特許第6011562号(P6011562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011562
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】自走式検査装置及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20161006BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
   G05D1/02 H
   G05D1/02 J
   G05D1/02 K
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-36756(P2014-36756)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-161577(P2015-161577A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小原 祐司
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】亀崎 俊一
(72)【発明者】
【氏名】林 宏優
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−184029(JP,A)
【文献】 特開2010−194710(JP,A)
【文献】 特開2013−045298(JP,A)
【文献】 特開2002−090268(JP,A)
【文献】 特開平01−250112(JP,A)
【文献】 特開平08−249062(JP,A)
【文献】 特開2012−003706(JP,A)
【文献】 特開2014−089173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄業における屋内又は屋外の生産設備の検査作業を行う自走式検査装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を走行させる走行部と、を備え、
前記装置本体は、
前記生産設備の検査作業を行う検査部と、
第1信号源との間で情報通信を行うことによって前記装置本体の位置情報を推定する第1位置推定部と、
進行支障部においてSLAM技術を利用して前記装置本体の位置情報を推定する第2位置推定部と、
前記装置本体の位置情報を推定する手段を前記第1位置推定部と前記第2位置推定部との間で切り替え、推定した前記装置本体の位置情報に基づいて前記走行部を制御することによって前記装置本体を所定のルートに沿って進行させると共に、前記検査部を制御することによって検査対象の生産設備の検査作業を実行させる制御部と、
を備えることを特徴とする自走式検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2位置推定部が前記進行支障部の入口側に設けられた認識手段を認識したタイミングで前記装置本体の位置情報を推定する手段を前記第2位置推定部に切り替え、前記第2位置推定部が前記進行支障部の出口側に設けられた認識手段を認識したタイミングで前記装置本体の位置情報を推定する手段を前記第1位置推定部に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の自走式検査装置。
【請求項3】
前記第1信号源は、GPS信号源及びiGPS信号源の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の自走式検査装置。
【請求項4】
前記第2位置推定部は、RFID機器を利用して前記装置本体の位置情報を推定することを特徴とする請求項2又は3に記載の自走式検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の自走式検査装置と、
前記自走式検査装置との間で情報通信を行う第1信号源と、
前記自走式検査装置に進行支障箇所を認識させる認識手段と、
を備えることを特徴とする検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄業における屋内又は屋外の生産設備の検査作業を行う自走式検査装置及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄業における屋内又は屋外の生産設備では、作業員が、予め決められたルートに沿って所定時間毎に点検及び保守作業(以下、ルート点検作業と表記)を行っている。具体的には、例えば熱延工場では、作業員は、熱延ラインを隔ててそれぞれ左右に分離された圧延機のドライブ側及びオペレーション側のルートに沿って、所定時間毎に圧延機や油圧ポンプ等の機器の動作確認を行っている。熱延工場のルート点検作業における作業員の総歩行距離は数kmにも及ぶ場合もある。
【0003】
このようなルート点検作業では、作業内容によっては、作業員によって作業結果が異なる場合がある。具体的には、経験が浅い作業員が機器の異常に気づかず、機器の修理が遅れることがある。また、上述の通り、作業員の作業範囲は数kmにも及び広く、高熱、騒音、粉塵等の環境が悪いエリアを含む場合もあるために、ルート点検作業は作業員にとって大きな負荷になっている。一方、設備故障発生時には、ルート点検作業よりも修理作業が優先されることが多い。
【0004】
このため、一般に、ルート点検作業は形骸化しやすい性質を有している。このような背景から、製鉄業における屋内又は屋外の生産設備のルート点検作業を人手に頼らずに自動化する技術の提供が期待されている。なお、製鉄業以外の製造業における生産設備に対しては、例えば以下の特許文献1〜3に示すような自動化技術が既に提案されている。
【0005】
特許文献1には、発電所・変電所又は工場等において、誘導ワイヤー又は表示ラインによって予め設定したルートを自走式ロボット装置に読み取らせることにより自走式ロボットを巡回移動させると共に、自走式ロボット装置が点検箇所の近傍に接近すると、点検箇所に取り付けた点検指標から発信される情報と監視者による遠隔操作とによって自走式ロボット装置を点検箇所まで移動させる技術が記載されている。
【0006】
特許文献2には、航空機構造物の組立現場内の幾つかの位置を移動し、組立現場で航空機構造物の組立作業を行う複数の可動式ロボット装置と、複数のセンサを利用して複数の可動式ロボット装置の位置を特定し、複数の可動式ロボット装置の動作を制御することによって航空機構造物を組み立てる運動制御システムと、を備える自動組立システムに関する技術が記載されている。
【0007】
特許文献3には、GPS(Global Positioning System)信号が届かない屋内環境において、レーザ距離計等の計測手段を使用して地図情報と計測結果とから自己の位置を推定、移動するSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を利用することにより、予め設定されている経路データに沿って無人搬送車を走行させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−184029号公報
【特許文献2】特開2010−194710号公報
【特許文献3】特開2013−45298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1〜3記載の技術を単純に製鉄業における生産設備のルート点検作業に適用することは以下の理由により困難である。
【0010】
すなわち、特許文献1記載の技術では、自走式ロボット装置を誘導するために平らな床面に誘導ワイヤー又は表示ラインを配置する必要があるが、製鉄業における生産設備のルート点検作業における移動経路の床面は常に平らであるとは限らない。例えば生産設備が大型であることから、移動経路は複数回の階段昇降を伴い、移動経路の床面は必ずしも平らではない。また、粉塵が床面に堆積した場合、誘導ワイヤー又は表示ラインが粉塵によって埋もれ、自走式ロボット装置が移動できなくなることがある。生産設備が屋外にある場合には、これらの問題はより顕著になる。
【0011】
また、特許文献2記載の技術では、運動制御システムと複数のセンサとの間の通信が障害物によって遮断され、運動制御システムが可動式ロボット装置の位置を特定できない場合がある。例えば、室内位置測定システム(iGPS:indoor Global Positioning System)のように通信手段としてレーザを利用する場合、可動式ロボット装置の走行経路が生産設備の影に入った際や生産設備が大量の蒸気を放出した際等に、レーザが物理的に遮断されることによって可動式ロボット装置の位置の測定精度が著しく低下することがある。
【0012】
さらに、特許文献3記載の技術では、計測可能な範囲に壁や柱等のランドマークが存在する必要があるが、製鉄業における生産設備では、ルート点検作業の対象となる上流側の設備と下流側の設備との間の間隔が数十m単位で広く空いていて、設備列の移動の間に明確なランドマークが存在しない場合がある。このため、特許文献3記載の技術によれば、計測手段が周囲の物体までの距離を計測できないために、無人搬送車をルートに沿って走行させることができなくなる可能性がある。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、製鉄業における生産設備の検査作業を自動的に実行可能な自走式検査装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、情報通信が困難なエリアや走行面が平らでないエリアを含む場合であっても、生産設備の検査作業を実行可能な検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る自走式検査装置は、製鉄業における屋内又は屋外の生産設備の検査作業を行う自走式検査装置であって、装置本体と、前記装置本体を走行させる走行部と、を備え、前記装置本体は、前記生産設備の検査作業を行う検査部と、第1信号源との間で情報通信を行うことによって前記装置本体の位置情報を推定する第1位置推定部と、進行支障部においてSLAM技術を利用して前記装置本体の位置情報を推定する第2位置推定部と、前記装置本体の位置情報を推定する手段を前記第1位置推定部と前記第2位置推定部との間で切り替え、推定した前記装置本体の位置情報に基づいて前記走行部を制御することによって前記装置本体を所定のルートに沿って進行させると共に、前記検査部を制御することによって検査対象の生産設備の検査作業を実行させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る自走式検査装置は、上記発明において、前記制御部は、前記第2位置推定部が前記進行支障部の入口側に設けられた認識手段を認識したタイミングで前記装置本体の位置情報を推定する手段を前記第2位置推定部に切り替え、前記第2位置推定部が前記進行支障部の出口側に設けられた認識手段を認識したタイミングで前記装置本体の位置情報を推定する手段を前記第1位置推定部に切り替えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る自走式検査装置は、上記発明において、前記第1信号源は、GPS信号源及びiGPS信号源の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る自走式検査装置は、上記発明において、前記第2位置推定部は、RFID機器を利用して前記装置本体の位置情報を推定することを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る検査システムは、本発明に係る自走式検査装置と、前記自走式検査装置との間で情報通信を行う第1信号源と、前記自走式検査装置に進行支障箇所を認識させる認識手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る自走式検査装置によれば、製鉄業における生産設備の検査作業を自動的に実行することができる。また、本発明に係る検査システムによれば、情報通信が困難なエリアや走行面が平らでないエリアを含む場合であっても生産設備の検査作業を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態である自走式検査装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、屋内の生産設備における自走式検査装置の動作を説明するための模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態である自走式検査装置の制御方法の流れを示すフローチャートである。
図4A図4Aは、自走式検査装置が屋外設備に向けて移動する様子を示す模式図である。
図4B図4Bは、自走式検査装置が屋外設備に接近する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である自走式検査装置の構成について説明する。
【0022】
〔自走式検査装置の構成〕
図1は、本発明の一実施形態である自走式検査装置の構成を示すブロック図である。本発明の一実施形態である自走式検査装置1は、製鉄業における屋内又は屋外の生産設備の検査作業を自動的に実行するためのものである。製鉄業における屋内の生産設備としては、製銑工程、製鋼工程、鋳造工程、及び圧延工程等の生産設備を例示することができる。また、製鉄業における屋外の生産設備としては、ベルトコンベア等の搬送装置を例示することができる。
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施形態である自走式検査装置1は、装置本体10及び走行部20を備えている。
【0024】
装置本体10は、第1位置推定部11、第2位置推定部12、検査部13、情報記憶部14、及び制御部15を主な構成要素として備えている。
【0025】
第1位置推定部11は、通信装置11aと、演算処理装置11bと、を備えている。通信装置11aは、例えば図2に示すような生産設備列間のフロア通路A等の周囲に明確なランドマークが存在しないエリアに設置された複数の信号源との間で情報通信を行う装置である。通信装置11aが情報通信を行う信号源としては、生産設備が屋内に存在する場合、図2に示すような室内位置測定システム(iGPS:indoor Global Positioning System)トランスミッタ31やその他の無線信号発信源、LED等の光源を利用した可視光通信装置等を例示することができる。また、生産設備が屋外に存在する場合には、これらの信号源に加えて、衛星航法システム(GPS:Global Positioning System)の信号発信源を用いることができる。
【0026】
演算処理装置11bは、通信装置11aによる信号源との間の情報通信の結果を用いて自走式検査装置1の位置情報を算出する装置である。具体的には、信号源として図2に示すiGPSトランスミッタ31を用いる場合、iGPSトランスミッタ31は、回転ファンビーム(扇型ビーム)を射出している。回転ファンビームは、レーザファンビームであってもよく、他の光放射手段であってもよい。通信装置11aは、iGPSトランスミッタ31から射出される回転ファンビームを受信し、複数のiGPSトランスミッタ31からの相対的位置を把握できるようになっている。このとき、回転ファンビームは所定の角度でずれており、これを受信する通信装置11aの座標値、すなわち位置若しくは高さを測定することができる。通信装置11aが受信した情報は演算処理装置11bに送られ、演算処理装置11bは三角測量の原理に従って装置本体10、すなわち自走式検査装置1の位置情報を算出する。iGPSの詳細については、例えば米国特許第6501543号明細書を参照のこと。
【0027】
なお、生産設備が屋外に存在する場合、演算処理装置11bは、通信装置11aがGPS信号源からの信号を受信可能な範囲ではGPS信号源との間の情報通信の結果を用いて自走式検査装置1の位置情報を算出し、生産設備の近傍等の通信装置11aがGPS信号源からの信号を受信することは困難であるが、iGPSトランスミッタ31からの信号を受信可能な範囲では、iGPSトランスミッタ31との間の情報通信の結果を用いて自走式検査装置1の位置情報を算出するようにしてもよい。
【0028】
第2位置推定部12は、通信装置12aと、演算処理装置12bと、センサ12cと、を備えている。通信装置12aは、屋内又は屋外の生産設備のルート点検作業におけるルート上の進行支障箇所に設置された信号源との間で情報通信を行う装置である。進行支障箇所としては、生産設備の影、隘路、及び粉塵や水蒸気が多いエリア等の第1位置推定部11の通信装置11aが信号源と情報通信を行うことが困難なエリアや階段や、段差等の床面が平らでないエリア等を例示することができる。
【0029】
通信装置12aは、進行支障箇所の入口及び出口、進行支障箇所内の要所に配された信号源と通信する装置である。通信装置12aが情報通信を行う手段としては、RFID(Radio Frequency IDentification)機器やレーザ通信装置等を例示することができる。
【0030】
センサ12cは、自走式検査装置1が自身の位置を推定するために必要なデータを取得する装置である。センサ12cとしては、画像処理用のCCDカメラ、赤外線カメラ、レーザレンジファインダ等を例示することができる。センサ12cが取得したデータは、自走式検査装置1の位置を推定するために演算処理装置12bで処理される。
【0031】
演算処理装置12bは、センサ12cが取得したデータを用いて自走式検査装置1の位置情報を推定する。具体的には、演算処理装置12bは、センサ12cが取得した画像や距離のデータから自走式検査装置1の位置を算出し、地図情報とマッチングすることによって自走式点検査装置1の位置を推定する。演算処理装置12bは、進路支障箇所内の要所に設置された信号源との間で通信装置12aが行った通信情報や進路支障箇所内の特定の形状を認識し、適宜自走式検査装置1の位置の計算に反映させるようにしてもよい。また、演算処理装置12bは、装置本体10に設けられた撮像装置によって撮影された画像を処理することによって撮影画像中に含まれる生産設備を認識することにより、自走式検査装置1の位置を推定してもよい。
【0032】
検査部13は、情報記憶部14に記憶されている生産設備の検査項目に関する情報を含む検査情報14dに従って屋内又は屋外の生産設備の検査作業を行う装置である。具体的には、検査部13は、可視光画像や熱画像を撮影する撮像装置、温度計測装置、加速度計等の振動測定装置、集音装置、及びCOモニタ装置等を備え、生産設備の点検が可能な装置によって構成されている。検査部13は、検査情報14dに従って検査対象の生産設備の点検を実行し、検査対象の生産設備に関する情報と検査結果に関する情報とを紐付けして情報記憶部14に記憶する。
【0033】
情報記憶部14は、地図情報14a、進路情報14b、目的地情報14c、検査情報14d、及び検査結果・履歴情報14e等の自走式検査装置1による検査作業に必要な情報や検査結果に関する情報を記憶している。地図情報14aは、屋内又は屋外の生産設備の識別情報及びその位置情報を含む。進路情報14bは、屋内又は屋外における生産設備の検査作業における自走式検査装置1の移動経路に関する情報を含む。目的地情報14cは、検査部13による検査作業を行う生産設備の識別情報に関する情報を含む。検査情報14dは、生産設備毎の検査項目に関する情報を含む。検査結果・履歴情報14eは、検査部13による生産設備の検査結果に関する情報及び自走式検査装置1が移動した経路等の履歴に関する情報を含む。
【0034】
制御部15は、演算処理装置によって構成され、自走式検査装置1全体の動作を制御する。具体的には、制御部15は、自走式検査装置1の位置情報を取得する手段を第1位置推定部11と第2位置推定部12との間で切り替え、取得した自走式検査装置1の位置情報及び情報記憶部14に記憶されている地図情報14a、進路情報14b、及び目的地情報14cに基づいて走行部20を制御することによって装置本体10を所定のルートに沿って進行させると共に、検査情報14dに基づいて検査部13を制御することによって検査対象の生産設備の検査作業を実行させる。
【0035】
例えば図2に示すように、制御部15は、第2位置推定部12が進行支障部Lの入口側に設けられた所定の信号源(入口側信号源)32aからの信号を受信したタイミングで、自走式検査装置1の位置情報を取得する手段を第1位置推定部11から第2位置推定部12に切り替える。そして、制御部15は、第2位置推定部12が進行支障部Lの出口側に設けられた所定の信号源(出口側信号源)32bからの信号を受信したタイミングで、自走式検査装置1の位置情報を取得する手段を第2位置推定部12から第1位置推定部11に切り替える。
【0036】
なお、自走式検査装置1の位置情報を取得する手段を第1位置推定部11から第2位置推定部12に切り替えた際、第2位置推定部12は、入口側信号源32aから進行支障部Lに関する情報を取得することが望ましい。進行支障部Lに関する情報としては、例えば進行支障部Lが階段である場合、階段の高さや段数、進行支障部Lが隘路である場合には、隘路の幅や長さ等を例示することができる。進行支障部Lに関する情報を取得することによって、自走式検査装置1は進行支障部Lを安全、且つ、確実に通過することができる。
【0037】
走行部20は、装置本体10を走行させる装置である。走行装置としては、左右位置に履帯を備えるクローラタイプの走行装置や四輪台車等を例示することができる。
【0038】
〔自走式検査装置の制御方法〕
次に、図2図4Bを参照しながら、自走式検査装置1の制御方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態である自走式検査装置1の制御方法の流れを示すフローチャートである。図4Aは、自走式検査装置1が屋外設備に向けて移動する様子を示す模式図である。図4Bは、自走式検査装置1が屋外設備に接近する様子を示す模式図である。
【0039】
自走式検査装置1を用いて製鉄業における屋内又は屋外の生産設備の検査作業を実行する際には、始めに、作業員が、検査作業を実行するために必要な情報を自走式検査装置1の情報記憶部14に入力する(ステップS1)。次に、情報の入力が完了すると、自走式検査装置1は第1位置推定部11を利用して検査対象の装置や設備に向けて移動する(ステップS2)。
【0040】
前述のとおり、自走式検査装置1は、第1位置推定部11を介してiGPSトランスミッタ31と通信することにより、自身の位置情報を取得することができる。これにより、自走式検査装置1は、情報記憶部14に記憶された地図情報14a及び進路情報14bを参照して工場内における自身の位置を確認しながら、iGPSトランスミッタ31との通信を通して検査対象の装置や設備に向けて自律的に移動する。通常、工場内には作業用のフロア通路Aがあることが多いので、移動の際、自走式検査装置1はフロア通路Aを移動又はフロア通路Aに関する情報を活用して移動してもよい。
【0041】
経路中に存在する進行支障箇所の情報は、情報記憶部14に記憶されているので、自走式検査装置1は、iGPSトランスミッタ31との通信を通して進行支障箇所に接近したことを認識できる。図2には、進行支障箇所として、階段、曲がり角を含む隘路が存在する進行支障部Lが図示されている。そして、第2位置推定部12が進行支障部Lの入口側信号源32aからの信号を受信すると、自走式検査装置1は、進行支障部Lに接近したと判断し(ステップS3,Yes)、位置情報を取得する手段を第1位置推定部11から進行支障部Lを通過するための第2位置推定部12に切り替え、第2位置推定部12を利用して検査対象の装置や設備(例えば図2に示す屋内設備41)に向けて接近する(ステップS4)。
【0042】
第2位置推定部12が進行支障部Lで自走式検査装置1の位置を推定する手段としては、例えばSLAM技術を例示できる。SLAM技術を利用することにより、画像データやセンサが取得したデータに基づいて進行支障部Lの環境地図を作成すると同時に自走式検査装置1の位置を推定しながら進行支障部Lを移動することができる。なお、SLAM技術によって得られた環境地図は、次回以降の検査作業の際に活用でき、また検査作業の度に随時更新されていく。また、第2位置推定部12として、SLAM技術だけでなく他の誘導方式、例えば事前に設置された誘導標識を認識し、認識した誘導標識に従って移動していくような方法を利用してもよい。
【0043】
また、進行支障部Lの入口が明確に認識できる場合、入口側信号源32aは無くてもよい。この場合、進行支障部L付近の特徴ある設備の形状や入口付近に設置された進行支障部Lの入口であることを示す特徴あるマーク等を画像処理技術によって認識する等の方法が考えられる。なお、特徴ある設備やマーク等は、地図情報14aや進路情報14bの一部として記憶される。そして、検査対象の装置や設備に到着すると、自走式検査装置1は、検査情報14dを参照して検査対象の装置や設備の検査作業を行い、検査データを検査結果・履歴情報14eとして情報記憶部14に記憶する(ステップS5)。検査対象の装置や設備に信号源を設置し、自走式検査装置1に検査対象の装置や設備に到着したことを知らせるようにしてもよい。
【0044】
検査作業において、検査対象の装置や設備の具体的な検査場所等の認識や特定にもSLAM技術を利用することができる。そして、検査作業終了後、次の検査対象の装置や設備に移動する場合、自走式検査装置1は、情報記憶部14に記憶されている情報を利用して検査対象の装置や設備に向けて移動し、全ての検査対象の装置や設備の検査作業が終了した場合には、基地に帰還する。
【0045】
自走式検査装置1が進行支障部Lから脱出する場合、進行支障部Lの出口に設置された出口側信号源32bの信号を受信したら自走式検査装置1は制御方法を切り替えるが、進行支障部Lの出口が明確に認識できる場合は、入口側の場合と同様に、進行支障部L付近の特徴ある設備の形状や出口付近に設置された進行支障部L出口であることを示す特徴あるマーク等を画像処理技術によって認識する等の方法をとってもよい。
【0046】
屋外設備の検査作業も基本的には屋内設備の検査作業と同じであるが、屋外で障害物が少なく通信環境がよい場合は、図4Aに示すようにiGPS信号に変えてGPS衛星42からのGPS信号を使用することができる。この場合、GPS信号を利用して、第1位置推定部11は、情報記憶部14に記憶された地図情報14a及び進路情報14bを参照して自身の位置を確認しながら、屋外設備43に向けて自律的に移動する。しかしながら、周囲に建物が多数存在する等、通信環境が悪い場合には、自走式検査装置1は、iGPSやその他の通信手段を活用して自身の位置を確認し、屋外設備43に移動する。従って、屋外で自走式検査装置1を運用する場合には、第1位置推定部11には、GPS信号を受信する機能とiGPSを受信する機能とがあり、最適な方法で自走式検査装置1の位置を推定する機能が設けられている。
【0047】
経路中に進行支障部Lがある場合は、位置情報を取得する手段を第1位置推定部11からSLAM技術等の進行支障部Lを通過するための第2位置推定部12に切り替えることは、屋内設備の検査作業の場合と同様である。図4Bに示すように屋外設備43に到着したら、自走式検査装置1はSLAM技術を用いて検査箇所を特定し、検査情報14dを参照して検査対象の装置や設備の点検、検査を行い、検査データを検査結果・履歴情報14eとして情報記憶部14に記憶する。検査終了後は、自走式検査装置1は、検査対象の装置や設備がまだあるか否かを判別し、検査対象の装置や設備がまだある場合はその装置や設備に移動し(ステップS6,Yes)、検査対象の装置や設備がない場合には基地に帰還する(ステップS6,No)。
【0048】
以上のように、本発明の一実施形態である自走式検査装置1では、制御部15が、装置本体10の位置情報を取得する手段を第1位置推定部11と第2位置推定部12との間で切り替え、取得した装置本体10の位置情報に基づいて走行部20を制御することによって装置本体10を所定のルートに沿って進行させると共に、検査部13を制御することによって検査対象の生産設備の検査作業を実行させる。このような構成によれば、第1位置推定部11及び第2位置推定部12の一方が装置本体10の位置情報を取得できない場合や移動経路の床面が平らでない場合であっても、自走式検査装置1は移動経路に沿って進行できるので、製鉄業における生産設備の検査作業を自動的に実行することができる。
【0049】
なお、製鉄業における工場では、生産設備の定期的な補修・部品交換作業が発生し、交換部品の中には寸法が5mを超えるような大型の部品も存在する。そして、交換部品は工場内に区分けされた予備品置場スペースに交換作業の前後数日にわたって載置されるケースが多い。このような状況では、交換部品がルート点検作業の移動経路を横切って載置されるケースも発生し得る。また、作業員に代わって自走式検査装置を走行させる場合、安全面の観点から自走式点検装置の移動経路の周辺で働く作業員と自走式検査装置との干渉を防止する必要がある。このため、自走式検査装置1は、周囲の状況をリアルタイムで測定し、障害物が検知されたら障害物を迂回する等、測定結果を進行ルートに反映させる機能を有していることが望ましい。また、自走式検査装置1は、障害物が人又は物のどちらであるかを判別する機能を有していることが望ましい。
【0050】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが,本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態,実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 自走式検査装置
10 装置本体
11 第1位置推定部
11a 通信装置
11b 演算処理装置
12 第2位置推定部
12a 通信装置
12b 演算処理装置
12c センサ
13 検査部
14 情報記憶部
14a 地図情報
14b 進路情報
14c 目的地情報
14d 検査情報
14e 検査結果・履歴情報
15 制御部
20 走行部
31 iGPSトランスミッタ
32a 入口側信号源
32b 出口側信号源
図1
図2
図3
図4A
図4B