特許第6011510号(P6011510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011510
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】コネクタおよびワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/58 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   H01R13/58
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-221106(P2013-221106)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82469(P2015-82469A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 雄高
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−040264(JP,A)
【文献】 特開平09−180853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの端子挿入面部に、電線の端部に圧着した端子が挿入される複数の端子挿入孔を、前記端子挿入面部の横幅方向に並ぶよう形成したコネクタであって、
前記端子挿入孔に対応して前記端子挿入面部の横幅方向へ並ぶよう設けた複数の案内部を有し、
前記各案内部は、前記端子挿入孔に前記端子が挿入された前記電線を、前記端子挿入面部から一定距離に離れるまで垂直方向に案内するよう構成されており、
前記複数の案内部を、前記電線の横出し方向側に位置するものほど、前記端子挿入面部からの距離が小さくなるよう構成したことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタと、コネクタハウジングの端子挿入孔に端子が挿入された電線とを備えたことを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索されるワイヤーハーネスは、電線の端部に圧着したコネクタを含んで構成される。従来、図8に示すように、コネクタハウジング1の端子挿入面部2に、電線3の端部に圧着した端子が挿入される複数の端子収容室4を、端子挿入面部2の横幅方向に並ぶよう備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上述した構成に加えて、電線3の端部に被着されゴム製の防水栓を備え、電線をコネクタハウジング1の端子収容室4に挿入したときに、防水栓が端子収容室の内周部に密着して、端子収容室4の内部を水密に保つようにしたものがある。
【0004】
端子収容室4に端子を挿入した電線3は、コネクタハウジング1の端子挿入面部2の横幅方向一端部に備えられたコ字形状を有する電線配線方向規制用のガイド枠5と端子挿入面部2とで囲まれる空間に挿通され、端子挿入面部2の横幅方向の一方側(右方側)へ横出し状態で案内されるようになっている。
【0005】
電線3の全長は、端子が端子挿入面部2の複数の端子収容室4のうち、左側に挿入されるものほど、右側の端子収容室4に挿入されるものに比べて長くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−282764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したコネクタハウジング1および電線3を自動車等に実装する際に、コネクタハウジング1を電線3の延長方向(右側方)と逆の向き(左方側)に引っ張ると、複数の電線3のうち、最も余長が少ない電線3に張力が作用する。この張力は、当該電線3の端子圧着部に対し、端子の軸線に関して斜め方向に作用することになる。このため、電線3に断線が生じる、あるいは防水栓が変形して端子収容室4の内部を水密に保てなくなることが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、横出し状態の電線の端子圧着部に端子の軸線に関して斜め方向に張力が掛からないコネクタおよびワイヤーハーネスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコネクタは、上記目的を達成するため、コネクタハウジングの端子挿入面部に、電線の端部に圧着した端子が挿入される複数の端子挿入孔を、前記端子挿入面部の横幅方向に並ぶよう形成したコネクタであって、前記端子挿入孔に対応して前記端子挿入面部の横幅方向へ並ぶよう設けた複数の案内部を有し、前記各案内部は、前記端子挿入孔に前記端子が挿入された前記電線を、前記端子挿入面部から一定距離に離れるまで垂直方向に案内するよう構成されている。
【0010】
この構成により、本発明に係るコネクタは、各端子挿入孔から延びる電線を、各案内部で端子挿入面部から一定距離だけ垂直方向に案内し、それから各電線に対応する案内部の電線横出し側部分にて横出しする。このため、コネクタは、コネクタハウジングを電線の横出し方向とは逆向きに引っ張ると、最も余長が少ない電線の屈曲部分が案内部に当接し、当該電線に作用する張力は、端子挿入面部に対して垂直方向に作用する。このため、本発明に係るコネクタは、横出し状態の電線の端子圧着部に端子の軸線に関して斜め方向に張力が掛からなくなり、電線の断線を防ぐことができる。
【0011】
上述した構成のコネクタにおいて、前記複数の案内部を、前記電線の横出し方向側に位置するものほど、前記端子挿入面部からの距離が小さくなるようにするのが好ましい。
【0012】
この構成により、本発明に係るコネクタは、各案内部を通って横出しされる電線を、無理なく平行に重ねて横出しすることができる。
【0013】
本発明に係るワイヤーハーネスは、上記目的を達成するため、上述したコネクタと、コネクタハウジングの端子挿入孔に端子が挿入された電線とを備えた構成としている。
【0014】
この構成により、本発明に係るワイヤーハーネスは、コネクタハウジングを電線の延長方向とは逆の向きに引っ張ると、最も余長が少ない電線の屈曲部分が案内部に当接して、案内部に応力が作用する。このため、ワイヤーハーネスは、横出し状態の電線の端子圧着部に端子の軸線に関して斜め方向に張力が掛からなくなり、電線の断線を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、横出し状態の電線の端子圧着部に端子の軸線に関して斜め方向に張力が掛からないコネクタおよびワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態に係るコネクタおよびワイヤーハーネスの構成図であって、(a)はコネクタの概略斜視図、(b)はワイヤーハーネスの概略平面図である。
図2図1(b)に示す電線の端部の概略側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るコネクタにおけるコネクタハウジングの概略正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るコネクタにおける電線支持部材の概略正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るコネクタにおけるコネクタハウジングに電線支持部材を装着する状態を示す概略斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るコネクタの概略正面図である。
図7】本発明の実施の形態に係るコネクタにおけるコネクタハウジングに電線支持部材を装着する状態を示す概略平面図である。
図8】従来のコネクタハウジングの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るコネクタおよびワイヤーハーネスについて、図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)、図1(b)に示すように、本実施の形態に係るコネクタCは、コネクタハウジング10と、電線案内部材20とを備え、自動車等に配索されるワイヤーハーネスWを構成するものである。ただし、本発明に係るコネクタおよびワイヤーハーネスの用途は、自動車に限定されるものではない。
【0019】
図1(a)および図2に示すように、コネクタハウジング10の端子挿入面部11には、電線40の端部に圧着した端子41を挿入する複数の端子挿入孔12が、端子挿入面部11の横幅方向に並ぶよう形成されている。図2に示すように、電線40の端子41に隣接する部分から端子41の一端部にかけて、ゴム製の防水栓42が備えられている。防水栓42は、端子41が端子挿入孔12に挿入されたときに、端子挿入孔12の内周部に密着し、端子挿入孔12の内部に水密に保つよう構成されている。
【0020】
図1(a)、図1(b)に示すように、コネクタハウジング10は、直方体形状を有し、図3に示すように、直方体の一端面部である端子挿入面部11に合計6個の端子挿入孔12が形成され、また、端子挿入面部11の横幅方向一端部および他端部に、リブ挿入口13が形成されている。端子挿入孔12は、端子挿入面部11の横幅方向(左右方向)に3つ並び、かつ端子挿入面部11の縦方向(上下方向)に2段並ぶようになっている。
【0021】
図1(a)、図1(b)、図4に示すように、電線案内部材20は、支持部24と、案内部25,26,27と、支持リブ28とを備えている。
【0022】
図4図5に示すように、支持部24は、コネクタハウジング10の端子挿入面部11に当接される板状部材であり、左右方向に並ぶ3つの開口部21,22,23を有するとともに、固定リブ29を有し、固定リブ29が上述した端子挿入面部11のリブ挿入口13に係合することによりコネクタハウジング10に固定されるようになっている。
【0023】
図6に示すように、支持部24に形成された3つの開口部21,22,23は、それぞれ端子挿入面部11の横幅方向左側位置の端子挿入孔12、横幅方向中央位置の端子挿入孔12、ならびに横幅方向右側位置の端子挿入孔12を露出させるようになっている。
【0024】
図1(a)、図1(b)、図5図6に示すように、案内部25,26,27は、端子挿入孔12に対応して端子挿入面部11の横幅方向へ並ぶよう設けられている。また、案内部25,26,27は、端子挿入孔12に端子41が挿入される電線40を、端子挿入面部11の横幅方向の一方側へ屈曲させて案内するよう構成されている。
【0025】
さらに、図7に示すように、案内部25,26,27は、端子挿入面部11の横幅方向の一方側に位置するものほど、端子挿入面部11からの距離S1,S2,S3が小さくなるよう構成されている。
【0026】
案内部25は、上下一対の梁部30aおよび左右一対の柱部30bによって構成され、開口部21に向き合う矩形枠状のフレーム30と、フレーム30を支持部24に支持する一対の壁部31とを有し、上部および下部が開口した状態になっている。
【0027】
壁部31は、フレーム30の柱部30bおよび支持部24に連なり、フレーム30を支持部24に固定している。フレーム30は、支持部24に対して距離S1を隔てている。
【0028】
また、支持部24に向かって右側に位置する柱部30bは、開口部21を介して端子挿入孔12に端子41が挿入された電線40を、端子挿入面部11の横幅方向右方側へ屈曲させて横出し状態で案内するようになっている。
【0029】
案内部26は、上下一対の梁部32aおよび支持部24に向かって右側に位置する柱部32bによって構成され、開口部22に向き合うコ字状のフレーム32と、フレーム32を支持部24に支持する壁部33とを有し、上部および下部が開口した状態になっている。
【0030】
壁部33は、フレーム32の柱部32bおよび支持部24に連なり、フレーム32を支持部24に固定している。梁部32aの左側端部は、案内部25において右側に位置している壁部31に連なっている。フレーム32は、支持部24に対して距離S2を隔てている。この距離S2は、支持部24に対するフレーム30の距離S1よりも小さくなっている。
【0031】
また、柱部32bは、開口部22を介して端子挿入孔12に端子41が挿入された電線40を、端子挿入面部11の横幅方向右方側へ屈曲させて横出し状態で案内するようになっている。
【0032】
案内部27は、上下一対の梁部34aおよび支持部24に向かって右側に位置する柱部34bによって構成され、開口部23に向き合うコ字状のフレーム34と、フレーム34を支持部24に支持する壁部35とを有し、上部および下部が開口した状態になっている。
【0033】
壁部35は、フレーム34の柱部34bおよび支持部24に連なり、フレーム34を支持部24に固定している。梁部34aの左側端部は、案内部26の壁部33に連なっている。フレーム34は、支持部24に対して距離S3を隔てている。この距離S3は、支持部24に対するフレーム32の距離S2よりも小さくなっている。よって、案内部27は、上部および下部が開口した状態になっている。
【0034】
また、柱部32bは、開口部23を介して端子挿入孔12に端子41が挿入された電線40を、端子挿入面部11の横幅方向右方側へ屈曲させて横出し状態で案内するようになっている。
【0035】
図5図6に示すように、支持リブ28は、フレーム34の柱部34bと同一平面上となるように連なり、端子挿入面部11の横幅方向右方側へ突出している。図1(b)に示すように、支持リブ28には、複数の電線40がバンド43により結束されるようになっている。
【0036】
本実施の形態に係るワイヤーハーネスWを製作するときには、図1(a)、図5図6図7に示すように、端子挿入面部11と支持部24とが当接するようリブ挿入口13に固定リブ29を係合させて、コネクタハウジング10に電線案内部材20を取り付ける。これにより、コネクタハウジング10と電線案内部材20とでコネクタCを構成する。
【0037】
初めに、案内部27のフレーム34および支持部24の開口部23に、2本の電線40の端部を挿通し、端子挿入面部11の横幅方向右側部上下の端子挿入孔12に、電線40の端子41を挿入する。これらの電線40を、フレーム34の柱部34bの外面側で屈曲させて端子挿入面部11の横幅方向右方側へ案内する。
【0038】
次に、案内部26のフレーム32および支持部24の開口部22に、2本の電線40の端部を挿通し、端子挿入面部11の横幅方向中央部上下の端子挿入孔12に、電線40の端子41を挿入する。これらの電線40を、フレーム32の柱部32bの外面側で屈曲させて端子挿入面部11の横幅方向右方側へ案内する。これにより、案内部26を通して横出しされる2本の電線40は、案内部27を通して横出しされる2本の電線40に重なる。
【0039】
続いて、案内部25のフレーム30および支持部24の開口部21に、2本の電線40の端部を挿通し、端子挿入面部11の横幅方向左側部上下の端子挿入孔12に、電線40の端子41を挿入する。これらの電線40を、フレーム30の右側の柱部30bの外面側で屈曲させて端子挿入面部11の横幅方向右方側へ案内する。これにより、案内部25を通して横出しされる2本の電線40は、案内部26を通して横出しされる2本の電線40に重なる。
【0040】
さらに、フレーム30,32,34の柱部30b,32b,34bにより端子挿入面部11の横幅方向右方側へ案内される合計6本の電線40を、バンド43を用いて支持リブ28に結束して、ワイヤーハーネスWを構成する。
【0041】
本実施の形態に係るコネクタCおよびワイヤーハーネスWは、コネクタハウジング10を左方側に引っ張ると、最も余長が少ない電線40の屈曲部分が、その電線40に対応するフレーム30,32,34のいずれかの柱部30b,32b,34bに当接する。
【0042】
電線40の屈曲部分がフレーム30の柱部30bに当接した場合は、案内部25に応力が作用する。電線40の屈曲部分がフレーム32の柱部32bに当接した場合は、案内部26に応力が作用する。電線40の屈曲部分がフレーム34の柱部34bに当接した場合には、案内部25に応力が作用することになる。このため、横出し状態の電線40の端子圧着部に、端子41に対して斜め方向に張力が掛からず、防水栓42が変形しない。
【0043】
よって、本実施の形態に係るコネクタCおよびワイヤーハーネスWは、電線40の端子圧着部付近での断線を防ぐことができ、また、端子挿入孔12の内部を水密に保つことができる。
【0044】
本実施の形態に係るコネクタCおよびワイヤーハーネスWは、案内部25,26,27を、電線40の横出し方向側に位置するものほど、端子挿入面部11からの距離が小さくなるようにしている。このため、案内部25,26,27から横出しされる複数の電線40が無理なく重なるとともに、これら電線40の余長のばらつきを抑えることができる。
【0045】
本実施の形態に係るコネクタCおよびワイヤーハーネスWは、案内部25,26,27の上部および下部が開口した状態になっている。このため、フレーム30,32,34に挿通した電線40を目視しながら、端子41を端子挿入面部11の端子挿入孔12に容易に挿入することができる。
【0046】
上述した実施の形態では、コネクタハウジング10に電線案内部材20を、支持リブ28が端子挿入面部11の横幅方向右方側へ突出するよう取り付けている。これに代えて、電線案内部材20を上下に反転させ、コネクタハウジング10に電線案内部材20を、支持リブ28が端子挿入面部11の横幅方向左方側へ突出するよう取り付けた構成を採ることもできる。
【0047】
以上のように、本発明に係るコネクタおよびワイヤーハーネスは、コネクタハウジングを電線の延長方向とは逆向きに引っ張ると、最も余長が少ない電線の屈曲部分が案内部に当接して、案内部に応力が作用する。このため、本発明に係るコネクタおよびワイヤーハーネスは、横出し状態の電線の端子圧着部に端子の軸線に関して斜め方向に張力が掛からなくなり、電線の断線を防ぐことができるという効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るコネクタおよびワイヤーハーネスは、横出し状態の電線の端子圧着部に端子の軸線に関して斜め方向に張力が掛からないので、車両、種々の装置、機械設備等に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
C コネクタ
W ワイヤーハーネス
10 コネクタハウジング
11 端子挿入面部
12 端子挿入孔
25 案内部
26 案内部
27 案内部
40 電線
41 端子
S1 距離
S2 距離
S3 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8