(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、ガラス繊維を成形するためのブッシングや、板ガラスを成形するための成形体等に溶融ガラスを供給する際には、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスを保温し、その温度低下を防止する必要がある。そのための方法としては、フィーダーの内部空間に、天然ガス等の燃料と空気(酸素)とを混合して燃焼させるバーナーを配置し、その熱によって溶融ガラスを加熱する方法が広く採用されるに至っている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、この方法を採用した場合には、以下のような不具合がある。(1)バーナーの熱により、溶融ガラスに含まれる環境負荷物質、例えば酸化ホウ素(B
2O
3)が揮発し、フィーダーに設けられた煙道から放出される。(2)煙道の存在により、フィーダーの密閉性が低く、保温性が悪い。(3)バーナーの燃焼状態によって、内部空間における酸化還元雰囲気が変動しやすく、溶融ガラスにリボイル泡が発生しやすい。(4)燃焼排ガス中に含まれたダストが溶融ガラスに落下すると、ガラス中に異物を発生させる原因となる。
【0004】
そこで、これらを解消する方法として、フィーダーの内部空間に、バーナーに代えて電気発熱体を溶融ガラスの流れ方向に沿って配置し、その熱により溶融ガラスを加熱する方法を採用することがある。このようにすれば、内部空間に燃焼排ガスが発生せず、フィーダーに煙道を設ける必要がなくなる。さらに、電気による加熱であるため、内部空間における酸化還元雰囲気が変動しにくくなる。これらのことから、上述の不具合(1)〜(4)を好適に解消することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法を採用した場合であっても、未だ下記のような解決すべき問題が残存している。すなわち、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスは、電気発熱体からの距離の違いにより、熱の伝わりやすさが異なり、当該発熱体の近傍を流れるものほど加熱されやすい。このため、電気発熱体の近傍を流れる溶融ガラスと、遠方を流れる溶融ガラスとの間に温度差が生じる等、溶融ガラス全体を均一に加熱することが困難であった。
【0007】
そして、このように温度分布が不均一となった溶融ガラスが、例えば、ブッシングに供給され、ガラス繊維が成形されるような場合には、ブッシングノズルから流下する溶融ガラスの粘性の相違により、繊維径にばらつきが生じて繊維切れが発生する等、円滑な紡糸が妨げられる事態を招く。
【0008】
また、溶融ガラスの不均一な温度分布は、ブッシングによるガラス繊維の成形に限らず、成形体に溶融ガラスを供給し、板ガラス等のガラス物品を成形するような場合にも、悪影響を及ぼす原因となる。このため、ブッシングや成形体等に供給される溶融ガラス、ひいては、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスの温度分布を均一にすることが必要であり、そのための技術の開発が望まれていた。
【0009】
上記事情に鑑みなされた本発明は、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスの温度分布の均一化を図ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスを内部に流通させるフィーダーにおいて、前記フィーダーの内部空間に、前記溶融ガラスを加熱すると共に、前記溶融ガラスの流れ方向に沿って配置された電気発熱体を備え、前記電気発熱体から前記溶融ガラスの表面に至る熱の伝熱経路に、前記溶融ガラスに対する直接の伝熱を制限する制限部を設けたことに特徴付けられる。
【0011】
このような構成によれば、電気発熱体から溶融ガラスへの直接の伝熱が制限され、電気発熱体からの熱は、制限部を迂回して溶融ガラスの表面に至る伝熱経路と、電気発熱体からの熱で制限部が加熱された後、制限部からの熱として溶融ガラスの表面に至る伝熱経路とによって溶融ガラスに伝わる。これにより、電気発熱体の近傍を流れる溶融ガラスと、遠方を流れる溶融ガラスとを満遍なく均一に加熱することが可能となり、両者の温度に差異が生じることを可及的に抑制できる。その結果、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスの温度分布を均一化することが可能となる。
【0012】
上記の構成において、前記制限部は、前記電気発熱体と前記溶融ガラスの表面との間に介在させた板状部材であることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、電気発熱体からの熱は、溶融ガラスに対する直接の伝熱を確実に制限されることになる。このため、電気発熱体の近傍を流れる溶融ガラスと、遠方を流れる溶融ガラスとを、より均一に加熱することができる。さらに、板状部材を介在させたことで、溶融ガラスから揮発したアルカリ成分等が、電気発熱体に付着しにくくなるため、当該発熱体が腐食するような事態の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
上記の構成において、前記電気発熱体は、前記フィーダーの内部空間における幅方向の側方に配置され、前記板状部材は、前記フィーダーの内周壁における側部から前記フィーダーの内周壁における底部に沿って幅方向の中央に向かって延びていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、電気発熱体からの熱のうち、板状部材を迂回して溶融ガラスの表面に至る熱は、幅方向の中央を経由して溶融ガラスに伝わることになり、この熱の伝熱経路は、フィーダーの内部空間における広い範囲を通過する。そのため、電気発熱体の近傍を流れる溶融ガラスと、遠方を流れる溶融ガラスとを、さらに均一に加熱することが可能となる。また、発熱体の腐食等によって、当該発熱体の一部が欠損した場合でも、欠損した部位が板状部材に落下するため、溶融ガラスへの落下を防止することができる。その結果、欠損した部位の落下に起因して、溶融ガラスから製造されるガラス製品に、欠陥が生じるような事態の発生を可及的に回避することが可能となる。
【0016】
上記の構成において、前記フィーダーの内周壁における底部に、前記溶融ガラスをガラス繊維に成形するためのブッシングを備えていてもよい。
【0017】
ガラス繊維を成形する場合、溶融ガラスを供給するフィーダーの底部には、溶融ガラスの流れ方向に沿って多数のブッシングが備えられるのが通常である。そのため、フィーダーが長大になりやすく、これに起因して、溶融ガラスの温度分布を均一に保持することが困難である。また、ガラス繊維は、その繊維径が数μm〜数十μmと非常に細いため、溶融ガラスの温度分布が不均一である場合には、繊維径にばらつきが生じ、繊維切れが発生しやすくなる。しかしながら、本発明によれば、このような長大なフィーダーのいずれの部位においても、内部を流通する溶融ガラスの温度分布を均一化することができるため、高品質なガラス繊維を成形することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスの温度分布を均一化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の第一実施形態に係るフィーダーを備えたガラス繊維製造装置の概略を示す縦断側面図である。同図に示すように、ガラス繊維製造装置1は、その上流側の端部から炉内に投入されたガラス原料4を加熱し、連続的に溶融させることで溶融ガラスGを生成する溶融炉2と、溶融炉2の下流側に接続されると共に、ガラス繊維を成形するための多数のブッシング5に、生成された溶融ガラスGを供給するフィーダー3とを主要な要素として構成されている。
【0022】
溶融炉2は、その炉壁が耐火物(例えば、煉瓦)で構成されると共に、その上流側の端部には、珪砂、石灰石、ソーダ灰、カレット等を混合したガラス原料4を炉内に投入するための投入口2aを備えている。そして、投入口2aから投入されたガラス原料4を、図示省略の加熱手段(例えば、電気ヒーター)で加熱することにより、連続的に溶融ガラスGを生成すると共に、生成された溶融ガラスGを下流側へと流出させるように構成されている。
【0023】
フィーダー3は、その周壁が耐火物で構成されている。そして、溶融炉2の下流側に接続されると共に、その底部3aには、溶融ガラスGの流れ方向に沿って、ガラス繊維を成形するための多数のブッシング5を備えている。これらブッシング5は、それぞれ白金又はその合金で形成されている。また、これらブッシング5のそれぞれには、複数のブッシングノズルが形成されており、これらノズルの各々から溶融ガラスGが流下してガラス繊維Fに成形される。なお、各ノズルから流下した溶融ガラスGは下方に延伸されつつ所定径のガラス繊維F(ガラスフィラメント)に成形され、さらに、ガラス繊維Fは集束剤を塗布されることで複数本が集束されてガラスストランドとなる。
【0024】
また、
図2(
図1におけるA−A断面)に示すように、フィーダー3は矩形の横断面形状を有し、その内部には、フィーダー3の内周壁と溶融ガラスの表面Gaとで囲まれる内部空間Sが形成されている。この内部空間Sには、溶融ガラスGを加熱して保温するための一対の電気発熱体6と、当該電気発熱体6と溶融ガラスの表面Gaとの間に介在すると共に、耐火物で形成された一対の耐火板7とが備えられている。
【0025】
電気発熱体6は、内部空間Sの幅方向(
図2における左右方向)において、中央を基準に、対称な両側方に存する一対の電気発熱体6を一組として、複数組が溶融ガラスGの流れ方向(フィーダー3の長手方向)に沿って等間隔で配置されている。また、電気発熱体6の各々は、その横断面がU字状に形成されると共に、フィーダー3の内周壁における上部に取り付けられて、図示省略の電極と接続されており、通電によって発熱することで、溶融ガラスGの温度を保温する。なお、複数組の電気発熱体6は、一つの電気回路で制御することが可能である。
【0026】
一対の耐火板7は、各々が矩形形状を有すると共に、フィーダー3の内周壁に溶融ガラスGの流れ方向に沿って取り付けられており、内周壁における側部3bから、底部3a、及び溶融ガラスの表面Gaに沿って幅方向の中央に向かって水平に延びている。また、電気発熱体6と同様に、両耐火板7は、幅方向の中央を基準として対称な位置に存している。そして、電気発熱体6から溶融ガラスの表面Gaに至る熱の伝熱経路において、溶融ガラスGに対する直接の伝熱を制限している。すなわち、本実施形態においては、耐火板7が制限部(板状部材)を構成する。
【0027】
以下、上記のガラス繊維製造装置1を用いて、ガラス繊維を成形する場合の作用、効果について説明する。
【0028】
上記のガラス繊維製造装置1によれば、フィーダー3の内部空間Sにおいて、耐火板7により、溶融ガラスGに対する直接の伝熱が確実に制限され、電気発熱体6からの熱は、耐火板7を迂回すると共に、幅方向の中央を経由して溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路と、電気発熱体6からの熱で耐火板7が加熱された後、耐火板7からの熱として溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路とによって溶融ガラスGに伝わる。
【0029】
これにより、電気発熱体6の近傍を流れる溶融ガラスGと、遠方を流れる溶融ガラスGとを満遍なく均一に加熱することが可能となり、両者の温度に差異が生じることを可及的に抑制できる。このため、フィーダー3の内部を流通する溶融ガラスGの温度分布を均一化することが可能となる。
【0030】
その結果、底部3aに多数のブッシング5を備えた長大なフィーダー3のいずれの部位においても、内部を流通する溶融ガラスGの温度分布が安定して均一化され、高品質なガラス繊維Fを成形することができる。
【0031】
さらに、電気発熱体6と溶融ガラスの表面Gaとの間に、耐火板7が介在していることで、溶融ガラスGから揮発したアルカリ成分等が、電気発熱体6に付着しにくくなるため、当該発熱体6が腐食するような事態の発生を抑制することが可能となる。
【0032】
加えて、電気発熱体6の腐食等によって、当該発熱体6の一部が欠損した場合でも、欠損した部位が耐火板7に落下するため、溶融ガラスGへの落下を防止することができる。その結果、欠損した部位の落下に起因して、溶融ガラスGから成形されるガラス繊維Fに、欠陥が生じるような事態の発生を可及的に回避することが可能となる。
【0033】
以下、本発明の他の実施形態に係るフィーダーについて説明する。なお、他の実施形態に係るフィーダーにおいて、上記の第一実施形態に係るフィーダーと同一の機能、又は形状を有する構成要素については、各実施形態について説明するための図面に、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略している。
【0034】
図3は、本発明の第二実施形態に係るフィーダーを示す縦断正断面である。この第二実施形態に係るフィーダー3が、第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、耐火板7が取り除かれている点と、フィーダー3の内周壁における側部3bに土手部3cが形成されている点と、土手部3cの上方に電気発熱体6を収容するための凹部Cが形成されている点である。
【0035】
内周壁の側部3bは、その一部が幅方向の中央に向かって張り出しており、この張り出した部位が土手部3cを形成している。この土手部3cが張り出した寸法は、電気発熱体6の幅方向寸法よりも長くなるように設定されており、当該発熱体6が凹部Cに完全に収容されるように構成されている。そして、土手部3cは、電気発熱体6から溶融ガラスの表面Gaに至る熱の伝熱経路において、溶融ガラスGに対する直接の伝熱を制限している。すなわち、本実施形態においては、土手部3cが制限部を構成する。
【0036】
この第二実施形態に係るフィーダー3においても、上記の第一実施形態に係るフィーダーと同様の効果を奏することが可能である。なお、この第二実施形態においては、土手部3cによって、溶融ガラスGに対する直接の伝熱が確実に制限され、電気発熱体6からの熱は、土手部3cを迂回して溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路と、電気発熱体6からの熱で土手部3cが加熱された後、土手部3cからの熱として溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路とによって溶融ガラスGに伝わる。
【0037】
図4は、本発明の第三実施形態に係るフィーダーを示す縦断正断面である。この第三実施形態に係るフィーダー3が、第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、耐火板7が取り除かれている点と、フィーダー3の内周壁における上部と側部3bとの間に通路Pが形成されている点と、通路Pを介して、内部空間Sを幅方向における側壁3bの外方まで拡張した拡張空間Saが形成されている点である。
【0038】
拡張空間Saは、溶融ガラスGの流れ方向に沿って形成されており、その上部には電気発熱体6が収容されている。そして、当該発熱体6と溶融ガラスの表面Gaとの間に、フィーダー3の内周壁における側部3bが介在することで、電気発熱体6から溶融ガラスの表面Gaに至る熱の伝熱経路において、溶融ガラスGに対する直接の伝熱を制限している。すなわち、本実施形態においては、側部3bが制限部(板状部材)を構成する。
【0039】
この第三実施形態に係るフィーダー3においても、上記の第一実施形態に係るフィーダーと同様の効果を奏することが可能である。なお、この第三実施形態においては、側部3bによって、溶融ガラスGに対する直接の伝熱が確実に制限され、電気発熱体6からの熱は、側部3bを迂回すると共に、通路Pを通過して溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路と、電気発熱体6からの熱で側部3bが加熱された後、側部3bからの熱として溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路とによって溶融ガラスGに伝わる。
【0040】
また、この第三実施形態においては、電気発熱体6の腐食等によって、当該発熱体6の一部が欠損した場合でも、欠損した部位は、溶融ガラスGとは隔絶された拡張空間Saの底部に落下するため、溶融ガラスGへの落下を略確実に防止することができる。このため、溶融ガラスGから製造されるガラス繊維Fにおいて、欠陥の発生を回避する上で有利となる。
【0041】
図5(a)〜(c)は、本発明の第四〜第六実施形態に係るフィーダーを示す縦断正断面である。これらフィーダー3は、上記の第一実施形態に係るフィーダーにおいて、電気発熱体の形状や、その取り付け位置を変更したものである。
【0042】
図5(a)に示す第四実施形態に係るフィーダー3では、電気発熱体6の形状が、U字状のものから棒状のものへと変更されている。
図5(b)に示す第五実施形態に係るフィーダー3は、電気発熱体6の形状が棒状のものへと変更されると共に、その取り付け位置がフィーダー3の内周壁における上部から側部3bへと変更されている。
図5(c)に示す第六実施形態に係るフィーダー3は、U字状の電気発熱体6の取り付け位置を、フィーダー3の内周壁における上部から側部3bへと変更したものである。
【0043】
これら第四〜第六実施形態に係るフィーダー3においても、上記の第一実施形態に係るフィーダーと同様の効果を奏することが可能である。また、電気発熱体6からの熱が溶融ガラスGに伝わる伝熱経路や、耐火板7が制限部(板状部材)を構成している点についても、第一実施形態に係るフィーダーと同様である。
【0044】
図6は、本発明の第七実施形態に係るフィーダーを示す縦断正断面である。このフィーダー3は、上記の第三実施形態に係るフィーダーにおいて、電気発熱体の数、及び、その取り付け位置を変更したものである。
【0045】
同図に示すように、第七実施形態に係るフィーダー3では、電気発熱体6の取り付け位置が、フィーダー3の内周壁における上部から、拡張空間Saを囲う側壁に変更されている。また、電気発熱体の数が、一対(2体)から三対(6体)に変更されると共に、一対の電気発熱体6を一組とした三組が、拡張空間Sa内において、上下方向に等間隔で配置されている。
【0046】
この第七実施形態に係るフィーダー3においても、上記の第一実施形態に係るフィーダー、及び第三実施形態に係るフィーダーと同様の効果を奏することが可能である。また、電気発熱体6からの熱が溶融ガラスGに伝わる伝熱経路や、フィーダー3の内周壁における側部3bが制限部(板状部材)を構成している点については、第三実施形態に係るフィーダーと同様である。
【0047】
図7は、本発明の第八実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。この第八実施形態に係るフィーダー3が、上記の第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、耐火板7が取り除かれている点と、電気発熱体6の数が1体のみとされている点と、この電気発熱体6が板材8aと板材8bとにより、囲われている点である。
【0048】
電気発熱体6は、幅方向の中央において、フィーダー3の内周壁における上部に取り付けられる共に、溶融ガラスGの流れ方向に沿って複数が等間隔で配置されている。両板材8a,8bは、共に耐火物で形成されている。板材8bは、電気発熱体6の下方に備えられると共に、幅方向において、フィーダー3の内周壁における底部3a、及び溶融ガラスの表面Gaに沿って水平に延びている。板材8aは、幅方向において、電気発熱体6、及び板材8bを挟んで対称な位置に一対が備えられると共に、一対の板材8aの各々において、板材8aを貫通する開口部8aaが形成されている。そして、両板材8a,8bにより、電気発熱体6から溶融ガラスの表面Gaに至る熱の伝熱経路において、溶融ガラスGに対する直接の伝熱を制限している。すなわち、本実施形態においては、両板材8a,8bが制限部(板状部材)を構成する。
【0049】
この第八実施形態に係るフィーダー3においても、上記の第一実施形態に係るフィーダーと同様の効果を奏することが可能である。なお、この第八実施形態においては、両板材8a,8bによって、溶融ガラスGに対する直接の伝熱が確実に制限され、電気発熱体6からの熱は、板材8bを迂回すると共に、板材8aに形成された開口部8aaを通過して溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路と、電気発熱体6からの熱で両板材8a,8bが加熱された後、両板材8a,8bからの熱として溶融ガラスの表面Gaに至る伝熱経路とによって溶融ガラスGに伝わる。
【0050】
また、この第八実施形態においては、電気発熱体6の腐食等によって、当該発熱体6の一部が欠損した場合でも、電気発熱体6が両板材8a,8bによって囲われているため、欠損した部位が、溶融ガラスGへと落下しにくくなる。その結果、溶融ガラスGから製造されるガラス繊維Fにおいて、欠陥の発生を回避する上で有利となる。
【0051】
ここで、本発明に係るフィーダーは、上記の各実施形態で説明した構成に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態において、フィーダーは、ガラス繊維を成形するためのブッシングに溶融ガラスを供給する態様となっているが、例えば、板ガラス等のガラス物品を成形するための成形体に溶融ガラスを供給するような場合にも、本発明に係るフィーダーを用いることができる。
【0052】
また、上記の各実施形態において、フィーダーの横断面形状は矩形となっているが、例えば、円形の横断面形状を有する等、他の形状であってもよい。さらに、内部空間(拡張空間を含む)に配置される電気発熱体の数は、上記の各実施形態で説明した数に限らず、適宜、その数を増減させても構わない。また、電気発熱体の取り付け位置についても、上記の各実施形態で説明した限りではない。ただし、複数の電気発熱体を配置する場合においては、電気発熱体の取り付け位置を、フィーダーの内部空間における幅方向の中央を基準として、対称とすることが好ましい。
【0053】
さらに、上記の各実施形態においては、それぞれ耐火板、土手部、フィーダーの内周壁における側部、電気発熱体を囲う板材が、制限部を構成している。しかしながら、これ以外であっても、電気発熱体からの熱について、制限部を迂回して溶融ガラスの表面に至る伝熱経路と、電気発熱体からの熱で制限部が加熱された後、制限部からの熱として溶融ガラスの表面に至る伝熱経路とを確保できるようなものであればよい。