(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可変シール部が、差動排気シール部に近接して配置され、前記可変シールが前記軸体の外周面に対して接触したときに、前記可変シール部と前記差動排気シール部との間に形成された密閉空間の容積が最小となることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造装置などにおいては、真空雰囲気に維持したプロセス室内で、ワークをテーブルに載置して移動・回転させることにより、その加工処理や検査などが行われている。ここで、近年においては製造される半導体がより微細化されたことに伴い、プロセス室内の真空度もより高める必要が生じてきている。
ここで、プロセス室内に、テーブルを移動・回転させる駆動装置を設けることは、プロセス室の大型化を招き、また発塵の機会も増えるので好ましくない。そこで、駆動装置をプロセス室外に設けることが考えられる。このような場合、駆動装置とプロセス室内のテーブルとを連結する連結部材が必要となるが、そのためプロセス室を覆う筐体には、連結部材を貫通させる開口が必要となり、かかる開口と連結部材とを密封してプロセス室内の雰囲気を維持するシールが必要となる。
【0003】
このようなシールの一態様として、差動排気シールが知られている。差動排気シールとは、連結部材と筐体の排気面との微小な間隙にある気体を排気することにより、連結部材と筐体との対向面間が非接触の状態で、対向面を挟む両側の雰囲気(例えば大気圧と高真空)を一定の状態に保つように機能するものをいう。差動排気シールは、外部ポンプに吸引されてその機能を発揮するものであるため、差動排気シールと外部ポンプとを接続する配管が本来的に必要となる。このような差動排気シールを用いた回転導入機としては、特許文献1に示す技術が開示されている。
【0004】
図5は、差動排気シールを備えた回転導入機の従来の構成を示す軸方向に沿う断面図である。
図5に示すように、ハウジング100には、その内部(
図5中右側)に密閉空間(プロセス室)Pが形成されている。そして、開口部101を外側(
図5中左側)から覆うようにして、回転導入機1が配置されている。回転導入機1は、本体部10と、回転軸20と、支持部30と、差動排気シール部50とを有する。回転軸20は、密閉空間Pに連通するハウジング100の一面に設けられた開口部101を介して延在するように挿入されている。回転軸20は、支持部30によって、本体部10に対して回転自在に支持されている。
【0005】
また、支持部30は、回転軸20の回転軸方向に隔離配置された第1の転がり軸受31及び第2の転がり軸受32を備える。そして、第1の転がり軸受31と第2の転がり軸受32との間であって、回転軸20と本体部10との間には微小スキマが形成されている。この微小スキマは、例えば、数十μm以下(好ましくは5〜10μm程度)のスキマをいう。
【0006】
差動排気シール部50は、本体部10と回転軸20との間をシールする部材であり、差圧室11と、該差圧室11に連通する第1の配管51と、該第1の配管51を介して差圧室11内を排気する排気部(図示せず)とを備える。この排気部は例えば、真空ポンプである。差圧室11は、本体部10の第1の転がり軸受31と第2の転がり軸受32との間に回転軸20の外周面に沿った凹部として形成された空間である。
このように構成された回転導入機1においては、正常時、すなわち、排気部が適正に稼働して、差圧室11内を低圧状態にしている状態では、差圧室11内で本体部10と回転軸20との非接触状態を維持することができる。
【0007】
また、特許文献2には、軸体を静圧軸受により軸方向に移動自在に支持すると共に、差動排気シールを備えた構造が開示されている。
さらに、
図6に示すように、複数の差動排気シール50と、軸体20を軸方向に移動自在に支持する静圧軸受30と、中空のパッキン等で構成される可変シール部60とがこの順で上記軸方向に密閉空間Pから離れる向きに本体部10に設けられた駆動装置2が知られている。なお、
図6において「S」は静圧軸受30におけるエア供給口であり、「E」は静圧軸受30及び差動排気シール50における排気口である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術においては、差動排気シールの排気が停止(意図的な停止以外の停電、装置の異常停止など)した際には、周囲ガスが密閉空間内に流入するなど、シール性能が著しく低下する可能性があり、検討の余地があった。
さらに、このような事象について、様々な技術が検討されているが、圧送ポンプなどの新たな駆動源を設けて解決する技術も散見され、部品点数も多く、構成が複雑化するという点で検討の余地があった。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、簡素な構成で、差動排気シールの排気が予期せぬ停止をしても、シール性能の著しい低下を防ぐことができる駆動装置、回転導入機、搬送装置及び半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の駆動装置のある実施形態は、密閉空間が形成されたハウジングに取り付けられる本体部と、
上記密閉空間に連通する上記ハウジングの開口部を介して延在する軸体と、
上記本体部に対して上記軸体を直動自在に支持し、上記軸体と上記本体部との間に微小スキマが形成された支持部と、
上記本体部と上記軸体との間をシールするシール部とを有し、
上記シール部は、差動排気シール部と、該差動排気シール部と上記支持部との間に設けられた可変シール部とを有し、
上記差動排気シール部は、上記軸体の外周面に沿った凹部として形成された差圧室と、該差圧室に連通する第1の配管と、該第1の配管を介して上記差圧室内を排気する排気部とを備え、
上記可変シール部は、上記本体部と上記軸体との間に設けられ、内部と外部との差圧により膨張可能とされた中空状の可変シールと、第1の配管に連通する第2の配管とを備え、
上記排気部によって上記差圧室の内部の圧力が低い状態のときに、上記可変シールが上記軸体の外周面に対して非接触に維持され、上記差圧室の内部の圧力が外圧にほぼ同じ状態のときに、上記可変シールが上記軸体の外周面に対して接触している。
【0011】
ここで、上記駆動装置は、上記支持部が静圧軸受であることが好ましい。
また、上記駆動装置は、上記可変シール部が、差動排気シール部に近接して配置され、上記可変シールが上記軸体の外周面に対して接触したときに、上記可変シール部と上記差動排気シール部との間に形成された密閉空間の容積が最小となることが好ましい。
また、上記駆動装置は、上記可変シールが、高圧の気体を供給することで断面が膨張するシールであることが好ましい。
また、本発明の半導体製造装置のある実施形態は、上記いずれかに記載の駆動装置を備える。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の回転導入機のある実施形態は、密閉空間が形成されたハウジングに取り付けられる本体部と、
上記密閉空間に連通する上記ハウジングの開口部を介して延在する回転軸と、
上記本体部に対して上記回転軸を回転自在に支持し、上記回転軸の回転軸方向に隔離配置された第1の軸受及び第2の軸受を備え、第1の軸受と第2の軸受との間であって、上記回転軸と上記本体部との間に微小スキマが形成された支持部と、
上記本体部と上記回転軸との間をシールするシール部とを有し、
上記シール部は、差動排気シール部と、可変シール部とを有し、
上記差動排気シール部は、上記本体部の上記第1の軸受と上記第2の軸受との間に上記回転軸の外周面に沿った凹部として形成された差圧室と、該差圧室に連通する第1の配管と、該第1の配管を介して上記差圧室内を排気する排気部とを備え、
上記可変シール部は、上記本体部と上記回転軸との間に設けられ、内部と外部との差圧により膨張可能とされた中空状の可変シールと、第1の配管に連通する第2の配管とを備え、
上記排気部によって上記差圧室の内部の圧力が低い状態のときに、上記可変シールが上記回転軸の外周面に対して非接触に維持され、上記差圧室の内部の圧力が外圧にほぼ同じ状態のときに、上記可変シールが上記回転軸の外周面に対して接触している。
【0013】
ここで、上記回転導入機は、第1の配管との連通を切り替える第1のバルブと、ベント用の第2のバルブとが第2の配管に設けられ、第1の配管内の圧力を検知するセンサが設けられ、
第1の配管内の圧力が上昇し、所定以上の圧力となったことを上記センサが検知したことを契機として、開いている第1のバルブを閉じ、上記可変シールの内部の圧力を外圧とほぼ同一となるように、第2のバルブを開ける制御部が設けられてもよい。
【0014】
また、上記回転導入機は、第1の配管に第3のバルブを介してタンクが設けられ、第1の配管と上記排気部との連通を切り替える第4のバルブが設けられ、
上記制御部は、第1の配管内の圧力が上昇し、所定以上の圧力となったことを上記センサが検知したことを契機として、第3のバルブを開けた状態を維持しつつ、開いている第4のバルブを閉じるようにしてもよい。
また、上記回転導入機は、上記可変シールが、高圧の気体を供給することで断面が膨張するシールであることが好ましい。
また、本発明の搬送装置のある実施形態は、上記いずれかに記載の回転導入機を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成で、差動排気シールの排気が予期せぬ停止をしても、シール性能の著しい低下を防ぐことができる駆動装置、回転導入機、搬送装置及び半導体製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る回転導入機及びそれを備えた搬送装置の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る回転導入機及びそれを備えた搬送装置の第1の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正常時における軸方向に沿う断面図、(b)は異常時における軸方向に沿う断面図である。ここで、
図1(a),(b)においては、説明の便宜上、後述する可変シール61のハッチングは省略している。
<構成>
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の回転導入機1は、本体部10と、回転軸20と、支持部30と、シール部40とを有する。
【0018】
<本体部及び回転軸>
本体部10は、高真空状態に維持される密閉空間(プロセス室)Pが内部に形成されたハウジング100に取り付けられる。ここで、本実施形態の搬送装置は、上記回転導入機1とハウジング100とを有しており、被搬送物を搬送するものである。
回転軸20は、密閉空間Pに連通するハウジング100のある面に設けられた開口部101を介して延在するように挿入されている。
回転軸20は、支持部30によって、本体部10に対して回転自在に支持されている。そして、開口部101を覆うようにして、ハウジング100の大気側の外壁に回転導入機1が取り付けられている。
【0019】
<支持部>
支持部30は、本体部10に対して回転軸20を回転自在に支持する部材である。支持部30は、回転軸20の回転軸方向に隔離配置された第1の軸受31及び第2の軸受32を備える。第1の軸受31及び第2の軸受32は、例えば、転がり軸受である。そして、第1の軸受31と第2の軸受32との間であって、回転軸20と本体部10との間には微小スキマが形成されている。この微小スキマは、例えば、数十μm以下(好ましくは5〜10μm程度)のスキマをいう。
【0020】
<シール部>
シール部40は、本体部10と回転軸20との間をシールする部材である。シール部40は、差動排気シール部50と、可変シール部60とを有する。
[差動排気シール部]
差動排気シール部50は、差圧室11と、該差圧室11に連通する第1の配管51と、該第1の配管51を介して差圧室11内を排気する排気部(図示せず)とを備える。この排気部は例えば、真空ポンプである。差圧室11は、本体部10の第1の軸受31と第2の軸受32との間に回転軸20の外周面に沿った凹部として形成された空間である。
【0021】
[可変シール部]
一方、可変シール部60は、本体部10と回転軸20との間に設けられ、内部と外部との差圧により膨張可能とされた中空状の可変シール61と、第1の配管51に連通する第2の配管62とを備える。この可変シール61は、回転軸20の外周面を囲う態様の中空の円環形状をなしており、可撓性の材料よりなる。ここで、可変シール61としては、バルカー工業製インフラートシール(登録商標)に代表される中空のパッキンなどが用いられる。
【0022】
<動作>
このように構成された回転導入機1においては、正常時、すなわち、排気部が適正に稼働して、差圧室11内を低圧(例えば、真空)にしている状態では、
図1(a)に示すように、差圧室11内で本体部10と回転軸20との非接触状態を維持することができる。そして、この正常時には、該可変シール61の内部に接続された第2の配管62が第1の配管51に連通しているので、
図1(a)に示すように、可変シール61は収縮して非接触シールの態様をなしている。
【0023】
一方、
図1(b)に示すように、排気部の異常時などで、差圧室11の低圧状態が損なわれた場合には、第2の配管62が第1の配管51に連通しているので、可変シール61の内部の圧力は、外部の圧力と同一になる。
このように、シール部40として、可変シール61が設けられ、この可変シール61の内部に流体を導入可能な第2の配管62が第1の配管51に連通していることによって、上記排気部によって差圧室11の内部の圧力が低い状態のときに、可変シール61が回転軸20の外周面に対して非接触に維持される。一方、差圧室11の内部の圧力が外圧にほぼ同じ状態のときには、可変シール61が回転軸20の外周面に対して接触する。
【0024】
したがって、簡素な構成で、差動排気シールの排気が予期せぬ停止をしても、圧送ポンプなどの駆動源を新たに設けることなく、シール性能の著しい低下を防ぐことができる回転導入機を提供することができる。
ここで、差圧室11と可変シール61との間(第1の配管51及び第2の配管62の内部)に存在する気体は、異常時に差圧室11に流入する気体となるため、この流入量が多いと、密閉空間Pの圧力変化が大きくなる。
したがって、可変シール61は、本実施形態のように、差圧室11の近傍に配置することが好ましい。
【0025】
(第2の実施形態)
図2は、本発明に係る回転導入機及びそれを備えた搬送装置の第2の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正常時における軸方向に沿う断面図、(b)は異常時における軸方向に沿う断面図である。ここで、
図2(a),(b)においては、説明の便宜上、後述する可変シール61のハッチングは省略している。また、
図2(a),(b)中の第1のバルブ63及び第2のバルブ64の表示は、
図2(a)においては、第1のバルブ63が開かれており、第2のバルブ64が閉じられていることを示し、
図2(b)においては、第1のバルブ63が閉じられており、第2のバルブ64が開かれていることを示す。また、
図2(a),(b)においては、第1の配管51及び第2の配管62の一部と、後述するセンサ52、第1のバルブ63、第2のバルブ64、及び制御部70とを、ブロック表示している。なお、本実施形態の回転導入機及びそれを備えた搬送装置は、第2の配管の態様が上述した第1の実施形態と異なるだけであるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
図2(a),(b)に示すように、本実施形態の回転導入機1は、第2の配管62に、第1の配管51との連通を切り替える第1のバルブ63と、ベント用の第2のバルブ64とが設けられている。この第2のバルブ64は、例えば、外部空間に開放されている。また、第1の配管51内の圧力を検知するセンサ52も設けられている。このセンサ52は、制御部70に信号伝達可能に接続され、制御部70は、この信号に基づいて、第1のバルブ63及び第2のバルブ64の開閉を制御可能に第1のバルブ63及び第2のバルブ64に接続されている。
【0027】
このように構成された本実施形態の回転導入機1においては、
図2(a)に示すように、第1の配管51内の圧力が上昇し、所定以上の圧力となったことをセンサ52が検知したときに、該センサ52が制御部70に対して、第1の配管51内の圧力が所定以上の圧力となった旨の信号を発信する。制御部70は、この信号を受信したことを契機として、開いている第1のバルブ63を閉じ、可変シール61の内部の圧力を外圧とほぼ同一となるように、第2のバルブ64を開ける(
図2(b)参照)。
【0028】
ここで、上記「所定以上の圧力」の値(閾値)は、本実施形態の回転導入機1を正常に動作させたときに生じうる第1の配管51の圧力のばらつきの範囲に対して余裕量(例えば50%)などをもたせて設定される。この余裕量は、本実施形態の回転導入機1に求められるシール性能や設置環境などの安定性によって設定され、具体的には、本実施形態の回転導入機1を正常に動作させたときの、(排気)ポンプの安定性、外部の圧力のばらつき、回転導入機の温度変化による熱膨張等によるすきまの変化などによって設定される。例えば、正常時の第1の配管51内の圧力が1000Paを示す場合、上記閾値は1500Paである(大気圧は100000Pa)。
【0029】
このように、第1の配管51内の圧力が上昇し、所定以上の圧力となった異常時(
図2(b)参照)は、第1のバルブ63を閉じた後に、第2のバルブ64を開けることで、可変シール61の内部を外部と同等の圧力にすることができる。すなわち、第1の配管51内の圧力上昇し、所定以上の圧力となった異常時には、膨張した可変シール61が、本体部10と回転軸20との間をシールすることとなり、シール性能の著しい低下を防ぐことができる。
【0030】
なお、制御部70は特別な制御機器である必要はなく、本実施形態の回転導入機1に一般的に備えられるような制御機器である。具体的には、PLCやシーケンサと呼ばれるもので、異常時に回転導入機1をガードするために設置されている制御機器である。また、このような制御部70を用いずとも、リレーを用いた電気回路でもよい。
また、本実施形態により、可変シール61を差動排気シール部の状態によらず、膨張させることができるため、第1の配管51と上記排気部(例えば真空ポンプ)との間に、不図示のバルブを配置することが好ましい。そして、そのバルブを、正常時は開、異常検出時は閉と動作することにより、差動排気シール部50の性能低下を抑制することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図3は、本発明に係る回転導入機及びそれを備えた搬送装置の第3の実施形態における構成を示す図であり、(a)は正常時における軸方向に沿う断面図、(b)は異常時における軸方向に沿う断面図である。ここで、
図3(a),(b)においては、説明の便宜上、後述する可変シール61のハッチングは省略している。また、
図3(a),(b)中の第1のバルブ63及び第2のバルブ64の表示は、
図3(a)においては、第1のバルブ63が開かれており、第2のバルブ64が閉じられていることを示し、
図3(b)においては、第1のバルブ63が閉じられており、第2のバルブ64が開かれていることを示す。また、
図3(a),(b)においては、第1の配管51及び第2の配管62の一部と、後述するセンサ52、第3のバルブ53、第4のバルブ54、タンク55、第1のバルブ63、第2のバルブ64、及び制御部70とを、ブロック表示している。なお、本実施形態の回転導入機及びそれを備えた搬送装置は、第1の配管の態様が上述した第1の実施形態と異なるだけであるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図3(a),(b)に示すように、本実施形態の回転導入機1は、第1の配管51に第3のバルブ53が設けられると共に、その第3のバルブ53を介してタンク55が設けられている。また、第1の配管51と上記排気部との連通を切り替える第4のバルブ54が設けられている。
ここで、上述の第2の実施形態においては、可変シール61と差圧室11との間の空間の気体は、異常時(
図2(b)参照)に差圧室11内に流入し、その後、密閉空間P内に流入する。そして、最終的には、差圧室11の排気溝、配管内と密閉空間P内は同一の圧力になる。
【0033】
この圧力が変化する過程は、差動排気シール部50の排気系に設けられた第4のバルブ54(
図3(a),(b)参照)で仕切られた容積が大きいほど応答が遅くなる傾向にある。
そのために、本実施形態では、タンク55を差動排気シール部50の排気系に設けたものである。
【0034】
このように構成された本実施形態の回転導入機1においては、第1の配管51内の圧力が上昇し、所定以上の圧力となったことをセンサ52が検知したときに、該センサ52が制御部70に対して、第1の配管51内の圧力が所定以上の圧力となった旨の信号を発信する。制御部70は、この信号を受信したことを契機として、第3のバルブ53を開けた状態を維持しつつ、開いている第4のバルブ54を閉じ、開いている第1のバルブ63を閉じ、可変シール61の内部の圧力を外圧とほぼ同一となるように、第2のバルブ64を開ける(
図3(b)参照)。すなわち、本実施形態では、第3のバルブ53は常に開いており、差圧室11と同一の排気配管で排気されているため、タンク55は、常に排気されていることとなる。
【0035】
ここで、本実施形態の変形例として、差動排気シール61の第1の配管51内の圧力が比較的高い(1000Pa以上)場合には、制御部70が、第3のバルブ53を閉じて、密閉空間Pを排気するポンプにてタンク55内を排気してもよい。実際の配管としては、密閉空間Pと上記ポンプとの間の配管を分岐してタンク55へ接続し、排気する。この場合、異常停止時には、制御部70が、分岐した配管に設置された不図示のバルブを閉じるとともに、第4のバルブ54を閉じた後、第3のバルブ53を開とすることで圧力低下を緩やかにすることができる。
【0036】
次に、本発明に係る駆動装置、及びそれを備えた半導体製造装置のある実施形態について図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態の駆動装置及びそれを備えた半導体製造装置の構成を示す図であり、(a)は軸方向に沿う断面図、(b),(c)は可変シール部の動作を示す断面図である。ここで、
図4(a)においては、説明の便宜上、後述する可変シール61のハッチングは省略している。また、
図4(a)中の第1のバルブ63及び第2のバルブ64の表示は、第1のバルブ63が開かれており、第2のバルブ64が閉じられていることを示す。また、
図4(a)においては、第1の配管51及び第2の配管62の一部と、センサ52、第1のバルブ63、第2のバルブ64、及び制御部70とを、ブロック表示している。
【0037】
<構成>
図4に示すように、本実施形態の駆動装置2は、本体部10と、軸体20と、支持部30と、シール部40とを有する。
ここで、本実施形態の駆動装置は、支持部30(後述する静圧軸受33)とシール部40(差動排気シール部50)との間に可変シール部60が配設される構成において上述の回転導入機及び搬送装置と同一の特別な技術的特徴を有するものである。そして、本実施形態の駆動装置は、上述の回転導入機及び搬送装置の回転軸を、直動自在とされた軸体とした点が異なる。
【0038】
<本体部及び軸体>
本体部10は、高真空状態に維持される密閉空間(プロセス室)Pが内部に形成されたハウジング100に取り付けられる。ここで、本実施形態の半導体製造装置は、上記駆動装置2とハウジング100とを有しており、半導体基板を移送等するものである。
軸体20は、密閉空間Pに連通するハウジング100の一面に設けられた開口部101を介して延在するように挿入されている。
軸体20は、支持部30によって、本体部10に対して直動自在に支持されている。そして、開口部101を覆うようにして、ハウジング100の大気側の外壁に駆動装置2が取り付けられている。
【0039】
<支持部>
支持部30は、本体部10に対して軸体20を直動自在に支持する部材である。支持部30は、静圧軸受33であることが好ましい。なお、
図4(a)において「S」は静圧軸受33におけるエア供給口であり、「E」は静圧軸受33における排気口である。
ここで、開口部101から静圧軸受33にかけて、軸体20と本体部10との間には微小スキマが形成されている。この微小スキマは、例えば、数十μm以下(好ましくは5〜10μm程度)のスキマをいう。
【0040】
<シール部>
シール部40は、本体部10と軸体20との間をシールする部材である。シール部40は、差動排気シール部50と、可変シール部60とを有する。
[差動排気シール部]
差動排気シール部50は、複数の差圧室11と、該差圧室11のそれぞれに連通する複数の第1の配管51と、該複数の第1の配管51を介して差圧室11内を排気する排気部(図示せず)とを備える。この排気部は例えば、真空ポンプである。差圧室11は、本体部10の開口部101から静圧軸受33にかけて軸体20の外周面に沿った凹部として形成された空間である。
【0041】
[可変シール部]
一方、可変シール部60は、本体部10と軸体20との間に設けられ、内部と外部との差圧により膨張可能とされた中空状の可変シール61と、該可変シール61に最も近い配管51に連通する第2の配管62とを備える。また、可変シール61は、軸体20の軸方向に沿って、差動排気シール部50と静圧軸受33との間に配設される。
【0042】
この可変シール61は、高圧の気体(圧縮気体)を供給することで断面が膨張する、いわゆる風船状のシール、あるいは、周囲空間よりも内部の圧力を低くすることで、変形により通常のシールの接触を回避し、シールとして機能する場合には、周囲空間とシール内部とを連通して断面が通常状態(変形が開放される)にてシールされる構造を有するシールが好ましい。
【0043】
本実施形態の駆動装置2においては、高いシール性能を発揮するために、差圧室11が軸方向に3段に配置された構造を採用した。そして、可変シール61により高いシール性能を発揮するため、高圧の気体を供給することで断面が膨張する、いわゆる風船状のシールを採用することが本実施形態の可変シール61としてより好ましい。
この中空状の可変シール61内の圧力を、
図4(b),(c)に示すように、差動排気シール部50の排気系の状態に応じて制御することで、差動排気シール部50の排気が停止する段階でシール効果を発揮する。
【0044】
本実施形態のように、高圧の気体を供給する構成では、第1のバルブ63は常に閉じた状態として、差動排気シール部50の排気系の状態に応じて、つまり、センサ52にて検知された圧力情報に基づいて、制御部70が第2のバルブ64を開閉する。具体的には、第2のバルブ64は正常時において閉じている。センサ52によって異常を検知した場合には、その検知を受けて、制御部70が、圧縮気体源(図示せず)に接続された第2のバルブ64を開として、可変シール61を膨張させる。
【0045】
次に、可変シール61の内部を周囲空間よりも内部の圧力を低くすることで、通常のシールの接触を回避する構成に関して説明する。本実施形態の駆動装置2は、
図4(a)に示すように、第2の配管62に、第1の配管51との連通を切り替える第1のバルブ63と、ベント用の第2のバルブ64とが設けられている。この第2のバルブ64は、例えば、外部空間に開放されている。また、複数の第1の配管51内、及び第2の配管62内のそれぞれの圧力を検知するセンサ52も設けられている。すなわち、センサ52がそれぞれの配管内の状態を検出できるようになっている。このセンサ52は、制御部70に信号伝達可能に接続され、制御部70は、この信号に基づいて、第1のバルブ63及び第2のバルブ64の開閉を制御可能に第1のバルブ63及び第2のバルブ64に接続されている。
【0046】
このように構成された本実施形態の駆動装置2においては、第1の配管51内の圧力が上昇し、所定以上の圧力となったことをセンサ52が検知したときに、該センサ52が制御部70に対して、第1の配管51内の圧力が所定以上の圧力となった旨の信号を発信する。制御部70は、この信号を受信したことを契機として、開いている第1のバルブ63を閉じ、可変シール61の内部の圧力を外圧とほぼ同一となるように、第2のバルブ64を開ける。
【0047】
ここで、可変シール部61は、差圧室11の近傍に配置されることが好ましい。すなわち、この可変シール61の配置は、差圧室11と可変シール61との間の空間の容積が最小限となるように設定されることが好ましい。これにより、上記空間の気体が、機能を停止した差圧室11を通過してプロセス室Pへ流入することを防ぐ。このような構成は、支持部30が高圧空間を形成し、さらに連通する配管内にも気体が存在するなど、高圧気体が存在する静圧軸受33において特に大きな効果を奏する構成である。
【0048】
このように、本実施形態では、差動排気シール部50と支持部30との間に可変シール部60を設けたので、差動排気シール部50による排気が停止した際に、支持部30(静圧軸受33)の周囲の気体が密閉空間P内やシール部40に流入することを防ぎ、結果として密閉空間P内の圧力上昇を最小限にとどめることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。