特許第6011503号(P6011503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6011503印面材ホルダ、印面形成方法及び印面材ホルダ形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011503
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】印面材ホルダ、印面形成方法及び印面材ホルダ形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/02 20060101AFI20161006BHJP
   B41K 1/50 20060101ALI20161006BHJP
   B41C 1/055 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B41K1/02 B
   B41K1/02 Z
   B41K1/50 A
   B41C1/055
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-197460(P2013-197460)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-63042(P2015-63042A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 弘志
【審査官】 杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−094816(JP,A)
【文献】 特開2010−179487(JP,A)
【文献】 特開2000−085227(JP,A)
【文献】 特開2004−276286(JP,A)
【文献】 特開平08−108604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/02
B41K 1/32
B41K 1/50
B41C 1/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版部によって印面が形成される印面材を保持する保持体と、
前記保持体上に設けられ、前記製版部を押しつけた際の前記印面材にかかる圧力を低減させる内部が空洞である凸部と、
を備えることを特徴とする印面材ホルダ。
【請求項2】
前記凸部は、前記製版部を押しつけた際に変形することにより、前記印面材にかかる圧力を低減させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印面材ホルダ。
【請求項3】
記凸部は、前記保持体の所定方向に対する前記印面材の両脇に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印面材ホルダ。
【請求項4】
製版部によって印面が形成される印面材と凸部とが1つの面側の互いに異なる位置でそれぞれ突出するように設けられている保持体を備え、
前記印面材は、幅の長さが互いに異なる複数種の印面材のうちの1つである、
とを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の印面材ホルダ。
【請求項5】
前記印面材は、前記製版部によって押圧されながら加熱されることにより非多孔質化可能な多孔質材を有することを特徴とする請求項に記載の印面材ホルダ。
【請求項6】
加熱されることにより非多孔質化可能な多孔質材を有し、幅の長さが互いに異なる複数種の印面材のうちの1つである印面材と、凸部と、が1つの面側の互いに異なる位置でそれぞれ突出するように設けられている保持体の前記印面材と前記凸部とに製版部を接触させながら、前記製版部で前記印面材を加熱させることによって前記印面材に印面を形成させることを特徴とする印面形成方法。
【請求項7】
保持体は、上部厚板紙と下部厚板紙との貼り付けにより一体化することで形成し、
凸部は、前記上部厚板紙の一部をプレス加工することにより形成し、
製版部によって印面が形成される印面材を保持する前記保持体から突出するように設けられた前記凸部によって、前記製版部が押し付けられた際の前記印面材にかかる圧力が低減されることを特徴とする印面材ホルダ形成方法。
【請求項8】
製版部によって印面が形成される印面材を保持する保持体と、前記保持体に設けられ、前記製版部を押しつけた際の前記印面材にかかる圧力を低減させる凸部と、を備えた印面材ホルダ形成方法において、
前記凸部のサイズは、前記印面材のサイズに応じて設定される、
ことを特徴とする印面材ホルダ形成方法。
【請求項9】
前記凸部の幅の長さは、前記印面材の幅の長さが小さいものほど、大きくなるよう形成される、
ことを特徴とする請求項8に記載の印面材ホルダ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し印用の印面を形成する際に用いられる印面材ホルダ印面形成方法及び印面材ホルダ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押し印を捺印する際にその都度スタンプインキを押し印の印面に付着させる手数を省くために、スポンジゴム等の多孔性シートを印面材として、これに予めインキを含浸させたものを印面とする押し印が知られている。
【0003】
このような押し印の印面を形成(以下、製版ともいう)する印面製版装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この印面製版装置では、印面材を台木に取り付けたスタンプを製版装置の上に固定し、印面材の表面に製版部(ここでは、サーマルヘッド)を押し付けながら移動させる。そして、製版部の発熱体を選択的に加熱し、印面材にインクの透過しない部分とインクの透過する部分を形成する。これによって、印面材に印面(スタンプを押したときに、文字、記号、図形などの印影を形成する部分)が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−100464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の印面製版装置では、印面材のサイズにかかわらずに、予め設定された一定の荷重で印面材に製版部を押し付ける。そのため、特許文献1に記載の印面製版装置では、印面材のサイズに応じて、製版部を押し付けた際の圧力は異なり、押し付け時の印面材の変形量も、印面材のサイズによって異なる場合がある。従って、特許文献1に記載の印面製版装置では、印面材のサイズによっては、製版部を強く押し付けすぎたり、逆に押し付けが足りなかったりすることがあり、製版を適切に行えないおそれがある。
【0006】
また、印面材にかかる圧力が一定になるように、印面製版装置が、印面材のサイズに応じて、製版部を押し付ける荷重を調整しながら製版することも考えられる。しかし、この場合、印面製版装置に新たな機構を搭載する必要があり、コストが増大してしまうおそれある。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、コストをかけずに、印面材の製版を適切に行うことができる印面材ホルダ印面形成方法及び印面材ホルダ形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る印面材ホルダは、
製版部によって印面が形成される印面材を保持する保持体と、
前記保持体上に設けられ、前記製版部を押しつけた際の前記印面材にかかる圧力を低減させる内部が空洞である凸部と、
を備えることを特徴とする
また、本発明に係る印面形成方法は、
加熱されることにより非多孔質化可能な多孔質材を有し、幅の長さが互いに異なる複数種の印面材のうちの1つである印面材と、凸部と、が1つの面側の互いに異なる位置でそれぞれ突出するように設けられている保持体の前記印面材と前記凸部とに製版部を接触させながら、前記製版部で前記印面材を加熱させることによって前記印面材に印面を形成させることを特徴とする。
また、本発明に係る印面材ホルダ形成方法は、
保持体は、上部厚板紙と下部厚板紙との貼り付けにより一体化することで形成し、
凸部は、前記上部厚板紙の一部をプレス加工することにより形成し、
製版部によって印面が形成される印面材を保持する前記保持体から突出するように設けられた前記凸部によって、前記製版部が押し付けられた際の前記印面材にかかる圧力が低減されることを特徴とする。
また、本発明に係る印面材ホルダ形成方法は、
製版部によって印面が形成される印面材を保持する保持体と、前記保持体に設けられ、前記製版部を押しつけた際の前記印面材にかかる圧力を低減させる凸部と、を備えた印面材ホルダ形成方法において、
前記凸部のサイズは、前記印面材のサイズに応じて設定される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印面材の製版を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る印面材ホルダの平面図、(b)はそのA−A’矢視断面図である。
図2図1の破線丸XIIIの拡大図である。
図3】印面形成した印面材を貼り付けた押し印の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る印面材ホルダをプリンタとともに示す斜視図である。
図5】プリンタの断面図である。
図6】ケースを取り外した状態のプリンタの斜視図である。
図7】ケースを取り外した状態のプリンタの側断面図である。
図8】ケースとサーマルヘッドとを取り外した状態のプリンタの平面図である。
図9】プリンタのブロック図である。
図10】サーマルヘッドを押し付けた際の印面材ホルダの拡大図である。
図11】(A)は図1に示す印面材ホルダよりも、サイズの小さい印面材を保持する印面材ホルダの平面図、(B)はそのA−A’矢視断面図である。
図12】印面材ホルダの他の例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る印面材ホルダ1について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1(A)は、印面材ホルダ1の平面図、図1(B)は、そのA−A’矢視断面図である。図1(A),(B)に示すように、印面材ホルダ1は、印面材2を中央部に固定して保持する。印面材ホルダ1は、印面材2の製版時に使用される治具であり、印面材ホルダ1を保持したまま後述するプリンタ3に挿入されて搬送される。これにより、搬送性に難のある印面材2をスムーズに搬送することが可能となる。また、製版の終了後、印面材ホルダ1は、印面材2と分離されて廃棄(または再利用)される。また、保持する印面材2のサイズ毎に、異なる種類の印面材ホルダ1が用いられる。
【0012】
なお、印面材2は、印面が形成される主面を有し、液状のインクを含浸可能な多孔質のスポンジ体、例えば、多孔質エチレン酢酸ビニル・コポリマー(以下、「EVA」という)で構成されている。EVAは無数の気泡を有しており、この気泡のなかにインクを含浸する。また、EVAは、高い弾性と摩擦係数を有する。このため、EVAをそのままサーマルプリンタに挿入して搬送を行おうとしても、サーマルヘッド31とEVAとの摩擦力が大きく、安定した搬送を行うことができない。
【0013】
図1(B)に示すように、印面材ホルダ1は、コートボールから成る2枚の厚板紙(上部厚板紙11、下部厚板紙12)を張り合わせて構成されている。印面材ホルダ1の一方の側部(図1(A)における右方)に切欠部1aが形成されている。
【0014】
上部厚板紙11には、その中央部に印面材2を固定するための位置決め孔1bが形成されている。この位置決め孔1bに、印面材2が嵌め込まれて固定される。
【0015】
また、印面材ホルダ1の上面(印面材2が保持される面)には、印面材2から図1(A)における左右に離間した位置に、一対の凸部1cが形成されている。この凸部1cは、下部厚板紙12と張り合わせる前に、図示せぬプレス機等により上部厚板紙11を金型に押し付けてプレス加工することで形成される。また、図1(B)に示すように、凸部1cは、保持されている印面材2の上面から若干突出するように形成されている。なお、図1(B)では、凸部1cの断面は半円状であるが、凸部の形状は自由であり、断面が台形状や山状の凸部を形成してもよい。
【0016】
下部厚板紙12は、上部厚板紙11と外形が同一に形成されている。下部厚板紙12には、位置決め孔1aに相当するものが形成されていない。下部厚板紙12と上部厚板紙11とは、一体に貼り合わされている。貼り合わされた状態において、下部厚板紙12は、印面材2の裏面(製版する面と反対の面)に接している。
【0017】
印面材2の上面(製版される面)は、上部厚板紙11の上面から若干突出するように構成されている。本実施形態においては、上部厚板紙11に対して印面材2が0.6mm突出している。
【0018】
また、図1(B)に示すように、印面材ホルダ1は、上面及び印面材2の上面を被覆するフィルム13を有する。フィルム13は、PET(Polyethylene Terephthalate)またはポリイミド等を基材として作られており、耐熱性・熱伝導性・表面平滑性を有している。耐熱性に関しては、後述するサーマルヘッド31の温度及び印面材2の溶融点よりも高い温度に耐えられるものがフィルム13として用いられている。
【0019】
図2は、図1(B)において破線丸XIIIで囲んだ部分の拡大図である。図2に示すように、上部厚板紙11と下部厚板紙12とは、両面接着シート14により接着されている。また、上部厚板紙に凸部1cを設けたことにより、上部厚板紙11と下部厚板紙12との間には空洞1dが形成されている。
【0020】
また、フィルム13は、印面材ホルダ1の表面、つまり印面材2が嵌め込まれている上部厚板紙11の表面に両面接着シート15により接着されている。なお、印面材2上のフィルム13は、印面材と接着していない。
【0021】
なお、印面材2は製版が終了した後に、印面材ホルダ1から取り出される。そして、取り出された印面材2は、図3に示すように、球状の持ち手41と方形の台座42とから構成される押し印40の台座42の下面に両面接着シート43で貼り付けられる。
【0022】
続いて、上述した印面材ホルダ1を使用して製版を行うプリンタ3(印面製版装置)について、図4図9を参照して説明する。図4は、上述した印面材ホルダ1と、この印面材ホルダ1を使用して製版を行うプリンタ3とを共に示す外観斜視図であり、図5はその断面図である。プリンタ3は、挿入口3cから挿入された印面材ホルダ1を排出口3dに向けて搬送する。そして、プリンタ3は、搬送中の印面材ホルダ1に保持されている印面材2にサーマルヘッド31を押し付け、サーマルヘッド31の発熱体を選択的に加熱することにより、印面材2を製版(ここでは、印面を形成すること)する。プリンタ3は、いわゆるサーマルプリンタである。
【0023】
なお、理解を容易にするため、以下の説明においては、互いに直交するX,Y,Z方向を設定する。図面中に記載された方向を示すX、Y及びZの符号について、矢視方向を“+”を付して示し、矢視方向に対する逆方向を“−”を付して示し、両方向を示す場合には、符号を付さない。X方向は、製版対象物を搬送する方向に対応し、前後方向ともいう。Y方向は、プリンタ3の幅方向に対応し、左右方向や長手方向ともいう。Z方向は、印面材2にサーマルヘッド31を押し付ける方向に対応し、上下方向ともいう。
【0024】
図4に示すように、プリンタ3は、下ケース3aと上ケース3bとから構成されるケースを備えており、下ケース3aの前後面に印面材ホルダ1を通すための開口(挿入口3c(図5)、排出口3d)が形成されている。上ケース3bの上面には、入力操作部38(電源オンボタン)が設けられている。
【0025】
図5図6に示すように、プリンタ3は、サーマルヘッド(製版部)31と、ガイド32と、プラテンローラ(搬送ローラ)33と、を備えている。サーマルヘッド31、ガイド32、プラテンローラ33の両脇には、Y方向に対向する一対のサイドフレーム34が設けられている。
【0026】
プラテンローラ33は、両サイドフレーム34間に渡されて設けられており、両端が各サイドフレーム34を貫通している。プラテンローラ33の両端部は、サイドフレーム34に対して回転自在になるように、サイドフレーム34に支持されている。
【0027】
ガイド32には、印面材2をプラテンローラ33に導くための傾斜面32aが形成されている。傾斜面32aは、Y方向視において、傾斜面32aの延長線がプラテンローラ33の外周面に接するように配置されている。
【0028】
また、図7図8に示すように、傾斜面32aの凹部32bには、センサ35が設けられている。センサ35は、反射型光学センサであり、検出(受光)した光の光量に応じた信号を後述する中央制御回路312に出力する。具体的には、センサ35は、印面材ホルダ1の切欠部1aを検知する。
【0029】
サーマルヘッド31は、プラテンローラ33に対向するように設けられる。サーマルヘッド31は、X方向に搬送される印面材ホルダ1に保持されている印面材2を押圧する。サーマルヘッド31における印面材2を押圧する部分(以下、押圧部)31aは、Y方向に沿った直線帯状になっている。押圧部31aの長さ(Y方向の長さ)は、印面材2の幅(Y方向に沿った長さ)よりも長くなっている(印面材ホルダ1の種類によらず長い)。このため、印面材2の幅方向に沿って延びる直線帯状の部分が一様に、押圧部31aによって押圧されて変形する。押圧部31aの表面には、印面の形成時に選択的に加熱される複数の発熱体(図示せず)が、押圧部31aが延びる方向(Y方向)に沿ってならんでいる。このため、印面材2の直線帯状の部分(押圧部31aによって押圧され変形する部分)では、発熱する発熱体に対応した箇所が加熱されることになる。また、サーマルヘッド31は、プレスバネ36の一端に連結されており、上下方向(Z方向)に移動可能に構成されている。なお、このプリンタ2には、サーマルヘッドの押圧部31aの位置を電気的に制御する機構は備わっておらず、押圧部31aが印面材ホルダ1に加える荷重は一定である。
【0030】
図9は、プリンタ3の構成例を示すブロック図である。プリンタ3は、サーマルヘッド31と、センサ35と、電源回路37と、入力操作部38と、メモリ39と、モータドライバ310と、ステッピングモータ311と、中央制御回路312とを備える。
【0031】
サーマルヘッド31は、中央制御回路312から出力されたデータと印刷信号とを受け取り、内部に設けられたドライバICにより通電ドットの制御を行い、印面材ホルダ1に保持されて押圧部31aに接している印面材2の表面を製版(印刷又は印字、以下同様)する。サーマルヘッド31は、一例として、200ドット/25.4mmの解像度で48mmの有効印字幅を有している。
【0032】
センサ35は、例えば、反射型光学センサであり、印面材ホルダ1の切欠部1aを検知するために使用される。例えば、センサ35が切欠部1aを検知することにより、中央制御回路312は、製版開始位置を識別することができる。
【0033】
電源回路37は、電源IC(Integrated Circuit)等からなり、プリンタ3の各部に必要な電源を作り出して供給している。なお、本構成例では、中央制御回路312から各部が受け取るのはデータと信号のみであり、各部は、製版等に必要な電力を電源回路37から得ている。
【0034】
入力操作部38は、上ケース3bの上面に設けられているボタン(電源オンボタン)等である。
【0035】
メモリ39は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、中央制御回路312が処理を実行するためのプログラムや、各種のデータを記憶する。
【0036】
モータドライバ310は、中央制御回路312から出力される駆動信号を受け取り、駆動用の励磁信号を送信してステッピングモータ311を制御する。
【0037】
ステッピングモータ311は、モータドライバ312によって供給された励磁信号に基づいて駆動する。ステッピングモータ311は、図示しない複数のギアを介して上述したプラテンローラ33に連結されている。従って、ステッピングモータ311の駆動力は複数のギアを介してプラテンローラ33に伝達され、プラテンローラ33は、ステッピングモータ311の駆動力によって回転する。なお、ステッピングモータ311の駆動電力は電源回路37から供給される。
【0038】
中央制御回路312は、CPU(Central Processing Unit)を備え、メモリ39に記憶されたプログラムに従って各種処理を実行することにより、プリンタ3の全体を制御する。例えば、中央制御回路312は、製版時にモータドライバ310に駆動信号を送信してプラテンローラ33を回転させ、印面材ホルダ1を搬送する。また、中央制御回路312は、製版時にサーマルヘッド31に印刷信号を送信して、サーマルヘッド31の製版動作を制御する。
【0039】
また、中央制御回路312は、モータドライバ310に出力したパルス信号のステップ数を数えることによりステッピングモータ311をどれだけ回転させたか、つまり印面材ホルダ1を何mm搬送したかを正確に把握することが出来る。本実施形態では、プリンタ3は、1−2相励磁駆動を採用しており、ギア比が1ライン(0.125mm)当たり16ステップとなるように構成されている。すなわち、プリンタ3は、1ステップで、印面材ホルダ1を0.0078mm搬送する。
【0040】
次に、印面材2を製版する原理について簡単に説明する。前述したように印面材2は、EVAで構成されている。EVAは熱可塑性の物性を有するので、例えば70度〜120度に加熱すると、熱を加えた箇所は軟化し、一度軟化した箇所は冷えると硬化する。そして、硬化した箇所は気泡部分が埋まり非多孔質化され、その部分はインクを通さなくなる。
【0041】
そのため、この特性を利用して、プリンタ3のサーマルヘッド31でEVAの表面の任意の箇所を約1msecから5msec程度加熱してその箇所を非多孔質化させ、インクの通過を禁止することが出来る。なお、印面材2は、熱裁断機によって方形に裁断されている。このため、印面材2の4つの側面は、いずれもインクを通過させない。なお、印面材2の裏面も加熱され、インクを通過させない。これによって、印面となる主面以外の面からインクがしみ出ることを防止している。
【0042】
従って、印面の形成において、インクを透過させる部分は加熱せず、透過させない部分は加熱することで、スタンプ押印時に得たい印影に応じたインク透過部分を形成することができる。なお、印面形成時の誤差と印面材2の側面がインクを通過しないこととを考慮して、印面材2のサイズは印影のサイズよりも若干大きくなっている。例えば、印影のサイズが30mm×30mmの場合には、印面材2のサイズは32mm×32mmになっている。
【0043】
続いて、印面材ホルダ1の備える機能及び効果について説明する。
【0044】
印面材ホルダ1は、印面材2を保持する機能を有する。具体的には、印面材2は、上部厚板紙11の位置決め孔1bで固定され、下部厚板紙12により下面から保持される。よって、印面材ホルダ1に保持された印面材2は、外力が加えられても変されにくい。
【0045】
また、印面材2の上面(サーマルヘッド31が接する面)は、印面材ホルダ1のフィルム13によって被覆されている。なお、このフィルム13の溶融点は、印面材2(EVA)の溶融点よりも高く、耐熱性を有している。
【0046】
従って、製版時に印面材ホルダ1に保持された印面材2にサーマルヘッド31を押し付けた際、サーマルヘッド31の熱により印面材2の表面が溶融しても、フィルム13は溶融しない。従って、フィルム13としての被覆性は失われずに印面材2を保護することができるため、サーマルヘッド31が溶融して軟化した印面材2の中に埋没することを防ぐことができる。また、フィルム13とサーマルヘッド31との間の摩擦係数は極めて小さいため、サーマルヘッド31は、フィルム13の面に沿って容易に発熱印字(製版)を続けていくことができる。
【0047】
さらに、印面材ホルダ1には、上面に凸部1cが形成されており、凸部1cの裏側には、下部厚板紙12との間に空洞1dが形成されている(図2参照)。なお、この凸部1cの高さや幅は、事前の設定により、製版時にサーマルヘッド31の押圧部31aを押し付けた際に、製版に適切な圧力が印面材2にかかるように(即ち、印面材2の変量が適切になるように)設計されている。
【0048】
従って、図10に示すように、プレスバネ36に連結されたサーマルヘッド31の押圧部31aがプレスバネ36の弾性力によって印面材2に押し付けられると、凸部1cも共に押しつけられてつぶれ(変し)、サーマルヘッド31に上方向(+Z方向)の力(反力)を加える。そのため、印面材2にかかる力を低減させることができるため、製版に適切な圧力で製版を行うことが可能となる。
【0049】
なお、印面材2のサイズ(Y方向の長さ)が小さくなるほど、サーマルヘッド31の押圧部31aと接する面積は小さくなり、印面材2にかかる圧力は大きくなる。従って、図11に示すように、図1に示すものよりもサイズの小さい印面材2用の印面材ホルダ1の場合、圧力をより低減させるために、よりサイズ(幅)の大きい凸部1cが設定されている。なお、図1に示す凸部1cよりも高い凸部1cを設けることにより、圧力をより低減させてもよい。
【0050】
即ち、印面材2の各サイズに対応した各印面材ホルダ1で、サーマルヘッド31の押圧部31aを同一荷重で押し付けた際の印面材2にかかる圧力が適切になるように、各印面材ホルダ2の凸部1cのサイズは設定されている。
【0051】
また、最もサイズの大きい印面材2用の印面材ホルダ1には凸部1cを形成せず、この印面材ホルダ1を押圧部31aで押し付けた際の圧力が適切になるように、プレスバネ36の位置等を設定しておく。そして、この印面材ホルダ1よりも小さな印面材2用の各印面材ホルダ1には、凸部1cを形成して、全ての種類の印面材ホルダ1で、押圧部31aを押し付けた際の圧力が適切になるようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施形態によれば、印面材2を保持する印面材ホルダ1に凸部1cが設けられている。そのため、一定の荷重で印面材2にサーマルヘッド31を押し付ける従来のサーマルプリンタであっても、印面材2のサイズに応じた適切な圧力で製版を行うことが可能となる。
【0053】
また、この凸部1cは、上部厚紙板11をプレス加工するだけで簡単に作成できる。また、凸部1cを設けるために新たな材料を追加する必要も無い。そのため、印面材ホルダ1に凸部1cを設けることによるコストも抑えることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない部分での変形や応用は勿論可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、上部厚紙板11を変(プレス加工)することにより、凸部1cを形成した。しかしながら、凸部1cの形成方法はこれに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、平坦な上部厚紙板11の上面に、コートボール16で形成された、内部に空洞1eを有する筒状の凸部1cを形成してもよい。また、凸部1cの内部は必ずしも空洞である必要は無く、凸部1cを構成する材料も種々のものを採用可能である。例えば、スポンジ状やゴム状の凸部1cを形成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、フィルム13は、印面材ホルダ1の表面と印面材ホルダ1に保持された印面材2の表面とを被覆したが、フィルム13は印面材2の一部のみを被覆してもよい。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0058】
(付記1)
製版部によって印面が形成される印面材を保持する保持体と、
前記保持体上に設けられ、前記製版部を押しつけた際の前記印面材にかかる圧力を低減させる凸部と、
を備えることを特徴とする印面材ホルダ。
【0059】
(付記2)
前記凸部は、前記製版部を押しつけた際に変型することにより、前記印面材にかかる圧力を低減させる、
ことを特徴とする付記1に記載の印面材ホルダ。
【0060】
(付記3)
前記凸部の内部は空洞である、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の印面材ホルダ。
【0061】
(付記4)
前記印面材のサイズに応じて、前記凸部のサイズを設定する、
ことを特徴とする付記1乃至3の何れか1つに記載の印面材ホルダ。
【0062】
(付記5)
前記保持体は、上部厚板紙と下部厚板紙との貼り合わせにより一体化されることで形成されており、
前記凸部は、前記上部厚紙板をプレス加工することにより形成される、
ことを特徴とする付記1乃至4の何れか1つに記載の印面材ホルダ。
【0063】
(付記6)
前記凸部は、前記印面材の前記保持体の搬送方向に対する両脇に形成される、
ことを特徴とする付記1乃至5の何れか1つに記載の印面材ホルダ。
【符号の説明】
【0064】
1…印面材ホルダ、11…上部厚板紙、12…下部厚板紙、13…フィルム、14,15…両面接着シート、16…コートボール、1a…切欠部、1b…位置決め孔、1c…凸部、1d,1e…空洞、2…印面材、3…プリンタ、3a…下ケース、3b…上ケース、3c…挿入口、3d…排出口、31…サーマルヘッド(製版部)、31a…押圧部、32ガイド、33…プラテンローラ、34…サイドフレーム、35…センサ、36…プレスバネ、37…電源回路、38…入力操作部、39…メモリ、310…モータドライバ、311…ステッピングモータ、312…中央制御回路、40…押し印、41…持ち手、42…台座、43…両面接着シート
図1
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図12