(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外面の基準線に対する第1テーパ面の第1角度よりも、前記外面の基準線に対する第2テーパ面の第2角度が小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の焼成前予備成形体。
前記基準線に沿っての前記第1テーパ面の長さが、前記基準線に沿っての前記第2テーパ面の長さに比較して1/2倍〜1/10倍の長さである請求項3または4に記載の焼成前予備成形体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、二次加工することなく所望の寸法精度を有する焼結体マグネットおよび焼成前予備成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る焼成前予備成形体は、
外面と、前記外面に対して交差する端面とを有する焼結体マグネットを製造するための焼成前予備成形体であって、
前記焼成前予備成形体は、磁性粉末とバインダ樹脂とを含む原材料を溶融させ、磁場が印加された金型のキャビティ内で射出成形して得られ、
前記外面と前記端面とが交差する部分には、前記端面に隣接して形成される第1テーパ面と、前記第1テーパ面と前記外面との間に形成される第2テーパ面とが形成してある。
【0009】
本発明に係る焼成前予備成形体では、端部のC面部分(外面と端面との交差部)において、少なくとも二段階のテーパ面が形成してある。このため本発明では、磁性粉末とバインダ樹脂とを含む原材料を溶融させ、磁場が印加された金型のキャビティ内で射出成形するCIM成形を行ったとしても、端部のC面部分で、焼成後に外側に形成される凸部を小さくすることができ、二次加工することなく所望の寸法精度を維持することができる。所望の寸法精度とは、外面における凹凸差の最大を0.05mm未満、好ましくは0.025mm以下にすることである。
【0010】
なお、単一のテーパ面が形成してある従来の予備成形体では、端部のC面部分で、焼成後に外側に変形して凸部を形成する理由としては、次の点が考えられる。フェライトマグネット材料は、C軸方向とC軸に垂直な方向で、縮率が倍近く異なる。CIM成形では、金型への射出時における材料の流動性や、磁場を印加しながら射出成形を行うなどの理由から、端部のC面部分では、マグネット粒子の配向方向が、外面からC面に沿って急に変化する。そのため、その予備成形体を焼成する際に、縮率差の影響を受けて、外側に大きく変形して、外面よりも大きく突出する凸部を形成すると考えられる。
【0011】
本発明では、少なくとも二段階のテーパ面が形成してあるため、CIM成形を行ったとしても、マグネット粒子の配向方向が少なくとも二段階に緩やかに変化する。そのため、端部のC面部分では、焼成後にも凸部をほとんど形成しないか、あるいは形成されたとしてもかなり小さい。本発明者等の実験によれば、少なくとも二段階のテーパ面を形成した予備成形体を焼成する場合には、外面における凹凸差の最大を0.05mm以下にできることが確認された。これに対して、従来の単一のテーパ面が形成された予備成形体では、外面よりも突出する凸部が検出され、外面における凹凸差の最大が0.075mm以上となり、凸部を加工して除去するなどの必要性があることが確認されている。
【0012】
好ましくは、前記外面に対応する内面をさらに有し、前記外面および内面が、共通する中心軸に対する異なる曲率半径の円弧面である。このような形状の予備成形体を焼成して得られる焼結体マグネットは、円筒状ケーシングの内部に収容されて、モータ用マグネットとして好適に用いることができる。
【0013】
好ましくは、前記外面の基準線に対する第1テーパ面の第1角度よりも、前記外面の基準線に対する第2テーパ面の第2角度が小さい。このように構成することで、外面から端面に向けて、マグネット粒子の配向方向が少なくとも二段階にさらに緩やかに変化させることが可能になり、焼成後のマグネットでは、二次加工することなく所望の寸法精度を有することが容易となる。
【0014】
好ましくは、前記第1角度が、30〜60度であり、前記第2角度は、前記第1角度よりも20度以上小さい。このように構成することで、外面から端面に向けて、マグネット粒子の配向方向が少なくとも二段階にさらに緩やかに変化させることが可能になり、焼成後のマグネットでは、二次加工することなく所望の寸法精度を有することがさらに容易となる。
【0015】
好ましくは、前記基準線に沿っての前記第1テーパ面の長さが、前記基準線に沿っての前記第2テーパ面の長さに比較して1/2倍〜1/10倍の長さである。このように構成することで、外面から端面に向けて、マグネット粒子の配向方向が少なくとも二段階にさらに緩やかに変化させることが可能になり、焼成後のマグネットでは、二次加工することなく所望の寸法精度を有することがさらに容易となる。
【0016】
本発明に係る焼結体マグネットは、上記に記載の焼成前予備成形体を焼成して得られる焼結体マグネットである。本発明の焼結体マグネットは、たとえばモータのケーシング内などに好適に取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る焼結体マグネットを製造するための焼結前予備成形体20は、
図3に示す磁場射出成形装置2により製造される。まず磁場射出成形を行うための磁場射出成形装置2について説明する。
【0019】
磁場射出成形装置2は、ペレット10が投入されるホッパ4を有する押出機6と、押出機6から押し出されたペレット10の溶融物をキャビティ12内で成形するための金型装置8とを有する。この磁場射出成形装置は、CIM(ceramic injection molding)成形を利用した成形装置である。
【0020】
図示省略してあるが、金型装置8には、磁場印加手段としての電磁コイルまたは磁石が配置してあり、キャビティ12内には、キャビティ12の厚み方向(円弧の半径方向)に磁力線が発生するようになっている。
【0021】
本実施形態に係る焼結体マグネットの製造方法では、まず、磁性粉末の原料粉末を準備する。磁性粉末の原料粉末としては、特に限定されないが、好ましくは、フェライトが用いられ、特に、マグネトプランバイト型のM相、W相等の六方晶系のフェライトが好ましく用いられる。
【0022】
このようなフェライトとしては、特に、MO・nFe
2 O
3 (Mは好ましくはSrおよびBaの1種以上、n=4.5〜6.5)であることが好ましい。このようなフェライトには、さらに、希土類元素、Ca、Pb、Si、Al、Ga、Sn、Zn、In、Co、Ni、Ti、Cr、Mn、Cu、Ge、Nb、Zr等が含有されていてもよい。
【0023】
特に、下記に示すA,R,FeおよびMを構成元素として含む六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライトを主相に有するフェライトが好ましい。ただし、Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であり、Rは、希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Coおよび/またはZnである。これらのA,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%である。
【0024】
このフェライトにおいて、RがAサイトに存在するとし、MがFeのサイトに存在するとした場合におけるフェライトの組成式は、下記の式1に示すように表すことができる。なお、x、y、zは上記の量から計算される値である。
【0025】
A
1−x R
x (Fe
12−yM
y )
z O
19 …式1
【0026】
このような異方性フェライトの原料粉末を製造するには、フェライト組成物の原料の酸化物、または焼成により酸化物となる化合物を仮焼前に混合し、その後仮焼を行う。仮焼は、大気中で、例えば1000〜1350°Cで、1秒間〜10時間、特にM型のSrフェライトの微細仮焼粉を得るときには、1000〜1200℃で、1秒間〜3時間程度行えばよい。
【0027】
このような仮焼粉は、実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもつ顆粒状粒子から構成され、その一次粒子の平均粒径は0.1〜1μm、特に0.1〜0.5μmであることが好ましい。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定すればよく、その変動係数CVは80%以下、一般に10〜70%であることが好ましい。また、飽和磁化σsは65〜80emu/g、特にM型Srフェライトでは65〜71.5emu/g、保磁力HcJは2000〜8000Oe、特にM型Srフェライトでは4000〜8000Oeであることが好ましい。
【0028】
この実施形態では、このようにして製造された仮焼粉を、必要に応じて、乾式粗粉砕し、その後に、湿式粉砕を一回以上行う。
【0029】
乾式粗粉砕工程では、通常、BET比表面積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕後の平均粒径は、0.1〜1μm程度、BET比表面積は4〜10m2 /g程度であることが好ましく、粒径のCVは80%以下、特に10〜70%に維持することが好ましい。粉砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式アトライター(媒体撹拌型ミル)、乾式ボールミル等が使用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
【0030】
乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。また、配向度も向上する。粒子に導入された結晶歪は、後の焼結工程において解放され、これによって本来の硬磁性に戻って永久磁石となる。
【0031】
乾式粗粉砕の後、仮焼体粒子と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行う。粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、10〜70重量%程度であることが好ましい。湿式粉砕に用いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミル、アトライター、振動ミル等を用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
【0032】
本実施形態では、湿式粉砕に際して、界面活性剤を添加する。界面活性剤としては、具体的にはソルビトール、マンニトールが好ましい。
【0033】
本発明で用いる界面活性剤は、粉砕によるメカノケミカル反応で、その構造が変化する可能性がある。さらに例えば、加水分解反応などにより、この実施形態で用いる界面活性剤と同一の有機化合物を生成するような化合物、例えばエステルなどを添加することによっても本発明の目的を達成できる可能性もある。なお、界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
【0034】
界面活性剤の添加時期は特に限定されず、乾式粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。あるいは、湿式粉砕後に撹拌などによって添加してもよい。
【0035】
湿式粉砕後、磁性粉末を乾燥させる。乾燥温度は、好ましくは80〜150°C、さらに好ましくは100〜120°Cである。また、乾燥時間は、好ましくは60〜600分、さらに好ましくは300〜600分である。
【0036】
乾燥後の磁性粉末粒子の平均粒径は、好ましくは0.03〜0.7μmの範囲内、さらに好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。乾燥後の磁性粉末には、界面活性剤が付着している。乾燥後の磁性粉末に界面活性剤が付着していることは、熱重量・示差熱同時分析(TG−DTA)により確認される。
【0037】
この乾燥後の磁性粉末を、バインダ樹脂、ワックス類、滑剤、可塑剤、昇華性化合物などと共に混練し、ペレタイザなどで、ペレットに成形する。混練は、たとえばニーダーなどで行う。ペレタイザとしては、たとえば1軸や2軸の押出機が用いられる。
【0038】
バインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂などの高分子化合物が用いられ、熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アタクチックポリプロピレン、アクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアセタールなどが用いられる。
【0039】
ワックス類としては、カルナバワックス、モンタンワックス、蜜蝋などの天然ワックス以外に、パラフィンワックス、ウレタン化ワックス、ポリエチレングリコールなどの合成ワックスが用いられる。
【0040】
滑剤としては、たとえば脂肪酸エステルなどが用いられ、可塑剤としては、フタル酸エステルが用いられる。
【0041】
バインダ樹脂の添加量は、磁性粉体100重量部に対して、好ましくは5〜20重量部、ワックス類の添加量は、好ましくは5〜20重量部、滑剤の添加量は、好ましくは0.1〜5重量部である。可塑剤の添加量は、バインダ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0042】
本実施形態では、
図1に示す磁場射出成形装置2を用いて、このようなペレット10を、金型装置8内に射出成形する。金型装置8内への射出前に、金型装置8は閉じられ、内部にキャビティ12が形成され、金型装置8には磁場が印加される。なお、ペレット10は、押出機6の内部で、たとえば160〜230°Cに加熱溶融され、スクリューにより金型装置8のキャビティ12内に射出される。金型装置8の温度は、20〜80°Cである。金型装置8への印加磁場は5〜15kOe程度とすればよい。
【0043】
射出成形の終了後に、金型装置8の型開きを行い、キャビティ12の形状に対応する焼成前予備成形体を取り出す。その後に、キャビティ12に対応する形状の予備成形体を、脱バインダ処理する。
【0044】
脱バインダ処理は、大気中または窒素中において130〜600°Cの温度での熱処理である。次いで焼結工程において、成形体を、例えば大気中で好ましくは1100〜1250℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で0.2〜3時間程度焼結して、異方性フェライト磁石を得る。
【0045】
本実施形態の方法では、金型内で磁性粉末が磁場に対応して均一に分散して流動し、磁力線の方向に沿う磁場配向が良好に行われる。すなわち、本実施形態の方法では、従来の湿式成形法と異なり、磁場配向を乱すような圧力が作用しないので、配向度が向上する。
【0046】
したがって、最終的に得られる焼結磁石の配向度が向上する。なお、磁石の配向度とは、飽和磁化(Is)に対する残留磁化(Ir)の比(Ir/Is)である。磁石の配向度は、磁場射出成形後の予備成形体における磁性粉末の磁場配向度合いに比例する。
【0047】
また本実施形態の方法では、バインダ樹脂が磁性粉末粒子間に介在した状態で予備成形体となるため、磁性粉末が均等に分散した予備成形体を得ることができ、その予備成形体を焼成して得られる焼結磁石の磁気特性が均一になる。
【0048】
さらに本実施形態の方法では、射出成形に際して、溶融したバインダ樹脂を搬送媒体とすることで、磁性粉末粒子間の凝集を防止すると共に、搬送経路接触面への粒子の付着を防止しながら、磁性粉末を金型の内部に搬送することができる。
【0049】
しかも、
図1に示す金型装置8内での磁場による磁性粉末の配向時には、搬送媒体を除去する必要がない。そのため、本実施形態の方法では、狭いキャビティ12へ磁性粉末を均一に充填させることが可能であると共に、1ショットに要する時間が短く生産性に優れている。しかも、本実施形態の方法では、搬送媒体を除去するための流路に目詰まりが生じることもないと共に、脱気処理などの問題が生じない。その結果、比較的に薄型の焼結磁石を高生産性で製造することが可能になる。
【0050】
さらに本実施形態の方法では、粉砕工程の最終結果物として得られる磁性粉末が、湿式粉砕用の溶媒中に分散することで、粉末粒子の凝集がほぐれて粒子間に溶媒が介在する。その状態で、界面活性剤を磁性粉末へ付着させることにより、仮に乾燥後の磁性粉末が再凝集しても、磁性粉末粒子間へは界面活性剤が挟み込まれることになる。そのため、再凝集した顆粒(磁性粉末粒子の集合体)が、後工程(混練・成形)で磁性粉末粒子へ分解し易くなる。
【0051】
本実施形態の方法により得られる焼成前予備成形体は、
図3に示す装置2のキャビティ12の内周面形状を規定することにより得られ、
図1に示すように、全体としては、円筒を周方向に分割した円弧形状(C形)を有し、円弧状の外周面22と、その外周面22に対応する内周面24とを有する。
図2に示すように、外周面22と内周面24とは、共通する中心軸Oに対する異なる曲率半径R1,R2の円弧面となっている。曲率半径R1を曲率半径R2で引いた値が、成形体20の主要部分径方向の厚みとなる。
【0052】
本実施形態では、予備成形体20の中心軸Oに沿っての両端に、それぞれ軸端面26が形成される。また、予備成形体20の円周方向に沿っての両端には、周方向端部28が形成してある。
【0053】
本実施形態では、外周面22と軸端面26とが交差する交差部30には、軸端面26に隣接する第1テーパ面32と、第1テーパ面32と外周面22との間で外周面22に隣接する第2テーパ面34とが形成してある。
【0054】
本実施形態では、外周面22の基準線22aに対する第1テーパ面32の第1角度θ1よりも、外周面22の基準線22aに対する第2テーパ面34の第2角度θ2が小さい。なお、外周面の基準線とは、外周面22の設計面に含まれる線であり、本実施形態では、中心軸Oと平行な線であり、端面26に対して略直交する。
【0055】
第1角度θ1は、好ましくは30〜60度であり、第2角度θ2は、第1角度よりも20度以上小さいことが好ましい。好ましくは、基準線22aに沿っての第1テーパ面32の長さL1が、基準線22aに沿っての第2テーパ面34の長さL2に比較して1/2倍〜1/10倍(L1/L2)の長さである。これらテーパ面32および34の合計長さL3、すなわち交差部30の基準線22aに沿っての長さL3は、成形体20の基準線22aに沿っての全長L0の1/16〜1/5が好ましい。
【0056】
本実施形態では、交差部30には、2つのテーパ面32および34が形成してあるが、これらのテーパ面の間に、第3のテーパ面を形成することなどにより、3つ以上のテーパ面を形成しても良い。
【0057】
本実施形態に係る焼成前予備成形体20では、外周面22と軸端面26との交差部30において、少なくとも二段階のテーパ面が形成してある。このため、
図3に示す装置によりCIM成形を行い、その後に焼成したとしても、
図6の点線で示すように、交差部30では、焼成後に外側に形成される凸部を小さくすることができ、二次加工することなく所望の寸法精度を維持することができる。所望の寸法精度とは、外周面22における凹凸差の最大Δhを0.05mm以下、好ましくは0.025mm以下にすることである。
【0058】
なお、単一のテーパ面が形成してある従来の予備成形体では、
図6に示すように、交差部30で、焼成後に外側に大きく変形して凸部30aが形成される理由としては、次の点が考えられる。フェライトマグネット材料は、C軸方向とC軸に垂直な方向で、縮率が倍近く異なる。CIM成形では、金型への射出時における材料の流動性や、磁場を印加しながら射出成形を行うなどの理由から、交差部30では、マグネット粒子の配向方向が、外周面からテーパ面に沿って急に変化する。そのため、その予備成形体を焼成する際に、縮率差の影響を受けて、外側に大きく変形して、外面よりも大きく突出する凸部30aを形成すると考えられる。
【0059】
本実施形態では、
図2に示すように、焼成前の成形体20の段階で、少なくとも二段階のテーパ面32,34が形成してあるため、CIM成形を行ったとしても、マグネット粒子の配向方向が少なくとも二段階に緩やかに変化する。そのため、交差部30では、焼成後にも凸部30aをほとんど形成しないか、あるいは形成されたとしてもかなり小さい。本発明者等の実験によれば、少なくとも二段階のテーパ面を形成した予備成形体20を焼成する場合には、外面における凹凸差の最大を0.01mm以下にできることが確認された。これに対して、従来の単一のテーパ面が形成された予備成形体では、外面よりも突出する凸部30aが検出され、外面における凹凸差の最大Δhが0.075mmよりも大きくなり、凸部30aを加工して除去するなどの必要性があることが確認されている。
【0060】
本実施形態に係る焼結体マグネットは、上記に記載の焼成前予備成形体20を焼成して得られる焼結体マグネットである。そのため、本実施形態の成形体20を焼成して得られる焼結体マグネットは、たとえば
図4に示すように、モータのケーシング70内などに好適に取り付けることができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0062】
たとえば、上述した実施形態では、内周面24と端面26との交差部40には、単一のテーパ面が形成してあるが、交差部30と同様な二段階以上のテーパ面を形成しても良い。また、本発明では、相互に近接する2つのテーパ面32,34は、必ずしも直接に交差する必要はなく、これらのテーパ面32,34は曲面でつなぐようにしても良い。さらに、周方向端部28にも、交差部30と同様な二段階以上のテーパ面を形成しても良い。
【0063】
また、本発明の焼成前予備成形体は、
図1に示す形状に限定されず、
図5に示すリーフ形状の予備成形体20a、あるいはその他の形状の成形体であっても良い。なお、磁場射出成形により形成される成形体では、外周面と軸端面との交差部に、単一のテーパ面を形成した場合に、外周面から突出する凸部が形成されやすい。そのため、本発明では、外周面と軸端面との交差部に、上述したように、二段階以上のテーパ面を形成することで、特に有効である。