(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記第1状態において前記吸引手段により吸引力を発生させてから前記第1所定時間が経過した後も、前記複数の吐出口群のうちの前記1つに対応する前記キャップの前記凹部内と前記複数の吐出口群のうちの前記別の1つに対応する前記キャップの前記凹部内の吸引を継続するように、前記吸引手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のインクジェットプリンタにおいて、ヘッドキャップ内に排出されたインクが乾くと、ヘッドキャップから吸引ポンプまでの流路が乾いたインクにより閉鎖する恐れがあるため、ヘッドキャップ内にインクを排出した後に、キャップを開放してから吸引ポンプによるインク吸引を継続してヘッドキャップ内のインクを廃インクタンクなどに排出する(いわゆる空吸引)を行うことが望まれる。しかしながら、インクジェットヘッドのノズルからのインク吸引とヘッドキャップ内に排出されたインクの空吸引を複数のキャップについて順に行っているとインクジェットヘッドの吐出性能を回復するのに必要な時間が長くなる。
【0005】
本発明の目的は、吐出性能の回復を行う時間を短くすることができる液体吐出装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、
液体を吐出するための複数の吐出口を
合計で有する
一又は複数の液体吐出ヘッドと、各々が前記複数の吐出口に含まれる複数の吐出口群に対応して各吐出口群を外部に対して封止するために設けられ、前記各吐出口群を封止するときにその吐出口群に対向する封止空間を形成するための凹部を備えた複数のキャップ
、及び、前記複数のキャップの各々を前記一又は複数の液体吐出ヘッドに対して個別に相対移動させるための移動手段を含み、前記複数のキャップの各々が、前記複数の吐出口群のうちの対応する1つの吐出口群を封止する封止状態と封止しない非封止状態とを取り得るようにする封止機構と、各々が前記複数のキャップの前記凹部に接続された複数の吸引管と、前記凹部内の吸引を行うための吸引手段と、前記吸引手段を、前記複数の吸引管の各々に対して個別に、接続または非接続とするための接続手段と、前記
封止機構、
前記吸引手段及び前記接続手段を制御する制御手段とを備えており、前記制御手段は、前記複数の吐出口群のうちの1つに
対応する前記キャップを非封止状態として当該キャップの前記凹部内の吸引を行えるようにそのキャップの前記凹部と前記吸引手段とを接続状態とし、さらに、前記複数の吐出口群のうちの前記1つとは別の1つに
対応する別の前記キャップを封止状態として当該キャップの前記凹部
内の吸引を行えるようにそのキャップの前記凹部と前記吸引手段とを接続状態とする、第1状態とさせるように、前記接続手段と前記
封止機構を制御し、この第1状態において、前記複数の吐出口群のうちの前記1つに対応する前記キャップの前記凹部内と前記複数の吐出口群のうちの前記別の1つに対応する前記キャップの前記凹部内の吸引を行わせるように前記吸引手段を制御し、前記第1状態において前記吸引手段により吸引力を発生させてから第1所定時間が経過した時に、前記複数の吐出口群のうちの前記1つに対応する前記キャップの前記凹部に接続された前記吸引管と前記吸引手段とを非接続状態とし、前記複数の吐出口群のうちの前記別の1つに対応する前記キャップの前記凹部に接続された前記
吸引管と前記吸引手段のみとを接続状態とする、第2状態とさせるように、前記接続手段を制御する。
【0007】
本発明のプログラムは、液体を吐出するための複数の吐出口を
合計で有する
一又は複数の液体吐出ヘッド、各々が前記複数の吐出口に含まれる複数の吐出口群に対応して各吐出口群を外部に対して封止するために設けられ、前記各吐出口群を封止するときにその吐出口群に対向する封止空間を形成するための凹部を備えた複数のキャップ
と、前記複数のキャップの各々を前記一又は複数の液体吐出ヘッドに対して個別に相対移動させるための移動手段とを含み、前記複数のキャップの各々が、前記複数の吐出口群のうちの対応する1つの吐出口群を封止する封止状態と封止しない非封止状態とを取り得るようにする封止機構、各々が前記複数のキャップの前記凹部に接続された複数の吸引管、前記凹部内の吸引を行うための吸引手段、及び、前記吸引手段を、前記複数の吸引管の各々に対して個別に、接続または非接続とするための接続手段を備えた液体吐出装置を制御する制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記制御手段は、前記複数の吐出口群のうちの1つに
対応する前記キャップを非封止状態として当該キャップの前記凹部内の吸引を行えるようにそのキャップの前記凹部と前記吸引手段とを接続状態とし、さらに、前記複数の吐出口群のうちの前記1つとは別の1つに
対応する別の前記キャップを封止状態として当該キャップの前記凹部
内の吸引を行えるようにそのキャップの前記凹部と前記吸引手段とを接続状態とする、第1状態とさせるように、前記接続手段と前記
封止機構を制御し、この第1状態において、前記複数の吐出口群のうちの前記1つに対応する前記キャップの前記凹部内と前記複数の吐出口群のうちの前記別の1つに対応する前記キャップの前記凹部内の吸引を行わせるように前記吸引手段を制御し、前記第1状態において前記吸引手段により吸引力を発生させてから第1所定時間が経過した時に、前記複数の吐出口群のうちの前記1つに対応する前記キャップの前記凹部に接続された前記吸引管と前記吸引手段とを非接続状態とし、前記複数の吐出口群のうちの前記別の1つに対応する前記キャップの前記凹部に接続された前記
吸引管と前記吸引手段のみとを接続状態とする、第2状態とさせるように、前記接続手段を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、第1状態で吸引することで、
第1状態において非封止状態であるキャッ
プの凹部内に残存した液体を吸引すると同時に、
第1状態において封止状態であるキャッ
プの凹部内を負圧にすることができる。この状態で第2状態に切り替えることで、当該凹部内が予め負圧になっていない場合と比較して、当該凹部内の圧力を所定の負圧まで素早く低下させることができる。これにより、吐出性能の回復を行う時間を短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<第1実施形態>
先ず、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の概略構成について説明する。
【0012】
図1(a)に示すように、プリンタ1は、共に直方体形状の上筐体11及び下筐体12を有している。なお、
図1における左側面が正面3となっている。なお、
図1における右側面が背面4となっている。上筐体11は下面が開口し、下筐体12は上面が開口している。上筐体11は、下筐体12に対して回動軸13を中心に回動可能に連結されている。上筐体11は、互いの開口面を封止してプリンタ1の内部空間を画定する位置である閉位置と、プリンタ1の内部空間を開放させる位置である開位置との間を回動する。下筐体11の上面には、開閉センサ16が固定されている。開閉センサ16は、上筐体11が閉位置にあるときに検出信号を出力し、上筐体11が開位置にあるときに検出信号を出力しない構成となっている。プリンタ1は、上筐体11が閉位置にあるときに、上筐体11が回動するのを規制するロック機構14を有している。上筐体11の上面には、排紙部15が設けられている。排紙部15には、印刷が完了した用紙Pが順に排出される。
【0013】
さらに、プリンタ1の内部空間には、6つのインクジェットヘッド2と、用紙トレイ20と、用紙搬送機構30と、プラテン9と、メンテナンスユニット40とが配置されている。
【0014】
図1(b)に示すように、インクジェットヘッド2は、概ね直方体形状を有しており、その下面に、インク滴が吐出される複数の吐出口8が形成された吐出面2aを有している。図示しないインクタンクからインクが供給される。インクジェットヘッド2に供給されたインクは、共通インク室、共通インク室と連通する複数の圧力室を経由して吐出口8に至る。インクジェットヘッド2の内部には、圧力室に貯留されたインクに圧力を付与する図示しないアクチュエータが配置されている。アクチュエータが駆動されることによって、吐出口8からインク滴が吐出される。
【0015】
6つのインクジェットヘッドは用紙Pの搬送方向の上流側から、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ及びブラックの順に並んでいる。本実施形態では、各インクジェットヘッド2が互いに異なる1つのインクの種類に対応する構成であるが、複数のインクジェットヘッド2が1つのインクの種類に対応していてもよいし、1つのインクジェットヘッド2が複数のインクの種類に対応していてもよい。
【0016】
用紙トレイ20は、積層された複数の用紙Pを保持可能であり、下筐体12の底面に着脱自在に配置されている。
【0017】
プラテン9は、用紙を支持するための板部材であり、上筐体11が閉位置にあるとき、インクジェットヘッド2の吐出面2aと対向するように下筐体12に固定されている。プラテン9の主走査方向及び副走査方向の大きさは、6つのインクジェットヘッド2に係る吐出面2aよりも若干大きい。
【0018】
用紙搬送機構30は、用紙トレイ20から6つのインクジェットヘッド2とプラテン9との間を通過して排紙部15まで至る用紙Pの搬送経路を構成するものである。用紙搬送機構30は、ピックアップローラ31と、ニップローラ32a〜32eと、ガイド33a〜33dとを含んでいる。ピックアップローラ31は、用紙トレイ20に積層されている用紙Pを上方から1枚ずつ送出する。ニップローラ32a〜32eは、搬送経路に沿って配置されており、用紙Pに搬送力を付与する。ガイド33a〜33dは、搬送経路においてピックアップローラ31及びニップローラ32a〜32eの間にそれぞれ配置されており、ニップローラ32a〜32eによって搬送力が付与された用紙Pが次のニップローラ32a〜32eに到達するまで当該用紙Pをガイドする。用紙搬送機構30によって搬送された用紙Pは、6つのインクジェットヘッド2とプラテン9との間を通過する際に、各インクジェットヘッド2の吐出面(吐出口8)2aから吐出されたインク滴によって画像が印刷される。画像が印刷された用紙Pは、用紙搬送機構30によってさらに搬送され、排紙部15に排出される。
【0019】
図1及び
図2に示すように、メンテナンスユニット40は、インクジェットヘッド2の吐出口8の目詰まりなどを回復させるメンテナンス作業を行う。メンテナンス作業には、吐出口8からインクを強制排出させるパージ動作が含まれる。メンテナンスユニット40は、6つのキャップ部材41と、昇降機構42と、6つの吸引管43と、ポンプ44と、廃液管45と、ロータリバルブ46と、廃液タンク51とを有している。
【0020】
6つのキャップ部材41は、対応するインクジェットヘッド2の吐出口8を外部に対して封止する弾性部材であり、吐出面2aを包囲可能な上方に向かって開口した凹部41aが形成されている。凹部41aを画定する環状突起の先端が吐出面2aに当接したとき、対応するインクジェットヘッド2の全ての吐出口8を外部に対して封止した封止状態(
図2中最も左方に配置されたキャップ部材41参照)となり、当該先端が吐出面2aから離隔したときに吐出口8を外部に対して開放する開放状態(非封止状態:
図2中最も左方に配置されたキャップ部材41を除く他のキャップ部材41参照)となる。
【0021】
昇降機構42は、6つのキャップ部材41を一方向に配列した状態で支持している。詳細な説明を省略するが、昇降機構42は、支持している6つのキャップ部材41のそれぞれが独立して封止状態又は開放状態となるように、各キャップ部材41を対向した吐出面2aに対して昇降させることが可能となっている。プリンタ1が印刷待機状態のとき、昇降機構42は、吐出面2aと対向しないようにプラテン9の
図1紙面奥方向に退避している。メンテナンス動作を行うとき、昇降機構42は、図示しない移動機構によって各キャップ部材41が対応する吐出面2aと対向するメンテナンス位置に移動する。なお、メンテナンス動作には、パージ動作の他、吐出口乾燥防止のためキャップ部材41によって吐出面2aを封止する動作が含まれる。
【0022】
ポンプ44は、キャップ部材41の凹部41a内の吸引を行うためのものである。ロータリバルブ46は、6つのキャップ部材41のうち1又は2のキャップ部材41とポンプ44とを連通させるためのバルブである。廃液タンク51は、インクジェットヘッド2の吐出口8から排出された廃インクを貯留する。廃インクは、吐出口8から大量のインクを強制排出させるパージ動作や吐出口8からインク滴を吐出させるフラッシング動作などにより発生する。6つの吸引管43は、対応するキャップ部材41の凹部41aとロータリバルブ46とにそれぞれ接続されている。廃液管45は、ロータリバルブ46と廃液タンク51とに接続されている。廃液管45には、吸引力を発生させるポンプ44が接続されている。
【0023】
図2及び
図3を参照しつつ、ロータリバルブ46について詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、ロータリバルブ46は、円筒形状を有する筐体55と、筐体55の内部空間55bに収容されつつ内部空間55b内を周方向に沿って回転自在な円柱形状を有する回転体56とを有している。筐体55は、内部空間55bと外部とを連通させる7つの連通孔55aが形成されている。7つの連通孔55aのうち、筐体55の外周面において周方向に沿って配列された6つの連通孔55aがポートA〜Fになっており、筐体55の端面における中央に形成された連通孔55aがポートGになっている。ポートA〜Fには吸引管43が、ポートGには廃液管45が接続されている。
【0024】
回転体56には、外周面から回転軸まで径方向に沿って延在している第1及び第2流路56a、56bと、回転軸に沿って延在しつつ、第1及び第2流路56a、56bとポートGとを連通させる第3流路56cとが形成されている。第2流路56bは、外周面に向かうに連れて周方向に関する幅が広くなっている。これにより、第1流路56aの流路断面積が、第2流路56bの流路断面積よりも小さくなる。第1及び第2流路56a、56bは、回転体56が一方向回転することによって、ポートA〜Fのうち、互いに隣接する2つのポートA〜Fの一方のみと、当該2つのポートA〜Fの両方と、当該2つのポートA〜Fの他方のみと順に互いに連通するように形成されている。後述するように、第1流路56aは、開放状態にある凹部41aに対応するポートA〜Fに接続され、第2流路56bは、封止状態にある凹部41aに対応するポートA〜Fに接続される。このとき、第1及び第2流路56a、56bが接続されたポートA〜Fに対応する凹部41aと、ポートG(ポンプ44と)が接続される。なお、回転体56の回転位置は、図示しないモータによって制御されている。
【0025】
次に、プリンタ1を制御する制御装置1pについて説明する。
図4に示すように、制御装置1pは、CPU(Central Processing Unit)71と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)72と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)73と、外部のPC90などとの間で通信を行うI/F回路74と、タッチパネル76や図示しない各種センサに接続されたI/O回路75とを含んでいる。これらは、データバス81を介して互いに接続されている。後述する制御装置1pの各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。
【0026】
また、
図5に示すように、制御装置1pは、印刷制御部61と、メンテナンス制御部62と、表示制御部63とを有している。印刷制御部71は、用紙Pに所望の画像が印刷されるように、インクジェットヘッド2及び用紙搬送機構30の動作を制御する。表示制御部63は、タッチパネル76を制御する。メンテナンス制御部62は、パージ動作を含むメンテナンス動作が実行されるように、昇降機構42、ロータリバルブ46及びポンプ44を制御する。なお、パージ動作には、封止状態となっている1つのキャップ部材41の凹部41a内のみを吸引する吸引動作と、開放状態のキャップ部材41の凹部41a内を吸引する空吸引動作と、空吸引動作と同時に封止状態となっている他の1つのキャップ部材41の凹部41a内を吸引するプレ吸引動作とが含まれている。
【0027】
図6〜
図9を参照しつつ、メンテナンス制御部62によるメンテナンス動作のうちパージ動作について詳細に説明する。
図6に示すように、パージ動作が開始されると、メンテナンス制御部62は、キャップ部材41の各凹部41aと、当該キャップ部材41に対応するインクジェットヘッド2の吐出面2aとが互いに対向するように昇降機構42を移動させ(S101)、さらに、全てのキャップ部材41が封止状態になるように昇降機構42を制御する(S102)。これにより、吐出口8が封止され乾燥するのを防止することができる。そして、メンテナンス制御部62は、ポートAに対応するインクジェットヘッド2に対する吸引動作を行うため、
図7(a)に示すように、回転体56を回転させてポートAと第2流路56bとを接続する。これにより、ポートAに対応する封止状態にあるキャップ部材41の凹部41aとポンプ44とが連通する。この状態で、ポンプ44を所定時間駆動することで吸引動作が実行され、当該凹部41aが封止しているインクジェットヘッド2の吐出口8からインクが当該凹部41a内にパージされる(S103)。
【0028】
次に、メンテナンス制御部62は、先に吸引動作を行ったインクジェットヘッド2に対応するキャップ部材41を開放状態にして凹部41aに溜まったインクを吸引する空吸引動作と、次に吸引動作を行うインクジェットヘッド2に対応するキャップ部材41を封止状態にして凹部41aを予め吸引するプレ吸引動作とを同時に行う(S104)。具体的には、メンテナンス制御部62は、ポートAに対応するキャップ部材41を封止状態から開放状態に移行するように、且つ、ポートBに対応するキャップ部材41は封止状態が維持されるように昇降機構42を制御する(第1封止状態)。さらにメンテナンス制御部62は、
図7(b)に示すように、回転体56を反時計回りに回転させてポートAと第1流路56aとを、ポートBと第2流路56bとをそれぞれ接続する(第1接続状態)。これにより、ポートA及びポートBに対応する2つのキャップ部材41の凹部41aと吸引中のポンプ44とが連通し、ポートAに対応する開放状態のキャップ部材41の凹部41aについて空吸引動作が、ポートBに対応する封止状態のキャップ部材41の凹部41aについてプレ吸引動作がそれぞれ実行される。
【0029】
メンテナンス制御部62は、空吸引動作を開始してからの経過時間が時間t1になるまで待機する(S105:NO)。この時間t1は、空吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41aに貯留可能な最大量のインクの全量を吸引するのに必要な時間以上となっている。これにより、凹部41a内に残存したインクを確実に排出することができる。このとき、
図9に示すように、空吸引動作によりポートAに対応する凹部41aに残存しているインクが吸引されている間、ポートA及びポートBに対応する凹部41aの内圧は低下する。その後、ポートAに対応する凹部41aに残存しているインクが全て吸引されると、ポートAが大気開放されるため、ポートA及びポートBに対応する凹部41aの内圧は上昇する。しかしながら、ポンプ44が吸引し続けていることである程度の負圧は維持される。
【0030】
メンテナンス制御部62は、経過時間が時間t1になったと判断すると(S105:YES)、全てのインクジェットヘッド2について空吸引動作が完了しているか否かを判断する(S106)。メンテナンス制御部62は、全てのインクジェットヘッド2について空吸引動作が完了したと判断した場合は(S106:YES)、全てのキャップ部材41を開放状態にした後に(S109)、昇降機構42を吐出面2aと対向しない位置に退避させて、
図6のフローチャートを終了する(S110)。
【0031】
メンテナンス制御部62は、全てのインクジェットヘッド2について空吸引動作が完了していないと判断した場合は(S106:NO)、次のインクジェットヘッド2についてパージ動作を継続する(S107)。先ず、メンテナンス制御部62は、ポートAに対応するキャップ部材41を開放状態から封止状態に移行するように、且つ、ポートBに対応するキャップ部材41は封止状態が維持されるように昇降機構42を制御し、
図7(c)に示すように、回転体56を反時計回りに回転させてポートAを遮断しつつ、ポートBと第2流路56bとの接続を維持する(第2接続状態)。これにより、ポートBに対応する封止状態にあるキャップ部材41の凹部41aのみが駆動中のポンプ44と連通し、吸引動作が開始され、当該凹部41aが封止しているインクジェットヘッド2の吐出口8からインクがパージされる。このとき、
図9に示すように、ポートBに対応する凹部41a内の圧力は先に行われたプレ吸引動作によって負圧が維持されているため、プレ吸引動作を行わなかった場合(図中破線参照)と比較して素早く所望の圧力まで負圧にすることができる。これにより、当該凹部41aが封止しているインクジェットヘッド2の吐出口8からインクを効率よくパージすることができる。そして、メンテナンス制御部62は、吸引動作が開始されてからの経過時間が時間t2になるまで待機する(S108:NO)。なお、時間t2は、パージによりインクジェットヘッド2の吐出口8の吐出性能が回復可能となる時間に相当している。
【0032】
メンテナンス制御部62は、経過時間が時間t2になったと判断すると(S108:YES)、上述の処理にしたがって、吸引動作が実行された凹部41aについて空吸引動作を実行すると同時に、パージ動作を行うべき次のインクジェットヘッド2があれば、当該インクジェットヘッド2に対応する凹部41aについてプレ吸引動作を実行する。以下、ポートB及びポートC間、ポートC及びポートD間、ポートD及びポートE間、ポートE及びポートF間(
図8(a)、
図8(b)参照)についても同様の処理を繰り返し、対応する各インクジェットヘッド2についてプレ吸引動作、吸引動作及び空吸引動作を順に実行する。なお、
図8(c)に示すように、ポートFに対応するインクジェットヘッド2については空吸引動作が単独で実行されることになる(S104)。本実施形態においては、ポートFに対応するインクジェットヘッド2について空吸引動作が完了したときに、全てのインクジェットヘッド2について空吸引動作が完了したと判断され(S106:YES)、メンテナンス制御部62は、全てのキャップ部材41を開放状態にした後に(S109)、昇降機構42を吐出面2aと対向しない位置に退避させて、
図6のフローチャートを終了する(S110)。
【0033】
以上のように、本実施形態によるプリンタ1によると、第1接続状態で吸引することで、空吸引動作と同時に、吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41a内を負圧にするプレ吸引動作を実行することができる。この状態でプレ吸引動作から吸引動作に切り替えることで、当該凹部41a内が予め負圧になっていない場合と比較して、当該凹部41a内の圧力を所定の負圧まで素早く低下させることができる。これにより、効率よくインクをパージすることができ、吐出性能の回復を行う時間を短くすることができる。
【0034】
また、空吸引動作を継続する時間t1は、空吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41aに貯留可能な最大量のインクの全量を吸引するのに必要な時間以上となっているため、凹部41a内に残存したインクを確実に排出することができる。
【0035】
さらに、ロータリバルブ46を用いることで、6つの吸引管と廃液管との接続の組み替えを容易に行うことができると共に小型化を図ることができる。
【0036】
ロータリバルブ46の回転体56において、第1流路56aの流路断面積が、第2流路56bの流路断面積よりも小さくなっているため、プレ吸引動作において、第2流路56bと連通する凹部41aの圧力を効率よく負圧にすることができる。
【0037】
<第2実施形態>
図10、
図11を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、ロータリバルブ146のみが第1実施形態と異なるため、以下、ロータリバルブ146の構成及び動作についてのみ説明する。他の部材及び機能部については第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0038】
ロータリバルブ146は、円筒形状を有する筐体55と、筐体55の内部空間55bに収容されつつ内部空間55b内を周方向に沿って回転自在な円柱形状を有する回転体56とを有している。筐体55は、内部空間55bと外部とを連通させる7つの連通孔55aが形成されている。7つの連通孔55aのうち、筐体55の外周面において周方向に沿って中心角60度毎に均等配置された6つの連通孔55aがポートA〜Fになっており、筐体55の端面における中央に形成された連通孔55aがポートGになっている。ポートA〜Fには吸引管43が、ポートGには廃液管45が接続されている。
【0039】
回転体56には、外周面から回転軸まで径方向に沿って延在している6つの連通流路156aa、156ab、156ba、156bb、156ca、156cbと、回転軸に沿って延在しつつ、連通流路156aa、156ab、156ba、156bb、156ca、156cbとポートGとを連通させる連通流路156dとが形成されている。連通流路156aa、156ab、連通流路156ba、156bb及び連通流路156ca、156cbがそれぞれ対になっている。連通流路156aa、156ab同士は周方向に関して中心角60度で離隔しており、連通流路156ba、156bb同士は周方向に関して中心角120度で離隔しており、連通流路156ca、156cb同士は周方向に関して中心角180度で離隔している。連通流路156aa、156ab;156ba、156bb;156ca、156cbは、周方向に関する幅が、外周面に向かうに連れて、対となっている他の連通流路から離隔する方向に広がっている。また、互いに異なる対となっている連通流路156aa、156ab;156ba、156bb;156ca、156cb同士は周方向に関して中心角60度以外の角度で離隔している。
【0040】
連通流路156aa、156ab;156ba、156bb;156ca、156cbは、回転体56が一方向回転することによって、ポートA〜Fのうち、任意に選択された2つのポートA〜Fの一方のみと、当該2つのポートA〜Fの両方と、当該2つのポートA〜Fの他方のみと順に互いに連通するように形成されている。ポートA〜Fは、中心角60度毎に均等配置されているため、いずれの2つを選択したとしても、選択した2つのポートA〜Fは中心角60度、120度、180度のいずれかの距離で互いに離隔しており、連通流路156aa、156ab;156ba、156bb;156ca、156cbのいずれかの対で互いに接続することができる。このとき、互いに異なる対となっている連通流路156aa、156ab;156ba、156bb;156ca、156cb同士は周方向に関して中心角60度以外の角度で離隔しているため、他の連通流路156aa、156ab;156ba、156bb;156ca、156cbが他のポートA〜Fに接続されることはない。
【0041】
例えば、
図10(a)に示すように、中心角180度で離隔しているポートA及びポートDをポンプ44に連通させる場合は、中心角180度で離隔している対である連通流路156ca、156cbをポートA及びポートDに接続する。
図10(a)においては、連通流路156caがポートAに、連通流路156cbがポートDに接続されている。また、
図10(b)に示すように、中心角120度で離隔しているポートA及びポートEをポンプ44に連通させる場合は、中心角120度で離隔している対である連通流路156ba、156bbをポートA及びポートEに接続する。
図10(b)においては、連通流路156bbがポートAに、連通流路156baがポートEに接続されている。さらに、中心角60度で離隔しているポートA及びポートBをポンプ44に連通させる場合は、中心角60度で離隔している対である連通流路156aa、156abをポートA及びポートBに接続する。
図11(b)においては、連通流路156aaがポートAに、連通流路156abがポートBに接続されている。
【0042】
本実施形態においては、パージ動作は任意に選択された2つのインクジェットヘッド2毎に実行する。例えば、パージ動作の対象として選択された2つのインクジェットヘッド2がポートA及びポートBに対応する場合、メンテナンス制御部は、ポートBに対応するキャップ部材41が封止状態になるように昇降機構42を制御する。そして、メンテナンス制御部は、
図11(a)に示すように、回転体56を回転させることによって、ポートBのみがポンプ44と連通し、他のポートA、C〜Fが遮断されるように、連通流路156abのみをポートBに接続する。このとき、連通流路156aaは、ポートAに対して時計周りの反対側に配置されている。これにより、ポートBに対応する封止状態にあるキャップ部材41の凹部41aとポンプ44とが連通する。この状態で、ポンプ44を所定時間駆動することで吸引動作が実行され、当該凹部41aが封止しているインクジェットヘッド2の吐出口8からインクが当該凹部41a内にパージされる。
【0043】
さらに、メンテナンス制御部は、ポートBに対応するキャップ部材41を封止状態から開放状態に移行するように、且つ、ポートAに対応するキャップ部材41が封止状態になるように昇降機構42を制御する(第1封止状態)。メンテナンス制御部は、
図11(b)に示すように、回転体56を時計回りに回転させてポートAと連通流路156aaとを、ポートBと連通流路156abとをそれぞれ接続する(第1接続状態)。これにより、ポートA及びポートBに対応する2つのキャップ部材41の凹部41aと吸引中のポンプ44とが連通し、ポートBに対応する開放状態のキャップ部材41の凹部41aについて空吸引動作が、ポートAに対応する封止状態のキャップ部材41の凹部41aについてプレ吸引動作がそれぞれ実行される。
【0044】
メンテナンス制御部は、空吸引動作を開始してからの経過時間が時間t1’になるまで待機する。時間t1’は、空吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41aに貯留可能な最大量のインクの全量を吸引するのに必要な時間以下である。これにより、空吸引動作によりポートBに対応する凹部41aに残存しているインクが吸引されている間、ポートA及びポートBに対応する凹部41aの内圧は低下する。ポートBに対応する凹部41aに残存しているインクが全て吸引される前に空吸引動作が停止するため、凹部41aの負圧が維持される(
図9参照)。
【0045】
メンテナンス制御部は、経過時間が時間t1になったと判断すると、ポートA及びポートBに対応するキャップ部材41が封止状態になるように昇降機構42を制御し、
図11(c)に示すように、回転体56を時計回りに回転させてポートBを遮断しつつ、ポートAと連通流路156aaとを接続する。これにより、ポートAに対応する封止状態にあるキャップ部材41の凹部41aのみが駆動中のポンプ44と連通し、吸引動作が開始され、当該凹部41aが封止しているインクジェットヘッド2の吐出口8からインクがパージされる。このとき、ポートAに対応する凹部41a内の圧力は先に行われたプレ吸引動作によって負圧が維持されているため、プレ吸引動作を行わなかった場合と比較して素早く所望の圧力まで負圧にすることができる。これにより、当該凹部41aが封止しているインクジェットヘッド2の吐出口8からインクを効率よくパージすることができる。
【0046】
その後、メンテナンス制御部は、吸引動作が開始されてからの経過時間が時間t2となったとき、吸引動作から空吸引動作に切り替えるため、当該キャップ部材41が封止状態から開放状態に移行するように昇降機構42を制御する。このとき、空吸引動作の対象となるインクジェットヘッド2に対応するポートAのみがポンプ44と連通しているため、凹部41aに残存しているインクを効率よく吸引することができる。メンテナンス制御部は、空吸引動作が開始されてから残存しているインクの吸引が完了する所定時間が経過するとポンプ44の駆動を停止し、全てのキャップ部材41を開放状態にした後に、昇降機構42を吐出面2aと対向しない位置に退避させてパージ動作を終了する。
【0047】
以上のように、本実施形態によるプリンタによると、第1接続状態で吸引することで、空吸引動作と同時に、吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41a内を負圧にするプレ吸引動作を実行することができる。この状態でプレ吸引動作から吸引動作に切り替えることで、当該凹部41a内が予め負圧になっていない場合と比較して、当該凹部41a内の圧力を所定の負圧まで素早く低下させることができる。これにより、効率よくインクをパージすることができ、吐出性能の回復を行う時間を短くすることができる。
【0048】
また、空吸引動作を継続する時間t1’は、空吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41aに貯留可能な最大量のインクを吸引するのに必要な時間以下となっているため、プレ吸引動作において凹部41a内の負圧を維持することができる。
【0049】
さらに、空吸引動作の対象となるインクジェットヘッド2に対応するポートAのみがポンプ44と連通しているため、凹部41aに残存しているインクを効率よく吸引することができる。
【0050】
また、任意に選択された2つのインクジェットヘッド2についてパージ動作を実行することができるため、必要に応じて効率よくパージ動作を実行してインクの消耗を低減することができる。
【0051】
<変形例1>
上述の実施形態においては、キャップ部材41の先端を吐出面2aに当接させることで、キャップ部材41を封止状態にし、当該先端を吐出面2aから離隔させることでキャップ部材41を開放状態にする構成であるが、このような構成に限定されるものではなく、他の構成で封止状態と開放状態とを切り替えてもよい。例えば、
図12に示すように、キャップ部材41の側壁に大気と連通する大気連通流路241bが形成されており、大気連通流路241bを開閉するバルブ246bをさらに備える構成であってもよい。これによると、キャップ部材41を吐出面2aに当接させた状態でバルブ246bを開閉することで封止状態と開放状態とを素早く切り替えることができる。
【0052】
<変形例2>
または、
図13に示すように、ロータリバルブ346の筐体355に係る外周面の各連通孔55aの近傍に大気連通孔355aが形成されており、回転体356に第1流路56aと大気連通孔355aとを接続する大気連通流路356cが形成されていてもよい。これによると、キャップ部材41を吐出面2aに当接させた状態でも連通孔55aに接続された凹部41aを必ず開放状態にすることができるため、制御が簡素化される。また、大気連通孔355aの流路断面積が、第1流路56aの流路断面積よりも小さくすることで、プレ吸引動作において吸引効率を高くすることができる。
【0053】
<変形例3>
上述の実施形態では、接続手段としてロータリバルブ46、346を用いる構成であるが、
図14に示すように、ロータリバルブ46、346の替りにそれぞれの吸引管43に開閉バルブ446を設け、各開閉バルブ446を個別にメンテナンス制御部62により制御することでロータリバルブ46、346と同じ動作を行わせる構成であってもよい。
【0054】
<変形例4>
上述の実施形態では、各インクジェットヘッド2が互いに異なる種類のインク滴を吐出する構成であるが、インクジェットヘッドの数と吐出するインク滴の種類の数とが一致している必要はない。例えば、
図15(a)に示すように、1つのインクジェットヘッド502が、6種類のインク滴を吐出する構成であってもよい。この構成ではヘッドの長手方向に6つの吐出口群ブロック(吐出口8を含む)509が配置され、それぞれの吐出口群ブロックにはインクの種類毎に対応した吐出口列が配置されている。
図15(b)に示すように、キャップ部材41は、対応する吐出口群ブロック509に属する吐出口8を封止する。ここでキャップ部材41は上述の構成では副走査方向に配列されていたが、この構成では主走査方向に配列されている。
【0055】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、回転体56が、筐体55の円筒形状を有する内部空間55bに収容されつつ内部空間55b内を周方向に沿って回転自在な構成となっているが、回転体が回転可能であれば、筐体の内部空間の形状は任意のものであってよい。例えば、球体の回転体が、球形状の内部空間内を回転自在な構成であってもよい。
【0056】
上述の第1実施形態では、ロータリバルブ46の回転体56において、第1流路56aの流路断面積が、第2流路56bの流路断面積よりも小さくなっている構成であるが、第1流路56aの流路断面積が、第2流路56bの流路断面積以上であってもよい。
【0057】
また、上述の第1実施形態に係る回転体56の第2流路及び上述の第2実施形態に係る回転体56の各連通流路が外周面に向かうに連れて周方向に関する幅が広くなる構成であるが、各流路の形状は任意のもの
であってよい。例えば、均一な幅で延在していてもよい。
【0058】
さらに、上述の第1及び第2実施形態のポートA〜Fが筐体55の外周面に沿って配列される構成であるが、ポートA〜Fの位置関係は任意のものであってよい。例えば、ポートA〜Fのいずれかが周方向に直交する方向に関して異なる位置に配置されていてもよい。
【0059】
また、上述の第1実施形態では、時間t1が空吸引動作の対象であるキャップ部材41の凹部41aに貯留可能な最大量のインクの全量を吸引するのに必要な時間以上となっているが、さらに吸引管43や廃液管45に存在するインクの全量も吸引するのに必要な時間以上としてもよい。吸引時に吸引管43や廃液管45にインクが残存すると時間の経過とともに吸引管43や廃液管45にインクが固着して閉塞する可能性があるので、時間t1を吸引管43や廃液管45に存在するインクの全量も吸引するのに必要な時間とすることで、吸引管43や廃液管45の閉塞を抑制することが可能となる。
【0060】
また、上述の第1実施形態では、制御装置1pがCPU(Central Processing Unit)71を含んでいるが、制御装置1pは1つのCPU71で構成されていてもよいし、複数のCPU71で構成されていてもよい。さらに、1以上のCPU71とASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0061】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。