【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光透過性基材の上にハードコート層が形成され、上記ハードコート層の上に低屈折率層が形成された反射防止フィルムであって、上記低屈折率層は、(メタ)アクリル樹脂、中空状シリカ微粒子、反応性シリカ微粒子及び防汚剤を含有し、かつ、上記低屈折率層中の反応性シリカ微粒子は、上記ハードコート層側の界面近傍及び/又は前記ハードコート層と反対側の界面近傍に偏在して
おり、上記中空状シリカ微粒子は、上記低屈折率層中で密に充填された状態で含有されていることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0009】
本発明の反射防止フィルムにおいて、上記
低屈折率層中の反応性シリカ微粒子は、ハードコート層側の界面近傍、又は、前記ハードコート層側と反対側の界面近傍に偏在していることが好ましい。
また、上記低屈折率層中の反応性シリカ微粒子は、ハードコート層側と反対側の界面近傍に偏在しており、上記ハードコート層は、低屈折率層側の界面近傍で該界面方向整列した反応性シリカ微粒子を有することが好ましい。
また、上記低屈折率層中の反応性シリカ微粒子の含有量が、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましい。
また、上記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が40〜80nmであり、更に、(メタ)アクリル樹脂に対する配合比(中空状シリカ微粒子の含有量/(メタ)アクリル樹脂の含有量)が、0.90〜1.60であることが好ましい。
また、上記防汚剤は、上記低屈折率層のハードコート層と反対側の界面近傍に偏在していることが好ましい
。
また、上記ハードコート層中の反応性シリカ微粒子の含有量が、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、15〜60質量部であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光板は、偏光素子表面に上述の反射防止フィルムを備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明はまた、上述の反射防止フィルム、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、光透過性基材の上にハードコート層が形成され、上記ハードコート層の上に低屈折率層が形成された反射防止フィルムである。
本発明者らは、上記構成の反射防止フィルムについて鋭意検討した結果、ハードコート層に反応性シリカ微粒子を含有させ、更に、低屈折率層に反応性シリカ微粒子と中空状シリカ微粒子とを含有させることで、上記低屈折率層中の反応性シリカ微粒子がハードコート層と反対側界面近傍に偏在し、また、低屈折率層中の中空状シリカ微粒子が密に充填された状態となり、所望の効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明の反射防止フィルムを構成する各層について詳細に説明する。
【0012】
低屈折率層
上記低屈折率層とは、本発明の反射防止フィルムを構成する光透過性基材やハードコート層等、低屈折率層以外の構成物の屈折率よりも低い屈折率であるものをいう。
本発明の反射防止フィルムにおいて、上記低屈折率層は、(メタ)アクリル樹脂、中空状シリカ微粒子、反応性シリカ微粒子及び防汚剤を含有するものである。
【0013】
上記中空状シリカ微粒子は、低屈折率層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げる役割を果たすものである。なお、本明細書において、「中空状シリカ微粒子」とは、内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体であり、シリカ微粒子本来の屈折率に比べて気体の占有率に比例して屈折率が低下するシリカ微粒子を意味する。
また、本発明においては、シリカ微粒子の形態、構造、凝集状態、上記低屈折率層を形成する際に用いられる後述する低屈折率層用組成物を用いて形成した塗膜の内部での分散状態により、内部及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能なシリカ微粒子も含まれる。
【0014】
本発明の反射防止フィルムにおいて、上記中空状シリカ微粒子は、上記低屈折率層中で密に充填された状態で含有されている。このため、上記低屈折率層の表面の均一性が優れたものとなり、本発明の反射防止フィルムは、表面硬度に優れたものとなる。
なお、上記「密に充填された状態」とは、隣接する中空状シリカ微粒子間に後述する反応性シリカ微粒子が殆ど存在しておらず、最密充填構造に類似の状態を形成していることを意味する。
【0015】
上記中空状シリカ微粒子が上記低屈折率層中で密に充填された状態で含有されるのは、後述するように上記低屈折率層に含まれる反応性シリカ微粒子が、低屈折率層のハードコート層側界面近傍又はハードコート層と反対側界面近傍に偏在しているからであると推測される。すなわち、上記低屈折率層は、中空状シリカ微粒子、反応性シリカ微粒子及び(メタ)アクリル樹脂のモノマー成分を含む組成物(以下、低屈折率層用組成物ともいう)を、ハードコート層上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥、硬化させることで形成される。上記塗膜を形成したとき、該塗膜に含まれる反応性シリカ微粒子は、後述するように上記ハードコート層側の界面近傍又はハードコート層の反対側の界面近傍に移動する。このため、形成した塗膜中において、隣接する中空状シリカ微粒子間に反応性シリカ微粒子が殆ど存在していないこととなり、その結果、形成する低屈折率層における中空状シリカ微粒子は、密に充填された状態になるものと推測される。
【0016】
上記中空状シリカ微粒子の具体例としては特に限定されず、例えば、特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましく挙げられる。中空状シリカ微粒子は、製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、有機系バインダーと混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率が低くなるよう調整することが可能となる。
【0017】
また、上述の中空シリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され使用される、充填用のカラム、表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる吸着剤、触媒固定用に使用される多孔質微粒子、又は、断熱材若しくは低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体若しくは凝集体が挙げられる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業社製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)が挙げられる。これらの中から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
【0018】
上記中空状シリカ微粒子の平均粒子径としては、10〜100nmであることが好ましい。中空状シリカ微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することができる。より好ましい下限は40nm、より好ましい上限は80nm、更に好ましい下限は45nm、更に好ましい上限は75nm、最も好ましい下限は50nm、最も好ましい上限は70nmである。
なお、上記中空状シリカ微粒子の平均粒子径は、該中空状シリカ微粒子単独の場合、動的光散乱法により測定された値を意味する。一方、上記低屈折率層中の中空状シリカ微粒子の平均粒子径は、低屈折率層の断面をSTEM等で観察し、任意の中空状シリカ微粒子30個を選択してその断面の粒子径を測定し、その平均値として算出される値である。
【0019】
また、上記中空状シリカ微粒子の空隙率としては、1.5〜80.0%であることが好ましい。1.5%未満であると、低屈折率層の屈折率を充分に低くできず、本発明の反射防止フィルムの反射防止性能が不充分となることがある。80.0%を超えると、上記中空状シリカ微粒子の強度が低下して低屈折率層全体の強度が不充分となることがある。上記中空状シリカ微粒子の空隙率は、より好ましい下限が6.4%、より好ましい上限が76.4%であり、更に好ましい下限が20.0%、更に好ましい上限が55.0%である。この範囲の空隙率を有することで、低屈折率層を、充分に低屈折率化させることができるとともに、優れた強度を有するものとすることができる。
なお、上記中空状シリカ微粒子の空隙率は、中空状シリカ微粒子の断面STEM観察等により、その直径及び空隙部分を除いた外殻部分の厚みを測定し、中空状シリカ微粒子が球体であるとして、中空状シリカ微粒子の空隙部分の体積、及び、空隙部分がないとしたときの中空状シリカ微粒子の体積を算出し、{(中空状シリカ微粒子の空隙部分の体積)/(空隙部分がないとしたときの中空状シリカ微粒子の体積)}×100より算出することができる。
【0020】
また、平均粒子径及び上記外殻部分の厚みの異なる複数の中空状シリカ微粒子を低屈折率層に含む場合、上述した方法で算出した各中空状シリカ微粒子の空隙率と、各中空状シリカ微粒子の配合比とから算出した平均値を、上記中空状シリカ微粒子の空隙率とする(以下、このような空隙率を「平均空隙率」ともいう)。なお、この場合であっても、個々の中空状シリカ微粒子は、上述した範囲の空隙率を有することが好ましい。
本発明の反射防止フィルムでは、上記中空状シリカ微粒子の平均空隙率は、10.0〜40.0%であることが好ましい。10.0%未満であると、低屈折率層の屈折率を充分に低くできず、本発明の反射防止フィルムの反射防止性能が不充分となることがある。40.0%を超えると、上記中空状シリカ微粒子の強度が低下して低屈折率層全体の強度が不充分となることがある。より好ましい下限は15.0%、より好ましい上限は35.0%である。この範囲の空隙率を有することで、低屈折率層を、充分に低屈折率化させることができるとともに、優れた強度を有するものとすることができる。低屈折率化及び強度の観点から、上記中空状シリカ微粒子の平均空隙率の更に好ましい下限は20.0%、更に好ましい上限は30.0%である。
【0021】
また、上記中空状シリカ微粒子は、低屈折率層に含まれる後述する(メタ)アクリル樹脂に対する配合比(中空状シリカ微粒子の含有量/(メタ)アクリル樹脂の含有量)が、0.90〜1.60であることが好ましい。上記配合比が0.90未満であると、上記低屈折率層の屈折率が充分に低くならず、本発明の反射防止フィルムの反射防止性能が不充分となることがある。上記配合比が1.60を超えると、低屈折率層の表面の均一性が不充分となり、本発明の反射防止フィルムの表面硬度が不充分となることがある。上記配合比のより好ましい下限は1.00、より好ましい上限は1.50である。この範囲内にあることで、より優れた反射防止性能と表面均一性及び表面硬度とを備えた反射防止フィルムとすることができる。また、低屈折率層の表面均一性が上がることにより、表面硬度(耐擦傷性)が向上する。
【0022】
本発明の反射防止フィルムにおいて、上記中空状シリカ微粒子は、低屈折率層の厚さ方向に2段に積層された最密充填構造であることが好ましい。このような状態で含有されていることで、本発明の反射防止フィルムの透明性、表面の均一性及び低屈折率性等を極めて優れたものとすることができる。
【0023】
上記反応性シリカ微粒子は、低屈折率層の後述するハードコート層側の界面近傍及び/又は後述するハードコート層と反対側の界面近傍に偏在しており、該低屈折率層の屈折率を下げるとともに、その表面硬度を高くする役割を果たすものである。
上記反応性シリカ微粒子が低屈折率層のハードコート層側の界面近傍及び該ハードコート層と反対側の界面近傍に偏在している場合、表面硬度と防汚性とがともに優れたものができる。
また、上記反応性シリカ微粒子が低屈折率層のハードコート層側の界面近傍に偏在している場合、低屈折率層のハードコート層と反対側界面近傍に後述する防汚剤が偏在し、最表面に反応性シリカが存在する場合と比較して防汚剤の最表面での存在量が増えるため、本発明の反射防止フィルムの防汚性能が極めて優れたものとなる。一方、上記反応性シリカ微粒子が低屈折率層のハードコート層と反対側の界面近傍に偏在している場合、該反応性シリカ微粒子の偏在による低屈折率層の表面硬度の更なる向上が得られる。
また、上記低屈折率層中では上述のように中空状シリカ微粒子が密に充填された状態となっているため、低屈折率層の表面均一性が優れたものとなることによる表面硬度の向上も図ることができる。この結果、本発明の反射防止フィルムの耐擦傷性が優れたものとなる。
ここで、上記「ハードコート層側の界面近傍、又は、後述するハードコート層と反対側の界面近傍に偏在している」とは、上記低屈折率層中で、上記反応性シリカ微粒子が密に充填された状態にある上述した中空状シリカ微粒子の下方(ハードコート層側)又は上方(ハードコート層と反対側)に存在していることを意味する。より具体的には、上記低屈折率層の断面において、該低屈折率層の厚さを3等分し、上記ハードコート層側の界面から順に1/3領域、2/3領域、3/3領域としたとき、1/3領域に反応性シリカ微粒子の70%以上が含まれている場合を、反応性シリカ微粒子がハードコート層側の界面近傍に偏在していると判断し、上記3/3領域に反応性シリカ微粒子の70%以上が含まれている場合を、反応性シリカ微粒子がハードコート層と反対側の界面近傍に偏在していると判断する。そして、上記1/3領域と3/3領域とに上記反応性シリカ微粒子の合計70%以上が偏在しており、かつ、1/3領域、3/3領域のそれぞれ偏在している反応性シリカ微粒子の量が、2/3領域に含まれる反応性シリカ微粒子の量よりも多い場合、上記反応性シリカ微粒子が低屈折率層のハードコート層側の界面近傍及び該ハードコート層と反対側の界面近傍に偏在していると判断する。
なお、このような反応性シリカ微粒子が偏在している状態は、本発明の反射防止フィルムを厚さ方向に切断した際の低屈折率層の断面顕微鏡観察(STEM、TEM)により容易に判別することができる。
【0024】
上記反応性シリカ微粒子が上記低屈折率層中でハードコート層側界面近傍及び/又はハードコート層と反対側界面近傍に偏在している理由は明確ではない。しかしながら、例えば、後述するハードコート層が反応性シリカ微粒子を含有する場合、該ハードコート層中の反応性シリカ微粒子の添加量を調整することで、上記低屈折率層中の反応性シリカ微粒子の偏在を制御することが可能である。
すなわち、上記ハードコート層が反応性シリカ微粒子を含有しない場合、該ハードコート層上に低屈折率層を形成すると、低屈折率層の反応性シリカ微粒子をハードコート層側界面近傍に偏在させることができる。一方、上記ハードコート層が反応性シリカ微粒子を、ハードコート層を構成する樹脂成分100質量部に対して25質量部を超え、60質量部以下の範囲で含有する場合、該ハードコート層上に低屈折率層を形成すると、低屈折率層の反応性シリカ微粒子をハードコート層と反対側界面近傍に偏在させることができる。更に、上記ハードコート層が反応性シリカ微粒子を、ハードコート層を構成する樹脂成分100質量部に対して、15〜25質量部の範囲で含有する場合、上記低屈折率層の反応性シリカ微粒子を上記低屈折率層のハードコート層側界面近傍及びハードコート層と反対側界面近傍に偏在させることができる。
【0025】
上記反応性シリカ微粒子としては、市販品を用いることもでき、例えば、MIBK−SDL、MIBK−SDMS、MIBK−SD(以上、いずれも日産化学工業社製)、DP1021SIV、DP1039SIV、DP1117SIV(以上、いずれも日揮触媒化成社製)等が挙げられる。
【0026】
上記反応性シリカ微粒子の平均粒子径としては、1〜25nmであることが好ましい。1nm未満であると、凝集しやすく、充填度が低くなって得られる低屈折率層に充分な強度が得られないことがある。一方、25nmを超えると、低屈折率層に表面凹凸が形成され、充分な強度が得られないことがある。また、反射率の上昇を引き起こし、後述する防汚剤を含有することによる充分な防汚性を発現しにくくなる。
上記反応性シリカ微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は20nmである。この範囲にあることで、本発明の反射防止フィルムの低反射率・高硬度を維持できる。
なお、本明細書において、上記反応性シリカ微粒子の平均粒子径は、BET法やSTEMなどの断面観察(30個の平均値)により測定した値を意味する。
【0027】
上記低屈折率層における上記反応性シリカ微粒子の含有量としては、後述する(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましい。5質量部未満であると、上記低屈折率層の表面硬度を充分に高くすることができず、本発明の反射防止フィルムの耐擦傷性が劣ることがある。60質量部を超えると、上述した低屈折率層中で偏在した状態にない反応性シリカ微粒子量が増え、中空状シリカ微粒子が上述した密に充填された状態とならず、その結果、低屈折率層の表面の均一性が劣ることがあり、反射率の上昇を引き起こす可能性もある。上記反応性シリカ微粒子の含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は50質量部である。この範囲で反応性シリカ微粒子が含有されていることで、本発明の反射防止フィルムの表面硬度を極めて優れたものとすることができる。
【0028】
上記(メタ)アクリル樹脂は、上記低屈折率層において、上述した中空状シリカ微粒子や反応性シリカ微粒子のバインダー成分として機能するものである。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリルモノマーの重合体又は共重合体が挙げられ、上記(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等が好適に挙げられる。
また、これら(メタ)アクリレートモノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
これらの(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの(メタ)アクリルモノマーは、後述するような屈折率の範囲を満たすとともに硬化反応性に優れ、得られる低屈折率層の硬度を向上させることができる。
なかでも、官能基数が3以上の(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
【0029】
上記(メタ)アクリル樹脂(硬化後)は、屈折率が1.47〜1.53であることが好ましい。屈折率を1.47未満とすることは事実上不可能であり、1.53を超えると、充分に低い屈折率の低屈折率層を得ることができないことがある。
【0030】
また、上記(メタ)アクリルモノマーは、重量平均分子量が250〜1000であることが好ましい。250未満であると、官能基数が少なくなるため、得られる低屈折率層の硬度が低下する恐れがある。1000を超えると、一般的には、官能基当量(官能基数/分子量)が小さくなるため、架橋密度が低くなり充分な硬度の低屈折率層が得られなくなることがある。
なお、上記(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。GPC移動相の溶剤には、テトラヒドロフランやクロロホルムを使用することができる。測定用カラムは、テトラヒドロフラン用又はクロロホルム用のカラムの市販品カラムを組み合わせて使用するとよい。上記市販品カラムとしては、例えば、Shodex GPC KF−801、GPC−KF800D(いずれも、商品名、昭和電工社製)等を挙げることができる。検出器には、RI(示差屈折率)検出器及びUV検出器を使用するとよい。このような溶剤、カラム、検出器を使用して、例えば、Shodex GPC−101(昭和電工社製)等のGPCシステムにより、上記重量平均分子量を適宜測定することができる。
【0031】
上記低屈折率層は、更に防汚剤を含有する。
上記低屈折率層が防汚剤を更に含有することで、本発明の反射防止フィルムは、防汚性能を有することとなり、特に低屈折率層中の反応性シリカ微粒子がハードコート層側の界面近傍に偏在している場合、上記低屈折率層のハードコート層と反対側界面近傍における防汚剤の含有割合が大きくなるため、本発明の反射防止フィルムの防汚性能は特に優れたものとなる。
なお、上記低屈折率層において、反応性シリカ微粒子がハードコート層と反対側界面近傍に偏在している場合、上記防汚剤は、上述した反応性シリカ微粒子と同様に、低屈折率層のハードコート層と反対側の界面近傍にある程度偏在することとなり、この場合も上記防汚剤による防汚性能のある程度の向上を図ることができる。このように防汚剤がハードコート層と反対側の界面近傍にある程度偏在する理由は明確ではないが、例えば、ハードコート層上に形成した塗膜を形成したとき、上述のように該塗膜中で反応性シリカ微粒子が移動するが、この反応性シリカ微粒子の移動が影響しているものと推測される。
このように、本発明の反射防止フィルムでは、上記低屈折率層に防汚剤を含有することで防汚性能に優れたものとなる。
【0032】
上記防汚剤としては、反応性官能基と、フッ素原子及び/又はケイ素原子とを含有する化合物であることが好ましい。このような防汚剤を含有することで、形成する低屈折率層の防汚性能をより向上させることができる。
【0033】
上記反応性官能基とフッ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性フッ素化合物、特にエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができ、より具体的には、例えば、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)が挙げられる。
また、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロ(メタ)アクリル酸メチル等の分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中にフッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14の、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等も挙げられる。
更にまた、主鎖にフッ素化アルキレン基を有するフッ素ポリマー、オリゴマーや、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマー、オリゴマー等も挙げられる。これらの中でも、特に、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマーは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じにくいことから特に好適に用いられる。
【0034】
また、上記反応性官能基とケイ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性シリコーン化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、(メタ)アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じ難いことから好ましい。
【0035】
また、上記反応性官能基と、フッ素原子及びケイ素原子とを含有する化合物としては、例えば、上記反応性フッ素化合物に上記反応性シリコーン化合物を反応させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
【0036】
上記防汚剤の含有量としては、目的とする低屈折率層の防汚性能により適宜決定されるが、上述した中空状シリカ微粒子と(メタ)アクリル樹脂との合計100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、形成する低屈折率層に充分な防汚性能を付与することができないことがあり、20質量部を超えると、添加した防汚剤が低屈折率層からブリードアウトすることがある。また、防汚剤を添加しただけの効果が見られず、製造コストが高くなり、得られる低屈折率層の硬度、外観が低下し、更に、反射率上昇の原因となることもある。上記防汚剤の含有量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は15質量部である。
なお、上記防汚剤として、上記反応性官能基と、フッ素原子及び/又はケイ素原子とを含有する化合物と一緒に反応性官能基を含有しない化合物を添加し、用いてもよい。
【0037】
本発明の反射防止フィルムにおいて、上記低屈折率層は、屈折率が1.45未満であることが好ましい。1.45以上であると、本発明の反射防止フィルムの反射防止性能が不充分となり、近年の画像表示装置の高レベルな表示品質に対応することができないことがある。より好ましい下限は1.25、より好ましい上限は1.43である。
【0038】
上記低屈折率層の膜厚(nm)d
Aは、下記式(I):
d
A=mλ/(4n
A) (I)
(上記式中、
n
Aは低屈折率層の屈折率を表し、
mは正の奇数を表し、好ましくは1を表し、
λは波長であり、好ましくは480〜580nmの範囲の値である)
を満たすものが好ましい。
【0039】
また、本発明にあっては、低屈折率層は下記式(II):
120<n
Ad
A<145 (II)
を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0040】
また、上記低屈折率層は、ヘイズ値が1%以下であることが好ましい。1%を超えると、本発明の反射防止フィルムの光透過性が低下し、画像表示装置の表示品質低下の原因となることがある。より好ましくは0.5%以下である。なお、本明細書において、ヘイズ値とはJIS K7136に準拠して求められた値である。
【0041】
また、上記低屈折率層は、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験による硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
更に、上記低屈折率層は、例えば、#0000番のスチールウールを用いた摩擦荷重300g/cm
2、10往復摩擦する耐擦傷試験で傷が生じないことが好ましい。
【0042】
上記低屈折率層は、上述した中空状シリカ微粒子、反応性シリカ微粒子、(メタ)アクリル樹脂のモノマー成分及び防汚剤等を含有する低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用塗工液を用いて形成することができる。
【0043】
上記低屈折率層用組成物は、溶剤を含有することが好ましい。
上記溶剤としては、なかでも、メチルイソブチルケトン(MIBK)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)との混合溶剤であることが好ましい。このような混合溶剤を用いることで、含有する溶剤の乾燥時間が異なるため、上述した構造の低屈折率層を好適に形成することができる。
上記混合溶剤におけるMIBKと、PGME又はPGMEAとの混合比としては、好ましくは質量比で(MIBK/PGME又はPGMEA)=(95/5)〜(30/70)である。上記範囲の混合比を満たすことで、特に好適に上述した構造の低屈折率層を形成することが可能となる。より好ましくは(80/20)〜(40/60)である。
【0044】
また、上記低屈折率層用組成物は、上述した構造の低屈折率層の形成を阻害しない範囲であれば、その他の溶剤を含有していてもよい。このようなその他の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、PGMEA等のエステル;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等のアミド;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテルアルコール等が挙げられる。
【0045】
また、上記低屈折率層用組成物は、必要に応じて、更にその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては、例えば、光重合開始剤、レベリング剤、重合促進剤、粘度調整剤、防眩剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、上述した以外の樹脂(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等が挙げられる。
【0046】
上記光重合開始剤としては、上記低屈折率層用組成物がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系を含有する場合、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184(BASF社製)として市販されている1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記低屈折率層用組成物がカチオン重合性官能基を有する樹脂系を含有する場合、上記光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。具体的には、BASF社製のイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173;日本シーベルヘグナー社製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46;日本化薬社製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。なかでも、イルガキュア369、イルガキュア127、イルガキュア907、Esacure ONE、SpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、KAYACURE DETX−Sが好ましい。
特に好ましくはイルガキュア127(BASF社製の2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)、イルガキュア184(BASF社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)である。上記光重合開始剤の添加量は、上記低屈折率層用塗工液に含まれる樹脂成分の固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
上記レベリング剤、重合促進剤、粘度調整剤、防眩剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、上述した以外の樹脂(モノマー、オリゴマー、ポリマー)は、公知のものを使用することができる。
【0047】
上記低屈折率層用組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、上述した中空状シリカ微粒子、反応性シリカ微粒子、(メタ)アクリル樹脂のモノマー成分、及び、防汚剤、並びに、溶剤、必要に応じて添加される光重合開始剤等の成分を混合することにより得ることができる。混合には、ペイントシェーカー又はビーズミル等の公知の方法を使用することができる。
【0048】
上記低屈折率層用組成物は、後述するハードコート層上に、上記低屈折率層用組成物を塗布し形成した塗膜を乾燥し、電離放射線の照射及び/又は加熱により塗膜を硬化させることにより形成することができる。
ここで、上記塗膜の好ましい乾燥条件としては、40〜80℃、10秒〜2分である。このような条件で上記塗膜を乾燥させることで、上述した構造の低屈折率層を好適に形成することが可能となる。
【0049】
上記低屈折率層用組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法等の各種方法が挙げられる。
【0050】
ハードコート層
本発明の反射防止フィルムは、光透過性基材と低屈折率層との間にハードコート層を有する。
なお、本明細書において、「ハードコート層」とは、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で2H以上の硬度を示すものをいう。上記鉛筆硬度は、3H以上であることがより好ましい。また、上記ハードコート層の膜厚(硬化時)としては1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは2〜15μmである。
【0051】
本発明の反射防止フィルムにおいて、上記ハードコート層は、反応性シリカ微粒子を含有することが好ましい。ハードコート層が反応性シリカ微粒子を含有することで、上述した低屈折率層中の反応性シリカ微粒子が、ハードコート層と反対側界面近傍に偏在することとなる。
上記反応性シリカ微粒子としては、上述した低屈折率層における反応性シリカ微粒子と同じものが挙げられる。
【0052】
上記ハードコート層における反応性シリカ微粒子の含有量としては、該ハードコート層を構成する樹脂成分100質量部に対して、15〜60質量部であることが好ましい。15質量部未満であると、ハードコート層の硬度が不充分となることがあり、60質量部を超えると、光透過性基材との密着性、及び、低屈折率層との密着性が悪くなり、また、ハードコート層が割れ易くなったり、全光線透過率の低下・ヘイズ度の上昇を引き起こしたりすることがある。より好ましい下限は20質量部、より好ましい上限は55質量部である。
【0053】
上記ハードコート層は、低屈折率層側の界面近傍で該界面方向に整列した状態で含まれる反応性シリカ微粒子を有することが好ましい。このように整列した反応性シリカ微粒子を有することで、上述した構造の低屈折率層をより好適に得ることができる。
ここで、上記「低屈折率層側の界面近傍で該界面方向に整列した状態」とは、上記ハードコート層の低屈折率層との界面近傍で上記反応性シリカ微粒子が界面方向に沿って互いに隣接するように整列した状態が好ましく、より好ましくは、上記ハードコート層の低屈折率層との界面に、反応性シリカ微粒子の上端が接し、かつ、互いに隣接した状態で界面に沿って整列した状態である(
図1)。
なお、上記ハードコート層は、上述した整列した状態以外のランダムに含有された反応性シリカ微粒子も含有することが好ましい。
【0054】
上記ハードコート層は、上記反応性シリカ微粒子と、樹脂とその他の任意成分とを含有するハードコート層用組成物により形成されてなるものが挙げられる。
上記樹脂としては、透明性のものが好適に用いられ、具体的には、紫外線若しくは電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂等が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
【0055】
上記電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のモノマー、オリゴマー又はプレポリマー等が挙げられる。その他、上記低屈折率層で用いられた(メタ)アクリル樹脂がハードコート層にも用いられ、なかでも、官能基数が3以上の(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0056】
上記電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤を用いることが好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。好ましくは、イルガキュア184(BASF社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)である。
また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0057】
上記電離放射線硬化型樹脂と混合して非反応性のポリマーが使用されてもよい。上記非反応性のポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリスチロール、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの非反応性のポリマーを添加することにより、カールを抑制することができる。
【0058】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を更に添加して使用することができる。
【0059】
上記ハードコート層は、上述した各材料を用いて調製したハードコート層用組成物を、上記光透過性基材上に塗布して形成した塗膜を、必要に応じて乾燥し、電離放射線照射又は加熱等により硬化させることで形成することができる。
なお、上記ハードコート層用組成物の調製方法及び塗膜の形成方法等は、上述した低屈折率層と同様の方法が挙げられる。
【0060】
上記ハードコート層には、更に公知の帯電防止剤、高屈折率剤等の高硬度・低カール材料等が含まれていてもよい。
【0061】
光透過性基材
本発明の反射防止フィルムは、光透過性基材を有する。
上記光透過性基材は、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。光透過性基材を形成する材料の具体例としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、アクリル基材(PMMA)又はポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテートが挙げられる。
【0062】
上記光透過性基材は、上記熱可塑性樹脂を柔軟性に富んだフィルム状体として使用することが好ましいが、硬化性が要求される使用態様に応じて、これら熱可塑性樹脂の板を使用することも可能であり、又は、ガラス板の板状体のものを使用してもよい。
【0063】
その他、上記光透過性基材としては、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムを挙げられる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体等が用いられる基材で、例えば、日本ゼオン社製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト社製のスミライトFS−1700、JSR社製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学社製のアペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成社製のオプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ社製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
【0064】
上記光透過性基材の厚さとしては、3〜300μmであることが好ましく、より好ましくは下限が20μmであり、上限が100μmである。光透過性基材が板状体の場合には、これらの厚さを超える厚さであってもよい。上記光透過性基材は、その上に上記ハードコート層等を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布が予め行われていてもよい。
【0065】
上記光透過性基材と低屈折率層との間に上記ハードコート層が形成された構造の本発明の反射防止フィルムは、更に、上記ハードコート層と光透過性基材との間に、公知の帯電防止剤とバインダー樹脂とからなる帯電防止層が形成された構造であってもよい。
【0066】
また、本発明の反射防止フィルムは、必要に応じて任意の層として、上述したハードコート層とは異なる他のハードコート層、防汚染層、高屈折率層、中屈折率層等を備えてなるものであってよい。上記防汚染層、高屈折率層、中屈折率層は、一般に使用される防汚染剤、高屈折率剤、中屈折率剤、低屈折率剤や樹脂等を添加した組成物を調製し、それぞれの層を公知の方法により形成するとよい。
【0067】
本発明の反射防止フィルムの全光線透過率は、90%以上であることが好ましい。90%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
本発明の反射防止フィルムのヘイズは、1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。
【0068】
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、光透過性基材上に、上述したハードコート層用組成物を塗布してハードコート層を形成する工程、及び、形成したハードコート層上に上述した低屈折率層用組成物を塗布して低屈折率層を形成する工程を有する方法が挙げられる。
上記ハードコート層及び低屈折率層を形成する方法としては、上述したとおりである。
【0069】
本発明の反射防止フィルムは、偏光素子の表面に、本発明による反射防止フィルムを該反射防止フィルムにおける低屈折率層が存在する面と反対の面に設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板も、本発明の一つである。
【0070】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等が挙げられる。
上記偏光素子と本発明の反射防止フィルムとのラミネート処理においては、光透過性基材(好ましくは、トリアセチルセルロースフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0071】
本発明は、上記反射防止フィルム又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー等の画像表示装置であってもよい。
【0072】
上記LCDは、透過性表示体と、該透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の反射防止フィルム又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0073】
本発明が上記反射防止フィルムを有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0074】
上記PDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極及び、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又は、その前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した反射防止フィルムを備えるものでもある。
【0075】
上記画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した反射防止フィルムを備えるものである。
【0076】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー、液晶パネル、PDP、ELD、FEDなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。