(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記感熱記録層が少なくとも第1感熱記録層及び第2感熱記録層からなる多層構造を有しており、前記第1感熱記録層が第1染料前駆体を含有し、前記第2感熱記録層が第2染料前駆体を含有する、請求項1または2に記載の2色感熱記録体。
前記第2染料前駆体を含む黒色系の色調に発色する染料前駆体の合計の含有量が、前記第1染料前駆体の含有量の0.5倍より多く、2.5倍より少ない範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の2色感熱記録体。
前記ピリジン骨格を有する第1染料前駆体が、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ブトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ペンチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ヘキシルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2,6−ビス(2−オクチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2色感熱記録体。
前記2色感熱記録体を0.66mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上であり、且つ0.97mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の2色感熱記録体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、支持体上に染料前駆体及び顕色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体であって、染料前駆体として、下記一般式(1)で表される分子構造にピリジン骨格を有する第1染料前駆体と、黒色系の色調に発色する第2染料前駆体とを含有し、第2染料前駆体の融点が200℃以上であることを特徴とする。本発明では、黒色系と異なる色調として黄色系に限定し、しかも発色濃度が高く、鮮やかな黄色系の発色色調を示す特定の第1染料前駆体を選択することにより、第2染料前駆体との色分離性に優れ、視認性に優れた黄色系の第1の色と黒色系の第2の色の2色を呈する感熱記録体を得ることができる。
【0019】
下記一般式(1)中、R
1及びR
2は水素原子もしくは炭素数1〜8の分岐してもよいアルコキシ基を表し、R
3は炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基を表し、R
1及びR
2は同一であっても、異なっていてもよいが、少なくともR
1及びR
2は直鎖状の飽和炭化水素基が工業的にも容易に導入できることから好ましい。発色濃度を高める観点から、前記一般式(1)中、R
1とR
2は、同時に水素原子である場合を除くことが好ましい。
【0020】
【化2】
(式中、R
1及びR
2は水素原子もしくは炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、R
3は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R
1及びR
2は同一であっても、異なっていてもよい。)
【0021】
前記ピリジン骨格を有する第1染料前駆体は、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ブトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ペンチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ヘキシルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2,6−ビス(2−オクチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンからなる群から選ばれる1種が好ましい。
【0022】
また、本発明では、発色濃度を高め、発色像の保存性と耐光性を向上する観点から、前記一般式(1)中、R
1及びR
2のいずれか一方が炭素数4〜8のアルコキシ基を表すことが好ましい。更に、発色濃度をより一層高める観点から、R
1及びR
2のいずれか一方が水素原子を表すことが好ましい。
【0023】
第2染料前駆体は、200℃以上の融点を有し、黒色系の色調に発色するものであれば、特に限定されないが、具体例としては例えば、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(融点226℃)、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(融点207℃)、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン(融点220℃)、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン(融点228℃)、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン(融点215℃)、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)6−メチル−7−アニリノフルオラン(融点202℃)、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(融点226℃)、3−(4−ジメチルアミノ)アニリノ−5,7−ジメチルフルオラン(融点235℃)等が挙げられる。これらの中でも、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランが耐光性に優れており、特に好ましい。
【0024】
本発明では、第1染料前駆体と第2染料前駆体が共に固体分散微粒子の形態で感熱記録層に含有されることが好ましい。第1染料前駆体の発色濃度が高く、鮮やかな黄色系の発色色調を与えることから、第2染料前駆体を後述する複合微粒子の形態に形成することなく、色分離性に優れた効果を得ることができる。
【0025】
染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する場合、例えば水を分散媒体として、サンドミル、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、分散液とする。また、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性高分子化合物のほか、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等の存在下で分散媒体中に分散させて分散液とすることもできる。この分散液を用いて感熱記録層を形成するための塗液を調製すればよい。また、染料前駆体を有機溶剤に溶解した後、この溶液を水中で上記水溶性高分子化合物を安定化剤として乳化分散後、この乳化液から有機溶剤を蒸発させ染料前駆体を固体分散微粒子化して使用することもできる。いずれの場合も固体分散微粒子の形態で使用する染料前駆体の固体分散微粒子の体積平均粒子径は、適切な記録感度を得るために0.2〜3.0μm程度であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μm程度である。
【0026】
感熱記録層中に含有される第1染料前駆体(黄色系)及び第2染料前駆体(黒色系)は、同一の記録層に含有されてもよいし、それぞれ別の記録層に含有されてもよいが、本発明では、色分離性を向上する観点から、感熱記録層が少なくとも第1感熱記録層及び第2感熱記録層からなる多層構造を有しており、第1感熱記録層が第1染料前駆体を含有し、第2感熱記録層が第2染料前駆体を含有することが好ましい。
【0027】
第1染料前駆体及び第2染料前駆体がそれぞれ別の感熱記録層に含有される場合、いずれの感熱記録層が表面層側にあってもよいが、本発明では、感熱記録層が支持体に近い側に形成された第1感熱記録層、及び支持体から遠い側に形成された第2感熱記録層を含む多層構造を有しており、第1感熱記録層が第1染料前駆体を含有し、第2感熱記録層が第2染料前駆体を含有することが好ましい。これにより、第1染料前駆体による黄色系の発色色調と、第2染料前駆体による黒色系の発色色調とが混色して得られる第2の色としての黒色をより一層鮮明にすることができる。
【0028】
本発明では、感熱記録層中の第2染料前駆体を含む黒色系の色調に発色する染料前駆体の合計の含有量を第1染料前駆体の塗布量の0.5倍より多く、2.5倍より少ない範囲とすることが好ましい。より好ましくは1.0倍以上、2.0倍以下の範囲である。これにより、第1の色である黄色系の発色色調と、第2の色である混色としての黒色との色分離性をより一層向上することができる。
【0029】
本発明の2色感熱記録体は、温度の上昇によって、まず第1染料前駆体が発色して黄色系の色調を呈し、次いで第2染料前駆体が発色して混色することにより黒色としては十分な第2の色を呈することができる。また、本発明において2色感熱記録する方法としては、例えば、サーマルヘッドを使用し、印加電圧を一定として1パルスの幅と繰返し回数を制御する等により、印加エネルギーを変えて記録することができる。具体例としては、例えば、第1染料前駆体の発色開始温度に達するには十分であり、且つ第2染料前駆体の発色開始温度に達するには不十分である印加エネルギーを与えることにより、第1染料前駆体の発色による第1の色が得られる。一方、第1染料前駆体と第2染料前駆体の双方の発色開始温度に達するに十分な印加エネルギーを与えることにより、第1染料前駆体と第2染料前駆体の双方が発色して混色することによる第2の色が得られる。
【0030】
本発明において、感熱記録層に含有される染料前駆体の形態としては、第1染料前駆体と第2染料前駆体は固体分散微粒子の形態でそれぞれの感熱記録層中に含有されることが好ましいが、その他の染料前駆体を併用する場合、その他の染料前駆体は染料前駆体とウレア系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア−ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等の疎水性樹脂とを含む複合微粒子の形態で含有されてもよい。
【0031】
染料前駆体と疎水性樹脂とを含む複合微粒子を形成した形態としては、
(1)1種以上の染料前駆体を壁膜としての疎水性樹脂を用いてマイクロカプセル化した形態、
(2)1種以上の染料前駆体を多価イソシアネート等により得られた疎水性樹脂からなる母材中に含有せしめた形態、
(3)1種以上の染料前駆体の微粒子表面に不飽和炭素結合を有する化合物を重合せしめた形態、
等が挙げられる。例えば、(1)の形態の粒子の作製方法としては、特開昭60−244594号公報に記載された方法が挙げられる。(2)の形態の粒子の作製方法としては、特開平9−263057号公報に記載された方法が挙げられる。(3)の形態の粒子の作製方法としては、特開2000−158822号公報に記載された方法が挙げられる。
【0032】
染料前駆体の含有割合は、感熱記録層の全固形量のうち5〜35質量%程度が好ましく、より好ましくは7〜30質量%程度である。5質量%以上とすることにより発色濃度を向上できる。35質量%以下とすることにより、耐熱性を向上できる。
【0033】
前記複合微粒子は、染料前駆体のほかに、必要に応じて後述の紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤の他、感熱記録体で知られているような増感剤等が添加されていてもよい。
【0034】
本発明では、2色感熱記録体を0.66mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上であり、且つ0.97mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.00以上であることが好ましい。これにより、より一層優れた色分離性と十分な黄色系の色調を得ることができる。印加エネルギーの差は、色分離性を向上するために好ましく、印加エネルギーをこの範囲とすることにより地肌かぶりの恐れがなく、プリンターへの負荷を軽減することができる。動発色濃度を1.00とすることにより目視で十分であると評価できるレベルに達するが、より好ましくは0.66mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.10以上であり、1.15以上が更に好ましい。また、より好ましくは0.97mJ/dotの印加エネルギーでサーマルヘッドにより印字して得られる動発色濃度が1.40以上であり、1.80以上が更に好ましい。ここで、発色濃度はY(イエロー)濃度を指す。
【0035】
本発明における感熱記録層に含有される顕色剤とは、温度の上昇によって液化、または溶解する性質を有し、染料前駆体と接触してこれを発色させる性質を有するものから選ばれ、代表的なものとしては、フェノール化合物、芳香族カルボン酸、或いはこれらの化合物の多価金属塩等の有機酸性物質等を挙げることができる。
【0036】
顕色剤は通常、複合微粒子中やマイクロカプセル中に存在していてもよいし、また、固体分散微粒子の状態で存在していてもよい。顕色剤の含有量としては、染料前駆体の合計100質量部に対し、30〜1500質量部程度が好ましく、より好ましくは50〜1000質量部程度、更に好ましくは100〜600質量部程度、特に好ましくは140〜600質量部程度、最も好ましくは200〜500質量部程度である。なお、複合微粒子は、染料前駆体を含有する複合微粒子を調製する方法と同様の方法で調製することができる。
【0037】
代表的な顕色剤としては、4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−n−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、4−[4’−(1’−メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニルフェノール、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、N−p−トリルスルホニル−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタン等の化合物を挙げることができる。
【0038】
更に本発明において、顕色剤として使用できる化合物としては、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール化合物、または安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3,5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、及び前記フェノール化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質等が挙げられる。
【0039】
これらの顕色剤の中でも、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−n−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、より一層鮮やかな黄色系の発色色調が得られ、本発明の効果を遺憾なく発揮できる。更に、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタン、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレアから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
本発明では、感熱記録層中に、主に発色像の保存性をより一層高めるために、保存性改良剤を更に含有させることができる。このような保存性改良剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、及び4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4’−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、及び4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。勿論、保存性改良剤はこれらに限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0041】
本発明では、感熱記録層中に、記録感度を向上させるために、更に増感剤を含有させることができる。増感剤としては、従来から感熱記録体の増感剤として知られている化合物を使用することができ、例えばパラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジルエステル、アジピン酸ジ−o−クロルベンジル、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジルエステル、2−ナフチルベンジルエーテル、ジフェニルスルホン、1,2−ジフェノキシメチルベンゼン、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1,3−ビス(2−ナフトキシ)プロパン、メタターフェニル、ジフェニル、ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0042】
感熱記録層において使用する顕色剤、保存性改良剤及び増感剤等の助剤は、染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する時と同じ方法で水中に分散させ、感熱記録層用塗液の調製の際にこれに混合すればよい。また、これらの助剤を溶剤に溶解し、水溶性高分子化合物を乳化剤として用いて水中に乳化して使用することもできる。また保存性改良剤及び増感剤は、染料前駆体を含有する複合微粒子中に含有させてもよい。
【0043】
感熱記録層の白色度向上、及び画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒子径が10μm以下の微粒子顔料を感熱記録層に含有させることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、珪藻土、合成珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。
【0044】
感熱記録層を構成する他の成分材料としてはバインダーを用い、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、有色染料、有色顔料、及び蛍光染料等を用いることができる。バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等を挙げることができる。
【0045】
架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物、又は硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、ヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。架橋剤の使用量は、感熱記録層の全固形量100質量部に対し、1〜10質量部程度の範囲が好ましい。これにより、感熱記録層の耐水性を向上することができる。
【0046】
ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、及びポリエチレンワックス等のワックス類、並びに例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。
【0047】
金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱記録層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等の各種助剤を添加することができる。
【0048】
更に感熱記録層中に、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体分散微粒子を含有させて、耐光性を大幅に向上することもできる。
【0049】
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0050】
更には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2”−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系の紫外線吸収剤等を挙げることができる。勿論、これらに限られるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0051】
これらの紫外線吸収剤の中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2”−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物は、とりわけ顕著な耐光性改良効果を発揮するためより好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、または紫外線吸収剤の固体分散微粒子の含有割合については特に限定するものではないが、感熱記録層の全固形量のうち、5〜70質量%程度が好ましい。特に好ましくは15〜50質量%程度の範囲に調節する。5質量%より少ないと耐光性に対する改善効果が乏しく、70質量%より多く含有しても耐光性改善効果が乏しいだけでなく、感熱記録層の記録感度が低下する場合がある。なお、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、または紫外線吸収剤の固体分散微粒子は感熱記録層中に含有させるより後述する保護層中に含有させたほうが、より効果的に耐光性を改善することができる。
【0053】
紫外線吸収剤を内包するマイクロカプセルは、各種公知の方法で調製することができ、一般には上記の常温で固体乃至液体の紫外線吸収剤を必要に応じて有機溶剤に溶解して得た芯物質(油性液)を水性媒体中に乳化分散し、油性液滴の周りに高分子物質からなる壁膜を形成する方法によって調製される。マイクロカプセルの壁膜となる高分子物質の具体例としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、スチレン−アクリレート樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0054】
本発明における感熱記録層は、例えば水を分散媒体とし、特定の染料前駆体、顕色剤、必要により保存性改良剤、増感剤等を共に、或いは別々に分散した分散液を用いて、必要により顔料、バインダー、架橋剤、その他助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗液を、塗布量が乾燥重量で好ましくは2〜12g/m
2程度、より好ましくは2〜8g/m
2程度、更に好ましくは2〜7g/m
2程度となるように、支持体上に塗布及び乾燥して形成される。
【0055】
本発明における支持体は、種類、形状、寸法等に格別の限定はなく、例えば上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等の中から適宜選択して使用することができる。
【0056】
本発明では、支持体が金属光沢を有する態様も好ましい。黄色系の色調に発色する染料前駆体の中でも、本発明におけるピリジン骨格を有する第1染料前駆体が鮮やかな黄色系の色調に発色して、支持体の有する金属光沢を帯びることにより、記録面側から見て第1の色の色調として金色メタル調の発色像が得られる。本発明では、第1の色と、第1染料前駆体と第2染料前駆体が発色して混色することによって得られる第2の色とを組合せることにより、例えば文字または図形等の可変情報を金色メタル調にネガ/ポジ選択して表示することができる。
【0057】
金色メタル調を表示させる場合、支持体は、少なくとも片面に金属光沢を有するものであればよく、種類、形状、寸法等に格別の限定はない。例えば、金属板、金属箔、金属膜等のそれ自体が金属光沢を有する支持体、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、板紙、段ボール、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の金属光沢を有しない基材に金属光沢を付与した支持体を適宜選択して使用することができる。基材は透明であっても、半透明であっても、不透明であってもよい。これらの中でも、見た目に鏡面光沢が得られるため、フィルムまたは合成紙に金属光沢を付与した支持体が好ましい。
【0058】
基材の表面に金属光沢を付与する方法としては、メッキする方法、アルミ箔など金属箔を貼合する方法や、金属蒸着層を有する紙またはフィルムを貼合する方法がある。さらに、基材に直接、アルミニウムや銀などの金属蒸着膜を設ける方法も存在する。この場合には、基材表面に平滑な樹脂層を予め設け、そこへ金属蒸気を付着させて金属層を形成させる直接蒸着法や、予めフィルムに設けられた金属蒸着層を、接着剤を介して基材と貼合してフィルムを剥離して転写する方法がある。また、基材に印刷、または塗布することにより、金属光沢層を設ける方法もある。この場合、金属の粉末、例えばアルミニウム粉末、またはアルミニウム粉末を溶剤に分散させたアルミニウムペーストをビヒクルと混合して得たメタルインクを使用して、金属光沢のある面を得ることが可能である。金属粉末ではなく、雲母、または雲母に酸化チタンをコーティングして得た顔料等の無機パール顔料を使用したインクを使用することも可能である。
【0059】
上記の態様においては、感熱記録層が記録面側から見て支持体の有する金属光沢の一部または全部を覆っている。感熱記録層は、支持体の金属光沢を有する面側に形成されていてもよく、また、例えば透明な基材のように基材を通して目視で確認可能な金属光沢を有する支持体であれば、支持体の金属光沢を有する面の反対側に形成されていてもよい。支持体と感熱記録層との間には、後述する下塗り層を設けることもできるが、下塗り層は支持体の有する金属光沢を隠蔽しないことが好ましい。
【0060】
支持体が金属光沢を有する場合、感熱記録層中に微粒子状態で存在する第1染料前駆体及び加熱下に反応して前記第1染料前駆体を発色させる顕色剤が、サーマルヘッド等の印加エネルギーで一旦溶融して再び固化することにより、感熱記録層における乱反射を低減させて、感熱記録層を通して金色メタル調が得られるものと考えられる。本発明では、感熱記録層が支持体の有する金属光沢を遮るように覆っているが、発色像が金色メタル調を呈するため、感熱記録層が支持体の有する金属光沢を隠蔽している程度は、特に限定されない。例えば、記録面側から見てマット調の普通紙ライクとし、余白を残して記録することにより、金色メタル調、混色としての黒色、及び地肌の白色の3色の表示が可能である。また、感熱記録層を通して金属光沢が目視で確認可能な程度であれば、余白を残して記録することにより、金色メタル調、混色としての黒色、及び地肌の銀色の3色の表示が可能である。
【0061】
本発明では、必要に応じて、支持体と感熱記録層との間に、下塗り層を設けることもできる。これにより、記録感度をより高めることができる。下塗り層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料、有機中空粒子及び熱膨張性粒子の少なくとも1種、並びにバインダーを含有する下塗り層用塗液を支持体上に塗布及び乾燥して形成される。ここで、吸油量はJIS K 5101に記載の方法に従い、求められる値である。下塗り層に、シリカ、焼成カオリン等の空隙率の高い顔料を使用することにより、感熱記録層の記録感度を上げることができる。また下塗り層中にプラスチックピグメント、中空粒子、発泡体等を含有させることもその上に形成される感熱記録層の記録感度向上に効果がある。下塗り層用塗液の塗布量は、乾燥重量で3〜20g/m
2程度が好ましく、4〜12g/m
2程度がより好ましい。
【0062】
下塗り層中のバインダーとしては、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。これらのバインダーの中でも、バリア性を向上する観点から、澱粉−酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン系ラテックス等が好ましい。
【0063】
本発明においては、感熱記録層の上に従来より公知の感熱記録材料に使用されているような水溶性高分子材料と顔料を含有する保護層を設けることが望ましい。水溶性高分子材料及び顔料としては、前述の感熱記録層で例示したような材料を使用することができる。このとき架橋剤を添加して、保護層に耐水性を付与することがより望ましい。
【0064】
本発明においては、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体分散微粒子を保護層に含有させることで、耐光性を大幅に向上することもできる。特に、ポリウレタン−ポリウレア樹脂、或いはアミノアルデヒド樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、耐熱性に優れるため、サーマルヘッドへのスティッキングを防止する目的で感熱記録層中、或いは保護層中に添加される無機顔料の機能をも果たすという優れた付随効果を発揮し、しかも、他の壁膜からなるマイクロカプセルや通常の顔料に比較して屈折率が低く、且つ形状が球形であるため、保護層中に多量に含有させても光の乱反射に起因する濃度低下を招く恐れがないので好ましく用いられる。
【0065】
更に、顔料を含有させることにより、サーマルヘッドに対するカス付着、及びスティッキング防止することができる。顔料の吸油量としては、50ml/100g以上の顔料を使用することが好ましい。顔料の含有割合は、記録濃度を低下させない程度の量、即ち、保護層の全固形量のうち50質量%以下であることが好ましい。
【0066】
保護層は、例えば水を分散媒体として、バインダー、必要により架橋剤、顔料、その他助剤等を混合することにより調製された保護層用塗液を、塗布量が乾燥重量で好ましくは0.1〜15g/m
2程度、より好ましくは0.5〜8g/m
2程度となるように、感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成される。
【0067】
本発明では、電子線や紫外線で硬化された樹脂層を感熱記録層上、或いは保護層上に設けることもできる。電子線で硬化され得る樹脂の例としては、特開昭58−177392号公報、特開昭58−177392号公報等に記載がある。このような樹脂中に、非電子線硬化樹脂、顔料、消泡剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、及び可塑剤等の助剤を適宜添加することもできる。特に、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の顔料や、ワックス類、シリコン等の滑剤を添加することは、サーマルヘッドに対するスティッキング防止に役立つため好ましい。
【0068】
本発明では、感熱記録体の付加価値を高めるために、これに更に加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録体とすることができる。例えば、裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙とすることができる。特に、本発明の偽造防止用記録体に粘着加工を施したものは感熱ラベルとして有用である。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット記録用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。勿論、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油や可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロールや帯電防止のためにバック層を設けることもできる。
【0069】
支持体上に上記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。
【0070】
本発明では、支持体上に形成された少なくとも1層がカーテン塗布法により形成された層であることが好ましい。これにより、均一な厚みを有する層を形成することができ、記録感度を高めたり、油、可塑剤、アルコール等に対するバリア性を高めたりすることができる。カーテン塗布法は、塗液を流下して自由落下させ、支持体に非接触で塗布する方法であり、スライドカーテン法、カップルカーテン法、ツインカーテン法等の公知のものを採用することができ、特に制限されるものではない。カーテン塗布法では、同時多層塗布することにより、より均一な厚みを有する層を形成することができる。同時多層塗布では、各塗液を積層した後、塗布し、その後、乾燥させて各層を形成してもよいし、下層を形成する塗液を塗布した後、乾燥することなく下層塗布面が湿潤状態のうちに、下層塗布面上に上層を形成する塗液を塗布し、その後、乾燥させて各層を形成してもよい。本発明では、感熱記録層と保護層を同時多層塗布する態様がバリア性を向上する観点から好ましい。
【0071】
感熱記録面をスーパーカレンダーやソフトカレンダー等の既知の平滑化方法を用いて平滑化処理することは、その発色感度を高める効果がある。感熱記録面を、カレンダーの金属ロール及び弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。
【実施例】
【0072】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、顕色剤、染料前駆体、及び保護層に配合する顔料の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所製)を用いて測定した。
【0073】
実施例1
・第1染料前駆体の分散液(A液)の調製
黄色系の色調に発色する染料前駆体として、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス社製)を用いて、平均粒子径が0.7μmとなるように粉砕して第1染料前駆体の固体分散微粒子を得た。得られた分散液を以下、A液ともいう。
【0074】
・第2染料前駆体の分散液(B液)の調製
融点が200℃以上の黒色系の色調に発色する染料前駆体として、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス社製)を用いて、平均粒子径が0.7μmとなるように粉砕して第2染料前駆体の固体分散微粒子を得た。得られた分散液を以下、B液ともいう。
【0075】
・顕色剤分散液(C液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部からなる組成物を、縦型サンドミル(アイメックス社製)を用いて体積平均粒子径が1.5μmとなるまで粉砕して顕色剤分散液(以下、C液ともいう)を得た。
【0076】
・増感剤分散液(D液)の調製
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス社製)を用いて、平均粒子径が1.0μmとなるように粉砕して増感剤分散液(以下、D液ともいう)を得た。
【0077】
・感熱記録層用塗液(I)の調製
A液20部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L1571、旭化成社製、固形分濃度48%)5部、10%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:ポバール(登録商標)PVA−110、クラレ社製)25部、C液23部、D液11部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)2部、及び水17部からなる組成物を混合して感熱記録層用塗液(I)を得た。
【0078】
・感熱記録層用塗液(II)の調製
B液20部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L1571、旭化成社製、固形分濃度48%)5部、10%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:ポバール(登録商標)PVA−110、クラレ社製)25部、C液23部、D液11部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)2部、及び水17部からなる組成物を混合して感熱記録層用塗液(II)を得た。
【0079】
・カオリン分散液(E液)の調製
カオリン(商品名:UW−90(登録商標)、BASF社製)80部、ポリアクリル酸ナトリウムの40%水溶液(商品名:アロンT−50、東亞合成社製)1部、及び水53部を混合し、サンドミルを用いて体積平均粒子径が1.6μmとなるまで粉砕してカオリン分散液(以下、E液ともいう)を得た。
【0080】
・保護層用塗液の調製
E液25部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマー(登録商標)Z−200、日本合成化学工業社製、重合度:約1000、鹸化度:約98モル%)の15%水溶液50部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンP−7、中京油脂社製、固形分濃度30%)7.5部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ社製)5部、グリオキザール(日本合成化学工業社製、固形分濃度40%)0.3部、及び水12.5部からなる組成物を混合して保護層用塗液を得た。
【0081】
・感熱記録体の作製
合成紙(商品名:FPG−80、ユポ・コーポレーション社製、厚さ80μm)の片面上に、支持体に近い側から感熱記録層用塗液(I)を乾燥後の塗布量が2.5g/m
2、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2、保護層用塗液を乾燥後の塗布量が3.0g/m
2となるように順次メイヤーバーにて塗布及び乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行い、感熱記録体を得た。
【0082】
実施例2
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるように塗布する代わりに、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が2.5g/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0083】
実施例3
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液(I)を乾燥後の塗布量が2.5g/m
2となるように塗布する代わりに、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるように塗布し、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるように塗布する代わりに、感熱記録層用塗液(I)を乾燥後の塗布量が2.5g/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0084】
実施例4
実施例1のA液調製において、第1染料前駆体として4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0085】
実施例5
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるように塗布する代わりに、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が5.0g/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0086】
実施例6
実施例1の感熱記録体の作製において、感熱記録層用塗液(I)を乾燥後の塗布量が2.5g/m
2となるように塗布する代わりに、感熱記録層用塗液(I)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるように塗布し、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が4.0g/m
2となるように塗布する代わりに、感熱記録層用塗液(II)を乾燥後の塗布量が2.5g/m
2となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0087】
実施例7
実施例1の支持体として合成紙(商品名:FPG−80、ユポ・コーポレーション社製、厚さ80μm)の片面に代えて、アルミ蒸着フィルム(商品名:VM−PET、東レ社製、厚さ50μm)のアルミ蒸着層が設けられた面を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0088】
比較例1
実施例1のA液調製において、第1染料前駆体として4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0089】
比較例2
実施例1のB液調製において、第2染料前駆体として3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランに代えて、融点が215℃の赤色系の色調に発色する染料前駆体である3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオランを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0090】
比較例3
実施例1のB液調製において、第2染料前駆体として3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランに代えて、融点が182℃の3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0091】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0092】
(発色色調と発色濃度)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.660mJ/dot及び0.968mJ/dotの条件にて記録し、記録部の発色濃度としてx−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、エックスライト社製、色彩測定モード)で、Y(Yellow)及びV(Visual)濃度を測定した。なお、比較例2のみY(Yellow)及びM(Magenta)濃度を測定した。また、目視にて色調を評価した。
【0093】
(色分離性)
上記の印加条件によって発色させた像を目視にて観察し、色分離性を下記の基準で評価した。
○ :それぞれの発色色調として鮮明に認識できる。
○−:それぞれの発色色調として認識できる。
× :それぞれの発色色調として認識できない。
【0094】
【表1】