特許第6011288号(P6011288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011288
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】船外機エンジンの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/02 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   F01P3/02 X
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-265422(P2012-265422)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109258(P2014-109258A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】泰圓澄 法文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴司
(72)【発明者】
【氏名】礒部 聡
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−022018(JP,A)
【文献】 特開2000−142577(JP,A)
【文献】 特開2006−046139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/00− 9/12
F01P 1/00−11/20
F02F 1/00− 1/42, 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトが鉛直方向に支持され、Vバンク各々に複数気筒が上下に重ねて配列され、一方のバンクと他方のバンクのシリンダブロックが上下にずれて配置されるV型エンジンにおいて、外部から汲み上げた海水を所定の冷却経路に沿って流通させる冷却系を有する船外機エンジンの冷却構造であって、
前記一方のバンク及び前記他方のバンクに設けられたシリンダヘッド周りの冷却水通路とシリンダブロック周りの冷却水通路直列1系統で接続されることを特徴とする船外機エンジンの冷却構造。
【請求項2】
前記一方のバンクのシリンダヘッド、前記他方のバンクのシリンダヘッド、前記他方のバンクのシリンダブロック及び前記一方のバンクのシリンダブロックのそれぞれ前記冷却水通路がこの順で順次接続されて前記所定の冷却経路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の船外機エンジンの冷却構造。
【請求項3】
上流側の前記シリンダブロック周りの冷却水通路は、前記Vバンクの内側及び外側で冷却水を並列に流通させ
下流側の前記シリンダブロック周りの冷却水通路は、前記Vバンクの内側及び外側で冷却水を直列に流通させることを特徴とする請求項1又は2に記載の船外機エンジンの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関を搭載する船外機において特にV型エンジンを冷却するための冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の船外機においてエンジン出力トルクをドライブシャフトからプロペラシャフトに伝達させ、船外機後部に配置されたプロペラを回転させることで推力を得る。小型船舶等に搭載される船外機では、クランクシャフトを上下方向に配置すると共に、これに対応してエンジンの複数気筒が上下方向に配列される。この場合、エンジン冷却システムにおいて一般に、当該船外機を搭載する船舶が航行する水域中から冷却用として淡水もしくは海水を汲み上げて利用する。
【0003】
特にポート(port)側とスターボード(star‐board)側左右それぞれに複数気筒が配列されてV字状をなすV型エンジンでは、ウォータポンプによって水中から汲み上げられた冷却水はエンジン内に導入されると、ポート側とスターボード側の2方に分配される。ここで先ず、この種のV型エンジンの例を概略説明する。エンジンホルダに支持されたエンジンは、ポート側及びスターボード側にそれぞれ例えば3気筒ずつ配列される。各気筒ともシリンダブロック及びシリンダヘッドを有し、これらはクランクケースと一体的に結合される。なお、エンジンホルダの下方にはオイルパンやウォータポンプ等の機能部品が配設される。また、エンジンの頂部には冷却水温度に応じて開閉作動するサーモスタットが配置されると共に、その下流側に接続されたリターンホースを介して冷却水が排出されるようになっている。
【0004】
かかるエンジンの冷却システムもしくは冷却系において、図9を参照してウォータポンプによって水中から汲み上げられた冷却水は、該ウォータポンプに接続されたウォータチューブからポート側及びスターボード側へ50%ずつ実質的に二分されて供給される。冷却水はその後、各バンクにおいてエンジン内部に設けられた冷却水通路を通りながら、シリンダブロック及びシリンダヘッドを冷却し、サーモスタットを通ってエンジン外部へ排出される。
【0005】
なお、この種の冷却構造として例えば特許文献1に記載のものでは、直列4気筒エンジン本体内に下方から送給された冷却水が、シリンダヘッドとシリンダブロックの両方にそれぞれ形成された排気通路周りの冷却水路で、シリンダヘッド側とシリンダブロック側の何れか一つに導入されて両方を通過してから何れか一つから排出されるように、排気通路周りの冷却水路のシリンダヘッド側とシリンダブロック側とが直列的に接続されると共に、排気通路周りの冷却水路を通過して排出された冷却水が、シリンダヘッドに形成された燃焼室周りの冷却水路と、シリンダブロックに形成されたシリンダ周りの冷却水路とにそれぞれ送られるように、冷却水を排出する側の排気通路周りの冷却水路が、シリンダヘッドの燃焼室周りの冷却水路とシリンダブロックのシリンダ周りの冷却水路とに、それぞれ直列的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3685416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の冷却システムもしくは冷却系において、V型エンジンを搭載する船外機にあっては、左右バンクのシリンダ冷却がアンバランスになりがちであり、いずれかの側のシリンダのオーバヒートを生じ易いという問題があった。即ち、ウォータポンプから供給された冷却水は、ポート側シリンダとスターボード側シリンダの2系統に分配されるため、直列エンジンに比べて冷却水の流速が遅くなる。このため僅かなウォータポンプの性能低下等に起因して、ポート側及びスターボード側間で冷却水の流量バランスが崩れ易い。
また、船外機のウォータポンプは海水を汲み上げて使用するため、冷却水に砂等が混入すると磨耗が進んでポンプ性能の低下を来たすことがある。
【0008】
なお、特許文献1に記載のものにおいて、シリンダヘッドのエキゾースト周りとシリンダブロックのエキゾースト周りとは直列に接続されるものの、シリンダヘッドの燃焼室周りとシリンダブロックのボア周りとは並列に接続される。そのため燃焼室周りでは温度が下がり切らず、シリンダボア周りでは温度が上がり切らないという問題は依然そのまま残存する。
【0009】
本発明はかかる実情に鑑み、適正且つ高い効率で有効にエンジンを冷却する船外機エンジンの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による船外機エンジンの冷却構造は、クランクシャフトが鉛直方向に支持され、Vバンク各々に複数気筒が上下に重ねて配列され、一方のバンクと他方のバンクのシリンダブロックが上下にずれて配置されるV型エンジンにおいて、外部から汲み上げた海水を所定の冷却経路に沿って流通させる冷却系を有する船外機エンジンの冷却構造であって、
前記一方のバンク及び前記他方のバンクに設けられたシリンダヘッド周りの冷却水通路とシリンダブロック周りの冷却水通路直列1系統で接続されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による船外機エンジンの冷却構造において、前記一方のバンクのシリンダヘッド、前記他方のバンクのシリンダヘッド、前記他方のバンクのシリンダブロック及び前記一方のバンクのシリンダブロックのそれぞれ前記冷却水通路がこの順で順次接続されて前記所定の冷却経路が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明による船外機エンジンの冷却構造において、上流側の前記シリンダブロック周りの冷却水通路は、前記Vバンクの内側及び外側で冷却水を並列に流通させ
下流側の前記シリンダブロック周りの冷却水通路は、前記Vバンクの内側及び外側で冷却水を直列に流通させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却系を直列1系統で構成することで、冷却水の流速は実質的に2倍になり、冷却水の澱みをなくすと共に局所的な温度上昇を抑制して冷却効率を大幅に向上することができる。また、冷却系全体と通して、冷却水は1系統の冷却経路を流れるため、気筒間で冷却水量が一定に保たれ、全気筒をバランスよく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る船外機の概略構成例を示す左側面図である。
図2】本発明に係る船外機のロアユニットのプロペラ軸方向に沿った縦断面図である。
図3】本発明に係る船外機エンジンの上面図である。
図4】本発明に係る船外機エンジンの側面図である。
図5】本発明に係る船外機エンジンの後方から見た図である。
図6】本発明に係る船外機エンジンにおけるシリンダブロック及びシリンダヘッドの構成例を示す図である。
図7】本発明に係る船外機エンジンにおける冷却系を模式的に示す図である。
図8】本発明に係る船外機エンジンにおける冷却系の変形例を模式的に示す図である。
図9】従来の船外機エンジンにおける冷却系を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明による船外機エンジンの冷却構造における好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る船外機10の概略構成例を示す左側面図である。この場合、船外機10は図示のように、その前部側にて船体の後尾板Pに固定される。なお、以下の説明中で各図において必要に応じて、船外機10の前方を矢印Frにより、また後方を矢印Rrにより示し、また船外機10の側方右側を矢印Rにより、側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。更に、上方を矢印Upにより、また下方を矢印Dnによりそれぞれ示す。
【0017】
船外機10の全体構成において、上部から下部へエンジンユニットもしくはパワーユニット11、ミッドユニット12及びロアユニット13が順に配置構成される。エンジンユニット11においてエンジン14はエンジンベースを介して、そのクランクシャフト15が鉛直方向を向くように縦置きに搭載支持される。なお、エンジン14としては4サイクル多気筒エンジンを採用可能である。図1では簡略化して図示するが、この例ではポート(PORT)側及びスターボード(STBD)側にそれぞれ3気筒ずつ配列されてなるV型6気筒エンジンとする。エンジン14の基本構成において、各気筒とも後述するシリンダブロック及びシリンダヘッドを有し、それらがクランクケースと一体的に結合する。
【0018】
ミッドユニット12は、アッパマウント16及びロアマウント17を介して、スイベルブラケット18に設定された支軸19のまわりに一体に水平回動可能となるように支持される。スイベルブラケット18の左右両側にはクランプブラケット20が設けられ、このクランプブラケット20を介して船体の後尾板Pに固定される。スイベルブラケット18は、左右方向に設定されたチルト軸21のまわりに上下方向に回動可能に支持される。
【0019】
ミッドユニット12において、クランクシャフト15の下端部に連結するドライブシャフト22が上下方向に貫通配置され、このドライブシャフト22の駆動力が、ロアユニット13の後述するギヤケース内のプロペラシャフトに伝達されるようになっている。ドライブシャフト22の前側には、前後進の切換等を行うためのシフトロッド23が上下方向に平行配置される。なお、ミッドユニット12は、ドライブシャフト22を収容するドライブシャフトハウジングを有している。また、ミッドユニット12にはエンジンユニット11を潤滑するためのオイルを貯留するオイルパンが配設される。
【0020】
ロアユニット13において、ドライブシャフト22の駆動力によりプロペラ24を回転駆動する複数のギヤ等を含むギヤケース25を有する。ミッドユニット12からそれぞれ下方へ延出したドライブシャフト22はそれ自体に取り付けたギヤが、ギヤケース25内のギヤと噛合することで最終的にプロペラ24を回転させるが、シフトロッド23の作用でギヤケース25内のギヤ装置の動力伝達経路を切り換える、即ちシフトするようになっている。
【0021】
図2は、ロアユニット13のケーシング26内の主要構成を示す図である。ケーシング26におけるギヤケース25の弾丸状もしくは砲弾状の尖端部側にシフトロッド23が上下に挿通支持される。なお、シフトロッド23はエンジンユニット11からミッドユニット12までの領域に延設される上部シフトロッド23Aと、ロアユニット13内に配置される下部シフトロッド23Bとで実質的に2分割構成される。下部シフトロッド23Bは、プロペラシャフト27の軸線延長線と交差する位置まで垂設される。
【0022】
また、ケーシング26における脚部28の前後方向の略中央部付近には、ドライブシャフト22が挿通支持される。ドライブシャフト22は、脚部28の上部付近にて例えばテーパローラベアリング29を介して、ケーシング26内で回転自在に支持され、その下端部がギヤケース25内に到達するように垂設される。ドライブシャフト22におけるテーパローラベアリング29の下方部位には、螺旋状もしくはスパイラル状の凹溝30が刻設されている。ドライブシャフト22が回転することで凹溝30は、オイル送給もしくはオイルポンプ機能を有し、ケーシング26内の潤滑を要する主要部位、部材に潤滑オイルを供給すべくオイル循環経路が形成される。なお、エンジンユニット11に対する潤滑用オイルポンプは、この凹溝30によるものとは別個に配置構成される。
【0023】
ケーシング26の上面においてドライブシャフト22に軸着するかたちで、冷却水ポンプ31が取り付けられる。この冷却水ポンプ31は、船外機10外部の水中から水を取り込んで、エンジンユニット11側に冷却水を供給する。この場合、ケーシング26の下部前側付近に水取入口32が設けられ、詳細な図示は省略するが、ケーシング26内部において冷却水ポンプ31及び水取入口32間が接続される。水取入口32は、前後方向でドライブシャフト22と下部シフトロッド23Bとの間に配置される。
【0024】
冷却水ポンプ31において、ドライブシャフト22にインペラ33が固定され、インペラ33はポンプケース34内に収容される。ドライブシャフト22が回転することで冷却水ポンプ31の吐出口31aから加圧した冷却水が吐出され、その冷却水は冷却水パイプもしくはチューブ35を介して送給され、最終的にエンジンユニット11側に供給される。
【0025】
ここで、エンジン14について付言すると、図1では略記されるが、鉛直方向に支持されたクランクシャフト15はクランクケース36内に収容される。Vバンクを構成する各気筒において、図3図5も参照してクランクケース36に対してシリンダブロック37及びシリンダヘッド38が結合される。なお、シリンダヘッド38にはシリンダヘッドカバー38Aが被着する。ここに、図3はエンジン14の上面図、図4はその側面図、図5は後方から見た図である。図5に示されるように、シリンダブロック37においてVバンクの一方であるスターボード側バンクでは上から順に1番(♯1)気筒、3番(♯3)気筒及び5番(♯5)気筒が配列され、また、Vバンクの他方であるポート側バンクでは上から順に2番(♯2)気筒、4番(♯4)気筒及び6番(♯6)気筒が配列される。
【0026】
次に図6は、本実施形態におけるシリンダブロック37及びシリンダヘッド38の構成例を示している。シリンダブロック37の内部には、各気筒毎にシリンダボア39が形成され、ピストンがシリンダボア39内で往復動可能に内嵌するようになっている。
【0027】
スターボード側バンク及びポート側バンクそれぞれにおいて、各気筒のシリンダボア39の外側部には、シリンダヘッド38のエキゾーストポートと接続される排気通路40,41が設けられる。これらの排気通路40,41は上下方向に形成されており、各エキゾーストポートからの排気ガスを集合させて、エンジン14の下方へと導く。排気ガスは更に、ロアユニット13内に形成された排気通路を経て水中に排出される。
【0028】
シリンダヘッド38において、スターボード側バンク及びポート側バンクの各気筒毎にシリンダボア39に整合する燃焼室とこの燃焼室にそれぞれ連通するインテークポート42,43及びエキゾーストポートとが形成される。シリンダヘッド38内には、吸気バルブ及び排気バルブを開閉駆動する動弁装置が収容され、この動弁装置によりエンジン14に対する吸気及び排気が適正制御されるようにしている。
【0029】
さて、本発明の船外機エンジンの冷却構造において、所定の冷却水経路に沿って冷却水を流通させてエンジンを冷却する冷却系を有する。この冷却系における主要な冷却水の流れを順に図7も参照しながら説明すると、冷却水ポンプ31によって船外機10外部の水中から取り込まれた冷却水が、冷却水チューブ35を介してエンジンユニット11側に供給される。この場合、エンジン14のスターボード側バンクにおけるシリンダブロック37の下部44に冷却水が供給される。具体的には♯5気筒のシリンダボア39周りの冷却水通路45(ウォータジャケット)へと連通孔46を介して流入する。
【0030】
スターボード側バンクにおける各シリンダボア39周りには、相互に連通する冷却水通路45が形成されるが、♯5気筒における一部(冷却水通路45A)が仕切り壁47,48を介してその他の領域と隔絶されている。このため冷却水通路45Aへ流入した冷却水は、スターボード側バンクにおける♯5気筒のシリンダヘッド38側の最下部へ流入し、スターボード側バンクのシリンダヘッド38に形成された冷却水通路49を下方から上方へと流通する。
【0031】
冷却水は次に、冷却水通路49からポート側バンクにおける♯2気筒のシリンダヘッド38側、即ち最上部へ流入する。ここで、ポート側バンクのシリンダヘッド38には♯2〜♯6気筒にかけて冷却水通路50が形成されており、冷却水通路49の上部と冷却水通路50の上部とは、冷却水パイプもしくはチューブ51を介して相互に接続される。そして、冷却水は更に、ポート側バンクのシリンダヘッド38の冷却水通路50を上方から下方へと流通する。
【0032】
冷却水は次に、冷却水通路50からポート側バンクにおける♯6気筒のシリンダブロック37側、即ち最下部へ流入する。ここで、ポート側バンクにおける♯2〜♯6気筒の各シリンダボア39周りには、相互に連通する冷却水通路52が形成される。そして、冷却水は更に、ポート側バンクのシリンダブロック37の冷却水通路52を下方から上方へと流通する。ここで、スターボード側バンク及びポート側バンクによって挟まれるV字の底部に位置して、上下方向に冷却水通路53が形成される。冷却水通路52の上部と冷却水通路53の上部とは、連通孔54を介して相互に接続される。また、冷却水通路53の下部と冷却水通路45のうち内側の冷却水通路45aとは、連通孔55を介して相互に接続される。冷却水は更に、冷却水通路55を上方から下方へと流通する。
【0033】
冷却水は次に、連通孔55からスターボード側バンクにおける♯5気筒のシリンダブロック37側、特に冷却水通路45aの最下部へ流入する。そして、冷却水は更に、スターボード側バンクのシリンダブロック37の冷却水通路45aを下方から上方へと流通し、冷却水通路45aの上部で外側の冷却水通路45bへ流入する。その後、冷却水は冷却水通路45bを上方から下方へと流通し、仕切り壁47で折り返すようにシリンダブロック37のエキゾースト周りの冷却水通路56に入って、上方へと流通する。シリンダブロック37の上部で冷却水通路56にリターンホース57(落し水通路)が接続され、このリターンホース57の頂部途中に配置されたサーモスタット58を経て、冷却水をエンジン外部へと排出する。なお、ポート側バンクにおいてもシリンダブロック37のエキゾースト周りの冷却水通路59を有する。
【0034】
本発明の船外機エンジンの冷却構造において、一方のスターボード側バンク及び他方のポート側バンク間で、シリンダヘッド周りの冷却水通路49,50とシリンダブロック周りの冷却水通路45,52がそれぞれ直列1系統で接続される。
特に本例では最も冷却を要するシリンダヘッド周りの冷却水通路49,50について、上流側のスターボード側バンクの冷却水通路49と下流側のポート側バンクの冷却水通路50が直列接続され、その下流側にシリンダブロック周りの冷却水通路45,52が直列接続される。
【0035】
先ず、冷却系を直列1系統で構成することで、例えば特に並列2系統に分配していたものに比較して、冷却水の流速は実質的に2倍になり、冷却水の澱みをなくすと共に局所的な温度上昇を抑制して冷却効率を大幅に向上することができる。
また、冷却系全体と通して、冷却水は1系統の冷却経路を流れるため、気筒間で冷却水量が一定に保たれ、全気筒をバランスよく冷却することができる。従来のように並列のうちのいずれか一方に偏って冷却水が流れると他方がオーバヒートする危険があるが、そのようなアンバランスが生じないので、オーバヒートし難い冷却系を実現する。
更に、冷却効率が向上することで、ウォータポンプ31を小型化しても必要且つ十分な冷却能力を確保することができる。また、ウォータポンプ31の小型化により所謂メカロス(機械的損失)等を有効に低減することができる。
【0036】
また、上流側のシリンダブロック周りの冷却水通路52は図6に示されるように、Vバンクの内側及び外側で冷却水を並列に流通させる。
下流側のシリンダブロック周りの冷却水通路45(45a,45b)は、Vバンクの内側の冷却水通路45a及び外側の冷却水通路45bで冷却水を直列に流通させる。
【0037】
上記のように最も冷却を要するシリンダヘッド周りを先に冷却した後、次にシリンダブロック周りを冷却することで冷却系全体としてバランスよく冷却することができる。この場合、冷却経路の下流側程、冷却水温度が高くなるが、下流側のシリンダブロック周りの冷却水通路45を並列とせず直列にしたことで、冷却経路の下流側でも十分な冷却効果を得ることができる。
【0038】
ここで、本発明の変形例として、図8に示すようにスターボード側バンクのシリンダブロック周りの冷却水通路45及びシリンダヘッド周りの冷却水通路49を上流側として同時並列的に冷却し、ポート側バンクのシリンダブロック周りの冷却水通路52及びシリンダヘッド周りの冷却水通路50を下流側として同時並列的に冷却することも可能である。この場合も冷却経路全体としては直列1系統で構成され、上記同様に高い冷却性能を実現することができる。
【0039】
更に上記変形例において、下流側となるシリンダブロック周りの冷却水通路を、Vバンクの内側と外側とで冷却水を直列に流通させるようにしてもよい。
【0040】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態では6気筒エンジンの例で説明したが、それ以外の大小異なる気筒数のエンジンに対しても本発明は同様に適用である。
【符号の説明】
【0041】
10 船外機、11 エンジンユニット、12 ミッドユニット、13 ロアユニット、14 エンジン、20 クランプブラケット、22 ドライブシャフト、23 シフトロッド、24 プロペラ、25 ギヤケース、26 ケーシング、27 プロペラシャフト、28 脚部、29 テーパローラベアリング、30 凹溝、31 冷却水ポンプ、32 水取入口、33 インペラ、34 ポンプケース、35 冷却水パイプ、36 クランクケース、37 シリンダブロック、38 シリンダヘッド、39 シリンダボア、40,41 排気通路、42,43 インテークポート、44 下部、45,49,50,52,53,55,56,59 冷却水通路、46,54,55 連通孔、47,48 仕切り壁、57 リターンホース、58 サーモスタット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9