(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る薬液散布車両の構成例を示す側面図である。
図2は、実施形態に係る薬液散布車両の構成例を示す斜視図である。
図3は、実施形態に係る薬液散布車両の構成例を示す正面図である。
図4は、実施形態に係る薬液散布車両が有するブーム開閉手段の構成例を示す斜視図である。
図5は、
図4に示すブーム開閉手段の調整機構の構成例を示す斜視図である。
図6は、実施形態に係る薬液散布車両が有するブーム開閉手段の散布姿勢を示す斜視図である。
図7は、実施形態に係る薬液散布車両が有するサイドブームの散布姿勢を示す正面図である。
図8は、実施形態に係る薬液散布車両が有する前ブーム受けおよび後ブーム受けの構成例を示す側面図である。
【0013】
本実施形態に係る薬液散布車両1は、作業者(オペレータ)が車体2に搭乗して運転操作しながら薬液を圃場に散布する作業用車両である。薬液散布車両1は、
図1から
図3に示すように、車体2と、薬液タンク10と、ブーム20と、ブーム昇降手段30と、ブーム開閉手段40と、緩衝手段50と、前ブーム受け60と、後ブーム受け70と、操作部80と、を含んで構成されている。なお、本実施形態において、薬液散布車両1の進行方向は、車体2の前後方向に沿った方向であり、薬液散布車両1の直進時、薬液タンク10からブーム昇降手段30に向かう方向である。また、車体2の車幅方向あるいは左右方向は、上記進行方向に対して水平に直交する方向である。
【0014】
車体2は、メインフレーム3と、運転席4と、図示しない前輪と後輪と、を含んで構成されている。メインフレーム3は、車体2の前後に形成されている。運転席4は、オペレータが着座する図示しない運転座席と、図示しないステアリングハンドルと、を備えている。ステアリングハンドルは、オペレータによる回動操作によって、少なくとも左右の前輪を操舵することで、薬液散布車両1の進行方向を変更する。前輪は、車体2の前方に配置され、車体2の車幅方向の左右に配置されている。前輪は、少なくともステアリングハンドルの回動操作により操舵される操舵輪である。前輪は、フロントアクスル5に装着され、図示しないエンジンで発生した動力により回転駆動される。フロントアクスル5は、メインフレーム3に取り付けられている。フロントアクスル5は、前輪を回転駆動させるための伝動装置をフロントアクスルケースに内装している。後輪は、車体2の後方に配置され、車体2の車幅方向の左右に配置されている。後輪は、リヤアクスル6に装着され、図示しないエンジンで発生した動力により回転駆動される。リヤアクスル6は、メインフレーム3に取り付けられている。リヤアクスル6は、後輪を回転駆動させるための伝動装置をリヤアクスルケースに内装している。
【0015】
薬液タンク10は、ブーム20から散布される薬液を蓄える容器である。薬液タンク10は、車体2の後方に配置されている。薬液タンク10は、メインフレーム3上に着脱可能に搭載されている。薬液は、肥料、農薬等を溶媒(例えば、水)に溶解させた液体、および、肥料、農薬等の固形分を含む液体(例えば、水)等の液状物である。
【0016】
ブーム20は、散布姿勢で車体2の前側に薬液を散布するものである。ブーム20は、サイドブーム21と、センターブーム22と、を含んでいる。サイドブーム21は、薬液散布車両1の進行方向の左右両側に配置される。サイドブーム21は、根元部分(基端部分)が後述する回動軸43により回動自在に支持されている。サイドブーム21は、
図4に示すように、回動軸43側(基端部分)に補強プレート21bおよびブラケット21cが外挿されている。サイドブーム21は、例えば、横断面(散布姿勢において、進行方向に切断した断面)が四角形状や八角形状等の多角形状である。サイドブーム21は、運転席4の右側に配置された操作部80をオペレータが操作することで、車体2の左右方向に延びる散布姿勢と、車体2の左右両側に沿う収納姿勢とに切り替えられる。サイドブーム21は、車体2の左右両側に沿う収納姿勢時に、後上がり傾斜する。また、サイドブーム21は、車体2の左右方向に延びる散布姿勢時に、センターブーム22に対して平行となる。なお、本実施形態において、車体2の左右両側に沿う収納姿勢時にサイドブーム21が後上がり傾斜するとは、サイドブーム21の基端部分から先端部分に向かう角度が、水平面に対して後方に向かう仰角であることをいう。
【0017】
本実施形態において、収納姿勢は、後述する前ブーム受け60および後ブーム受け70で支持されない状態(非接触状態)、後ブーム受け70のみで支持される状態(半接触状態)、各ブーム受け60,70で支持される状態(接触状態)の三つの状態がある。非接触状態および半接触状態では、サイドブーム21は、後上がり傾斜となり、これらの状態を本実施形態では「収納姿勢時」という。接触状態では、サイドブーム21は、非接触状態や半接触状態での傾斜角度よりも大きくなり、この状態を本実施形態では「収納完了姿勢時」という。また、半接触状態から接触状態への移行中では、サイドブーム21は、傾斜角度が徐々に大きくなり、この移行中の状態を本実施形態では「収納未完了姿勢時」という。すなわち、収納姿勢は、収納姿勢時、収納未完了姿勢時、収納完了姿勢時を含む。
【0018】
サイドブーム21には、薬液を噴射するノズル21aが設定間隔で取り付けられている。ノズル21aは、サイドブーム21の収納姿勢時の薬液の噴射方向の角度を、回動軸43と平行または略平行としている。なお、本実施形態において、サイドブーム21の収納姿勢時のノズル21aの薬液の噴射方向の角度が回動軸43と平行しているとは、回動軸43の軸線とノズル21aの薬液の噴射方向とが同方向であることをいう。すなわち、平行している場合、サイドブーム21の収納姿勢時において、ノズル21aの薬液の噴射方向は、車体2の後方に向かって、水平面の下側となる。また、サイドブーム21の収納姿勢時のノズル21aの薬液の噴射方向の角度を回動軸43と略平行としているとは、散布姿勢において、サイドブーム21のノズル21aの薬液の噴射方向とセンターブーム22のノズル22aの薬液の噴射方向とが同方向となることをいう。すなわち、略平行している場合、サイドブーム21の収納姿勢時において、ノズル21aの薬液の噴射方向は、車体2の後方に向かって、水平面の下側となり、車体2の左右方向の外側に向かう。
【0019】
センターブーム22は、薬液散布車両1の進行方向の前側に配置されており、左右両側のサイドブーム21の間に配置されている。センターブーム22は、例えば、横断面が四角形状や八角形状等の多角形状である。センターブーム22は、水平に配置されている。また、センターブーム22には、薬液を噴射するノズル22aが設定間隔で取り付けられている。ノズル22aは、センターブーム22の下面(センターブーム22の下側で、水平面と平行となる面)に取り付けられており、薬液の噴射方向が鉛直方向の下向きとなっている。
【0020】
ブーム昇降手段30は、
図1および
図4に示すように、ブーム昇降シリンダ31と、ブーム昇降リンク32と、ブーム昇降リンクステー33と、角材34(ブーム取付フレーム)と、リフトフレーム35(シリンダ取付ブラケット)と、を含んで構成されている。ブーム昇降手段30は、サイドブーム21およびセンターブーム22が角材34に取り付けられている。ブーム昇降手段30は、ブーム昇降シリンダ31の伸縮によって、車体2に対して角材34を昇降させる。また、ブーム昇降手段30は、車体2に対して角材34が昇降する際、平行リンク機構としてのブーム昇降リンク32により角材34を平行に昇降させる。すなわち、ブーム昇降手段30は、ブーム昇降シリンダ31の伸縮によって、車体2に対してサイドブーム21およびセンターブーム22を平行に昇降させる。
【0021】
ブーム開閉手段40は、
図4に示すように、ブーム開閉シリンダ41と、回動プレート42と、回動軸43と、支持部44と、調整機構45と、を含んでいる。ブーム開閉手段40は、ブーム開閉シリンダ41の伸縮によって、車体2に対して後上がり傾斜し、車体2の左右両側に沿う収納姿勢と、車体2の左右方向に延びる散布姿勢とにサイドブーム21を切り替える。ブーム開閉シリンダ41は、電動モータ41aとシリンダ41bとを備えた、いわゆる電動シリンダである。ブーム開閉シリンダ41は、ナックルピン44aを介して支持部44に回動可能に支持されている。回動プレート42は、回動軸43の上端に配設されており、回動軸43とともに回動する。回動プレート42には、ブーム開閉シリンダ41の伸縮ロッド41cの先端部がナックルピン42aを介して取り付けられている。また、回動プレート42には、サイドブーム21の収納姿勢において、回動軸43の回動中心からの距離が最長となる一辺側にナックルピン42aが取り付けられている。つまり、回動プレート42は、ブーム開閉シリンダ41を最も伸ばした時(
図6参照)、すなわち散布姿勢において、シリンダ作動点(ナックルピン42a)が回動軸43のほぼ真後ろに位置付けられ、ブーム開閉シリンダ41を最も縮めた時(
図4参照)、すなわち収納姿勢において、シリンダ作動点が基点(ナックルピン44a)とブーム回動点(回動軸43の回動中心)との内部に位置付けられるように構成されている。すなわち、シリンダ作動点は、散布姿勢において、基点とブーム回動点とを結ぶ直線から離れ、収納姿勢では、基点とブーム回動点とを結ぶ直線に近づく。このため、ブーム開閉シリンダ41の伸縮方向は、散布姿勢ではシリンダ作動点におけるブーム回動点を中心とする回動円上の接線方向と近づいたほぼ同方向となり、収納姿勢ではシリンダ作動点におけるブーム回動点を中心とする回動円上の接線方向と離れたほぼ直交方向となる。
【0022】
回動軸43は、角材34の両端部に配置されている。回動軸43は、前上がり傾斜姿勢に構成されている。本実施形態において、回動軸43が前上がり傾斜姿勢に構成されているとは、回動軸43の傾きの角度が水平面に対して前方に向かう仰角であることをいう。また、本実施形態において、回動軸43の前上がり傾斜と、サイドブーム21の後上がり傾斜とは、収納姿勢時にそれぞれの傾きの角度が直交する。また、回動軸43の軸線と回動プレート42の回動面とは、直交している。支持部44は、ブーム昇降リンクステー33から前方に突出して配置されている。支持部44には、ナックルピン44aを介してブーム開閉シリンダ41が取り付けられている。支持部44に取り付けられたブーム開閉シリンダ41は、伸縮ロッド41cの伸縮に伴って支持部44のナックルピン44aを回動中心として回動するブーム開閉シリンダ41の回動面と、回動プレート42の回動面とが平行となっている。調整機構45は、角材34の前側に取り付けられ、散布姿勢でサイドブーム21と当接してサイドブーム21の前方への動きを規制する散布姿勢調整ボルト45aと、角材34の後側に取り付けられ、収納姿勢でサイドブーム21と当接してサイドブーム21の車体2の左右両側への動きを規制する収納姿勢調整ボルト45b(
図5参照)と、を備えている。各ボルト45a,45bは、締緩によって、散布姿勢および収納姿勢のサイドブーム21の位置を調整可能である。
【0023】
緩衝手段50は、第2回動軸51と、引張コイルばね52と、を備えている。緩衝手段50は、サイドブーム21が収納姿勢において、回動軸43の後側に配置される。第2回動軸51は、サイドブーム21を回動可能に支持している。第2回動軸51は、散布姿勢において、その軸線が水平面に直交する鉛直方向となる。また、第2回動軸51には、サイドブーム21の基端部分が取り付けられており、散布姿勢において、サイドブーム21の下面が水平面と平行になる。引張コイルばね52は、散布姿勢において、一端が第2回動軸51の前側に取り付けられ、他端がサイドブーム21の上側に取り付けられる。このため、サイドブーム21には、散布姿勢において、引張コイルばね52によって前方に引きつけられる力が作用する。
【0024】
前ブーム受け60は、
図7に示すように、車体2の前側に配置されており、車体2の左右両側に配置されている。前ブーム受け60は、受け部61と、アーム部62と、を備えている。受け部61は、収納完了姿勢時に、補強プレート21bおよびブラケット21cが外挿されているサイドブーム21の前側を支持するものである。受け部61は、外側ガイド部61aと、支持部61bと、内側ガイド部61cと、を有している。外側ガイド部61aは、アーム部62から上方に立設しており、車体2の左右方向の外側に向けて傾斜している。外側ガイド部61aは、内側ガイド部61cに対して、アーム部62からの突出量が小さい。支持部61bは、サイドブーム21の下面に対向する傾斜面を有しており、この傾斜面はサイドブーム21と同様の後上がり傾斜となっている。内側ガイド部61cは、アーム部62から上方に立設しており、車体2の左右方向の内側に向けて傾斜している。内側ガイド部61cの先端側は、車体2の左右方向の内側に向けてさらに傾斜している。また、内側ガイド部61cは、外側ガイド部61aに対して、アーム部62からの突出量が大きい。アーム部62は、本実施形態では水平に延在されている。
【0025】
後ブーム受け70は、車体2の後側に配置されており、車体2の左右両側に配置されている。後ブーム受け70は、本実施形態において、薬液タンク10の後端上方の左右両側、すなわち薬液タンク10の上部から斜め上方の外側(車体2の左右方向の外側)に傾斜して取り付けられている。後ブーム受け70は、受け部71と、アーム部72と、取付部73(
図2参照)と、を備えている。受け部71は、収納姿勢時、収納未完了姿勢時および収納完了姿勢時に、サイドブーム21の後側を支持するものである。受け部71は、外側ガイド部71aと、支持部71bと、内側ガイド部71cと、を有している。外側ガイド部71aは、アーム部72から上方に立設しており、アーム部72に対して直交している。外側ガイド部71aの先端側は、車体2の左右方向の外側に向けて傾斜している。支持部71bは、サイドブーム21の下面に対向する傾斜面を有しており、この傾斜面はサイドブーム21と同様の後上がり傾斜となっている。また、支持部71bは、前ブーム受け60の支持部61bの傾斜面の延長線上に配置されている。内側ガイド部71cは、アーム部72から上方に立設しており、アーム部72に対して直交している。内側ガイド部71cは、外側ガイド部71aに対して、アーム部72からの突出量が小さい。アーム部72は、取付部73側が薬液タンク10に向かって水平に延ばされており、受け部71側がサイドブーム21の下面に対して平行に延ばされている。取付部73は、例えば、薬液タンク10の左右両側の後端上方に埋設されたインサートナットに対して締め付けられる締付ボルトによって取り付けられる。
【0026】
なお、本実施形態において、前ブーム受け60と後ブーム受け70とは、
図8に示すように、前ブーム受け60の受け部61と後ブーム受け70の受け部71とを結ぶ線Bの傾斜角度を収納姿勢時のサイドブーム21を表す線Aの傾斜角度よりも大きくしている。ここで、各受け部61,71同士を結ぶ線Bの傾斜角度を収納姿勢時のサイドブーム21の傾斜角度(サイドブーム21を表す線Aの傾斜角度)よりも大きくするとは、各受け部61,71でサイドブーム21を支持する収納完了姿勢時、サイドブーム21の上下方向のしなりに対応する復元力によりサイドブーム21の荷重を後ブーム受け70に加え、そのしなりがサイドブーム21に余計な負荷をかけないように、各受け部61,71同士を結ぶ線Bの角度を、収納姿勢時のサイドブーム21の傾斜角度よりも大きい仰角(水平面に対して後方に向かう仰角)にすることである。
【0027】
操作部80は、運転席4の右側に配置されている。操作部80は、ブーム操作部81と、薬液供給操作部82と、を含んで構成されている。ブーム操作部81は、ブーム昇降手段30のブーム昇降シリンダ31およびブーム開閉手段40のブーム開閉シリンダ41のそれぞれの駆動を制御するスイッチを有している。薬液供給操作部82は、図示しない防除ポンプの駆動を制御するスイッチ、薬液の圧力を表示する圧力計、および、各ブーム21,22からの薬液の散布の開始および停止を切り替えるための散布コックを有している。
【0028】
本実施形態に係る薬液散布車両1は、以上のごとき構成であり、以下、その基本的動作について説明する。
【0029】
薬液散布車両1を走行させる場合、オペレータが図示しないクラッチペダルおよび変速レバーを操作することにより、クラッチペダルの踏み込み量と変速レバーの変速位置とに対応する速度で走行する。また、オペレータが図示しないステアリングハンドルを回動操作して前輪を操舵することにより、薬液散布車両1が所望の方向に進行する。薬液を散布しない通常の進行時には、薬液散布車両1のサイドブーム21は、各ブーム受け60,70で前側と後側とが支持された収納完了姿勢時の傾斜(収納姿勢時の後上がり傾斜よりも大きい傾斜)となっている。このため、収納完了姿勢時のサイドブーム21は、その傾斜角度が収納姿勢時の傾斜角度よりも大きくなり、上下方向にしなることから、このしなりに対応する復元力が後ブーム受け70の受け部71に作用し、後ブーム受け70にサイドブーム21の荷重を加える。また、収納完了姿勢時のサイドブーム21は、後ブーム受け70に荷重を加えることから、サイドブーム21と後ブーム受け70との接触圧が向上するので、振動が抑制される。また、サイドブーム21は、その振動が抑えられることから、車体2が振動する場合でも、各ブーム受け60,70の各受け部61,71との接触音、各受け部61,71からの跳ね上がりが抑えられる。したがって、薬液散布車両1は、サイドブーム21の安定性を向上させることができる。また、サイドブーム21は、基端部分が補強プレート21bとブラケット21cとで補強されているので、前ブーム受け60で支持される基端部分の変形(しなり)を抑制することができる。すなわち、薬液散布車両1は、走行に伴う振動でサイドブーム21がしなって破損することを抑えることができる。したがって、
図1等に示すように、サイドブーム21の全長が薬液散布車両1の進行方向の全長よりも長くても、サイドブーム21を安定して収納しつつ、薬液散布車両1を走行させることができる。
【0030】
薬液を散布する場合、オペレータが運転席4の右側に配置された操作部80のブーム操作部81を操作し、ブーム昇降手段30のブーム昇降シリンダ31を伸ばして各ブーム21,22を上昇させ、前ブーム受け60および後ブーム受け70に支持されていたサイドブーム21を各ブーム受け60,70から浮上させる。次に、オペレータがブーム操作部81を操作してブーム開閉手段40のブーム開閉シリンダ41を伸ばして、サイドブーム21を車体2の左右方向に延びる散布姿勢にする。この際、調整機構45の散布姿勢調整ボルト45aとサイドブーム21とが当接し、各ブーム21,22が直線状となる。次に、オペレータが操作部80の薬液供給操作部82を操作して各ブーム21,22の各ノズル21a,22aから薬液を散布する。この際、サイドブーム21の収納姿勢時のノズル21aの薬液の噴射方向の角度が回動軸43と平行の場合、サイドブーム21のノズル21aからは、薬液散布車両1の進行方向に対して後方に向けて薬液が噴射される。また、サイドブーム21の収納姿勢時のノズル21aの薬液の噴射方向の角度が回動軸43と略平行の場合、サイドブーム21のノズル21aからは、センターブーム22のノズル22aと同方向に薬液が噴射される。
【0031】
また、散布姿勢調整ボルト45aを締緩することによって、散布姿勢のサイドブーム21の高さ(水平度や圃場の地面との平行度)を調整することができる。また、回動軸43の前上がり傾斜とサイドブーム21の後上がり傾斜とは、収納姿勢でその角度が直交するので、散布姿勢において、車体2の左右方向に延びるサイドブーム21を水平にすることができる。また、第2回動軸51は、その軸線が散布姿勢において鉛直方向となるので、散布姿勢において、サイドブーム21の下面を水平方向と平行にすることができる。
【0032】
また、ブーム開閉手段40は、ブーム開閉シリンダ41の伸縮方向とブーム回動点(回動軸43を回動中心)を中心とする回動円上の接線方向とが、散布姿勢でほぼ同方向となることから、ブーム開閉シリンダ41を一定の速さで伸縮させると、散布姿勢付近ではブーム回動点の回動円上での周速が遅くなる。また、ブーム開閉手段40は、散布姿勢付近ではサイドブーム21の回動速度が遅くなることから、サイドブーム21を散布姿勢とする際に、センターブーム22に対するサイドブーム21の角度をオペレータが調整しやすくなり、圃場や作物に応じてサイドブーム21の散布姿勢の微調整をオペレータが行いやすくなる。
【0033】
また、支持部44のナックルピン44aを回動中心(基点)として回動(往復動)するブーム開閉シリンダ41の回動面と、回動プレート42の回動面とが平行であることから、ブーム開閉シリンダ41は、伸縮ロッド41cに余計な負荷をかけることなく、伸縮ロッド41cをスムーズに伸縮することができる。
【0034】
薬液を散布しつつ薬液散布車両1を走行させる場合、薬液散布車両1は、サイドブーム21に作物や障害物などが衝突したり接触したりすると、緩衝手段50の第2回動軸51を回動中心として、サイドブーム21が車体2の左右両側に沿う方向に回動(後方回動)する。このため、衝突時や接触時にサイドブーム21に加えられる衝撃が和らげられ、サイドブーム21の損傷が抑えられる。また、サイドブーム21は、引張コイルばね52の引張力分、直接打撃を回避することができる。
【0035】
また、散布姿勢で薬液散布車両1を急発進させたり、散布姿勢で断続的に薬液散布車両1を発進させたり、散布姿勢で薬液散布車両1が連続的に畝を乗り越えたりする等、過酷な作業条件下で薬液を散布する場合であっても、薬液散布車両1は、緩衝手段50の第2回動軸51を回動中心として、サイドブーム21を後方回動させることができる。このため、サイドブーム21のしなり(車体2の前後方向のしなり)が抑えられ、サイドブーム21の破損が抑えられる。
【0036】
また、回動軸43と同じ傾きでブーム開閉シリンダ41が支持部44に取り付けられており、センターブーム22に対してブーム開閉シリンダ41が上方に突出しないため、オペレータは、運転席4からセンターブーム22の噴霧状態を視認しやすく、噴霧状態を確認しながら作業を行うことができる。また、サイドブーム21は、その横断面が四角形状や八角形状等の多角形状であるので、その外形に平面が形成され、各ブーム受け60,70の各支持部61b,71bと面接触することができる。
【0037】
薬液の散布を終了する場合、オペレータが薬液供給操作部82を操作することにより、薬液散布車両1は、各ブーム21,22の各ノズル21a,22aからの薬液の散布を停止する。次に、オペレータがブーム操作部81を操作してブーム開閉手段40のブーム開閉シリンダ41を縮めることにより、薬液散布車両1は、サイドブーム21を車体2に対して後上がり傾斜させ、車体2の左右両側に沿う収納姿勢時の形態とする。この際、サイドブーム21は、調整機構45の収納姿勢調整ボルト45bと当接し、収納姿勢時の位置に位置決めされる。次に、オペレータがブーム操作部81を操作してブーム昇降手段30のブーム昇降シリンダ31を縮めることにより、薬液散布車両1は、各ブーム21,22を下降させ、後ブーム受け70でサイドブーム21を支持する。次に、オペレータがブーム操作部81を引き続き操作してブーム昇降シリンダ31をさらに縮めることにより、薬液散布車両1は、各ブーム21,22をさらに下降させ、前ブーム受け60でサイドブーム21を支持する。この際、サイドブーム21は、その傾斜角度が収納姿勢時の傾斜角度よりも大きくなり、収納完了姿勢時のサイドブーム21の収納位置が高くなるので、オペレータは運転席4に乗降しやすくなる。また、各ブーム受け60,70の各支持部61b,71bの傾斜面と、サイドブーム21の下面とが面接触することから、薬液散布車両1は、面圧の上昇を抑えつつサイドブーム21を安定に収納する。
【0038】
また、各支持部61b,71bとサイドブーム21とが面接触するので、サイドブーム21を収納する際、サイドブーム21に対して局所的に荷重が作用することを抑え、サイドブーム21の破損が抑えられる。また、ブーム開閉手段40は、ブーム開閉シリンダ41の伸縮方向とブーム回動点(回動軸43を回動中心)を中心とする回動円上の接線方向とが、収納姿勢でほぼ直交方向となることから、ブーム開閉シリンダ41を一定の速さで伸縮させると、収納姿勢付近ではブーム回動点の回動円上での周速が速くなる。また、ブーム開閉手段40は、収納姿勢付近ではサイドブーム21の回動速度が速くなることから、サイドブーム21を収納姿勢とする際に、サイドブーム21を速やかに車体2の左右両側に沿わせることができる。
【0039】
また、運転席4の右側に操作部80が配置されているため、オペレータは、各ブーム21,22の操作や薬液の散布の操作といった防除操作を右手で行いつつ、ステアリングハンドルの操作といった運転操作を左手で行うことができる。
【0040】
薬液タンク10を車体2に取り付けたり取り外したりする場合、メインフレーム3にブーム受けを固定する従来の薬液散布車両では、薬液タンク10の取り付けや取り外しの際にブーム受けを予めメインフレーム3から取り外しておく手間がかかっていたが、本実施形態に係る薬液散布車両1では、後ブーム受け70を薬液タンク10に取り付けることから、後ブーム受け70が取り付けられた状態で薬液タンク10をメインフレーム3に取り付けたり取り外したりすることができる。このため、薬液散布車両1は、薬液タンク10を着脱させやすい。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る薬液散布車両1によれば、前ブーム受け60の受け部61と後ブーム受け70の受け部71とを結ぶ線Bの傾斜角度が収納姿勢時のサイドブーム21の傾斜角度(線Aで表す傾斜角度)よりも大きいので、後ブーム受け70の受け部71でサイドブーム21を支持した時(収納姿勢時)には、サイドブーム21の傾斜角度は線Aで表す傾斜角度となり、サイドブーム21は前ブーム受け60の受け部61とは接触しない。また、前ブーム受け60の受け部61と後ブーム受け70の受け部71とでサイドブーム21を支持した時(収納完了姿勢時)には、サイドブーム21の傾斜角度は収納姿勢時の傾斜角度よりも大きくなる。このため、各受け部61,71同士でサイドブーム21を支持すると、サイドブーム21がしなる。この際、そのしなりに対応する復元力が後ブーム受け70の受け部71に作用するので、サイドブーム21と後ブーム受け70の受け部71との接触圧が向上する。これにより、サイドブーム21の振動が抑えられる。したがって、薬液散布車両1は、サイドブーム21の安定性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る薬液散布車両1によれば、後ブーム受け70を薬液タンク10に取り付けることから、後ブーム受け70が取り付けられた状態でメインフレーム3に対して薬液タンク10を着脱することができる。すなわち、薬液タンク10を着脱する際に、後ブーム受け70を予めメインフレーム3から取り外す手間を省略することができる。したがって、薬液散布車両1は、薬液タンク10を車体2に対して着脱しやすい。
【0043】
また、本実施形態に係る薬液散布車両1によれば、後ブーム受け70は、薬液タンク10の上部から斜め上方の外側に傾斜して取り付けられることから、収納姿勢において、サイドブーム21の収納位置を高くする。このため、後ブーム受け70は、運転席4に乗降するオペレータにサイドブーム21が干渉することを抑えることができる。したがって、薬液散布車両1は、運転席4にオペレータを乗降させやすくすることができる。
【0044】
〔変形例1〕
次に、
図9を参照して、変形例1に係る薬液散布車両1について説明する。
図9は、変形例1に係る薬液散布車両を説明するための説明図である。変形例1に係る薬液散布車両1は、緩衝手段50の第2回動軸51を後上がり傾斜させることで、散布姿勢でサイドブーム21のノズル21aの薬液を前向きに噴射させるものである。
【0045】
変形例1に係る薬液散布車両1では、サイドブーム21の散布姿勢において、回動軸43の軸線S1の前上がり傾斜が、水平面に直交する鉛直線Pに対して角度θ1となっており、第2回動軸51の軸線S2の後上がり傾斜が、鉛直線Pに対して角度θ2となっている。つまり、第2回動軸51は、回動軸43に対して、その回動軸43の角度θ1よりも大きい角度(θ1+θ2)で戻すことで、角度θ2となる後上がり傾斜としている。このため、サイドブーム21のノズル21aからの薬液の噴射方向は、散布姿勢において、第2回動軸51の軸線S2と同方向となる。その結果、散布姿勢において、サイドブーム21のノズル21aからやや前方に向かって薬液が噴射される。したがって、薬液散布車両1の進行速度が速い高速防除作業においても、作物の下方にまで薬液を入り込ませ、作物への薬液の付着率を向上させることができる。
【0046】
〔変形例2〕
次に、
図10を参照して、変形例2に係る薬液散布車両1について説明する。
図10は、変形例2に係る薬液散布車両を説明するための説明図である。変形例2に係る薬液散布車両1は、内側ガイド部61c,71cの突出量を外側ガイド部61a,71aの突出量よりも大きくしたものである。
【0047】
変形例2に係る薬液散布車両1では、前ブーム受け60の内側ガイド部61cが外側ガイド部61aよりも突出量が大きい。同様に、後ブーム受け70の内側ガイド部71cが外側ガイド部71aよりも突出量が大きい。つまり、各ブーム受け60,70は、車体2の左右方向に対して内側となる内側ガイド部61c,71cの突出量を、車体2の左右方向に対して外側となる外側ガイド部61a,71aの突出量よりも大きくしている。このため、薬液散布車両1が収納姿勢で凹凸のある場所を走行する場合、サイドブーム21が上下方向に撥ねても、サイドブーム21が内側ガイド部61c,71cを乗り越えることが抑えられるので、サイドブーム21が受け部61,71から運転席4側に脱落することが抑えられる。
【0048】
〔変形例3〕
次に、
図11を参照して、変形例3に係る薬液散布車両1について説明する。
図11は、変形例3に係る薬液散布車両を説明するための説明図である。変形例3に係る薬液散布車両1は、ブーム開閉シリンダ41の配置を変更可能としたものである。
【0049】
変形例3に係る薬液散布車両1では、ブーム昇降リンクステー33の前側に支持部44が配置され、ブーム昇降リンクステー33の後側に第2支持部46が配置されている。変形例3において、ブーム開閉シリンダ41は、ナックルピン46aを介して第2支持部46に回動可能に取り付けられている。また、ブーム開閉シリンダ41の伸縮ロッド41cの先端部は、ナックルピン42aを介して回動プレート42に回動可能に取り付けられている。回動プレート42には、サイドブーム21の散布姿勢において、回動軸43の回動中心からの距離が最長となる一辺側にナックルピン42aが取り付けられている。なお、回動プレート42は、特に図示していないが、サイドブーム21の散布姿勢において、回動軸43のほぼ真後ろにシリンダ作動点を位置付けられるようにナックルピン42aが取り付け可能である。本変形例3において、回動プレート42は、ブーム開閉シリンダ41を最も伸ばした時、すなわち収納姿勢において、シリンダ作動点(ナックルピン42a)が回動軸43のほぼ正面に位置付けられ、ブーム開閉シリンダ41を最も縮めた時、すなわち散布姿勢において、シリンダ作動点(ナックルピン42a)が基点(ナックルピン46a)とブーム回動点(回動軸43の回動中心)との内部に位置付けられるように構成されている。すなわち、シリンダ作動点は、収納姿勢において、基点とブーム回動点とを結ぶ直線から離れ、散布姿勢において、基点とブーム回動点とを結ぶ直線に近づく。このため、ブーム開閉シリンダ41の伸縮方向は、収納姿勢ではシリンダ作動点におけるブーム回動点を中心とする回動円上の接線方向と近づいたほぼ同方向となり、散布姿勢ではシリンダ作動点におけるブーム回動点を中心とする回動円上の接線方向と離れたほぼ直交方向となる。
【0050】
変形例3に係る薬液散布車両1では、ブーム開閉シリンダ41の伸縮方向とブーム回動点(回動軸43を回動中心)を中心とする回動円上の接線方向とが、収納姿勢でほぼ同方向となり、散布姿勢でほぼ直交方向となることから、ブーム開閉シリンダ41を一定の速さで伸縮させると、散布姿勢付近ではブーム回動点の回動円上での周速が速くなり、収納姿勢付近ではブーム回動点の回動円上での周速が遅くなる。このため、散布姿勢付近ではサイドブーム21の回動速度が速くなり、収納姿勢付近ではサイドブーム21の回動速度が遅くなる。また、散布姿勢付近ではサイドブーム21の回動速度が速くなるので、障害物から速やかにサイドブーム21を退避させることができる。また、収納姿勢付近ではサイドブーム21の回動速度が遅くなるので、運転席4に着座するオペレータに近づく速度が抑えられ、オペレータが落ち着いてサイドブーム21の収納作業を進めることができる。
【0051】
また、ブーム開閉シリンダ41の配置を変更することによって、収納姿勢付近や散布姿勢付近でのサイドブーム21の回動速度を入れ替えることができるので、作業用途や目的に適したサイドブーム21の回動速度を選択することができる。
【0052】
なお、本実施形態において、収納完了姿勢時にサイドブーム21をしならせているが、後ブーム受け70、あるいは、サイドブーム21および後ブーム受け70をしならせてもよい。これにより、しなりに対応する復元力が生じるので、サイドブーム21と後ブーム受け70との接触圧が向上し、サイドブーム21の振動を抑えることができ、サイドブーム21の安定性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態において、薬液散布車両1は、各ブーム受け60,70の内側ガイド部61cおよび外側ガイド部71a、または、各ブーム受け60,70の各内側ガイド部61c,71cの突出量を大きくしているが、例えば、前ブーム受け60の外側ガイド部61aおよび後ブーム受け70の内側ガイド部71cの突出量を大きくしてもよい。これにより、サイドブーム21の収納完了姿勢時において、薬液散布車両1の走行に伴う振動を受けても、車体2の内側および外側にサイドブーム21が脱落することを抑えることができる。