(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1突出部よりも主走査方向外側に形成され、前記フレームに当接させて前記フレームに対する走査レンズの光軸方向の位置を決めるための第2位置決め部を備えたことを特徴とする請求項9に記載の走査レンズ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フランジ部の強度を確保するため、フランジ部をレンズ部の主走査方向の端部よりも光軸方向に突出させて、その光軸方向の厚さを厚くすると、レンズ部とフランジ部の境界部分付近に凹部ができて断面積が相対的に小さくなる。そうすると、金型に樹脂を注入して走査レンズを成形する際に境界部分付近の樹脂の流動性が低下して、成形性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、樹脂製の走査レンズの成形性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するための本発明は、樹脂によって成形された走査レンズであって、主走査方向に長尺状に形成されたレンズ部と、レンズ部の主走査方向の一端部から主走査方向外側に向けて延出するフランジ部と、
レンズ部とフランジ部の副走査方向の少なくとも一方側で主走査方向に沿って延びるように形成されたリブ部と、走査レンズの副走査方向の一側面から副走査方向外側に向けて突出する第1突出部と、を備える。
フランジ部は、レンズ部の前記一端部よりも光軸方向に突出し
ている。
レンズ部の光軸方向の厚さは、主走査方向の中央部が前記一端部およびフランジ部よりも大きい。
第1突出部は、副走査方向から見て、レンズ部とフランジ部の境界部分に重なる位置に設けられている。
リブ部の主走査方向の端部は、レンズ部とフランジ部とにより形成される凹部の底よりも光軸方向に突出し、かつ、光軸方向の厚さが主走査方向の中央部よりも小さい。
【0007】
このような構成によれば、フランジ部がレンズ部の主走査方向の一端部よりも光軸方向に突出していることでレンズ部とフランジ部の境界部分付近に凹部ができて光軸方向の厚さが小さくなり断面積が減少するが、境界部分に重なる位置に副走査方向外側に突出する第1突出部が設けられていることで、境界部分付近の断面積の減少を緩和することができる。これにより、走査レンズを成形する際の境界部分付近の樹脂の流動性を向上させることができるので、走査レンズの成形性を向上させることができる。
また、樹脂製の走査レンズではレンズ部の一端部付近の樹脂の流動性を確保するため、一端部の厚さをある程度確保する必要があるが、第1突出部により一端部付近の樹脂の流動性を向上させることができることで、レンズ部の光軸方向の厚さを主走査方向の中央部が主走査方向の一端部よりも大きい構成として、一端部の厚さを従来よりも薄くすることが可能となる。これにより、走査レンズを全体として光軸方向に薄型化することができる。また、リブ部が、レンズ部とフランジ部とにより形成される凹部の底よりも光軸方向に突出していることで、リブ部により境界部分付近の断面積を大きくすることができるので、走査レンズを成形する際の樹脂の流動性をより向上させることができる。
【0008】
前記した走査レンズにおいて、
レンズ部の前記一端部の光軸方向の厚さは、レンズ部の光軸方向の厚さのうちで最も小さい構成とすることができる。
【0009】
これによれば、走査レンズを全体として光軸方向に薄型化することができる。
【0010】
前記した走査レンズ
において、リブ部の主走査方向の端部とフランジ部とは、光軸方向の凹部が形成された側の面が面一である構成とすることができる。
【0011】
これによれば、
リブ部からフランジ部への樹脂の流動性を向上させることができ、走査レンズの成形不良の発生をより抑制することができる。
【0012】
前記した走査レンズにおいて、第1突出部は、副走査方向から見て、前記境界部分と前記凹部の両方に重なる位置に設けられている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、第1突出部がリブ部上において凹部にかかるように設けられることで光軸方向に長くなるので、境界部分付近の断面積をさらに大きくすることができ、走査レンズを成形する際の樹脂の流動性をさらに向上させることができる。
【0014】
前記した走査レンズは、走査レンズの主走査方向の端面のうち第1突出部から遠い側の端面に、金型のゲートに対応するゲート部を有する構成とすることができる。
【0015】
これによれば、レンズ部の一端部ではゲートから注入された樹脂の圧力が低下するため、樹脂が流れにくくなるが、第1突出部により一端部付近の樹脂の流動性を向上させることができることで、第1突出部から遠い側の端面(ゲート)から第1突出部に近い側の端面に向けて樹脂を良好に流すことができる。
【0016】
前記した走査レンズは、走査レンズの前記一側面とは反対側の側面のうち、副走査方向から見て、前記境界部分と重なる位置から副走査方向外側に向けて突出する第2突出部を備える構成とすることができる。
【0017】
これによれば、境界部分付近の断面積の減少をより緩和することができるので、走査レンズを成形する際の樹脂の流動性をより向上させることができる。
【0018】
前記した走査レンズにおいて、第1突出部と第2突出部は、前記境界部分を挟んで対称に形成されている構成とすることができる。
【0019】
これによれば、境界部分付近の樹脂の流れを副走査方向両側で略均一にすることができるので、樹脂の流動性を一層向上させることができる。
【0020】
前記した走査レンズは、主走査方向に延びるパーティングラインを有し、第1突出部は、パーティングラインから光軸方向に離れるにしたがって主走査方向の幅が徐々に小さくなるような形状に形成されている構成とすることができる。
【0021】
これによれば、走査レンズを金型から取り出す際に第1突出部が抵抗になりにくいため、走査レンズを容易に取り出すことができる。これにより、走査レンズの生産性を向上させることができる。
【0022】
前記した走査レンズにおいて、第1突出部は、走査レンズが取り付けられるフレームに当接させてフレームに対する走査レンズの副走査方向の位置を決めるための第1位置決め部を有する構成とすることができる。
【0023】
境界部分付近はフランジ部よりも金型のキャビティが狭くなるので、成形の際に樹脂の圧力が高くなって、ひけなどが起こりにくい。そのため、境界部分付近に形成された第1突出部に位置決め部を設けることで、位置決め部を精度良く形成することができる。
【0024】
前記した走査レンズは、第1突出部よりも主走査方向外側に形成され、前記フレームに当接させて前記フレームに対する走査レンズの光軸方向の位置を決めるための第2位置決め部を備える構成とすることができる。
【0025】
これによれば、レンズ部とフランジ部の境界部分よりも強度の高いフランジ部に第2位置決め部が設けられることになるので、走査レンズをフレームに取り付ける際に走査レンズが変形することを抑制することができる。
【0026】
また、本発明は、光を出射する光源と、光源からの光を偏向する偏
向器と、前記した第1位置決め部を有する走査レンズと、走査レンズが取り付けられるフレームと、を備え、フレームが、第1位置決め部が当接する当接部を有する、光走査装置として構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、樹脂製の走査レンズの成形性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、主走査方向とは、感光体ドラムなどの被走査面上におけるレーザ光の走査方向であって走査レンズの長手方向と同じ方向であり、副走査方向とは、主走査方向と走査レンズの光軸方向の両方に直交する方向である。
【0030】
まず、本発明の走査レンズが使用される光走査装置の概略構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光走査装置1は、光源の一例としての半導体レーザ2と、開口絞り3と、カップリングレンズ4と、偏向器の一例としてのポリゴンミラー5と、走査レンズ100と、走査レンズ100などの光学部品が取り付けられるフレーム10とを主に備え、半導体レーザ2から出射されたレーザ光を図示しない被走査面に点状に集光し、走査するように構成されている。
【0031】
半導体レーザ2は、レーザ光を出射する公知の素子である。
開口絞り3は、フレーム10の内部に設けられた壁に開口3Aを形成したものであり、本実施形態においてはフレーム10に一体に設けられている。この開口絞り3は、半導体レーザ2から出射されたレーザ光の主走査方向および副走査方向の幅を規定する。
【0032】
カップリングレンズ4は、開口絞り3を通過したレーザ光を主走査方向に略平行の光束に変換するとともに、ポリゴンミラー5のミラー面5A上に副走査方向に結像させるレンズである。
ポリゴンミラー5は、4つのミラー面5Aが回転軸5Bから等距離に配置された部材であり、回転軸5Bを中心に一定速度で回転することで、カップリングレンズ4を通過したレーザ光を反射して主走査方向に偏向する。
【0033】
走査レンズ100は、ポリゴンミラー5で偏向されたレーザ光が通過するレンズである。この走査レンズ100は、レーザ光を図示しない被走査面上に点状に結像させるとともに、ポリゴンミラー5のミラー面5Aの面倒れを補正する。また、走査レンズ100は、ポリゴンミラー5により等角速度で偏向されたレーザ光を、被走査面上に等速度で走査するようなfθ特性を有している。
【0034】
次に、本発明の特徴部分に関連する走査レンズ100の詳細な構成について説明する。
図2に示す走査レンズ100は、その形状に対応するキャビティを有する金型に溶融樹脂を注入し、樹脂を固めることで成形されている。本発明において、走査レンズを成形する具体的な方法については特に限定されず、例えば、射出成形法などを採用することができる。このような成形方法によって成形される走査レンズ100は、
図3に示すように、主走査方向に沿って直線状に延びるパーティングラインPLを有し、さらに、主走査方向の端面101,102のうちの一方の端面101に金型のゲートに対応する、一例としてゲート残りが凸状をなすゲート部Gを有している。
【0035】
図2および
図3に示すように、走査レンズ100は、レンズ部110と、一対のフランジ部120と、一対のリブ部130と、第1突出部140と、第2突出部150と、第3突出部160と、第4突出部170とを主に備えて構成されている。なお、
図3は、
図2に示す走査レンズ100を下側から見た状態を示している。
【0036】
図3および
図4に示すように、レンズ部110は、主走査方向に長尺状に形成されており、レーザ光が入射されるレンズ面110Aと、レーザ光を出射するレンズ面110Bとを有している。レンズ部110の光軸方向の厚さは、主走査方向の中央部が端部111,112よりも大きくなっており、端部111,112に向けて徐々に小さくなっている。
【0037】
フランジ部120は、レンズ部110の主走査方向の端部111,112から主走査方向外側、すなわちレンズ部110の中心から離れる方向に向けて延出するように、レンズ部110の主走査方向の端部111,112にそれぞれ設けられている。
【0038】
フランジ部120の光軸方向の面のうち、レーザ光の入射側の面である入射側面121は、レンズ面110Aから連続して走査レンズ100の端面101,102側に向けて延びるように形成されている。入射側面121の第1突出部140および第3突出部160よりも主走査方向外側の部分は、第2位置決め部の一例であり、光軸方向に対して直交する平面として形成され、
図1および
図2に示すように、走査レンズ100をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10の内部に設けられた一対のリブ13に当接させることでフレーム10に対する走査レンズ100の光軸方向の位置を決める位置決め部として機能する。
【0039】
図3および
図4に戻り、レーザ光の出射側の面である出射側面122は、レンズ部110の端部111,112よりも光軸方向外側に位置する第1の面123と、第1の面123と端部111,112を接続する第2の面124とを有して形成されている。言い換えれば、フランジ部120は、レンズ部110の端部111、112よりも光軸方向に突出するように形成されている。これにより、走査レンズ100には、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B1,B2付近に光軸方向に凹む形状の凹部103が形成されている。また、出射側面122のうち、第1の面123は、光軸方向に対して直交する平面として形成され、第2の面124は、光軸方向に対して傾斜した面として形成されている。
【0040】
なお、
図1および
図2に示すように、フレーム10には、走査レンズ100を取り付ける際の光軸方向の位置の基準となる前記したリブ13が主走査方向の両端部にそれぞれ設けられており、また、各リブ13に対向する位置に板状の樹脂バネ14がそれぞれ設けられている。走査レンズ100は、フランジ部120がリブ13と樹脂バネ14との間に挿入されることで、樹脂バネ14によって第1の面123が付勢されることで、入射側面121がリブ13に押し付けられた状態でフレーム10に支持されている。本実施形態では、第1の面123が光軸方向に対して直交する平面であることで、樹脂バネ14によりフランジ部120をリブ13に向けて安定して付勢することができる。
【0041】
図3および
図5に示すように、リブ部130は、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B1,B2を含む、レンズ部110とフランジ部120の副走査方向両側において、主走査方向に沿って延びるようにそれぞれ形成されている。より詳細に、リブ部130は、副走査方向から見て、主走査方向の中央部分である幅広部130Aと、主走査方向の両側部分である幅狭部130Bと、幅広部130Aと幅狭部130Bとを連結する連結部130Cとを有して構成されている。
【0042】
幅狭部130Bは、レンズ部110とフランジ部120とにより形成される凹部103(
図4参照)の底よりも光軸方向に突出している。幅狭部130Bのレーザ光の出射側の面である第3の面132は、フランジ部120の第1の面123と面一な面として形成されている。
【0043】
幅広部130Aの主走査方向中央には、光軸方向外側に向けて突出する凸部133がそれぞれ設けられている。凸部133のうちの一方は、
図1および
図2に示すように、走査レンズ100をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10に設けられた凹部11に係合させることでフレーム10に対する走査レンズ100の主走査方向の位置を決める位置決め部として機能する。
【0044】
図6(b)および
図7(b)に示すように、各フランジ部120の第1の面123と第2の面124の稜線ELは、光軸方向から見たとき、全体として主走査方向外側に向けて凸となる曲線状をなしており、リブ部130の副走査方向内側の端縁に連続するように形成されている。より詳細に、本実施形態において、稜線ELは、副走査方向の中央部分であって副走査方向に沿って略まっすぐ延びる直線部EL1と、直線部EL1の端部からリブ部130の端縁に連続するように湾曲しながら延びる曲線部EL2とを主に有して構成されている。本発明において、第1の面と第2の面の稜線は、湾曲する部分が、走査レンズの成形時に通常形成される角部や隅部の丸みよりも大きくなっており、例えば、本実施形態の稜線ELについて言えば、直線部EL1の副走査方向の長さをL1、曲線部EL2の副走査方向の長さをL2として、L1<L2となっている。
【0045】
曲線部EL2の湾曲形状と、レンズ部110の端部111,112の角部113の湾曲形状とは互いに異なっており、具体的には、曲線部EL2の方が、端部111,112の角部113よりも緩やかな湾曲形状をなしている。第2の面124の副走査方向両側の部分は、曲線部EL2から角部113に向かうにつれて湾曲形状が徐々に角部113の形状に近づくように、第1の面123と端部111,112とを滑らかに接続している。
【0046】
図5に示すように、第1突出部140および第3突出部160は、走査レンズ100の副走査方向の一側面、詳細には一方のリブ部130の側面134から副走査方向外側である図示下側に向けて突出するように形成されている。また、第2突出部150および第4突出部170は、走査レンズ100の前記した一側面とは反対側の側面、詳細には他方のリブ部130の側面135から副走査方向外側である図示上側に向けて突出するように形成されている。
【0047】
より詳細に、
図6(a),(b)に示すように、第1突出部140は、副走査方向から見て、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B2と、レンズ部110とフランジ部120とにより形成される凹部103の両方に重なる位置に設けられている。一方、第2突出部150は、境界部分B2を挟んで第1突出部140と対称な位置および対称な形状に形成されている。
【0048】
また、
図7(a),(b)に示すように、第3突出部160は、副走査方向から見て、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B1よりも主走査方向外側であって、当該境界部分B1に隣接する位置に設けられている。一方、第4突出部170は、フランジ部120を挟んで第3突出部160と対称な位置および対称な形状に形成されている。
【0049】
第1突出部140と第3突出部160は、レンズ面110A,110Bの中心を基準として対称な位置に設けられており、第2突出部150と第4突出部170は、レンズ面110A,110Bの中心を基準として対称な位置に設けられている。
【0050】
第1突出部140、第2突出部150、第3突出部160および第4突出部170は、
図6(a)および
図7(a)を代表として示すように、それぞれ、パーティングラインPLから光軸方向に離れるにしたがって主走査方向の幅が徐々に小さくなるような、略山型形状に形成されている。これにより、走査レンズ100の成形時において、走査レンズ100を金型から取り出す際に各突出部140〜170が抵抗になりにくいため、走査レンズ100を金型から容易に取り出すことができ、走査レンズ100の生産性を向上させることができる。
【0051】
また、第1突出部140、第2突出部150、第3突出部160および第4突出部170は、それぞれ、副走査方向外側の面が副走査方向に対して直交する平面状に形成されている。第1突出部140および第3突出部160の副走査方向外側の面141,161は、第1位置決め部の一例であり、
図1および
図2に示すように、走査レンズ100をフレーム10に取り付けたときに、フレーム10の底壁12に形成された当接部12Aに当接させることでフレーム10に対する走査レンズ100の副走査方向の位置を決める位置決め部として機能する。
【0052】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
走査レンズ100は、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B2付近に凹部103ができることで光軸方向の厚さが小さくなるが、境界部分B2付近に第1突出部140やリブ部130が設けられていることで、第1突出部140やリブ部130を設けない場合と比較して、境界部分B2付近の断面積を大きくすることができる。言い換えれば、走査レンズ100は、フランジ部120の断面積に対して境界部分B2付近の断面積が減少するのを緩和することができる。これにより、走査レンズ100を成形する際の境界部分B2付近の樹脂の流動性を向上できるので、走査レンズ100の成形性を向上させることができる。
【0053】
特に本実施形態では、第1突出部140の反対側に第2突出部150が設けられており、また、各突出部140,150が境界部分B2と凹部103の両方に重なる位置に設けられていることで各突出部140,150が光軸方向に長くなっているので、境界部分B2付近の断面積をより大きくすることができる。また、本実施形態では、第1突出部140と第2突出部150が対称に形成されていることで、境界部分B2付近の樹脂の流れを副走査方向両側で略均一することができる。これらにより、成形時の境界部分B2付近の樹脂の流動性をより向上できるので、走査レンズ100の成形性をより向上させることができる。
【0054】
また、レンズ部の光軸方向の厚さが端部より中央部の方が大きい構成では、成形時の端部付近の樹脂の流動性を確保するために端部の厚さをある程度確保する必要があるが、本実施形態では、境界部分B2(端部112)付近の樹脂の流動性を向上できることで、端部112の厚さを従来よりも薄くできる。特に本実施形態では、端部112の光軸方向の厚さは、レンズ部110の光軸方向の厚さのうちで最も小さく(薄く)なっている。これにより、走査レンズ100を全体として光軸方向に薄型化することができる。
【0055】
また、第1突出部140から遠い側の端面101にゲート部Gを有する構成では、境界部分B2付近は、ゲートから注入された樹脂の圧力が低下するため、樹脂が流れにくくなり得るが、本実施形態では、境界部分B2付近の樹脂の流動性を向上できることで、ゲート側の端面101から端面102に向けて樹脂を良好に流すことができる。
【0056】
また、本実施形態では、境界部分B2付近に形成された第1突出部140に位置決め部としての面141を設けたので、当該面141を精度良く形成することができる。境界部分B2付近はフランジ部120よりも金型のキャビティが狭くなるので、成形の際に樹脂の圧力が高くなるため、ひけなどが起こりにくいからである。
【0057】
また、本実施形態では、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B1,B2よりも光軸方向の厚さが大きいため強度の高いフランジ部120に、位置決め部としての入射側面121が設けられているので、走査レンズ100をフレーム10に取り付ける際の走査レンズ100の変形を抑制することができる。
【0058】
また、走査レンズ100は、第1の面123と第2の面124の稜線ELが主走査方向外側に向けて凸となる曲線状に形成されていることで、フランジ部120とリブ部130とにより形成される隅部が角張っていないため、当該隅部付近の断面形状を主走査方向において緩やかに変化させることができる。これにより、走査レンズ100を成形する際のフランジ部120とリブ部130の隅部付近の樹脂の流動性を向上できるので、走査レンズ100の成形不良の発生を抑制することができる。
【0059】
また、フランジ部120の第1の面123とリブ部130の第3の面132が面一であることで、第1の面123と第3の面132との間に段差が形成されないため、リブ部130からフランジ部120への樹脂の流動性を向上させることができ、走査レンズ100の成形不良の発生をより抑制することができる。
【0060】
また、ゲート部Gを有するフランジ部120の稜線ELが前記した曲線状に形成されることで、走査レンズ100の成形時に樹脂の流動性を安定させることができる。ゲート部Gを有するフランジ部120付近は、ゲートから樹脂が注入されることで、樹脂の圧力が高くなってフランジ部120とリブ部130の隅部付近の樹脂の流れが乱れやすくなるが、本実施形態では、フランジ部120とリブ部130の隅部付近の断面形状が緩やかに変化しているからである。
【0061】
一方、ゲート部Gから遠い側のフランジ部120の稜線ELが前記した曲線状に形成されていることで、ゲートから注入された樹脂をゲート部G側とは反対側の端面102に向けて良好に流すことができる。ゲート部Gから遠い側のフランジ部120付近では注入された樹脂の圧力が低下するため、樹脂がゲート部G側と比較して流れにくくなるが、本実施形態では、フランジ部120とリブ部130の隅部付近の断面形状が緩やかに変化しているからである。
【0062】
また、レンズ部110の両端部に設けられたフランジ部120のそれぞれにおいて、稜線ELが前記した曲線状に形成されていることで、ゲートから注入された樹脂を走査レンズ100の主走査方向全体にわたって良好に流すことができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0064】
前記実施形態では、第1突出部140が、レンズ部110とフランジ部120の境界部分B2と、レンズ部110とフランジ部120とにより形成される凹部103の両方に重なる位置に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1突出部は、レンズ部とフランジ部の境界部分に重なる位置にだけかかるように設けられていてもよい。
【0065】
前記実施形態では、レンズ部110とフランジ部120の境界部分に重なる位置に設けられた第1突出部140が、走査レンズ100の主走査方向の一方側だけに形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の第1突出部は、走査レンズ100の主走査方向の両側にそれぞれ形成されていてもよい。具体的には、例えば、前記実施形態において、第3突出部160が境界部分B1に重なる位置に設けられていてもよい。
【0066】
前記実施形態では、第1突出部140の反対側に第2突出部150が設けられていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、第2突出部を備えない構成であってもよい。
なお、前記実施形態で示した突出部140〜170の具体的な構成は一例であり、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、突出部は、円柱状に形成されていてもよいし、略半球状に形成されていてもよい。
【0067】
前記実施形態では、フランジ部120の入射側面121が走査レンズ100の光軸方向の位置を決めるための位置決め部として機能する形態を例示したが、本発明はこれに限定されず、光軸方向に対して直交する平面である第1の面123が位置決め部として機能する形態であってもよい。このように走査レンズが位置決め部を有することで、光走査装置のフレームに対する走査レンズの取り付け性を向上させることができる。また、位置決めとして機能する部分を前記実施形態の入射側面121や第1の面123とは別に形成する構成と比較して、走査レンズの形状を簡略化することができる。
【0068】
前記実施形態では、フランジ部120がレンズ部110の端部111,112にそれぞれ設けられていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、レンズ部の主走査方向の一方の端部だけに設けられていてもよい。なお、フランジ部がレンズ部の一端部だけに設けられている場合、走査レンズは、主走査方向の端面のうちレンズ部の一端部に近い側の端面にゲート部を有する構成であってもよいし、主走査方向の端面のうちレンズ部の一端部から遠い側の端面にゲート部を有する構成であってもよい。
【0069】
前記実施形態で示したリブ部130の具体的な構成は一例であり、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、リブ部は、副走査方向から見て、レンズ部とフランジ部の両方を完全に覆うように形成されていてもよい。また、前記実施形態では、リブ部130がレンズ部110とフランジ部120の境界部分の副走査方向両側に形成されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、リブ部はレンズ部とフランジ部の境界部分の副走査方向の一方側だけに形成されていてもよいし、リブ部を備えない構成であってもよい。
【0070】
前記実施形態で示したレンズ部110やフランジ部120の具体的な構成は一例であり、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、フランジ部は、第1の面が曲面であってもよい。
【0071】
前記実施形態では、走査レンズ100は、レンズ部110の光軸方向の中央付近にパーティングラインPLを有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明においてパーティングラインが形成される位置は特に限定されず、例えば、走査レンズは、レンズ部の光軸方向の端部にパーティングラインを有していてもよい。
【0072】
前記実施形態では、ポリゴンミラー5が4つのミラー面5Aを有していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ミラー面は6つであってもよい。また、前記実施形態では、偏向器としてポリゴンミラー5を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、揺動することで光を偏向する振動ミラーなどであってもよい。また、前記実施形態では、光源としての半導体レーザ2を例示したが、本発明はこれに限定されず、半導体レーザ以外の光源であってもよい。