(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非晶性樹脂が、脂肪族不飽和ジカルボン酸に由来の構造単位を25〜75mol%の割合で含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
〔トナー〕
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂を含有するトナー粒子よりなり、当該トナー粒子は、所望に応じて、着色剤、磁性粉、離型剤、荷電制御剤などのトナー構成成分を含有するものとすることができる。また、当該トナー粒子に対して、流動化剤やクリーニング助剤などの外添剤を添加するものとすることもできる。
【0022】
本発明のトナーに係るトナー粒子は、コア粒子表面に中間層およびシェル層が被覆されてなる多層構造を有する。
具体的には、
図1に示すように、トナー粒子10は、ビニル系重合体Aよりなるマトリクス相11a中に、結晶性ポリエステル樹脂がドメイン相11bとして分散されてなるコア粒子11表面に、マトリクス相11aのビニル系重合体Aとカルボキシ基濃度の異なるビニル系重合体Bを含有する中間層12が被覆され、この中間層12上に、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが化学的に結合してなる非晶性樹脂を含有するシェル層13が積層されてなる構造のものである。
このトナー粒子10においては、中間層12はコア粒子11表面を完全に被覆すると共に、シェル層13は中間層12表面を、表面積で少なくとも8割以上被覆するものであることが好ましい。
【0023】
この構造は、酸化ルテニウム(VIII)または酸化オスミウム(VIII)にて染色したトナー粒子断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により、定法により測定して観察することができる。また、ウルトラミクロトームで切片を切り出す場合においては、切片の厚さは100nmに設定する。
【0024】
〔コア粒子〕
本発明に係るトナー粒子を構成するコア粒子は、ビニル系重合体Aよりなるマトリクス相中に、結晶性ポリエステル樹脂がドメイン相として分散されてなるドメインマトリクス構造を有する。
【0025】
結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径は、300nm以下とされ、好ましくは150nm以下とされる。
ドメイン相の平均径が300nm以下であることにより、結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体A中に熱定着時において相溶が進行しやすい状態で含有されることとなり、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aに対して効率的に可塑化を促進するため、優れた低温定着性が得られる。また、熱定着後の冷却時において、結晶性ポリエステル樹脂はビニル系重合体A中に相溶している状態または結晶化の程度が小さい状態で存在することとなり、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度のバラツキが低減するため、得られる画像において高い光沢均一性が得られる。
【0026】
本発明において、ドメイン相の平均径は、前述の構造観察の方法にて得られたTEM画像により測定される値である。具体的には、ドメイン相の平均径は、TEM画像におけるドメイン相の水平フェレ径と垂直フェレ径との平均値をドメイン径として各々算出し、TEM画像におけるドメイン相全てのドメイン径の平均値を算出することにより得られた値をいう。
ドメイン相の平均径は、材料物性の組み合わせ、具体的には、後述するビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度と当該結晶性ポリエステル樹脂の酸価またはエステル基濃度とを調整することによって制御することができる。
【0027】
(ビニル系重合体A)
コア粒子のマトリクス相を構成するビニル系重合体Aは、ビニル系単量体を用いて形成されるものである。
ビニル系重合体Aとしては、具体的には、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂などが挙げられる。
【0028】
ビニル系単量体としては、下記のものなどを用いることができる。ビニル系単量体としては、1種単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
(1)スチレン系単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンおよびこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル系単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
【0029】
また、ビニル系単量体としては、例えば、カルボキシ基、スルフォン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルフォン酸基を有する単量体としては、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
なお、本発明においては、ビニル系単量体として、カルボキシ基を有する単量体を用いることが必須であり、全ビニル系単量体におけるカルボキシ基を有する単量体の割合は、2〜7質量%であることが好ましい。カルボキシ基を有する単量体の割合が過多である場合は、トナー粒子の表面への水分の吸着量が増えることによって、トナーブリスターの発生や帯電量環境差の拡大が生じるおそれがある。
【0030】
さらに、ビニル系単量体として、多官能性ビニル類を使用し、ビニル系重合体を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0031】
コア粒子を構成するビニル系重合体Aは、コア粒子中に共存する結晶性ポリエステル樹脂と熱定着時に相溶が進行しやすい状態のものであり、また、コア粒子表面に被覆される中間層を構成するビニル系重合体Bと熱定着前(例えばトナー保管時など)に非相溶のものであることが好ましい。
【0032】
本発明において、相溶性としては、ビニル系重合体に係るカルボキシ基濃度と結晶性ポリエステル樹脂に係る酸価(またはエステル基濃度)との関係によって制御することができる。
【0033】
ビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度は、0.4mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.6〜0.8mmol/gである。
ビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度が0.4mmol/g以上であることにより、結晶性ポリエステル樹脂の酸価(エステル基濃度)との関係において、ビニル系重合体Aと結晶性ポリエステル樹脂とが熱定着時に相溶が進行しやすいもの、すなわち結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nm以下のものとなる。従って、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aに対して効率的に可塑化を促進するため、優れた低温定着性が得られる。また、熱定着後の冷却時において、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度のバラツキが低減するため、得られる画像において高い光沢均一性が得られる。
ビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度が過小である場合においては、ビニル系重合体Aと結晶性ポリエステル樹脂とが熱定着時に相溶が進行しにくいもの、すなわち結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nmより大きいものとなるため、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aに対して十分な可塑化を促進することができず、十分な低温定着性が得られないおそれがある。また、熱定着後の冷却時において、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度のバラツキが発生し、得られる画像において高い光沢均一性が得られないおそれがある。一方、ビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度が過大である場合においては、樹脂間の静電引力が強くなりすぎるために、低温定着化の効果が十分に得られないおそれがある。
【0034】
ここで、カルボキシ基濃度は、ビニル系重合体中のカルボキシ基の割合であり、水に対する親和性の程度を示し、値が大きい程、水に対する親和性が高いことを示すものである。
本発明において、カルボキシ基濃度は下記式(1)により算出される値である。
式(1):カルボキシ基濃度=[カルボキシ基のモル数/(ビニル系重合体を形成する単量体の分子量×モル分率)の総和]×1000
ビニル系重合体のカルボキシ基濃度は、カルボキシ基を有する単量体の導入比率によって制御することができる。
【0035】
ビニル系重合体Aのガラス転移点(Tg)は、35〜70℃であることが好ましく、より好ましくは40〜60℃である。
ビニル系重合体Aのガラス転移点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性および耐熱保管性が確実に両立して得られる。
ビニル系重合体Aのガラス転移点が過小である場合には、トナーの耐熱性(熱的強度)が低下し、これにより十分な耐熱保管性および耐ホットオフセット性が得られないおそれがある。一方、ビニル系重合体Aのガラス転移点が過大である場合には、十分な低温定着性が得られないおそがある。
【0036】
ビニル系重合体のガラス転移点(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される値である。
測定手順としては、測定試料(ビニル系重合体)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
【0037】
ビニル系重合体Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10,000〜50,000、数平均分子量(Mn)で6,000〜14,000であることが好ましい。
【0038】
ビニル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量は、以下のようにして測定される値である。
具体的には、装置「HLC−8120GPC」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料(ビニル系重合体)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
【0039】
ビニル系重合体Aは、結着樹脂中50〜90質量%の割合で含有されていることが好ましい。
ビニル系重合体Aの含有割合が過小である場合においては、十分な低温定着化の効果が得られなくなる。一方、ビニル系重合体Aの含有割合が過大である場合においては、耐熱保管性を十分に確保できない可能性がある。
【0040】
(結晶性ポリエステル樹脂)
コア粒子のドメイン相を構成する結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0041】
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;およびこれらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、シャープメルト性付与の観点から、飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、一種類のみの使用が好ましい。
【0042】
多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。
具体的には、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
コア粒子を構成する結晶性ポリエステル樹脂は、コア粒子中に共存するビニル系重合体Aと熱定着時に相溶が進行しやすい状態のものであり、また、コア粒子表面に被覆される中間層を構成するビニル系重合体Bと非相溶のものであることが好ましい。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、18〜27mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは20〜25mgKOH/gである。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲であることにより、ビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度との関係において、ビニル系重合体Aと結晶性ポリエステル樹脂とが熱定着時に相溶が進行しやすいもの、すなわち結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nm以下のものとなる。従って、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aに対して効率的に可塑化を促進するため、優れた低温定着性が得られる。また、熱定着後の冷却時において、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度のバラツキが低減するため、得られる画像において高い光沢均一性が得られる。さらに、ビニル系重合体Bのカルボキシ基との関係において、結晶性ポリエステル樹脂とビニル系重合体Bとが相溶しにくいものとなる。従って、ビニル系重合体Bにより形成される中間層が隔壁となって、結晶性ポリエステル樹脂が中間層やシェル層に滲み出すことを防止し、例えば熱定着前(例えばトナー保管時など)において結晶性ポリエステル樹脂と中間層やシェル層の樹脂との相溶化を防止するため、耐熱保管性を確保することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価が過小である場合においては、結晶性ポリエステル樹脂のビニル系重合体Aに対する可塑化効果が不十分となる、すなわち結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nmより大きいものとなり、低温定着性が十分に得られないおそれがある。一方、結晶性ポリエステル樹脂の酸価が過大である場合においては、結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Bと相溶するものとなるために、中間層による隔壁が十分に形成されず、耐熱保管性が低下してしまう可能性がある。
【0045】
ここで、酸価は、試料1g中に含有されるカルボキシ基を中和するのに必要とされる水酸化カリウム(KOH)のmg数で示すものである。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K 0070に準拠し、ジエチルエーテル/エタノール混合溶剤の代わりに、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、滴定法として電位差滴定を採用して測定される値である。なお、結晶性ポリエステル樹脂にテトラヒドロフラン不溶分が存在するときは、テトラヒドロフラン不溶分を含めた状態で電位差滴定を実施するものとする。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、モノマー種によって制御することができる。
【0046】
結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は、6.0mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは6.5〜8.0mmol/gである。
結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が6.0mmol/g以上であることにより、ビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度との関係において、結晶性ポリエステル樹脂とビニル系重合体Aとが熱定着時に相溶が進行しやすいもの、すなわち結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nm以下のものとなる。従って、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aに対して効率的に可塑化を促進するため、より優れた低温定着性が得られる。また、熱定着後の冷却時において、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度のバラツキが低減するため、得られる画像においてより高い光沢均一性が得られる。
結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が過小である場合においては、結晶性ポリエステル樹脂とビニル系重合体Aとが熱定着時に相溶がしにくいもの、すなわち結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nmより大きいものとなるため、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aに対して十分な可塑化を促進することができず、十分な低温定着性が得られないおそれがある。また、熱定着後の冷却時において、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度のバラツキが発生し、得られる画像において高い光沢均一性が得られないおそれがある。一方、結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が過大である場合においては、結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Bと相溶するものとなるために、中間層による隔壁が十分に形成されず、耐熱保管性が低下してしまう可能性がある。
【0047】
ここで、エステル基濃度は、結晶性ポリエステル樹脂中のエステル基(エステル結合)の割合であり、水に対する親和性の程度を示し、値が大きい程、水に対する親和性が高いことを示すものである。
本発明において、エステル基濃度は下記式(2)により算出される値である。
式(2):エステル基濃度=[結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸および多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均/((多価カルボン酸および多価アルコールの分子量の合計)−(脱水重縮合して分離した水の分子量×エステル基のモル数))]×1000
結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は、モノマー種によって制御することができる。
【0048】
結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度の算出例を以下に示す。
下記式(a)で表わされる多価カルボン酸と下記式(b)で表わされる多価アルコールとにより得られる結晶性ポリエステル樹脂は下記式(c)で表わされる。
式(a):HOOC−R
1 −COOH
式(b):HO−R
2 −OH
式(c):−(−OCO−R
1 −COO−R
2 −)
n−
『結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸および多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均』とは、結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸のカルボキシ基のモル数および多価アルコールのヒドロキシル基のモル数の平均であり、具体的には、式(a)の多価カルボン酸のカルボキシ基のモル数「2」と、式(b)の多価アルコールのヒドロキシル基のモル数「2」との平均「2」である。
また、式(a)の多価カルボン酸の分子量をm1、式(b)の多価アルコールの分子量をm2、式(c)の結晶性ポリエステル樹脂の分子量をm3とすると、『(多価カルボン酸および多価アルコールの分子量の合計)−(脱水重縮合して分離した水の分子量×エステル基のモル数)』は、(m1+m2)−(18×エステル基のモル数の平均「2」)となり、従って、式(c)の結晶性ポリエステル樹脂の分子量「m3」となる。
以上より、式(c)で表わされる結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は、「2/m3」となる。
また、多価カルボン酸を2種以上、または多価アルコールを2種以上併用する場合には、それぞれの多価カルボン酸のカルボキシ基と分子量の平均および多価アルコールのヒドロキシル基と分子量の平均からなる。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、40〜95℃であることが好ましく、より好ましくは60〜90℃である。
結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性および優れた耐ホットオフセット性が得られる。
結晶性ポリエステル樹脂の融点が過度に低い場合においては、得られるトナーが熱的強度の低いものとなって十分な耐熱保管性および耐ホットオフセット性が得られないおそれがある。また、結晶性ポリエステル樹脂の融点が過度に高い場合においては、十分な低温定着性が得られないおそれがある。
なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、以下のようにして測定される値である。
結晶性ポリエステルの融点は、吸熱ピークのピークトップの温度を示し、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて示差走査熱量分析によってDSC測定される。
具体的には、測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)1.0mgを、アルミニウム製パン(KITNO.B0143013)に封入し、これを「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットし、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、加熱−冷却−加熱の温度制御を行い、その2度目の加熱におけるデータをもとに解析される。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000、数平均分子量(Mn)で1,500〜12,000であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、測定試料として結晶性ポリエステル樹脂を用いたことの他は上記と同様にして測定される値である。
【0052】
コア粒子中のビニル系重合体Aと結晶性ポリエステル樹脂との質量比(ビニル系重合体A/結晶性ポリエステル樹脂)は、20/1〜4/1であることが好ましく、より好ましくは10/1〜5/1である。
質量比(ビニル系重合体A/結晶性ポリエステル樹脂)が上記範囲であることにより、低温定着性を図ることができるだけの量の結晶性ポリエステル樹脂をトナー粒子に導入することができる。
質量比(ビニル系重合体A/結晶性ポリエステル樹脂)において、ビニル系重合体Aの割合が過大である場合においては、トナー粒子への結晶性ポリエステル樹脂の導入量を十分に得ることができずに十分な低温定着化を図ることができないおそれがある。一方、質量比(ビニル系重合体A/結晶性ポリエステル樹脂)において、ビニル系重合体Aの割合が過小である場合においては、トナー粒子中における結晶性ポリエステル樹脂によるドメイン相の平均径が300nm以下の場合においても、定着時においてドメイン相が合一し、定着後の画像上において、平均径が300nm以上の大きなドメイン相が生成しやすくなる。従って、結晶化されたドメイン相の大きさのばらつきから光沢均一性の低下を招くおそれがある。
【0053】
〔中間層〕
本発明に係るトナー粒子を構成する中間層は、ビニル系重合体Bを含有し、他の樹脂が含有されていてもよい。
【0054】
(ビニル系重合体B)
中間層を構成するビニル系重合体Bは、ビニル系単量体を用いて形成されるものである。
ビニル系重合体Bによる中間層が設けられていることにより、熱定着前(例えばトナー保管時など)において中間層が隔壁となって、コア粒子中の結晶性ポリエステル樹脂が中間層やシェル層に滲み出すことを防止するため、耐熱保管性が得られる。また、中間層上にシェル層を形成しやすく、製造上においても有利である。
【0055】
ビニル系重合体Bを形成するためのビニル系単量体は、上記のビニル系重合体Aを形成するためのビニル系単量体として例示したものを用いることができる。上記のビニル系単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
ビニル系重合体Bを形成するためのビニル系単量体としては、メタクリル酸メチルを用いることが、シェル層を構成する非晶性樹脂との親和性を高める観点から好ましい。なお、ビニル系重合体Bを形成するためのビニル系単量体については、カルボキシ基を有する単量体を用いることは必須ではない。
【0056】
本発明のトナーにおいては、ビニル系重合体Bは、コア粒子を構成するビニル系重合体Aと一部が同じ樹脂組成、具体的には、一部が同じ種類のビニル系単量体を用いて形成されるものであることが好ましい。このように、ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとが一部が同じ樹脂組成であることにより、ビニル系重合体Aとビニル系重合体Bとの親和性をより高いものとすることができ、コア粒子と中間層との接着性を高めることができる。
【0057】
ビニル系重合体Bは、コア粒子を構成する結晶性ポリエステル樹脂と非相溶のものであることが好ましく、また、コア粒子を構成するビニル系重合体Aと熱定着前(例えばトナー保管時など)に非相溶のものであり、かつ、シェル層を構成する非晶性樹脂と熱定着前(例えばトナー保管時など)に非相溶のものであることが好ましい。
【0058】
ビニル系重合体Bは、特に、コア粒子のビニル系重合体Aとカルボキシ基濃度の異なるものが好ましい。
具体的には、ビニル系重合体Bのカルボキシ基濃度は、0.03mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.01mmol/g以下である。
ビニル系重合体Bのカルボキシ基濃度が0.03mmol/g以下であることにより、結晶性ポリエステル樹脂の酸価(エステル基濃度)との関係において、ビニル系重合体Bと結晶性ポリエステル樹脂とが相溶しにくいものとなる。従って、ビニル系重合体Bにより形成される中間層が隔壁となって、結晶性ポリエステル樹脂が中間層やシェル層に滲み出すことを防止し、熱定着前(例えばトナー保管時など)において中間層やシェル層の樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との相溶化を防止するため、十分な耐熱保管性を確保することができる。
ビニル系重合体Bのカルボキシ基濃度が過大である場合においては、ビニル系重合体Bと結晶性ポリエステル樹脂とが相溶するものとなるため、ビニル系重合体Bにより形成される中間層が結晶性ポリエステル樹脂のシェル層への滲み出しを防止する隔壁とならず、十分な耐熱保管性を確保することができないおそれがある。
【0059】
ビニル系重合体Bは、結着樹脂中5〜15質量%の割合で含有されていることが好ましい。
ビニル系重合体Bの含有割合が上記範囲であることにより、コア粒子による低温定着性への効果を損なうことなく、十分に隔壁として機能させることができる。
また、ビニル系重合体Bとコア粒子を形成する樹脂の合計との質量比(ビニル系重合体B/コア粒子を形成する樹脂の合計)は、1/20〜3/10であることが好ましく、より好ましくは1/10〜1/5である。
質量比(ビニル系重合体B/コア粒子を形成する樹脂の合計)が上記範囲であることにより、ビニル系重合体Bにより形成される中間層がコア粒子表面を完全に被覆することのできる量が確保され、耐熱保管性を確実に得ることができる。
【0060】
ビニル系重合体Bのガラス転移点(Tg)は、40〜80℃であることが好ましく、より好ましくは45〜65℃である。
ビニル系重合体Bのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で15,000〜70,000、数平均分子量(Mn)で7,000〜16,000であることが好ましい。
ビニル系重合体Bの分子量が上記範囲であることにより、低温定着性を損なうことなく、結晶性ポリエステルとビニル系重合体の相溶を抑制し、隔壁として機能させることができる。
【0061】
〔シェル層〕
本発明に係るトナー粒子を構成するシェル層は、非晶性樹脂を含有し、他の樹脂が含有されていてもよい。
【0062】
(非晶性樹脂)
シェル層を構成する非晶性樹脂は、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが化学的に結合してなる非晶性樹脂である。この非晶性樹脂は、具体的には、非晶性ポリエステルセグメントとビニル系重合セグメントとが両反応性モノマーを介して結合されたものである。
非晶性樹脂によるシェル層が設けられていることにより、より一層の耐熱保管性が得られる。
特に、シェル層が非晶性樹脂により構成されていることにより、中間層を構成するビニル系重合体Bと親和性が高いものとなる。
【0063】
ビニル系重合セグメントは、ビニル系単量体により形成され、このビニル系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなどのスチレン系重合性単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアクリル系重合性単量体が挙げられ、これらの他、上記のビニル系重合体Aを形成するためのビニル系単量体として例示したものを用いることができる。また、上記のビニル系単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0064】
ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸および多価アルコールにより形成される非晶性のものであって、DSC測定において明確な吸熱ピークを示さないものをいう。
【0065】
多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの2価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
【0066】
多価カルボン酸としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いることが好ましい。脂肪族不飽和ジカルボン酸とは、分子内にビニレン基を有する鎖状のジカルボン酸をいう。
このような脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を確実に形成することができる。
用いる全多価カルボン酸における脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合は、25〜75モル%であることが好ましく、特に30〜60モル%であることがより好ましい。
脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合が上記範囲であることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層をより確実に形成することができる。
脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合が過小である場合は、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層が形成されず、十分な耐熱保管性および帯電性が得られないおそれがある。一方、脂肪族不飽和ジカルボン酸の割合が過大である場合は、十分な帯電性が得られないおそれがある。
【0067】
多価アルコールとしては、例えば、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
【0068】
非晶性樹脂におけるビニル系重合セグメントの含有割合が5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜25質量%である。
ビニル系重合セグメントの含有割合は、具体的には、非晶性樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、ポリエステル重合セグメントとなる多価カルボン酸および多価アルコールと、ビニル系重合セグメントとなるビニル系単量体と、これらを結合させるための両反応性モノマーとを合計した全質量に対する、ビニル系単量体の質量の割合である。
ビニル系重合セグメントの含有割合が上記範囲であることにより、ポリエステル重合セグメントによる低温定着性への効果を損なうことなく、非晶性樹脂で構成するシェル層と、ビニル系重合体Bで構成する中間層との接着性を高めることができる。
当該割合が過小である場合においては、シェル層と中間層の接着性が不十分となり、機械的強度が低下するおそれがある。一方、当該割合が過大である場合においては、ポリエステル重合セグメントとビニル系重合セグメントとが一部相溶し、ポリエステル重合成分のガラス転移点が低下するために、耐熱保管性が低下するおそれがある。
【0069】
以上のような非晶性樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、以下の3つが挙げられる。
(1)ビニル系重合セグメントを形成するためのビニル系単量体の付加重合反応を行った後、非晶性ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールの縮重合反応を行い、必要に応じて架橋剤となる3価以上のビニル系単量体を反応系に添加し、縮重合反応をさらに進行させる方法。
(2)非晶性ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールの縮重合反応を行った後、ビニル系重合セグメントを形成するためのビニル系単量体の付加重合反応を行い、その後、必要に応じて架橋剤となる3価以上のビニル系単量体を反応系に添加し、縮重合反応に適した温度条件下で、縮重合反応をさらに進行させる方法。
(3)付加重合反応に適した温度条件下で、ビニル系重合セグメントを形成するためのビニル系単量体の付加重合反応、および、非晶性ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールの縮重合反応を平行して行い、付加重合反応が終了した後、必要に応じて架橋剤となる3価以上のビニル系単量体を反応系に添加し、縮重合反応に適した温度条件下で縮重合反応をさらに進行させる方法。
【0070】
非晶性樹脂は、非晶性ポリエステルセグメントとビニル系重合セグメントとが両反応性モノマーを介して結合されていることから、具体的な製造方法としては、例えば、両反応性モノマーを多価カルボン酸・多価アルコールおよび/またはビニル系単量体と共に、用いて、ビニル系単量体を付加重合させる工程の前、中および後の少なくともいずれかの時点で、多価カルボン酸・多価アルコールを存在させて縮重合反応を行う。
【0071】
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基および第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基および/またはカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物、即ち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。両反応性モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)エステルであってもよいが、反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸が好ましい。
また、両反応性モノマーとして、多価のビニル系カルボン酸よりも、一価のビニル系カルボン酸を用いることが、耐久性の観点から好ましい。これは、一価のビニル系カルボン酸が、ビニル系単量体と反応性が高いため、ハイブリッド化し易いためと考えられる。一方、フマル酸などのジカルボン酸を両反応性モノマーとして用いた場合、耐久性がやや劣る。これは、ジカルボン酸がビニル系単量体と反応性が低く、均一にハイブリッド化しにくいため、ドメイン構造をとるためと考えられる。
【0072】
両反応性モノマーの使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、ビニル系単量体の総量100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、4〜8質量部がより好ましく、多価カルボン酸および多価アルコールの総量100質量部に対して、0.3〜8質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0073】
付加重合反応は、例えば、ラジカル重合開始剤、架橋剤などの存在下、有機溶媒中または無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件は110〜200℃が好ましく、140〜180℃がより好ましい。ラジカル重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボン酸などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
縮重合反応は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度条件で行うことができるが、エステル化触媒、重合禁止剤などの存在下で行うことが好ましい。エステル化触媒としては、ジブチル錫オキシド、チタン化合物、オクチル酸スズ等のSn−C結合を有していない錫(II)化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは両者を組み合わせて用いることができる。
【0075】
非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、40〜80℃であることが好ましく、より好ましくは55〜70℃である。
非晶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000、数平均分子量(Mn)で2,000〜20,000であることが好ましい。
【0076】
非晶性樹脂のガラス転移点およびゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、測定試料として非晶性樹脂を用いたことの他は上記と同様にして測定される値である。
【0077】
非晶性樹脂の軟化点(Tsp)は、80〜110℃であることが好ましく、より好ましくは90〜105℃である。
非晶性樹脂の軟化点(Tsp)は、以下のようにして測定される値である。
まず、20℃±1℃、50%±5%RHの環境下において、測定試料(非晶性樹脂)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)によって3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成し、次いで、この成型サンプルを、24℃±5℃、50%±20%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが軟化点とされる。
【0078】
非晶性樹脂は、結着樹脂中10〜20質量%の割合で含有されていることが好ましい。
非晶性樹脂の含有割合が上記範囲であることにより、コア粒子による低温定着性への効果を損なうことなく、耐熱保管性を確保することができる。
また、非晶性樹脂と中間層のビニル系重合体Bとの質量比(非晶性樹脂/ビニル系重合体B)は、1/2〜3/1であることが好ましく、より好ましくは1/1〜2/1である。
質量比(非晶性樹脂/ビニル系重合体B)が上記範囲であることにより、シェル層と中間層との接着性を十分に確保できるとともに、シェル層で完全に被覆し、耐熱保管性を確保することができる。
【0079】
結着樹脂には、コア粒子を構成するビニル系重合体Aおよび結晶性ポリエステル樹脂、中間層を構成するビニル系重合体B、シェル層を構成する非晶性樹脂以外に、他の樹脂が含まれていてもよい。
【0080】
〔着色剤〕
本発明のトナーにおいて、トナー粒子が着色剤を含有するものとして構成される場合においては、着色剤は、コア粒子、中間層およびシェル層のいずれに含有されていてもよいが、少なくともコア粒子に着色剤が含有されていることが好ましい。着色剤をコア粒子に含有させず、中間層およびシェル層のみに着色剤を含有させた場合には、着色剤が非局在化し、色再現性が低下する可能性がある。
カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、黒色酸化鉄としては、例えばマグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄などが挙げられる。
染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられる。
顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などが挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
着色剤の含有割合は、トナー粒子中に1〜10質量%とされることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。着色剤の含有量が過少である場合は、得られるトナーに所望の着色力が得られないおそれがあり、一方、着色剤の含有量が過多である場合は、着色剤の遊離やキャリアなどへの付着が発生し、帯電性に影響を与える場合がある。
【0082】
〔離型剤〕
本発明のトナーにおいて、トナー粒子が離型剤を含有するものとして構成される場合においては、離型剤は、コア粒子、中間層およびシェル層のいずれに含有されていてもよいが、特に、離型剤はコア粒子に含有されていることが好ましい。離型剤がコア粒子に含有されていることにより、離型剤との親和性が比較的高い結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に離型剤がトナー外に染み出すことに伴って、離型剤と共にトナー外に染み出しやすくなる。従って、結晶性ポリエステル樹脂がトナー界面を超えて画像支持体上のトナー層全体をより効率よく可塑化するために、低温定着性をさらに向上させることができる。
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックス、およびベヘン酸ベヘネートなどのエステル系ワックスを好適に用いることができる。
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が40〜90℃のものを用いることが好ましい。
【0083】
本発明のトナーにおいて、離型剤がコア粒子に含有されている場合においては、離型剤とコア粒子の樹脂(ビニル系重合体A)との親和性よりも、離型剤と中間層の樹脂(ビニル系重合体B)との親和性の方が高いため、離型剤がより表面側(中間層側)に偏在することとなり、熱定着時において離型剤が滲み出しやすく、良好な定着分離性が得られる。また、離型剤が中間層またはシェル層に含有されている場合においては、離型剤がトナー粒子の表面側に存在することとなり、熱定着時において離型剤が滲み出しやすく、良好な定着分離性が得られる。
以上のことから、本発明のトナーにおいては、離型剤がコア粒子、中間層およびシェル層のいずれに含有されていても、良好な定着分離性が得られる。
【0084】
離型剤の含有割合は、トナー粒子中に5〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜15質量%である。トナー粒子における離型剤の含有割合が上記の範囲にあることにより、分離性および定着性が確実に両立して得られる。
【0085】
〔荷電制御剤〕
本発明のトナーにおいて、トナー粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成される場合においては、荷電制御剤は、コア粒子、中間層およびシェル層のいずれに含有されていてもよい。
荷電制御剤として、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー粒子中に0.01〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0086】
〔外添剤〕
本発明のトナーにおいては、トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加してもよい。
外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
これらの外添剤の添加割合は、その合計の添加量がトナー粒子100質量部に対して好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部とされる。
【0087】
〔トナーのガラス転移点〕
本発明のトナーは、ガラス転移点(Tg)が40〜70℃であることが好ましく、より好ましくは45〜60℃である。
本発明のトナーのガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および耐熱保管性が確実に両立して得られる。トナーのガラス転移点が過小である場合には、トナーの耐熱性(熱的強度)が低下し、これにより十分な耐熱保管性および耐ホットオフセット性が得られないおそれがある。また、トナーのガラス転移点が過大である場合には、十分な低温定着性が得られないおそがある。
【0088】
トナーのガラス転移点は、測定試料としてトナーを用いたことの他は上記と同様にして測定される値である。
【0089】
〔トナーの粒径〕
本発明のトナーにおいては、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3〜8μmであることが好ましく、より好ましくは5〜8μmである。この平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成などによって制御することができる。
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することなどができる。
【0090】
トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出される値である。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
【0091】
〔トナーの平均円形度〕
本発明のトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、0.950〜0.995であることがより好ましい。
平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
【0092】
トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(y)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
式(y):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0093】
〔現像剤〕
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは25〜80μmとされる。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0094】
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーの製造方法としては、特に限定されないが、水系媒体中で作製される湿式の製造方法、例えば乳化凝集法などが挙げられる。
乳化凝集法による本発明のトナーの製造方法は、水系媒体中に結着樹脂の微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう。)が分散されてなる水系分散液と、着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)が分散されてなる水系分散液とを混合し、結着樹脂微粒子および着色剤微粒子を凝集・熱融着させることによりトナー粒子を形成しトナーを作製する方法である。
【0095】
本発明のトナーの製造方法の一例を具体的に示すと、
(a)水系媒体中にビニル系重合体Aによる微粒子(以下、「樹脂微粒子A」ともいう。)が分散されてなる水系分散液を調製する工程、
(b)水系媒体中にビニル系重合体Bによる微粒子(以下、「樹脂微粒子B」ともいう。)が分散されてなる水系分散液を調製する工程、
(c)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる水系分散液を調製する工程、
(d)水系媒体中に結晶性ポリエステル樹脂による微粒子(以下、「結晶性ポリエステル樹脂微粒子」ともいう。)が分散されてなる水系分散液を調製する工程、
(e)水系媒体中に非晶性樹脂による微粒子(以下、「非晶性樹脂微粒子」ともいう。)が分散されてなる水系分散液を調製する工程、
(f)水系媒体中において、樹脂微粒子A、結晶性ポリエステル樹脂微粒子および必要に応じて着色剤微粒子を凝集、融着させてコア粒子を形成する工程、
(g)コア粒子表面に樹脂微粒子Bを凝集、融着させて中間層を形成し、1次コアシェル粒子を形成する工程、
(h)1次コアシェル粒子表面に、非晶性樹脂微粒子を凝集、融着させてシェル層を形成し、トナー粒子を形成する工程、
(i)熱エネルギーにより熟成させてトナー粒子形状を制御する工程
(j)トナー粒子の分散液を冷却する工程、
(k)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する工程、
(l)洗浄されたトナー粒子を乾燥する工程、
などの工程からなり、必要に応じて、
(m)乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
を加えることができる。
【0096】
ここに、「水系分散液」とは、水系媒体中に、分散体(微粒子)が分散されてなるものであり、水系媒体とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0097】
(a)樹脂微粒子Aの水系分散液の調製工程
この工程においては、ビニル系重合体Aによる樹脂微粒子Aの水系分散液が調製される。
樹脂微粒子Aの水系分散液は、ビニル系重合体Aを得るためのビニル系単量体を使用してミニエマルション重合法によって調製することができる。すなわち、例えば界面活性剤を含有した水系媒体中にビニル系単量体を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤からのラジカルにより当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。これにより、ビニル系重合体Aによる樹脂微粒子Aの水系分散液を調製することができる。
ビニル系重合体Aによる樹脂微粒子Aは、組成の異なるビニル系重合体よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の樹脂微粒子Aは、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調整し、この分散液に重合開始剤とビニル系単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0098】
〔界面活性剤〕
この工程において使用される界面活性剤としては、従来公知の種々のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを用いることができる。
【0099】
〔重合開始剤〕
この工程において使用される重合開始剤は、従来公知の種々のものを用いることができる。重合開始剤の具体例としては、例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)が好ましく用いられる。その他、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸およびその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩など)、パーオキシド化合物、アゾビスイソブチロニトリルなどを用いてもよい。
【0100】
〔連鎖移動剤〕
この工程においては、ビニル系重合体Aの分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンおよびスチレンダイマーなどを挙げることができる。
【0101】
本発明に係るトナー粒子中には、必要に応じて例えば離型剤や荷電制御剤などの他の内添剤が含有されていてもよく、このような内添剤は、例えば、この工程において、予め、ビニル系重合体Aを形成するためのビニル系単量体の溶液に溶解または分散させておくことによってトナー粒子中に導入することができる。
また、このような内添剤は、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、コア粒子形成工程、中間層形成工程およびシェル層形成工程の少なくともいずれかの工程において内添剤微粒子を凝集させることにより、トナー粒子中に導入することもできるが、この工程において予め導入しておく方法を採用することが好ましい。
【0102】
樹脂微粒子Aの平均粒径は、体積基準のメジアン径で100〜250nmの範囲にあることが好ましい。
樹脂微粒子Aの体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
【0103】
(b)樹脂微粒子Bの水系分散液の調製工程
この工程においては、ビニル系重合体Bによる樹脂微粒子Bの水系分散液が調製される。
樹脂微粒子Bの水系分散液は、上記ビニル系重合体Aの樹脂微粒子Aの水系分散液を得る方法と同様の方法を採用することができる。
【0104】
樹脂微粒子Bの平均粒径は、体積基準のメジアン径で100〜200nmの範囲にあることが好ましい。
樹脂微粒子Bの体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
【0105】
(c)着色剤微粒子の水系分散液の調製工程
この工程は、トナー粒子として着色剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の水系分散液を調製する工程である。
【0106】
着色剤微粒子の水系分散液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度(CMC)以上に添加した水系媒体中に着色剤を分散させることにより得られる。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、使用する分散機としては、特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザーなどの加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機が挙げられる。
【0107】
着色剤微粒子は、分散した状態で体積基準のメジアン径が10〜300nmとされることが好ましく、さらに好ましくは100〜200nm、特に好ましくは100〜150nmである。
着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される値である。
【0108】
(d)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液の調製工程
この工程においては、結晶性ポリエステル樹脂による結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液が調製される。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液は、まず、結晶性ポリエステル樹脂を合成し、この結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させることによって調製することができる。
結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0109】
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。
水系媒体中には、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤などが添加されていてもよい。界面活性剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0110】
油相液の調製に使用される有機溶媒としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。有機溶媒の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部、好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは25〜70質量部である。
【0111】
油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられ、具体的には例えばTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)などを挙げることができる。
油滴の分散径は60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。
油滴の分散径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した体積基準のメジアン径である。この油滴の分散径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさにより制御することができる。
【0112】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で80〜230nmの範囲にあることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
【0113】
(e)非晶性樹脂微粒子の水系分散液の調製工程
この工程においては、非晶性樹脂による非晶性樹脂微粒子の水系分散液が調製される。
非晶性樹脂微粒子の水系分散液は、まず、非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させることによって調製する調製することができる。
非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を分散させる方法と同様の方法にて行うことができる。
【0114】
非晶性樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で80〜230nmの範囲にあることが好ましい。
非晶性樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
【0115】
(f)コア粒子の形成工程
この工程においては、樹脂微粒子A、結晶性ポリエステル樹脂微粒子および必要に応じて着色剤微粒子を凝集させて、さらに加熱によって融着させてコア粒子を形成する。
具体的には、水系媒体中に上記の微粒子が分散されてなる水系分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加し、加熱することによって凝集、融着させる。
【0116】
〔凝集剤〕
この工程において使用される凝集剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などの金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
融着温度は、例えば70〜95℃であることが好ましい。
【0118】
この工程における樹脂微粒子Aと結晶性ポリエステル樹脂微粒子との混合割合は、最終的に得られるトナー粒子中における結晶性ポリエステル樹脂の含有量が5〜20質量%となるように調整されることが好ましい。
本発明のトナーにおいては、結晶性ポリエステル樹脂の含有量を、コア粒子を結晶性ポリエステル樹脂のみで構成する従来の構成に比べて、低減することができる。従って、トナー製造時において、一度融点以上に加熱されて溶融していた結晶性ポリエステル樹脂が冷却工程で凝固する際にトナー粒子の変形を誘発することがなく、高い円形度を有するトナー粒子を得ることができる。
【0119】
この工程において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、単独でまたは複数個が融着して、ドメイン相の平均径が300nm以下のドメイン相が形成される。このとき、樹脂微粒子Aを形成するビニル系重合体Aのカルボキシ基濃度と、結晶性ポリエステル樹脂微粒子を形成する結晶性ポリエステル樹脂の酸価(エステル基濃度)との関係によって、ドメイン相の平均径は制御される。
【0120】
コア粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で4.5〜6.5μmの範囲にあることが好ましい。
コア粒子の体積基準のメジアン径は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて測定される値である。
【0121】
(g)中間層の形成工程
この工程は、形成されたコア粒子の表面に樹脂微粒子Bを凝集、融着させることにより、中間層を被覆させて、1次コアシェル粒子を形成する。
具体的には、水系媒体中にコア粒子が分散されてなる水系分散液中において、凝集剤の存在下において樹脂微粒子Bの水系分散液を添加し、樹脂微粒子Bをコア粒子表面に凝集させて、さらに加熱によって融着させることにより行われる。
凝集剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを挙げることができ、そのため、新たに凝集剤を添加しなくてもよい。また、樹脂微粒子Bの付着の進行速度を調整する目的で、新たに凝集剤を添加することもできる。新たに添加される凝集剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを使用することができ、この新たに添加される凝集剤は、上記の工程において使用される凝集剤と同じものであっても異なるものであってもよい。
【0122】
融着温度は、例えば70〜95℃であることが好ましい。
【0123】
この工程における樹脂微粒子Bの添加割合は、最終的に得られるトナー粒子中において、コア粒子と中間層との質量比が20:1〜10:3となるように調整されることが好ましい。
【0124】
中間層の層厚は、例えば0.1〜0.3μmであることが好ましい。
中間層の層厚は、前述の構造観察で得られたTEM画像により測定される。
【0125】
1次コアシェル粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で5.0〜7.0μmの範囲にあることが好ましい。
1次コアシェル粒子の体積基準のメジアン径は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて測定される値である。
【0126】
(h)シェル層の形成工程
この工程は、形成された1次コアシェル粒子の表面に非晶性樹脂微粒子を凝集、融着させることにより、シェル層を被覆させて、トナー粒子を形成する。
具体的には、水系媒体中に1次コアシェル粒子が分散されてなる水系分散液中において、凝集剤の存在下において非晶性樹脂微粒子の水系分散液を添加し、非晶性樹脂微粒子を1次コアシェル粒子表面に凝集させて、さらに加熱によって融着させることにより行われる。
凝集剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを挙げることができ、そのため、新たに凝集剤を添加しなくてもよい。また、非晶性樹脂微粒子の付着の進行速度を調整する目的で、新たに凝集剤を添加することもできる。新たに添加される凝集剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを使用することができ、この新たに添加される凝集剤は、上記の工程において使用される凝集剤と同じものであっても異なるものであってもよい。
【0127】
融着温度は、例えば70〜95℃であることが好ましい。
【0128】
この工程における非晶性樹脂微粒子の添加割合は、最終的に得られるトナー粒子中において、非晶性樹脂とビニル系重合体Bとの質量比が1:2〜3:1となるように調整されることが好ましい。
【0129】
シェル層の層厚は、例えば0.1〜0.4μmであることが好ましい。
このシェル層の層厚は、前述の構造観察で得られたTEM画像により測定される。
【0130】
(i)熟成工程
この工程は、必要に応じて行われるものであって、当該熟成工程においては、凝集・融着工程によって得られた会合粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させる。
熟成処理は、具体的には、トナー粒子が分散された系を加熱撹拌することにより、トナー粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間などにより調整することにより、行われる。
【0131】
(j)冷却工程
この工程は、トナー粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理の条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法などを例示することができる。
【0132】
(k)濾過・洗浄工程
この工程は、冷却されたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去して洗浄する工程である。
固液分離には、特に限定されずに、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などを用いることができる。また、洗浄においては、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄することが好ましい。
【0133】
(l)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する工程であり、一般的に行われる公知のトナー粒子の製造方法における乾燥工程に従って行うことができる。
具体的には、トナーケーキの乾燥に使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
乾燥されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥されたトナー粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、その凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
【0134】
(m)外添剤の添加工程
この工程は、トナー粒子に対して外添剤を添加する場合に必要に応じて行う工程である。
上記のトナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加した状態で使用してもよい。
外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
これらの外添剤の添加量は、その合計の添加量がトナー粒子100質量部に対して好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部とされる。
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を使用することができる。
【0135】
以上のトナーにおいては、コア粒子表面に中間層およびシェル層が被覆されてなる構成であり、コア粒子のドメイン相の平均径が特定の範囲であることにより、基本的に、コア粒子を構成するビニル系重合体Aおよび結晶性ポリエステル樹脂が熱定着時において相溶が進行しやすい状態で含有されていることから、熱定着時において結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体Aの可塑化を効率的に促進し、優れた低温定着性が得られ、また、中間層を構成するビニル系重合体Bが結晶性ポリエステル樹脂と相溶しにくいものであることから、熱定着前において結晶性ポリエステル樹脂がシェル層中に滲み出さず、相溶化を防止することができるので、耐熱保管性を確保することができる。また、中間層上にさらに非晶性樹脂によるシェル層が形成されていることから、より一層の耐熱保管性を得ることができる。
また、ビニル系重合体Aと結晶性ポリエステル樹脂とが相溶しやすいものであることから、熱定着後の冷却時においても、結晶性ポリエステル樹脂がビニル系重合体A中に相溶している状態または結晶化の程度が小さい状態となるため、光沢ムラの原因となる結晶化度のバラツキを抑制することができ、光沢均一性の高い画像を形成することができる。
さらに、離型剤がコア粒子に含有されている場合においては、離型剤との親和性が比較的高い結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に離型剤がトナー外に染み出すことに伴って、離型剤と共にトナー外に染み出しやすくなる。従って、結晶性ポリエステル樹脂がトナー界面を超えて画像支持体上のトナー層全体をより効率よく可塑化するために、低温定着性をさらに向上させることができる。また、離型剤がコア粒子に含有されている場合においては、離型剤とコア粒子の樹脂との親和性よりも、離型剤と中間層の樹脂との親和性の方が高いため、離型剤は、トナー粒子のより表面側(中間層側)に偏在することとなり、熱定着時において離型剤が滲み出しやすく、良好な定着分離性が得られる。また、離型剤が中間層またはシェル層に含有されている場合においては、離型剤がコア粒子、中間層およびシェル層のいずれに含有されていても、良好な定着分離性が得られる。従って、離型剤がコア粒子、中間層およびシェル層のいずれに含有されていても、良好な定着分離性が得られる。
【0136】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0137】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
樹脂微粒子、着色剤微粒子、結晶性ポリエステル樹脂微粒子および非晶性樹脂微粒子の体積基準のメジアン径の測定、並びに樹脂微粒子および結晶性ポリエステル樹脂の分子量の測定は、それぞれ上述の通りに行った。
また、樹脂微粒子、非晶性樹脂およびトナーのガラス転移点(Tg)の測定、結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定、非晶性樹脂の軟化点(Tsp)の測定は、それぞれ上述の通りに行った。
さらに、ドメイン相の平均径の測定は、それぞれ上述の通りに行った。
さらにまた、各樹脂のカルボキシ基濃度またはエステル基濃度は、それぞれ上述の通りに算出した。
【0138】
〔トナーの製造例1〕
トナー〔1〕を以下の手順で製造した。
(1)ビニル系重合体Aによる樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕の調製
(2)ビニル系重合体Bによる樹脂微粒子の水系分散液〔B1〕の調製
(3)着色剤による着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕の調製
(4)結晶性ポリエステル樹脂による結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔P1〕の調製
(5)非晶性樹脂による非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔S1〕の調製
(6)トナー粒子〔1〕の作製(コア粒子の形成〜外添剤の添加)
【0139】
(1)樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕の調製
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた1Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシル硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水560質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下300rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム1.9質量部をイオン交換水37質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温80℃とし、下記単量体混合液を1時間かけて滴下後、90℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(a1)を調製した。
スチレン 113質量部
n−ブチルアクリレート 32質量部
メタクリル酸 13.6質量部
【0140】
(第二段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7.4質量部をイオン交換水970質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液(a1)285質量部と、下記単量体混合液を90℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック(株)製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
スチレン 284質量部
n−ブチルアクリレート 92質量部
メタクリル酸 15.7質量部
n-オクチル−3−メルカプトプロピオネート 4.2質量部
「HNP−0190」(日本精蝋社製) 120質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6.6質量部をイオン交換水126質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(a2)を調製した。
【0141】
(第三段重合)
さらに、過硫酸カリウム12質量部をイオン交換水290質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、
スチレン 390質量部
n−ブチルアクリレート 180質量部
メタクリル酸 30質量部
n-オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8.6質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル系重合体による樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕を得た。
得られた水系分散液〔A1〕について、樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)は50℃、平均粒径(体積基準のメジアン径)は220nm、重量平均分子量(Mw)は29,500であった。
【0142】
(2)樹脂微粒子の水系分散液〔B1〕の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた1Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシル硫酸ナトリウム1.5質量部をイオン交換水550質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下300rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム1.9質量部をイオン交換水36質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温80℃とし、下記単量体混合液を1時間かけて滴下後、90℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、ビニル系重合体による樹脂微粒子の水系分散液〔B1〕を得た。
得られた水系分散液〔B1〕について、樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)は55℃、平均粒径(体積基準のメジアン径)は161nm、重量平均分子量(Mw)は31,500であった。
スチレン 110質量部
n−ブチルアクリレート 30質量部
メタクリル酸メチル 13.6質量部
n-オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.2質量部
【0143】
(3)着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック(リーガル330R:キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕を調製した。
得られた水系分散液〔Bk〕について、着色剤微粒子の粒径は110nmであった。
【0144】
(4)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔P1〕の調製
1,6−ヘキサンジオール(分子量118.17)2008質量部、セバシン酸(分子量202.25)3438質量部を三口フラスコに入れ、触媒としてジブチル錫オキサイド4質量部、ハイドロキノン2質量部を加えて、窒素ガス雰囲気下160℃で5時間反応させた。さらに8.3kPaにて所望の融点の樹脂が得られるまで反応させて結晶性ポリエステル樹脂〔p1〕を合成した。得られた結晶性ポリエステル樹脂〔p1〕の融点(Tm)は65℃、数平均分子量(Mn)は4,000であった。
次いで、結晶性ポリエステル樹脂〔p1〕30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂〔p1〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm
2 の条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nm、固形分量が30質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔P1〕を調製した。
【0145】
(5)非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔S1〕の調製
(5−1)非晶性樹脂〔s1〕の合成
下記のビニル系重合セグメントを形成するためのビニル系単量体、両反応性モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
アクリル酸 10質量部
スチレン 80質量部
ブチルアクリレート 20質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部
また、下記のポリエステル重合セグメントを形成するためのモノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れた。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 1.43質量部
付加重合反応温度である170℃まで昇温し、撹拌下で先の滴下ロートよりビニル系単量体を90分間で滴下した後、60分間熟成を行った。
その後、エステル化触媒としてオクチル酸スズ40gを加え、235℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応させた。
次に、200℃まで冷却したのち減圧下(20kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶性樹脂〔s1〕を得た。
この非晶性樹脂〔s1〕のガラス転移点(Tg)は60℃、軟化点(Tsp)は105℃であった。
【0146】
(5−2)非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔S1〕の調製
得られた非晶性樹脂〔s1〕100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径が180nmである非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔S1〕を調製した。
【0147】
(6)トナー粒子〔1〕の作製
(6−1)コア粒子の形成
撹拌装置、冷却管および温度センサーを備えた1Lのステンレス製反応器に、樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕を273質量部、イオン交換水321質量部、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕を70質量部(固形分換算)投入し、撹拌しながら5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。
次いで、撹拌速度300rpmでの撹拌下、塩化マグネシウム・6水和物14.5質量部をイオン交換水14.5質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下し、内温を75℃まで昇温させた。昇温完了後に、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔P1〕63質量部を20分間かけて滴下した。
滴下完了後、撹拌速度100rpmでの撹拌下、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製、アパーチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、平均粒径が5.5μmに到達した時点で撹拌速度を300rpmへと上昇させた。
【0148】
(6−2)中間層の形成〜冷却
次に、樹脂微粒子の水系分散液〔B1〕42質量部を10分かけて滴下し、樹脂微粒子がコア粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。
少量の反応溶液を遠心分離機により遠心分離を行い上澄みが透明になった時点で、非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔S1〕106質量部を20分間かけて滴下し、非晶性樹脂微粒子が1次コアシェル粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。
再び遠心分離後の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム27質量部をイオン交換水111質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.940になった時点で内温を25℃まで冷却し、トナー粒子の水系分散液を得た。
【0149】
(6−3)濾過・洗浄〜外添剤の添加
トナー粒子の水系分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥した。
このトナー粒子に疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー〔1〕を作製した。
【0150】
以上のようにして得られたトナー〔1〕について、酸化ルテニウム(VIII)により染色したトナー粒子を切断し、トナー粒子断面を電界放射型透過電子顕微鏡「FE−TEM(型番JEM−2010F)」(JEOL社製)で観察した。
TEM画像において、濃色の最外層が観察され、これをシェル層と判断した。また、中心円部分に薄色の微粒子が観察され、結晶性ポリエステル樹脂は酸化ルテニウム(VIII)に染色されにくいので、これをドメイン相と判断した。さらに、最外層と中心円部分の間に、薄色の微粒子が存在しない層が観察され、これを中間層と判断した。
【0151】
〔トナーの製造例2〜15〕
トナーの製造例1において、水系分散液〔A1〕、水系分散液〔P1〕、水系分散液〔B1〕および水系分散液〔S1〕の種類および添加量を表1に従って変更したことの他は同様にして、トナー〔2〕〜〔15〕を得た。得られたトナーについて、トナー〔1〕と同様に酸化ルテニウム(VIII)により染色したトナー粒子を切断し、走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察した。
【0152】
表1において、水系分散液〔A2〕〜〔A4〕は、上記(1)樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕の調製において、単量体の処方を表2に従って変更して得られたものである。
また、水系分散液〔P2〕は、上記(4)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔P1〕の調製において、単量体の処方を表3に従って変更して得られたものである。
さらに、水系分散液〔B2〕〜〔B3〕は、上記(2)樹脂微粒子の水系分散液〔B1〕の調製において、単量体の処方を表4に従って変更して得られたものである。
さらにまた、水系分散液〔S2〕〜〔S4〕は、上記(5)非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔S1〕の調製において、単量体の処方を表5に従って変更して得られたものである。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
〔現像剤の製造例1〜15〕
トナー〔1〕〜〔15〕の各々に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径が60μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%となるように添加し、V型混合機によって混合することにより、現像剤〔1〕〜〔15〕を製造した。
【0159】
〔実施例1〜9、比較例1〜6〕
(1)低温定着性(アンダーオフセット性)の評価
アンダーオフセットとは、定着機を通過する際に与えられた熱によるトナー層の溶融が不十分であるために記録紙等の転写材から剥離してしまう画像欠陥をいう。
市販のカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)の現像装置に、上記で作製した現像剤を順次装填して評価を行った。なお、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造した。評価紙として「NPI(128g/m
2 )」(日本製紙製)を用い、トナー付着量8g/m
2 のベタ画像を定着速度300mm/secで定着上ベルトの温度を110〜200℃、定着下ローラの温度を100℃に設定し5℃毎の水準で定着させた時に、アンダーオフセットが発生しない定着上ベルトの定着下限温度を評価し、低温定着性の指標とした。この定着下限温度が低ければ低い程、定着性が優れており、140℃未満を合格とした。
【0160】
(2)耐熱保管性
トナー〔1〕〜〔15〕について、トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で57.5℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量を測定し、トナー凝集率を算出した。トナー凝集率が15%未満を合格とした。
トナー凝集率は下記式により算出される値である。
トナー凝集率(%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
【0161】
(3)定着分離性
改造した「bizhub C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を使用し、一晩常温常湿環境(NN環境:25℃、50%RH)で調湿した「金藤85g/m
2 T目」(王子製紙社製)における先端余白5mm、定着温度195℃/120℃全ベタ画像を付着量を変化させて画出し、紙詰まり(ジャム)が発生した直前のベタ画像の付着量(g/m
2 )を測定し、それを分離限界付着量とし定着分離性能の尺度とした。この値が大きい方が分離性能が良い。なお、常温常湿環境(NN環境:25℃、50%RH)で実施する。分離限界付着量が3.5g/m
2 以上を合格とした。
【0162】
(4)光沢均一性
前述の低温定着性評価試験と同様の方法において、定着上ベルトの温度をアンダーオフセットの発生した温度よりも20℃高い温度水準して得られた定着画像を用い、光沢均一性を評価した。光沢均一性は、目視およびルーペを用いた観察にて光沢ムラの有無を観察し、下記のような指標でランク評価した。
5:顕微鏡にて、100倍の倍率で観察しても光沢のムラが全く検知できない。
4:20倍のルーペで拡大して観察しても、光沢のムラがまったく検知できない。
3:20倍のルーペで拡大するとわずかに光沢ムラが検知できるが、目視では全く検知できず、画像品質に問題がないレベル。
2:目視観察でわずかに光沢ムラが検知できる。
1:目視で光沢ムラを明瞭に検知できる。
【0163】
【表6】