(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、シール溝内に接触式シールであるOリングが収容されていることで、真空チャンバなどのプロセス室内と外部環境とを隔離させつつ、シャフトを回転させるものである。Oリングは、密封性を高めるものの、強制的に変形させてシャフトに接触させるため、Oリング又はシャフトの変形又は摩耗を生じる可能性がある。そこで、Oリング又はシャフトの変形又は摩耗を生じる可能性を低減するため、Oリングの表面にはグリース等の潤滑剤が塗布される。しかし、Oリングの表面に潤滑剤を塗布した場合、潤滑剤がプロセス室内に飛散する可能性がある。このため、接触式シールの表面に潤滑剤を有しながらも、潤滑剤が内部空間に飛散する可能性が低減された回転機構が望まれている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接触式シールの表面に供給される潤滑剤が内部空間に飛散する可能性を低減する回転機構、回転駆動装置、搬送装置及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る回転機構は、圧力の異なる二つの空間を隔てる回転機構であって、ハウジングと、前記ハウジングに挿入されるシャフトと、前記ハウジングに備えられ、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記シャフトの一端部に設けられて前記シャフトとともに回転し、かつ径方向外側表面が前記ハウジングと所定の大きさの隙間を有して対向する回転部と、前記隙間を異なる位置で密封する複数の環状シール部材と、前記環状シール部材と前記回転部の径方向外側表面との間に供給する潤滑剤を蓄える潤滑剤溝と、を備え、前記複数の環状シール部材のうち少なくとも1つの環状シール部材は、前記潤滑剤溝よりも前記圧力の異なる二つの空間のうち低圧側にあることを特徴とする。これにより、潤滑剤溝から環状シール部材側に移動した潤滑剤は、環状シール部材によって内部空間側への移動を妨げられる。このため、本発明に係る回転機構は、接触式シールの表面に供給される潤滑剤が内部空間に飛散する可能性を低減することができる。
【0007】
本発明の望ましい態様として、前記ハウジングは、前記隙間の大きさを規定するとともに前記環状シール部材を固定するシール固定用スペーサを有し、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面は、前記複数の環状シール部材の間の位置にあり、前記潤滑剤溝は、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面に設けられることが好ましい。これにより、複数の環状シール部材の表面に潤滑剤が供給されやすくなる。このため、環状シール部材又は回転部の摩耗が抑制され、本発明に係る回転機構は、密封性を高める部品の交換頻度を低減することができる。
【0008】
本発明の望ましい態様として、前記潤滑剤溝は、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面の一部に設けられ、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面のうち、前記潤滑剤溝よりも前記環状シール部材側の部分と前記回転部の径方向外側表面との距離は、前記隙間の大きさよりも小さいことが好ましい。これにより、潤滑剤が径方向内側側面と径方向外側表面との隙間を徐々に通過する。このため、回転機構は、潤滑剤が環状シール部材側に多量に供給される事態を抑制できる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記ハウジングは、前記隙間の大きさを規定するとともに前記環状シール部材を固定するシール固定用スペーサを有し、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面は、前記複数の環状シール部材の間の位置にあり、前記潤滑剤溝は、前記回転部の径方向外側表面のうち、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面に対向する部分に設けられることが好ましい。これにより、複数の環状シール部材の表面に潤滑剤が供給されやすくなる。このため、環状シール部材又は回転部の摩耗が抑制され、本発明に係る回転機構は、密封性を高める部品の交換頻度を低減することができる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記潤滑剤溝は、前記回転部の径方向外側表面のうち、前記シール固定用スペーサの径方向内側側面に対向する部分の一部に設けられ、前記回転部の径方向外側表面のうち、前記潤滑剤溝よりも前記環状シール部材側の部分と前記シール固定用スペーサの径方向内側側面との距離は、前記隙間の大きさよりも小さいことが好ましい。これにより、潤滑剤が径方向内側側面と径方向外側表面との隙間を徐々に通過する。このため、回転機構は、潤滑剤が環状シール部材側に多量に供給される事態を抑制できる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、上述した回転機構と、前記シャフトを回転させる電動機とを備える、回転駆動装置であることが好ましい。この構造により、回転駆動装置は、高い封止性を実現することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様として、上述した回転機構と、被搬送物を移動させる可動部材を備え、前記シャフトの回転と、前記可動部材とが連動する、搬送装置であることが好ましい。この構造により、搬送装置は、高い封止性を実現することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、上述した回転機構を備える、製造装置であることが好ましい。この構造により、製造装置は、高い封止性を実現することができ、製造物の品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接触式シールの表面に供給される潤滑剤が内部空間に飛散する可能性を低減する回転機構、回転駆動装置、搬送装置及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る回転機構を備えた製造装置を模式的に示す断面図である。
図2は、実施形態1に係る回転機構を模式的に示す断面図である。
図1及び
図2は、回転機構1の回転中心軸Zrを含み、かつ回転中心軸Zrと平行な平面で回転機構1を切った断面を示している。
図3は、
図2のA−A矢視図である。
図4は、実施形態1に係る回転機構の隙間の拡大図である。回転機構1は、回転を伝達する機械要素であり、例えば、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境等の特殊環境下で使用される。回転機構1は、半導体製造又は工作機械製造等の製造装置、搬送装置、回転駆動装置に適用される。ここでは、一例として、回転機構1が、半導体製造のための製造装置において、スピンドルを回転軸として備える回転駆動装置(スピンドルユニット)である場合を説明するが、回転機構1の適用対象はこれに限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、例えば半導体製造に用いられる製造装置100は、回転機構1と、筐体10と、電動機8と、電動機8を制御する制御装置91を含む。回転機構1と、電動機8とは、回転駆動装置6として、電動機8の回転を伝達して、搬送テーブル(可動部材)33を回転させる。製造装置100は、筐体10の内部空間Vを真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境にした上で、内部空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物又は工具)を搬送テーブル(可動部材)33に搭載して移動させる。被搬送物を移動させる場合、電動機8を内部空間Vに設置すると、電動機8の動作により異物が発生する可能性がある。そこで、製造装置100は、内部空間Vに搬送テーブル33を残したまま、電動機8を外部空間Eに設置する。そして、回転機構1は、内部空間Vと外部空間Eを隔てて密封性を高めながら、外部空間Eに設置された電動機8の動力を内部空間Vに伝える。電動機8は、例えば、ダイレクトドライブモータ、ベルトドライブを用いた駆動装置、リニアモータ、サーボモータなどである。制御部91は、入力回路と、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置であるメモリと、出力回路とを含む。メモリ92に記憶させるプログラムに応じて、電動機8を制御し、内部空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物又は工具)を搬送テーブル(可動部材)33に搭載して移動させ、製造装置100は、所望の製品を製造することができる。
【0019】
回転機構1は、ハウジング2と、回転部材3と、軸受4とを含む。ハウジング2は、軸受4を収容する部材である。実施形態1において、ハウジング2は、ハウジング本体として、筒状の部材である胴部21と、胴部21の一端部に設けられたハウジングフランジ部22とを有する。そして、ハウジング2は、ハウジングフランジ部22にボルト27で固定される蓋部23と、ハウジング本体の胴部21の内部に配置される、外輪止め部材24、シール固定用スペーサ25及びシール固定用スペーサ28をさらに備えている。実施形態1において、胴部21は筒形状(例えば円筒)の部材であり、一端部から他端部に向かう貫通孔を有している。回転機構1は、当該貫通孔が鉛直方向に沿いかつ当該貫通孔の内部空間V側が鉛直方向上側になるように配置されている。このため、
図1、2中の上側が鉛直方向上側であり、
図1、2中の下側が鉛直方向下側である。
【0020】
ハウジングフランジ部22は、いずれも板状の鍔部材である。実施形態1において、ハウジングフランジ部22の形状は、平面視が円形であるが、これらの形状は円形に限定されない。ハウジングフランジ部22は、シャフト31の回転中心軸Zrを含み、かつ厚さ方向に貫通する、上述した貫通孔を有している。ハウジング2は、ハウジングフランジ部22を筐体10の外部から筐体10の開口部10eを覆うようにあてがい、ハウジングフランジ部22と筐体10の壁面とをボルト(不図示)で締結することで筐体10に固定されている。これにより、ハウジング2は、筐体10の開口部10eを筐体10の外部から塞ぐことができる。ハウジングフランジ部22は、平面視で筐体10と重なり合う部分に環状溝があり、この環状溝にOリング(環状シール)11をはめ込み、ハウジングフランジ部22と筐体10との密封性を向上させている。
【0021】
回転部材3は、シャフト31と、回転部32と、搬送テーブル(可動部材)33とを備えている。シャフト31は、回転機構1の出力軸(主軸)であり、一端部がハウジング2に挿入されている。シャフト31の他端部は、カップリング82を介して、電動機8の出力シャフト81に接続されている。搬送テーブル(可動部材)33は、回転部32を介して、シャフト31の一端部に固定されている。
【0022】
搬送テーブル33及び回転部32は、シャフト31とともに回転する。搬送テーブル33は、シャフト31の一端部とは反対側の面に物体が載置される。実施形態1において、搬送テーブル33は、板状の部材であって平面視が円形である。搬送テーブル33は、ハウジング2のハウジングフランジ部22よりも軸方向に突出する回転部32の径方向外側まで張り出している。
【0023】
軸受4は、ハウジング2、実施形態1では、ハウジング2の内部に設置されてシャフト31を回転可能に支持する。軸受4は、軸受41及び軸受42を含み、2重の筒状である軸受スペーサ43を介して、回転軸Zrに沿って距離を離して配置されている。これにより、軸受4は、軸受41及び軸受42の複数箇所でシャフト31を支持することで、シャフト31の振れ回りを抑制することができる。実施形態1において、シャフト31は、2個の軸受41、42によってハウジング2に支持されるが、軸受の数は2個に限定されない。
【0024】
図2に示すように、軸受41、42は、外輪41a、42aと、転動体41b、42bと、内輪41c、42cと、を含む。内輪41c、42cは、外輪41a、42aの径方向内側に配置される。このように、実施形態1において、軸受41、42は、いずれも転がり軸受である。転動体41b、42bは、外輪41a、42aと内輪41c、42cとの間に配置される。軸受41、42は、ハウジング2の胴部21が有する貫通孔の内壁21cに外輪41a、42aが接している。
【0025】
外輪41aは、胴部21が有する貫通孔が彫り込まれた位置決め部21aに軸方向の一端が接している。外輪止め部材24の外輪押さえ部24aは、外輪42aの軸方向の一端を位置決め固定する。このため、位置決め部21aと外輪止め部材24とは、軸受41、軸受スペーサ43及び軸受42を軸方向に挟み込み固定する。このような構造により、軸受41、42は、ハウジング2に取り付けられる。実施形態1において、両方の軸受41、42は、いずれも玉軸受であるが、転がり軸受としての軸受41、42の種類は玉軸受に限定されない。また、実施形態1において、軸受41、42は、いずれも転がり軸受であるが、滑り軸受であってもよい。
【0026】
回転部32は、円筒形状であり、径方向外側表面がハウジング2と所定の大きさの隙間55を有して対向する。実施形態1の回転部32は、シャフト31と同軸であるが、回転部32は、シャフト31よりも直径が大きく張り出している。このため、回転部32は、搬送テーブル33の反対側の端面32aを内輪42cに当接させ、内輪押さえとすることができる。この構造により、部品点数が削減され、安価な回転機構1を提供できる。内輪41cは、シャフト31が有する外周凹部の位置決め部31aに軸方向の一端が接している。回転部32は、内輪42cの軸方向の一端を位置決め固定するので、位置決め部31aと回転部32とは、軸受41、軸受スペーサ43及び軸受42を軸方向に挟み込み固定する。このような構造により、軸受41、42は、シャフト31に取り付けられる。なお、実施形態1の回転部32は、シャフト31と一体であり、シャフト31の一端の一部分であるが、この態様に限られず、実施形態1の回転部32は、シャフト31と別体であり、シャフト31の一端に同軸に固定されて、シャフト31の回転と連動して回転する部材であってもよい。
【0027】
回転機構1は、隙間55を回転中心軸Zrに沿う方向の異なる位置で密封する2つの環状シール部材5A、5Bを有する。実施形態1において、2つの環状シール部材5A、5Bは、配置される位置が互いに異なるが同じものである。なお、環状シール部材は、複数であればよく、3つ以上であってもよい。
【0028】
シール固定用スペーサ25は、隙間55の大きさを規定するとともに、環状シール部材5Aを固定する。
図3に示すように、シール固定用スペーサ25は、環状の部材である。
図2に示すように、シール固定用スペーサ25は、径方向外周側の一部を軸方向に張り出したスペーサ位置決め部25aと、シール固定凹部25bと、径方向内周部25cと、径方向外周部25dと、径方向内周部25cよりも、回転部32側に突出する環状凸部25eとを備えている。径方向外周部25dの少なくとも一部が胴部21の貫通孔の内壁21bに接している。シール固定用スペーサ25は、環状シール部材5Aのガイドとして作用するので、環状シール部材5Aが回転部32に対して接触する接触圧を適切な設定値とすることができる。
【0029】
シール固定用スペーサ28は、環状の部材であって、隙間55の大きさを規定するとともに、環状シール部材5Bを固定する。
図2に示すように、シール固定用スペーサ28は、シール固定凹部28bと、径方向内周部28cと、径方向外周部28dと、を備えている。径方向外周部28dの少なくとも一部が胴部21の貫通孔の内壁21bに接している。シール固定用スペーサ28は、環状シール部材5Bのガイドとして作用するので、環状シール部材5Bが回転部32に対して接触する接触圧を適切な設定値とすることができる。
【0030】
また、ハウジングフランジ部22には、環状溝22aが回転中心軸Zrと同心円状に形成されており、径方向外周部25dの少なくとも一部が環状溝22aの壁面の一部となっている。蓋部23がハウジングフランジ部22にボルト27で固定されると、環状溝22aにはめ込まれたOリング26が密封性を高め、封止する。そして、Oリング26は、環状シール部材5A、5Bよりも直径が大きい位置に配置される。また、スペーサ位置決め部25aは、上述したシール固定用スペーサ28の径方向外周部28dと胴部21の貫通孔の内壁21bとの間に挟まれ固定されている。環状溝22a及びOリング26は、内部空間Vの真空度合いが低い場合、備える必要はない。
【0031】
図3に示すように、環状シール部材5Aは、回転部32、シール固定用スペーサ25、及びハウジングフランジ部22に固定されるOリング26、Oリング11と同様に回転中心軸Zrを中心に同心円を描くように配置される。環状シール部材5Bも、環状シール部材5Aと同様に回転中心軸Zrを中心に同心円を描くように配置される。そして、
図2に示すように、環状シール部材5A、5Bは、軸受4よりも圧力の異なる二つの空間のうち、低圧側の内部空間V寄りに配置されている。この構造により、環状シール部材5A、5Bが、軸受4に用いられている潤滑剤などを内部空間V側に飛散させないようにしている。
【0032】
図4に示すように環状シール部材5Aは、ハウジング2のシール固定用スペーサ25の径方向内周部25cに接する固定部52と、回転部32の径方向外側表面32pに接するリップ部51と、固定部52とリップ部51とを連結する環状連結部53と、シールフランジ部54とを備える。この構造により、固定部52、環状連結部53及びリップ部51は、断面形状が略U字形状となっており、固定部52、環状連結部53及びリップ部51が囲む空間は、圧力の異なる二つの空間のうち、高圧側となる外部空間Eに向かって開口している。なお、環状シール部材5Aの材質は、ポリエチレン又はポリテトラフルオロチレンであるとより好ましい。ポリエチレン又はポリテトラフルオロチレンは、環状シール部材5Aの材質として、耐摩耗性、耐薬品性に優れ、回転部32との潤滑に好適である。接触する回転部32の材質は、高炭素クロム軸受鋼鋼材、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、Siを3.4質量%以上含む析出硬化性ステンレスの高珪素合金のいずれか1つが好ましい。また、環状シール部材5Aと環状シール部材5Bとは同じものであるので、環状シール部材5Bについて各構成の説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、蓋部23がハウジングフランジ部22にボルト27で固定されると、シール固定用スペーサ25は、シール固定凹部25bに挿入されたシールフランジ部54を挟み込み固定する。これにより、実施形態1の回転機構1は、環状シール部材5Aがシールフランジ部54を備えることにより、回転部32の回転により環状シール部材5Aが共回りする可能性を抑制することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、蓋部23がハウジングフランジ部22にボルト27で固定されると、シール固定用スペーサ28は、シール固定凹部28bに挿入されたシールフランジ部54を挟み込み固定する。これにより、実施形態1の回転機構1は、環状シール部材5Bがシールフランジ部54を備えることにより、回転部32の回転により環状シール部材5Bが共回りする可能性を抑制することができる。
【0035】
環状シール部材5A、5Bがハウジング2に固定されている状態で回転部32が回転するので、環状シール部材5A、5Bと回転部32との間で摩擦が生じる。当該摩擦による発熱は、環状シール部材5A、5B又は回転部32の摩耗を促進する可能性がある。このため、当該摩擦は低減されることが望ましい。そこで、回転機構1は、環状シール部材5と回転部32の径方向外側表面32pとの間に供給する潤滑剤Luを蓄える潤滑剤溝25lを備える。
【0036】
シール固定用スペーサ25は、環状シール部材5A、5Bの間の位置で回転部32の径方向外側表面32pと対向する径方向内側側面25fを含む。径方向内側側面25fは、環状シール部材5Bの位置よりも鉛直方向上側にある。潤滑剤溝25lは、シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fに設けられる凹部である。
図3において破線で示すように、潤滑剤溝25lは環状に形成されている。潤滑剤溝25lに蓄えられる潤滑剤Luは、例えばグリースである。例えば、潤滑剤Luの一部は、潤滑剤溝25lからはみ出しており、表面張力によって径方向外側表面32pに接触している。これにより、潤滑剤Luは、潤滑剤溝25lと径方向外側表面32pとによって保持されている。また潤滑剤Luは、流動性を有するため、潤滑剤溝25lから環状シール部材5Bと回転部32の径方向外側表面32pとの間に、重力によって安定して供給される。これにより、回転部32の径方向外側表面32pと環状シール部材5Bとの間に潤滑剤Luがある状態が保たれやすくなる。また、潤滑剤Luは、回転部32と環状シール部材5Bとの間における僅かな空気漏れによる圧力によって、環状シール部材5Aに供給される。また、潤滑剤Luは、内部空間Vの圧力変動時(製造装置100の稼働開始時および停止時)においても環状シール部材5Aに供給される。したがって、環状シール部材5A、5B又は回転部32の摩耗が抑制され、実施形態1において回転機構1は、密封性を高める部品の交換頻度を低減することができる。
【0037】
また、環状シール部材5A、5Bのうち環状シール部材5Aは、潤滑剤溝25lよりも低圧側にある。これにより、潤滑剤溝25lから環状シール部材5A側に移動した潤滑剤Luは、環状シール部材5Aによって内部空間V側への移動を妨げられる。このため、回転機構1は、接触式シールの表面に供給される潤滑剤Luが内部空間Vに飛散する可能性を低減することができる。
【0038】
また、環状シール部材5A、5Bおよび回転部32の表面は、微細な凹凸である表面粗さをある程度有する。このため、環状シール部材5A、5Bと回転部32とが接触している部分における密封性は、表面粗さの程度に依存する可能性がある。実施形態1において、潤滑剤Luが環状シール部材5A、5Bおよび回転部32の表面に供給されるので、潤滑剤Luが表面粗さのうちの凹部に充填される。よって、回転機構1は、潤滑剤Luによって環状シール部材5A、5Bと回転部32の表面粗さを改善し、密封性を向上させることができる。
【0039】
蓋部23は、径方向内側側面23fと径方向外側表面32pとの隙間s1の距離Δd1を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd1は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0040】
図4に示すように潤滑剤溝25lは、径方向内側側面25fの一部に設けられる。シール固定用スペーサ25は、径方向内側側面25fのうち潤滑剤溝25lよりも環状シール部材5A側の部分と径方向外側表面32pとの隙間s2の距離Δd2を適宜設定して真空度を調整することができる。また、シール固定用スペーサ25は、径方向内側側面25fのうち潤滑剤溝25lよりも環状シール部材5B側の部分と径方向外側表面32pとの隙間s3の距離Δd2を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd2は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。また、距離Δd2は、隙間55の大きさよりも小さい。これにより、潤滑剤Luが径方向内側側面25fと径方向外側表面32pとの隙間s2、s3を徐々に通過する。このため、潤滑剤Luが環状シール部材5A、5B側に多量に供給される事態が抑制される。なお、実施形態1において隙間s2と隙間s3とは同じ距離Δd2の隙間であるが、異なる距離の隙間であってもよい。
【0041】
図4に示すように、固定部52、環状連結部53及びリップ部51が囲む空間の内部には、付勢部材56が配置され、リップ部51の押圧力を回転部32側へ付勢することができる。付勢部材56は、例えばステンレス鋼などで、いずれも平板状の板状部56a及び板状部56bを屈曲部56cで折り曲げた、断面視でV字状となる弾性体である。付勢部材56は、板状部56a及び板状部56bの先端同士が広がるように付勢されている。
【0042】
環状シール部材5A、5Bは、リップ部51の弾性変形による圧力に加え、付勢部材56に付加された圧力を受けたリップ部51が回転部32の径方向外側表面32pへ接触する。このため、回転機構1は、リップ部51が回転部32の径方向外側表面32pへ接触する接触圧を高めることができる。さらに、固定部52、環状連結部53及びリップ部51が囲む空間は、圧力の異なる二つの空間のうち、高圧側となる外部空間Eに向かって開口しているので、圧力の異なる二つの空間の圧力差は、リップ部51が回転部32の径方向外側表面32pへ接触する接触圧を高めることができる。これにより、回転機構1は、内部空間Vの真空を高くしても、高い密封性を維持できる。また、リップ部51の内周側先端51aのみが径方向外側表面32pへ接触するだけでなく、環状連結部53に近いリップ部51の内周側基部51dの少なくとも一部も径方向外側表面32pへ接触する。その結果、リップ部51の内周側が面で径方向外側表面32pへ接触するので、密封性を維持できる。
【0043】
リップ部51又はシャフト31が摩耗又は変形を生じても、付勢部材56が接触圧を維持するように作用する。このため、回転機構1は、密封性を高める部品である環状シール部材5A、5B又は回転部32の交換頻度を低減することができる。
【0044】
リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲む空間は、圧力の異なる二つの内部空間V及び外部空間Eのうち、高圧側の外部空間Eに開口している。この構造により、環状シール部材5A、5Bのリップ部51自体の弾性変形による圧力と、付勢部材56が加える圧力とが相乗して、環状シール部材5A、5Bが回転部32に対して接触する接触圧を高めることができる。
【0045】
付勢部材56は、固定部52と、環状連結部53と、リップ部51とで囲む空間に備えられていることが好ましい。この構造により、リップ部51が回転部32に対して面接触しやすくできる。
【0046】
なお、実施形態1において回転機構1は、胴部21の貫通孔が鉛直方向に沿うように配置されていたが、当該貫通孔が水平方向に沿うように配置されていてもよい。このような配置の場合、潤滑剤溝25lが回転部32よりも鉛直方向上側に位置する場所が存在するので、潤滑剤Luは、重力によって回転部32の径方向外側表面32pに供給される。そして、潤滑剤Luは、径方向外側表面32pをつたって環状シール部材5A、5Bと回転部32との間に供給される。
【0047】
以上説明したように、回転機構1は、圧力の異なる二つの内部空間Vと外部空間Eとを隔てることができる。回転機構1は、ハウジング2と、ハウジング2に挿入されるシャフト31と、ハウジング2に備えられ、シャフト31を回転可能に支持する軸受4と、シャフト31の一端部に設けられてシャフト31とともに回転し、かつ径方向外側表面32pがハウジング2のシール固定用スペーサ25と所定の大きさの隙間55を有して対向する回転部32と、を含む。また、回転機構1は、隙間55を異なる位置で密封する複数の環状シール部材5A、5Bと、環状シール部材5A、5Bと回転部32の径方向外側表面32pとの間に供給する潤滑剤Luを蓄える潤滑剤溝25lと、を含む。複数の環状シール部材5A、5Bのうち少なくとも1つの環状シール部材5Aは、潤滑剤溝25lよりも圧力の異なる二つの空間のうち低圧側にある。これにより、潤滑剤溝25lから環状シール部材5A側に移動した潤滑剤Luは、環状シール部材5Aによって内部空間V側への移動を妨げられる。このため、回転機構1は、接触式シールの表面に供給される潤滑剤Luが内部空間Vに飛散する可能性を低減することができる。
【0048】
また、回転機構1において、ハウジング2は、隙間55の大きさを規定するとともに環状シール部材5Aを固定するシール固定用スペーサ25を有する。シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fは、複数の環状シール部材5A、5Bの間の位置にあり、潤滑剤溝25lは、シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fに設けられる。これにより、複数の環状シール部材5A、5Bの表面に潤滑剤Luが供給されやすくなる。このため、環状シール部材5A、5B又は回転部32の摩耗が抑制され、実施形態1において回転機構1は、密封性を高める部品の交換頻度を低減することができる。
【0049】
また、回転機構1において、潤滑剤溝25lは、シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fの一部に設けられる。シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fのうち、潤滑剤溝25lよりも環状シール部材5A、5B側の部分と回転部32の径方向外側表面32pとの距離Δd2は、隙間55の大きさよりも小さい。これにより、潤滑剤Luが径方向内側側面25fと径方向外側表面32pとの隙間s2、s3を徐々に通過する。このため、回転機構1は、潤滑剤Luが環状シール部材5A、5B側に多量に供給される事態を抑制できる。
【0050】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る回転機構の隙間の拡大図である。上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。実施形態2に係る回転機構1は、環状シール部材5A、5Bと回転部32の径方向外側表面32pとの間に供給する潤滑剤Luを蓄える潤滑剤溝32lを備える。
【0051】
潤滑剤溝32lは、回転部32の径方向外側表面32pのうち、シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fに対向する部分に設けられる。すなわち、
図5に示すように、潤滑剤溝32lは、回転部32の径方向外側表面32pのうち、回転中心軸Zrに対して垂直であって径方向内側側面25fの環状シール部材5A側端部を通る平面S1と、回転中心軸Zrに対して垂直であって径方向内側側面25fの環状シール部材5B側端部を通る平面S2と、によって挟まれる範囲に設けられる。潤滑剤溝32lは、回転中心軸Zrを中心に環状に設けられる。潤滑剤溝32lに蓄えられる潤滑剤Luは、例えばグリースである。例えば、潤滑剤Luの一部は、潤滑剤溝32lからはみ出しており、表面張力によってシール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fに接触している。これにより、潤滑剤Luは、潤滑剤溝32lと径方向内側側面25fとによって保持されている。また潤滑剤Luは、流動性を有するため、潤滑剤溝32lから環状シール部材5Bと回転部32の径方向外側表面32pとの間に、重力によって安定して供給される。これにより、回転部32の径方向外側表面32pと環状シール部材5Bとの間に潤滑剤Luがある状態が保たれやすくなる。また、潤滑剤Luは、回転部32と環状シール部材5Bとの間における僅かな空気漏れによる圧力によって、環状シール部材5Aに供給される。また、潤滑剤Luは、内部空間Vの圧力変動時(製造装置100の稼働開始時および停止時)においても環状シール部材5Aに供給される。したがって、環状シール部材5A、5B又は回転部32の摩耗が抑制され、実施形態2において回転機構1は、密封性を高める部品の交換頻度を低減することができる。
【0052】
なお、潤滑剤溝32lは、回転部32の径方向外側表面32pのうち、平面S1と平面S2によって挟まれる範囲にあればよく、回転中心軸Zrを中心に環状に設けられていなくてもよい。潤滑剤溝32lは、例えば、回転中心軸Zrに対して角度をなす直線を中心に環状に設けられていてもよい。
【0053】
図5に示すように潤滑剤溝32lは、回転部32の径方向外側表面32pのうち、シール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fに対向する部分の一部に設けられる。シール固定用スペーサ25は、回転部32の径方向外側表面32pのうち潤滑剤溝32lよりも環状シール部材5A側の部分とシール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fとの隙間s2の距離Δd2を適宜設定して真空度を調整することができる。また、シール固定用スペーサ25は、回転部32の径方向外側表面32pのうち潤滑剤溝32lよりも環状シール部材5B側の部分とシール固定用スペーサ25の径方向内側側面25fとの隙間s3の距離Δd2を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd2は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。また、距離Δd2は、隙間55の大きさよりも小さい。これにより、潤滑剤Luが径方向内側側面25fと径方向外側表面32pとの隙間s2、s3を徐々に通過する。このため、潤滑剤Luが環状シール部材5A、5B側に多量に供給される事態が抑制される。なお、実施形態2において隙間s2と隙間s3とは同じ距離Δd2の隙間であるが、異なる距離の隙間であってもよい。
【0054】
以上、実施形態1から実施形態2を説明したが、前述した内容により実施形態1から実施形態2が限定されるものではない。また、実施形態1から実施形態2の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。