【文献】
I.Arvanitoyannis et al.,Polymer,1995年,Vol.36,No.15,2957−2967
【文献】
I.Arvanitoyannis et al.,Studies in Polymer Science 12(Biodegradable Plasti,1994年,562−569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のチューブ状容器は、ポリアミド樹脂を含有する層(以後、「酸素吸収バリア層」と称することもある)を少なくとも含む。本発明のチューブ状容器は、必要に応じて、更に融着層や接着層等の任意の層を含んで多層構造としてもよい。多層構造とすることで、容器の加工性や物性が改善したり、容器の取り扱い性や意匠性を高めることができる。
【0012】
1.ポリアミド樹脂を含有する層(酸素吸収バリア層)
本発明において、酸素吸収バリア層は、後述する特定のポリアミド樹脂(以後「ポリアミド樹脂(A)」と呼ぶこともある)を含有することで酸素吸収性能及び酸素バリア性能を発揮することができる。酸素吸収バリア層に含有されるポリアミド樹脂(A)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明において、酸素吸収バリア層はポリアミド樹脂(A)を主な樹脂成分として含有するものである。酸素吸収バリア層には、ポリアミド樹脂(A)以外の樹脂を添加してもよいが、酸素吸収バリア層の全樹脂中に占めるポリアミド樹脂(A)の比率は95質量%を超えることが好ましい。酸素吸収バリア層に含まれる樹脂はポリアミド樹脂(A)のみであってもよく、酸素吸収バリア層の全樹脂中に占めるポリアミド樹脂(A)の比率は100質量%以下が好ましい。
上述の通り酸素吸収バリア層には、ポリアミド樹脂(A)以外の樹脂を添加してもよく、当該添加樹脂としては、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸素吸収バリア層に付与したい性能等に応じて、従来公知の種々の樹脂を用いてよい。例えば、耐衝撃性、耐ピンホール性、柔軟性を付与する観点からは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンやそれらの各種変性物、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合樹脂やその水素添加処理物、ポリエステル系エラストマー等に代表される各種熱可塑性エラストマー、ナイロン6,66,12、ナイロン12等の各種ポリアミド等が挙げられ、酸素吸収性能をさらに付与する観点からは、ポリブタジエンや変性ポリブタジエン等の炭素−炭素不飽和二重結合含有樹脂、を挙げることができる。添加樹脂は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。酸素吸収バリア層の全樹脂中に占める添加樹脂の比率は5質量%以下であることが好ましい。
酸素吸収バリア層は、ポリアミド樹脂(A)に加えて、所望する性能等に応じて、後述する添加剤(以後「添加剤(B)」と呼ぶこともある)を含んでいてもよいが、酸素吸収バリア層中のポリアミド樹脂(A)の含有量は、成形加工性や酸素吸収性能、酸素バリア性能の観点から90質量%〜100質量%であることが好ましく、95質量%〜100質量%であることがより好ましい。
酸素吸収バリア層の厚みは、酸素吸収性能及び酸素バリア性能を高めつつ、チューブ状容器に要求される柔軟性等の諸物性を確保するという観点から、2〜100μmとすることが好ましく、より好ましくは5〜90μmであり、更に好ましくは10〜80μmである。
【0013】
1−1.ポリアミド樹脂(A)
<ポリアミド樹脂(A)の構成>
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、3級水素含有カルボン酸単位(好ましくは下記一般式(III)で表される構成単位)0.1〜50モル%とを含有する。
【0015】
[前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
ただし、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位、前記3級水素含有カルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。ポリアミド樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の構成単位を更に含んでいてもよい。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)において、3級水素含有カルボン酸単位の含有量は0.1〜50モル%である。3級水素含有カルボン酸単位の含有量が0.1モル%未満では十分な酸素吸収性能を発現しない。一方、3級水素含有カルボン酸単位の含有量が50モル%を超えると、3級水素含有量が多すぎるため、ポリアミド樹脂(A)のガスバリア性や機械物性等の物性が低下し、特に3級水素含有カルボン酸がアミノ酸である場合は、ペプチド結合が連続するため耐熱性が十分でなくなるだけでなく、アミノ酸の2量体からなる環状物ができ、重合を阻害する。3級水素含有カルボン酸単位の含有量は、酸素吸収性能やポリアミド樹脂(A)の性状の観点から、好ましくは0.2モル%以上、より好ましくは1モル%以上であり、また、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)において、ジアミン単位の含有量は25〜50モル%であり、酸素吸収性能やポリマー性状の観点から、好ましくは30〜50モル%である。同様に、ポリアミド樹脂(A)において、ジカルボン酸単位の含有量は25〜50モル%であり、好ましくは30〜50モル%である。
ジアミン単位とジカルボン酸単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%の範囲を超えると、ポリアミド樹脂(A)の重合度が上がりにくくなるため重合度を上げるのに多くの時間を要し、熱劣化が生じやすくなる。
【0018】
[ジアミン単位]
ポリアミド樹脂(A)中のジアミン単位は、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を、ジアミン単位中に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0019】
前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のビス(アミノメチル)シクロヘキサン類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類は、構造異性体を持つが、cis体比率を高くすることで、結晶性が高く、良好な成形性を得られる。一方、cis体比率を低くすれば、結晶性が低い、透明なものが得られる。したがって、結晶性を高くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上とする。一方、結晶性を低くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を50モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下とする。
【0021】
前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは6〜12である。
前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
ポリアミド樹脂(A)中のジアミン単位としては、ポリアミド樹脂(A)に優れたガスバリア性を付与することに加え、透明性や色調の向上や、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点からは、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位及び/又は前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂(A)に適度な結晶性を付与する観点からは、前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を含むことが好ましい。特に、酸素吸収性能やポリアミド樹脂(A)の性状の観点からは、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位を含むことが好ましい。
【0023】
ポリアミド樹脂(A)中のジアミン単位は、ポリアミド樹脂(A)に優れたガスバリア性を発現させることに加え、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点から、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0024】
前記一般式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂環族ジアミン、N−メチルエチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、ハンツマン社製のジェファーミンやエラスタミン(いずれも商品名)に代表されるエーテル結合を有するポリエーテル系ジアミン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
[ジカルボン酸単位]
ポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位は、重合時の反応性、並びにポリアミド樹脂(A)の結晶性及び成形性の観点から、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を、ジカルボン酸単位に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0026】
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド樹脂(A)に適度なガラス転移温度や結晶性を付与することに加え、包装材料や包装容器として必要な柔軟性を付与できる点で好ましい。
前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の種類は用途に応じて適宜決定される。ポリアミド樹脂(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド樹脂(A)に優れたガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の加熱殺菌後の耐熱性を保持する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0028】
ポリアミド樹脂(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド樹脂(A)のガスバリア性及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点からは、アジピン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましい。また、ポリアミド樹脂(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド樹脂(A)に適度なガスバリア性及び成形加工適性を付与する観点からは、セバシン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましく、ポリアミド樹脂(A)が低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いられる場合は、1,12−ドデカンジカルボン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましい。
【0029】
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位は、ポリアミド樹脂(A)に更なるガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の成形加工性を容易にすることができる点で好ましい。
前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記アリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の種類は用途に応じて適宜決定される。ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ジカルボン酸単位は、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、芳香族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。また、これらの中でもイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を芳香族ジカルボン酸単位中に含むことが好ましい。イソフタル酸単位とテレフタル酸単位との含有比(イソフタル酸単位/テレフタル酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、適度なガラス転移温度や結晶性を下げる観点からは、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは0/100〜100/0、より好ましくは0/100〜60/40、更に好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。
【0031】
ポリアミド樹脂(A)中のジカルボン酸単位において、前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記芳香族ジカルボン酸単位との含有比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度を上げて、ポリアミド樹脂(A)の結晶性を低下させることを目的とした場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位は、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。また、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度を下げてポリアミド樹脂(A)に柔軟性を付与することを目的とした場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位は、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは40/60〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、更に好ましくは70/30〜100/0である。
【0032】
前記一般式(II−1)又は(II−2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、1,3−ベンゼン二酢酸、1,4−ベンゼン二酢酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
[3級水素含有カルボン酸単位]
本発明において、ポリアミド樹脂(A)における3級水素含有カルボン酸単位は、ポリアミド樹脂(A)の重合の観点から、アミノ基及びカルボキシル基を少なくとも1つずつ有するか、又はカルボキシル基を2つ以上有する。具体例としては、下記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
【0035】
[前記一般式(III)〜(V)中、R、R
1及びR
2はそれぞれ置換基を表し、A
1〜A
3はそれぞれ単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA
1及びA
2がともに単結合である場合を除く。]
【0036】
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、3級水素含有カルボン酸単位を含む。このような3級水素含有カルボン酸単位を共重合成分として含有することで、ポリアミド樹脂(A)は、遷移金属を含有せずとも優れた酸素吸収性能を発揮することができる。
【0037】
本発明において、3級水素含有カルボン酸単位を有するポリアミド樹脂(A)が良好な酸素吸収性能を示す機構についてはまだ明らかにされていないが以下のように推定される。3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物は、同一炭素原子上に電子求引性基と電子供与性基とが結合しているため、その炭素原子上に存在する不対電子がエネルギー的に安定化されるキャプトデーティブ(Captodative)効果と呼ばれる現象によって非常に安定なラジカルが生成すると考えられる。すなわち、カルボキシル基は電子求引性基であり、それに隣接する3級水素が結合している炭素が電子不足(δ
+)になるため、当該3級水素も電子不足(δ
+)となり、プロトンとして解離してラジカルを形成する。ここに酸素及び水が存在したときに、酸素がこのラジカルと反応することで、酸素吸収性能を示すと考えられる。また、高湿度かつ高温の環境であるほど、反応性は高いことが判明している。
【0038】
前記一般式(III)〜(V)中、R、R
1及びR
2はそれぞれ置換基を表す。本発明におけるR、R
1及びR
2で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(1〜15個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(6〜16個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(5員環又は6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する一価の基、例えば1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基、或いは7〜12個、好ましくは7〜9個の炭素原子を有するアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(アミノ基、1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルアミノ基、6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアニリノ基、或いは1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環チオ基、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(2〜10個、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が挙げられる。
【0039】
これらの官能基の中で水素原子を有するものは更に上記の基で置換されていてもよく、例えば、水酸基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、官能基が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更なる置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。以降の炭素数に記載についても、特に断りが無い限り、同様に解するものとする。
【0040】
前記一般式(IV)及び(V)中、A
1〜A
3はそれぞれ単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA
1及びA
2がともに単結合である場合を除く。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基(炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基)、アラルキレン基(炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基、例えばベンジリデン基)、アリーレン基(炭素数6〜30、好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基、例えば、フェニレン基)等が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよく、当該置換基としては、R、R
1及びR
2で表される置換基として上記に例示した官能基が挙げられる。例えば、アルキル基で置換されたアリーレン基(例えば、キシリレン基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、前記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上の観点から、α炭素(カルボキシル基に隣接する炭素原子)に3級水素を有するカルボン酸単位がより好ましく、前記一般式(III)で表される構成単位が特に好ましい。
【0042】
前記一般式(III)中におけるRについては上述した通りであるが、その中でも置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基がより好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基及び置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基が更に好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基及び置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
好ましいRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、及びベンジル基がより好ましい。
【0043】
前記一般式(III)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、アラニン、2−アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、tert−ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、2−フェニルグリシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン等のα−アミノ酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、前記一般式(IV)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸を例示でき、前記一般式(V)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、メチルマロン酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらはD体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上等の観点から、α炭素に3級水素を有するα−アミノ酸が特に好ましい。また、α−アミノ酸の中でも、供給しやすさ、安価な価格、重合しやすさ、ポリマーの黄色度(YI)の低さといった点から、アラニンが最も好ましい。アラニンは、分子量が比較的低く、ポリアミド樹脂(A)1g当たりの共重合率が高いため、ポリアミド樹脂(A)1g当たりの酸素吸収性能は良好である。
【0045】
また、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物の純度は、重合速度の遅延等の重合に及ぼす影響やポリマーの黄色度等の品質面への影響の観点から、95%以上であることが好ましく、より好ましくは98.5%以上、更に好ましくは99%以上である。また、不純物として含まれる硫酸イオンやアンモニウムイオンは、500ppm以下が好ましく、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
【0046】
[ω−アミノカルボン酸単位]
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂(A)に柔軟性等が必要な場合には、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位及び前記3級水素含有カルボン酸単位に加えて、下記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を更に含有してもよい。
【0047】
【化4】
[前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表す。]
前記ω−アミノカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド樹脂(A)の全構成単位中、好ましくは0.1〜49.9モル%、より好ましくは3〜40モル%、更に好ましくは5〜35モル%である。ただし、前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位、3級水素含有カルボン酸単位、及びω−アミノカルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。
前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは5〜12である。
【0048】
前記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸や炭素数5〜19のラクタムが挙げられる。炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸としては、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノドデカン酸等が挙げられ、炭素数5〜19のラクタムとしては、ε−カプロラクタム及びラウロラクタムを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
前記ω−アミノカルボン酸単位は、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を、ω−アミノカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0050】
[ポリアミド樹脂(A)の重合度]
ポリアミド樹脂(A)の重合度については、相対粘度が使われる。ポリアミド樹脂(A)の好ましい相対粘度は、成形品の強度や外観、成形加工性の観点から、好ましくは1.8〜4.2、より好ましくは1.9〜4.0、更に好ましくは2.0〜3.8である。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド樹脂(A)1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t
0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
0
【0051】
[末端アミノ基濃度]
ポリアミド樹脂(A)の酸素吸収速度、及び酸素吸収によるポリアミド樹脂(A)の酸化劣化は、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度を変えることで制御することが可能である。本発明では、酸素吸収速度と酸化劣化のバランスの観点から、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度は5〜150μeq/gの範囲が好ましく、より好ましくは10〜100μeq/g、更に好ましくは15〜80μeq/gである。
【0052】
<ポリアミド樹脂(A)の製造方法>
ポリアミド樹脂(A)は、前記ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる3級水素含有カルボン酸成分と、必要により前記ω−アミノカルボン酸単位を構成しうるω−アミノカルボン酸成分とを重縮合させることで製造することができ、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
【0053】
ポリアミド樹脂(A)の重縮合方法としては、反応押出法、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法等が挙げられるが、これらに限定されない。また、反応温度はできる限り低い方が、ポリアミド樹脂(A)の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド樹脂(A)が得られる。
【0054】
[反応押出法]
反応押出法では、ジアミン成分及びジカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド樹脂(A)の前駆体に相当するポリアミド)又はジアミン成分、ジカルボン酸成分及びω−アミノカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド樹脂(A)の前駆体に相当するポリアミド)と、3級水素含有カルボン酸成分とを押出機で溶融混練して反応させる方法である。3級水素含有カルボン酸成分をアミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法であり、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。少量の3級水素含有カルボン酸単位を含むポリアミド樹脂(A)を製造する場合に、簡便な方法であり好適である。
【0055】
[加圧塩法]
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とからなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド樹脂(A)を回収する。
加圧塩法は、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド樹脂(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド樹脂(A)を製造する場合に、好適である。加圧塩法を用いることで、3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド樹脂(A)が得られる。
【0056】
[常圧滴下法]
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド樹脂(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
常圧滴下法は、前記加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化・凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できる。
【0057】
[加圧滴下法]
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド樹脂(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド樹脂(A)を回収する。
加圧滴下法は、加圧塩法と同様に、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド樹脂(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド樹脂(A)を製造する場合に、好適である。加圧滴下法を用いることで3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド樹脂(A)が得られる。更に、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド樹脂(A)を得ることができる。
【0058】
[重合度を高める工程]
上記重縮合方法で製造されたポリアミド樹脂(A)は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミド樹脂(A)の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0059】
[リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物]
ポリアミド樹脂(A)の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
リン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度換算で0.1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppmであり、更に好ましくは5〜400ppmである。0.1ppm以上であれば、重合中にポリアミド樹脂(A)が着色しにくく透明性が高くなる。1000ppm以下であれば、ポリアミド樹脂(A)がゲル化しにくく、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入も低減でき、成形品の外観が良好となる。
【0060】
また、ポリアミド樹脂(A)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド樹脂(A)の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド樹脂(A)のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、リン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率(モル比)は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、更に好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
【0061】
1−2.添加剤(B)
本発明の酸素吸収バリア層は、前述したポリアミド樹脂(A)以外に、必要に応じて更に添加剤(B)を含有してもよい。添加剤(B)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。酸素吸収バリア層中における添加剤(B)の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0062】
[白化防止剤]
本発明においては、熱水処理後や長時間の経時後の白化抑制として、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物をポリアミド樹脂(A)に添加することが好ましい。ジアミド化合物及びジエステル化合物は、オリゴマーの析出による白化の抑制に効果がある。ジアミド化合物とジエステル化合物を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0063】
本発明に用いられるジアミド化合物としては、炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上、ジアミンの炭素数が2以上であると白化防止効果が期待できる。また、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が30以下、ジアミンの炭素数が10以下で酸素吸収バリア層中への均一分散が良好となる。脂肪族ジカルボン酸は側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジアミド化合物は1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジアミンとしては、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジアミド化合物が好ましい。
炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンからなるジアミンから得られるジアミド化合物、または、主としてモンタン酸からなる脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましく、特に好ましくは主としてステアリン酸からなる脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンからなるジアミンから得られるジアミド化合物である。
【0065】
本発明に用いられるジエステル化合物としては、炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジオールから得られるジエステル化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上、ジオールの炭素数が2以上であると白化防止効果が期待できる。また、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が30以下、ジオールの炭素数が10以下で酸素吸収バリア層中への均一分散が良好となる。脂肪族ジカルボン酸は側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジエステル化合物は1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジエステル化合物が好ましい。
特に好ましくは主としてモンタン酸からなる脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレングリコール及び/又は1,3−ブタンジオールからなるジオールから得られるジエステル化合物である。
【0066】
本発明において、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物の添加量は、酸素吸収バリア層中に好ましくは0.005〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%、さらに好ましくは0.12〜0.5質量%である。酸素吸収バリア層中に0.005質量%以上添加し、かつ結晶化核剤と併用することにより白化防止の相乗効果が期待できる。また、添加量が酸素吸収バリア層中に0.5質量%以下であると、本発明のポリアミド樹脂(A)を成形して得られる成形体の曇値を低く保つことが可能となる。
【0067】
[層状珪酸塩]
本発明において、酸素吸収バリア層は層状珪酸塩を含有してもよい。層状珪酸塩を添加することで、チューブ状容器に酸素ガスバリア性だけでなく、炭酸ガス等のガスに対するバリア性を付与することができる。
【0068】
層状珪酸塩は、0.25〜0.6の電荷密度を有する2−八面体型や3−八面体型の層状珪酸塩であり、2−八面体型としては、モンモリロナイト、バイデライト等、3−八面体型としてはヘクトライト、サボナイト等が挙げられる。これらの中でも、モンモリロナイトが好ましい。
【0069】
層状珪酸塩は、高分子化合物や有機系化合物等の有機膨潤化剤を予め層状珪酸塩に接触させて、層状珪酸塩の層間を拡げたものとすることが好ましい。有機膨潤化剤として、第4級アンモニウム塩が好ましく使用できるが、好ましくは、炭素数12以上のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも一つ以上有する第4級アンモニウム塩が用いられる。
【0070】
有機膨潤化剤の具体例として、トリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、トリメチルエイコシルアンモニウム塩等のトリメチルアルキルアンモニウム塩;トリメチルオクタデセニルアンモニウム塩、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム塩等のトリメチルアルケニルアンモニウム塩;トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリエチルテトラデシルアンモニウム塩、トリエチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム塩;トリブチルドデシルアンモニウム塩、トリブチルテトラデシルアンモニウム塩、トリブチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリブチルオクタデシルアンモニウム塩等のトリブチルアルキルアンモニウム塩;ジメチルジドデシルアンモニウム塩、ジメチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジタロウアンモニウム塩等のジメチルジアルキルアンモニウム塩;ジメチルジオクタデセニルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム塩等のジメチルジアルケニルアンモニウム塩;ジエチルジドデシルアンモニウム塩、ジエチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム塩;ジブチルジドデシルアンモニウム塩、ジブチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジブチルジオクタデシルアンモニウム塩等のジブチルジアルキルアンモニウム塩;メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム塩等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム塩;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム塩等のジベンジルジアルキルアンモニウム塩;トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリテトラデシルメチルアンモニウム塩、トリオクタデシルメチルアンモニウム塩等のトリアルキルメチルアンモニウム塩;トリドデシルエチルアンモニウム塩等のトリアルキルエチルアンモニウム塩;トリドデシルブチルアンモニウム塩等のトリアルキルブチルアンモニウム塩;4−アミノ−n−酪酸、6−アミノ−n−カプロン酸、8−アミノカプリル酸、10−アミノデカン酸、12−アミノドデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、16−アミノヘキサデカン酸、18−アミノオクタデカン酸等のω−アミノ酸等が挙げられる。また、水酸基及び/又はエーテル基含有のアンモニウム塩、中でも、メチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、エチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、ブチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、ジメチルビス(PAG)アンモニウム塩、ジエチルビス(PAG)アンモニウム塩、ジブチルビス(PAG)アンモニウム塩、メチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、エチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、ブチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、メチルトリ(PAG)アンモニウム塩、エチルトリ(PAG)アンモニウム塩、ブチルトリ(PAG)アンモニウム塩、テトラ(PAG)アンモニウム塩(ただし、アルキルはドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル等の炭素数12以上のアルキル基を表し、PAGはポリアルキレングリコール残基、好ましくは、炭素数20以下のポリエチレングリコール残基またはポリプロピレングリコール残基を表す)等の少なくとも一のアルキレングリコール残基を含有する4級アンモニウム塩も有機膨潤化剤として使用することができる。中でもトリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジドデシルアンモニウム塩、ジメチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジタロウアンモニウム塩が好ましい。なお、これらの有機膨潤化剤は、単独でも複数種類の混合物としても使用できる。
【0071】
本発明では、有機膨潤化剤で処理した層状珪酸塩を酸素吸収バリア層中に0.5〜8質量%添加したものが好ましく用いられ、より好ましくは1〜6質量%、更に好ましくは2〜5質量%である。層状珪酸塩の添加量が0.5質量%以上であればガスバリア性の改善効果が十分に得られ、8質量%以下であれば酸素吸収バリア層の柔軟性が悪化することによるピンホールの発生等の問題が生じにくい。
【0072】
酸素吸収バリア層において、層状珪酸塩は局所的に凝集することなく均一に分散していることが好ましい。ここでいう均一分散とは、酸素吸収バリア層中において層状珪酸塩が平板状に分離し、それらの50%以上が5nm以上の層間距離を有することをいう。ここで層間距離とは平板状物の重心間距離のことをいう。この距離が大きい程分散状態が良好となり、透明性等の外観が良好で、かつ酸素、炭酸ガス等のガスバリア性を向上させることができる。
【0073】
[酸化反応促進剤]
酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を更に高めるために、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の酸化反応促進剤を添加してもよい。酸化反応促進剤はポリアミド樹脂(A)が有する酸素吸収性能を促進することで、酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を高めることができる。酸化反応促進剤としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属、銅や銀等の第I族金属、スズ、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等の第VI族、マンガン等の第VII族の金属の低価数の無機酸塩もしくは有機酸塩、又は上記遷移金属の錯塩を例示することができる。これらの中でも、酸素反応促進効果に優れるコバルト塩やコバルト塩とマンガン塩との組合せが好ましい。
本発明において、酸素反応促進剤の添加量は、酸素吸収バリア層中に好ましくは金属原子濃度として10〜800ppm、より好ましくは50〜600ppm、さらに好ましくは100〜400ppmである。
【0074】
[酸素吸収剤]
酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を更に高めるために、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の酸素吸収剤を添加してもよい。酸素吸収剤はポリアミド樹脂(A)が有する酸素吸収性能と別に酸素吸収バリア層に酸素吸収性能を付与することで、酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を高めることができる。酸素吸収剤としては、ビタミンCやビタミンE、ブタジエンやイソプレンのように分子内に炭素−炭素二重結合をもつ化合物に代表される酸化性有機化合物を例示することできる。
本発明において、酸素吸収剤の添加量は、酸素吸収バリア層中に好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
【0075】
[ゲル化防止・フィッシュアイ低減剤]
本発明においては、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類を添加することが好ましい。ここで該誘導体としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。前記カルボン酸塩類を添加することで、成形加工中に起こるポリアミド樹脂(A)のゲル化防止や成形体中のフィッシュアイを低減することができ、成形加工の適性が向上する。
【0076】
前記カルボン酸塩類の添加量としては、酸素吸収バリア層中の濃度として、好ましくは400〜10000ppm、より好ましくは800〜5000ppm、更に好ましくは1000〜3000ppmである。400ppm以上であれば、ポリアミド樹脂(A)の熱劣化を抑制でき、ゲル化を防止できる。また、10000ppm以下であれば、ポリアミド樹脂(A)が成形不良を起こさず、着色や白化することもない。溶融したポリアミド樹脂(A)中に塩基性物質であるカルボン酸塩類が存在すると、ポリアミド樹脂(A)の熱による変性が遅延し、最終的な変性物と考えられるゲルの生成を抑制すると推測される。
なお、前述のカルボン酸塩類はハンドリング性に優れ、この中でもステアリン酸金属塩は安価である上、滑剤としての効果を有しており、成形加工をより安定化することができるため好ましい。更に、カルボン酸塩類の形状に特に制限はないが、粉体でかつその粒径が小さい方が乾式混合する場合、酸素吸収バリア層中に均一に分散させることが容易であるため、その粒径は0.2mm以下が好ましい。
【0077】
[酸化防止剤]
本発明においては、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、銅系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤等を例示することができ、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
【0078】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−1−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシシンナムアミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチルカルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、d−α−トコフェロール等が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。ヒンダードフェノール化合物の市販品の具体例としては、BASF社製のIrganox1010やIrganox1098が挙げられる(いずれも商品名)。
【0079】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
【0080】
酸化防止剤の含有量は、組成物の各種性能を損なわない範囲であれば特に制限無く使用できるが、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から、酸素吸収バリア層中に好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0081】
[その他の添加剤]
酸素吸収バリア層には、要求される用途や性能に応じて、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、結晶化核剤等の添加剤を添加させてもよい。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。
【0082】
2.任意の層
2−1.融着層
本発明のチューブ状容器は酸素吸収バリア層に加えて、融着層をチューブ状容器の最内層及び/又は最外層として更に含むことが好ましい。融着層を設けることにより、多層積層体から端部同士を融着してスリーブ体を製造する際や、スリーブ体及び多層押出にて製造した筒状の多層体(パリソン)と注出口を備えた容器ヘッド部との溶着時、さらには内容物を充填した後、チューブ状容器の開口部を融着する際等、加工性を高めることができる。また、内容物の種類によっては容器の対内容物性を高めることができる。
融着層は融着性を有する熱可塑性樹脂を含む層である。前記融着性を有する熱可塑性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種ポリオレフィン系樹脂や、その他熱可塑性樹脂等を使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、それらは単独で使用してもよく、2種類以上の材料を混合したものとしてもよい。これらの中でも成形加工性や衛生性、臭気等の観点から低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体が好ましく使用される。
また融着層はその効果を損なわない範囲で滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を含んでもよい。
なお、チューブ状容器の最内層及び最外層の両方に融着層が設けられる場合、両融着層の構成は互いに同じであっても異なっていてもよいが、安定した融着性を発揮することができる材料を選択することが好ましい。
【0083】
本発明における融着層の厚みは、実用的な融着強度を発揮しつつ加工性を確保するという観点から、5〜200μmとすることが好ましく、より好ましくは10〜150μmであり、更に好ましくは15〜100μmである。
【0084】
2−2.接着層
本発明のチューブ状容器は酸素吸収バリア層に加えて、接着層を更に含んでもよい。チューブ状容器において、隣接する2つの層(例えば、酸素吸収バリア層と融着層)の間で実用的な層間接着強度が得られない場合に、当該2つの層の間に接着剤層を設けることが好ましい。
接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。融着性を有する熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性したものを、接着性を有する熱可塑性樹脂として選択することが好ましい。
【0085】
接着層の厚みは、実用的な接着強度を発揮しつつ加工性を確保するという観点から、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜90μm、更に好ましくは10〜80μmである。
【0086】
2−3.その他の任意の層
本発明のチューブ状容器は所望する性能等に応じて上述以外の任意の層を更に含んでもよい。このような層を構成する材料としては、上述の各種ポリオレフィン類、ナイロン6やナイロンMXD6等の各種ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸等の各種ポリエステル類、エチレンビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂を単独で又は混合したものが挙げられる。また、各種金属箔、金属酸化物膜が蒸着された樹脂フィルム等を用いることもできる。
【0087】
3.チューブ状容器の製造方法
本発明のチューブ状容器は、Tダイを介してフィルムを作製後、または押出ラミネートや共押出ラミネート、ドライラミネート等の方法で多層積層フィルムを製造した後、フィルム端部同士を融着させてスリーブ体を形成した後、所望の大きさにカットしてパイプ状に成形し、さらに注出部を設けた口部をパイプ端部に接合する方法により製造することができる。また、共押出により多層構造を持つパリソンを製造後に口部を接合する方法等の従来公知の製造方法により製造することができる。
本発明において、酸素吸収バリア層はチューブ状容器の少なくとも一部に用いられていればよく、その使用箇所はチューブ状容器の製造方法にも依存する。例えば、上述したフィルムを加工してパイプを成形し、当該パイプの端部に口部を接合してチューブ状容器を製造する場合には、当該フィルム中に酸素吸収バリア層を設けておくことで、チューブ状容器の胴部に酸素吸収バリア層が設けられることになる。
【0088】
4.チューブ状容器の用途
本発明のチューブ状容器には、例えば、マヨネーズ,味噌,からし,わさび,生姜,ニンニク等のすり下ろし香辛料等の調味料、ジャム,クリーム,バター,マーガリン,チョコレートペースト等のペースト状食品、医薬品、化粧品、練り歯磨き、染毛剤、染色剤、石鹸、化学品等、種々の粘体状物等、様々な物品を収納・保存することができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、共重合体を構成する単位に関して、
メタキシリレンジアミンに由来する単位を「MXDA」、
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する単位を「1,3BAC」、
ヘキサメチレンジアミンに由来する単位を「HMDA」、
アジピン酸に由来する単位を「AA」、
イソフタル酸に由来する単位を「IPA」、
DL−アラニンに由来する単位を「DL−Ala」、
DL−ロイシンに由来する単位を「DL−Leu」、
DL−バリンに由来する単位を「DL−Val」、
ε−カプロラクタムに由来する単位を「ε−CL」という。
また、ポリメタキシリレンアジパミドを「N−MXD6」という。
【0090】
製造例で得られたポリアミド樹脂のα−アミノ酸含有率、相対粘度、末端アミノ基濃度、ガラス転移温度及び融点は以下の方法で測定した。また、製造例で得られたポリアミド樹脂からフィルムを作製し、その酸素吸収量を以下の方法で測定した。
【0091】
(1)α−アミノ酸含有率
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(
1H))を用いて、ポリアミド樹脂のα−アミノ酸含有率の定量を実施した。具体的には、溶媒としてギ酸−dを用いてポリアミド樹脂の5質量%の溶液を調製し、
1H−NMR測定を実施した。
【0092】
(2)相対粘度
ペレット状サンプル1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t
0)も同様に測定した。t及びt
0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
0【0093】
(3)末端アミノ基濃度〔NH
2〕
ポリアミド樹脂を精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液に20〜30℃で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、撹拌しつつ、メタノール5mlで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度〔NH
2〕を求めた。
【0094】
(4)ガラス転移温度及び融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
【0095】
(5)酸素吸収量
Tダイを設置した30mmφ二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製)を用い、(ポリアミド樹脂の融点+20℃)のシリンダー・Tダイ温度にて、ポリアミド樹脂から厚さ約100μmの無延伸単層フィルムを成形した。
製造した無延伸単層フィルムから切り出した10cm×10cmの試験片2枚を、アルミ箔積層フィルムからなる25cm×18cmの3方シール袋に、水10mlを含ませた綿と共に仕込み、袋内空気量が400mlとなるようにして密封した。袋内の湿度は100%RH(相対湿度)とした。40℃下で7日保存後、14日保存後、28日保存後のそれぞれに袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、商品名:LC−700F)で測定し、この酸素濃度から酸素吸収量を計算した。
【0096】
製造例1(ポリアミド樹脂1の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸(旭化成ケミカルズ(株)製)13000g(88.96mol)、DL−アラニン((株)武蔵野化学研究所製)880.56g(9.88mol)、次亜リン酸ナトリウム11.7g(0.11mol)、酢酸ナトリウム6.06g(0.074mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。170℃に到達した後、反応容器内の溶融した原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)12082.2g(88.71mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を連続的に240℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化してMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂1)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。
【0097】
製造例2(ポリアミド樹脂2の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=44.4:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂2)を得た。
【0098】
製造例3(ポリアミド樹脂3の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=41.1:41.3:17.6(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂3)を得た。
【0099】
製造例4(ポリアミド樹脂4の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=37.5:37.5:25.0(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂4)を得た。
【0100】
製造例5(ポリアミド樹脂5の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=33.3:33.4:33.3(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂5)を得た。
【0101】
製造例6(ポリアミド樹脂6の製造)
α−アミノ酸をDL−ロイシン(Ningbo Haishuo Bio−technology製)に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−ロイシン=44.3:44.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Leu共重合体(ポリアミド樹脂6)を得た。
【0102】
製造例7(ポリアミド樹脂7の製造)
α−アミノ酸をDL−バリン(Sinogel Amino Acid Co.,Ltd製)に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−バリン=44.3:44.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Val共重合体(ポリアミド樹脂7)を得た。
【0103】
製造例8(ポリアミド樹脂8の製造)
ジカルボン酸成分をイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)とアジピン酸の混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸:DL−アラニン=44.3:39.0:5.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/IPA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂8)を得た。
【0104】
製造例9(ポリアミド樹脂9の製造)
コモノマーとしてε−カプロラクタム(宇部興産(株)製)を使用し、α−アミノ酸をDL−ロイシンに変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−ロイシン:ε−カプロラクタム=41.0:41.3:11.8:5.9(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Leu/ε−CL共重合体(ポリアミド樹脂9)を得た。
【0105】
製造例10(ポリアミド樹脂10の製造)
ジアミン成分を1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製)とメタキシリレンジアミンの混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン:アジピン酸:DL−アラニン=33.2:11.1:44.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/1,3BAC/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂10)を得た。
【0106】
製造例11(ポリアミド樹脂11の製造)
ジアミン成分をヘキサメチレンジアミン(昭和化学(株)製)とメタキシリレンジアミンの混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:ヘキサメチレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=33.3:11.1:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/HMDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド樹脂11)を得た。
【0107】
製造例12(ポリアミド樹脂12の製造)
DL−アラニンを添加せず、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸=49.8:50.2(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてN−MXD6(ポリアミド樹脂12)を得た。
【0108】
製造例13(ポリアミド樹脂13の製造)
DL−アラニンを添加せず、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸=50.2:49.8(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてN−MXD6(ポリアミド樹脂13)を得た。
【0109】
表1に、ポリアミド樹脂1〜13の仕込みモノマー組成、並びに得られたポリアミド樹脂のα−アミノ酸含有率、相対粘度、末端アミノ基濃度、ガラス転移温度、融点及び酸素吸収量の測定結果を示す。
【0110】
【表1-1】
【0111】
【表1-2】
【0112】
次に、実施例1〜11及び比較例1〜4において、上記ポリアミド樹脂1〜13を用いてチューブ状容器を作製した。
【0113】
実施例1
第1〜第4押出機、フィードブロック、ダイ及び冷却装置からなる4種5層の多層パイプ押出装置を用い、第1の押出機から高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製,ノバテックHD−HB431、以下HDPEと略する)、第2の押出機から接着性ポリエチレン(三菱化学(株)製、商品名:モディックL553、以下接着性PEと略する)、第3の押出機から製造例1で製造したポリアミド樹脂1、第4の押出機から低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製,ノバテックLD−YF30、以下LDPEと略する)をそれぞれ押し出して、内層側から外層側へ向けて順に、HDPE層(120μm)/接着性PE層(30μm)/ポリアミド樹脂層(50μm)/接着性PE層(30μm)/LDPE層(120μm)の構成を有する内径35mmの4種5層多層パイプを製造した。この多層パイプを長さ160mmにカットした後、ガスバリア性を有し、かつ高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製,ノバテックHD−HJ360)を主材とした口部をパイプの一方の端部に接合してチューブ状容器を得た。なお、当該チューブ状容器は、後述の評価試験にて内容物を充填するため、パイプの他方の端部は閉じられておらず、開口した状態である。
【0114】
実施例2〜11
ポリアミド樹脂層に、ポリアミド樹脂1に代えてポリアミド樹脂2〜11を使用したこと以外は実施例1と同様にしてチューブ状容器を作製した。
【0115】
比較例1
ポリアミド樹脂層に、ポリアミド樹脂1に代えてポリアミド樹脂12を使用したこと以外は実施例1と同様にしてチューブ状容器を作製した。
【0116】
比較例2
ポリアミド樹脂層に、ポリアミド樹脂1に代えて100質量部のポリアミド樹脂12と0.21質量部のステアリン酸コバルト(II)をドライブレンドしたものを使用したこと以外は実施例1と同様にしてチューブ状容器を作製した。
【0117】
比較例3
ポリアミド樹脂層にポリアミド樹脂1に代えて100質量部のポリアミド樹脂13と0.15質量部のステアリン酸コバルト(II)と3質量部のマレイン酸変性ポリブタジエン(日本石油化学(株)製、商品名:M−2000−20)をドライブレンドしたものを使用したこと以外は実施例1と同様にしてチューブ状容器を作製した。
【0118】
比較例4
平均粒径30μmの還元鉄粉100質量部に対して塩化カルシウム3質量部をコーティングした粒状の酸素吸収剤40質量部とHDPE60質量部をドライブレンドし、35mm二軸押出機にて押し出しを行い、ブロワ付きネットベルトで冷却後ペレタイザーを経て、酸素吸収剤含有HDPEを得た。
第1〜第5押出機、フィードブロック、ダイ及び冷却装置からなる5種6層の多層パイプ押出装置を用い、第1の押出機からHDPE、第2の押出機から前記酸素吸収剤含有HDPE、第3の押出機から接着性PE、第4の押出機から製造例12で得たポリアミド樹脂12、第5の押出機からLDPEを押し出し、内層側から外層側へ向けて順に、HDPE層(60μm)/酸素吸収剤含有HDPE層(60μm)/接着性PE層(30μm)/ポリアミド樹脂層(50μm)/接着性PE層(30μm)/LDPE層(120μm)の構成を有する内径35mmの5種6層多層パイプを製造した。この多層パイプを長さ160mmにカットした後、ガスバリア性を有し、かつ高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製,ノバテックHD−HJ360)を主材とした口部をパイプの一方の端部に接合してチューブ状容器を得た。なお、当該チューブ状容器は、後述の評価試験にて内容物を充填するため、パイプの他方の端部は閉じられておらず、開口した状態である。
【0119】
上記実施例1〜11及び比較例1〜4で作製したチューブ状容器を用いて、酸化劣化抑制効果、風味保持性、及び強度維持性を以下の通り評価した。
(1)酸化劣化抑制効果(L−アスコルビン酸残存率)
チューブ状容器に設けられた口部の先端穴をアルミ箔積層フィルムで密封してキャップを閉めた。次に、チューブ状容器の開口部からL−アスコルビン酸10%水溶液を100ml充填し、ヒートシールして開口部を密封した。この容器を25℃、50%RHの環境下に3ヶ月間保存した後、内容液を取り出し、100ml容量のトールビーカーに内容液10mlを入れ、次いでメタリン酸と酢酸の混合水溶液5mlと蒸留水40mlを加えた。次いで、0.05mol/lのヨウ素溶液を滴定液とし、電位差滴定装置を用いて変曲点検出法により滴定を行い、その結果からL−アスコルビン酸残存率を求めた。なお、L−アスコルビン酸の残存率が高ければ、内容物の酸化劣化を抑制する効果に優れていることを意味する。
(2)風味保持性
チューブ状容器の開口部をヒートシールして密封した後、チューブ状容器に設けられた口部の先端穴から蒸留水100mlを充填し、アルミ箔積層フィルムで口部の先端穴を密封してキャップを閉めた。この容器を25℃、50%RHの環境下に1ヶ月間保存した後、アルミ箔積層フィルムを剥がして容器内ヘッドスペースの臭気を調査した。
臭気が認められないものを○、臭気が認められるものを×とした。
(3)強度維持性
上記風味保持性の試験で1ヶ月間蒸留水を保存した後の容器から、蒸留水を抜き、容器を50回手で揉んだ後、容器を観察し、層間剥離の有無を調査した。
層間剥離が認めらないものを○、層間剥離が認められたものを×とした。
表2に評価結果を示す。
【0120】
【表2-1】
【0121】
【表2-2】
【0122】
実施例1〜11のチューブ状容器はいずれも、酸化劣化抑制効果、風味保持性、及び強度維持性のすべてに優れていた。
【0123】
比較例1のチューブ状容器は、風味保持性及び強度維持性には優れていたものの、L−アスコルビン酸の残存率が低く、酸化劣化抑制効果の点で劣っていた。比較例1のチューブ状容器に用いたポリアミド樹脂12は、酸素バリア性能は有するが酸素吸収性能が無く、L−アスコルビン酸が酸化したためと考えられる。
比較例2のチューブ状容器は、酸化劣化抑制効果及び風味保持性には優れていたものの、容器の手揉み試験で、ポリアミド層が破壊して層間剥離が発生し、容器の外観が悪化した。ポリアミド樹脂12と遷移金属化合物(ステアリン酸コバルト(II))を共存させることで酸素吸収性能が発現したものの、同時にポリアミド樹脂12が酸化分解し、ポリアミド樹脂層が強度劣化したためと考えられる。
比較例3のチューブ状容器3は、酸化劣化抑制効果及び強度維持性には優れていたものの、開封時に異臭が認められ、風味保持性の点で劣っていた。ポリアミド樹脂13は末端アミノ基濃度を高く、実質上酸化しにくいため、ポリアミド樹脂層が大きく強度劣化することはなく、かつ、マレイン酸変性ポリブタジエンとステアリン酸コバルトを共存させることで酸素吸収性能が発現したものの、ポリブタジエンの酸化劣化に伴う低分子量化合物の発生により異臭が生じたものと考えられる。
比較例4のチューブ状容器4は、酸化劣化抑制効果及び強度維持性には優れていたものの、開封時に鉄臭が認められた。ポリアミド樹脂層が酸素バリア性能を発現し、酸素吸収剤含有LDPEが酸素吸収性能を発現したものの、酸素吸収剤として鉄粉を使用しているため、当該鉄粉に起因する鉄臭が生じたためと考えられる。