【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1及び特許文献2には、切断に適するソーダライム系の化学強化ガラスが開示されている。
しかし、特許文献1では、化学強化ガラスの性質として、表面硬度のみが着目されており、化学強化ガラスの重要な性質である表面圧縮応力及び圧縮応力層の深さは認識されていない。
一方、特許文献2では、表面圧縮応力及び圧縮応力層の深さについて述べられているが、表面圧縮応力の値は汎用的な化学強化ガラス品のそれと同等レベルであり、特許文献2の教示では、ソーダライムガラスの表面圧縮応力を大幅に向上させ難い。
【0015】
また、特許文献3における化学強化ガラスの強度を向上させるための本質的な特徴は、前段処理として、ガラス中に最も多く含まれるナトリウムイオンと同じナトリウムイオンのみを含む塩にガラス物品を接触させるというものである。この手法では、前段処理によって、ガラス表面層の交換されるべきナトリウムイオンの量が増大することから、後段処理においてナトリウムイオンとカリウムイオンとを交換させることにより生じる残留圧縮応力が大きくなる。本発明者らは、特許文献3の教示に基づき、化学強化ガラスの強度向上及び切断性について検討したところ、いくつかの克服すべき点があるとの知見を見出すに至った。
すなわち、後段のナトリウムイオンとカリウムイオンとを交換させる処理中に生じる応力緩和を減少させる点に依然として改善の余地があること、さらには、強度向上がなされた化学強化ガラスの切断性が未だ未検討であるということである。
加えて、前段処理によって、ガラス表面層の交換されるべきナトリウムイオンの量は増大するが、それにより、従来の1段階処理のみの化学強化ガラスと同等の圧縮応力層の深さを得ようとした場合、処理に要する時間が長くなる傾向にある。
さらに、特許文献3の教示に基づくと、過剰のナトリウムイオンの接触等により、ガラス表面が白濁する可能性が高くなる。
【0016】
特許文献4には、強度を向上させることが可能な化学強化の方法が開示されている。
しかしながら、特許文献4に記載されている化学強化の方法を満たす条件は、極めて膨大な組み合わせである。また、強度向上のみを課題とし、化学強化後の切断性については考慮されていない。
なお、特許文献4に記載されている実施例1の条件で作製したソーダライム系の化学強化ガラスは、切断が困難であるという問題があった。また、実施例1の条件では、前段処理及び後段処理の合計時間が非常に長く、現実的な量産に見合っていない。
【0017】
特許文献5及び特許文献6には、ソーダライム系とは別であり、化学強化に適するガラス(アルミノシリケートガラス)の化学組成が開示されている。
一般的に、ソーダライムガラスは、窓ガラス及びガラスビン等の組成として古くから用いられているものであり、安価で大量生産に向くのであるが、ガラス表面層のイオン交換現象を利用する化学強化法に適しているわけではない。そこで、アルミノシリケートガラスにおいては、イオン交換効率を向上させるAl
2O
3を増やし、また、Na
2OとK
2Oとのアルカリ金属酸化物の成分比及び/又はMgOとCaOとのアルカリ土類金属酸化物の成分比の調整がなされているなど、ソーダライムガラスと比較して、高いイオン交換効率を有するように設計され、化学強化法に最適化されているという特徴を有する。このように、アルミノシリケートガラスでは、ソーダライムガラスと比較して、イオン交換効率に優れているため、20μm以上、さらには30μm以上といった深い圧縮応力層を形成することができる。しかしながら、深い圧縮応力層は強度もしくは耐加傷性という点で優れているのであるが、それはまさにガラスを切断加工するためのクラックすらも導入できないことを意味する。また、もしガラスにクラックを導入することができたとしても、そのクラックに沿ってガラスを切断することができず、さらに深いクラックを導入すると、粉々に割れてしまうことがある。すなわち、化学強化アルミノシリケートガラスは、切断に関して大きな困難がある。
また、もし仮に切断できたとしても、アルミノシリケートガラスは、溶融温度を高くしてしまうAl
2O
3及びMgOを、ソーダライムガラスと比較して多く含有する。よって、アルミノシリケートガラスは、ソーダライムガラスと比較して、高い溶融温度が必要であり、量産時の溶融ガラスが高粘性であることから、生産効率に難があり、価格も高いものとなってしまっている。
そこで、ガラス材としては、板ガラスとして極めて一般的であり、アルミノシリケートガラスと比較して、量産性に優れるため安価で、様々な用途に既に広く用いられているソーダライムガラスが切望されている。しかしながら、ソーダライムガラスにおいて、従来技術を用いるだけでは、強度と切断性の両立という要求を満たす化学強化ガラスを提供することは困難である。
【0018】
以上、各特許文献の問題点について言及したが、特に化学強化に適した組成ではないソーダライムガラスを用いた場合においては、強度の向上及び切断性を同時に考慮した化学強化ガラスが技術的に検討されているとは言い難い状況にある。そこで、本発明は、上記従来例の問題点を解決すべく、特に化学強化に適した組成ではないソーダライムガラスを用いながらも、切断性に優れ、かつ、従来よりも大きな残留圧縮応力を有する化学強化ガラスを提供することを目的とする。また、本発明は、上記化学強化ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスは、
ガラス物品の表面層で、ガラス中に最も多く含有するアルカリ金属イオンAを、上記アルカリ金属イオンAよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンBに置換するイオン交換により製造された化学強化ガラスにおいて、
イオン交換前のガラスが、ソーダライムガラスであり、実質的に質量%で、SiO
2:65〜75%、Na
2O+K
2O:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al
2O
3:0〜5%からなり、
イオン交換後の表面圧縮応力が、600〜900MPaであり、かつ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の深さが、5〜20μmであり、
アルカリ金属イオンAの含有量及びアルカリ金属イオンBの含有量の合計に対するアルカリ金属イオンBの含有量の比率を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第1のグラフにおいて、上記第1のグラフ中のプロットを最小二乗法により四次曲線で近似した後、上記四次曲線をガラス表面からの深さで一次微分した微分係数の絶対値を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第2のグラフにおいて、上記第2のグラフ中のガラス表面からの深さ0〜5μmの範囲にあるプロットを最小二乗法により一次直線で近似したとき、上記一次直線の傾きが、−4〜−0.4であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスでは、イオン交換後の表面圧縮応力が600〜900MPaであり、かつ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の深さが5〜20μmである。
表面圧縮応力が600MPa未満であると、ガラス強度が不足するため、市場での使用に耐えられず、特に外的接触の多いカバーガラスの用途には不向きである。一方、表面圧縮応力が900MPaを超えると、ガラスの切断性が悪化するため、特に薄いガラスでは圧縮応力に対応して形成される内部引張応力も増加してしまい、クラック導入時にガラスが破壊する恐れがある。
また、圧縮応力層の深さが5μm未満であると、化学強化前における搬送等により付いた微小のクラック(グリフィスフロー)に起因するガラスの破壊を防止することができない。また、圧縮応力層の深さが5μm未満であると、加傷性に劣るため、市場での使用に耐えられない。一方、圧縮応力層の深さが20μmを超えると、ガラス切断時にスクライブ線に沿って分割することが容易ではなくなる。
【0021】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスにおいて最も重要であるのは、表面圧縮応力を向上させながらも、圧縮応力層の深さは限定されており、切断性と高強度を同時に成立させている点である。そのための指標として、アルカリ金属イオンAの含有量及びアルカリ金属イオンBの含有量の合計に対するアルカリ金属イオンBの含有量の比率を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第1のグラフにおいて、上記第1のグラフ中のプロットを最小二乗法により四次曲線で近似した後、上記四次曲線をガラス表面からの深さで一次微分した微分係数の絶対値を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第2のグラフにおいて、上記第2のグラフ中のガラス表面からの深さ0〜5μmの範囲にあるプロットを最小二乗法により一次直線で近似したとき、上記一次直線の傾きを評価している。上記傾きが−0.4より大きいと、表面圧縮応力の向上が達成されておらず、また、圧縮応力層の深さも深くなっているため切断性も悪い。一方、上記傾きが−4未満であると、表面圧縮応力の向上は達成されている。しかし、高い圧縮応力の発生により小さな傷で破壊されてしまうし、また、圧縮応力層の深さが浅いために、小さな傷でも圧縮応力層を突き破ってしまう。その結果、現実的なガラス強度が得られない。
【0022】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスでは、イオン交換前のガラスとして、所定の組成を有するソーダライムガラスを使用している。
そのため、ソーダライムガラスから原料等の変更を行った化学強化に適したガラスとは違って、原料変更や生産効率の悪化等による生産コストの増加がないという利点がある。
例えば、アルミノシリケートガラスのように、組成中に酸化アルミニウムを増加させることはイオン交換効率の向上に有効であるが、原料のコストが増加するだけでなく、特にガラスの溶融温度の著しい増加をもたらすため、生産コストを著しく増加させてしまう。また、例えば、アルカリ土類成分をCaOからMgOに置換することもイオン交換効率の向上に有効であるが、ガラスの溶融温度の増加をもたらし、これもまた生産コストの増加につながる。
【0023】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスでは、上記第2のグラフにおける微分係数の絶対値が0であるときのガラス表面からの深さの最小値に対する上記圧縮応力層の深さの比が0.70以上であることが好ましい。
【0024】
上記第2のグラフにおける微分係数の絶対値が0であるときのガラス表面からの深さの最小値に対する上記圧縮応力層の深さの比が0に近づくほど、イオン交換が行われているにも関わらず、そのイオン交換が圧縮応力の発生に寄与していない領域が多く存在することを意味する。
一方、上記第2のグラフにおける微分係数の絶対値が0であるときのガラス表面からの深さの最小値に対する上記圧縮応力層の深さの比が0.70以上であると、アルカリ金属イオンAとの交換によりガラス中に導入されたアルカリ金属イオンBが発生させる圧縮応力を効率良く活用することができる。
【0025】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスにおいて、上記イオン交換は、アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)を有する第1の塩にガラス物品を接触させる第1の工程と、
上記第1の工程の後、上記比率Pより小さい比率Q(mol%)を有する第2の塩にガラス物品を接触させる第2の工程とを含むことが好ましい。
【0026】
化学強化ガラスの表面圧縮応力及び圧縮応力層の深さは、化学強化処理の処理温度及び処理時間、さらには処理液の選択及びその活性特性に影響される。また、化学強化ガラスの表面圧縮応力及び圧縮応力層の深さは、ガラス内におけるイオン交換の状況等によっても異なる。
一般的には、処理温度が高いほど、また、処理時間が長いほど、圧縮応力層は深くなるが、この操作は、場合によっては表面圧縮応力を小さくする方向に働く。特に、従来からなされているような1段階のみの処理で化学強化を行う場合には、表面圧縮応力と圧縮応力層の深さとはトレードオフの関係にあり、どちらとも両立させることは難しい。そこで、化学強化処理(イオン交換)を2段階に分け、処理温度、処理時間、処理液の構成を適切に選択することにより、各段階の効果を有効に利用し、切断可能でありながらも大きな表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを作製することができる。
【0027】
具体的には、アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率Pを有する第1の塩にガラス物品を接触させる第1の工程を行った後、上記比率Pより小さい比率Qを有する第2の塩にガラス物品を接触させる第2の工程を行うことが好ましい。
上記の方法によれば、ソーダライムガラスを用いながらも、第1の工程において、圧縮応力の発生に寄与するアルカリ金属イオンA(例えば、ナトリウムイオン)を残した状態で、ガラス表面層の組成をより化学強化に適した組成に改質することができると考えられる。その結果、第2の工程における処理中に発生する応力の緩和現象を妨げることができるため、大きな表面圧縮応力を有する化学強化ガラスを作製することができると考えられる。
【0028】
なお、第1の工程で使用する第1の塩の比率Pは、第2の工程で使用する第2の塩の比率Qよりも大きい。言い換えると、第1の塩には、第2の塩よりもアルカリ金属イオンAが多く含まれている。
第2の塩の比率Qが第1の塩の比率Pよりも大きいと、第1の工程後も残留しているガラス中のアルカリ金属イオンA(例えば、ナトリウムイオン)が、第2の工程で第2の塩中のアルカリ金属イオンB(例えば、カリウムイオン)と効率良く交換せず、所望の圧縮応力を発生させることが難しい。
【0029】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスにおいて、上記第1の工程では、上記ガラス物品の表面層におけるアルカリ金属イオンAの30〜75質量%をアルカリ金属イオンBに置換し、上記第2の工程では、上記ガラス物品の表面層に残存するアルカリ金属イオンAの50〜100%をアルカリ金属イオンBに置換することが好ましい。
【0030】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスにおいて、上記第1の工程では、5〜50mol%の比率Pを有する第1の塩を使用し、第1の工程後にガラス表面に形成される圧縮応力層の深さは、5〜23μmであることが好ましい。
【0031】
第1の工程後に形成される圧縮応力層の深さが浅すぎると、前段処理におけるガラス表面層の組成の改質が充分に行われないため、後段処理中に生じる応力緩和を充分に妨げることができない。一方、第1の工程後に形成される圧縮応力層の深さが深すぎると、後段処理後に最終的に形成されている圧縮応力層の深さも大きくなってしまい、ガラスの切断性に影響する。
前述したように、本発明では、前段処理によって、後段処理中の応力緩和の進行を妨げることが可能である。しかし、ガラスである以上、応力緩和の進行を完全に停止させることはできず、後段処理中においてもわずかであるが応力緩和が生じ、後段処理後に最終的に残留している圧縮応力層の深さが前段処理後と比較して変化する場合がある。また逆に、後段処理におけるイオン交換量が前段処理のそれを上回り、第2の工程後に形成されている圧縮応力層の深さが、若干ではあるが、前段処理のそれと比較して少しだけ深くなるような場合も想定されうる。しかしながら、第2の工程後に最終的に形成される圧縮応力層の深さは、第1の工程(前段処理)後に形成されている圧縮応力層の深さから若干の変化を伴うだけである。このように、最終的な化学強化ガラスの切断性は、第1の工程後に形成されている圧縮応力層の深さが支配的であることから、第1の工程後に形成されている圧縮応力層の深さが制御されていることが重要である。
以上より、第1の工程後にガラス表面に形成される圧縮応力層の深さは5〜23μmであることが好ましい。
なお、第1の工程後に形成される圧縮応力層の深さに関連し、第1の塩の比率Pに応じて、第1の塩の温度及び第1の塩にガラス物品を接触させる時間が調整される。
【0032】
第1の塩の比率Pが大きすぎると、前段処理(第1の工程におけるイオン交換処理)におけるガラス表面層の組成の改質が充分に行われないため、後段処理(第2の工程におけるイオン交換処理)中に生じる応力緩和を充分に妨げることができず、また、表面に白濁が生じやすくなる。
一方、第1の塩の比率Pが小さすぎると、第1の工程において、ガラス表面層の組成の改質は充分に成されるが、ガラス中のアルカリ金属イオンAのほとんどがアルカリ金属イオンBとイオン交換してしまう。そのため、第2の工程においてイオン交換が進まず、所望の圧縮応力を発生させ難い。
従って、第1の塩の比率Pは、5〜50mol%であることが好ましい。
【0033】
第2の塩の比率Qが大きすぎると、第2の工程において、第一の工程後に表面層に残存しているアルカリ金属イオンAとアルカリ金属イオンBとのイオン交換が充分に進まず、第2の工程終了後に所望の圧縮応力を発生させることが難しくなってしまう。
従って、第2の塩の比率Qは、0〜10mol%であることが好ましい。
【0034】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスの製造方法は、
アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)を有する第1の塩にガラス物品を接触させる第1の工程と、
上記第1の工程の後、上記比率Pより小さい比率Q(mol%)を有する第2の塩にガラス物品を接触させる第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスの製造方法において、上記第1の工程では、上記ガラス物品の表面層におけるアルカリ金属イオンAの30〜75質量%をアルカリ金属イオンBに置換し、上記第2の工程では、上記ガラス物品の表面層に残存するアルカリ金属イオンAの50〜100%をアルカリ金属イオンBに置換することが好ましい。
【0036】
本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスの製造方法において、上記第1の工程では、5〜50mol%の比率Pを有する第1の塩を使用し、第1の工程後にガラス表面に深さ5〜23μmである圧縮応力を形成することが好ましい。
【0037】
また、本発明の第1の態様に係る化学強化ガラスの製造方法において、上記第2の工程では、0〜10mol%の比率Qを有する第2の塩を使用することが好ましい。
【0038】
本発明の第2の態様に係る化学強化ガラスは、
ガラス物品の表面層で、ガラス中に最も多く含有するアルカリ金属イオンAを、上記アルカリ金属イオンAよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンBに置換するイオン交換により製造された化学強化ガラスにおいて、
イオン交換前のガラスが、ソーダライムガラスであり、実質的に質量%で、SiO
2:65〜75%、Na
2O+K
2O:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al
2O
3:0〜5%からなり、
上記イオン交換は、アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)を有する第1の塩にガラス物品を接触させる第1の工程を含み、
上記第1の工程では、5〜50mol%の比率Pを有する第1の塩を使用することにより、第1の工程後にガラス表面に深さが5〜23μmである圧縮応力層が形成されていることを特徴とする。
【0039】
本発明の第2の態様に係る化学強化ガラスにおいて、上記第1の工程では、上記ガラス物品の表面層におけるアルカリ金属イオンAの30〜75質量%をアルカリ金属イオンBに置換することが好ましい。
【0040】
本発明の第2の態様に係る化学強化ガラスの製造方法は、
ソーダライムガラスであり、実質的に質量%で、SiO
2:65〜75%、Na
2O+K
2O:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al
2O
3:0〜5%からなるガラス物品を準備する工程と、
上記ガラス物品中に最も多く含有するアルカリ金属イオンA、及び、上記アルカリ金属イオンAよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)を有する第1の塩に上記ガラス物品を接触させる第1の工程とを含み、
上記第1の工程では、5〜50mol%の比率Pを有する第1の塩を使用することより、第1の工程後にガラス表面に深さが5〜23μmである圧縮応力層を形成することを特徴とする。
【0041】
本発明の第2の態様に係る化学強化ガラスの製造方法において、上記第1の工程では、上記ガラス物品の表面層におけるアルカリ金属イオンAの30〜75質量%をアルカリ金属イオンBに置換することが好ましい。
【0042】
本発明の第2の態様に係る化学強化ガラスでは、第1の工程により既に1段の化学強化が完了している。そのため、この化学強化ガラスに対して更に1段の化学強化を行うことにより、2段階処理並みの化学強化ガラスを得ることができる。
【0043】
また、2段階の化学強化を行うことにより、製品品質のばらつきを低減させることができる。そのため、本発明の第2の態様に係る化学強化ガラスを仕入れた業者は、この化学強化ガラスに対して1段の化学強化を行うことにより、容易に製品品質のばらつきを低減させることができる。
【0044】
本発明の第3の態様に係るガラス物品は、
ガラス物品の表面層で、ガラス中に最も多く含有するアルカリ金属イオンAを、上記アルカリ金属イオンAよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンBに置換するイオン交換により製造された化学強化ガラスを製造するために用いられるガラス物品であって、
イオン交換前のガラスが、ソーダライムガラスであり、実質的に質量%で、SiO
2:65〜75%、Na
2O+K
2O:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al
2O
3:0〜5%からなり、
イオン交換後の表面圧縮応力が、600〜900MPaであり、かつ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の深さが、5〜20μmであり、
アルカリ金属イオンAの含有量及びアルカリ金属イオンBの含有量の合計に対するアルカリ金属イオンBの含有量の比率を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第1のグラフにおいて、上記第1のグラフ中のプロットを最小二乗法により四次曲線で近似した後、上記四次曲線をガラス表面からの深さで一次微分した微分係数の絶対値を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第2のグラフにおいて、上記第2のグラフ中のガラス表面からの深さ0〜5μmの範囲にあるプロットを最小二乗法により一次直線で近似したとき、上記一次直線の傾きが、−4〜−0.4である化学強化ガラスを製造するために用いられるガラス物品が、
アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)が5〜50mol%である第1の塩に上記イオン交換前のガラスを接触させることにより、ガラス表面に深さが5〜23μmである圧縮応力層が形成されていることを特徴とする。
【0045】
本発明の第4の態様に係る化学強化ガラスの製造方法は、
ガラス物品の表面層で、ガラス中に最も多く含有するアルカリ金属イオンAを、上記アルカリ金属イオンAよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンBに置換するイオン交換により製造された化学強化ガラスの製造方法であって、
イオン交換前のガラスが、ソーダライムガラスであり、実質的に質量%で、SiO
2:65〜75%、Na
2O+K
2O:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al
2O
3:0〜5%からなり、
イオン交換後の表面圧縮応力が、600〜900MPaであり、かつ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の深さが、5〜20μmであり、
アルカリ金属イオンAの含有量及びアルカリ金属イオンBの含有量の合計に対するアルカリ金属イオンBの含有量の比率を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第1のグラフにおいて、上記第1のグラフ中のプロットを最小二乗法により四次曲線で近似した後、上記四次曲線をガラス表面からの深さで一次微分した微分係数の絶対値を縦軸に、ガラス表面からの深さを横軸にプロットした第2のグラフにおいて、上記第2のグラフ中のガラス表面からの深さ0〜5μmの範囲にあるプロットを最小二乗法により一次直線で近似したとき、上記一次直線の傾きが、−4〜−0.4である化学強化ガラスを製造するために、
アルカリ金属イオンA及びアルカリ金属イオンBを含み、アルカリ金属イオンAのモル量及びアルカリ金属イオンBのモル量の合計に対するアルカリ金属イオンAのモル量の比率P(mol%)が5〜50mol%である第1の塩に上記イオン交換前のガラスを接触させることにより、ガラス表面に深さが5〜23μmである圧縮応力層が形成されているガラス物品を準備する工程と、
上記比率Pより小さい比率Q(mol%)を有する第2の塩に上記ガラス物品を接触させる工程とを含むことを特徴とする。