特許第6011415号(P6011415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

特許6011415スライドシート用のワイヤハーネス配索装置
<>
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000002
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000003
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000004
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000005
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000006
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000007
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000008
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000009
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000010
  • 特許6011415-スライドシート用のワイヤハーネス配索装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011415
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】スライドシート用のワイヤハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20161006BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B60R16/02 620A
   H02G11/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-65265(P2013-65265)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-189109(P2014-189109A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】岡野 洋輔
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−193599(JP,A)
【文献】 特開2006−036154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両側を長辺部とすると共に前端を円弧状とした底壁および外周壁を備えた長円状部と、該長円状部の後端側に設けた第1開口から後方に延在する直線状のレール部を備えた余長吸収用のケースを設け、
前記レール部の一側壁および該一側壁に直線状に連続する前記長円状部の一側長辺壁をスライドシートのシートレールの外側面に沿わせて水平配置または垂直配置し、
前記長円状部内の前記前端側の円弧辺壁に囲まれる部分に、前記ケースに固定軸を介して円弧状バネ板からなる可動内周壁を設置し、該可動内周壁と外周の前記前端側の円弧辺壁の間隔が通するワイヤハーネスの外径に応じて自動調整される構成とし、前記一側長辺壁に沿って前記ワイヤハーネスを前向きに直進させた後に前端側で屈曲させてターンさせ、該長円状部に設けた第2開口からワイヤハーネスを引き出しているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項2】
前記長円状部には、前端側の円弧辺壁に近接した底壁に前記第2開口を設け、前記第1開口から前記長円状部内に挿通するワイヤハーネスを1.5周させて前記第2開口から引き出すと共に、該第2開口に近接した位置で前記ワイヤハーネスを前記ケースに固定している請求項1に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項3】
前記長円状部の内部において、前記ワイヤハーネスは、
前記レール部から前記第1開口を通して挿入する前記ワイヤハーネスを前記外周壁の一側長辺壁の内面に沿って前向き直線状に挿通した後に、
前記長円状部の前端側の円弧辺壁の内周面に沿って前端側ターンさせ、
前記外周壁の他側長辺壁の内面に沿って後向き直線状に挿通させ
前記後端側の円弧辺壁の内周面に沿って後端側ターンさせ、
前記前向き直線状の挿通部分に隣接して前記第2開口に向かって前向き直線状に挿通させて、前記長円状部内で1.5周させている請求項2に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項4】
前記ケース内に挿通する前記ワイヤハーネスに、キャタピラ型のプロテクタを外装し、 前記プロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた複数本の折曲ラインを折り曲げて多角形の筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れ、内周側に配置する一辺を連続させると共に外周側に配置する他辺を分離し、外周側は伸縮するが内周側は伸縮しない状態で連結している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項5】
前記ケース内のワイヤハーネスに外装する前記プロテクタの後端にスライダを設け、該スライダを通してワイヤハーネスがスライドシートへと引き出され
前記スライダは、三角形の枠体の上面の一部に突出部を備え、前記枠体の内周側頂点を前記プロテクタの内周面より内方へ突出させ、内周側に挿通するワイヤハーネスのプロテクタと接触すると前記内周側頂点で押し戻される構成とされている請求項4に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドシート用のワイヤハーネス配索装置に関し、特に、400mm以上のロングスライドシート用に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートには電動リクライニング装置やシートヒータなど種々の電装品が装備されており、これらの電装品に給電するために、車体フロアからシートに給電用のワイヤハーネスが配索されている。スライドシートの場合には、ワイヤハーネスをシートのスライド動作に追従させる必要があり、そのためワイヤハーネスに余長部を持たせて配索している。自動車のスライドシートのスライド寸法は通常最大240mm〜300mm程度であるが、近時、助手席や後部座席等でスライド寸法を最大400mm〜1200mm程度のロングスライドシートとし、座席前方または座席後方に大きな空間をあけることが出来るようにしたものが提供されている。このようなロングスライドシートでは、ワイヤハーネスの余長部の長さが大となるため、ワイヤハーネスをターンして収容する余長収容部にワイヤハーネスをスムーズに出し入れするために、スライドシートの前後移動に追従して前後方向に直線移動するレール部を設けることが好ましい。
【0003】
この種の車体フロアとロングスライドシートとの間に配索するハーネス配索装置として、特開2010−193599号公報(特許文献1)に記載された装置が提供されている。該装置は図9(A)(B)および図10(A)(B)に示すように、スライドシート100のシートレール101の側方に隣接して平行に、移動部102と収容部103とが配置されている。具体的には、移動部102と収容部103とは図9に示すように、別体のケースからなり、スライダ109が摺動する移動部102の側壁102aと、電線余長部を収容する収容部103の側壁103aとからなる仕切壁104で仕切られている。
スライドシート100に配線されるワイヤハーネスW/Hは、フロアハーネスから分岐し、コルゲートチューブで外装された状態で収容部103内をターンして挿通した後に、該収容部103から移動部102へと挿通し、該移動部102内でスライドシート100と連動して移動する前記スライダ109内を通してスライドシート100へ配線されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の装置では、シートレールと隣接した側方に別体ケースからなる移動部102と収容部103が仕切壁104を介して並列配置されるため、部品点数が増加するとともに、設置作業に手数がかかる。かつ、幅方向寸法が大となるためシートレールの側方に設置スペースを大きくとり、シートレールの側方に配管されているエアダクトと干渉しやすく、また、他の既設材があると設置できない恐れもある。
【0006】
前記移動部と収容部とを合わせた幅方向寸法を減少するためには、移動部および収容部におけるワイヤハーネス挿通路の幅をワイヤハーネスの幅(直径)と対応させ、かつ、ワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブとワイヤハーネス挿通路の両側壁との間の隙間を出来るだけ小さくすることは、安定走行させることができる観点からも好ましいものとなる。
しかしながら、前記のように、挿通するワイヤハーネスの幅(直径)に対応させて移動部および収容部のワイヤハーネス挿通路の幅を設計すると、ワイヤハーネスの幅(直径)が変化すると対応できず、新たに移動部及び収容部を作成しなければならず、コスト高になる。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、幅方向寸法の減少、部品点数および設置工数の削減、ワイヤハーネスの径が変化しても対応できるスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、幅方向の両側を長辺部とすると共に前端を円弧状とした底壁および外周壁を備えた長円状部と、該長円状部の後端側に設けた第1開口から後方に延在する直線状のレール部を備えた余長吸収用のケースを設け、
前記レール部の一側壁および該一側壁に直線状に連続する前記長円状部の一側長辺壁をスライドシートのシートレールの外側面に沿わせて水平配置または垂直配置し、
前記長円状部内の前記前端側の円弧辺壁に囲まれる部分に、前記ケースに固定軸を介して円弧状バネ板からなる可動内周壁を設置し、該可動内周壁と外周の前記前端側の円弧辺壁の間隔が通するワイヤハーネスの外径に応じて自動調整される構成とし、前記一側長辺壁に沿って前記ワイヤハーネスを前向きに直進させた後に前端側で屈曲させてターンさせ、該長円状部に設けた第2開口からワイヤハーネスを引き出しているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供している。
【0009】
前記長円状部には、前端側の円弧辺壁に近接した底壁に前記第2開口を設け、前記第1開口から前記長円状部内に挿通するワイヤハーネスを1.5周させて前記第2開口から引き出すと共に、該第2開口に近接した位置で前記ワイヤハーネスを前記ケースに固定していることが好ましい。
【0010】
前記本発明のワイヤハーネス配索装置では、長円状部内でレール部と直線状に連続する部分は前記特許文献1の移動部に相当し、移動部と収容部とを仕切壁なしの1つのケースにまとめて設けている。この移動部と収容部をまとめた構成としたケースをシートレールの側面に沿って設置すればよく、部品点数および設置工数を削減できる。かつ、ケースの幅を特許文献1の移動部と収容部とを仕切壁を介在させて併設した場合と比較して減少でき、シートレールの側方に設置される既存のエアダクト等と干渉するのを防止できる。
【0011】
前記長円状部の後端側に設ける前記レール部は前記ワイヤハーネスを直線状に挿通規制できる長さを持たせればよい。該レール部の長さを短くして前記長円状部の前後方向長さを大とすると、該長円状部内において、ワイヤハーネスを1.5周させて、前向き、後向き、再前向きで直線方向に挿通させるワイヤハーネスの長さを大として、ワイヤハーネスの余長収容量を増大することができる。
【0012】
詳細には、前記長円状部の内部において、前記ワイヤハーネスは、
前記レール部から前記第1開口を通して挿入する前記ワイヤハーネスを前記外周壁の一側長辺壁の内面に沿って前向き直線状に挿通した後に、
前記長円状部の前端側の円弧辺壁の内周面に沿って前端側ターンをさせ、
前記外周壁の他側長辺壁の内面に沿って後向き直線状に挿通し、
前記後端側の円弧辺壁の内周面に沿って後端側ターンをさせ、
前記前向き直線状の挿通部分に隣接して前記第2開口に向かって前向き直線状に挿通させて、前記長円状部内で1.5周させることが好ましい。
【0013】
前記のように、前端側の円弧辺壁に囲まれる部分に、前記ケースに固定軸を介して円弧状バネ板からなる可動内周壁を設置し、該可動内周壁と外周の前記前端側の円弧辺壁の間隔が前記ワイヤハーネスの外径に応じて自動調整される構成としている。
記円弧状バネ板の固定軸に近接した位置に前記第2開口を設けていることが好ましい。
【0014】
前記ケース内に挿通するワイヤハーネスに、キャタピラ型のプロテクタを外装し、
前記プロテクタは、帯状の平板に長さ方向に延在すると共に幅方向に間隔をあけて設けた複数本の折曲ラインを折り曲げて多角形の筒状とすると共に、長さ方向に間隔をあけて幅方向に切り込みを入れ、内周側に配置する一辺を連続させると共に外周側に配置する他辺を分離し、外周側は伸縮するが内周側は伸縮しない状態で連結していることが好ましい。
【0015】
前記のように、筒状のキャタピラ型のプロテクタは、外周側は伸縮するが、内周側は伸縮しないようにしているため、長円状部内において内周側に屈曲しない。よって、仕切壁を設けなくとも、外周側で前向き直線状に挿通するワイヤハーネスが内周側に屈曲せず、内周側で第2開口に向かって前向き直線状に挿通するワイヤハーネスと干渉するのを防止できる。
一方、前記内周側に挿通する前向き直線部の外周側が屈曲した場合、スライダの内周側の内周側頂点で内周側のワイヤハーネスのプロタクタを内方へスムーズに押し戻すことができる。
【0016】
また、前記ケース内のワイヤハーネスに外装する前記プロテクタの後端にスライダを設け、該スライダを通してワイヤハーネスをスライドシートへと引き出し、
前記スライダは、三角形の枠体の上面に突出部を設け、前記枠体の内周側頂点を前記プロタクタの内周面より内方へ突出させ、内周側に挿通するワイヤハーネスのプロテクタと接触すると前記内周側頂点で押し戻すようにし、かつ、前記スライダの突出部を前記ケースの蓋に設けた摺動溝を通して上方へ突出させ、該突出部を前記スライドシートのシート脚部に連結し、前記突出部から引き出したワイヤハーネスをスライドシートへ配線する構成とすることが好ましい。
【0017】
前記ケース内のワイヤハーネスに外装するプロテクタの後端に連結するスライダは、三角形の枠体として前記ワイヤハーネスを挿通するが、前記突出部を設けず、前記ケースの蓋に摺動溝を設けない一方、
前記ケースのレール部の後端に連続してハーネスレールを設け、該ハーネスレールに設けた上面開口のスライダ摺動溝に第2スライダを挿通すると共に、該第2スライダに設けた上方突出部を前記上面開口から突出させてスライドシートに連結し、該第2スライダに貫通する前記ワイヤハーネスを前記スライドシートに配線してもよい。
前記のように、ハーネスレール部を別途設けると、余長吸収量を増加でき、ロングスライドシートに好適に用いることができる。
【0018】
前記ケースは、車室床材となるモールの下方で且つフロアパネルの上方の空間に配置して、前記スライダの突出部が突出する上面開口を車室床材となるモールに開口している。
前記モールとは樹脂成形材からなり、カーペット、シートレールやハーネスレールの上部に設置される幅の狭い部材で、カーペットの一部にかぶさり、レールとカーペットの隙間を隠す化粧材である。カーペットは剛性板からなるボディパネルに弾性マット等のカーペットベース材を介して敷設されている。前記ボディパネルと車両の最下面の金属板からなるフロアパネルとの間に空間があり、該空間に振動吸収材、遮熱材、遮音材等が充填され、車室に伝わる振動、騒音、熱を吸収して車室内は快適空間に保持されている。前記シートレールはフロアパネルの上面に搭載した支持材の上面に固定して敷設され、スライドシートの車輪をスライド自在に嵌合する凹部が前記モールに設けた開口に露出されている。
【発明の効果】
【0019】
前記のように、本発明のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置は、スライドシートの前後移動に追従してワイヤハーネスを前後移動する移動部と、ワイヤハーネスをターンさせて収容する収容部とをケースにまとめて設けているため、部品点数及び設置工数を削減でき、かつ、シートレールの側面に設置スペースを大きくとらず、既設のエアダクト等と干渉するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態のスライドシートを示す概略斜視図である。
図2図1のII−II線断面図ある。
図3】前記第1実施形態の余長吸収用のケースを示し、(A)は蓋を外したケース本体内にワイヤハーネスを挿通している状態の平面図、(B)はケース本体に蓋を被せる状態の平面図、(C)は(B)のC−C線断面図、(D)は要部断面図である。
図4】スライダを示し、(A)は斜視図、(B)、(C)は断面図である。
図5】ワイヤハーネスに外装するプロテクタを示し、(A)は斜視図、(B)は拡大展開図、(C)は要部断面図である。
図6】(A)〜(C)はスライドシートの移動に追従するワイヤハーネスの動作を示す図面である。
図7】(A)〜(C)はワイヤハーネスの外径に応じてハーネス挿通路の幅が自動調整される動作を説明する図面である。
図8】第2実施形態を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)はスライダの斜視図である。
図9】従来例を示し、(A)は全体斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
図10】(A)(B)は前記従来例の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7に本発明の第1実施形態を示す。
図1に示すように、自動車に搭載する助手席側のスライドシート1に装着した電装品(図示せず)に給電するために、フロアパネル2からスライドシート1へワイヤハーネス5(以下、シートハーネス5と称す)を配線している。
【0022】
スライドシート1の下面には図2に示すように、シート脚部3を左右一対設け、各シート脚部3をフロアパネル2上に支持台50を介して搭載した左右一対のシートレール6にスライド自在に取り付けている。詳細には、スライドシート1の座面下方に突出したシート脚部3の軸部3aをシートレール6内に挿入し、軸部3aから腕部3bを左右に延在させ、腕部3bの外面に軸支した車輪3cをシートレール6内の側部空間6aに回動自在に嵌合させている。シートレール6の中央の上面開口6cを挟む左右の側部空間6aの上壁6fには、その上面に車室床材となるモール10A、10Bを敷設している。
【0023】
一方のシートレール6の外側面に沿って余長吸収用のケース11をフロア側に設置している。本実施形態ではケース11は図1に示すように水平配置しているが、ケース11を垂直配置してもよい。該ケース11はシートレール6の全長と同等とし、ケース11の前端をシートレール6の前端と略一致させて配置している。
【0024】
図3に示すように、ケース11は浅底のケース本体12と蓋13とからなり、いずれも樹脂成形している。ケース本体12は長円形状の底壁21と外周壁22を備えた長円状部20と、該長円状部20の後端側外周壁の円弧辺壁22aの一側部に設けた第1開口23から突出させた直線状のレール部25を備えた形状としている。
前記レール部25の一側壁25aおよび該一側壁25aに直線状に連続する長円状部20の一側長辺壁22bをスライドシート1のシートレール6の外側面に沿わせて配置している。
【0025】
ケース11の長円状部20の長円状の外周壁22は、後端側外周壁の前記円弧辺壁22a、前記一側長辺壁22b、前端側外周壁の円弧辺壁22c、他側長辺壁22dからなる。該外周壁22に囲まれた底壁21の内部に該底壁と一体成形される仕切壁を設けていない。前記底壁と一体の仕切壁を設ける代わりに後述の円弧状バネ板からなる可動内周壁を仕切壁としてケース内に設置している。該底壁21には前端側の円弧辺壁22cに近接した位置に第2開口24を設けている。前記第1開口23から長円状部20内に挿通するシートハーネス5を1.5周させて第2開口24から引き出している。
【0026】
図3(D)に示すように第2開口24に近接した位置でシートハーネス5にバンドクランプ7を締結し、該バンドクランプ7のクランプ7aを底壁21に設けたクランプ穴21hに挿入係止して、シートハーネス5を第2開口24側で固定している。
【0027】
また、前端側外周壁の円弧辺壁22cに囲まれる部分に、可動内周壁とする円弧状バネ板26を円弧辺壁22cと隙間をあけて配置し、該円弧状バネ板26の一端に取り付けた固定軸27を底壁21から突設している。該固定軸27は前記第2開口24に近接した位置に設けている。該記円弧状バネ板26と円弧辺壁22cの間にシートハーネス5の挿通路28を設けている。該挿通路28は図6(A)〜(C)に示すように、シートハーネス5の外径に応じて円弧状バネ板26が内周側に押されて可動内周壁となり、シートハーネス5の外径に応じて通路幅が自動調整されるようにしている。
【0028】
前記余長吸収用のケース11内において、シートハーネス5はレール部25から第1開口23を通して長円状部20に挿入し、該長円状部20内において一側長辺壁22bの内面に沿って矢印Y1で示すように前向き直線状に挿通する。
ついで、シートハーネス5を前端側の円弧辺壁22cの内周面に沿って円弧状バネ板26との間を矢印Y2で示すように前端側ターンをさせる。
ついで、シートハーネス5を他側長辺壁22dの内面に沿って矢印Y3で示すように、後向き直線状に挿通する。
ついで、前記後端側外周壁の円弧辺壁22aの内周面に沿って矢印Y4で示すように、後端側ターンをさせる。
最後に、前記矢印Y1で示す前向き直線状の挿通部分に隣接して、矢印Y5で示すように、第2開口24に向かって前向き直線状に挿通させ、第2開口24から外部に引き出し、フロアハーネスとコネクタ接続している。
前記のように、長円状部20において第1開口23から第2開口24の間でシートハーネス5を1.5周させている。
【0029】
前記レール部25および長円状部20内の矢印Y1に沿ったシートハーネスの挿通路をシートハーネスの前後移動部として機能させている。一方、長円状部20内の矢印Y2(前端側ターン通路)、Y3(後向き直線通路)、Y4(後端側ターン通路)、Y5(再前向き直線通路)からなる長円状の挿通部を余長吸収部として機能させている。
【0030】
図3(B)に示すように、ケース11の蓋13はケース本体12の長円状部20およびレール部25の上面を閉鎖するように被せるものである。また、蓋13には、レール部25および長円状部20内の一側長辺壁22bの内面に沿うと共に矢印Y1で示すワイヤハーネス挿通部と対向する部分に前後直線状に連続する摺動溝13aを設けている。該摺動溝13aに後述するスライダ9の上部突出部9bが通って上方に突出できるようにしている。
【0031】
ケース本体12と蓋13とで形成されたケース11の空間に挿通するシートハーネス5に、図5(A)に示すように、キャタピラ型のプロテクタ30を外装し、該プロテクタ30は外周側は屈曲するが内周側は屈曲しない構成としている。該プロテクタ30は図5(B)に示す帯状の連続した長尺材からなる平板40を折り曲げて組み立てている。平板40には、長さ方向Xに延在する4本の折曲ライン41、42、43、44を幅方向Yの中間部に間隔をあけて設け、平板40を幅方向に5個の辺S1〜S5に区画し、折曲ライン41〜44を直角に折り曲げ、幅方向の両側辺S1とS5を重ねることで図5(A)に示すように、四角筒状に組み立てている。
【0032】
また、平板40の幅方向の両側の一方側の辺S1の側縁に係止突片45を長さ方向Xに間隔をあけて突設している。該係止突片45は円弧状の突出部の根元両側に切込45aを設け、両側に係止辺45bが突出する形状としている。平板40の他方側の辺S5に係止突片45を挿入係止する細長い係止穴46を設けている。該係止穴46の長さ方向両端に切込46aを設け、その先端に小径穴46cを設けている。前記切込46aに係止辺45bがかかるようにし、かつ、小径穴46cで切込46aの先端から亀裂が生じないようにしている。平板40を折曲ライン41〜44に沿って折り曲げ、辺S1とS5を重ねた状態で係止突片45を係止穴46に挿入係止することで、四角筒形状を保持できるようにしている。
【0033】
平板40には前記4本の折曲ライン41〜44を結ぶ幅方向Yの切込ライン48を長さ方向Xに間隔をあけて設け、辺S2、S3、S4を分離している。該切込ライン48の両端、すなわち、折曲ライン41および44と接する位置には小径穴48aを連続して設け、先端からの亀裂発生を防止している。さらに、切込ライン48の中央部で辺S3の中央位置に直線を湾曲させた円弧状の切込49を設け、長さ方向に隣接する一方側を円弧状に突出させ、他方を円弧状に窪ませ、凹凸嵌合部を設けている。
【0034】
平板40に設ける折曲ライン41〜44は、図5(C)に示すように、板厚の1/3程度を切削して断面円弧状のラインとしている。前記切込ライン48、係止穴46、係止突片45はすべて平板を打抜いて形成している。よって、平板40を成形した後に、打抜加工、切削加工で形成している。
【0035】
前記プロテクタ30は予め折曲ライン41〜44を折り曲げる一方、係止突片45は係止穴46に挿入せず、開いた状態でシートハーネス5の電線群を折り曲げたプロテクタ30の両側辺S1とS5の間の開口から挿入する。この電線群の挿入後に辺S1とS5を重ね、係止突片45を係止穴46に挿入係止し、電線群を四角筒の中に挿入した状態で外装する。該プロテクタ30は四角筒の3辺S2、S3、S4が切込ライン48で長さ方向で分離され、重ねて係止した辺S1とS5が長さ方向で屈曲自在に連結された構成となり、かつ、分離された辺S3は、隣接する辺S3同士が円弧状切込で凹凸嵌合する状態となる。即ち、短尺な四角筒が屈曲自在に長さ方向に順次連結し、かつ、隣接する四角筒同士を凹凸嵌合させているため幅方向にずれない、キャタピラ状のプロテクタ30となる。
該プロテクタ30はケース11内のケース本体の底壁21と蓋13との間に摺動自在に内嵌できる高さとし、仕切壁を設けていない長円状部20内において、前記矢印Y1〜Y5で示す経路に沿って安定して摺動できるようにしている。
【0036】
前記プロテクタ30の後端に図4に示すスライダ9を連結している。該スライダ9は三角形の枠体9aの上面の一部に上部突出部9bを設けている。枠体9a内から上部突出部9bにシートハーネス5を挿通している。三角形状の枠体9aの内周側頂点9pをプロタクタ30の内周面より内方へ突出させ、内周側に挿通するワイヤハーネスのプロテクタと接触すると前記内周側頂点9pで押し戻すようにしている。また、スライダの上部突出部9bをケース11の蓋13に設けた摺動溝13aを通して上方へ突出させている。
【0037】
前記スライダ9の上部突出部9bの上端にL形状の横枠部9cを連続して設け、該横枠部9cの突出側の上面にワイヤハーネス引出用の開口9dを設けている。前記上部突出部9bおよび横枠部9cの中空はシートハーネス5の挿通路とし、該挿通路を通したシートハーネス5を前記開口9dを通して上方へ引き出すようにしている。引き出したシートハーネス5をスライドシート1内の電装品(図示せず)とコネクタ接続している。
さらに、前記横枠部9cの先端側の両側壁にボルト穴9gを穿設し、該ボルト穴9gを前記スライドシート1のシート脚部3の前端に固定した支持部材19のボルト穴19hと一致させ、ボルトBを挿入して締結固定している。これにより、スライドシート1の移動に追従してシート脚部3に連結固定したスライダ9が前後移動するようにしている。
【0038】
次に、図6を参照して、スライドシート1のスライド動作に追従するシートハーネス5の動きについて説明する。
スライドシート1の前後方向のスライドに連動して、スライダ9が前後方向に移動し、該スライダ9はケース11の蓋13の摺動溝13aに沿ってケース11内を前後方向に移動する。ケース11内のプロテクタ30で外装したシートハーネス5は図6(A)〜(C)に示すように移動し、スライドシート1のスライド動作にシートハーネス5を滑らかに追従させている。
具体的には、図6(A)はスライドシート1が後端位置にある場合を示し、図6(B)はスライドシート1を後方から前方へとスライドさせていく途中状態を示し、図6(C)はスライドシート1が前端位置にある場合を示す。
【0039】
図6(C)に示すように、スライドシートが前端に位置し、ケース11内で矢印Y3、Y5に沿った挿通部の全長にシートハーネス5が挿通する場合、矢印Y5のワイヤハーネスが外周側に広がる場合が発生しうる。その場合、スライドシートが後退すると、スライダ9の内周側頂点9pで外周側に広がったプロテクタを押し戻しながら移動する。よって、ケース11内でスムーズにプロテクタ30で外装したワイヤハーネスをスライドシート1の前後移動に追従移動させることができる。
【0040】
図7(A)(B)(C)はシートハーネス5の外径が相違した場合の円弧状バネ板26からなる可動内周壁の動きを示す。
図7(A)ではシートハーネス5が小径であり、プロテクタ30の幅も狭くなり、円弧状バネ板26を内方へ押さないため、外周側へと広がり、ワイヤハーネスの挿通路28の幅は自動的に狭くなる。
図7(C)ではシートハーネス5が大径であり、プロテクタ30の幅も大となり、円弧状バネ板26を内方へ押すため、ワイヤハーネスの挿通路28の幅は自動的に広くなっている。
図7(B)はシートハーネス5の外径が前記(A)と(C)の中間であるため、ワイヤハーネスの挿通路28の幅は中間幅となっている
【0041】
図8(A)〜(C)に第2実施形態を示す。
ケース11内のワイヤハーネスに外装するプロテクタの後端に連結するスライダ90は、三角形の枠体とし、シートハーネス5を挿通するが、上部突出部を設けず、ケースの蓋に摺動溝を設けていない。
ケース11のレール部25の後端に連続してハーネスレール50を設け、該ハーネスレール50に設けた上面開口のスライダ摺動溝50aに図8(B)に示す第2スライダ52を挿通している。該第2スライダ52に設けた上方突出部52aを上面開口50hから突出させて、スライドシート1に前記第1実施形態と同様に連結し、該第2スライダ50に貫通するシートハーネス5をスライドシートに配線している。
【0042】
本発明のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置は前記実施形態に限定されず、余長吸収用のケースをフロアのモール下方に垂直配置してもよく、本発明の要旨を越えない範囲で種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 スライドシート
2 フロアパネル
3 シート脚部
5 ワイヤハーネス
6 シートレール
9 スライダ
11 余長吸収用のケース
13 蓋
20 長円状部
21 底壁
22 外周壁
25 レール部
30 キャタピラ型のプロテクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10