(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011480
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】UOE鋼管の外面溶接方法および外面溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/18 20060101AFI20161006BHJP
B21C 37/08 20060101ALI20161006BHJP
B23K 9/025 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
B23K9/18 D
B21C37/08 E
B23K9/025 B
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-145156(P2013-145156)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-16488(P2015-16488A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 雄大
【審査官】
青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−197839(JP,A)
【文献】
特開2013−111642(JP,A)
【文献】
特開昭53−104545(JP,A)
【文献】
特開平06−000647(JP,A)
【文献】
特開昭62−220286(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2181796(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00−10/02
B21C 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UOE鋼管を製造する際に、Oプレス成形後の被成形材の上部の突き合わせ部の外面を長手方向にサブマージアーク溶接によって溶接するためのUOE鋼管の外面溶接方法であって、フラックス供給ノズルからフラックスを前記被成形材の外面に供給し、フラックス中に供給した溶接電極ワイヤによって前記被成形材の外面を溶接した後、溶接熱でスラグ化されなかったフラックスをフラックス吸引回収ノズルで吸引・回収するとともに、長手方向で前記フラックス供給ノズルの位置から前記溶接電極ワイヤの位置までの間に、第2のフラックス吸引回収ノズルを設置して、前記被成形材の外面からこぼれ落ちるフラックスを前記第2のフラックス吸引回収ノズルで吸引・回収することを特徴とするUOE鋼管の外面溶接方法。
【請求項2】
UOE鋼管を製造する際に、Oプレス成形後の被成形材の上部の突き合わせ部の外面を長手方向にサブマージアーク溶接によって溶接するためのUOE鋼管の外面溶接装置であって、前記被成形材の外面にフラックスを供給するフラックス供給ノズルと、フラックス中に供給されて前記被成形材の外面を溶接する溶接電極ワイヤと、溶接熱でスラグ化されなかったフラックスを吸引・回収するフラックス吸引回収ノズルを備えているともに、長手方向で前記フラックス供給ノズルの位置から前記溶接電極ワイヤの位置までの間に、前記被成形材の外面からこぼれ落ちるフラックスを吸引・回収する第2のフラックス吸引回収ノズルを備えていることを特徴とするUOE鋼管の外面溶接装置。
【請求項3】
前記第2のフラックス吸引回収ノズルを、被成形材の長手方向に垂直な断面において、前記突き合わせ部の両外側に設置することを特徴とする請求項1に記載のUOE鋼管の外面溶接方法。
【請求項4】
前記第2のフラックス吸引回収ノズルが、被成形材の長手方向に垂直な断面において、前記突き合わせ部の両外側に設置されていることを特徴とする請求項2に記載のUOE鋼管の外面溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UOE鋼管の外面溶接方法および外面溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
UOE鋼管を製造する場合には、素材である鋼板(被成形材)にCプレス成形、Uプレス成形、Oプレス成形の順にプレス成形を施してほぼ円管状とし、ほぼ円管状になった被成形材(以下、「オープン鋼管」ともいう)の
突き合わせ部(オープン鋼管の上部)の外面をサブマージアーク溶接によって溶接する。
【0003】
図1は、上記のように、Oプレス成形によってほぼ円管状なった被成形材(オープン鋼管)1の
突き合わせ部1aの外面をサブマージアーク溶接によって溶接している状態を示す側面図である。
【0004】
搬送ロール9で搬送されるオープン鋼管1に対して、フラックス供給ノズル2から粒状のフラックス(融剤)5がオープン鋼管1の上部外面に供給され、フラックス5の中に供給された溶接電極ワイヤ3によってオープン鋼管1の
突き合わせ部1aの外面が溶接された後、溶接熱でスラグ化されなかったフラックス5はフラックス吸引回収ノズル4によって吸引・回収されて循環・再使用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−241382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製造するUOE鋼管(オープン鋼管1)の径が比較的小さい場合、外面の円周方向の曲率が大きくなることから、
図2に正面図を示すように、フラックス供給ノズル2からオープン鋼管1の上部外面に供給されたフラックス5がオープン鋼管1の上部外面からこぼれ落ちてしまうという問題があった。そして、このこぼれ落ちたフラックス6は、再利用されずにそのまま廃却されてしまうため、溶接コストの上昇を招いていた。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、UOE鋼管を製造する場合、Oプレス成形後の被成形材の外面をサブマージアーク溶接によって溶接する際に、フラックスを有効に利用して溶接コストを低減することができるUOE鋼管の外面溶接方法および外面溶接装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0009】
[1]UOE鋼管を製造する際に、Oプレス成形後の被成形材の外面をサブマージアーク溶接によって溶接するためのUOE鋼管の外面溶接方法であって、フラックス供給ノズルからフラックスを前記被成形材の外面に供給し、フラックス中に供給した溶接電極ワイヤによって前記被成形材の外面を溶接した後、溶接熱でスラグ化されなかったフラックスをフラックス吸引回収ノズルで吸引・回収するとともに、第2のフラックス吸引回収ノズルを設置して、前記被成形材の外面からこぼれ落ちるフラックスを前記第2のフラックス吸引回収ノズルで吸引・回収することを特徴とするUOE鋼管の外面溶接方法。
【0010】
[2]UOE鋼管を製造する際に、Oプレス成形後の被成形材の外面をサブマージアーク溶接によって溶接するためのUOE鋼管の外面溶接装置であって、前記被成形材の外面にフラックスを供給するフラックス供給ノズルと、フラックス中に供給されて前記被成形材の外面を溶接する溶接電極ワイヤと、溶接熱でスラグ化されなかったフラックスを吸引・回収するフラックス吸引回収ノズルを備えているともに、前記被成形材の外面からこぼれ落ちるフラックスを吸引・回収する第2のフラックス吸引回収ノズルを備えていることを特徴とするUOE鋼管の外面溶接装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、UOE鋼管を製造する場合、Oプレス成形後の被成形材の外面をサブマージアーク溶接によって溶接する際に、フラックスを有効に利用して溶接コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】オープン鋼管の外面をサブマージアーク溶接によって溶接している状態を示す側面図である。
【
図2】オープン鋼管の外面に供給されたフラックスがこぼれ落ちている様子を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施例におけるフラックス使用量悪化率の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図3、
図4は、それぞれ本発明の一実施形態を示す側面図と正面図である。
【0015】
図3に示すように、本発明の一実施形態においては、その基本的な構成としては、
図1に示した従来の場合と同様に、搬送ロール9で搬送されるオープン鋼管1に対して、フラックス供給ノズル2から粒状のフラックス(融剤)5がオープン鋼管1の上部外面に供給され、フラックス5の中に供給された溶接電極ワイヤ3によってオープン鋼管1の突き合わせ部1aの外面が溶接された後、溶接熱でスラグ化されなかったフラックス5はフラックス吸引回収ノズル4によって吸引・回収されて循環・再使用されるようになっている。
【0016】
その上で、この実施形態においては、
図3、
図4に示すように、オープン鋼管1の管長手方向でフラックス供給ノズル2の位置から溶接電極ワイヤ3の位置までの間に、第2のフラックス吸引回収ノズル7を設置して、オープン鋼管1の上部外面からこぼれ落ちるフラックス6を第2のフラックス吸引回収ノズル7で吸引・回収して循環・再使用するようにしている。
【0017】
これによって、この実施形態においては、オープン鋼管1の上部外面からフラックス5がこぼれ落ちやすい、外径が比較的小さいUOE鋼管を製造する場合であっても、オープン鋼管1の外面をサブマージアーク溶接によって溶接する際に、フラックス5を有効に利用して溶接コストを低減することができる。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例として、外径18inch〜32inch、管厚6.0mm〜50.8mmのUOE鋼管を製造した。
【0019】
その際に、本発明例として、上記の
図3、
図4に示した本発明の一実施形態に基づいて、オープン鋼管1の外面をサブマージアーク溶接によって溶接した。
【0020】
一方、比較のために、従来例として、
図1、
図2に示した従来技術によってオープン鋼管1の外面をサブマージアーク溶接によって溶接した。
【0021】
そして、それぞれの場合について、オープン鋼管1の上部外面からこぼれ落ちるフラックス6が無いとして定めた基準フラックス使用量Fsに対しする、実際のフラックス使用量Faの割合(Fa/Fs×100)をフラックス使用量悪化率(%)として算出した。その結果を
図5に示す。
【0022】
図5に示すように、本発明例では、従来例に比べて、フラックス使用量悪化率が低減しており、特に、外径が18inch〜24inchでは、その低減効果が著しい。
【0023】
これによって、本発明の有効性を確認することができた。
【符号の説明】
【0024】
1 オープン鋼管
1a 突き合わせ部
2 フラックス供給ノズル
3 溶接電極ワイヤ
4 フラックス吸引回収ノズル
5 フラックス
6 こぼれ落ちるフラックス
7 第2のフラックス吸引回収ノズル
9 搬送ロール