特許第6011571号(P6011571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6011571-電動ターボ式圧縮機 図000002
  • 特許6011571-電動ターボ式圧縮機 図000003
  • 特許6011571-電動ターボ式圧縮機 図000004
  • 特許6011571-電動ターボ式圧縮機 図000005
  • 特許6011571-電動ターボ式圧縮機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011571
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】電動ターボ式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20161006BHJP
   F04D 17/12 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   F04D29/58 P
   F04D17/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-56133(P2014-56133)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178790(P2015-178790A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】星野 伸明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】栗田 創
(72)【発明者】
【氏名】横井 宏尚
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/011939(WO,A1)
【文献】 特公昭35−000595(JP,B1)
【文献】 特開平11−236896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けられた電動モータによって回転駆動される回転軸と、
前記回転軸に軸方向に間隔を置いて配置される第1インペラ及び第2インペラとを備え、
第1吸入ポートから吸入した冷媒を前記第1インペラの回転により圧縮して、前記第1インペラの径方向外周に設けられた第1吐出室に吐出し、
前記第1吐出室を経て第2吸入ポートから吸入した前記冷媒を前記第2インペラの回転により圧縮して、前記第2インペラの径方向外周に設けられた第2吐出室に吐出する冷凍サイクルに使用される電動ターボ式圧縮機であって、
前記第1インペラ、前記第2インペラ及び前記電動モータの順で前記回転軸の軸方向に配置され、
前記ハウジングには、前記電動モータの軸方向両端に位置し、前記電動モータが有する間隙を介して互いに連通する第1室及び第2室が形成され、
前記第1室は、前記電動モータの軸方向両端のうち、前記第2インペラ側に位置し、
前記ハウジングには、前記第1室と前記第1吐出室とを連通する中間圧ポートと、前記冷凍サイクルの気液分離器に接続されて前記第2室に連通するインジェクションポートとが形成されていることを特徴とする電動ターボ式圧縮機。
【請求項2】
前記電動モータは、前記回転軸に固定されるロータと、前記ハウジングに固定されるステータとを有し、
前記ハウジングと前記ステータとの間には、前記第1室と前記第2室とを前記軸方向で連通する連通路が形成され、
前記ハウジングには、前記中間圧ポートを経た前記冷媒を前記連通路に案内する案内壁が形成されている請求項1記載の電動ターボ式圧縮機。
【請求項3】
前記インジェクションポートは前記連通路に対向していない請求項2記載の電動ターボ式圧縮機。
【請求項4】
前記インジェクションポートは、前記ハウジングに対して径方向に延びている請求項3記載の電動ターボ式圧縮機。
【請求項5】
前記インジェクションポートは、前記中間圧ポート及び前記連通路に対して軸心周りでずれている請求項3又は4記載の電動ターボ式圧縮機。
【請求項6】
前記第2吸入ポートは前記回転軸に前記冷媒を接触させるように形成されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の電動ターボ式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動ターボ式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動ターボ式圧縮機(以下、圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は空調装置の冷凍回路に採用されている。圧縮機は、ハウジングと、回転軸と、電動モータと、第1インペラと、第2インペラとを備えている。
【0003】
ハウジングには、一端側から他端側に向かって、第1インペラ室、第2インペラ室及びモータ室がこの順序で軸方向に形成されている。また、ハウジングには、第1、2ディフューザと、第1、2吐出室とが形成されている。第1吐出室は第1ディフューザを介して第1インペラ室と連通している。第2吐出室は第2ディフューザを介して第2インペラ室と連通している。さらに、ハウジングには、第1、2吸入ポートと、ガス注入部とが形成されている。第1吸入ポートは、ハウジングの一端側で軸方向に延びており、第1インペラ室に連通している。第2吸入ポートは、一端側で第1吐出室と連通しており、他端側で第2インペラ室と連通している。この第2吸入ポートは、モータ室とは非連通である。ガス注入部は、第2吸入ポートに連通している。
【0004】
冷凍回路は、圧縮機の他に、凝縮器、第1、2膨張弁、エコノマイザ及び蒸発器を有しており、これらは配管によって冷媒が循環可能に接続されている。エコノマイザは、第1膨張弁と第2膨張弁との間に配置されており、第1膨張弁によって減圧された冷媒を一時的に貯留しつつ、貯留した冷媒の冷却を行う。このエコノマイザは、配管によって圧縮機のガス注入部と接続されている。
【0005】
回転軸は、ハウジングに回転可能に支持されている。電動モータは、モータ室内に設けられており、回転軸を回転駆動する。第1インペラは回転軸の一端に連結されている。第1インペラは、第1インペラ室内で回転することにより、第1インペラ室内の冷媒の運動エネルギーを高めた後、第1ディフューザでその冷媒の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮し、その圧縮した冷媒を第1吐出室へ吐出する。第2インペラは回転軸の他端に連結されている。第2インペラは、第2インペラ室内で回転することにより、第2インペラ室内の冷媒の運動エネルギーを高めた後、第2ディフューザでその冷媒の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮し、その圧縮した冷媒を第2吐出室へ吐出する。
【0006】
この圧縮機では冷媒を2段で圧縮する。具体的には、第1吸入ポートから冷媒が吸入される。そして、この冷媒は、第1インペラ室及び第1ディフューザを経て第1吐出室に吐出され、第2吸入ポートを流通する。また、この圧縮機では、エコノマイザ内の気相の冷媒がガス注入部から第2吸入ポートへ供給される。こうして、この圧縮機では、第1吐出室に吐出された冷媒と、エコノマイザ内の気相の冷媒とが第2吸入ポート内で混合されて、第2インペラ室及び第2ディフューザを経て第2吐出室に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4947405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来のような圧縮機では、電動モータが高速で回転軸を回転駆動させ得る。このため、発熱による電動モータの耐久性の低下が懸念される。また、上記従来の圧縮機では、第2吸入ポートを流通する冷媒が高温となった電動モータからハウジングを経て不必要に加熱されてしまう。このため、第2吸入ポートから第2インペラ室へ流入する際の冷媒が高温となり、結果として、この圧縮機を採用する冷凍回路の効率が低下する。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、耐久性が高く、かつ、冷凍回路の効率を確実に向上させることが可能な電動ターボ式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動ターボ式圧縮機は、ハウジング内に設けられた電動モータによって回転駆動される回転軸と、
前記回転軸に軸方向に間隔を置いて配置される第1インペラ及び第2インペラとを備え、
第1吸入ポートから吸入した冷媒を前記第1インペラの回転により圧縮して、前記第1インペラの径方向外周に設けられた第1吐出室に吐出し、
前記第1吐出室を経て第2吸入ポートから吸入した前記冷媒を前記第2インペラの回転により圧縮して、前記第2インペラの径方向外周に設けられた第2吐出室に吐出する冷凍サイクルに使用される電動ターボ式圧縮機であって、
前記第1インペラ、前記第2インペラ及び前記電動モータの順で前記回転軸の軸方向に配置され、
前記ハウジングには、前記電動モータの軸方向両端に位置し、前記電動モータが有する間隙を介して互いに連通する第1室及び第2室が形成され、
前記第1室は、前記電動モータの軸方向両端のうち、前記第2インペラ側に位置し、
前記ハウジングには、前記第1室と前記第1吐出室とを連通する中間圧ポートと、前記冷凍サイクルの気液分離器に接続されて前記第2室に連通するインジェクションポートとが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の圧縮機では、ハウジングに第1室と第2室と中間圧ポートとインジェクションポートとが形成されている。そして、第1室には、第1吐出室内に吐出された冷媒(以下、中間圧冷媒という。)が中間圧ポートを経て流入する。また、第2室には、気液分離器内の冷媒(以下、インジェクション冷媒という)がインジェクションポートを経て流入する。このため、この圧縮機では、中間圧冷媒とインジェクション冷媒とによって、電動モータを好適に冷却することが可能である。
【0012】
この圧縮機では、第1室と第2室とが電動モータが有する間隙を介して互いに連通している。このため、中間圧冷媒は第2室側へ至ることができるとともに、インジェクション冷媒は第1室側へ至ることができる。そして、中間圧冷媒及びインジェクション冷媒は、第2吸入ポートに吸入される。このため、この圧縮機では、中間圧冷媒とインジェクション冷媒とが共に、第2インペラの回転によって圧縮され、第2吐出室に吐出される。このように、この圧縮機では、中間圧冷媒とインジェクション冷媒とによって電動モータが冷却されるとともに、中間圧冷媒とインジェクション冷媒とが第2吸入ポートを流通する。このため、この圧縮機では、第2吸入ポートから第2インペラ室へ流入する際の冷媒の温度上昇を好適に抑制可能である。
【0013】
ここで、インジェクション冷媒は、第1吸入ポートから第1インペラ室に流入する冷媒と比較して高圧である。このため、この圧縮機では、第2吸入ポートへ流入する冷媒の圧力を高くすることが可能である。
【0014】
したがって、本発明の圧縮機は、耐久性が高く、かつ、冷凍回路の効率を確実に向上させることが可能である。
【0015】
本発明の圧縮機において、第1インペラと第2インペラとは同径であっても良く、第2インペラを第1インペラよりも小径に形成しても良い。
【0016】
電動モータは、回転軸に固定されるロータと、ハウジングに固定されるステータとを有し得る。また、ハウジングとステータとの間には、第1室と第2室とを軸方向で連通する連通路が形成され得る。そして、ハウジングには、中間圧ポートを経た冷媒を連通路に案内する案内壁が形成されていることが好ましい。
【0017】
この場合には、中間圧ポートを経た中間圧冷媒を第2室へ好適に導くことが可能となり、電動モータをより好適に冷却することが可能となる。そして、この連通路はハウジングの軸方向に形成されているため、圧縮機を小径化することが可能である。また、この圧縮機では、ハウジングに案内壁が形成されるため、中間圧冷媒が第1室及び第2室へ至らず第2吸入ポートへ短絡することを好適に防止することができる。
【0018】
本発明の圧縮機において、インジェクションポートは連通路に対向していないことが好ましい。この場合には、連通路を流通する中間圧冷媒と、インジェクションポートから第2室内へ流入するインジェクション冷媒とで衝突が生じ難くなる。このため、この圧縮機では、第1室内の中間圧冷媒が連通路を好適に流通することが可能となるとともに、インジェクション冷媒がインジェクションポートから第2室内へ好適に流入することが可能となる。これにより、この圧縮機では、電動モータをより好適に冷却することが可能となる。
【0019】
インジェクションポートは、ハウジングに対して径方向に延びていることが好ましい。この場合には、インジェクション冷媒がハウジングの径方向でインジェクションポートから第2室内へ流入する。このため、この圧縮機では、連通路を流通する中間圧冷媒と、インジェクションポートから第2室内へ流入するインジェクション冷媒とにおける衝突を好適に抑制することが可能となる。
【0020】
また、インジェクションポートは、中間圧ポート及び連通路に対して軸心周りでずれていることが好ましい。この場合には、連通路を流通する中間圧冷媒と、インジェクションポートから第2室内へ流入するインジェクション冷媒とにおける衝突を確実に回避することが可能となる。
【0021】
第2吸入ポートは回転軸に冷媒を接触させるように形成されていることが好ましい。この場合には、回転軸を好適に冷却することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の圧縮機は、耐久性が高く、かつ、冷凍回路の効率を確実に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例の圧縮機を示す断面図である。
図2図2は、実施例の圧縮機に係り、図1におけるII−II方向からの矢視断面図である。
図3図3は、実施例の圧縮機に係り、図1におけるIII−III方向からの矢視断面図である。
図4図4は、実施例の圧縮機に係り、図2と同方向からの断面図である。
図5図5は、実施例の圧縮機に係り、図1におけるV−V方向からの矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。実施例の圧縮機は車両用の電動ターボ式圧縮機である。この圧縮機は、車両に搭載されており、車両用空調装置の冷凍サイクルに使用されている。
【0025】
図1に示すように、実施例の圧縮機は、ハウジング1と、回転軸3と、電動モータ5と、第1インペラ7と、第2インペラ9とを備えている。
【0026】
ハウジング1は、フロントハウジング11と、エンドプレート13と、リヤハウジング15とを有している。
【0027】
フロントハウジング11は、第1フロントハウジング11aと、第2フロントハウジング11bと、第3フロントハウジング11cと、第4フロントハウジング11dとからなる。フロントハウジング11は、前端側から後端側に向かって、第1フロントハウジング11a、第2フロントハウジング11b、第3フロントハウジング11c及び第4フロントハウジング11dがこの順序で接合されており、全体として略円筒状を呈している。
【0028】
このフロントハウジング11には、第1、2インペラ室17、19、第1、2ディフューザ21、23、第1、2吐出室25、27、モータ室29、中間圧ポート31、第1ボス33、第1、2吸入ポート35、37、第1、2連通路39a、39b、案内壁41、インジェクションポート43及び吐出ポート45が形成されている。
【0029】
第1インペラ室17は、フロントハウジング11の前端側に形成されている。より詳細には、第1インペラ室17の前端側は第1フロントハウジング11aに形成されており、第1インペラ室17の後端側は第2フロントハウジング11bに形成されている。この第1インペラ室17は、前端側から後端側に向かって次第に拡径する形状に形成されている。
【0030】
第2インペラ室19は、フロントハウジング11において、第1インペラ室17よりも後方に形成されている。より詳細には、第2インペラ室17の前端側は第2フロントハウジング11bに形成されており、第2インペラ室17の後端側は第3フロントハウジング11cに形成されている。この第2インペラ室19は、第1インペラ室17と対称の形状であり、前端側から後端側に向かって次第に縮径する形状に形成されている。第2フロントハウジング11bには、ハウジング1の軸方向に延びる第1軸孔47aが形成されている。
【0031】
第1ディフューザ21は、第2フロントハウジング11bの前端側に形成されており、第1インペラ室17の外周側に位置している。この第1ディフューザ21は、第1インペラ室17において最大径となる箇所で第1インペラ室17と連通している。第2ディフューザ23は、第3フロントハウジング11cの前端側に形成されており、第2インペラ室19の外周側に位置している。この第2ディフューザ23は、第2インペラ室19において最大径となる箇所で第2インペラ室19と連通している。第2ディフューザ23は第1ディフューザ21よりも小径に形成されている。
【0032】
第1吐出室25は、前端側が第1フロントハウジング11aに形成されており、後端側が第2フロントハウジング11bに形成されている。図2に示すように、第1吐出室25は第1ディフューザ21の外周側に位置しており、第1ディフューザ21と連通している。これにより、第1ディフューザ21を通じて、第1インペラ室17と第1吐出室25とが連通している。この第1吐出室25は渦巻き状を呈している。第1吐出室25は次第に通路断面積が大きくなるように形成されている。
【0033】
図1に示すように、第2吐出室27は、前端側が第2フロントハウジング11bに形成されており、後端側が第3フロントハウジング11cに形成されている。図3に示すように、第2吐出室27は第2ディフューザ23の外周側に位置しており、第2ディフューザ23と連通している。これにより、第2ディフューザ23を通じて、第2インペラ室19と第2吐出室27とが連通している。この第2吐出室27も第1吐出室25と同様に渦巻き状を呈している。第2吐出室27は次第に通路断面積が大きくなるように形成されている。
【0034】
ここで、上記のように、第2ディフューザ23が第1ディフューザ21よりも小径であることから、図4に示すように、第2吐出室27は、第1吐出室25よりもフロントハウジング11の内周側に位置している。また、図3に示すように、第2吐出室27は外周側で吐出ポート45と連通している。吐出ポート45は、ハウジング1の径方向に延びている。
【0035】
図1に示すように、モータ室29は、第4フロントハウジング11dに形成されている。これにより、フロントハウジング11では、前端側から後端側に向かって、第1インペラ室17、第2インペラ室19及びモータ室29がこの順で形成されている。モータ室29は、ハウジング1の軸方向に延びており、第4フロントハウジング11dの後端側でエンドプレート13により区画されている。
【0036】
中間圧ポート31は、ハウジング1の軸方向で、第2〜4フロントハウジング11b〜11dに跨って形成されている。そして、図2に示すように、第2フロントハウジング11bにおいて、中間圧ポート31の前端側は第1吐出室25の外周側に連通している。一方、図1に示すように、第4フロントハウジング11dにおいて、中間圧ポート31の後端側はモータ室29に連通している。また、図4に示すように、フロントハウジング11において、中間圧ポート31と吐出ポート45とは、径方向でずれた位置に形成されている。
【0037】
図1に示すように、第1ボス33は、第4フロントハウジング11dにおいて、モータ室29の前端側に形成されており、ハウジング1の軸方向でモータ室29の後端側に向かって延びている。第1ボス33には、ハウジング1の軸方向に延びる第2軸孔47bが形成されている。この第2軸孔47b内には、第1ラジアルフォイル軸受49aが設けられている。
【0038】
第1吸入ポート35は、第1フロントハウジング11aの前端側に形成されている。これにより、第1吸入ポート35はハウジング1の前端側に位置している。第1吸入ポート35は、ハウジング1の軸方向に延びており、前端側が第1フロントハウジング11aの前端面に開口しており、後端側が第1インペラ室17と連通している。
【0039】
第2吸入ポート37は、第3フロントハウジング11cの後端側と、第4フロントハウジング11dの前端側とに跨って形成されている。第2吸入ポート37の後端側は第1ボス33の前端側において、モータ室29に連通している。一方、第2吸入ポート37の前端側は第2インペラ室19に連通している。また、第2吸入ポート37は第2軸孔47bと連通している。
【0040】
第1連通路39a及び第2連通路39bは、共に第4フロントハウジング11dに形成されており、ハウジング1の軸方向でモータ室29の前端側から後端側に向かって延びている。より詳細には、第1連通路39a及び第2連通路39bは、それぞれモータ室29の内壁と、後述するステータ5aとの間に位置している。図5に示すように、これらの第1連通路39a及び第2連通路39bは、モータ室29内において、電動モータ5を挟んで対向して配置されている。なお、第1連通路39a又は第2連通路39bのいずれか一方のみを第4フロントハウジング11dに形成しても良い。また、第4フロントハウジング11dに対して三以上の連通路を形成しても良い。
【0041】
図1に示すように、案内壁41は、第4フロントハウジング11dにおいて、モータ室29の前端側に形成されている。この案内壁41は、第4フロントハウジング11dにおいて、第1ボス33よりも外周側に形成されている。案内壁41は、ハウジング1の軸方向でモータ室29の後端側に向かって延びている。
【0042】
インジェクションポート43は、第4フロントハウジング11dの後端側に形成されている。図5に示すように、このインジェクションポート43は、第4フロントハウジング11dに対してハウジング1の径方向に延びている。つまり、この圧縮機では、ハウジング1の軸方向に延びる第1、2連通路39a、39bと、ハウジング1の径方向に延びるインジェクションポート37とが対向しない関係となっている。また、このインジェクションポート43は、中間圧ポート31及び第1、2連通路39a、39bに対してハウジング1の軸心周りでずれて位置している。
【0043】
エンドプレート13は、第4フロントハウジング11dの後端、すなわち、フロントハウジング11の後端に接合されている。このエンドプレート13により、モータ室29の後端が区画されている。エンドプレート13には、ハウジング1の軸方向でモータ室29側に向かって延びる第2ボス51が形成されている。この第2ボス51には、ハウジング1の軸方向に延びる第3軸孔47cが形成されている。この第3軸孔47c内には、第2ラジアルフォイル軸受49bが設けられている。
【0044】
リヤハウジング15は、ハウジング1の後方に位置しており、エンドプレート13と接合されている。つまり、リヤハウジング15はフロントハウジング11と共にエンドプレート13を挟持する。リヤハウジング15内には、第1、2スラストフォイル軸受53a、53bと支持プレート55とが設けられている。第1スラストフォイル軸受53aは、支持プレート55の前端側に位置しており、エンドプレート13と支持プレート55とに挟持されている。第2スラストフォイル軸受53bは、支持プレート55の後端側に位置しており、支持プレート55とリヤハウジング15とに挟持されている。
【0045】
回転軸3は、回転軸本体30aと、回転軸本体30aの前端側に位置する第1小径部30bと、回転軸本体30の後端側に位置する第2小径部30cとを有している。回転軸本体30aは、回転軸3において最も大径に形成されている。一方、第1、2小径部30b、30cは共に回転軸本体30aよりも小径に形成されている。第1小径部30bは第2小径部30cよりも小径に形成されている。
【0046】
回転軸3は、ハウジング1内に挿通されおり、ハウジング1内で回転可能となっている。具体的には、回転軸本体30aの前端側は、第2軸孔47b内に挿通されており、第1ラジアルフォイル軸受49aに回転可能に支持されている。一方、回転軸本体30aの後端側は、第3軸孔47c内に挿通されており、第2ラジアルフォイル軸受49bに回転可能に支持されている。また、第1小径部30bは第1軸孔47a内に挿通されている。第1小径部30bの後端側は第2吸入ポート37内に位置している。そして、第2小径部30cはリヤハウジング15内において支持プレート55に挿通されている。これにより、第2小径部30c、ひいては回転軸3が支持プレート55を介して第1、2スラストフォイル軸受53a、53bに支持されている。
【0047】
電動モータ5は、モータ室29内に設けられている。電動モータ25は、ステータ5aとロータ5bとからなる。このように、電動モータ5が設けられることにより、モータ室29は、電動モータ5の軸方向両端にそれぞれ位置する第1室29aと第2室29bとに区画されている。第1室29aは、電動モータ5の軸方向の前端側に位置しており、ステータ5a及びロータ5bよりも第2インペラ室19側に位置している。第2室29bは、電動モータ5の軸方向の後端側に位置しており、ステータ5a及びロータ5bよりも第2インペラ室19とは反対側、すなわち、ステータ5a及びロータ5bよりもエンドプレート13側に位置している。第1室29aは、中間圧ポート31を通じて第1吐出室25と軸方向で連通している。また、第1室29aは、第2吸入ポート37を通じて、第2軸孔47b及び第2インペラ室19と連通している。一方、第2室29bは、インジェクションポート43と連通している。
【0048】
ステータ5aはモータ室29の内壁に固定されている。このステータ5aは、図示しないバッテリに電気的に接続されている。ロータ5bは、ステータ5aの内周側に位置しており、モータ室29内において、第1ボス33と第2ボス51との間に配置されている。ロータ5bは回転軸本体30aに固定されている。これにより、ロータ5bはステータ5a内で回転軸3と一体的に回転可能になっている。ここで、ステータ5aとロータ5bとの間には、間隙5cが設けられている。この間隙5cを通じて第1室29aと第2室29bとが連通している。なお、図1及び図5では、説明を容易にするためステータ5a及びロータ5bの形状を簡略化して図示している。
【0049】
第1インペラ7は、第1小径部30bの前端側に圧入されており、第1インペラ室17内に設けられている。これにより、第1インペラ7は、回転軸3の回転に伴って第1インペラ室17内で回転可能となっている。第1インペラ7はモータ室29の内径よりも小径に形成されている。この第1インペラ7は前端側から後端側に向かって次第に拡径する形状をなしており、後端側が大径部7aとされている。また、第1インペラ7の表面には複数枚のブレード70が所定の間隔で設けられている。
【0050】
第2インペラ9は、第1小径部30bの後端側に圧入されており、第2インペラ室19内に設けられている。これにより、第2インペラ9は、回転軸3の回転に伴って第2インペラ室19内で回転可能となっている。こうして、この圧縮機では、前端側から後端側に向かって、第1インペラ7、第2インペラ9及び電動モータ9の順で回転軸3の軸方向に配置されている。
【0051】
第2インペラ9についてもモータ室29の内径よりも小径に形成されている。また、第2インペラ9は、第1インペラ7と同一の大きさに形成されている。この第2インペラ9は、自身の大径部9aがフロントハウジング11の前端側に位置するように、第1小径部30bに設けられている。これにより、この圧縮機では、フロントハウジング11において、第1インペラ7と第2インペラ9とは、大径部7aと大径部9aとを対面させて配置されている。また、第2インペラ9の表面には、複数枚のブレード90が所定の間隔で設けられている。なお、第2インペラ9について、第1インペラ7よりも小径に形成しても良い。
【0052】
冷凍サイクル10は、圧縮機の他に、凝縮器101、膨張弁102、レシーバ103、蒸発器104及び配管201〜206によって構成されている。このレシーバ103が本発明における気液分離器に相当する。レシーバ103は気液分離室103aを有している。このレシーバ103には、流入口103bと、流出口103cと、ガス流出口103dとが形成されている。気液分離室103aでは、流入口103bから流入した冷媒を気相の冷媒と液相の冷媒とに分離するとともに、液相の冷媒を一時的に貯留する。気液分離室103a内の液相の冷媒は、流出口103cを通じて気液分離室103a内から流出する。一方、気液分離室103a内の気相の冷媒、つまり、インジェクション冷媒は、ガス流出口103dを通じて気液分離室103a内から流出する。
【0053】
ここで、この冷凍サイクル10は車両に搭載されることから、小型化の要求がより大きい。このため、この冷凍サイクル10では、エコノマイザのような装置を採用して冷媒を気液分離させるのではなく、レシーバ103を採用して気液分離を行う。
【0054】
圧縮機の吐出ポート45と凝縮器101とは、配管201によって接続されている。凝縮器101は配管202によって膨張弁102に接続されている。膨張弁102は配管203によってレシーバ103の流入口103bに接続されている。レシーバ103の流出口103cは配管204によって蒸発器104と接続されている。蒸発器104は配管205によって圧縮機の第1吸入ポート35と接続されている。さらに、レシーバ103のガス流出口103dは、配管206によって圧縮機のインジェクションポート43に接続されている。こうして、気液分離室103aと第2室29bとが連通している。
【0055】
以上のように構成された圧縮機では、電動モータ5に通電されることにより、ステータ5aはロータ5bを回転させる。これにより、回転軸3がハウジング1内において回転軸心O周りに回転駆動する。このため、第1インペラ7が第1インペラ室17内で回転するとともに、第2インペラ9が第2インペラ室19内で回転する。
【0056】
また、蒸発器104を経た低圧の冷媒が配管205を通じて第1吸入ポート35に吸入され、第1インペラ室17内に至る。第1インペラ室17内で回転する第1インペラ7は、第1インペラ室17内の冷媒の運動エネルギーを高めた後、第1ディフューザ21でその冷媒の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を第1吐出室25に吐出する。これにより、第1吐出室25内の冷媒の圧力は中間圧となる。この中間圧となった冷媒、すなわち、中間圧冷媒は、同図の実線矢印で示すように、中間圧ポート31を流通して、第1吐出室25から第1室29a内に流入する。ここで、この圧縮機では、フロントハウジング11において、中間圧ポート31がハウジング1の軸方向に延びている。このため、この圧縮機では、中間圧ポート31を設けて、第1吐出室25と第1室29aとを連通しても胴径を小型化することが可能となっている。
【0057】
第1室29a内に流入した中間圧冷媒は、案内壁41によって第1連通路39a及び第2連通路39bへ案内される。そして、中間圧冷媒は、第2室29b側に向かって第1連通路39a及び第2連通路39bを流通する。この際、第1、2連通路39a、39bを流通する中間圧冷媒は、ステータ5aを冷却しつつ、第1室29a側から第2室側29bへハウジング1の軸方向で流通する。
【0058】
また、この圧縮機では、レシーバ103の気液分離室103aで分離されたインジェクション冷媒が配管206を流通し、同図の白色矢印で示すように、インジェクションポート43を経て第2室29b内に流入する。この際、インジェクションポート43がハウジング1の径方向に延びているため、インジェクション冷媒はハウジング1の径方向、すなわち、第1、2連通路39a、39bを流通する中間圧冷媒と直交する方向で第2室29b内に流入する。このため、この圧縮機では、第1、2連通路39a、39bを流通して第2室29b内に流入する中間圧冷媒と、インジェクションポート43から第2室内29b内に流入するインジェクション冷媒とにおける衝突を好適に抑制することが可能となっている。これにより、この圧縮機では、第2室29b内に対して、中間圧冷媒及びインジェクション冷媒が好適に流入する。
【0059】
中間圧冷媒及びインジェクション冷媒は、第2室29b内において混合し、混合冷媒となる。そして、この混合冷媒は、ステータ5aとロータ5bとの間隙5cを流通して、第1室29a側に向かって流通する。この際、間隙5cを流通する混合冷媒によっても、ステータ5a及びロータ5bが冷却される。第1室29aに至った混合冷媒は、第2吸入ポート37へ流入する。
【0060】
第2吸入ポート37内を流通する混合冷媒は、回転軸3の第1小径部30bに接触しつつ、第2インペラ室19内へ吸入される。この際、この圧縮機では、第2吸入ポート37を流通する混合冷媒によって、回転軸3を冷却することが可能となっている。
【0061】
第2インペラ室19内で回転する第2インペラ9は、第2インペラ室19内の混合冷媒の運動エネルギーを高めた後、第2ディフューザ23でその冷媒の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮し、その圧縮された冷媒を第2吐出室27に吐出する。このように、この圧縮機では、第1吸入ポート33から吸入された冷媒を2段階で圧縮するとともに、混合冷媒として、インジェクション冷媒の圧縮も行う。
【0062】
このように、この圧縮機では、中間圧冷媒とインジェクション冷媒とによって電動モータ5が冷却されるとともに、中間圧冷媒とインジェクション冷媒とが混合冷媒として第2吸入ポート37を流通する。ここで、インジェクション冷媒は低温であるため、この圧縮機では、第2吸入ポート37から第2インペラ室19へ流入する際の混合冷媒の温度上昇を好適に抑制することができる。
【0063】
インジェクション冷媒は、蒸発器104を経て第1吸入ポート35から第1インペラ室17に流入する冷媒と比較して高圧である。このため、この圧縮機では、第1室29aから第2吸入ポート37へ流入する混合冷媒の圧力を高くすることが可能となっている。
【0064】
したがって、実施例の圧縮機は、耐久性が高く、かつ、冷凍回路の効率を確実に向上させることが可能である。
【0065】
特に、この圧縮機では、第1、2連通路39a、39bが第4フロントハウジング11dにおいて、ハウジング1の軸方向に形成されている。このため、この圧縮機では、第1、2連通路39a、39bを設けて、第1室29aと第2室29bとを連通させても、胴径を小型化することが可能となっている。また、この圧縮機では、第4フロントハウジング11dに案内壁41が形成されている。このため、この圧縮機では、中間圧冷媒が中間圧ポート31から第1室29aに流入したあと、直接第2吸入ポート37へ流入することを好適に防止しつつ、中間圧冷媒を第1、2案内路39a、39bへ好適に導くことが可能となっている。
【0066】
また、この圧縮機では、第1インペラ7と第2インペラ9とが共にモータ室29の内径よりも小径であるため、これによっても胴径の小型化が可能となっている。さらに、この圧縮機では、第1インペラ7と第2インペラ9とがそれぞれの大径部7a、9aを対面させて配置されている。このため、この圧縮機では、第1インペラ7側で生じる第1スラスト力と、第2インペラ9側で生じる第2スラスト力とが互いに相殺するように作用するとともに、第1、2スラスト力の合力が小さくなる。このため、この圧縮機では、小型の第1、2スラストフォイル軸受47a、47bを採用できるとともに、耐久性を高くすることができる。
【0067】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は車両用の空調装置の他、建物等の空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…ハウジング
3…回転軸
5…電動モータ
5a…ステータ
5b…ロータ
7…第1インペラ
9…第2インペラ
10…冷凍サイクル
25…第1吐出室
27…第2吐出室
29a…第1室
29b…第2室
31…中間圧ポート
35…第1吸入ポート
37…第2吸入ポート
39a…第1連通路(連通路)
39b…第2連通路(連通路)
41…案内壁
43…インジェクションポート
103…レシーバ(気液分離器)
図1
図2
図3
図4
図5