特許第6011409号(P6011409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011409
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/14 20060101AFI20161006BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20161006BHJP
   H04N 5/33 20060101ALI20161006BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01L27/14 D
   H01L27/14 F
   H01L27/14 A
   H04N5/33
   H04N5/335 690
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-60382(P2013-60382)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-78680(P2014-78680A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-204603(P2012-204603)
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発/デジアナ混載三次元集積化技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 禎祐
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 忠
(72)【発明者】
【氏名】小柳 光正
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】福島 誉史
【審査官】 西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0019154(US,A1)
【文献】 特開2012−146920(JP,A)
【文献】 特開2011−166477(JP,A)
【文献】 特開2010−165939(JP,A)
【文献】 特開2011−049445(JP,A)
【文献】 特開2001−339057(JP,A)
【文献】 特開2008−076084(JP,A)
【文献】 特開平05−129581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14
H01L 27/146
H04N 5/33
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板(10)と、前記シリコン基板に形成された第1フォトダイオード(11)と、前記第1フォトダイオードの上に形成されたカラーフィルタ(12)およびマイクロレンズ(13)と、前記第1フォトダイオードに接続される回路とを有し、前記マイクロレンズにて集光すると共に、前記カラーフィルタにて通過させられた可視光を前記第1フォトダイオードにて検出する可視イメージセンサ(5)が構成された可視イメージセンサチップ(1)と、
前記可視イメージセンサチップのうち前記可視イメージセンサが形成された位置と異なる位置に配置され、異種半導体にて構成された半導体基板(20)と、前記半導体基板に形成された第2フォトダイオード(21)と、前記半導体基板の表面に形成され赤外光のみを通過させる可視光カットフィルタ(22)と、前記第2フォトダイオードに接続されると共に前記半導体基板の裏面側に引き出された配線(24)とを有し、前記可視光カットフィルタを通過した赤外光を前記第2フォトダイオードにて検出すると共に、前記半導体基板の裏面側において前記配線が前記可視イメージセンサチップに備えられた回路に接続された赤外イメージセンサ(2)と、
前記赤外イメージセンサの表面側に貼り付けられた透光性キャップ(3)と、
前記透光性キャップと前記可視イメージセンサチップとの間に備えられ、前記第1フォトダイオードや前記回路および前記第2フォトダイオードを密閉する封止部材(4)と、を備えていることを特徴とするイメージセンサ。
【請求項2】
前記可視光カットフィルタはシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記シリコン酸化膜に形成されたコンタクトホールを通じて前記第2フォトダイオードのアノード領域およびカソード領域がアノード電極およびカソード電極に電気的に接続されており、
前記半導体基板の側面から裏面に掛けて引き出された前記配線に対して、前記アノード電極やカソード電極がそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記シリコン基板のうち前記カラーフィルタが配置される表面側とは反対側となる裏面側に前記第1フォトダイオードが形成されていると共に、前記シリコン基板の裏面側に前記第1フォトダイオードに接続される回路が形成されており、
前記シリコン基板の表裏面を貫通する貫通孔内に貫通電極(10a)が形成され、該貫通電極を通じて、前記第2フォトダイオードが前記可視イメージセンサチップに備えられた回路に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のイメージセンサ。
【請求項5】
前記シリコン基板のうち前記カラーフィルタが配置される表面側に前記第1フォトダイオードが形成されていると共に、前記シリコン基板の表面側に前記第1フォトダイオードに接続される回路が形成されており、
前記第2フォトダイオードが前記シリコン基板の表面側において前記可視イメージセンサチップに備えられた回路に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のイメージセンサ。
【請求項6】
前記半導体基板の裏面側に前記第2フォトダイオードが形成され、該半導体基板の裏面側において前記第2フォトダイオードのアノード領域およびカソード領域がアノード電極およびカソード電極に電気的に接続されていると共に、前記配線に対して、前記アノード電極やカソード電極がそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項7】
前記可視イメージセンサチップの裏面側に備えられ、前記可視イメージセンサチップに備えられた回路を通じて前記第1フォトダイオードおよび前記第2フォトダイオードからの可視光や赤外光に対応する出力の外部への読み出しを行う読み出し回路が形成された基板(50)が備えられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のイメージセンサ。
【請求項8】
前記読み出し回路が形成された基板は、
前記第1フォトダイオードおよび前記第2フォトダイオードからの可視光や赤外光に対応する出力が入力されるアナログ回路が形成されたアナログ回路層(51)と、
前記アナログ回路層から出力されるアナログ信号を受け取り、デジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換回路を備えた変換回路層(52)と、
前記変換回路層から出力されるデジタル信号に基づき、可視光や赤外光に対応する出力信号を外部に出力するインターフェイスチップ(53)と、を有し、
前記可視イメージセンサチップの裏面側に、前記アナログ回路層と前記変換回路層および前記インターフェイスチップとが順に積層された積層構造にて構成されていることを特徴とする請求項7に記載のイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を検出する可視イメージセンサと赤外光を検出する赤外イメージセンサの両方を備えたイメージセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコンのフォトダイオードとシリコンの読み出し回路とを集積した可視イメージセンサが実用化されている。しかしながら、シリコンは1μm以下(例えば400〜1000nm)の可視光域での波長帯域にしか感度が無い。1μm以上(例えば1500nm程度)の赤外光域での波長帯域にも感度を持ったイメージセンサができれば、センサの昼間および夜間での認識性能を大きく向上させられるが、その帯域に感度を持つシリコン材料以外の半導体材料を用いてフォトダイオードを作成することが必要になる。
【0003】
このようなシリコン材料以外の半導体材料を用いてフォトダイオードを構成したイメージセンサとして、非特許文献1に示すものがある。このイメージセンサは、1μm以上の波長帯域に感度を持つ半導体材料で構成したフォトダイオードをシリコン基板に形成した読み出し回路(ROIC)に3次元的に積層実装することにより構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D. Temple et al., “High Density 3-D Integration Technology for Massively Parallel Signal Processing in Advanced Infrared Focal Plane Array Sensors,” International Electron Devices Meeting (IEDM), pp.132-135 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に示されるイメージセンサでは、赤外光域となる1μm以上の波長帯域に感度を持つようにできるものの、逆に、可視光域となる1μm以下の波長帯域には感度を持つことができない。このため、可視光の検出と赤外光の検出を両方共に行えるイメージセンサが要望される。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、可視光を検出する可視イメージセンサと赤外光を検出する赤外イメージセンサの両方を備えたイメージセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1ないし8に記載の発明では、シリコン基板(10)と、シリコン基板に形成された第1フォトダイオード(11)と、第1フォトダイオードの上に形成されたカラーフィルタ(12)およびマイクロレンズ(13)を有する可視イメージセンサチップ(1)と、可視イメージセンサチップのうち可視イメージセンサが形成された位置と異なる位置に配置され、異種半導体にて構成された半導体基板(20)と、半導体基板に形成された第2フォトダイオード(21)と、半導体基板の表面に形成され赤外光のみを通過させる可視光カットフィルタ(22)と、第2フォトダイオードに接続されると共に半導体基板の裏面側に引き出された配線(24)とを有する赤外イメージセンサ(2)と、赤外イメージセンサの表面側に貼り付けられた透光性キャップ(3)と、透光性キャップと可視イメージセンサチップとの間に備えられ、第1フォトダイオードや回路および第2フォトダイオードを密閉する封止部材(4)と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
このようなイメージセンサでは、可視イメージセンサチップの上に赤外イメージセンサを配置し、この赤外イメージセンサが配置されていない場所に可視イメージセンサが配置されるようにしている。これにより、可視光域となる1μm以下の波長帯域と赤外光域となる1μm以上の波長帯域の両方の帯域の光信号を検出することができる。したがって、可視光を検出する可視イメージセンサと赤外光を検出する赤外イメージセンサの両方を備えた構造にできる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態にかかるイメージセンサSの簡略断面図である。
図2】シリコン基板10に形成されたフォトダイオード11や各種素子および配線等の構造の一例を示した断面図である。
図3】赤外イメージセンサ2の一例を示した断面図である。
図4】イメージセンサSの読み出し回路が形成された基板50への接続形態の一例を示した断面図である。
図5】フォトダイオード11やMOSトランジスタ14などの形成工程を示した断面図である。
図6】カラーフィルタ12およびマイクロレンズ13の形成工程を示した断面図である。
図7】赤外イメージセンサ2の形成工程を示した断面図である。
図8】赤外イメージセンサ2およびガラスキャップ3を可視イメージセンサチップ1および基板50に接合する様子を示した断面図である。
図9】赤外イメージセンサ2およびガラスキャップ3を可視イメージセンサチップ1および基板50に接合する様子を示した断面図である。
図10】本発明の第2実施形態にかかるイメージセンサSの簡略断面図である。
図11】本発明の第3実施形態にかかるイメージセンサSの簡略断面図である。
図12】本発明の第4実施形態にかかるイメージセンサSの簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
図1図9を参照して、本実施形態にかかる可視光と赤外光の両方を検出することが可能なイメージセンサSの構成について説明する。
【0013】
図1に示すイメージセンサSは、可視光を検出する可視イメージセンサと赤外光を検出する赤外イメージセンサの両方を備えたものである。このイメージセンサSは、可視イメージセンサチップ1と赤外イメージセンサ2およびガラスキャップ3とを備えた構成とされている。具体的には、可視イメージセンサチップ1の上に赤外イメージセンサ2が配置され、可視イメージセンサチップ1および赤外イメージセンサ2をガラスキャップ3で覆っている。そして、ガラスキャップ3と可視イメージセンサチップ1との間の外縁部を封止部材4にて囲むことで、可視イメージセンサチップ1内に形成される各種素子や赤外イメージセンサ2に形成された素子を密閉して外部から隔離している。
【0014】
可視イメージセンサチップ1は、可視イメージセンサ5などが形成されたチップである。可視イメージセンサチップ1は、表面および裏面を有するシリコン基板10の表面側に、フォトダイオード11や各種素子および配線などを形成し、フォトダイオード11の上にカラーフィルタ12やマイクロレンズ13を形成することによって構成されている。これらのうちのフォトダイオード11やカラーフィルタ12およびマイクロレンズ13によって可視イメージセンサ5が構成されている。
【0015】
フォトダイオード11は、1画素(1ピクセル)毎に3つずつ備えられており、それぞれレッド・グリーン・ブルー(以下、RGBという)の光を検出するものとして用いられる。そして、各フォトダイオード11に対応して、レッドフィルタ12a、グリーンフィルタ12bおよびブルーフィルタ12cからなるカラーフィルタ12が配置されており、それぞれ、RGBのいずれか1つの波長帯域のみを通過させるフィルタとされている。このため、レッドの光を検出するフォトダイオード11にはレッドの光のみが入射され、グリーンの光を検出するフォトダイオード11にはグリーンの光のみが入射され、ブルーを検出するフォトダイオード11にはブルーの光のみが入射される。例えば、各カラーフィルタ12は、補色であるMg(マゼンダ)、Cy(シアン)、Ye(イエロー)に染色されたゼラチンによって構成される。
【0016】
また、カラーフィルタ12の上にマイクロレンズ13が配置されており、マイクロレンズ13にて集光し、カラーフィルタ12を介してフォトダイオード11に光が効率的に入射されるようにしてある。このマイクロレンズ13は、例えばSiレンズやガラスレンズもしくはゼラチンを用いたレンズなどによって構成される。
【0017】
本実施形態の場合、シリコン基板10としてp型基板を用い、このシリコン基板10の表層部に不純物をイオン注入することによって拡散層を形成し、フォトダイオード11や各種素子および配線等を形成している。
【0018】
図1では簡略化して記載してあるが、例えば、シリコン基板10に形成されたフォトダイオード11や各種素子および配線等は図2のような構成とされる(ただし、図2中には各種素子のうちのMOSトランジスタ14のみ記載してある)。
【0019】
具体的には、フォトダイオード11は、p型のシリコン基板10の表層部に形成されたn型カソード領域11aと、同じくシリコン基板10の表層部においてn型カソード領域11aよりも浅く形成されたp+型領域11bとを有した構成とされている。p型のシリコン基板10にて構成されるアノード領域とn型カソード領域11aとの間に形成されるPN接合によりフォトダイオード11が構成され、マイクロレンズ13およびカラーフィルタ12を通じてフォトダイオード11に照射される可視光を検出する。
【0020】
シリコン基板10に形成される各種素子としては、MOSトランジスタ14などが挙げられる。MOSトランジスタ14は、シリコン基板10の表層部において互いに離間して配置されたn型ソース領域14aおよびn型ドレイン領域14bと、これらの間の上にゲート絶縁膜14cを介して形成されたゲート電極14dとを有した構成とされている。また、これらの上には層間絶縁膜14eが形成されており、層間絶縁膜14eに形成されたコンタクトホールを介してソース電極14fおよびドレイン電極14gがn型ソース領域14aやn型ドレイン領域14bに接続されている。
【0021】
なお、上記したように、カラーフィルタ12は、フォトダイオード11の上に形成されるが、シリコン基板10の表面に層間絶縁膜14eや各種電極14f、14gなどが形成された上に形成されている。
【0022】
赤外イメージセンサ2は、シリコン以外の半導体材料であるGeもしくはInGaAsのような化合物半導体などの異種半導体によって形成されている。図1では簡略化して記載してあるが、例えば、赤外イメージセンサ2は図3のような構成とされている。
【0023】
具体的には、異種半導体にて構成されたp型の半導体基板20を用いて形成したフォトダイオード21によって赤外イメージセンサ2が構成されている。半導体基板20の表層部には、p+型領域21aとn型カソード領域21bが備えられている。そして、半導体基板20が微小サイズに小型化されており、それぞれが分離された状態になっている。
【0024】
また、半導体基板20の表面は可視光カットフィルタとしても機能するシリコン酸化膜(SiO2)22で覆われ、側面および裏面は絶縁膜23で覆われている。また、半導体基板20の表面側のシリコン酸化膜22に形成されたコンタクトホールを介してアノード電極21cおよびカソード電極21dがp型の半導体基板20にて構成されるアノード領域やn型カソード領域21bに接続されている。そして、アノード電極21cおよびカソード電極21dが半導体基板20の側面から裏面まで引き出された配線24に接続されることで、アノードおよびカソードが半導体基板20の裏面側において、可視イメージセンサチップ1の所望位置と接続できるようになっている。
【0025】
例えば、フォトダイオード21のカソード側が図2に示したMOSトランジスタ14のソースまたはドレインに対して接続され、アノード側が接地端子に接続されることで、赤外イメージセンサ2とMOSトランジスタ14との接続が行われている。
【0026】
ガラスキャップ3は、可視イメージセンサチップ1の寸法に合わせて形成された透光性キャップであり、本実施形態の場合にはガラス材料によって構成されている。このガラスキャップ3を通じて、可視イメージセンサチップ1に形成されたフォトダイオード11や赤外イメージセンサ2に形成されたフォトダイオード21に、外部からの可視光や赤外光が入射される。ガラスキャップ3の裏面には赤外イメージセンサ2が貼り付けられており、ガラスキャップ3に貼り付けられた状態で赤外イメージセンサ2と可視イメージセンサチップ1との電気的な接続が行われている。ガラスキャップ3の裏面と可視イメージセンサチップ1の表面、つまりマイクロレンズ13との間は離間しており、ギャップGが存在している。
【0027】
封止部材4は、例えばエポキシ樹脂などの封止材料によって構成されている。封止部材4は、赤外イメージセンサ2と共にガラスキャップ3を可視イメージセンサチップ1の上に配置するときに、可視イメージセンサチップ1とガラスキャップ3の外縁部において、これらの間に形成されるギャップGを密閉しつつ、これらを接着する。
【0028】
このような構成により、イメージセンサSの基本構造が構成されている。そして、このようなイメージセンサSに対して、読み出し回路が形成された基板を接続することで、検出した可視光や赤外光に対応する出力の外部への読み出しが行えるように構成される。図4は、イメージセンサSの読み出し回路が形成された基板50への接続形態の一例を示した断面図である。
【0029】
この図に示すように、読み出し回路を構成する基板50は、アナログ回路層51、ADC(アナログデジタルコンバータ)回路層52、インターフェイスチップ53とを有した構成とされている。アナログ回路層51、ADC回路層52およびインターフェイスチップ53は、シリコン基板などによって構成され、可視イメージセンサチップ1の裏面から順に積層されており、それぞれの間が接着層54を介して貼り合わされている。そして、可視イメージセンサチップ1を含めて、ADC回路層52およびインターフェイスチップ53には、貫通孔内に形成された貫通電極1a、51a〜53aが備えられている。また、各貫通電極1a、51a〜53aの表面にはマイクロバンプ55が備えられている。そして、各貫通電極1a、51a〜53aが各マイクロバンプ55を介して電気的に接続されることで、可視イメージセンサチップ1、アナログ回路層51、ADC回路層52およびインターフェイスチップ53が所望位置において電気的に接続されている。
【0030】
アナログ回路層51は、CDS(相関二重サンプリング:Correleted Double Sampling)回路やアンプを含むアナログ回路が形成された層であり、可視イメージセンサ5や赤外イメージセンサ2から出力されるアナログ信号を信号処理してADC回路層52に伝える。例えば、CDS回路により、光が入射された場合とされていない場合それぞれの場合に可視イメージセンサ5や赤外イメージセンサ2から出力されるアナログ信号の差動出力を取り、それをアンプにて増幅してADC回路層52に出力している。このような差動出力を用いることで、可視イメージセンサ5や赤外イメージセンサ2の出力に含まれる定常ノイズをキャンセルしている。
【0031】
ADC回路層52は、ADC回路が形成された層であり、アナログ回路層51から出力されたアナログ信号を受け取り、デジタル信号に変換してインターフェイスチップ53に出力している。
【0032】
インターフェイスチップ53は、外部との通信用のインターフェイス回路が備えられたチップであり、このインターフェイスチップ53を通じて、イメージセンサSにて検出された可視光および赤外光に応じた出力信号を外部に出力している。
【0033】
以上のようにして、イメージセンサSと読み出し回路が形成された基板50との接続がなされ、イメージセンサSで検出した可視光や赤外光に応じた出力の外部への読み出しが行われる。
【0034】
次に、上記のように構成されるイメージセンサSの製造方法およびイメージセンサSと基板50との接続方法について、図5図9を参照して説明する。
【0035】
まず、シリコン基板10に対してフォトダイオード11やMOSトランジスタ14などを形成する工程を行う。具体的には、図5(a)に示す工程では、p型のシリコン基板10を用意したのち、別々のイオン注入マスクを用いてn型もしくはp型不純物のイオン注入および熱拡散を行うことで、n型カソード領域11a、p+型領域11b、n型ソース領域14aおよびn型ドレイン領域14bを形成する。続いて、図5(b)に示す工程では、ゲート酸化などによってゲート絶縁膜14cを形成したり、ドープドPoly−Si層を成膜したのちパターニングしてゲート電極14dを形成する。さらに、層間絶縁膜14eの形成工程、コンタクトホール形成工程、金属材料の成膜およびパターニングによるソース電極14fおよびドレイン電極14gや各種配線の形成工程を行う。これにより、フォトダイオード11およびMOSトランジスタ14が形成される。
【0036】
なお、図5では、シリコン基板10に形成されるフォトダイオード11やMOSトランジスタ14の一部のみしか記載していないが、実際には必要な画素数に応じた数のフォトダイオード11およびMOSトランジスタ14が形成される。
【0037】
続いて、フォトダイオード11およびMOSトランジスタ14を形成した後、平坦化工程を行い、シリコン基板10の上にカラーフィルタ12およびマイクロレンズ13を形成する。具体的には、図6(a)に示す工程として、ゼラチン30を塗布したのち、それをパターニングし、ブラックに染色することで、ハレーション防止膜を形成しておく。次に、図6(b)に示す工程として、ブラックに接触したゼラチン30の上に中間膜31を塗布したのち、再びゼラチン32を塗布してパターニングし、それをMgに染色する。そして、図6(c)、(d)に示す工程では、図6(b)と同様の工程を繰り返して、中間層33、35を介して形成したゼラチン34、36をパターニングしたのちYeやCyに染色する。これにより、RGBのカラーフィルタ12が形成される。
【0038】
その後、図6(e)に示す工程として、中間膜を塗布した後、更にゼラチンを塗布し、これをパターニングしてマイクロレンズ13を形成する。そして、表面保護膜としてトップコート37を塗布するなどの工程を行う。このようにして、カラーフィルタ12およびマイクロレンズ13を形成することができる。
【0039】
また、異種半導体にて構成された半導体基板20を用いて赤外イメージセンサ2を形成する工程を行う。まず、図7(a)に示す工程として、p型の半導体基板20を用意する。そして、別々のイオン注入マスクを用いて半導体基板20の表層部にn型もしくはp型不純物のイオン注入および熱拡散を行うことで、p+型領域21aおよびn+型カソード領域21bを形成する。その後、半導体基板20の表面にシリコン酸化膜22を形成したのち、コンタクトホール形成工程、電極材料の成膜およびパターニングによるアノード電極21cおよびカソード電極21dの形成工程を行う。そして、ガラスキャップ3を用意すると共にシリコン酸化膜22の表面に接着層56を塗布し、接着層56を介してガラスキャップ3と半導体基板20の表面側とを貼り合わせる。
【0040】
次に、図7(b)に示す工程として、半導体基板20の裏面側にエッチングマスクを配置し、それを用いて半導体基板20の不要部分をエッチングすることで、半導体基板20のうちフォトダイオード21の形成位置のみを残す。そして、配線材料を蒸着したのち、パターニングすることで配線24を形成する。
【0041】
続いて、図8に示すように、アナログ回路等を形成したアナログ回路層51、ADC回路等を形成したADC回路層52およびインターフェイス回路等が備えられたインターフェイスチップ53を用意する。そして、図5および図6の工程を経て形成された可視イメージセンサチップ1とアナログ回路層51とADC回路層52およびインターフェイスチップ53それぞれの間を接着層54にて接着する。これと同時に、各貫通電極1a、51a〜53aの表面に形成されたマイクロバンプ55を介して各貫通電極1a、51a〜53aを電気的に接続する。これにより、可視イメージセンサチップ1、アナログ回路層51、ADC回路層52およびインターフェイスチップ53が所望位置において電気的に接続される。また、可視イメージセンサチップ1の表面側において、赤外イメージセンサ2と対応する位置にマイクロバンプ57を形成する。
【0042】
そして、図9に示すように、図7に示す工程を経てガラスキャップ3の裏面側に赤外イメージセンサ2を形成したものを図8に示す工程を経た可視イメージセンサチップ1の表面側に搭載する。この状態で、赤外イメージセンサ2の配線24とマイクロバンプ57とを接合することにより、赤外イメージセンサ2が可視イメージセンサチップ1に形成されたMOSトランジスタ14などと電気的に接続される。これにより、図4に示したイメージセンサSと基板50とを接続した構造が完成する。
【0043】
以上説明した本実施形態にかかるイメージセンサSは、可視光を検出する可視イメージセンサ5と赤外光を検出する赤外イメージセンサ2の両方を備えている。具体的には、可視イメージセンサチップ1の上に赤外イメージセンサ2を配置し、この赤外イメージセンサ2が配置されていない場所に可視イメージセンサ5が配置されるようにしている。これにより、可視光域となる1μm以下の波長帯域と赤外光域となる1μm以上の波長帯域の両方の帯域の光信号を検出することができる。
【0044】
そして、このように可視光域と赤外光域の両方の光信号を検出できるようになるので、従来には無い新しい応用にイメージセンサSを用いることが可能となる。例えば、車両用にイメージセンサSを用いる場合、昼間のみならず夜間でも画像認識が行えるようになるため、夜間の車両の運転に対する安全性を著しく向上させることが可能となる。また、本イメージセンサSを2個使って立体視を行うようにすれば、夜間でも対象物までの距離を測定することや、赤外光と可視光の両方の光信号を用いて、対象物が人間であるかそれ以外のものであるか識別することが可能となる。これらの効果は、赤外イメージセンサ2と可視イメージセンサ5の両方を搭載したイメージセンサSでなければ実現できない。このことからも、本実施形態で説明したイメージセンサSにより、様々な新しい応用の実現が可能になることが判る。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して可視イメージセンサチップ1の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図10に示すように、本実施形態のイメージセンサSでは、可視イメージセンサチップ1に形成されるフォトダイオード11をシリコン基板10のうちカラーフィルタ12側の面ではなく反対側の面に形成するようにしている。すなわち、シリコン基板10の一面側にn型カソード領域11aとp+型領域11bとを有するフォトダイオード11を形成しつつ、それらが形成された面と反対側の面にカラーフィルタ12を形成している。また、シリコン基板10のうちカラーフィルタ12が配置される面側に、赤外イメージセンサ2を構成するフォトダイオード21を配置している。
【0047】
さらに、シリコン基板10のうちフォトダイオード11が形成された面側に、図10中には図示していないが、図2に示したMOSFET14などの各種素子が形成されていると共に、層間絶縁膜14eを介して各種配線や電極などが形成されている。そして、シリコン基板10の両面を貫通する貫通孔内に形成された貫通電極10aを通じて、各種素子・配線と赤外線イメージセンサ2との電気的な接続が行われている。
【0048】
このように構成されるイメージセンサSでは、フォトダイオード11が形成されたシリコン基板10の裏面側を光の入射面にでき、フォトダイオード11やMOSFET14などの各種素子に接続される配線層が無い面を入射面にできる。このため、光の利用効率を上げることが可能となる。
【0049】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して赤外イメージセンサ2の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図11に示すように、本実施形態のイメージセンサSでは、赤外イメージセンサ2を構成するフォトダイオード21を半導体基板20のうち可視イメージセンサチップ1に接続される面側に形成している。すなわち、半導体基板20のうち可視イメージセンサチップ1に接続される面側に、p+型領域21aとn型カソード領域21bを形成している。
【0051】
このように、半導体基板20のうち可視イメージセンサチップ1に接続される面側に赤外イメージセンサ2を構成するフォトダイオード21の各不純物領域21a、21bを形成することもできる。この場合、アノード電極21cおよびカソード電極21dについても、半導体基板20のうち可視イメージセンサチップ1に接続される面側に配置されることになる。このため、フォトダイオード21に接続される配線24は、半導体基板20の裏面側に引き出されるだけで良く、表面から側面を介して裏面側まで引き出される必要は無い。したがって、赤外イメージセンサ2の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0052】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものである。
【0053】
図12に示すように、本実施形態のイメージセンサSでは、第2本実施形態と同様に、可視イメージセンサチップ1に形成されるフォトダイオード11をシリコン基板10のうちカラーフィルタ12側の面ではなく反対側の面に形成するようにしている。また、シリコン基板10のうちカラーフィルタ12が配置される面側に、赤外イメージセンサ2を構成するフォトダイオード21を配置している。
【0054】
さらに、第3実施形態と同様に、赤外イメージセンサ2を構成するフォトダイオード21を半導体基板20のうち可視イメージセンサチップ1に接続される面側に形成している。
【0055】
このように構成されるイメージセンサSでは、フォトダイオード11が形成されたシリコン基板10の裏面側を光の入射面にできるため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、半導体基板20のうち可視イメージセンサチップ1に接続される面側に赤外イメージセンサ2を構成するフォトダイオード21の各不純物領域21a、21bを形成しているため、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0057】
例えば、第1実施形態では、アナログ回路層51、ADC回路層52およびインターフェイスチップ53について、それぞれ別々のシリコン基板を用いて形成しているが、これらのいずれか2つもしくはすべてを同じシリコン基板にて形成しても良い。ただし、ADC回路層52を挟んでアナログ回路層51およびインターフェイスチップ53を分離して配置すると、アナログ回路層51で扱われるアナログ信号とインターフェイスチップ53で扱われるデジタル信号とを基板間において完全に分離できる。このため、デジタル信号に載る高周波ノイズを除去でき、アナログ信号に高周波ノイズが載ることを抑制できる。なお、貫通電極1a、51a〜53aをコンデンサが含まれた構造にすることもできるが、このような構造にすればより高周波ノイズを除去することが可能となる。
【0058】
また、上記第1実施形態において、図4では、貫通電極1a、51a〜53aを同じ位置に形成したものとして示したが、それぞれの層の所望位置に設けられていれば良い。つまり、貫通電極1a、51a〜53a同士が接続された構造である必要はなく、貫通電極1a、51a〜53aと配線パターンとが接続された構造であっても良い。
【0059】
また、上記第1実施形態では、図1に示すように、1つの可視イメージセンサ5に対して赤外イメージセンサ2が1つずつ配置された構造、つまり1画素毎に赤外イメージセンサ2が1つずつ配置された構造としている。しかしながら、複数画素毎に赤外イメージセンサ2が1つずつ配置された構造であっても良い。
【0060】
さらに、上記第1実施形態では、カラーフィルタ12の上にマイクロレンズ13を配置した構造としてあるが、マイクロレンズ13の上にカラーフィルタ12が形成された構造であっても良い。
【0061】
また、上記第1実施形態では、赤外イメージセンサ2をpn接合にて構成されるフォトダイオード21により構成する場合を例に挙げたが、pin接合や透明電極付きショットキー接合によりフォトダイオード21を構成しても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 可視イメージセンサチップ
2 赤外イメージセンサ
3 ガラスキャップ
4 封止部材
5 可視イメージセンサ
10 シリコン基板
11、21 フォトダイオード(第1、第2フォトダイオード)
12 カラーフィルタ
13 マイクロレンズ
20 半導体基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12