(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、ステアリングホイールが基準位置または保舵状態であるときに、前記目標値を実現するように前記シートの位置又は姿勢を算出し、前記算出された前記シートの位置又は姿勢を制御する請求項1又は2記載の車両制御装置。
前記制御手段は、ステアリングホイールが基準位置または保舵状態であるときに、前記目標値を実現するように前記サスペンションの特性を算出し、前記算出された前記サスペンションの特性に変化させるように制御する請求項7記載の車両制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のインテリジェントシートの技術は、道路形状に応じて運転者の姿勢支持状態を変える技術であるが、ドライバ状態が反映されないため、ドライバ個人の運転様式の違いには対応できない、という問題がある。
【0010】
上記の特許文献1に記載の技術は、運転者の運転姿勢及び体格からパワーステアリング装置より加える摩擦を決定しているが、車両運転者に由来するステアリングホイール回転方向の剛性は、運転者の姿勢や体格だけでは十分に推定できない、という問題がある。
【0011】
上記の特許文献2に記載の技術は、運転姿勢の各種操作装置とドライバの近さ、ドライバの操作量から、ドライバの特性を区分し、それに応じてパワーステアリングの制御補正量を調整するものであるが、上記の特許文献1と同様の理由により、精度のよいステアリングホイール回転方向の剛性の推定は難しい、という問題がある。
【0012】
上記の特許文献3に記載の技術は、ドライバの運転姿勢を計測し、ドライバの体格とステアリング操作に関する人の機械的インピーダンスの関係を記述した参照テーブルに基づいてドライバの機械的インピーダンスを算出しているが、ドライバの体格や運転姿勢だけでは、ステアリングホイールに加えている力の要素が含まれていないため、ステアリングホイール回転方向の力学特性は正確に反映することはできな、という問題がある。
【0013】
上記の特許文献4、5に記載の技術では、ステアリングホイールに対して加えた外乱トルクに対する運転者の機械的インピーダンスを推定しているが、車両においてステアリングホイールに対して加えた外乱トルクに対する操舵角等の応答から、運転者の機械的インピーダンスを推定することは困難である、という問題がある。
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる車両制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る車両制御装置は、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて
、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性
を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和の予め定められた目標値を実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記運転者が着座するシートの位置又は姿勢を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0016】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する検出手段によって検出された前記押付力に基づいて
、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性
を算出する算出手段、及び前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和の予め定められた目標値を実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記運転者が着座するシートの位置又は姿勢を制御する制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0017】
第1の発明及び第2の発明によれば、検出手段によって、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する。制御手段によって、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、前記押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和の予め定められた目標値を実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記運転者が着座するシートの位置又は姿勢を制御する。
【0018】
このように、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和の目標値を実現するように制御することにより、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0019】
上記第1の発明に係る車両制御装置は、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段を更に含み、前記制御手段は、前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和の予め定められた目標値を実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記車両のシートの位置又は姿勢を制御するようにすることができる。
【0020】
第3の発明に係る車両制御装置は、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、
運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された
前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、前記
運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と
、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和
の予め定められた目標値を、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた
所望の値で実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記車両のシートの位置又は姿勢を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0021】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、
運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段、及び前記算出手段によって算出された
前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、前記
運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と
、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和
の予め定められた目標値を、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた
所望の値で実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記車両のシートの位置又は姿勢を制御する制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0022】
第3の発明及び第4の発明によれば、検出手段によって、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する。そして、制御手段によって、
前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と
、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和
の予め定められた目標値を、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の
予め定められた所望の値で実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記車両のシートの位置又は姿勢を制御する。
【0023】
このように、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和
の予め定められた目標値を、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の
予め定められた所望の値で実現するように制御することにより、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0024】
第3の発明に係る車両制御装置は、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段を更に含み、前記制御手段は、前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、予め定められた前記ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和
の目標値を、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた
所望の値で実現するように、前記ステアリングホイールに発生させるアシストトルク、又は前記車両のシートの位置又は姿勢を制御するようにすることができる。
【0025】
第5の発明に係る車両制御装置は、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた目標値を実現するように、前記車両を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0026】
第6の発明に係るプログラムは、コンピュータを、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する検出手段によって検出された前記押付力に基づいて
、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段、及び前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた目標値を実現するように、前記車両を制御する制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0027】
第5の発明及び第6の発明によれば、検出手段によって、車両の運転者によるステアリングホイールの押付力を検出する。そして、制御手段によって、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、前記押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた目標値を実現するように、前記車両を制御する。
【0028】
このように、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の目標値を実現するように制御することにより、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0029】
第5の発明に係る車両制御装置は、前記検出手段によって検出された前記押付力に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出する算出手段を更に含み、前記制御手段は、前記算出手段によって算出された前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、前記運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の予め定められた目標値を実現するように、前記車両を制御するようにすることができる。
【0030】
上記の車両制御装置は、前記ステアリングホイールの回転を伝達するステアリングシャフトにかかるトルクを計測するトルクセンサを更に含み、前記制御手段は、前記目標値を実現するように、アシストトルク
に掛けるための係数を算出し、前記トルクセンサによって計測されたトル
クに基づいて、前記アシストトルクを算出し、前記アシストトルクに
前記算出された係数を掛けたトルクを発生させるように制御するようにすることができる。
【0031】
また、上記の制御手段は、ステアリングホイールが基準位置または保舵状態であるときに、前記目標値を実現するように、アシストトルクを算出するための係数を算出するようにすることができる。
【0032】
上記の制御手段は、ステアリングホイールが基準位置または保舵状態であるときに、前記目標値を実現するように前記シートの位置又は姿勢を算出し、前記算出された前記シートの位置又は姿勢を制御するようにすることができる。
【0033】
第5の発明に係る制御手段は、前記車両のサスペンションの特性を変化させるように制御するようにすることができる。
【0034】
また、上記の制御手段は、ステアリングホイールが基準位置または保舵状態であるときに、前記目標値を実現するように前記サスペンションの特性を算出し、前記算出された前記サスペンションの特性に変化させるように制御するようにすることができる。
【0035】
上記の検出手段は、前記ステアリングホイールに装着した力覚センサを用いて、前記押付力を検出するようにすることができる。
【0036】
上記の検出手段は、前記シートに設けた力覚センサ又は体圧センサを用いて、前記押付力を検出するようにすることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明の車両制御装置及びプログラムによれば、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、まず、第1の実施の形態では、車両のアシストトルクを制御する車両制御装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0040】
<発明の概要>
車両の運転者は、能動的に操舵をしていない時でも、ステアリングホイールに手を添えて保舵しており、その動作には車両運動を安定させる効果があることが知られている(非特許文献1(安倍正人、「自動車の運動と制御」、山海堂、1992.))。また、車両を運転中に車両運動に外乱が生じた場合、運転者がステアリングホイールを強く握ったり、ステアリングホイールを押したりすることは、よく体験される現象である。
【0041】
保舵動作は、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性に寄与しており、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性とステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性との和が、ステアリングホイール回転方向の剛性となっている。したがって、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性を調整したり、運転者と車両のインターフェースを調整したりして運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を変化させることにより、運転者に必要以上の負担を与えることなく、所望のステアリングホイール回転方向の剛性を実現することができると考えられる。なお、ステアリングホイール回転方向の剛性とは、ステアリングシャフトに入力される外乱トルクに対する、ステアリングホイール操舵角応答の剛性成分である。
【0042】
しかし、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を直接推定することは難しい。上記の特許文献5では、路面外乱の入力があった時、あるいはステアリングホイールを強制的に所定量回転させた時のステアリング操作量に基づいて、操舵反力を設定するとしているが、以下の理由から、実際の車両においてこの方法を実現することは極めて困難である。
【0043】
・ステアリングホイール系の振動特性により、剛性推定に必要な周波数帯域の伝達関数を求めることができない。
・パワーステアリング装置で使用しているアクチュエータや操舵角センサでは、剛性導出に必要な精度がない。
・ステアリングホイールを強制的に所定量回転させる方法では、路面外乱が重畳してしまう。
・路面外乱を利用する方法では、路面外乱の振動成分にばらつきがある。
・伝達関数を求める場合、前記の強制的な所定量回転としては正弦波スイープ振動が考えられるが、ある程度時間を必要とするため、運転者がステアリングホイールを静的に持っている時間を走行中に確保することは難しい。
【0044】
そこで本発明では、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を直接推定する代わりに、ステアリングホイール押付力から運転由来のステアリングホイール回転方向の剛性を推定し、推定結果に基づいてステアリングホイール回転方向の剛性を制御することにより、上記の問題点を解決する。
【0045】
ここで、実験により導出した、ステアリングホイール押付力と運転由来のステアリングホイール回転方向の剛性との関係を
図1に示す。
図1を見ると、ステアリングホイール押付力と運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性は、ほぼ線形関係にある。
【0046】
運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性には、運転者がステアリングホイールを握ったり、押したりすることに伴う筋活動による筋剛性が主となる材料剛性、及びドライバの上肢帯の構造とそこに働く外力によって生じる見かけ上の剛性である幾何剛性の二つの剛性が寄与している。
【0047】
図2(A)に示すような腕の2リンクモデルを考えた時、上腕リンクの長さをl
1[m]、前腕リンクの長さをl
2[m]、肩関節角度θ
1[rad]、肘関節角度θ
2[rad]からなる関節角度ベクトルをθ=[θ
1θ
2]
Tとすると、手先座標ベクトルx=[x、y]
Tは以下の(1)式、手先速度ベクトルは以下の(2)式のように表される。
【0049】
ただし、J(θ)はヤコビ行列である。また、ステアリングホイール押付力F=[F
x0]
Tとすると、肩関節周りモーメントτ
1、肘関節周りモーメントτ
2からなるモーメントベクトルτ=[τ
1τ
2]
Tは、以下の(3)式のように表される。
【0051】
この時、上記(3)式に、計測した運転者の上腕及び前腕のリンクの長さ、肩及び肘の関節角度、ステアリングホイール押付力を代入すると、肩関節周りには反時計回り方向のモーメントが作用し、肘関節周りには時計回り方向のモーメントが作用していた。ここで、ステアリングホイールが外乱によって微小操舵角δθ
stg[rad]だけ動かされた時、手先座標変化δxは以下の(4)式、関節角度変化δθは以下の(5)式のように表される。この時、Fは一定であるとすると、関節周りモーメントの変化δτは、以下の(6)式のように表される。ただし、r
stgはステアリング半径、θ
incはステアリングホイール傾斜角、θ
holdはステアリングホイール水平方向に対する手先の角度である。
【0053】
これを前述の実験データより計算すると、反時計回りに作用していた肩関節周りのモーメントは大きさが減少、時計回りに作用していた肘関節周りのモーメントは大きさが増加し、手先を動かされた方向とは逆に戻す方向に作用する。これが、ステアリングホイール周りの剛性に対して運転者の幾何剛性が作用するメカニズムであると言える。
【0054】
なお、このとき、関節空間における運転者の腕の幾何剛性K
jは以下の(7)式のように求められ、ステアリングホイール押付力の反力Fに比例している。また、作業空間における運転者の腕の幾何剛性K
eは以下の(8)式のように求められる。さらに、ステアリングホイール回転方向の幾何剛性K
stgは以下の(9)式のように求められる。
【0056】
ステアリングホイール押付力に伴う運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性の増加分のうち、運転者の幾何剛性に由来する割合は、ステアリングホイールを20Nで押している場合も、40Nで押している場合も20〜30%であった。したがって、ステアリングホイール押付力から運転者の幾何剛性を推定することが可能であり、運転者の幾何剛性から、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を推定することも可能であると考えられ、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を推定することの困難さを解決することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、運転者の手先の運動を定義する運転者の力学モデルを考える。モデルの構造は、ステアリングホイール押付力の定義に合わせて選択、定義することができる。本実施の形態では、上述した、肩から手先までの2自由度2リンクモデルとし、ステアリングホイール押付力F=[F
X0]
Tとする。また、本モデルの関節角度ベクトルθとし、手先のヤコビ行例をJ(θ)とする。運転者の力学モデルのリンク長さや関節角度は標準的な値を用いてもよく、ドライバごとに定義された値や、別の手段によりリアルタイム計測した値を使用してもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、トルクセンサで計測された操舵トルクをT
rとし、アシストトルク量T
aは、以下の(10)式により求める。関数f
TはT
rとT
aの関係を記述する関数であり、T
r=0のときf
T(T
r)=0、T
r>0の時に下に凸の単調増加の値を返す関数である(
図3)。
【0060】
ただし、p
aは0以上の係数であり、以下の(11)で定義される。f
Kvはステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向剛性K
vを実現するためのp
aを返す関数である。
【0062】
本実施の形態は、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性に応じて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性とステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性との和が、あらかじめ定められた剛性の目標値となるよう、車両の特性のひとつである、パワーステアリング装置の特性を変更する。
【0063】
<車両制御装置の構成>
図4に示すように、第1の実施の形態に係る車両制御装置は、運転者によるステアリングホイール10の押付力を検出するステアリングホイール押付力検出部12と、ステアリングホイール10の回転をステアリングギアボックスに伝達するステアリングシャフト13にかかるトルクを計測するトルクセンサ14と、アシストトルクをステアリングシャフト13に加えるアクチュエータ18を制御するコンピュータ16とを備えている。
【0064】
ステアリングホイール押付力検出部12は、例えば、
図5に示すように、ステアリングホイール10の外周部分を分割し、分割された外周部分につながるスポーク部分に6軸力覚センサ12Aを挿入し、力覚センサ12Aにかかる6分力を計測する。また、
図6に示すように、運転者がステアリングホイール10を押す力は、運転者が着座しているシート20で受けているため、シートバック20Aと運転者とが接触する部分に装着した力覚センサ(あるいは体圧センサ)20Bによって、ステアリングホイール押付力を推定するようにしてもよい。なお、ステアリングホイール押付力を計測または推定できれば、他の方法であっても差し支えない。
【0065】
コンピュータ16は、CPUと、RAMと、後述する車両制御処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。
図7に示すように、コンピュータ16は、中立位置判定部22、運転者由来剛性算出部24、目標剛性算出部26、アシストトルク算出部28、及びアシストトルク制御部30を備えている。
【0066】
本実施の形態では、保舵状態におけるステアリングホイール押付力Fを計測する必要がある。そこで、中立位置判定部22は、ステアリングホイール10が中立の角度にあることを判断するため、トルクセンサ14の出力T
rの絶対値|T
r|が、標準値T
neutral以下であるかどうかを判定する。また、中立位置判定部22は、|T
r|≦T
neutralの時、ドライバがステアリングホイール10を能動的に操舵していないことを確認するため、T
rの時間微分dT
r/dtの絶対値|dT
r/dt|が、標準値T
steady以下であるかどうかを判定する。
【0067】
中立位置判定部22によって、|T
r|≦T
neutralかつ|dT
r/dt|≦T
steadyであると判定された時、運転者由来剛性算出部24は、まず、関節空間の運転者の幾何剛性K
djを以下の式(12)より算出する。
【0069】
次に、運転者由来剛性算出部24は、作業空間の運転者の幾何剛性K
deを以下の(13)式により算出する。
【0071】
さらに、運転者由来剛性算出部24は、手先位置におけるステアリングホイール接線方向ベクトルv
stgを用いて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の幾何剛性K
de_stgを、以下の(14)式により算出する。さらに、運転者由来剛性算出部24は、手先位置におけるステアリングホイール接線方向ベクトルv
stgを用いて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の幾何剛性K
dgを以下の(14)式により算出する。
【0073】
そして、運転者由来剛性算出部24は、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを以下の(15)式より算出する。
【0075】
ただし、p
Kdは定数である。また、K
d0はステアリングホイール押付力が0の時の運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性であり、運転者の関節の受動剛性等が含まれる。
【0076】
ここで、運転者ごとのP
Kd及びK
d0は、以下の手順で予め求めることができる。
【0077】
本手順では、車両用シート、ステアリングホイール系のステアリングシャフトに任意のトルクを与えることのできるステアリング装置、ステアリングホイールを車両前方に押す力を計測する装置を用いる。運転者は、シートに着座した状態で、通常の運転時と同様に、ステアリングホイールを中立状態で保持する。ステアリングホイールを車両前方に押す力は、ドライバに対して提示され、ドライバは、ステアリングホイールを車両前方に押す力が0になるようにステアリングホイールを保持し続ける。このとき、ステアリングシャフトに対し、正弦波スイープ加振トルクを加え、その時の操舵角を計測する。計測された加振トルクから操舵角までの伝達関数を求めることにより、ステアリングホイール装置由来の剛性K
vと運転者由来の剛性K
dの和を求めることができる。K
vは、運転者が保舵していない時の加振トルクから操舵角までの伝達関数より求めることができるので、K
dは, K
dとK
vの和からK
vを除くことにより、容易に求められる。
【0078】
同様に、ステアリングホイールを車両前方に押す力がF
1のとき、F
2のとき、… 、F
nのときの、K
d1,…,K
dnが求められる。これらのF
1,F
2,…,F
nとK
d1,K
d2,…,K
dnに対して、上記(15)式をフィッティングすることにより、P
Kd及びK
d0を求めることができる。
【0079】
上記の方法では、特定の運転者のP
Kd及びK
d0が求められるが、本実施の形態では、特定の運転者に限定したP
Kd,K
d0を用いてもよいし、複数の運転者のP
Kd,K
d0の平均を用いてもよいし、体格や運転姿勢ごとに分類したP
Kd,K
d0を用いてもよい。
【0080】
目標剛性算出部26は、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性Kdとステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
vの和をK
dv、K
dvの目標値を予め定められた値K’
dvとし、以下の(16)式より、K
dvをK’
dvとするためのK
vの目標値K’
vを求める。
【0082】
アシストトルク算出部28は、車両始動直後は走行中とは保舵状態が異なるので、K
vとして標準的な値K
v0を使用し、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rとに基づいて、上記(10)式及び(11)式よりT
aを求める。
【0083】
アシストトルク算出部28は、目標剛性算出部26により得られたK’
vを、上記(11)式のK
vに代入することによりp
aを求め、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクTrに基づいて、上記(10)式及び(11)式よりT
aを求める。
【0084】
中立位置判定部22によって、|T
r|>T
neutralまたは|dT
r/dt|>T
steadであると判定されたときには、直前までのp
aが変更されない。この場合には、アシストトルク算出部28は、直前までのp
aと、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rとに基づいて、上記(10)式及び(11)式よりT
aを求める。
【0085】
アシストトルク制御部30は、アシストトルク算出部28により求められたT
aを発生させるようにアクチュエータ18を制御する。
【0086】
<車両制御装置の作用>
次に、第1の実施の形態に係る車両制御装置の作用について説明する。車両が始動すると、ステアリングホイール押付力検出部12によって、ステアリングホイール押付力を逐次検出すると共に、トルクセンサ14によって、操舵トルクT
rを逐次計測する。このとき、車両制御装置のコンピュータ16によって、
図8に示す車両制御処理ルーチンが実行される。
【0087】
ステップ100において、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
vに、予め定められたK
v0を設定する。そして、ステップ102において、上記ステップ100で設定されたK
vを用いて、上記(11)式に従って、係数p
aを算出する。ステップ104では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、取得した操舵トルクと上記ステップ102で算出した係数p
aとを用いて、上記(10)式に従って、アシストトルク量T
aを算出する。
【0088】
ステップ106では、上記ステップ104で算出されたアシストトルク量T
aを発生させるようにアクチュエータ18を制御する。
【0089】
そして、車両の使用が終了するまで、後述するステップ108〜122の処理を繰り返す。
【0090】
ステップ108では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、|T
r|≦T
neutralであるか否かを判定する。|T
r|≦T
neutralである場合には、中立位置であると判断し、ステップ110へ移行するが、一方、|T
r|>T
neutralである場合には、係数p
aを変更せずに、ステップ120へ移行する。
【0091】
ステップ110では、現在の操舵トルクT
rと直前に取得した操舵トルクT
rに基づいて、|dT
r/dt|≦T
steadyであるか否かを判定する。|dT
r/dt|≦T
steadyである場合には、保舵状態であると判断し、ステップ112へ移行するが、一方、|dT
r/dt|>T
steadyである場合には、係数p
aを変更せずに、ステップ120へ移行する。
【0092】
ステップ112では、ステアリングホイール押付力検出部12により計測されたステアリングホイール押付力Fを取得する。ステップ114では、上記ステップ112で取得したステアリングホイール押付力Fに基づいて、上記(12)式〜(15)式に従って、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを算出する。
【0093】
次のステップ116では、上記ステップ114で算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dに基づいて、上記(16)式に従って、ステアリングホイール回転方向の剛性の和K
dvを目標値K’
dvとするための、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
vを算出する。
【0094】
ステップ118において、上記ステップ116で算出された目標値K’
vに基づいて、上記(10)式に従って、係数p
aを算出し、係数p
aを変更する。
【0095】
ステップ120では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、取得した操舵トルクと、上記ステップ102又は上記ステップ118で算出した係数p
aとを用いて、上記(10)式に従って、アシストトルク量T
aを算出する。
【0096】
ステップ122では、上記ステップ120で算出されたアシストトルク量T
aを発生させるようにアクチュエータ18を制御する。
【0097】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両制御装置によれば、運転者によるステアリングホイールの押付力を検出し、検出された押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、予め定められたステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和が、目標値となるための、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の目標値を算出し、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の目標値に応じて、アシストトルクを求めるための係数を変更することにより、運転者による押付力に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0098】
また、ステアリングホイール押付力に基づいて算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性に応じて、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性を調整し、所望のステアリングホイール回転方向の剛性を実現することが可能になる。これにより、運転者に必要以上の負担をかけることなく、操舵しやすい車両を実現することができるようになる。
【0099】
なお、上記の実施の形態では、ステアリングホイール押付力に基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を算出して、アシストトルクを求めるための係数を変更する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ステアリングホイール押付力と、所望のステアリングホイール回転方向の剛性を実現することが可能となる、アシストトルクを求めるための係数との対応関係を表わす関数やマップなどを予め求めておき、ステアリングホイール押付力に基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を算出することなく、直接、アシストトルクを求めるための係数を求めるようにしてもよい。
【0100】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係る車両制御装置の構成は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0101】
第2の実施の形態では、ステアリングホイール押付力から算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、ステアリングホイール回転方向の剛性との和K
dvを目標値とし、予め求められた運転者由来のステアリングホイール回転方向の所望の剛性K
d0で実現するように、アシストトルクを算出するための係数を調整している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0102】
まず、本実施の形態におけるステアリングホイール回転方向の剛性の目標値について説明する。
【0103】
本実施の形態では、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性に応じて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性とステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性の和が、運転者が望む剛性となるように、車両の特性のひとつである、パワーステアリング装置の特性を変更する。
【0104】
上記(15)式により算出されたK
dについて、K
dと予め定められたK
vとの和が、運転者が望むステアリングホイール回転方向の剛性であると考えられる。一方、K
dを、K
dの目標値K'
dに等しくするための、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
vは、以下の(17)式により求められる。ただし、運転者の負担を最小にするためには所望の値K’
d=K
d0とするのがよい。
【0106】
<車両制御装置の構成>
第2の実施の形態に係る車両制御装置の目標剛性算出部26は、運転者由来剛性算出部24により上記(15)式に従って算出されたK
dと、予め定められたK
vとの和Kdv、及び予め定められた、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性の所望の値Kd0に基づいて、上記(17)式に従って、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
vを算出する。
【0107】
アシストトルク算出部28は、得られたK’
vを上記(11)式のK
vに代入することによりp
aを求め、上記(10)式よりアシストトルク量T
aを求める。
【0108】
<車両制御装置の作用>
次に、第2の実施の形態における車両制御処理ルーチンを、
図9を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】
ステップ100において、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
vに、予め定められたK
v0を設定する。そして、ステップ102において、上記ステップ100で設定されたK
vを用いて、係数p
aを算出する。ステップ104では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、上記(10)式に従って、アシストトルク量T
aを算出する。
【0110】
ステップ106では、上記ステップ104で算出されたアシストトルク量T
aを発生させるようにアクチュエータ18を制御する。
【0111】
そして、車両の使用が終了するまで、後述するステップ108〜122の処理を繰り返す。
【0112】
ステップ108では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、|T
r|≦T
neutralであるか否かを判定する。
【0113】
ステップ110では、現在の操舵トルクT
rと前回取得した操舵トルクT
rとに基づいて、|dT
r/dt|≦T
steadyであるか否かを判定する。
【0114】
ステップ112では、ステアリングホイール押付力検出部12により計測されたステアリングホイール押付力Fを取得する。ステップ114では、上記ステップ112で取得したステアリングホイール押付力Fに基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを算出する。
【0115】
次のステップ200では、上記ステップ114で算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dに基づいて、上記(17)式に従って、ステアリングホイール回転方向の剛性の和K
dvを、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性の所望の値K
d0で実現するための、ステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
vを算出する。
【0116】
ステップ118において、上記ステップ200で算出された目標値K’
vに基づいて、上記(10)式に従って、係数p
aを算出し、係数p
aを変更する。
【0117】
ステップ120では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、アシストトルク量T
aを算出する。
【0118】
ステップ122では、上記ステップ120で算出されたアシストトルク量T
aを発生させるようにアクチュエータ18を制御する。
【0119】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車両制御装置によれば、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性を算出し、算出された運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、予め定めたステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和を、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の所望の値で実現するための、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の目標値を算出し、ステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性の目標値に応じて、アシストトルクを求めるための係数を変更することにより、運転者による押付力に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0120】
なお、上記の実施の形態では、ステアリングホイール押付力に基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を算出して、アシストトルクを求めるための係数を変更する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ステアリングホイール押付力と、所望のステアリングホイール回転方向の剛性を実現することが可能となる、アシストトルクを求めるための係数との対応関係を表わす関数やマップなどを求めておき、ステアリングホイール押付力に基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性を算出することなく、直接、アシストトルクを求めるための係数を求めるようにしてもよい。
【0121】
また、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、|T|≦T
neutralかつ|dT/dt|≦T
steady以外の時は、直前までのp
aを変更しない場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。中立位置以外で保舵している(|dT/dt| =0)時でも、p
aを更新するようにしてもよい。ただし、その場合は、その操舵角でのP
Kd,K
d0をあらかじめ求めておき、それを用いる必要がある。
【0122】
また、頻繁にp
aを変更しないための方法を取ることもできる。例えば、頻繁にp
aが変更されるとわずらわしく感じられる場合もあるため、一定時間分のp
aの平均値をp
aとして与えることも可能である。また、求められたp
aが現在のp
aに比べて一定以上変化した場合のみ、変更する方法を用いてもよい。あるいは、求められたp
aが現在のp
aに比べて一定以上変化した状態が一定時間以上続いた場合に、p
aを変更してもよい。また、p
aの導出処理を一定の時間以上間を空けて行うことにより、p
aの変更頻度を下げてもよい。
【0123】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0124】
第3の実施の形態では、ステアリングホイール回転方向の剛性が目標の範囲内となるように、運転者が着座しているシートの姿勢を変化させるように制御している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0125】
<車両制御装置の構成>
図10に示すように、第3の実施の形態に係る車両制御装置は、ステアリングホイール押付力検出部12と、トルクセンサ14と、運転者が着座するシート20の姿勢を制御するためのシート制御機構302を制御するコンピュータ316とを備えている。
【0126】
シート制御機構302は、
図11に示すように、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度θ
SHOULDERを変化させる。なお、シート制御機構302については、従来既知のものを用いればよく、説明を省略する。
【0127】
コンピュータ316は、CPUと、RAMと、後述する車両制御処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。
図12に示すように、コンピュータ316は、中立位置判定部22、運転者由来剛性算出部24、剛性和算出部326、シート変化量算出部328、及びシート制御部330を備えている。
【0128】
剛性和算出部326は、運転者由来剛性算出部24により算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、予め定められたステアリング装置由来のステアリングホイール回転方向の剛性Kvとの和K
dvを算出する。
【0129】
シート変化量算出部328は、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K
dvの範囲をK’
dv1以上かつK’
dv2以下と予め定めておき、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv1より小さい時、ステアリングホイールを押しやすくするために、運転者と接触する側に倒す、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度の変化量dθ
SHOULDERを算出する。
【0130】
シート変化量算出部328は、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv2より大きい時、ステアリングホイールを必要以上に押していると判断されるため、運転者と接触する側と反対に倒す、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度の変化量−dθ
SHOULDERを算出する。ただし、θ
SHOULDERがあらかじめ定めた範囲を超える場合、θ
SHOULDERは変更しないものとする。
【0131】
シート制御部330は、シート変化量算出部328によって算出された変化量に基づいて、シート制御機構302の動作を制御する。
【0132】
<車両制御装置の作用>
次に、第3の実施の形態における車両制御処理ルーチンを、
図13を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0133】
まず、ステップ350において、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度の変化量の初期値を設定する。ステップ352では、上記ステップ350で設定された角度の変化量だけ、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度を変化させるようにシート制御機構302を制御する。
【0134】
そして、車両の使用が終了するまで、後述するステップ108〜356の処理を繰り返す。
【0135】
ステップ108では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、|T
r|≦T
neutralであるか否かを判定する。
【0136】
ステップ110では、現在の操舵トルクTrと前回取得した操舵トルクT
rに基づいて、|dT
r/dt|≦T
steadyであるか否かを判定する。
【0137】
ステップ112では、ステアリングホイール押付力検出部12により計測されたステアリングホイール押付力Fを取得する。ステップ114では、上記ステップ112で取得したステアリングホイール押付力Fに基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを算出する。
【0138】
次のステップ353では、上記ステップ114で算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、予め定められたステアリングホイール回転方向の剛性との和K
dvを算出する。
【0139】
ステップ354において、上記ステップ353で算出された剛性の和K
dvを、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K
dvの範囲と比較して、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度の変化量を算出する。ステップ356では、上記ステップ354で算出された角度の変化量だけ、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度を変化させるようにシート制御機構302を制御する。
【0140】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る車両制御装置によれば、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、予め定められたステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和が、予め定められた目標の範囲内となるように、シートの姿勢を制御することにより、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0141】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態に係る車両制御装置の構成は、第3の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0142】
第4の実施の形態では、ステアリングホイール回転方向の剛性が目標の範囲内となるように、シートバック全体の角度を変更している点が、第3の実施の形態と異なっている。
【0143】
<車両制御装置の構成>
シート制御機構302は、
図14に示すように、シートバック20A全体の角度θ
backを変化させる。なお、シート制御機構302については、従来既知のものを用いればよく、説明を省略する。
【0144】
シート変化量算出部328は、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K
dvの範囲をK’
dv1以上かつK’
dv2以下と予め定めておき、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv1より小さい時、ステアリングホイールを押しやすくするために、運転者と接触する側に倒す、シートバック20A全体の角度の変化量dθ
backを算出する。
【0145】
シート変化量算出部328は、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv2より大きい時、ステアリングホイールを必要以上に押していると判断されるため、運転者と接触する側と反対に倒す、シートバック20A全体の角度の変化量−dθ
backを算出する。ただし、θ
backがあらかじめ定めた範囲を超える場合、θ
backは変更しないものとする。
【0146】
シート制御部330は、シート変化量算出部328によって算出された変化量に基づいて、シート制御機構302の動作を制御する。
【0147】
なお、第4の実施の形態に係る車両制御装置の他の構成及び作用は、第3の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0148】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第5の実施の形態に係る車両制御装置の構成は、第3の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0149】
第5の実施の形態では、ステアリングホイール回転方向の剛性が目標の範囲内となるように、シート全体の位置を変更している点が、第3の実施の形態と異なっている。
【0150】
<車両制御装置の構成>
シート制御機構302は、
図15に示すように、シート20全体の前後方向の位置x
seatを変化させる。なお、シート制御機構302については、従来既知のものを用いればよく、説明を省略する。
【0151】
シート変化量算出部328は、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K
dvの範囲をK’
dv1以上かつK’
dv2以下と予め定めておき、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv1より小さい時、ステアリングホイールを押しやすくするために、運転者と接触する側(前方側)に変位させる、シート20全体の位置の変化量dx
seatを算出する。
【0152】
シート変化量算出部328は、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv2より大きい時、ステアリングホイールを必要以上に押していると判断されるため、運転者と接触する側と反対(後方側)に変位させる、シート20全体の位置の変化量−dx
seatを算出する。ただし、x
seatがあらかじめ定めた範囲を超える場合、x
seatは変更しないものとする。
【0153】
シート制御部330は、シート変化量算出部328によって算出された変化量に基づいて、シート制御機構302の動作を制御する。
【0154】
なお、第5の実施の形態に係る車両制御装置の他の構成及び作用は、第3の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0155】
次に、第6の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第3の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0156】
第6の実施の形態では、ステアリングホイール押付力から算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、ステアリングホイール回転方向の剛性との和K
dvから、目標の範囲を設定し、目標の範囲内となるように、シートを制御している点が、第3の実施の形態と異なっている。
【0157】
<車両制御装置の構成>
図16に示すように、第6の実施の形態に係る車両制御装置のコンピュータ616は、中立位置判定部22、運転者由来剛性算出部24、剛性和算出部326、目標剛性設定部626、シート変化量算出部628、及びシート制御部330を備えている。
【0158】
まず、本実施の形態におけるステアリングホイール回転方向の剛性の目標値について説明する。
【0159】
K
dとK
vの和K
dvが、運転者が望むステアリングホイール回転方向の剛性K’
dvであると考えられ、K
vが路面状況等により減少した場合、K
dを増やすことにより、K
vの減少分を補うと考えられる。しかし、シートの位置や形状が当初のK
dに最適化されている場合、運転者の負担を少なくしてK
dを増やすためには、シートの位置や形状を変えることが有効であると考えられる。一方、 K
vが路面状況等により増加した場合、K
dを減らして、K
vが増加した分だけ楽に保舵しようとすると考えられる。しかし、シートの位置や形状が当初のK
dに最適化されている場合、運転者は必要以上の窮屈感を感じると考えられる。そこで、 K
dvの目標の範囲を、算出されたK’
dvに基づいてK’
dv1≦K’
dv≦K’
dv2と定め、K
dvがK’
dv1≦K’
dv≦K’
dv2の範囲内に収まるよう制御する。
【0160】
目標剛性設定部626は、運転者由来剛性算出部24により上記(15)式に従って算出されたK
dと、予め定められたK
vとの和K’
dvに基づいて、目標の範囲を、K’
dv1≦K’
dv≦K’
dv2と設定する。なお、目標の範囲K’
dv1≦K’
dv≦K’
dv2が、予め定められた目標値の一例である。
【0161】
シート変化量算出部628は、目標剛性設定部626により設定された目標の範囲に基づいて、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv1より小さい時、ステアリングホイールを押しやすくするために、運転者と接触する側に倒す、シートバック全体300Bの角度の変化量dθ
backを算出する。
【0162】
シート変化量算出部628は、剛性和算出部326により算出された剛性の和K
dvがK’
dv2より大きい時、ステアリングホイールを必要以上に押していると判断されるため、運転者と接触する側と反対に倒す、シートバック全体300Bの角度の変化量−dθ
backを算出する。ただし、θ
backがあらかじめ定めた範囲を超える場合、θ
backは変更しないものとする。
【0163】
<車両制御装置の作用>
次に、第6の実施の形態における車両制御処理ルーチンを、
図17を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0164】
まず、ステップ650において、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクTrを取得し、|T
r|≦T
neutralであるか否かを判定すると共に、現在の操舵トルクTrと直前に取得した操舵トルクT
rに基づいて、|dT
r/dt|≦T
steadyであるか否かを判定する。|T
r|≦T
neutralであり、かつ、|dT
r/dt|≦T
steadyであると判定されると、ステップ652へ進む。
【0165】
ステップ652では、ステアリングホイール押付力検出部12により計測されたステアリングホイール押付力Fを取得する。ステップ654では、上記ステップ652で取得したステアリングホイール押付力Fに基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを算出する。
【0166】
次のステップ656では、上記ステップ654で算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、予め定められたステアリングホイール回転方向の剛性との和K’
dvを算出し、ステアリングホイール回転方向の剛性の和K
dvの目標の範囲を、K’
dv1≦K’
dv≦K’
dv2と設定する。
【0167】
そして、車両の使用が終了するまで、後述するステップ108〜356の処理を繰り返す。
【0168】
ステップ108では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、|T
r|≦T
neutralであるか否かを判定する。
【0169】
ステップ110では、現在の操舵トルクTrと直前に取得した操舵トルクT
rに基づいて、|dT
r/dt|≦T
steadyであるか否かを判定する。
【0170】
ステップ112では、ステアリングホイール押付力検出部12により計測されたステアリングホイール押付力Fを取得する。ステップ114では、上記ステップ112で取得したステアリングホイール押付力Fに基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを算出する。
【0171】
次のステップ353では、上記ステップ114で算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、予め定められたステアリングホイール回転方向の剛性との和K
dvを算出する。
【0172】
ステップ658において、上記ステップ353で算出された剛性の和K
dvを、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値の範囲K’
dv1≦K’
dv≦K’
dv2と比較して、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度の変化量を算出する。ステップ356では、上記ステップ658で算出された角度の変化量だけ、シートバックの肩と接触する部分300Aの角度を変化させるようにシート制御機構302を制御する。
【0173】
以上説明したように、第6の実施の形態に係る車両制御装置によれば、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて算出された運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、予め定められたステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和に基づいて、目標の範囲を設定し、ステアリングホイールの回転方向の剛性が、目標の範囲内となるようにシートの姿勢を制御することにより、運転者に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0174】
なお、上記の第6の実施の形態では、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性と、予め定められたステアリング装置由来のステアリングホイールの回転方向の剛性との和に関する目標の範囲を設定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、押付力に基づいて算出された運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に基づいて、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性に関する目標の範囲を設定し、運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性が、目標の範囲内となるように、シートの姿勢を制御するようにしてもよい。
【0175】
また、上記の第4の実施の形態と同様に、シートバック全体の角度を変更するようにしてもよい。K
dVがK’
dv1より小さい時、ステアリングホイールを押しやすくしてK
dを増やすよう、シートバック全体の角度を、dθ
backだけ運転者と接触する側に倒すように制御する。K
dVがK’
dv2より大きい時、ステアリングホイールを必要以上に押していると判定し、シートバック全体の角度を、dθ
backだけ運転者と接触する側と反対に倒すように制御する。
【0176】
また、上記の第5の実施の形態と同様に、シート全体の位置を変更するようにしてもよい。車両前方をx軸方向とし、シートの位置をx
seatとして、K
dVがK’
dv1より小さい時、ステアリングホイールを押しやすくしてK
dを増やすよう、シートの位置を、dx
seatだけ運転者と接触する側に変位させるように制御する。K
dVがK’
dv1より大きい時、ステアリングホイールを必要以上に押していると判定しK
dを減らすよう、シートの位置を、dx
seatだけ運転者と接触する側と反対に変位させるように制御する。
【0177】
次に、第7の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0178】
第7の実施の形態では、ステアリングホイール押付力から算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dが、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
dとなるように、サスペンションの制御様式を変更している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0179】
<車両制御装置の構成>
図18に示すように、第7の実施の形態に係る車両制御装置は、ステアリングホイール押付力検出部12と、トルクセンサ14と、車両の車体と車輪をつなぐサスペンション700の制御様式を変更するためのサスペンション制御機構702を制御するコンピュータ716とを備えている。
【0180】
サスペンション制御機構702は、サスペンション700の制御様式を変更し、車両のロール剛性を向上させる。具体的には、サスペンション700のロール共振周波数f[Hz]を変化させる。なお、サスペンション制御機構702については、従来既知のものを用いればよく、説明を省略する。
【0181】
コンピュータ716は、CPUと、RAMと、後述する車両制御処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。
図19に示すように、コンピュータ716は、中立位置判定部22、運転者由来剛性算出部24、サスペンション特性変化量算出部728、及びサスペンション制御部730を備えている。
【0182】
サスペンション特性変化量算出部728は、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
d(例えば、K
d0)を予め定めておき、運転者由来剛性算出部24によって算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dがK’
dより大きい時、運転者が車両の剛性を低く感じ、車両の剛性の不足分を補てんしようとしていると考えられるため、サスペンション700のロール共振周波数を上げる変化量df[Hz]を算出する。
【0183】
サスペンション制御部730は、サスペンション特性変化量算出部728によって算出された変化量dfに基づいて、サスペンション制御機構702の動作を制御する。
【0184】
<車両制御装置の作用>
次に、第7の実施の形態における車両制御処理ルーチンを、
図20を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0185】
ステップ750において、サスペンション700のロール共振周波数の変化量dfに、予め定められた初期値df0を設定する。そして、ステップ752において、上記ステップ750で設定されたサスペンション700のロール共振周波数の変化量dfだけ、サスペンション700のロール共振周波数を変化させるようにサスペンション制御機構702を制御する。
【0186】
そして、車両の使用が終了するまで、後述するステップ108〜756の処理を繰り返す。
【0187】
ステップ108では、トルクセンサ14によって計測された操舵トルクT
rを取得し、|T
r|≦T
neutralであるか否かを判定する。
【0188】
ステップ110では、現在の操舵トルクT
rと前回取得した操舵トルクT
rに基づいて、|dT
r/dt|≦T
steadyであるか否かを判定する。
【0189】
ステップ112では、ステアリングホイール押付力検出部12により計測されたステアリングホイール押付力Fを取得する。ステップ114では、上記ステップ112で取得したステアリングホイール押付力Fに基づいて、運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dを算出する。
【0190】
次のステップ754では、上記ステップ114で算出された運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性K
dと、予め定められた運転者由来のステアリングホイール回転方向の剛性の目標値K’
dとを比較し、比較結果に応じて、サスペンション700のロール共振周波数の変化量を算出する。
【0191】
ステップ756において、上記ステップ754で算出されたサスペンション700のロール共振周波数の変化量だけ、サスペンション700のロール共振周波数を変化させるようにサスペンション制御機構702を制御する。
【0192】
以上説明したように、第7の実施の形態に係る車両制御装置によれば、ステアリングホイールの押付力を検出し、押付力に基づいて算出される運転者由来のステアリングホイールの回転方向の剛性が、予め定められた目標値となるように、サスペンション特性を変更することにより、運転者の押付力に合わせて、ステアリングホイール回転方向の剛性の目標値を精度よく実現し、操安性を向上させることができる。
【0193】
なお、上記の第7の実施の形態では、ステアリングホイールの回転方向の剛性の目標値を実現するために、サスペンションの共振周波数を上げるように変更する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両の左右のサスペンションをつなぐスタビライザの剛性を増加させる、車両のボデーの剛性を増加させる、又はシートの高さを下げるように変更することにより、運転者が感じるロール運動を低減する(運転者が感じる剛性感を増加させる)ように制御してもよい。
【0194】
また、上記の第3の実施の形態〜第7の実施の形態では、|T|≦T
neutralかつ|dT/dt|≦T
steady以外の時は、シートの位置、姿勢、又はサスペンション特性を変更しない場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。中立位置以外で保舵している(|dT/dt| =0)時でも、シートの位置、姿勢、又はサスペンション特性を変更するようにしてもよい。
【0195】
本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。