(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像を担持する担持体と,複数の発光素子が直線状に配列される発光素子アレイとを有し,前記発光素子を用いて前記担持体上に画像を形成し,当該画像をシートに書き込む書込部と,
シートに書き込まれた画像を読み取る読取部と,
制御部と,
を備え,
前記制御部は,
前記発光素子アレイの位置ズレ検出用のパターン画像が書き込まれたシートを,前記読取部に読み取らせるパターン読取処理と,
前記パターン読取処理による読取結果に基づいて,前記発光素子アレイの位置ズレ量を算出するズレ算出処理と,
前記パターン読取処理にて読み取り対象となったシートが前記読取部の副走査方向に対して閾値以上傾いているか否かを判断する判断処理と,
前記判断処理にて前記閾値以上傾いていないと判断した場合に,前記ズレ算出処理にて算出された位置ズレ量を無効とする無効処理と,
を実行することを特徴とする画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,発光素子アレイを画像処理装置本体に取り付ける前に,特許文献1に開示されているような外部装置を利用して補正値を測定すると,取り付けに伴って発生した位置ズレを補正値に反映できない。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,取り付けに伴って発生した位置ズレが反映された補正値を取得できる画像処理装置と発光素子アレイの位置ズレ量の取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像処理装置は,画像を担持する担持体と,複数の発光素子が直線状に配列される発光素子アレイとを有し,前記発光素子を用いて前記担持体上に画像を形成し,当該画像をシートに書き込む書込部と,シートに書き込まれた画像を読み取る読取部と,制御部とを備え,前記制御部は,前記発光素子アレイの位置ズレ検出用のパターン画像が書き込まれたシートを,前記読取部に読み取らせるパターン読取処理と,前記パターン読取処理による読取結果に基づいて,前記発光素子アレイの位置ズレ量を算出するズレ算出処理とを実行することを特徴としている。
【0008】
本明細書に開示される画像処理装置は,画像をシートに書き込む書込部と,シートに書き込まれた画像を読み取る読取部と,制御部とを有している。さらに,書込部は,複数の発光素子が直線状に配列される発光素子アレイを有している。そして,制御部は,パターン読取処理とズレ算出処理とを実行する。パターン読取処理では,発光素子アレイを用いて発光素子アレイの位置ズレ検出用のパターン画像が書き込まれたシートを,読取部に読み取らせる。ズレ算出処理では,パターン読取処理による読取結果に基づいて,発光素子アレイの位置ズレ量を算出する。
【0009】
すなわち,本明細書で開示される画像処理装置では,発光素子アレイを用いてシートに書き込まれたパターン画像の読取結果に基づいて発光素子アレイの位置ズレ量を算出することから,その位置ズレ量も取り付けに伴って発生した位置ズレが反映された値となる。従って,例えば,算出された位置ズレ量を参照して画像形成すれば,取り付けに伴って発生した位置ズレをも含む補正を行って,良好な画質の画像を得ることが期待できる。なお,発光素子アレイは,1つの連続したアレイでも複数のアレイを連結したアレイでもよい。また,発光素子アレイの位置ズレ量としては,複数の発光素子アレイの相対的な位置ズレ量であってもよいし,あらかじめ記憶しているマスターデータとの位置ズレ量であってもよい。また,算出される位置ズレ量には,シート搬送方向の位置ズレ量と,担持体の軸方向の位置ズレ量との,少なくとも一方が含まれる。また,算出した位置ズレ量は,画質補正の補正値に利用してもよいし,装置の良否判定に利用してもよい。
【0010】
また,前記制御部は,前記パターン読取処理にて読み取った画像データを,前記発光素子アレイの配列方向に複数のブロックに分割する分割処理と,前記ブロックごとに,前記画像データの前記発光素子アレイの配列方向に直交する方向の平均位置を算出する位置算出処理とを実行し,前記ズレ算出処理では,前記位置算出処理にて算出された前記平均位置の,前記ブロック間での差分に基づいて,前記発光素子アレイの配列方向に直交する方向の位置ズレ量を算出するとよい。この構成によれば,読み取った画像データを分割して,分割部分を位置算出処理の対象とすることから,全画像をまとめて処理する場合に比較して,一度に扱うデータの量が小さい。従って,制御部の負荷が小さいことが期待できる。
【0011】
また,前記ズレ算出処理では,前記位置算出処理において算出された前記ブロックごとの平均位置と,前記画像データの全領域において算出された平均位置との差分に基づいて,前記発光素子アレイの配列方向に直交する方向の位置ズレ量を算出するとよい。この構成によれば,各ブロックの平均位置とパターン画像全体の平均値との差分をとるので,算出された発光素子アレイの位置ズレ量の信頼性が高くなる。
【0012】
また,前記書込部は,複数の発光素子アレイを有し,前記ズレ算出処理では,前記複数の発光素子アレイの配列方向に直交する方向の位置ズレ量を発光素子アレイ単位で算出するとよい。この構成によれば,複数の発光素子アレイの各々について,発光素子アレイ単位で位置ズレ量が算出されるので,隣り合う発光素子アレイの繋ぎ目を認識できる。その結果として,発光素子アレイの端部の発光素子の,より好適な光量調整を行うことができる。
【0013】
また,前記書込部は,シートを搬送する搬送部を備え,前記制御部は,前記パターン画像を,前記書込部にてシートに書き込ませるパターン書込処理を実行するとよい。この構成によれば,自装置に装着されている発光素子アレイを用いて位置ずれ検出用のパターン画像を形成することから,そのパターン画像には発光素子アレイの装置本体への取り付けに伴って発生した位置ズレも反映される。そして,そのパターン画像の読取結果に基づいて発光素子アレイの位置ズレ量を算出すれば,その位置ズレ量にも取り付けに伴って発生した位置ズレが反映される。
【0014】
また,前記パターン書込処理では,前記パターン画像を,前記書込部のシート搬送方向に少なくとも前記担持体の周長以上の長さに書き込ませるとよい。この構成によれば,担持体一周内での,担持体の回転のバラツキの影響を低減させて、発光素子アレイの位置ズレ量を算出することができるので、算出された発光素子アレイの位置ズレ量の信頼性が高くなる。
【0015】
また,前記パターン書込処理では,同じ発光素子を用いて形成され,前記パターン画像を挟んでシート搬送方向の上流側と下流側とに位置する位置認識用のマーク画像を,前記書込部にて前記パターン画像が書き込まれるシートに書き込ませるとよい。この構成によれば,同じ発光素子を用いて,シート搬送方向の上流側と下流側とに2つのマーク画像を形成することで,その2つのマークを結ぶ仮想直線をシート搬送方向と見做すことができ,読み取られたパターン画像の向きを認識できる。
【0016】
また,前記書込部は,複数の発光素子アレイを有し,前記ズレ算出処理では,前記複数の発光素子アレイの配列方向に直交する方向の位置ズレ量を発光素子アレイ単位で算出するとよい。この構成によれば,各発光素子アレイにてパターン画像が形成される。従って,各発光素子アレイの位置を算出でき,隣り合う発光素子アレイの繋ぎ目を認識できる。その結果として,発光素子アレイの端部の発光素子の,より好適な光量調整を行うことができる。また,発光素子アレイごとの発光タイミングの調整を行うことができる。
【0017】
また,前記パターン書込処理では,前記複数の発光素子アレイのうち隣り合う発光素子アレイによって形成される前記パターン画像を,シート搬送方向の位置が互いに異なる場所に,前記書込部にてシートに書き込ませるとよい。この構成によれば,隣り合う発光素子アレイによって形成される各パターン画像のシート搬送方向の重複を避けることができ,発光素子アレイのシート搬送方向の位置を正確に認識できる。
【0018】
また,前記パターン書込処理では,前記複数の発光素子アレイによる各パターン画像を,当該各パターン画像のシート搬送方向の平均位置がシート搬送方向において同じ位置になる場所に,前記書込部にてシートに書き込ませるとよい。この構成によれば,各発光素子アレイによる各パターン画像のシート搬送方向の平均位置が揃っているので,位置ズレ量の算出にその平均位置を用いることができる。従って,シートの収縮や伸長,担持体やシート搬送部材の回転速度ムラなどによるシート搬送速度の誤差等による位置ズレ量の算出値への影響を低減できる。
【0019】
また,前記パターン書込処理では,前記発光素子アレイのうち,全ての発光素子よりも少ない数であって所定の発光素子によるパターン画像を,前記書込部にてシートに書き込ませるとよい。この構成によれば,発光素子アレイの発光素子全てを用いてパターン画像を形成する場合と比較してトナー消費量を抑えることができる。
【0020】
また,本明細書に開示される画像形成装置は,前記所定の発光素子には,前記発光素子アレイの両端に位置する発光素子が含まれるとよい。この構成によれば,少なくとも両端の発光素子の位置が認識できるので,隣り合う発光素子の繋ぎ目を認識できる。
【0021】
また,前記制御部は,前記発光素子アレイの両端に位置する発光素子の位置ズレ量を前記ズレ算出処理にてそれぞれ算出し,前記発光素子の配列方向に直交する方向についての前記位置ズレ量の差が,許容範囲内の場合には,前記発光素子アレイのうち何れか1つの発光素子の位置ズレ量を前記発光素子アレイの位置ズレ量として記憶し,許容範囲外の場合には,少なくとも前記両端に位置する発光素子の位置ズレ量を記憶する記憶処理を実行するとよい。この構成によれば,両端の発光素子の位置ズレが少ない場合,全体としてその発光素子アレイの位置ズレは少なく,何れか1つの発光素子の位置を記憶しても補正値への影響は少ない。そのため,位置ズレ量の差が小さい発光素子アレイでは,発光素子アレイ中の複数の発光素子の位置は記憶せず,何れか1つの発光素子の位置のみを記憶して,メモリ負荷の軽減を図る方が好ましい。
【0022】
また,前記制御部は,前記パターン読取処理にて読み取り対象となったシートが前記読取部の副走査方向に対して閾値以上傾いているか否かを判断する判断処理と,前記判断処理にて前記閾値以上傾いていないと判断した場合に,前記ズレ算出処理にて算出された位置ズレ量を無効とする無効処理とを実行するとよい。この構成によれば,シートの傾斜が小さい場合,書込部側の1つの発光素子が形成したパターン画像に対して,読取部側では少ない読取素子で読み取ることになる。そのため,読取素子の検知精度の影響を受け易い。従って,シートの傾斜が小さい場合には,算出した位置ズレ量の信頼性が低くなるため,無効とした方が好ましい。
【0023】
また,前記制御部は,前記ズレ算出処理にて算出された,前記発光素子の配列方向での位置ズレ量に基づいて,前記発光素子の発光量を調整する発光量調整処理を実行するとよい。この構成によれば,算出された位置ズレ量を利用して,画質の向上が期待できる。また,認識された,隣り合う発光素子の繋ぎ目により画品質が低下することを抑制することができる。
【0024】
また,前記制御部は,前記ズレ算出処理にて算出された,前記発光素子の配列方向に直交する方向での位置ズレ量に基づいて,前記発光素子の点灯タイミングを調整するタイミング調整処理を実行するとよい。この構成によれば,算出された位置ズレ量を利用して,画質の向上が期待できる。
【0025】
また,本明細書には,複数の発光素子が直線状に配列され,画像処理装置に装着された発光素子アレイの,位置ズレ量の取得方法において,前記発光素子アレイの位置ズレ検出用のパターン画像が書き込まれたシートを,読取装置に読み取らせるパターン読取ステップと,前記パターン読取ステップでの読取結果に基づいて,前記発光素子アレイの位置ズレ量を算出するズレ算出ステップとを含む発光素子アレイの位置ズレ量の取得方法も開示されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば,取り付けに伴って発生した位置ズレが反映された補正値を取得できる画像処理装置と発光素子アレイの位置ズレ量の取得方法が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下,本発明にかかる装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像読取機能および画像形成機能を備えた複合機(MFP:Multi Function Peripheral)に本発明を適用したものである。
【0029】
[MFPの構成]
本形態のMFP100は,
図1に示すように,シートに画像を印刷する画像形成部10と,原稿の画像を読み取る画像読取部20と,動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う操作パネル40とを備えている。画像形成部10は書込部の一例であり,画像読取部20は読取部の一例である。
【0030】
画像形成部10は,電子写真方式によりシートにトナー像を形成するプロセス部5と,シートを搬送する搬送ベルト7と,シート上の未定着のトナー像をシートに定着させる定着部8と給紙トレイ12と排紙トレイ13とを有している。プロセス部5は,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の色ごとにそれぞれ,感光体51,帯電部52,露光部53,現像部54,転写部55を有している。さらに,機内には,給紙トレイ12から搬入されたシートが,プロセス部5と定着部8とを経由して,排紙トレイ13に排出される搬送路11が形成されている。感光体51は,担持体の一例である。搬送ベルト7及び搬送路11は,搬送部の一例である。搬送部によってシートが搬送される方向がシート搬送方向である。
【0031】
画像形成時には,感光体51は,帯電部52によって帯電され,露光部53によって露光される。これにより,感光体51の表面上に印刷データに基づいた静電潜像が形成される。さらに,現像部54によって供給されるトナーで静電潜像が現像されることにより,感光体51上にトナー像が形成される。一方,画像が形成されるシートは,搬送路11に沿って,プロセス部5に搬送される。その際,転写部55によって,トナー像が感光体51からシートに転写される。その後,シートに載ったトナー像は,定着部8によってシートに定着される。なお,
図1には,搬送ベルト7上のトナーを検出するためのセンサ57も表れている。
【0032】
画像読取部20は,光学的に画像を読み取るためのイメージセンサ22と,コンタクトガラス23と,ADF(自動原稿搬送装置)24とを有している。イメージセンサ22は,光学素子が紙面に直交する方向に並んで配置されている。画像読取部20は,画像が形成されている原稿シートとイメージセンサ22とを相対的に移動させ,画像を1ラインずつ読み取る。移動方式は,原稿シートを固定してイメージセンサ22を移動させる方式でもよいし,イメージセンサ22を固定して原稿シートをADF24によって移動させる方式でもよい。イメージセンサ22の光学素子の配列方向が画像読取部20の主走査方向である。主走査方向に直交する方向であり,シートとイメージセンサ22との相対的な移動方向が副走査方向である。
【0033】
画像読取部20は,原稿の各位置における光の反射に基づいて画像データを取得する。例えば,各光学素子が受光した光量により,その位置における画像データを取得することができる。そして,画像読取部20の読み取り結果に基づいて,MFP100は,画像のシート面内での位置座標を取得することができる。なお,画像読取部20は,カラー読み取りが可能であってもよいし,モノクロ読み取りのみでもよい。
【0034】
[露光部の構成]
続いて,画像形成部10の露光部53について説明する。露光部53は,複数の発光素子が直線状に配列された発光ユニット60を有している。MFP100の発光ユニット60は,例えば,
図2に示すように,複数のLEDユニット61を一体化した棒状の部材である。各LEDユニット61には,
図3に示すように,複数のLED素子62と駆動回路63とが一体的に搭載されている。LEDユニット61の複数のLED素子62は,一列の直線上に配置されている。また,駆動回路63には,信号の入力を受ける端子64が接続されている。駆動回路63によって,LED素子62は,一端側から他端側へ順に点灯可能となるように駆動される。
【0035】
発光ユニット60の各LEDユニット61は,例えば,
図2に示したように,発光ユニット60の長手方向に平行な2列に沿って,互い違いに配置されていてもよい。この場合,複数のLED素子62も実際には2列の直線に沿って配列されているが,このようなものも直線状の配置の一例である。LED素子62は発光素子の一例であり,発光ユニット60及びLEDユニット61はいずれも発光素子アレイの一例である。
【0036】
なお,発光ユニット60の各LEDユニット61は,前述の2列のうち一方の列と他方の列とで走査方向が逆向きとなるように駆動されるとよい。走査方向が各LEDユニット61で同じ方向であれば,位置ズレの有無に関わらず,走査の終着点が一致しない。それに対して,隣接するLEDユニット61の走査方向を逆向きとすることにより,LEDユニット61間で位置ズレがなければ,走査の終着点が一致する部分が生じる。つまり,走査の終着点が一致しているか否かを,位置ズレの有無を判断する材料の一つとすることができ,位置ズレの有無の判断について,精度の向上が期待できる。
【0037】
MFP100では,発光ユニット60は,その長手方向を感光体51の軸方向と平行にして取り付けられている。端子64から入力される信号に基づいて個々のLED素子62が点灯あるいは消灯することにより,感光体51は,その軸方向の1ドット列ずつ露光される。なお,MFP100の発光ユニット60では,2列に配列されたLEDユニット61間で,長手方向についてのLED素子62の重なりや隙間が生じないように,複数のLEDユニット61が配列されている。
【0038】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,
図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,不揮発性記憶部34とを備えている。また,MFP100は,外部装置との通信を行うネットワークIF37を有している。CPU31は,画像形成部10と,画像読取部20と,操作パネル40と,ネットワークIF37とに電気的に接続されている。
【0039】
ROM32には,プリンタ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値,後述する位置補正パターン71等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは印刷データを保持する記憶領域として利用される。不揮発性記憶部34には,各種の設定値や,後述する位置ズレ量72等が記憶される。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33または不揮発性記憶部34に記憶させながら,MFP100の全体を制御する。CPU31は,制御部の一例である。
【0040】
[位置補正パターン]
続いて,ROM32に記憶される位置補正パターン71について説明する。位置補正パターン71は,例えば,
図5に模式的に示すように,パターン画像91とマーク画像93,94とを含む印刷用データである。位置補正パターン71は,
図5に示すように,複数のドットデータを含んでいる。このうち,パターン画像91は位置ズレ検出用のパターン画像の一例であり,マーク画像93,94は位置認識用のマーク画像の一例である。
【0041】
以下では,位置補正パターン71において,マーク画像93,パターン画像91,マーク画像94の並び順の方向をY方向とする。さらに,位置補正パターン71においてY方向に直交する方向をX方向とする。
図5では,紙面の縦方向をY方向として示している。なお,後述するように,MFP100では,ROM32に記憶されている位置補正パターン71に基づいてシートに画像を印刷させる。印刷時には,位置補正パターン71のX方向を,LEDユニット61におけるLED素子62の配列方向とする。位置補正パターン71のY方向を,LEDユニット61におけるLED素子62の配列方向に直交する方向とする。すなわち,位置補正パターン71のY方向を画像形成部10のシート搬送方向に向けて印刷する。
【0042】
位置補正パターン71は,
図5に一点鎖線で分けて示すように,X方向に露光部53のLEDユニット61の個数に対応する複数のブロックに分かれている。位置補正パターン71のブロックには,そのデータ配置に2種類のタイプがあり,その2種類が交互に並んでいる。以下では,2種類のブロックをそれぞれ,ブロックB1,ブロックB2とする。各ブロックのX方向の幅は,1つのLEDユニット61のLED素子62全体の長さに対応する。なお,
図5中でブロックの境界として示した一点鎖線は,説明のためのものであり,印刷データには含まれない。
【0043】
それぞれのブロックのパターン画像91には,複数個のドットパターン95が含まれている。各ドットパターン95は,例えば,Y方向に1ドット幅で,X方向にブロックの幅の一塊のデータである。パターン画像91の全体の大きさは,X方向に大きさWx,Y方向に大きさWyである。X方向の大きさWxは,露光部53の露光可能範囲の全域に対応する。Y方向の大きさWyは,感光体51の周長以上である。従って,パターン画像91を印刷すると,露光部53の全てのLEDユニット61と,感光体51の全周とが使用される。
【0044】
パターン画像91の各ドットパターン95は,各LEDユニット61のLED素子62の全体に対応する長さの間欠的なドット列である。各ドットパターン95は,少なくともLEDユニット61の両端のLED素子62に対応するドットを含み,1つのLEDユニット61あたり2〜10ドット程度,例えば,等間隔の5ドットで構成されている。従って,パターン画像91を印刷すると,全てのLED素子62よりも少ない数のLED素子62が使用される。なお,各ドットパターン95は,いずれも同じ形状のパターンであればよい。
【0045】
さらに,1つのブロック内の複数個のドットパターン95は,Y方向に所定の間隔を空けて,均等に並べられている。ブロックB1とブロックB2とでは,Y方向についてのドットパターン95の並び方が異なる。つまり,隣接するブロック間では,Y方向に互いに異なる場所にドットパターン95が配置される。従って,隣接するブロック間でドットパターン95同士が重なって印刷されることはない。例えば,
図5に示すように,パターン画像91の全体で,複数個のドットパターン95が,互いに間隔を空けた千鳥格子状となるように配列される。
【0046】
詳述すると,ブロックB1の隣接する2つのドットパターン95のY方向の平均位置と,その2つのドットパターン95の間に配置されるブロックB2のドットパターン95のY方向位置が等しくなるように配列されている。また,ブロックB2の隣接する2つのドットパターン95のY方向の平均位置と,その2つのドットパターン95の間に配置されるブロックB1のドットパターン95のY方向位置が等しくなるように配列されている。
【0047】
さらに,パターン画像91の全てのドットパターン95は,各ドットの位置座標のY方向の平均位置が,Y方向について同じ位置になる場所に配置される。つまり,X方向の位置座標が同じであるドット群について,Y方向の位置座標の平均値を取ると,ブロックB1でもブロックB2でも同じ値となる。
図5の例では,ブロックB1のドットパターン95は,Y方向にパターン画像91の両端を含んで等間隔に配置される。一方,ブロックB2のドットパターン95は,Y方向に,ブロックB1の各ドットパターン95の中央位置に配置される。従って,両方のブロックB1,B2のいずれについても,各ドットの位置座標のY方向の平均位置はパターン画像91のY方向の中央位置であり,
図6に示すように,X方向に一列に並ぶ。
【0048】
また,マーク画像93,94は,Y方向について,パターン画像91の外側に配置される。つまり,Y方向について,マーク画像93とマーク画像94とで,パターン画像91を挟んでいる。マーク画像93,94は,X方向について,各ブロックの中心線を中心に対称の図形である。各ブロックについて,マーク画像93とマーク画像94とは,X方向について同じ位置であり,Y方向について,異なる数,または,異なる大きさである。
【0049】
また,マーク画像93,94は,ブロックB1とブロックB2とで,異なるマークである。
図5の例では,マーク画像93は,ブロックB1では中心上の点を含む3点,ブロックB2では中心線を挟んで対称の位置の2点のドットによるマークである。また,いずれのブロックでも,マーク画像93はY方向に1列のドット列であり,マーク画像94はY方向に2列のドット列である。
【0050】
なお,この位置補正パターン71を画像形成部10によって
図5の向きに印刷すると,各ブロックの全体が1つのLEDユニット61を用いて形成される。そのため,X方向に同じ位置のドットは,それぞれの位置に対応する1つのLED素子62を用いて形成される。また,画像形成時のシート搬送方向について,マーク画像93が上流側,マーク画像94が下流側である。
【0051】
従って,位置補正パターン71が印刷されたシートから,マーク画像93,94を読み取ることにより,印刷時のシート搬送方向,および,各LEDユニット61の対応する範囲,LEDユニット61同士の境目等がわかる。例えば,マーク画像93の各ドットのX座標の平均値と,マーク画像94の各ドットのX座標の平均値とから,LEDユニット61の中心線がわかる。ここから,X方向の両側にLEDユニット61の幅の半分の範囲が,1つのLEDユニット61を使用して印刷される範囲である。
【0052】
なお,ドットパターン95の各ドットや個々のマーク画像93,94の大きさは,例えば数ピクセル程度である。画像形成部10で形成可能であって,かつ,画像読取部20で読み取り可能な大きさとすればよい。また,パターン画像91としては,全てのLED素子62を使用しないパターンであるドットパターン95に限らない。例えば,
図7に示すように,LEDユニット61の全てのLED素子62を使用するパターンである線分パターン96としてもよい。この線分パターン96の印刷時には,対応するLEDユニット61のLED素子62は全て点灯される。従って,線分パターン96を用いれば,各LED素子62についての位置ズレをも把握できる。
【0053】
[位置ズレ補正]
MFP100の発光ユニット60は,前述したように複数のLEDユニット61を有している。印刷データに基づくトナー像をズレや歪みのないように感光体51上に形成するためには,全てのLEDユニット61がそれぞれ期待される位置に正しく取り付けられていることが必要である。しかしながら,LEDユニット61の取り付け位置には,ある程度の位置ズレが発生することがある。
【0054】
例えば,MFP100に取り付けられた後の発光ユニット60には,周囲から力が加わるため,場合によっては発光ユニット60に撓みが発生することがある。つまり,LEDユニット61の配置や個々のLED素子62の配置は,MFP100に取り付ける前の発光ユニット60と取り付け後の発光ユニット60とで,必ずしも一致していない。つまり,取り付けによって,発光ユニット60のLEDユニット61には,ある程度の位置ズレが発生することがある。
【0055】
そこで,MFP100は,組み立て後に,LEDユニット61単位の位置ズレ量を取得し,取得した位置ズレ量72を不揮発性記憶部34に記憶する。MFP100は,プロセス部5の色ごとに位置ズレ量72を取得し,記憶する。MFP100の組み立て後に位置ズレ量を取得することにより,取り付け時に発生した位置ズレをも含む補正量を得ることができる。なお,複数のLEDユニット61間での位置ズレの程度に比較して,各LEDユニット61の内部でのLED素子62の配置のズレの程度は非常に小さい。
【0056】
画像形成時には,MFP100は,記憶されている位置ズレ量72に基づいて,各LED素子62の発光量や点灯タイミングを調整する。具体的には,シート搬送方向のズレについては,各LED素子62の点灯タイミングを,シート搬送方向に直交する方向のズレについては,各LED素子62の発光量を調整する。このようにすれば,MFP100は,LEDユニット61の位置ズレによる影響を抑制して,ズレの小さい画像を得ることができる。
【0057】
[位置ズレ量取得処理]
[第1の形態]
続いて,MFP100の各LEDユニット61間の位置ズレ量を取得する位置ズレ量取得処理について,
図8のフローチャートを参照して説明する。本処理は,ユーザの操作パネル40の操作によって,補正値の更新指示の入力を受けたことを契機に,CPU31によって実行される。なお,この処理は,例えばMFP100の製造検査工程の最終段階にて実行されるものであり,ここでのユーザは,例えば製造の管理者である。
【0058】
位置ズレ量取得処理を開始すると,MFP100は,まず,画像読取部20にイメージセンサ22の校正工程を開始させる(S101)。これは,画像読取部20のイメージセンサ22の輝度や歪みの補正を行うための処理である。この処理はある程度の時間を要するため,後述するパターン書込処理と並行して行うことにより,位置ズレ量取得処理の全体としての処理時間の短縮を図ることができる。
【0059】
画像読取部20にイメージセンサ22の校正工程を実行させている間に,MFP100は,画像形成部10に濃度補正を並行して実施させる(S102)。これは,例えば濃度補正用のテストパッチのトナー像を形成し,そのテストパッチを搬送ベルト7上に転写し,転写されたテストパッチをセンサ57(
図1参照)で読み取ることにより,現像バイアスの調整等を行う処理である。印刷の前にこの濃度補正を行うことにより,印刷されたパターン画像にかすれやにじみが発生することを防止できる。
【0060】
濃度補正の後,MFP100は,シートを搬送し,そのシートに位置補正パターン71に基づく画像を印刷する(S103)。位置補正パターン71は,ROM32に記憶されている印刷データである。CPU31は,ROM32から位置補正パターン71を読み出し,その画像を画像形成部10に印刷させる。なお,この印刷時には,MFP100本体側の位置ズレ補正処理,例えばスキュー補正などは実施しない設定とすることが好ましい。これにより,LEDユニット61自体の位置ズレが,そのまま画像に表れる。
【0061】
なお,S103のパターン書込処理では,位置補正パターン71を,マーク画像93,94がシート搬送方向についてパターン画像91の上流側と下流側とに配置される向きで印刷する。つまり,パターン書込処理におけるシート搬送方向は,位置補正パターン71のY方向である。また,印刷時におけるLED素子62の配列方向は,位置補正パターン71のX方向である。従って,同一のブロックのマーク画像93とマーク画像94とは,同じLED素子62を用いて形成される。
【0062】
そして,MFP100は,S101にて開始させたイメージセンサ22の校正工程が,終了しているか否かを判断する(S104)。終了していないと判断した場合には(S104:No),終了するまで待機する。そして,イメージセンサ22の校正工程が終了したら(S104:Yes),ユーザに読み取り開始を告知する(S105)。具体的には,例えば,S103にて位置補正パターン71が書き込まれたシートをコンタクトガラス23の上にセットし,読み取り開始を指示するボタンを押下するように,操作パネル40に表示することにより,ユーザに対して告知する。
【0063】
さらに,シートの読み取り開始の指示を受けたか否かを判断する(S106)。シートの読み取り開始の指示を受けていない場合には(S106:No),指示を受けるまで待機する。読み取り開始の指示を受けたら(S106:Yes),パターン読取処理を実行する(S107)。
【0064】
次に,パターン読取処理の手順について,
図9のフローチャートを参照して説明する。この処理は,
図8のS103において位置補正パターン71が書き込まれたシートが,MFP100の画像読取部20にセットされた状態で開始される。
【0065】
本処理を開始すると,MFP100は,まず,画像読取部20によってシートの画像を読み取らせる(S201)。読み取り方式は,イメージセンサ22を移動させる方式でも,シートを移動させる方式でもよい。さらに,シートの画像の読み取りが完了したか否かを判断する(S202)。シートの画像の読み取りが完了していないと判断した場合には(S202:No),完了するまで読み取りを継続する。
【0066】
読み取りが完了したと判断したら(S202:Yes),読み取った画像データから,マーク画像93,94を検出し,検出されたマーク画像93,94の位置座標を取得する(S203)。マーク画像93,94を結ぶ線分が,書き込み時のシート搬送方向を意味する。S203では,全てのマーク画像93,94を抽出してもよいし,シートの中央部に書き込まれている一組のマーク画像93,94のみとしてもよい。そして,マーク画像93,94を正常に検出できたか否かを判断する(S204)。
【0067】
マーク画像93,94を正常に検出することができなかったと判断したら(S204:No),読み取りエラーを告知する(S205)。例えば,位置補正パターン71が印刷されたシートではないものを読み取った場合である。S205の後,読み取った画像データを削除し(S206),
図8の位置ズレ量取得処理に戻る。
【0068】
一方,マーク画像93,94を正常に取得できたと判断した場合には(S204:Yes),正常にパターン読取処理が完了したので,
図8の位置ズレ量取得処理に戻る。なお,読み取った画像データにおいて,マーク画像93とマーク画像94との位置関係が印刷時とは逆になっている場合もある。印刷時のシート搬送方向から約180°回転された状態でコンタクトガラス23上にセットされた場合である。この場合も正常にパターン読取処理が完了したと判断し,後述するズレ算出処理における算出結果を適用する際に,対応するLEDユニット61やLED素子62の順番を変更して用いるようにすればよい。
【0069】
図8の位置ズレ量取得処理に戻り,S107のパターン読取処理にて,正常にパターン読取処理が完了したか否かを判断する(S108)。つまり,
図9のS204にてYesとなっていれば,正常にパターン読取処理を完了したと判断する(S108:Yes)。一方,
図9のS206から戻った場合,つまり,RAM33に画像データが記憶されていない場合には,正常にパターン読取処理を完了していない(S108:No)ので,S106に戻り,再び読み取り指示を受けるまで待機する。
【0070】
正常にパターン読取処理が完了したと判断したら(S108:Yes),ズレ算出処理を実行する(S109)。S109にて実行されるズレ算出処理の手順について,
図10のフローチャートを参照して説明する。本処理は,パターン読取処理にて読み取った画像データに基づき,LEDユニット61のズレ量を算出する処理である。
【0071】
以下では,
図11に示す例に基づいて説明する。この図は,説明の簡単化のために,Y方向に4列のドットパターン95を有するブロックB1と,Y方向に3列のドットパターン95を有するブロックB2とを有するパターン画像91を例示したものである。さらに,図中で左右方向のブロックB1とB2との並び方向を画像読取部20の主走査方向として読み取ったものとする。また,主走査方向に直交する副走査方向について,マーク画像93,パターン画像91,マーク画像94の順に読み取ったものとする。
【0072】
まず,各マーク画像93,94の座標を取得し,ブロック軸97の位置を取得する(S301)。ブロック軸97は,ブロックごとに,マーク画像93の主走査方向の中央位置と,マーク画像94の主走査方向の中央位置とを結ぶ,ブロックの中心線である。
【0073】
例えば,所定の範囲内にあるマーク画像93を1つのグループと見なして,グループ内の各マーク画像93の平均位置を算出する。同様に,所定の範囲内にあるマーク画像94を1つのグループと見なして,グループ内の各マーク画像94の平均位置を算出する。そして,マーク画像93の平均位置とマーク画像94の平均位置とのうち,主走査方向の位置が近いものを結ぶ直線を,ブロック軸97として取得する。ブロック軸97は,副走査方向の直線となる。
【0074】
図11に示した例では,ブロックB1では,所定の範囲内にある3点のマーク画像93の平均位置と,所定の範囲内にある6点のマーク画像94の平均位置とから,ブロック軸97が取得される。同様に,ブロックB2では,所定の範囲内にある2点のマーク画像93の平均位置と,所定の範囲内にある4点のマーク画像94の平均位置とから,ブロック軸97が取得される。
【0075】
そして,ブロック軸97から所定の幅の範囲内の画像データを読み出し,そこからパターン画像91を抽出してブロック化する(S302)。すなわち,ブロック軸97から主走査方向に所定の範囲を1つのブロックと見なして,LEDユニット61と対応づける。例えば,
図11に二点鎖線で囲んで示すように,ブロックB1のパターン画像91の範囲を画像ブロックQ1,ブロックB2のパターン画像91の範囲を画像ブロックQ2とする。
【0076】
そして,画像ブロックQ1,Q2内のドットパターン95のうち,主走査方向に同じ位置にあるドットは,同じ1つのLED素子62を用いて形成されたものである。そこで,抽出された画像ブロックQ1,Q2内のドットパターン95に含まれる各ドットの位置座標を取得し,これらの位置座標に基づいてLEDユニット61の配列状態を検出する。そのために,読み取った画像のうちのパターン画像91に相当する部分を,配列状態を検出するための検出用画像に変換する変換処理を実行する。このズレ算出処理における変換処理は,例えば,副走査方向について,各ドットの位置座標の平均値を算出する平均処理とすればよい。すなわち,S302にてブロック化された画像ブロックQ1,Q2内のドットパターン95を,ブロック軸97の方向に平均する(S303)。
【0077】
S303により,
図11に示すように,ブロックQごとの平均パターン98が作成される。
図11では,ドットパターン95の各ドットの平均値を○で示した。前述したように,位置補正パターン71のパターン画像91は,各ドットの位置座標のY方向の平均値が一直線上に並ぶように作成されている。従って,ブロックQ1とQ2との平均パターン98は,使用したLEDユニット61に位置ズレがなければ,一列に並ぶ。
【0078】
なお,ズレ算出処理では,画像データを読取処理の主走査方向について複数のブロックに分けて,一方の端部からブロックごとに処理の対象とするとよい。例えば,位置補正パターン71のうち,書込処理にて1つのLEDユニット61によって書き込まれたと判断できる部分を,1つのブロックとして抽出し,そのブロック内の画像について平均処理を行う。このように画像データの一部分ずつ処理することにより,CPU31に過剰な負担が掛かることが抑制される。また,平均処理の結果に基づいて位置ズレ量を算出するので,シートの伸縮や搬送速度の誤差等による算出誤差を抑制できる。
【0079】
さらに,平均パターン98のうち,両端のドットの座標の差分値を算出する(S304)。これにより,平均パターン98のブロック軸97に直交する方向からの傾きの程度を把握する。なお,両端以外のドットの位置を参照して,さらに詳細な判断を行ってもよい。あるいは,S303にて位置座標を取得するドットは,ドットパターン95の両端のドットのみとしてもよい。
【0080】
そして,S304で得られた差分値が,予め決めた許容値以内であるか否かを判断する(S305)。そして,差分値が許容値以下であり,平均パターン98の傾きが許容される範囲内であると判断した場合には(S305:Yes),平均パターン98の両端のドットの位置座標の平均値をRAM33に記憶する(S306)。一方,差分値が大きく,平均パターン98の傾きが許容範囲外であると判断した場合には(S305:No),平均パターン98の両端のドットの位置座標を両方ともRAM33に記憶する(S307)。
【0081】
図11に示したように,ブロック内の平均パターン98が主走査方向に一列に並んでいる場合には,各ドットパターン95が,主走査方向に並んで形成されていると判断できる。つまり,LEDユニット61の配列方向からの傾きは大きくないと判断できる。そこで,LEDユニット61の配置の指標として,両端の平均値のみを記憶すればよい。その方がメモリの負荷が軽減される。しかし例えば,
図12に示すように,平均パターン98の傾きの大きいブロックでは,平均パターン98の両端の位置を両方とも記憶して,画像形成時に傾きを含んで補正ができるようにしておくことが望ましい。
【0082】
さらに,読み込んだ画像データの全ブロックについて,平均パターン98の算出が終了したか否かを判断する(S308)。終了していないと判断した場合には(S308:No),S301に戻り,次のブロックについて同様に算出する(S301〜S307)。各ブロックは,それぞれLEDユニット61の1つに対応するように決定しているので,露光部53の発光ユニット60に含まれるLEDユニット61の個数に対応する回数分,S301〜S307を繰り返す。
【0083】
そして,全ブロックの算出が終了したと判断した場合には(S308:Yes),S306,S307にて記憶した値と,全ブロックについて平均した総平均値との差分,すなわち位置ズレ量72を算出する(S309)。なお,S307において傾きが大きかったブロックの値については,総平均値の算出に使用しないとしてもよい。さらに,S309にて算出した位置ズレ量72を不揮発性記憶部34に記憶させる(S310)。これで,ズレ算出処理を終了する。なお,総平均との差分に限らず,隣接するブロックとの差を位置ズレ量としてもよい。
【0084】
[第2の形態]
続いて,位置ズレ量取得処理の第2の形態について,
図13のフローチャートを参照して説明する。第2の形態の位置ズレ量取得処理は,第1の形態において
図9で示したパターン読取処理を,
図13に示したパターン読取処理に置き換えたものである。パターン読取処理以外の部分は,第1の形態と同様の処理である。具体的には,パターン読取処理において,シートを傾けて読み取る。この点,シートを傾けない第1の形態と異なる。なお,第2の形態の位置ズレ量取得処理では,第1の形態と同じ処理については同じ符号を付して説明を省略する。つまり,パターン読取処理についてのみ説明する。
【0085】
書き込み時のシートの搬送方向と読み取り時の副走査方向とが一致すると,一つのLED素子62で書き込まれたドット像のすべてを,イメージセンサ22の同一の光学素子にて読み取ることとなる。本形態では,シートを,シート面内で少し傾けて読み取らせ,読み取り時の主走査方向と書き込み時のLED素子62の配列方向とが一致しないようにする。例えば,1〜5°程度傾けることが好ましい。これにより,画像読取部20のイメージセンサ22の光学素子にばらつきがあっても,光学素子の影響が分散されることにより,光学素子のばらつきの影響を小さくすることが期待できる。
【0086】
そのために,
図8のS107から
図13に進み,シートの画像を読み取らせる(S201〜S202)。本形態では,読み取り方式は,イメージセンサ22を移動させる方式が好ましい。つまり,イメージセンサ22を移動させることにより,コンタクトガラス23上に載置されたシートの画像を読み取らせる。例えば,シートを少し傾けて載置するよう,操作パネル40にて告知するとよい。
【0087】
読み取りが完了し,S204にて,マーク画像93,94を正常に取得できたと判断した場合には(S204:Yes),対応するマーク画像93,94の相対的な位置関係から,書込処理時のシート搬送方向に対する読取処理時の副走査方向の傾きを算出する(S401)。
【0088】
そして,S204にて算出したシートの傾き量が予め決めた閾値以上であるか否かを判断する判断処理を実行する(S402)。あるいは,傾き量が適切な範囲内であるか否かの判断としてもよい。傾き量が大きすぎるのも好ましくないからである。傾き量が適切であると判断した場合には(S402:Yes),このパターン読取処理を正常に終了する。
【0089】
一方,傾き量が適切ではないと判断した場合には(S402:No),傾き量が適切な範囲内となるようにパターン読取処理をやり直すことが好ましい。例えば,傾きの程度が不足しているため,より大きく傾けて読み取るように告知する表示を操作パネル40に表示する(S403)。さらに,S201で読み取った画像データを削除し(S206),
図8の位置ズレ量取得処理に戻る。
【0090】
つまり,第2の形態では,S402において,パターン読取処理にて読み取り対象となったシートが,読み取りの副走査方向に対して,閾値以上傾いていないと判断した場合には,読み取った画像データに基づいてズレ量を算出しない。たとえ算出したとしても,その算出されたズレ量を無効とする。
【0091】
また,
図8のS108では,シートの傾きが不足している場合にも,パターン読取処理を正常に完了していないと判断される(S108:No)。
図13のS402にてNoであれば,RAM33に画像データが記憶されていないので,正常にパターン読取処理を完了していないと判断され,S106に戻る。
【0092】
なお,本形態では,読み取られた画像データは,シートを閾値以上に傾けた状態で読み取った画像データである。そのため,ズレ算出処理(
図10)は,パターン読取処理にて傾けて読み取った画像データを,直立位置となるように補正してから補正後の画像データに対して行うこととする。例えば,取得されたブロック軸97を用いて,画像データを回転させてから,パターン画像91とLEDユニット61との対応付けを行うとよい。あるいは,傾いたままの画像データについて処理し,最後に傾きを補正してもよい。
【0093】
また,本形態では,イメージセンサ22を移動させることによるパターン読取処理を行うとしたが,シートが適切に傾いた状態で移動させることができるのであれば,ADFを用いた読み取りとしてもよい。
【0094】
[画像形成処理]
続いて,MFP100において,画像形成を行う場合の位置ズレ補正処理について説明する。位置ズレ量取得処理が実行されたMFP100では,ズレ算出処理にて位置ズレ量72が不揮発性記憶部34に記憶されている。これらが記憶されたMFP100で画像形成処理を行う場合には,記憶されている位置ズレ量72を使用して,位置ズレ補正処理を行う。
【0095】
位置ズレ補正処理では,例えば,ブロックごとの位置ズレ量72に応じて,LEDユニット61の発光タイミングまたは発光量を調整する。具体的には,LED素子62の配列方向に直交する方向の位置ズレがある場合には,LEDユニット61の発光タイミングを調整する。
【0096】
また,LED素子62の配列方向の位置ズレがある場合には,LEDユニット61の発光量を調整する。例えば,LEDユニット61の末端のLED素子62と,当該LED素子62に最も近接する他のLEDユニット61のLED素子62との位置が,想定よりも離れている場合には,両側のLED素子62の発光量を増加させる。一方,想定よりも近づいている場合には,両側のLED素子62の発光量を減少させる。また,
図12に示した例のように,LEDユニット61の傾きがある場合には,LEDユニット61の発光タイミングと発光量との両方を調整する。
【0097】
以上,詳細に説明したように,本形態のMFP100は,感光体51と,複数のLEDユニット61を有する露光部53とを備える画像形成部10と,画像読取部20とを有している。そして,画像形成部10にてLEDユニット61の位置ズレ検出用のパターン画像91が書き込まれたシートを,画像読取部20にて読み取り,読み取り結果に基づいてLEDユニット61の位置ズレ量72を算出する。シートに書き込まれたパターン画像91には,取り付け後のLEDユニット61による位置ズレが反映される。そのパターン画像91を読み取って,LEDユニット61の位置ズレを算出することにより,取り付けに伴って発生した位置ズレが反映された補正値を取得できる。算出された位置ズレ量72を画像形成時に参照することにより,画質の向上等が期待できる。
【0098】
また,従来では,複数個のLEDユニット61を組み合わせた発光ユニット60を製造するメーカーにおいて,製造した発光ユニット60を検査していた。そして,その検査結果を記憶させたメモリを搭載した発光ユニット60として販売されていた。本形態のMFP100では,発光ユニット60を取り付け後にMFP100において検査をして,ズレ量を本体の不揮発性記憶部34に記憶させている。従って,取り付け前の発光ユニット60にズレ量を記憶させる必要はない。つまり,発光ユニット60にメモリを搭載する必要はない。
【0099】
なお,上記の各形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,MFPに限らず,複写機,FAX等,画像形成機能と画像読取機能とをともに備えるものであれば適用可能である。
【0100】
また,例えば,上記の形態では,LEDユニット61としてLED素子62と駆動回路63とを有するものを例示したがこれに限らず,LED素子62のみが並ぶアレイに対して駆動回路を外付けしたものであってもよい。またあるいは,発光ユニット60は,複数のLEDユニット61を並べたものに限らず,全体で1本のLED素子アレイであってもよい。
【0101】
また,例えば,上記の形態では,ブロックとして,1つのLEDユニット61に相当する範囲を抽出するとしたが,複数のLEDユニット61に相当する範囲を1つのブロックとしてもよい。また,あるいは,ブロックに分割せず,全体を1つのブロックとして算出してもよい。
【0102】
また,例えば,上記の形態では,各パターン画像91の平均位置と総平均値との差分を位置ズレ量とするとしたが,比較の対象として,所定のマスターデータを予め記憶しておいてもよい。そして,例えば,そのマスターデータとの差を位置ズレ量とすることもできる。また,例えば,算出した位置ズレ量に基づいて,MFP100の良否判定を行うこともできる。
【0103】
また,例えば,画像形成部10にて位置補正パターン71が形成されたシートを画像読取部20へ受け渡す構成をさらに有するMFPであれば,パターンの形成から位置ズレ量の算出までの全工程を自動で行うことができるので好ましい。
【0104】
また,例えば,位置ズレ量取得処理の実行者は,製造の管理者に限るものではない。例えば,販売後のMFP100について,サービス員等による保守点検サービス時に行ってもよい。例えば,発光ユニット60の取り替えを行った場合には,位置ズレ量取得処理を実行することが好ましい。また,最終消費者が発光ユニット60を取り替えた場合にも,位置ズレ量取得処理を実行してもよい。
【0105】
また,例えば,画像読取部20を有しないLED露光方式のプリンタと,画像読取部20を有するスキャナ等の読取装置との組み合わせに,本発明を応用することもできる。例えば,プリンタにてLEDユニット61の位置ズレ検出用のパターン画像をシートに書き込ませ,そのシートを,読取装置によって読み取らせる。その読み取り結果に基づいて,プリンタのLEDユニット61の位置ズレ量を算出してもよい。そして,算出された位置ズレ量を,プリンタに記憶させるようにしてもよい。
【0106】
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。