(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、車両のドライバーが要求する加減速度とは関係なしに、車両の車速が下限側車速以上であるときに、断接クラッチを切断状態にして車両を惰性走行させるようにしているが、本発明者らは、車両の惰性走行(惰行)を利用することで、従来ではドライバーの要求を満足させることができなかった加減速度であっても、そのような加減速度を実現できることを見出した。
【0005】
すなわち、車両のドライバーが、例えば或る車速で平坦路を走行中に僅かにアクセルを踏み込んだ状態にしているときには、そのドライバーは、通常、緩減速度を要求している。この場合、エンジンと駆動輪とを接続した状態でエンジンへの燃料供給を停止すると、所定のレベルよりも小さくすることが不能なエンジン抵抗により、上記車両に、上記ドライバーの要求減速度よりも大きな減速度が生じる一方、エンジンに燃料を供給すると、それ以上小さくすることができない最小燃焼トルクにより、上記ドライバーの要求減速度よりも小さい減速度又は加速度が生じることになり、上記ドライバーの要求減速度を実現することが困難になる。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、惰性走行を可能にした車両の惰性走行制御装置において、その車両のドライバーの要求を満足させながら、燃費の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、エンジンと駆動輪との間の駆動力伝達経路上に設けられた断接クラッチを備えた車両の惰性走行制御装置を対象として、上記車両の車速を検出する車速検出手段と、上記車両のドライバーによるアクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、上記車両のドライバーによるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、少なくとも、上記車速検出手段、上記アクセル操作量検出手段及び上記ブレーキ操作量検出手段による検出情報に基づいて、上記車両のドライバーが要求する要求加減速度を算出する要求加減速度算出手段と、上記車速検出手段により検出された車速に基づいて、当該車速で上記車両が走行しているときに、上記断接クラッチが接続状態にあることで上記エンジンと上記駆動輪とが接続状態にありかつ上記エンジンへの燃料供給が停止されたときの該車両の加減速度である第1の車両加減速度と、当該車速で上記車両が走行しているときに、上記断接クラッチが切断状態とされて上記車両が惰性走行するときの該車両の加減速度である第2の車両加減速度とを演算する車両加減速度演算手段と、上記要求加減速度算出手段により算出された要求加減速度と、上記車両加減速度演算手段により演算された第1及び第2の車両加減速度とに基づいて、上記断接クラッチの断接状態の切換えを制御するクラッチ制御手段とを備え、上記クラッチ制御手段は、上記要求加減速度並びに第1及び第2の車両加減速度の加速側を正の値としかつ減速側を負の値として、上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度よりも大きくかつ上記第2の車両加減速度以下であるときに、上記断接クラッチを切断状態にするように構成され
、上記クラッチ制御手段により上記断接クラッチが切断状態にされているときに、上記車両の加減速度を、上記車両の摩擦ブレーキにより上記要求加減速度まで低下させる摩擦ブレーキ制御手段を更に備えている、という構成とした。
【0008】
上記の構成により、車両のドライバーが要求する要求加減速度が、第1の車両加減速度よりも大きくかつ第2の車両加減速度以下である領域にあるときに、断接クラッチを切断状態にすることで、上記要求加減速度を容易に実現することができる。すなわち、上記領域は、断接クラッチが接続状態にある限り、エンジン抵抗又はエンジンに生じる最小燃焼トルクにより、上記要求加減速度を実現することが困難な領域である。しかし、断接クラッチを切断状態にすることで、車両の加減速度を、一旦第2の車両加減速度にすることができ、そこから、車両の摩擦ブレーキを利
用して、上記領域にある要求加減速度を容易に実現することができる。また、断接クラッチが切断状態にあるとき、エンジンへの燃料供給を停止したり、エンジンをアイドル回転させたりすることができ、これにより、燃費を向上させることができる。
【0009】
上記車両の惰性走行制御装置において、上記車両が走行している走行路の勾配を検出する走行路勾配検出手段と、上記車両の重量を検出する車両重量検出手段とを更に備え、上記要求加減速度算出手段は、上記車速検出手段、上記アクセル操作量検出手段、上記ブレーキ操作量検出手段、上記走行路勾配検出手段及び上記車両重量検出手段による検出情報に基づいて、上記要求加減速度を算出するように構成され、上記車両加減速度演算手段は、上記車速検出手段により検出された車速、上記走行路勾配検出手段により検出された勾配、及び、上記車両重量検出手段により検出された上記車両の重量に基づいて、上記第1の車両加減速度と上記第2の車両加減速度とを演算するように構成されている、ことが好ましい。
【0010】
このことで、車両が下り坂や上り坂を走行しているときであっても、上記要求加減速度並びに上記第1及び第2の車両加減速度を精度良く算出することが可能になる。
【0011】
上記車両の惰性走行制御装置において、上記クラッチ制御手段により上記断接クラッチが切断状態にされているときに、上記エンジンをアイドル回転させるエンジン制御手段を更に備えていてもよく、或いは、上記クラッチ制御手段により上記断接クラッチが切断状態にされているときに、上記エンジンへの燃料供給を停止するエンジン制御手段を更に備えていてもよい。
【0012】
こうすることで、燃費を向上させることができる。また、エンジンをアイドル回転させる場合には、ドライバーの急な加速要求があったとしても、その要求を満足させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の車両の惰性走行制御装置によると、車速検出手段により検出された車速に基づいて、当該車速で車両が走行しているときに、断接クラッチが接続状態にあることでエンジンと駆動輪とが接続状態にありかつ上記エンジンへの燃料供給が停止されたときの該車両の加減速度である第1の車両加減速度と、当該車速で上記車両が走行しているときに、上記断接クラッチが切断状態とされて上記車両が惰性走行するときの該車両の加減速度である第2の車両加減速度とを演算し、上記車両のドライバーが要求する要求加減速度が、上記第1の車両加減速度よりも大きくかつ上記第2の車両加減速度以下であるときに、上記断接クラッチを切断状態にする
とともに、上記断接クラッチが切断状態にされているときに、上記車両の加減速度を、上記車両の摩擦ブレーキにより上記要求加減速度まで低下させるようにしたことにより、上記要求加減速度を容易に実現することができ、その車両のドライバーの要求を満足させながら、燃費の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る惰性走行制御装置が搭載された車両1の要部を簡略化して示す。この車両1には、エンジン2が搭載されており、このエンジン2の出力トルクは、エンジン2のクランクシャフト2aに連結されたトルクコンバータ3、自動変速機4、ギヤボックス5内に収容された、差動歯車機構を含む伝達ギヤ、及び、左右のドライブシャフト6を介して、左右の駆動輪7(本実施形態では、前輪)に伝達されることになる。
【0017】
上記自動変速機4は、周知の構成のものであって、複数の遊星歯車機構と、これら遊星歯車機構でなる動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦係合要素とを有している。そして、自動変速機4は、上記各摩擦係合要素をそれぞれ選択的に作動させて、自動変速機4の入力軸から出力軸までの動力伝達経路を切り換えることにより、Dレンジにおける例えば1速〜4速やRレンジにおける後退速が得られるようになっている。また、上記摩擦係合要素が切断状態になることにより、自動変速機4は、その入力軸から出力軸までの動力伝達がなされないNレンジの状態となる。
【0018】
エンジン2と駆動輪7との間の駆動力伝達経路上には、断接クラッチ11が設けられている。
図1では、断接クラッチ11を簡略化して描いているが、この断接クラッチ11は、本実施形態では、自動変速機4の上記摩擦係合要素で構成されている。このため、自動変速機4がDレンジの状態にあれば、断接クラッチ11が接続状態にあり、自動変速機4がNレンジの状態にあれば、断接クラッチ11が切断状態にある、ということになる。また、本実施形態では、断接クラッチ11は、上記各摩擦係合要素の作動を制御するトランスミッションコントローラ21(
図2参照)により制御されることになる。
【0019】
上記トランスミッションコントローラ21は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
【0020】
トランスミッションコントローラ21は、エンジン2に設けられている不図示の燃料噴射弁や点火プラグの作動を制御するエンジン制御コントローラ32に対して必要な情報の送受信を行うとともに、車両1の駆動輪7(前輪)及び後輪にそれぞれ設けられている不図示の車輪ブレーキ装置(摩擦ブレーキ)の作動を制御する車両ブレーキ制御コントローラ33に対しても必要な情報の送受信を行う。エンジン制御コントローラ32及び車両ブレーキ制御コントローラ33も、トランスミッションコントローラ21と同様のコントローラである。尚、トランスミッションコントローラ21、エンジン制御コントローラ32及び車両ブレーキ制御コントローラ33を1つのコントローラとしてまとめることも可能である。
【0021】
本実施形態に係る惰性走行制御装置は、上記コントローラ21,32,33に加えて、車両1の車速を検出する車速センサ22(車速検出手段)と、車両1のドライバーによるアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサ23(アクセル操作量検出手段)と、上記ドライバーによるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ24(ブレーキ操作量検出手段)と、車両1が走行している走行路の勾配を検出する勾配センサ25(走行路勾配検出手段)とを有している。上記勾配センサ25は、本実施形態では、ジャイロセンサで構成されている。そして、これら各センサ22〜25による検出情報がトランスミッションコントローラ21に入力されるようになっている。
【0022】
トランスミッションコントローラ21は、車両1の重量を演算する車両重量演算部21aと、車両1のドライバーが要求する要求加減速度を算出する要求加減速度算出部21b(要求加減速度算出手段)と、後述の第1及び第2の車両加減速度を算出する車両加減速度算出部21c(車両加減速度算出手段)と、上記要求加減速度算出部21bにより算出された要求加減速度と、上記車両加減速度演算部21cにより演算された第1及び第2の車両加減速度とに基づいて、上記断接クラッチ11の断接状態の切換えを制御するクラッチ制御部21d(クラッチ制御手段)とを有している。
【0023】
車両重量演算部21aは、車速センサ22及び勾配センサ25による検出情報並びにエンジン制御コントローラ32からのエンジン2の出力トルク情報に基づいて、車両1の重量(ドライバーを含めた乗員を含む車両1の重量)を演算する。すなわち、車両重量演算部21aは、平坦路での車両1の加速時に、車速センサ22からの情報により車両1の加速度を求め、上記出力トルクで、この加速度になるような車両1の重量を演算する。このことで、本実施形態では、車両重量演算部21a、車速センサ22、勾配センサ25及びエンジン制御コントローラ32が、車両重量検出手段を構成することになる。尚、車両1自体の重量は予め分かっているので、例えばシートセンサにより乗員の人数を検出して、その人数分の重量を車両1自体の重量に加えることで、乗員を含む車両1の重量を演算するようにしてもよい。
【0024】
要求加減速度算出部21bは、車速センサ22、アクセル開度センサ23、ブレーキセンサ24及び勾配センサ25による検出情報並びに上記車両重量演算部21aにより算出された車両1の重量に基づいて、上記要求加減速度を算出する。
【0025】
具体的には、トランスミッションコントローラ21の上記メモリには、
図3に示すように、アクセル操作量と要求加減速度との関係を表す第1のマップと、
図4に示すように、ブレーキ操作量と要求加減速度との関係を表す第2のマップとが記憶されている。上記第1及び第2のマップは、車速毎に設けられている。車両1のドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいるときには、アクセル開度センサ23によるアクセル操作量と、車速センサ22による車速に対応する上記第1のマップとから、上記要求加減速度を算出する。また、上記ドライバーがブレーキペダルを踏み込んでいるときには、ブレーキセンサ24によるブレーキ操作量と、車速センサ22による車速に対応する上記第2のマップとから、上記要求加減速度を算出する。上記要求加減速度は、加速側を正の値としかつ減速側を負の値としている。減速度が大きくなると、上記要求加減速度は小さくなり、その絶対値が大きくなる。
図3から分かるように、車両1のドライバーが或る車速で僅かにアクセルを踏み込んでいるとき、そのドライバーは緩減速度を要求しており、そのときの要求加減速度は、0に近い負の値となる。
【0026】
また、トランスミッションコントローラ21の上記メモリには、
図5に示すように、車両1が走行している走行路の勾配と、上記第2マップから求まる要求加減速度に対する補正量との関係を表す第3のマップが更に記憶されている。上記勾配が負の値であるときには、下り勾配であり、正の値であるときには、上り勾配である。勾配センサ25による勾配と上記第3のマップとから上記補正量を算出し、上記第2マップから求まる要求加減速度に対して、その算出した補正量(本実施形態では、負の値又は0)を加える。すなわち、下り勾配又は僅かな上り勾配であるときには、補正後の要求加減速度は、上記第2マップから求まる要求加減速度よりも小さくなる(ドライバーが要求する減速度が大きくなる)。尚、本実施形態では、上記第1マップから求まる要求加減速度に対する補正量は0である。要求加減速度算出部21bにより算出される要求加減速度は、上記補正後の要求加減速度である。
【0027】
上記車両加減速度算出部21cは、車速センサ22による車速、勾配センサ25による勾配及び車両重量演算部21aによる車両1の重量に基づいて、当該勾配の走行路を当該車速で当該重量の車両1が走行しているときに、上記断接クラッチ11が接続状態にある(自動変速機4がDレンジの状態にある)ことでエンジン2と駆動輪7とが接続状態にありかつエンジン2への燃料供給が停止されたときの車両1の加減速度である第1の車両加減速度A1と、当該勾配の走行路を当該車速で当該重量の車両1が走行しているときに、上記断接クラッチ11が切断状態とされて(自動変速機4がNレンジの状態にされて)車両1が惰性走行するときの車両1の加減速度である第2の車両加減速度A2とを演算する。上記第1及び第2の車両加減速度A1,A2も、上記要求加減速度と同様に、加速側を正の値としかつ減速側を負の値としている。
【0028】
図6は、車両1が或る車速で平坦路を走行しているときの、アクセル操作量及びブレーキ操作量と、要求加減速度算出部21bにより算出された要求加減速度との関係を示す(実線のグラフ)。
図6で二点鎖線で示すラインが、上記或る車速で平坦路を車両1が走行しているときの上記第1の車両加減速度A1であり、一点鎖線で示すラインが、上記或る車速で平坦路を車両1が走行しているときの上記第2の車両加減速度A2である。
【0029】
上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1以下である場合には、断接クラッチ11が接続状態で(自動変速機4がDレンジの状態で)エンジン2への燃料供給を停止する(燃料カットする)ことで、当該要求加減速度を実現することができる。一方、上記要求加減速度が上記第2の車両加減速度A2よりも大きい場合には、断接クラッチ11が接続状態で(自動変速機4がDレンジの状態で)エンジン2への燃料供給を行うことで、当該要求加減速度を実現することができる。
【0030】
しかし、上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ上記第2の車両加減速度A2以下である場合(
図6のハッチングの領域にある場合、つまりドライバーが緩減速度を要求している場合)、断接クラッチ11が接続状態にある限り、当該要求加減速度を実現することは困難である。車両1が平坦路を走行しているときにおいて、上記のように要求加減速度を実現できない範囲は、車速と要求加減速度との関係で示すと、
図7のハッチングの領域となる。
図7のハッチングの領域の下側のラインが、上記第1の車両加減速度A1のラインであり、上側のラインが、上記第2の車両加減速度A2のラインである。
【0031】
上記クラッチ制御部21dは、上記第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ上記第2の車両加減速度A2以下である要求加減速度を実現するために、上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ上記第2の車両加減速度A2以下であるときに、断接クラッチ11を切断状態(Nレンジの状態)にする。これにより、車両1は、惰性走行することになる。
【0032】
例えば
図6で上記要求加減速度がP点にあるとすると、断接クラッチ11を切断状態にすることで、車両1の加減速度が上記第1の車両加減速度A1になる。この第1の車両加減速度A1は、P点の要求加減速度よりもaだけ大きい。そこで、車両ブレーキ制御コントローラ33の制御による車輪ブレーキ装置を利用して、車両1の加減速度をP点の要求加減速度になるようにする。すなわち、車両ブレーキ制御コントローラ33は、クラッチ制御部21dにより断接クラッチ11が切断状態にされているときに、トランスミッションコントローラ21からの指示を受けて、車両1の加減速度を、上記車輪ブレーキ装置(車両1の摩擦ブレーキ)により、上記第1の車両加減速度A1から上記要求加減速度まで低下させる。このことで、車両ブレーキ制御コントローラ33は、摩擦ブレーキ制御手段を構成することになる。
【0033】
また、エンジン制御コントローラ32は、クラッチ制御部21dにより断接クラッチ11が切断状態にされているときに、トランスミッションコントローラ21からの指示を受けて、エンジン2をアイドル回転させるか、又は、エンジン2への燃料供給を停止する。このことで、エンジン制御コントローラ32は、エンジン制御手段を構成することになる。
【0034】
クラッチ制御部21dは、上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1以下であるか又は上記第2の車両加減速度A2よりも大きいときには、断接クラッチ11を接続状態(Dレンジの状態)にする。クラッチ制御部21dにより断接クラッチ11が接続状態にあるとき、トランスミッションコントローラ21は、通常の変速制御を行う。
【0035】
エンジン制御コントローラ32は、断接クラッチ11が接続状態にありかつ上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1以下である場合には、トランスミッションコントローラ21からの指示を受けて、エンジン2への燃料供給を停止した状態で、オルタネータの負荷(発電量)等を調整して、車両1の加減速度を上記要求加減速度になるように調整する。また、エンジン制御コントローラ32は、断接クラッチ11が接続状態にありかつ上記要求加減速度が上記第2の車両加減速度A2よりも大きい場合には、トランスミッションコントローラ21からの指示を受けて、燃料噴射弁からの燃料噴射量等を調整して、車両1の加減速度を上記要求加減速度になるように調整する(通常のエンジン制御を行う)。
【0036】
クラッチ制御部21dは、断接クラッチ11を切断状態から接続状態にする際、車速センサ22による車速と自動変速機4の変速段とからトルクコンバータ3のタービン回転速度を算出し、このタービン回転速度の情報をエンジン制御コントローラ32に送信する。エンジン制御コントローラ32は、エンジン回転速度を、そのタービン回転速度と同じになるように調整し、その後に、クラッチ制御部21dが断接クラッチ11を接続状態にする。こうして断接クラッチ11の接続時のショックを低減する。
【0037】
尚、断接クラッチ11を切断状態から接続状態にするときと、接続状態から切断状態にするときとで、閾値にヒステリシスを設けるようにしてもよい。
【0038】
次に、上記トランスミッションコントローラ21(主としてクラッチ制御部21d)による、断接クラッチ11の断接状態の切換えに関連する制御動作について、
図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
最初のステップS1で、断接クラッチ11を接続状態にして、通常の変速制御を行う。このとき、エンジン制御コントローラ32は、通常のエンジン制御を行う。
【0040】
次のステップS2で、要求加減速度算出部21bにより算出された要求加減速度が、車両加減速度算出部21cにより算出された第2の車両加減速度A2以下であるか否かを判定する。このステップS2の判定がNOであるときには、上記ステップS1に戻る一方、ステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進む。
【0041】
ステップS3では、上記要求加減速度が、車両加減速度算出部21cにより算出された第1の車両加減速度A1よりも大きいか否かを判定する。このステップS3の判定がNOであるときには、ステップS7に進む一方、ステップS3の判定がYESであるときには、ステップS4に進む。
【0042】
ステップS4では、断接クラッチ11を切断状態にするとともに、エンジン制御コントローラ32に対して、エンジン2のアイドル回転又は燃料カットを指示する。また、車両ブレーキ制御コントローラ33に対して、車両1の加減速度を、上記車輪ブレーキ装置により上記要求加減速度まで低下させるように指示する。
【0043】
次のステップS5では、上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1以下であるか否かを判定する。このステップS5の判定がYESであるときには、ステップS7に進む一方、ステップS5の判定がNOであるときには、ステップS6に進む。
【0044】
ステップS6では、上記要求加減速度が上記第2の車両加減速度A2+所定加減速度αよりも大きいか否かを判定する。所定加減速度α(>0)は、閾値にヒステリシスを持たせるために加えるものであり、ハンチングを抑制可能な量に設定される。
【0045】
上記ステップS6の判定がNOであるときには、ステップS4に戻る一方、ステップS6の判定がYESであるときには、リターンする。つまり、ステップS1で、断接クラッチ11を接続状態にして、通常の変速制御を行うことになる。
【0046】
上記ステップS3の判定がNOであるとき、又は、ステップS5の判定がYESであるときに進むステップS7では、断接クラッチ11を接続状態にするとともに、エンジン制御コントローラ32に対して、エンジン2の燃料カットを指示する。
【0047】
次のステップS8では、上記要求加減速度が上記第1の車両加減速度A1+所定加減速度αよりも大きいか否かを判定する。このステップS8の判定がNOであるときには、上記ステップS7に戻る一方、ステップS8の判定がYESであるときには、ステップS9に進む。
【0048】
ステップS9では、上記要求加減速度が上記第2の車両加減速度A2+所定加減速度α以下であるか否かを判定する。このステップS9の判定がYESであるときには、上記ステップS4に戻る一方、ステップS9の判定がNOであるときには、リターンする。つまり、ステップS1で、断接クラッチ11を接続状態にして、通常の変速制御を行うことになる。
【0049】
要求加減速度が、例えば
図9のように変化するとした場合、上記トランスミッションコントローラ21による制御により、断接クラッチ11の断接状態の切換えは以下のようになる。
【0050】
すなわち、時刻t1に達する直前までは、要求加減速度が第2の車両加減速度A2よりも大きく、これにより、断接クラッチ11が接続状態にある。このとき、エンジン2においては、要求加減速度に応じて燃料噴射量等が調整される。
【0051】
時刻t1で、要求加減速度が第2の車両加減速度A2となり、時刻t1から時刻t2までは、要求加減速度が第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ第2の車両加減速度A2以下であり、これにより、断接クラッチ11が切断状態にあり、車両1が惰性走行する。このとき、エンジン2は、アイドル回転又は燃料カットされた状態になる。また、上記車輪ブレーキが作動する。
【0052】
時刻t2で、要求加減速度が第2の車両加減速度A2+所定加減速度αとなり、時刻t2を過ぎて時刻t3に達する直前までは、要求加減速度が第2の車両加減速度A2よりも大きく、これにより、断接クラッチ11が接続状態にある。
【0053】
時刻t3で、要求加減速度が再び第2の車両加減速度A2となり、時刻t3から時刻t4に達する直前までは、要求加減速度が第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ第2の車両加減速度A2以下であり、これにより、断接クラッチ11が切断状態になって、車両1が惰性走行する。このとき、エンジン2は、アイドル回転又は燃料カットされた状態になる。また、上記車輪ブレーキが作動する。
【0054】
時刻t4で、要求加減速度が第1の車両加減速度A1になり、時刻t4から時刻t5までは、要求加減速度が第1の車両加減速度A1+所定加減速度α以下であり、これにより、断接クラッチ11が接続状態になる。このとき、エンジン2は、燃料カットされた状態になり、要求加減速度に応じてオルタネータの発電制御等が行われる。
【0055】
時刻t5で、要求加減速度が第1の車両加減速度A1+所定加減速度αとなり、時刻t5を過ぎて時刻t6までは、要求加減速度が第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ第2の車両加減速度A2+所定加減速度α以下であり、これにより、断接クラッチ11が切断状態になって、車両1が惰性走行する。このとき、エンジン2は、アイドル回転又は燃料カットされた状態になる。また、上記車輪ブレーキが作動する。
【0056】
時刻t6で、第2の車両加減速度A2+所定加減速度αとなり、時刻t6を過ぎたとき、要求加減速度が第2の車両加減速度A2+所定加減速度αよりも大きく、これにより、断接クラッチ11が接続状態にある。
【0057】
したがって、本実施形態では、要求加減速度が第1の車両加減速度A1よりも大きくかつ第2の車両加減速度A2以下であるときに、断接クラッチ11を切断状態にするようにしたので、車両1の加減速度を、一旦第2の車両加減速度A2にすることができ、そこから、上記車輪ブレーキ装置を利用して上記要求加減速度まで低下させることができる。この結果、断接クラッチ11が接続状態にある限り実現することができないような要求加減速度を容易にかつ確実に実現することができる。また、断接クラッチ11が切断状態にあるとき、エンジン2への燃料供給を停止するか、又は、エンジン2をアイドル回転させることで、燃費を向上させることができる。よって、車両1のドライバーの要求を満足させながら、燃費の向上を図ることができる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、断接クラッチ11を、自動変速機4の摩擦係合要素で構成したが、これに限らず、例えば、自動変速機4とギヤボックス5内の差動歯車機構との間の動力伝達経路上に断接クラッチ11を設けるようにしてもよい。この場合、自動変速機4に代えて、例えば無段変速機(CVT)を設けることも可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、要求加減速度算出部21bが、車速センサ22、アクセル開度センサ23、ブレーキセンサ24及び勾配センサ25による検出情報並びに車両重量演算部21aにより算出された車両1の重量に基づいて、車両1のドライバーが要求する要求加減速度を算出するようにしたが、車両1が平坦路を走行しているとして、車速センサ22、アクセル開度センサ23及びブレーキセンサ24による検出情報に基づいて、要求加減速度を算出するようにしてもよい。この場合、車両加減速度算出部21cは、平坦路を走行している車両1の重量を所定値(例えば、車両1自体の重量に所定人数の重量を加えた値)として、車速センサ22による車速に基づいて、上記第1の車両加減速度A1と上記第2の車両加減速度A2とを演算するようにすればよい。
【0061】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
2 エンジン
4 自動変速機
7 駆動輪
11 断接クラッチ
21 トランスミッションコントローラ
21a 車両重量演算部(車両重量検出手段)
21b 要求加減速度算出部(要求加減速度算出手段)
21c 車両加減速度算出部(車両加減速度算出手段)
21d クラッチ制御部(クラッチ制御手段)
22 車速センサ(車速検出手段)(車両重量検出手段)
23 アクセル開度センサ(アクセル操作量検出手段)
24 ブレーキセンサ(ブレーキ操作量検出手段)
25 勾配センサ(走行路勾配検出手段)(車両重量検出手段)
32 エンジン制御コントローラ(エンジン制御手段)(車両重量検出手段)
33 車両ブレーキ制御コントローラ(摩擦ブレーキ制御手段)