(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011602
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】交流き電システム
(51)【国際特許分類】
B60M 3/04 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
B60M3/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-245013(P2014-245013)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-107707(P2016-107707A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 吉晴
【審査官】
笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−203316(JP,A)
【文献】
特開2007−1560(JP,A)
【文献】
特開2003−205772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1三相−単相変換変圧器と第2三相−単相変換変圧器から出力されたほぼ同位相の電源の突き合わせ箇所に、両端に入口側エアセクションと出口側エアセクションを有するき電区分所の中セクションが設けられた交流き電システムであって、
前記き電区分所の中セクションは、
前記第1三相−単相変換変圧器から出力された電圧を降圧する第1絶縁トランスと、
前記第1絶縁トランスと並列接続され、前記第2三相−単相変換変圧器から出力された電圧を降圧する第2絶縁トランスと、
前記第1絶縁トランスと前記第2絶縁トランスで降圧された電圧を昇圧して中セクションに出力する昇圧変圧器と、
前記第1絶縁トランスの二次巻線と前記昇圧変圧器の一次巻線との間に介挿された第1開閉器と、
前記第2絶縁トランスの二次巻線と前記昇圧変圧器の一次巻線との間に介挿された第2開閉器と、
前記第1絶縁トランスの二次巻線と前記第1開閉器との間に介挿された第1リアクトルと、
前記第2絶縁トランスの二次巻線と前記第2開閉器との間に介挿された第2リアクトルと、
を備え、
電気車の全てのパンタグラフが前記入口側エアセクションを通過するまでは、前記第1開閉器をON,前記第2開閉器をOFFとし、
電気車の全てのパンタグラフが前記入口側エアセクションに通過後、前記第1開閉器をONとしたまま前記第2開閉器をONとし、その後、前記第1開閉器をOFFとし、
電気車の全てのパンタグラフが前記出口側エアセクション通過後、前記第2開閉器をOFFし、前記第1開閉器をONとすることを特徴とする交流き電システム。
【請求項2】
前記第1開閉器,第2開閉器はサイリスタスイッチであることを特徴とする請求項1記載の交流き電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流き電システムに係り、特に、電気車がほぼ同位相の異電源区間を通過するための電源切替システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線などの交流電気車は単相であるため、電力会社から交流電源を三相で受電して三相−単相変換器を利用して交流電気車にき電している。この三相−単相変換器としては、二次側に2つの単相電源(M座とT座)を得るスコットトランスや、二次側に2つの単相電源(A座とB座)を得るウッドブリッジトランス等がある。
【0003】
このため、車両は位相の異なる電源を跨いで走行することとなり、異相短絡を防止するために変電所直下には異電源突き合わせのセクションが設けられている。在来線ではこの異電源突き合わせ箇所にデッドセクションを設け、新幹線では、切替セクションとして中セクションを設けて電源を切り替える方式をとっている。
【0004】
また、き電区分所においては、ほぼ同位相の電源が突き合わされているが、車両の在線状況によって電圧差がある事や、少しの位相の違いがあるため常時区分しておく必要があり、変電所と同様切り替える方式を取っている。
【0005】
なお、特許文献1には、中セクションにおいて瞬時停電を起こすことなく電源の位相切替を行うために、タップ切替変圧器を設けたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2014−131079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は位相が90°異なる変電所への適用を主体としているため、特許文献1の設備をほぼ同位相の電源が突き合わされているき電区分所に適用するには、主回路の切替と制御の切り替えが必要となり、設備的にもコスト的にも負担が大きくなる。
【0008】
以上示したようなことから、ほぼ同位相で電圧差の生じる電源が突き合わされたき電区分所の中セクションにおいて、コストを低減すると共に、瞬時停電を伴うことなく電源を供給することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、第1三相−単相変換変圧器と第2三相−単相変換変圧器から出力されたほぼ同位相の電源の突き合わせ箇所に、両端に入口側エアセクションと出口側エアセクションを有するき電区分所の中セクションが設けられた交流き電システムであって、前記き電区分所の中セクションは、前記第1三相−単相変換変圧器から出力された電圧を降圧する第1絶縁トランスと、前記第1絶縁トランスと並列接続され、前記第2三相−単相変換変圧器から出力された電圧を降圧する第2絶縁トランスと、前記第1絶縁トランスと前記第2絶縁トランスで降圧された電圧を昇圧して中セクションに出力する昇圧変圧器と、前記第1絶縁トランスの二次巻線と前記昇圧変圧器の一次巻線との間に介挿された第1開閉器と、前記第2絶縁トランスの二次巻線と前記昇圧変圧器の一次巻線との間に介挿された第2開閉器と、前記第1絶縁トランスの二次巻線と前記第1開閉器との間に介挿された第1リアクトルと、前記第2絶縁トランスの二次巻線と前記第2開閉器との間に介挿された第2リアクトルと、を備え、電気車の全てのパンタグラフが前記入口側エアセクションを通過するまでは、前記第1開閉器をON,前記第2開閉器をOFFとし、電気車の全てのパンタグラフが前記入口側エアセクションに通過後、前記第1開閉器をONとしたまま前記第2開閉器をONとし、その後、前記第1開閉器をOFFとし、電気車の全てのパンタグラフが前記出口側エアセクション通過後、前記第2開閉器をOFFし、前記第1開閉器をONとすることを特徴とする。
【0010】
また、その一態様として、前記第1開閉器,第2開閉器はサイリスタスイッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ほぼ同位相で電圧差の生じるき電区分所の中セクションにおいて、コストを低減すると共に、瞬時停電を伴うことなく電源を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における交流き電システムを示す概略図。
【
図2】実施形態における三相−単相変換変圧器を示す概略図。
【
図3】実施形態におけるき電区分所の中セクションを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明は、ほぼ同位相の電源が突き合わされたき電区分所の中セクションにおいて、瞬時停電を伴うことなく電源を供給する新たな交流き電システムを提案するものである。
【0014】
以下、本発明に係る交流き電システムの実施形態を
図1〜3に基づいて詳述する。
【0015】
[実施形態]
図1は、本実施形態における交流き電システムを示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態における交流き電システムは、第1,第2三相−単相変換変圧器2a,2bと、第1,第2三相−単相変換変圧器2a,2bの異相の電圧が突き合わされた変電所の中セクション4a,4b,4c,4dと第1,第2三相−単相変換変圧器2a,2bのほぼ同相の電圧が突き合わされたき電区分所の中セクション4e,4fと、第1,第2三相−単相変換変圧器2a,2bと各中セクション4a〜4fとの間に設けられた遮断機3a〜3hを有する。
【0016】
図2は、本実施形態における第1,第2三相−単相変換変圧器2a,2bを示す概略図である。
図2では、第1,第2三相−単相変換変圧器2a,2bの一例としてスコット変圧器を示している。
図2に示すように、スコット変圧器2aの二次側にはM座とT座があり、このM座とT座は位相が90°異なる。この二次側のM座,T座からはトロリ線T,フィーダ線Fがそれぞれ引き出されている。
【0017】
図1に示すように、変電所の中セクション4a,4b,4c,4dは、T座のトロリ線Tと、M座のトロリ線Tが突き合わされている。位相の異なるT座とM座の電源が突き合わされた中セクションは本願発明と直接関係ないため、ここでの説明は省略する。
【0018】
き電区分所における中セクション4e,4fは、第1三相−単相変換変圧器2aのT座と第2三相−単相変換変圧器2bのT座のほぼ同位相の電圧が突き合わされている。
【0019】
図3は、T座とT座の電源が突き合わされたき電区分所の中セクションを示す概略説明図である。なお、
図3ではT座とT座の電源が突き合わされたき電区分所を示しているが、M座とM座の電源が突き合わされたき電区分所も同様である。
【0020】
図3に示すように、き電区分所の中セクション4e,4fにおいて、第1三相−単相変換変圧器2aの二次巻線から引き出されたT座のトロリ線T,フィーダ線Fの末端には、第1絶縁トランスAT1の1次巻線が接続される。また、第2三相−単相変換変圧器2bの二次巻線から引き出されたT座のトロリ線T,フィーダ線Fの末端には、第2絶縁トランスAT2の1次巻線が接続される。第1,第2絶縁トランスAT1,AT2には、それぞれ二次巻線が設けられ、この第1,第2絶縁トランスAT1,AT2により、例えば、30000V程度の電圧から6000V程度の電圧に降圧される。
【0021】
第1,第2絶縁トランスAT1,AT2の二次巻線の一端にはそれぞれリアクトルL1,L2を接続する。このリアクトルL1,L2の他端にはそれぞれ第1,第2開閉器(本実施形態では、サイリスタスイッチ:以下、サイリスタスイッチと称する)S1,S2の一端を接続し、この第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の他端同士を接続する。また、第1,第2絶縁トランスAT1,AT2の二次巻線の他端同士を接続する。
【0022】
第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の共通接続点には昇圧変圧器TR(例えばオートトランス)の一次巻線の一端が接続され、第1,第2絶縁トランスAT1,AT2の他端同士の共通接続点には昇圧変圧器TRの一次巻線の他端が接続される。
【0023】
昇圧変圧器TRの二次巻線における一端はトロリ線Tに接続され、昇圧変圧器TRの二次巻線における他端はレール線Rに接続される。この昇圧変圧器TRにより、例えば、6000V程度の電圧が30000V程度に昇圧される。トロリ線Tにおける中セクション(一般的には1000m程度)の両端には第1,第2エアセクションD1,D2(一般的には50m程度)が設けられる。
【0024】
図3の左側のT座と右側のT座は基本的にはほぼ位相が合っているが、電気車1の在線状況によっては電圧差(2000V〜3000V程度)が生じている。
【0025】
そのため、従来の交流き電システムの場合、この間を電気車1が力行のまま通過すると、パンタグラフで両座間の短絡が起こることによりアークが発生する。この状況が繰り返すことは、交流き電システムとして許容できないため、き電区分所の中セクションをパンタグラフが通過する時には同位相,同電圧とすることが必要となる。
【0026】
本実施形態の交流き電システムにおける第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の動作を説明する。なお、本実施形態では、電気車1が中セクションに進入,通過したことを検出する手段(例えば、軌道回路等)があるものとする。
【0027】
まず、電気車1が中セクションに進入するまでは、第1サイリスタスイッチS1をON、第2サイリスタスイッチS2をOFFとする。
【0028】
電気車1の全てのパンタグラフが第1エアセクションD1を通過したら、第1サイリスタスイッチS1をONとしたまま、第2サイリスタスイッチS2をONとする。その後、第1サイリスタスイッチS1をOFFにする。すなわち、第1,第2サイリスタスイッチS1とS2の両方がONとなる時間がある。ここで、第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の両方がONとなっている時間は、瞬時停電を回避でき、かつ、矯落電流が流れる時間を考慮してできるだけ短い時間が好ましい。本実施形態では、第2サイリスタスイッチS2をONにしてから第1サイリスタスイッチS1をOFFにするまでの時間(すなわち、サイリスタスイッチS1とS2が両方ONとなっている時間)を数ms〜数十msとしている。
【0029】
その後、電気車1が第2エアセクションD2を通過後、第2サイリスタスイッチS2をOFF、第1サイリスタスイッチS1をONし、次の電気車1が中セクションに進入するまで待機する。
【0030】
以上示したように、本実施形態における交流き電システムによれば、中セクションに電気車1が入りきった状態において第1,第2サイリスタスイッチS1,S2を瞬時的に両方ONにすることにより、中セクション通過時における電気車1の瞬時停電を抑制することが可能となる。また、中セクション通過時における電気車1の瞬時停電を抑制することにより、車両の中セクション通過時の瞬時停電対策システムが不要となる。
【0031】
また、第1,第2サイリスタスイッチS1,S2を瞬時的に両方ON状態にすることにより、電気車1のパンタグラフは位相差,電圧差のない状態での中セクション通過が可能となる。そのため、中セクション通過時の加速度変化が無くなり乗り心地が向上する。また、乗り心地の向上対策が不要となる。
【0032】
また、第1絶縁トランスAT1に入力される電圧と第2絶縁トランスAT2に入力される電圧に位相差がある場合や電圧差が大きい場合には、第1,第2サイリスタスイッチS1,S2を瞬時的にON状態にすることにより、大きな矯絡電流が生じる恐れがある。本実施形態では、第1,第2サイリスタスイッチS1,S2と第1,第2絶縁トランスAT1,AT2の二次巻線との間にそれぞれ第1,第2リアクトルL1,L2を設けているため、第1,第2サイリスタスイッチS1,S2を瞬時的に両方ON状態にすることにより生じる矯絡電流を抑制することが可能となる。
【0033】
また、第1,第2絶縁トランスAT1,AT2により、一次巻線側と二次巻線側とを絶縁しているため、第1三相−単相変換変圧器2aと第2三相−単相変換変圧器2b間に流れる循環電流を防止することが可能となる。
【0034】
さらに、第1,第2絶縁トランスAT1,AT2により降圧しているため、第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の耐圧を低く(第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の直列数を低減)することができる。
【0035】
また、第1,第2リアクトルL1,L2により第1,第2サイリスタスイッチS1,S2の開閉による過大な突入電流が抑制されるため、車載機器を始め突入電流対策機器が不要となる。また、突入電流が抑制されるため、き電保護システムの簡素化が可能となる
第1,第2開閉器S1,S2にVCB等を用いた切替遮断機を適用することも可能であるが、列車の本数が多い東海道新幹線等では1.5年から2年での第1,第2開閉器S1,S2の交換が必要となり、コストアップの要因となる。列車本数の多い路線においては本実施形態のように、第1,第2開閉器S1,S2としてサイリスタスイッチS1,S2を適用することで、交換頻度が減少し、コストダウンを図ることが可能となる。
【0036】
また、切替遮断器方式における極間単絡事故が無くなり、システムの信頼性が向上する。
【0037】
また、特許文献1のように、タップ切替変圧器を用いた位相変換装置と比較して、コストを低減することが可能となる。
【0038】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0039】
例えば、
図2では、スコット変圧器を示したが、その他の三相−単相変換器であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…電気車
2a,2b…三相−単相変換変圧器(スコット変圧器)
3a〜3h…遮断機
4a〜4d…変電所の中セクション
4e,4f…き電区分所
AT1,AT2…第1,第2絶縁トランス(オートトランス)
L1,L2…第1,第2リアクトル
S1,S2…第1,第2開閉器(サイリスタスイッチ)
TR…昇圧変圧器
D1,D2…第1,第2エアセクション