【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の装置では、シートレールと隣接した側方に別体ケースからなる移動部102と収容部103が仕切壁104を介して並列配置されるため、部品点数が増加するとともに、設置作業に手数がかかる。かつ、幅方向寸法が大となるためシートレールの側方に設置スペースを大きくとり、シートレールの側方に配管されているエアダクトと干渉しやすく、また、他の既設材があると設置できない恐れもある。
【0006】
前記移動部と収容部とを合わせた幅方向寸法を減少するためには、移動部および収容部におけるワイヤハーネス挿通路の幅をワイヤハーネスの幅(直径)と対応させ、かつ、ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブとワイヤハーネス挿通路の両側壁との間の隙間を出来るだけ小さくすることは、安定走行させることができる観点からも好ましいものとなる。
しかしながら、前記のように、挿通するワイヤハーネスの幅(直径)に対応させて移動部および収容部のワイヤハーネス挿通路の幅を設計すると、ワイヤハーネスの幅(直径)が変化すると対応できず、新たに移動部及び収容部を作成しなければならず、コスト高になる。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、幅方向寸法の減少、部品点数および設置工数の削減、ワイヤハーネスの径が変化しても対応できるスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、幅方向の両側を長辺部とすると共に前端を円弧状とした底壁および外周壁を備えた長円状部と、該長円状部の後端側に設けた第1開口から後方に延在する直線状のレール部を備えた余長吸収用のケースを設け、
前記レール部の一側壁および該一側壁に直線状に連続する前記長円状部の一側長辺壁をスライドシートのシートレールの外側面に沿わせて水平配置または垂直配置し、
前記長円状部
内の前記前端側の円弧辺壁に囲まれる部分に、前記ケースに固定軸を介して円弧状バネ板からなる可動内周壁を設置し、該可動内周壁と外周の前記前端側の円弧辺壁の間隔が挿
通するワイヤハーネスの外径に応じて自動調整される構成とし、前記一側長辺壁に沿って
前記ワイヤハーネスを前向きに直進させた後に前端側で屈曲させてターンさせ、該長円状部に設けた第2開口からワイヤハーネスを引き出しているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供している。
【0009】
前記長円状部には、前端側の円弧辺壁に近接した底壁に前記第2開口を設け、前記第1開口から前記長円状部内に挿通するワイヤハーネスを1.5周させて前記第2開口から引き出すと共に、該第2開口に近接した位置で前記ワイヤハーネスを前記ケースに固定していることが好ましい。
【0010】
前記本発明のワイヤハーネス配索装置では、長円状部内でレール部と直線状に連続する部分は前記特許文献1の移動部に相当し、移動部と収容部とを仕切壁なしの1つのケースにまとめて設けている。この移動部と収容部をまとめた構成としたケースをシートレールの側面に沿って設置すればよく、部品点数および設置工数を削減できる。かつ、ケースの幅を特許文献1の移動部と収容部とを仕切壁を介在させて併設した場合と比較して減少でき、シートレールの側方に設置される既存のエアダクト等と干渉するのを防止できる。
【0011】
前記長円状部の後端側に設ける前記レール部は前記ワイヤハーネスを直線状に挿通規制できる長さを持たせればよい。該レール部の長さを短くして前記長円状部の前後方向長さを大とすると、該長円状部内において、ワイヤハーネスを1.5周させて、前向き、後向き、再前向きで直線方向に挿通させるワイヤハーネスの長さを大として、ワイヤハーネスの余長収容量を増大することができる。
【0012】
詳細には、前記長円状部の内部において、前記ワイヤハーネスは、
前記レール部から前記第1開口を通して挿入する前記ワイヤハーネスを前記外周壁の一側長辺壁の内面に沿って前向き直線状に挿通した後に、
前記長円状部の前端側の円弧辺壁の内周面に沿って前端側ターンをさせ、
前記外周壁の他側長辺壁の内面に沿って後向き直線状に挿通し、
前記後端側の円弧辺壁の内周面に沿って後端側ターンをさせ、
前記前向き直線状の挿通部分に隣接して前記第2開口に向かって前向き直線状に挿通させて、前記長円状部内で1.5周させることが好ましい。
【0013】
前記
のように、前端側の円弧辺壁に囲まれる部分に、前記ケースに固定軸を介して円弧状バネ板からなる可動内周壁を設置し、該可動内周壁と外周の前記前端側の円弧辺壁の間隔が前記ワイヤハーネスの外径に応じて自動調整される構成
としている。
前記円弧状バネ板の固定軸に近接した位置に前記第2開口を設けていることが好ましい。
【0014】
前記ケース内に挿通するワイヤハーネスに、キャタピラ型のプロテクタを外装し、
前記プロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた複数本の折曲ラインを折り曲げて多角形の筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れ、内周側に配置する一辺を連続させると共に外周側に配置する他辺を分離し、外周側は伸縮するが内周側は伸縮しない状態で連結していることが好ましい。
【0015】
前記のように、筒状のキャタピラ型のプロテクタは、外周側は伸縮するが、内周側は伸縮しないようにしているため、長円状部内において内周側に屈曲しない。よって、仕切壁を設けなくとも、外周側で前向き直線状に挿通するワイヤハーネスが内周側に屈曲せず、内周側で第2開口に向かって前向き直線状に挿通するワイヤハーネスと干渉するのを防止できる。
一方、前記内周側に挿通する前向き直線部の外周側が屈曲した場合、スライダの内周側の内周側頂点で内周側のワイヤハーネスのプロタクタを内方へスムーズに押し戻すことができる。
【0016】
また、前記ケース内のワイヤハーネスに外装する前記プロテクタの後端にスライダを設け、該スライダを通してワイヤハーネスをスライドシートへと引き出し、
前記スライダは、三角形の枠体の上面に突出部を設け、前記枠体の内周側頂点を前記プロタクタの内周面より内方へ突出させ、内周側に挿通するワイヤハーネスのプロテクタと接触すると前記内周側頂点で押し戻すようにし、かつ、前記スライダの突出部を前記ケースの蓋に設けた摺動溝を通して上方へ突出させ、該突出部を前記スライドシートのシート脚部に連結し、前記突出部から引き出したワイヤハーネスをスライドシートへ配線する構成とすることが好ましい。
【0017】
前記ケース内のワイヤハーネスに外装するプロテクタの後端に連結するスライダは、三角形の枠体として前記ワイヤハーネスを挿通するが、前記突出部を設けず、前記ケースの蓋に摺動溝を設けない一方、
前記ケースのレール部の後端に連続してハーネスレールを設け、該ハーネスレールに設けた上面開口のスライダ摺動溝に第2スライダを挿通すると共に、該第2スライダに設けた上方突出部を前記上面開口から突出させてスライドシートに連結し、該第2スライダに貫通する前記ワイヤハーネスを前記スライドシートに配線してもよい。
前記のように、ハーネスレール部を別途設けると、余長吸収量を増加でき、ロングスライドシートに好適に用いることができる。
【0018】
前記ケースは、車室床材となるモールの下方で且つフロアパネルの上方の空間に配置して、前記スライダの突出部が突出する上面開口を車室床材となるモールに開口している。
前記モールとは樹脂成形材からなり、カーペット、シートレールやハーネスレールの上部に設置される幅の狭い部材で、カーペットの一部にかぶさり、レールとカーペットの隙間を隠す化粧材である。カーペットは剛性板からなるボディパネルに弾性マット等のカーペットベース材を介して敷設されている。前記ボディパネルと車両の最下面の金属板からなるフロアパネルとの間に空間があり、該空間に振動吸収材、遮熱材、遮音材等が充填され、車室に伝わる振動、騒音、熱を吸収して車室内は快適空間に保持されている。前記シートレールはフロアパネルの上面に搭載した支持材の上面に固定して敷設され、スライドシートの車輪をスライド自在に嵌合する凹部が前記モールに設けた開口に露出されている。