特許第6011419号(P6011419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011419
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ペースト状洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/04 20060101AFI20161006BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20161006BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161006BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20161006BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20161006BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20161006BHJP
   C11D 3/12 20060101ALI20161006BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C11D1/04
   A61K8/25
   A61K8/36
   A61K8/42
   A61K8/40
   A61K8/46
   A61K8/34
   A61Q19/10
   C11D1/88
   C11D1/12
   C11D3/12
   C11D3/20
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71338(P2013-71338)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-193981(P2014-193981A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】住田 祥
(72)【発明者】
【氏名】田村 猛
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正明
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−181680(JP,A)
【文献】 特開平08−311498(JP,A)
【文献】 特開2011−057979(JP,A)
【文献】 特開平07−034099(JP,A)
【文献】 特開2008−266285(JP,A)
【文献】 特開2001−172669(JP,A)
【文献】 特開平07−138591(JP,A)
【文献】 特開平10−140187(JP,A)
【文献】 特開2006−182698(JP,A)
【文献】 特開2007−254432(JP,A)
【文献】 国際公開第98/000493(WO,A1)
【文献】 特開2014−101356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/04
A61K 8/25
A61K 8/34
A61K 8/36
A61K 8/40
A61K 8/42
A61K 8/46
A61Q 19/10
C11D 1/12
C11D 1/88
C11D 3/12
C11D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のa、b、c、dおよびeの各成分を含有し、a成分が12〜32質量%、b成分が0.5〜10質量%、c成分が0.5〜10質量%、d成分が2〜20質量%、e成分が10〜30質量%であり、a成分とd成分の質量比a/dが1〜4であることを特徴とするペースト状洗浄剤組成物。
a.ラウリン酸カリウム塩5〜40質量%、ミリスチン酸カリウム塩30〜80質量%、パルミチン酸カリウム塩5〜30質量%、およびステアリン酸カリウム塩0〜30質量%である脂肪酸カリウム塩混合物
b.式(1)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、MおよびMはそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属を示す。mおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数を示す。)
c.式(2)で示されるアシルメチルタウリン型陰イオン性界面活性剤
【化2】
(式中、RCOは炭素数8〜20のアシル基を示し、Mはアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示す。)
d.水膨潤性粘土鉱物
e.炭素数2〜6の2価または3価のアルコール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として顔や身体などの皮膚の洗浄に用いられるペースト状洗浄剤組成物に関し、更に詳しくは、使用時の延び、速泡性、泡量、泡質に優れ、すすぎ後のさっぱり感に優れながらも、つっぱり感が生じ難く、乾燥後の肌にうるおいを与え、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整え、経時安定性も良好なペースト状洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
泡立たせて使う洗浄料は、泡量や泡質の良さが求められ、泡量が多いほど洗浄した際の満足感が得られる傾向にあり、また泡質がクリーミーで細かいほど皮膚の毛穴などの小さな部位にも入りこめることから汚れのかき出しに優れ、さらに、豊富でクリーミーな泡による緩衝作用によって洗浄時の肌への負担を低減できる。また、泡立ちが速い、すなわち速泡性が良いことも重要である。
このような洗浄料として石けんを主成分とした洗浄料が古くから用いられていたが、中鎖脂肪酸塩を用いると、速泡性、泡量は良好である反面、洗浄力、泡質は満足いくものではなかった。反対に、長鎖脂肪酸塩を用いると、泡質がクリーミーである反面、洗浄力の高さや金属石けんのできやすさから、すすぎ後の肌につっぱり感を生じるという問題があった。さらに、脱脂力が強い洗浄料を用いると、洗浄後の皮脂分泌量が過剰になることにより、翌朝の肌にベタツキを感じたり、モイスチャーバランスが崩れることにより、肌荒れを引き起こすことがあった。
【0003】
一方、水膨潤性粘土鉱物は、薄片状結晶が重なった層状構造を有しており、層間に水が入ると膨潤し、増粘する特性を有する。また、この結晶の表面に電荷を有しており、その電荷と反対のイオン性物質を吸着する特性をも有する。水膨潤性粘土鉱物は微細な粒子であるので、水膨潤性粘土鉱物を用いて身体の洗浄をすると、毛穴の汚れまできれいに落としてさっぱりさせ、かつ薄片状結晶が一時的に皮膚表面に皮膜を形成し、洗い上がりは皮膚にしっとりとした感触を与えることができる。さらに、水膨潤性粘土鉱物の増粘効果により泡質がクリーミーになるので、水膨潤性粘土鉱物を用いたいわゆる泥による洗浄が盛んに行なわれるようになっている。
【0004】
例えば特許文献1には、膨潤性粘土鉱物、セルロース系の弱アニオン性水溶性高分子及び石鹸よりなる透明ゲル状組成物を洗浄料として使用することが記載されている。この組成物は、速泡性はあるものの、泡量や泡質においては満足のゆくものではなく、さらに乾燥後の肌にうるおい感を与え、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果は得られ難かった。
特許文献2には、水膨潤性粘土鉱物3〜15質量%と、水と、アニオン性界面活性剤10〜40質量%とを配合した人の皮膚や毛髪を洗浄するためのゲル状洗浄料が記載されている。この洗浄料は、乾燥後のうるおい感は高いものの、速泡性、泡量、泡質は満足のゆくものではなかった。
特許文献3には、水膨潤性粘土鉱物25〜50質量%、陰イオン性界面活性剤8〜25質量%、水25〜65質量%からなる洗浄料が記載されている。この洗浄料は、乾燥後のうるおい感は高いものの、使用時の延び、速泡性、泡量、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果は得られ難かった。さらに、多量の粘土鉱物が毛穴に入り込み、さっぱり感の低減につながることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−110625号公報
【特許文献2】特開2007−254432号公報
【特許文献3】特開2009−167126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用時の延び、速泡性、泡量、泡質に優れ、すすぎ後のさっぱり感に優れながらも、つっぱり感が生じ難く、乾燥後の肌にうるおいを与え、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整え、経時安定性も良好なペースト状洗浄剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、下記に示すa、b、c、dおよびeの特定の成分を所定量組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のa、b、c、dおよびeの各成分を含有し、a成分が12〜32質量%、b成分が0.5〜10質量%、c成分が0.5〜10質量%、d成分が2〜20質量%、e成分が10〜30質量%であり、a成分とd成分の質量比a/dが1〜4であることを特徴とするペースト状洗浄剤組成物である。
a.ラウリン酸カリウム塩5〜40質量%、ミリスチン酸カリウム塩30〜80質量%、パルミチン酸カリウム塩5〜30質量%、およびステアリン酸カリウム塩0〜30質量%である脂肪酸カリウム塩混合物
b.式(1)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤
【化1】
(式中、Rは炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、MおよびMはそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属を示す。mおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数を示す。)
c.式(2)で示されるアシルメチルタウリン型陰イオン性界面活性剤
【化2】
(式中、RCOは炭素数8〜20のアシル基を示し、Mはアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示す。)
d.水膨潤性粘土鉱物
e.炭素数2〜6の2価または3価のアルコール
【発明の効果】
【0009】
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、使用時の延び、速泡性、泡量、泡質に優れ、すすぎ後のさっぱり感に優れながらも、つっぱり感が生じ難く、さらには、洗浄後の乾かした肌にうるおいを与え、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整え、経時安定性も良好であるという特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、上記のa、b、c、dおよびeの各成分を含有する。a成分から順次説明する。
【0011】
〔a成分〕
本発明に用いられるa成分は、その組成がラウリン酸カリウム塩5〜40質量%、ミリスチン酸カリウム塩30〜80質量%、パルミチン酸カリウム塩5〜30質量%、およびステアリン酸カリウム塩0〜30質量%の混合物であり、好ましくはラウリン酸カリウム塩10〜30質量%、ミリスチン酸カリウム塩40〜65質量%、パルミチン酸カリウム塩8〜20質量%、およびステアリン酸カリウム塩10〜25質量%の脂肪酸カリウム塩の混合物である。
【0012】
脂肪酸カリウム塩の混合物は、予め脂肪酸カリウム塩としたものを混合したものでもよく、また、それぞれの脂肪酸を含有する脂肪酸の混合物をまとめてカリウム塩としたものでもよい。
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、a成分を構成する脂肪酸カリウム塩以外の脂肪酸カリウム塩を、本発明の効果を損なわない範囲で、含有していてもよく、上記a成分を100質量%としたとき、a成分以外の脂肪酸カリウム塩を5質量%程度まで含有させることができる。
【0013】
〔b成分〕
本発明に用いられるb成分は、式(1)で示されるアルキルイミノジカルボン酸型両性界面活性剤である。
式(1)中のRは、炭素数8〜20のアルキル基またはアルケニル基であり、具体的には、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基等のアルキル基、オレイル基等のアルケニル基が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基はヤシ油アルキル基等の混合脂肪酸由来のアルキル基またはアルケニル基であってもよい。
アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、好ましくは8〜18、より好ましくは10〜14の範囲のものである。炭素数が8未満の場合は泡立ちおよび泡質が低下することがあり、20を超える場合は安定性に問題を生じることがある。
【0014】
また、式(1)中のMおよびMは、それぞれ水素原子またはアルカリ金属を示し、MとMは同一でも、異なっていても良く、例えば水素原子、カリウム、ナトリウムが挙げられ、好ましくは水素原子またはナトリウムである。
さらに、式(1)中のmおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、好ましくは1または2の整数であり、より好ましくはmおよびnがともに1である。mまたはnが0の場合は安定性が低下することがあり、3を超える場合は泡質が低下することがある。
好ましいb成分としては、具体的には、例えば、ラウリルイミノジ酢酸ナトリウム〔日油(株)製「ニッサンアノンLA」〕等が挙げられる。b成分は必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0015】
〔c成分〕
本発明に用いられるc成分は、式(2)で示されるアシルメチルタウリン型陰イオン性界面活性剤である。式中のRCOはアシル基であり、炭素数8〜20の脂肪酸残基である。かかる脂肪酸残基としては、具体的に脂肪酸名で表記すると、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸が挙げられる。また、混合脂肪酸由来のアシル基を用いることができ、かかる混合脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。好ましいアシル基は、炭素数10〜18の範囲のものであり、より好ましくは炭素数10〜14の範囲のものである。炭素数が8未満の場合は泡立ちおよび泡質が低下することがあり、20を超える場合は安定性に問題を生じることがある。
また、式中のMは、アルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、アンモニウム、有機アンモニウムまたは塩基性アミノ酸陽イオンを示し、例えば、カリウム、ナトリウム、1/2マグネシウム、1/2カルシウム、アンモニウム、トリエタノールアンモニウム、リジンの陽イオン性残基、アルギニンの陽イオン性残基等が挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウムである。
【0016】
好ましいc成分としては、具体的には、例えば、N−カプロイル−N−メチルタウリンナトリウム〔日油(株)製「ダイヤポンHF−SF」〕や、N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム〔日油(株)製「ダイヤポンK−SF」〕等が挙げられる。c成分は必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0017】
〔d成分〕
本発明に用いられるd成分は、水膨潤性粘土鉱物であり、詳細には、結晶性ケイ酸塩を含む層と、Al、Mg等の金属を中心とした層とが積み重なった、層状結晶性ケイ酸塩鉱物であり、スメクタイト属粘土鉱物、膨潤性の雲母などが挙げられる。これらは天然品、合成品のいずれでも用いることができる。スメクタイト属粘土鉱物が、化粧品成分として汎用されている点で好ましい。スメクタイト属粘度鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等があり、より好ましくはモンモリロナイトを挙げることができる。
【0018】
これらの市販品としては、モンモリロナイトを含有するものとして、(株)ホージュン製の「ベンゲル」「ベンゲルFW」、クニミネ工業(株)製の「クニピアG」「クニピアF」等が挙げられ、またサポナイトを含有するものとして、バンダービルド社製の「ビーガムT」「ビーガムグラニュー」等が挙げられ、さらにヘクトライトを含有するものとして、アメリカンコロイド社製の「ベントンEW」等が挙げられる。d成分は必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0019】
〔e成分〕
本発明に用いられるe成分は、炭素数2〜6の2価または3価のアルコール、すなわち分子内に2〜3個の水酸基を有する炭素数が2〜6の水溶性のアルコールである。具体的には、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。これらの中で、使用時の延び、速泡性の点から、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコールが好ましい。e成分は必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0020】
a成分の含有量は、組成物全量中に12〜32質量%であり、好ましくは14〜28質量%、より好ましくは16〜24質量%である。12質量%未満では泡量、泡質およびさっぱり感が低下することがあり、32質量%を超えると、使用時の延び、速泡性が低下し、すすぎ後のつっぱり感が感じられ、さらに乾燥後のうるおい感が低下し、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果が低下することがある。また、経時安定性にも問題が生じることがある。
【0021】
b成分の含有量は、組成物全量中に0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜7質量%、より好ましくは1〜5質量%である。0.5質量%未満では、速泡性が低下し、つっぱり感が生じることがある。10質量%を超えると、さっぱり感が低下することがある。
【0022】
c成分の含有量は、組成物全量中に0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜7質量%、より好ましくは1〜5質量%である。0.5質量%未満では、速泡性が低下し、つっぱり感を生じることがあり、うるおい感も低下することがある。10質量%を超えると、すすぎ後にぬめり感が生じ、さっぱり感が低下することがある。
【0023】
d成分の含有量は、組成物全量中に2〜20質量%であり、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは8〜12質量%である。2質量%未満では、泡質、すすぎ後のつっぱり感、乾燥後のうるおい感が低下し、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果が低くなることがある。20質量%を超えると、使用時の延び、速泡性、泡量、さっぱり感が低下することがあり、経時安定性にも問題が生じることもある。
【0024】
e成分の含有量は、組成物全量中に10〜30質量%であり、好ましくは15〜28質量%、より好ましくは17〜25質量%である。10質量%未満では、使用時の延び、速泡性、泡質、乾燥後のうるおい感や、翌朝のモイスチャーバランスを整える効果が低下することがある。30質量%を超えると、すすぎ時にぬめり感を生じ、さっぱり感が低下することがあり、経時安定性にも問題が生じることがある。
【0025】
a成分とd成分の質量比a/dは1〜4であり、好ましくは1.3〜3.5、より好ましくは1.5〜3である。質量比a/dが1未満では、速泡性、泡量、泡質、さっぱり感が低下することがある。質量比a/dが4を超えると、泡質、乾燥後のうるおい感が低下し、つっぱり感を生じることがある。さらに翌朝のモイスチャーバランスを整える効果や、経時安定性にも問題を生じることがある。
【0026】
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、通常の方法に従って製造することができる。例えば、脂肪酸を溶融させ、溶融した脂肪酸中に水膨潤性粘土鉱物を分散させ、そこへ中和剤やその他の界面活性剤、多価アルコール、水などを添加して製造することができる。
本発明の洗浄剤組成物の形態はペースト状であり、溶剤として水を用いたものが好ましい。本発明のペースト状洗浄剤組成物において、水は通常、35〜75質量%を含有させることができる。
【0027】
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、肌(皮膚)の洗浄を目的とした様々な使用形態に適用することができ、例えば洗顔料、ボディスクラブ等として用いることができる。
本発明のペースト状洗浄剤組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、皮膚用洗浄剤に常用されている添加剤を含有させることも可能である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
表1(実施例1〜5)および表2(比較例1〜7)に示すペースト状洗浄剤組成物(以下、洗浄料とも言う。)を調製し、下記の方法により評価した。
なお、表1および表2において、各成分の数値は組成物全量中の含有量(質量%)を示す。また、a/dはa成分とd成分の質量比を示す。
【0029】
(1)使用時の延び
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした。
2点:延びが非常に良いと感じた場合。
1点:延びがやや良い感じた場合。
0点:延びが悪いと感じた場合。
【0030】
(2)速泡性
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てた。
2点:泡立ちが非常に速いと感じた場合。
1点:泡立ちがやや速いと感じた場合。
0点:泡立ちが遅いと感じた場合。
【0031】
(3)泡量
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てた。
2点:泡量が非常に多いと感じた場合。
1点:泡量がやや多いと感じた場合。
0点:泡量が少ないと感じた場合。
【0032】
(4)泡質
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てた。
2点:泡質が非常に良いと感じた場合。
1点:泡質がやや良いと感じた場合。
0点:泡質が悪いと感じた場合。
【0033】
(5)すすぎ後のつっぱり感
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てて、顔を洗い、その後ぬるま湯ですすいだ。
2点:つっぱり感を全く感じない場合。
1点:つっぱり感をほとんど感じない場合。
0点:つっぱると感じた場合。
【0034】
(6)すすぎ後のさっぱり感
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てて、顔を洗い、その後ぬるま湯ですすいだ。
2点:さっぱりすると感じた場合。
1点:ややさっぱりすると感じた場合。
0点:さっぱりしない、または肌に残留物があると感じた場合。
【0035】
(7)乾燥後のうるおい感
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てて、顔を洗い、ぬるま湯ですすいだ。その後、タオルドライをしてよく乾燥させた。
2点:うるおい感があると感じた場合。
1点:うるおい感がややあると感じた場合。
0点:うるおいがないと感じた場合。
【0036】
(8)翌朝の肌の感触(モイスチャーバランス)
20名の女性(21才〜35才)をパネラーとし、就寝前に次のとおり洗顔を行った。洗浄料5gをとり、掌全体によく伸ばした後、約35℃のぬるま湯を徐々に加えながら泡立てて、顔を洗い、ぬるま湯ですすいだ。その後、タオルドライをしてよく乾燥させ、化粧水や乳液、クリーム等を使用したスキンケアは行わずに、翌朝の肌の状態を評価した。
2点:うるおいがあり、かつべたつきがなくモイスチャーバランスが整っていると感じた場合。
1点:うるおいがある、またはべたつきがなく、モイスチャーバランスがやや整っていると感じた場合。
0点:うるおいがない、またはべたつくと感じた場合。
【0037】
上記(1)〜(8)について下記の基準で評価して、表1および表2にそれぞれ評価を示した。なお、「◎」および「○」を合格と評価した。
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30点以上35点未満
△:合計点が20点以上30点未満
×:合計点が20点未満
【0038】
(9)経時安定性
各洗浄料について、0℃、室温、45℃の各温度条件下でそれぞれ1カ月間保存した。それらを25℃の恒温槽に3時間静置した後、性状を観察し下記のように評価し、表1および表2にそれぞれ示した。なお、「○」を合格とした。
○:いずれの温度でも硬さに変化がない。
×:いずれかの温度において硬い、あるいは柔らかい。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
本発明のペースト状洗浄剤組成物に係る実施例1〜5の洗浄料はいずれも、使用時の延びがよく、速泡性、泡質、泡立ちに優れ、さっぱりと洗いあげながらも、すすぎ後のつっぱり感が生じ難かった。さらに乾燥後の肌にうるおいを与え、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果が感じられ、経時安定性にも優れていた。
【0042】
これに対して比較例1〜7では十分な性能が得られていない。
比較例1はa成分が少なく、a/dが小さいので、速泡性、泡量、泡質、すすぎ後のさっぱり感が悪かった。また、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果も低かった。
比較例2はb成分を含有していないので、速泡性が悪く、泡量、すすぎ後のつっぱり感の効果が低かった。
比較例3はc成分を含有していないので、速泡性が悪く、泡量、すすぎ後のつっぱり感、乾燥後のうるおい感が低かった。
【0043】
比較例4はd成分が少なく、a/dが大きいので、泡質、すすぎ後のつっぱり感、乾燥後のうるおい感が悪く、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果、経時安定性も悪かった。
比較例5はe成分が少ないので、使用時の延び、泡質、乾燥後のうるおい感、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果が低く、速泡性が悪かった。
比較例6はa、b、cおよびe成分が少ないか、または含有しておらず、d成分が多く、a/dが小さいので、使用時の延び、速泡性、泡量、すすぎ後のさっぱり感が悪く、泡質、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果が低かった。
比較7はcおよびd成分を含有していないので、すすぎ後につっぱり感を生じやすく、乾燥後のうるおい感、翌朝の肌のモイスチャーバランスを整える効果が悪かった。