性も変動するため、
図4のステップS21に戻り、制御部1は階調パターンの形成からやり直す。
【0055】
今回の測定値と過去の測定値の差が、第1閾値未満であるが(ステップS33;N)、第2閾値以上である場合(ステップS35;Y)、制御部1は今回の測定値に過去の測定値をマージする(ステップS36)。制御部1は、マージ後の測定値を用いて階調補正テーブルを新たに作成し(ステップS37)、階調補正テーブルの更新を行う(ステップS38)。マージにより、測定値の急激な変動を抑えてキャリブレーションの実施の前後における階調特性の変動を緩和することができる。第2閾値は、適宜設定することができる。
【0056】
制御部1は、マージの割合を適宜決定することができる。例えば、制御部1は、今回の測定値と過去の測定値の差に応じて、差が大きいほど過去の測定値のマージの割合を大きく決定することができる。
また、制御部1は、1又は複数の過去の測定値をマージすることができる。例えば、制御部1は今回の測定値に、前回の測定値をマージすることもできるし、過去2回分の測定値をマージすることもできる。
【0057】
階調補正テーブルを更新後、
図4のステップS25に移行する。
図4に示すように、制御部1は、階調補正部72による補正を有効に切り替え、キャリブレーションが有効なときの階調パターンを、画像形成部8により形成させる(ステップS25)。すなわち、キャリブレーションが有効なときの階調パターンは、キャリブレーションにより更新された階調補正テーブルを適用して階調が補正されている。
制御部1は、用紙上に形成された階調パターンを読取部g4により読み取らせて、濃度の測定値を取得する(ステップS26)。制御部1は、上述したようにして、読み取られた階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断する。制御部1は、取得した測定値をキャリブレーションが有効か又は無効かにより分類して記憶部2に保存する(ステップS27)。その後、
図3のステップS12に移行する。
【0058】
図3に示すように、制御部1は、キャリブレーションの実施間隔が適正か否かを判断する(ステップS12)。適正でない場合(ステップS12;N)、制御部1はキャリブレーションの実施間隔を調整し(ステップS13)、ステップS14に移行する。適正である場合(ステップS12;Y)、制御部1はキャリブレーションの実施間隔を調整せずに、ステップS14に移行する。
【0059】
具体的には、制御部1は、今回及び過去のキャリブレーションの実施前にそれぞれ形成された、キャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値の差を第3閾値と比較する。差が第3閾値以上であれば、階調特性の変動が大きいので、制御部1はキャリブレーションの実施間隔が適正でないと判断し、当該実施間隔を短く調整する。これにより、キャリブレーションの有効性に応じて、キャリブレーションの実施頻度を調整することができる。
キャリブレーションが、画像形成された用紙の枚数が一定値に達したときに実施される場合、制御部1は当該一定値を増減させて、実施間隔を調整することができる。また、キャリブレーションが有効なときの階調パターンの測定値と目標濃度との差が閾値を超えたときに、キャリブレーションが実施される場合、制御部1は当該閾値を変更して、実施間隔を調整することができる。
【0060】
今回の測定値と過去の測定値の差に応じて、キャリブレーションの実施間隔を調整するのであれば、制御部1は、今回の測定値と過去の測定値の差が小さいときに、実施間隔を長く調整してもよい。差が閾値より小さい場合、階調特性の変動が無いか、変動があっても小さいため、キャリブレーションの必要性も小さい。実施間隔を長くすることにより、不要なキャリブレーションを減らすことができる。
【0061】
次に、制御部1は、ジョブの実行を開始し、画像形成部8によりジョブに係る画像を形成させる(ステップS14)。制御部1は、ジョブの画像データに関しては、階調パターンと異なり、階調補正部72による補正を常に有効に切り替えて階調を補正させる。
ジョブの実行中、キャリブレーションの実施間隔に至る毎に(ステップS15;Y)、ステップS11の処理に戻り、制御部1は上述したキャリブレーションの実施(
図4及び
図9参照)を繰り返す。
【0062】
図14は、10000枚のジョブの実行中、2000枚毎にキャリブレーションが実施され、各キャリブレーションの実施の前後に形成された階調パターンの例を示している。
図14に示すように、1回目のキャリブレーションはジョブの開始前、つまり用紙枚数が0枚目のときに実施される。0枚目でキャリブレーションが無効なときの階調パターンが形成され、階調補正テーブルが更新されると、更新された階調補正テーブルによりキャリブレーションが有効なときの階調パターンが形成される。
図14は、キャリブレーションが無効なときの階調パターンのみに無効を示すマークm1が形成された例を示している。
【0063】
その後、ジョブが実行され、用紙枚数が2000枚目のときに2回目のキャリブレーションが実施される。すなわち、2000枚目の用紙にキャリブレーションが無効なときの階調パターンが形成され、階調補正テーブルが更新される。キャリブレーションが有効なときの階調パターンは、更新された階調補正テーブルを利用できる数枚後の用紙、例えば2003枚目の用紙に形成される。その後、4000枚目、6000枚目、8000枚目、10000枚目のときに、それぞれキャリブレーションが実施される。一定間隔毎に形成された各階調パターンの測定値は、キャリブレーションが有効か又は無効かによって分類され、記憶部2に保存される。
【0064】
そして、ジョブが終了すると(ステップS16;Y)、制御部1は、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの各測定値を記憶部2から取得する。制御部1は、取得した測定値を用いて、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性をそれぞれ示すレポートを作成する(ステップS17)。
制御部1は、各測定値を統計し、階調特性とともに統計結果を示すレポートを作成することが好ましい。統計結果により、ユーザーはレポートの理解が容易となる。
同様の観点から、制御部1は、階調特性又は統計結果をグラフ等によって図示したレポートを作成することもできる。
【0065】
図15は、キャリブレーションの実施間隔が2000枚であるときのレポート例を示している。
図16は、キャリブレーションの実施間隔が500枚であるときのレポート例を示している。
図15及び
図16に示すように、レポートには、C、M、Y、Kの色毎に、各入力階調20%、50%、80%、100%に対し、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの各測定値が並べられ、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性がそれぞれ示されている。各測定値を比較することにより、ユーザーはキャリブレーションが有効に機能していることを把握することができる。
また、レポートには、キャリブレーションを実施したときの用紙の枚数が示されているので、ユーザーは、キャリブレーションの実施頻度を把握することができる。
なお、実施間隔が異なる2つのレポートを比較すれば、キャリブレーションが有効なときの測定値は実施間隔によらずほぼ同じだが、キャリブレーションが無効なときの測定値は実施間隔が長いとばらつきが多いことが分かる。
【0066】
図15及び
図16に示すように、レポートには、測定値の平均、最大値と最小値の差、標準偏差の統計結果も示されている。これら統計結果は、ユーザーのレポートの把握を容易にする。例えば、最大値と最小値の差及び標準偏差を参照すれば、キャリブレーションが有効なときより無効なときの方が測定値のばらつきが多いと、ユーザーは容易に判断することができる。
【0067】
図17(a)及び
図17(b)は、それぞれ
図15及び
図16に示すレポート中の測定値をグラフで図示した例である。
図17(a)及び
図17(b)において、白いマーカーはキャリブレーションが無効なときの測定値を示し、黒いマーカーはキャリブレーションが有効なときの測定値を示している。
測定値ではなく、測定値の平均等の統計結果がグラフで図示されてもよい。グラフにより、ユーザーは各測定値の比較が容易であるうえ、キャリブレーションを複数回実施したときの測定値の推移も把握しやすい。
グラフに限らず、入力階調(%)に対して測定値をプロットして得られた、階調特性のカーブを図示することもできる。
【0068】
レポートの提供方法は、特に限定されない。例えば、
図18に示すように、複数台の画像形成システムGが、ネットワークNを介して外部のサーバーSに接続されている構成であれば、制御部1は、電子ファイルのレポートを作成し、通信部5によりサーバーSへ送信することができる。制御部1は、画像形成部8によりレポートの画像を用紙上に形成させ、ジョブの画像が形成された用紙とともに提供することも可能である。また、制御部1は、電子ファイルのレポートを表示部4により表示させることもできる。制御部1は、これら全てを実行してもよい。
【0069】
以上のように、本実施の形態によれば、画像形成システムGは、階調補正テーブルを用いて、画像データの階調を補正する階調補正部72と、画像データに基づき、用紙上に画像を形成する画像形成部8と、一定間隔毎にキャリブレーションを実施して階調補正テーブルを更新し、各キャリブレーションの実施前に補正を無効に切り替えて、キャリブレーションが無効なときの階調パターンを画像形成部8により形成させ、各キャリブレーションの実施後に補正を有効に切り替えて、キャリブレーションが有効なときの階調パターンを画像形成部8により形成させる制御部1と、用紙上に形成された階調パターンを読み取る読取部g4と、備えている。制御部1は、読み取られた階調パターンの濃度の測定値を取得して、当該階調パターンが、キャリブレーションが有効なときの階調パターンか又は無効なときの階調パターンかを判断し、キャリブレーションが無効なときの階調パターンの測定値を用いて、各キャリブレーションを実施し、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの各階調パターンの測定値を用いて、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性をそれぞれ示すレポートを作成する。
【0070】
これにより、キャリブレーションが有効なとき及び無効なときの階調特性を分離してレポートに示すことができる。ユーザーは、各階調特性を比較することができ、キャリブレーションの有効性及び階調特性の安定性を把握することができる。従って、キャリブレーションの有効性を示すレポートを提供することができる。
【0071】
また、レポートにより、ユーザーはキャリブレーションの実施頻度の妥当性を把握することができる。ユーザーは、レポートを、キャリブレーションの適切な実施頻度を決める際の目安とすることもできる。
【0072】
また、レポートの提供により、ジョブの画像が形成された印刷物の商品価値を高めることもできる。例えば、注文を受けてジョブを実行した場合、印刷物とともに階調特性のレポートを品質保証書として納品することができる。これにより、発注者の満足度が向上し、発注者と受注者間の信頼関係も向上する。
【0073】
上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0074】
例えば、制御部1に、
図3、
図4及び
図9に示す手順で処理を実行させるためのプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。当該プログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。