特許第6011525号(P6011525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011525
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/06 20060101AFI20161006BHJP
   H01M 2/08 20060101ALI20161006BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20161006BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20161006BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01M2/06 A
   H01M2/08 A
   H01M2/30 B
   H01M2/26 A
   H01M2/34 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-507794(P2013-507794)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2012058607
(87)【国際公開番号】WO2012133785
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-75550(P2011-75550)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 武志
(72)【発明者】
【氏名】上林 広和
(72)【発明者】
【氏名】白石 悠
(72)【発明者】
【氏名】▲つる▼田 彰吾
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−147832(JP,A)
【文献】 特開2001−357833(JP,A)
【文献】 特開平08−250083(JP,A)
【文献】 特開2006−156393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/06
H01M 2/08
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを備える蓄電要素と、
一面側が開口し、内部に前記蓄電要素を収容するケースと、
前記ケースの開口を塞ぐものであって、第1貫通孔が形成された蓋部と、
一端部が前記正極または前記負極と接続された集電体と、
前記集電体の他端部に設けられて前記蓋部に積層されるものであって、前記第1貫通孔と整合する位置に第2貫通孔を備える接続片と、
前記接続片と前記蓋部との間に挟み込まれるものであって、前記接続片と対向する面に、前記接続片の周縁に側方から当接する側壁部を備えるとともに、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と整合する位置に第3貫通孔を備える挟込部材と、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通されて前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を固定する固定部材と、を備えるものであって、
前記挟込部材に、前記接続片における前記蓋部と対向する側の面と重ねられる積層部分と、前記接続片の外縁よりも外側にはみ出す非積層部とが設けられており、
前記挟込部材において、前記第3貫通孔が前記挟込部材の長手方向の中心位置よりも一方の端部側に位置し、前記非積層部が前記長手方向に沿う長辺において前記第3貫通孔よりも長手方向の中心側に位置しており、
前記集電体が、前記挟込部材の長手方向の中心位置よりも他方の端部側に位置する、蓄電素子。
【請求項2】
正極と負極とを備える蓄電要素と、
一面側が開口し、内部に前記蓄電要素を収容するケースと、
前記ケースの開口を塞ぐものであって、第1貫通孔が形成された蓋部と、
一端部が前記正極または前記負極と接続された集電体と、
前記集電体の他端部に設けられて前記蓋部に積層されるものであって、前記第1貫通孔と整合する位置に第2貫通孔を備える接続片と、
前記接続片と前記蓋部との間に挟み込まれるものであって、前記接続片と対向する面に、前記接続片の周縁に側方から当接する側壁部を備えるとともに、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と整合する位置に第3貫通孔を備える挟込部材と、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通されて前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を固定する固定部材と、を備えるものであって、
前記挟込部材に、前記接続片における前記蓋部と対向する側の面と重ねられる積層部分と、前記接続片の外縁よりも外側にはみ出す非積層部とが設けられており、
前記挟込部材の周縁に、外側方向に突出する膨出部が設けられ、この膨出部が前記非積層部とされたものである、蓄電素子。
【請求項3】
前記固定部材が、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通可能な柱状の胴部と、前記胴部の軸方向から見て前記胴部よりも一回り大きな外形を有する拡張部とを備え、前記胴部が前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通された状態で前記拡張部によって前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を固定するものである、請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記拡張部が、前記胴部の両端部に対をなして形成されるものであって、前記胴部が前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通された状態で、前記拡張部によって前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を挟み込んで固定するものである、請求項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記挟込部材が長手方向と短手方向とを備え、前記非積層部が前記長手方向に沿う長辺の少なくとも一部に設けられている、請求項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記接続片がアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されたものである、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記接続片の周縁に切り欠き部が設けられることにより、前記挟込部材において前記接続片の切り欠かれた領域と対向する部分が前記非積層部とされたものである、請求項に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池やニッケルカドミウム電池あるいはニッケル水素電池などは、小型・軽量で、高エネルギー密度であるという特徴を生かし、携帯電話、パソコン、ビデオカメラなどの携帯用電子機器の電源として、広く普及している。最近では、こうした電池を大型にし、電気自動車などの産業用大型電気機器に応用しようとする動きが強まっている。こうした電池は、一般に、正負一対の帯状電極をセパレータを介して積層し、巻回した巻回型電極体、または、正負一対の電極板の複数をセパレータを介して積層した積層型電極体を電池ケースに収容し、その電池ケースの開口部を電池蓋で密閉封口し、正極端子および負極端子を電池外部に取り付けたものである。電池ケースが一方の電極端子を兼ね、他方の電極端子が電池ケースと絶縁された状態で電池外部に取り付けられた構成が多く用いられる。
【0003】
この種の電池において、電池蓋の内側面に、樹脂製の絶縁プレートと、集電体の先端部が溶接された接続部とを積層し、出力端子用のリベットでかしめ付けることにより、電池の出力端子部を形成したものが知られている(特許文献1参照)。このような電池においては、かしめ付けの際の押圧力によって、リベットにおける軸部の先端部が径方向に膨張変形し、この膨張部分とリベットの頭部との間で電池蓋、絶縁プレートおよび接続部が挟み付けられて固定される。このように、リベットを用いて電極端子部を固定する方法は、溶着等と比較して、電池の作動に悪影響を与える粉塵等が発生しにくいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−305644号公報
【発明の開示】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
しかし、上記のような電池では、蓋体にリベットを挿通させるためのリベット孔を形成する必要がある。このため、リベット孔周りにおけるシール性を充分に確保し、電池の気密を保たなければならない。
特に、リベットのかしめ付けの際の押圧力による接続部の変形が、これと当接する絶縁プレートに対する負荷となり、絶縁プレートに割れが生じると、電池の気密が保たれなくなるおそれがあるため、問題となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、気密を確実に保持可能な蓄電素子を提供することを目的とする。
【0007】
(課題を解決するための手段)
本発明は、正極と負極とを備える蓄電要素と、一面側が開口し、内部に前記蓄電要素を収容するケースと、前記ケースの開口を塞ぐものであって、第1貫通孔が形成された蓋部と、一端部が前記正極または前記負極と接続された集電体と、前記集電体の他端部に設けられて前記蓋部に積層されるものであって、前記第1貫通孔と整合する位置に第2貫通孔を備える接続片と、前記接続片と前記蓋部との間に挟み込まれるものであって、前記接続片と対向する面に、前記接続片の周縁に側方から当接する側壁部を備えるとともに、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と整合する位置に第3貫通孔を備える挟込部材と、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通されて前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を固定する固定部材と、を備えるものであって、前記挟込部材に、前記接続片における前記蓋部と対向する側の面と重ねられる積層部分と、前記接続片の外縁よりも外側にはみ出す非積層部とが設けられている蓄電素子である。
【0008】
このような構成によれば、固定部材による固定の際の押圧力に起因する接続片の変形による応力を、この非積層部が設けられた領域に逃がすことができる。これにより、挟込部材に割れが生じてしまうことを回避し、ひいては、固定部材の挿通部分において蓄電素子の気密を保てなくなる事態を回避することができる。
【0009】
本発明は以下の構成であってもよい。
【0010】
前記固定部材が、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通可能な柱状の胴部と、前記胴部の軸方向から見て前記胴部よりも一回り大きな外形を有する拡張部とを備え、前記胴部が前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通された状態で前記拡張部によって前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を固定するものであってもよい。
【0011】
さらに、前記拡張部が、前記胴部の両端部に対をなして形成されるものであって、前記胴部が前記第1貫通孔、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿通された状態で、前記拡張部によって前記蓋部、前記接続片および前記挟込部材を挟み込んで固定するものであってもよい。
【0012】
上記のように拡張部を備える固定部材によって蓋部、接続片および挟込部材を固定する場合、拡張部が蓋部、接続片または挟込部材に押し当てられる力によって接続片が変形するおそれがある。特に、拡張部が胴部の両端部に対をなして形成され、この拡張部によって蓋部、接続片および挟込部材を挟み込んで固定する場合、この拡張部の挟み付け圧力によって接続片が押し潰されてしまうことがある。このような構成の蓄電素子において、挟込部材に非積層部を設けることは、蓄電素子の気密を保てなくなる事態を回避するために効果的である。
【0013】
前記挟込部材が長手方向と短手方向とを備え、前記非積層部が前記長手方向に沿う長辺の少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0014】
ここで、挟込部材が長尺状に形成されている場合、長辺側に割れが生じやすい。このため、長辺に非積層部を設けることにより、効果的に挟込部材の割れを防止することができる。
【0015】
さらに、前記挟込部材において、前記第3貫通孔が前記挟込部材の長手方向の中心位置よりも一方の端部側に位置し、前記非積層部が前記長辺において前記第3貫通孔よりも長手方向の中心側に位置していてもよい。
【0016】
ここで、挟込部材の長辺において、第3貫通孔よりも長手方向の中心側がより割れやすい。このため、非積層部の位置を、第3貫通孔よりも長手方向の中心側とすることにより、効果的に挟込部材の割れを防止することができる。
【0017】
また、前記接続片がアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されたものであってもよい。
【0018】
ここで、集電体およびこれと接続される接続片は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されることが一般的である。このアルミニウムおよびアルミニウム合金は比較的柔らかく延びやすい材料であるから、固定部材による固定の際に押し潰されやすい。このような構成の蓄電素子に非積層部を設けることは、蓄電素子の気密を保てなくなる事態を回避するために特に効果的である。
【0019】
また、前記接続片の周縁に切り欠き部が設けられることにより、前記挟込部材において前記接続片の切り欠かれた領域と対向する部分が前記非積層部とされていてもよい。さらに、前記挟み込み部材の周縁に、外側方向に突出する膨出部が設けられ、この膨出部が前記非積層部とされていてもよい。
【0020】
(発明の効果)
本発明によれば、気密を確実に保持可能な蓄電素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態1の電池の分解斜視図である。
図2図2は、図1のA−A線断面図である。
図3図3は、図2の円R内の拡大図である。
図4図4は、実施形態1において、蓋体に接続片と下部パッキンとが取り付けられた様子を示す図である。
図5図5は、実施形態2において、蓋体に接続片と下部パッキンとが取り付けられた様子を示す図である。
図6図6は、変形例1において、蓋体に接続片と下部パッキンとが取り付けられた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1図4を参照しつつ説明する。
【0023】
[電池の基本構成]
本実施形態の電池1(蓄電素子に該当)は、所定の容積を有する電池ケース2と、この電池ケース2内に電解液とともに収容される電極体5(蓄電要素に該当)とを備える。
【0024】
電池ケース2は、角型に形成されて上面側が開放された容器3(ケースに該当)と、板状に形成されて、容器3の開口部を封止する蓋体4(蓋部に該当)とを備えている。容器3および蓋体4は、アルミニウム、ステンレス等の金属により形成することができる。蓋体4は、容器3の開口部に対し、溶着、圧着、接着剤による接着等の方法で固着される。
【0025】
この電池ケース2の内部に収容される電極体5は、正極板と負極板との間にセパレータを挟んで重ね合わせたものを巻回して長円筒形状とした、一般的な構成のものである。
【0026】
電極体5の正極板および負極板には、それぞれ正極用、負極用の集電体6A、6Bが接続されている。各集電体6A、6Bは、金属により帯状に形成され、その一方の端部が正極板または負極板に接続されている。正極側集電体6Aとしてはアルミニウムにより形成されたもの、負極側集電体6Bとしては銅により形成されたものが好適に用いられる。
【0027】
電池ケース2の蓋体4には、正極用、負極用の一対の第1リベット孔7A、7B(第1貫通孔に該当)が厚さ方向に貫通して設けられ、ここには、正負一対の電極端子部20A、20Bが、リベット10A、10B(固定部材に該当)によって取り付けられている。リベット10A、10Bは、金属により形成され、円柱状の胴部11A、11Bと、この胴部11A、11Bの一端部に形成され、胴部11A、11Bよりも一回り大きな外径を有する頭部12A、12B(拡張部に該当)を備えるものである。
【0028】
[電極端子部の構成]
一対の電極端子部20A、20Bは、それぞれ、接続片30A、30Bと、下部パッキン40A、40Bと、上部パッキン50A、50Bと、連結体60A、60Bと、電極部63A、63Bと、を備えている。一対の電極端子部20A、20Bは、ほぼ同様の構成であるので、ここでは、まず正極側の電極端子部20Aを例にとり説明する。
【0029】
電極端子部20Aを構成する部材のうち、接続片30Aおよび下部パッキン40Aは、蓋体4の内側面に配されている。
【0030】
接続片30Aは、集電体6Aの他方の端部(正極板に接続されている側とは逆側の端部)に折り曲げ、打ち抜き等の加工を施すことにより形成されたものであって、全体として等脚台形の板状に形成されている。この接続片30Aは、縦長に、すなわち上底・下底の長さよりも高さが大きく形成され、台形の高さ方向が長手方向となる。そして、この接続片30Aにおいて、上底側の端部よりもやや下底側の位置には、リベット10Aを挿通するための第2リベット孔31A(第2貫通孔に該当)が厚さ方向に貫通形成されている。この第2リベット孔31Aは、リベット10Aの胴部11Aにほぼ等しい内径を有する円形に形成されている。
【0031】
さらに、この接続片30Aにおいて、台形の一対の斜辺、すなわち一対の長辺32A、32Aには、それぞれ、第2リベット孔31Aの形成位置よりも長手方向の中心寄りの位置に、半円状の切り欠き部33A、33Aが形成されている。
【0032】
接続片30Aと蓋体4の内側面との間には、下部パッキン40A(挟込部材に該当)が挟み込まれている。下部パッキン40Aは、絶縁性で、耐熱性,耐蝕性を有し、蓋体4に密着して電解液の漏れを防止することができるように弾性を有する材料により形成されることが好ましい。具体的には、ポリフェニレンサルファイド(PPS),テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体(PFA),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテフタレート(PET)等の樹脂材料を好適に用いることができる。
【0033】
この下部パッキン40Aは、樹脂により接続片30Aよりも一回り大きな台形板状に形成された本体部41Aを備えている。そして、この本体部41Aの周縁には、接続片30A側に向かって突出し、接続片30Aの周囲を囲む側壁部42Aが全周にわたって設けられている。この側壁部42Aは、接続片30Aの周縁に当接することによって、リベット10Aによるかしめ付けの際に接続片30Aが回転してしまうことを防止する役割を果たしている。
【0034】
下部パッキン40Aの本体部41Aにおいて、上底側の端部よりもやや下底側の位置には、接続片30Aと重ねられた状態でその第2リベット孔31Aと整合する位置に、リベット10Aを挿通するための第3リベット孔43A(第3貫通孔に該当)が厚さ方向に貫通形成されている。
【0035】
ここで、上述したように、接続片30Aにおける一対の長辺32A、32Aには、切り欠き部33A、33Aが設けられることにより凹みが形成されている。このため、下部パッキン40Aの本体部41Aにおいて、接続片30Aにおける蓋体4と対向する側の面と重なっている部分が積層部分45Aとなり、接続片30Aの凹み部分と対応する部分が非積層部44A(接続片30Aの外縁よりも外側にはみ出す部分)となる。
【0036】
これらの接続片30Aおよび下部パッキン40Aは、台形の上底が相手側の電極端子部20B側を向く姿勢で、第2リベット孔31A、および第3リベット孔43Aの位置を蓋体4の第1リベット孔7Aの位置と整合させて、蓋体4の内側面上に積層される。
【0037】
一方、電極端子部20Aを構成する部材のうち、上部パッキン50A、連結体60Aおよび電極部63Aは、蓋体4の外側面に配されている。
【0038】
上部パッキン50Aは、直方体の板状に形成され、蓋体4の外側面に重ねられる平板部51Aを備えている。この平板部51Aにおいて、長さ方向の中心位置よりもやや一方の端部側に寄った位置には、蓋体4側に向かってシール部52Aが延出されている。
【0039】
このシール部52Aは、リベット10Aの胴部11Aにほぼ等しい内径を有する円筒状に形成されている。一方、蓋体4の第1リベット孔7Aと下部パッキン40Aの第3リベット孔43Aとは、リベット10Aの胴部11Aの外径よりもやや大きく、シール部52Aの外径にほぼ等しい内径をもつ円形に形成されている。上部パッキン50Aと蓋体4、下部パッキン40A、接続片30Aが積層された状態では、第1リベット孔7Aおよび第3リベット孔43Aの内部にシール部52Aが挿入され、シール部52Aの先端が接続片30Aの板面に突き当たる状態とされる。
【0040】
この上部パッキン50Aの材料としては、下部パッキン40Aと同様の樹脂材料を好適に使用することができる。
【0041】
この上部パッキン50Aの上面(蓋体4に接する側とは逆側の面)には、連結体60Aが積層されている。この連結体60Aは、金属により直方体の板状に形成されている。この連結体60Aにおいて、長さ方向の中心位置よりもやや一方の端部側に寄った位置には、リベット10Aを挿通するための第4リベット孔72Aが厚さ方向に貫通形成されている。この第4リベット孔72Aは、リベット10Aの胴部11Aにほぼ等しい内径を有する円形に形成されている。
【0042】
また、この連結体60Aにおいて、長さ方向の中心位置よりもやや他方(第1リベット孔72A側とは逆側)の端部側に寄った位置には、電極部63Aを挿通するための電極孔62Aが厚さ方向に貫通形成されている。
【0043】
この電極孔62Aに挿通される電極部63Aは、円柱状の軸部64Aと、この軸部64Aの一端部に形成され、軸部64Aよりも一回り大きな外径を有する拡径部65Aを備えたもので、拡径部65Aが下向きとなる姿勢で、電極孔62Aに軸部64Aを下側から挿通することにより、連結体60Aに固定されている。なお、上部パッキン50Aにおいて、連結体60Aと重ねられた状態で電極孔62Aに整合する位置には、電極部63Aの拡径部65Aを受け入れ可能な受入孔53Aが貫通形成されており、拡径部65Aはこの受入孔53Aの内部に収容されて蓋体4と接する。
【0044】
負極側の電極端子部20Bは、上部パッキン50Bに受入孔が設けられておらず、電極部63Bの拡径部65Bと蓋体4との間が上部パッキン50Bの介在により絶縁されている点を除き、正極側の電極端子部20Aと同一であるから、同様の部材には、同一の符号であってその末尾の添え字AをBに代えたものを付すとともに、説明を省略する。
【0045】
[電極端子部の組み立て手順]
次に、電極端子部20A、20Bの組み立ての手順について説明する。正極側の電極端子部20Aと負極側の電極端子部20Bの組み立て手順は同一であるから、ここでは、正極側の電極端子部20Aの組み立てを例にとり説明する。
【0046】
電極端子部20Aの組み立ての際には、蓋体4の内側面に下部パッキン40Aおよび接続片30Aを、外側面に上部パッキン50Aおよび連結体60Aを重ねる。なお、連結体60Aの電極孔62Aには、あらかじめ電極部63Aを挿通しておく。
【0047】
このとき、第1リベット孔7A、第2リベット孔31A、第3リベット孔43Aおよび第4リベット孔61Aと、上部パッキン50Aのシール部52Aとの位置を整合させ、シール部52Aが第1リベット孔7Aおよび第3リベット孔43Aの内部に挿入されるようにする。この状態で、リベット10Aを、その頭部12Aを上側に向けた姿勢で、上方から第4リベット孔61A、シール部52Aおよび第2リベット孔31Aの内部に挿入する。
【0048】
頭部12Aが連結体60Aの上面に接する位置までリベット10Aを挿入したら、リベット10Aにおける胴部11Aの先端部と頭部12Aとを治具により挟み付け、旋回させながら加圧する。すると、胴部11Aの先端部が押し潰されながら拡径変形して、胴部11Aの外径よりも一回り大きなかしめ部13Aが形成される。そして、このかしめ部13Aと頭部12Aとの間に、蓋体4、下部パッキン40A、接続片30A、上部パッキン50A、および連結体60Aが挟み付けられて固定される。このとき、かしめ部13Aと頭部12Aとの挟み付け圧力によって、リベット10Aの胴部11Aおよび上部パッキン50Aのシール部52Aも軸方向に押し潰され、径方向に僅かに拡がる。これにより、シール部52Aの内周面に胴部11Aの外周面が、第1リベット孔7Aおよび第3リベット孔43Aの内周面にシール部52Aの外周面が密着し、シール部52Aの先端が接続片30Aの板面に密着する。このようにして、リベット10Aの挿通部分の隙間が封止され、電池1が気密状態に保たれる。
【0049】
なお、リベット10Aの加圧の際に、治具の旋回によってリベット10Aも旋回するのであるが、この旋回につられて接続片30Aが回転してしまうと、この接続片30Aに連なっている集電体6Aが回転して電極体5と接触し、短絡を生じるおそれがある。これを防ぐため、下部パッキン40Aにおける本体部41Aの周縁に、接続片30Aの周囲を囲む側壁部42Aを設け、この側壁部42Aを接続片30Aの周縁に当接させることによって、接続片30Aの回転を防止している。
【0050】
ここで、リベット10Aの加圧の際に、かしめ部13Aと頭部12Aとの挟み付け圧力によって、蓋体4、下部パッキン40A、接続片30A、上部パッキン50A、および連結体60Aにおけるリベット孔7A、31A、43A、61Aおよびシール部52Aの周辺部が僅かに押し潰される。特に、正極の接続片30Aはアルミニウムにより形成されており、このアルミニウムは比較的柔らかく延びやすい材料であるから、挟み付け圧力によって第2リベット孔31Aの周辺部が押し潰され、外側へ広がろうとする。しかし、接続片30Aの周縁は下部パッキン40Aの側壁部42Aによって押さえられており、接続片30Aの延び部分がそれ以上外側へ広がることができない。このため、接続片30Aの延びにより生じる応力が、下部パッキン40Aにおける第3リベット孔43Aの周辺部分に集中的にかかり、下部パッキン40Aに割れが生じてしまうおそれがある。このような事態が生じると、リベット10Aの挿通部分において電池の気密を保てなくなるおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、接続片30Aにおける一対の長辺32A、32Aに、切り欠き部33A、33Aを設けることにより、下部パッキン40Aにおいて、この接続片30Aの凹み部分と対応する部分を、接続片30Aの外縁よりも外側にはみ出す非積層部44A、44Aとした。このように非積層部44Aを設けておくことにより、接続片30Aの延びによる応力を、この非積層部44Aに逃がすことができる。これにより、下部パッキン40Aに割れが生じてしまうことを回避し、ひいては、リベット10Aの挿通部分において電池の気密を保てなくなる事態を回避することができる。
【0052】
なお、切り欠き部33A、33Aの大きさは、接続片30Aの延び分を逃がすことができる程度の大きさであればよく、一概に限定できないが、半径0.5〜2mm程度であることが好ましい。
【0053】
[作用効果]
以上のように本実施形態によれば、電池1における蓋体4の内側面には、集電体6Aの一端部に形成された接続片30Aが、下部パッキン40Aを介して蓋体4の内側面に積層され、蓋体4の外側面に配される上部パッキン50Aおよび連結体60Aとともに、リベット10Aにより蓋体4に固定されている。
【0054】
そして、接続片30Aにおける一対の長辺32Aには、切り欠き部33Aが設けられることにより凹みが形成され、下部パッキン40Aの本体部41Aにおいて、この接続片30Aの凹み部分と対応する部分が、接続片30Aの外縁よりも外側にはみ出す部分、すなわち非積層部44Aとされている。
【0055】
このような構成によれば、リベット10Aによるかしめ付けの際に、かしめ部13Aと頭部12Aとの挟み付け圧力によって押し潰された接続片30Aの延びによる応力を、この非積層部44Aが設けられた領域に逃がすことができる。これにより、下部パッキン40Aに割れが生じてしまうことを回避し、ひいては、リベット10Aの挿通部分において電池の気密を保てなくなる事態を回避することができる。
【0056】
また、下部パッキン40Aの本体部41Aが長尺状に形成され、非積層部44Aが本体部41Aにおける一対の長辺32Aに設けられている。
【0057】
さらに、下部パッキン40Aにおいて、第3リベット孔43Aが本体部41Aの長手方向の中心位置よりも上底側(一方の端部側)に位置し、非積層部44Aが長辺32Aにおいて第3リベット孔43Aよりも長手方向の中心側に位置している。
【0058】
ここで、下部パッキン40Aの本体部41Aが長尺状に形成されている場合、短辺側よりも長辺側に割れが生じやすく、さらに、第3リベット孔43Aよりも長手方向の中心側がより割れやすい。このため、長辺32Aに非積層部44Aを設け、さらに、非積層部44Aの位置を、第3リベット孔43Aよりも長手方向の中心側とした。これにより、効果的に下部パッキン40Aの割れを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態のように、下部パッキン40Aに、接続片30Aの周縁に側方から当接する側壁部42Aを設けている場合には、接続片30Aの周縁は下部パッキン40Aの側壁部42Aによって押さえられている、このため、リベット10Aによるかしめ付けの際に、接続片30Aの延び部分が外側へ広がることができず、下部パッキン40Aのうける応力が大きくなりやすい。このような構成の電池1に対し、非積層部44Aを設けることは、電池の気密を保てなくなる事態を回避するために特に効果的である。
【0060】
加えて、正極側の集電体6Aおよび接続片30Aは、アルミニウムにより形成されている。このアルミニウムは比較的柔らかく延びやすい材料であるから、挟み付け圧力によって押し潰されやすい。このような構成の電池に対し、非積層部44Aを設けることは、電池の気密を保てなくなる事態を回避するために特に効果的である。
【0061】
なお、負極側の電極端子部20Bも同様の構成を備えるから、同様の作用効果が奏される。
【0062】
<実施形態2>
以下、実施形態2について、図5を参照しつつ説明する。本実施形態の電池の構成は、接続片71Aおよび下部パッキン73Aの形状が異なる点を除き、実施形態1と同一であるから、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態でも、実施形態1と同様、正極側の電極端子部20Aを例にとり説明する。
【0063】
本実施形態において、接続片71Aは、実施形態1と同様に、集電体6Aの端部に形成されたものである。この接続片71Aは、全体として実施形態1と同様に縦長の等脚台形の板状に形成されている。そして、この接続片71Aにおいて、上底側の端部よりもやや下底側の位置には、リベット10Aを挿通するための第2リベット孔72Aが厚さ方向に貫通形成されている。
【0064】
接続片71Aと蓋体4の内側面との間には、下部パッキン73Aが挟み込まれている。下部パッキン73Aは、実施形態1と同様、樹脂製であって、接続片71Aよりも一回り大きな台形板状に形成された本体部74Aを備えている。この本体部74Aにおいて、上底側の端部よりもやや下底側の位置には、接続片71Aと重ねられた状態でその第2リベット孔72Aと整合する位置に、リベット10Aを挿通するための第3リベット孔75Aが厚さ方向に貫通形成されている。
【0065】
さらに、本体部74Aにおいて、台形の一対の斜辺、すなわち一対の長辺76A、76Aには、それぞれ、第2リベット孔72Aの形成位置よりも長手方向の中心寄りの位置に、外側方向に突出する半円状の膨出部77A、77Aが形成されている。下部パッキン73Aが接続片71Aと積層された状態で、本体部74Aのうち、接続片30Aにおける蓋体4と対向する側の面と重なっている部分が積層部分79Aとなり、膨出部77A、77Aは、接続片71Aの外縁よりも外側にはみ出す部分、すなわち非積層部に相当する。そして、この本体部74Aの周縁には、接続片71A側に向かって突出し、接続片71Aの周囲を囲む側壁部78Aが全周にわたって設けられている。
【0066】
電極端子部20Aの組み立ての際には、実施形態1と同様に、かしめ部13Aと頭部12Aとの挟み付け圧力によって、接続片71Aにおける第2リベット孔31Aの周辺部が押し潰され、外側へ広がろうとする。
【0067】
しかし、下部パッキン73Aには膨出部77A、77Aが形成されており、この膨出部77A、77Aが接続片71Aの外縁よりも外側にはみ出す非積層部となるから、接続片71Aの延びによる応力を、この膨出部77A、77Aに逃がすことができる。これにより、下部パッキン73Aに割れが生じてしまうことを回避し、ひいては、リベット10Aの挿通部分において電池の気密を保てなくなる事態を回避することができる。
【0068】
<変形例1>
接続片および下部パッキンの形状は上記したような台形形状に限られるものではなく、例えば図6に示すような六角形であってもよい。本変形例において、接続片80Aは、全体として実施形態1と同様の縦長の等脚台形をなす樹脂板において、第2リベット孔82Aが設けられた側の短片の両端に位置する角部を切り落とすことにより六角形状に形成されている。
【0069】
接続片80Aと蓋体4の内側面との間には、下部パッキン81Aが挟み込まれている。下部パッキン81Aは、接続片80Aよりも一回り大きな六角形の板状に形成された本体部84Aを備える。この本体部84Aの周縁には、接続片30A側に向かって突出し、接続片30Aの周囲を囲む側壁部85Aが全周にわたって設けられている。本体部84Aにおいて、上底側の端部よりもやや下底側の位置には、接続片80Aと重ねられた状態でその第2リベット孔82Aと整合する位置に、リベット10Aを挿通するための第3リベット孔83Aが厚さ方向に貫通形成されている。
【0070】
接続片80Aにおける一対の長辺86A、86Aには、第1実施形態と同様に、切り欠き部87A、87Aが設けられることにより凹みが形成されている。このため、下部パッキン81Aの本体部84Aにおいて、接続片80Aにおける蓋体4と対向する側の面と重なっている部分が積層部分89Aとなり、接続片80Aの凹み部分と対応する部分が非積層部88Aとなる。
【0071】
上記のように、接続片80Aおよび下部パッキン81Aの周縁において、第2リベット孔82Aおよび第3リベット孔83Aの近傍に角部を多く配置することにより、第2リベット孔82Aおよび第3リベット孔83Aの周辺部が補強されるから、下部パッキン81Aの割れをより確実に回避することができる。
【0072】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
1)上記実施形態では、電極体5は巻回型のものであったが、電極体は、複数の正極板または負極板をセパレータを介して積層した積層型のものであっても構わない。
【0073】
2)上記実施形態では、下部パッキン40Aの周縁に全周にわたって側壁部42Aが設けられていたが、側壁部は接続片の周縁の一部にのみ当接するものであっても構わない。
【0074】
3)上記実施形態では、シール部52Aが上部パッキン50Aと一体化されていたが、シール部が下部パッキンと一体化されていても構わない。また、シール部が上部パッキンおよび下部パッキンと別体に設けられていても構わない。この場合、シール部と上部パッキンとを異なる材料により形成しても構わない。
【0075】
4)上記実施形態では、非積層部44Aは、下部パッキン40Aの本体部41Aにおける一対の長辺の双方に設けられていたが、非積層部は、挟込部材における一対の長辺のうちどちらか一方に設けられていてもよく、一対の短辺の双方またはどちらか一方に設けられていても構わない。但し、角部を避けて設けられることが好ましい。角部は、それ以外の部位と比較して強度が高く、割れが生じにくいためである。特に、挟込部材に回転止めのための側壁部が設けられている場合には、非積層部が角部を避けて設けられていることが好ましい。角部において、特に接続片の回転を阻止するための機能が発揮されるからである。
【0076】
5)上記実施形態では、固定部材として、胴部11Aと、この胴部11Aの一端部に形成された頭部12Aとを備え、胴部11Aの他端側を押し潰すタイプのリベット10Aを用いたが、例えば、頭部を備えず、胴部の両端を押し潰すタイプのリベットや、中空状の胴部の先端部を拡開させるタイプのリベットを用いても構わない。また、リベットの代わりに、ボルトとナットを用いても構わない。
【0077】
6)正極側接続片、あるいは負極側接続片のみに非積層部が設けられていても構わない。
【0078】
5)上記実施形態では、蓄電素子が電池である例を示したが、蓄電素子は、例えば電気化学現象を伴うキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1...電池(蓄電素子)
3...容器(ケース)
4...蓋体(蓋部)
5...電極体(蓄電要素)
6A...集電体
7A...第1リベット孔(第1貫通孔)
10A...リベット(固定部材)
11A...胴部
12A...頭部(拡張部)
13A...かしめ部(拡張部)
30A...接続片
31A...第2リベット孔(第2貫通孔)
32A...長辺
33A...切り欠き部
40A...下部パッキン(挟込部材)
42A...側壁部
43A...第3リベット孔(第3貫通孔)
44A...非積層部
77A...膨張部(非積層部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6