(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施の形態>
以下、開閉体の開閉補助装置の第1の実施の形態を
図1〜
図10に基づいて説明する。
【0024】
<開閉補助装置の概略構成>
図1に示すように、車体11
(第2部材)の後部には、バックドア12
(第1部材)が設けられている。バックドア12は車体11の上部に設定された支点13を中心として上下方向へ回転可能である。支点13は、車幅方向に沿って水平に延びる回転軸線に相当する。車体11とバックドア12との間には、バックドア12の開閉に要する操作力を補助する左右一対(片側のみ図示)の開閉補助装置14が設けられている。各開閉補助装置14は、ダンパステー15およびスライド機構16を備えている。
【0025】
各開閉補助装置14のダンパステー15は、車体11の後部の車幅方向(バックドア12の回転中心軸線の延びる方向)における両側部の一方と、バックドア12の車幅方向における両側部の一方との間に設けられている。ダンパステー15は、シリンダ17、およびピストンロッド18を備えている。ピストンロッド18は、図示しない圧縮コイルばねを介して、シリンダ17に抜け止め状態で挿入される。当該圧縮コイルばねの弾性力により、ピストンロッド18は、シリンダ17に対して突出する方向へ常時付勢される。
【0026】
ダンパステー15の第1の端部15a(ドア側連結点)、すなわちピストンロッド18の先端部は、バックドア12に対して回動可能に連結されている。ダンパステー15の第2の端部15b(車体側連結点)、すなわちシリンダ17の基端部は、スライド機構16を介して車体11に連結されている。ダンパステー15の第2の端部15bは、スライド機構16を介して、車体11の後面に沿って上下方向へ移動可能である。
【0027】
<スライド機構>
つぎに、スライド機構16について説明する。
【0028】
図2に示すように、スライド機構16は、ロッド21
(接触子)およびカム22を備えている。ロッド21の第1の端部近傍には、ダンパステー15の第2の端部15b(車体側連結点)が回転可能に連結されている。ロッド21は、車体11に設けられた案内部材31によって案内されて直線的に往復移動可能である。案内部材31は、車体11の後面に設けられ、車体11の後面に沿ったロッド21の上下方向への移動を案内する。
【0029】
図3に示すように、カム22は、支点13の近傍においてバックドア12に固定されている。カム22は、扇状をなしている。カム22は、扇形の中心を支点13へ向けて、また扇形の曲面部分であるカム面43をロッド21へ向けて設けられている。カム面43は、カム22の回転方向における中央部分と両端部分とでは形状が異なっている。カム面43の中央部分とその両端部分とは滑らかに連続している。後に詳述するが、このカム面43は、カム22に形成された長孔42(
図7参照)の内面に相当し、より詳細には、支点13に近い側の内面部分である内側カム面43に相当する。
【0030】
カム面43には、ダンパステー15の弾性力により、ロッド21の第2の端部(詳しくは、後述するカムフォロア41)が常に押し当てられる。カム22は、バックドア12と一体に回転する。このカム22の回転に伴い、ロッド21の第2の端部は、カム面43に摺接する。ロッド21、ひいてはダンパステー15の車体側連結点である第2の端部15bは、カム面43の起伏に応じて、案内部材31によって案内されて移動する。ダンパステー15の第2の端部15bは、
図3に実線で示される全閉位置と、同図に二点鎖線で示される全開位置との間を変位する。
【0031】
<カム面の形状>
つぎに、カム面43の形状について説明する。カム面43の形状は、バックドア12を回転させるために必要とされるモーメントM(操作力)を、所望の操作特性とする観点に基づき設定される。ここでは、所望の操作特性として、バックドア12を開閉するために必要とされる操作力を零に近づける観点で説明する。以下の説明では、適宜
図2を参照する。
【0032】
モーメントMは、次式(A)で示される。
【0033】
M=Mg−Ma−Mc …(A)
ただし、「Mg」はバックドア12の自重によるモーメント、「Ma」はダンパステー15の弾性力によるアシストモーメント、「Mc」はカム22の反力Fcによるアシストモーメントである。すべてバックドア12に働く力である。
【0034】
図2に示すように、たとえば支点13を通る垂直線分をバックドア12の全閉位置とした場合、当該全閉位置に対するバックドア12の開度が開度θであるとき、自重モーメントMgはバックドア12を閉じようとする方向へ働く。2つのアシストモーメントMa,Mcは、それぞれバックドア12を開ける方向へ働く。
【0035】
自重モーメントMgは次式(B)で表される。
【0036】
Mg=Fg×l=m×g×sinθ×l …(B)
ただし、「Fg」はバックドア12の自重、「m」はバックドア12の質量、「g」は重力加速度、「l」はバックドア12の重心と支点13との間の距離である。
【0037】
バックドア12の自重モーメントMgは、バックドア12の質量およびバックドア12の重心と支点13との間の距離、バックドア12の開度によって決まる。
【0038】
ここで、自重モーメントMgは各開度において一定である。このため、バックドア12の各開度において、次式(C)を満足するように、アシストモーメントMaおよびカム反力によるアシストモーメントMcを調節する。
【0039】
Mg−Ma−Mc≒0 …(C)
アシストモーメントMaは、次式(D)で表される。
【0040】
Ma=Fa×La=fa×sinα×La …(D)
ただし、Faはダンパステー15の弾性力のバックドア12に対する開方向成分、すなわちバックドア12を開方向へ移動させた際の円弧状軌跡に対する接線方向に作用する力である。Laは支点13とダンパステー15のドア側連結点である第1の端部15aとの距離(アシストモーメントMaの腕の長さ)である。
【0041】
また、faはダンパステー15の弾性力であり、αは支点13とダンパステー15の第1の端部15aとを結ぶ直線と、ダンパステー15の軸線とのなす角度である。ここで、αはダンパステー15の第1の端部15aの位置に応じて決まり、ダンパステー15の第1の端部15aの位置は、カム面43の形状(起伏)に応じて決まる。すなわち、アシストモーメントMaはカム面43の形状(起伏)によって調整可能である。
【0042】
カム22の反力Fcとは、ダンパステー15の弾性力によってロッド21がカム面43に押し付けられる力に対する反作用として発生する力をいい、ここではバックドア12の開閉方向へ作用する成分をいう。カム反力によるアシストモーメントMcとは、カム22の反力Fcによってカム22が回転しようとする力をいう。
【0043】
カム22の反力FcによるアシストモーメントMcは、次式(E)で表される。
【0044】
Mc=Fc×Lc=F×tan(θc−ρ)×Lc …(E)
ただし、Lcは、モーメントの腕の長さ、すなわちカム22の回転中心である支点13と、カム面43におけるロッド21との接触点Pとの間の距離である(
図3参照)。なお、
図2および
図3では、便宜上、カム22の扇形の中心と支点13とを一致させている。また、Fはロッド21のカム面43に対する押圧力であり、押圧力Fは、ダンパステー15の弾性力に基づいて決定される。さらに、
図4に示されるように、θcはカム22の接触角、ρは摩擦角(カム22とロッド21との間に生じる摩擦により決まる係数)である。なお、接触角θcは、カム面43におけるロッド21との接触点Pにおける接線と、ロッド21に対してダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fが作用する方向に直交する直線とがなす角度である。
【0045】
ここで、モーメントの腕の長さLcおよびカム22の接触角θcはカム面43の形状(起伏)により決まる。すなわち、カム反力によるアシストモーメントMcはカム面43の形状(起伏)によって調整可能である。
【0046】
したがって、カム面43の形状を制御することにより、開操作または閉操作においてバックドア12の開閉を補助する方向に働くアシストモーメント(Ma,Mc)の合計を、バックドア12の自重モーメントMgと等しくすることも理論上は可能である。
【0047】
なお、バックドア12に要求される開閉操作特性は車種あるいは仕様などに応じて様々である。すなわち、所望の操作特性とは、前述のようにバックドア12を開閉するために必要とされる操作力を零に近づけるだけでなく、たとえば全閉位置付近では閉じ勝手にして閉じきりの補助を、全開位置付近では開け勝手にして全開保持の補助を行うなどの操作特性もある。これら特性はすべてカム面43の形状の設定を通じて自在に得ることが可能である。
【0048】
<スライド機構の具体的な構成>
つぎに、スライド機構16の具体的な構成を説明する。
【0049】
図5に示すように、スライド機構16は、四角柱状のロッド21およびカム22を備えている。ロッド21は、車体11(正確には、後面上部)に固定された案内部材31に取り付けられている。案内部材31は、車体11に固定される固定板32および固定板32の上面に設けられた四角枠状の2つの案内枠33,33を備えている。これら案内枠33,33は、固定板32の表面における上部および下部にそれぞれ固定されている。ロッド21は、2つの案内枠33,33に摺動可能に挿通されている。ロッド21は、2つの案内枠33,33の並ぶ方向において、直線的に往復移動可能である。ロッド21(正確には、その車幅方向における外側の側面)における2つの案内枠33,33の間の部分には、ダンパステー15の第2の端部15b(車体側連結点)が回転可能に連結されている。
【0050】
図6に示すように、ロッド21の案内部材31よりも上側の部分には、2つの腕34,34が連結されている。2つの腕34,34は、車幅方向においてロッド21を挟み込んでいる。2つの腕34,34の基端は、車幅方向に延びるボルト35と同ボルト35に螺合されるナット36とによって、ロッド21に対して連結されている。2つの腕34,34には、車幅方向から2つのピン37,37が打ち込まれている。これらピン37,37はロッド21を貫通している。2つのピン37,37は、ロッド21の軸線方向においてボルト35を間に挟む位置に設けられている。2つの腕34,34の先端同士は、車幅方向に延びるボルト38と同ボルト38に螺合されるナット39とによって互いに連結されている。
【0051】
2つの腕34,34の先端の間には、軸受40および軸受40に装着されたカムフォロア41が配置されている。カムフォロア41は、軸受40を介してボルト38に対して回転可能である。カムフォロア41は太鼓状をなしている。すなわち、カムフォロア41の外径は、軸線方向における両端から中央に向かうにつれて徐々に大きくなるように設定されている。カムフォロア41の外周面は曲面状をなしている。
【0052】
腕34,34はロッド21の一部として把握することができる。従って、腕34,34の先端はロッド21の第2の端部に相当する。
【0053】
図7に示すように、カム22には長孔42が設けられている。長孔42は、バックドア12の開方向へ向けて凹となる曲線状に設けられている。長孔42にはカムフォロア41が挿入されている。カムフォロア41の中心軸線は、カム22の回転中心軸線でもある支点13と平行である。カムフォロア41は、カム22の回転に伴い長孔42の内部を転動する。
【0054】
また、前述したようにカム22は、支点13の近傍においてバックドア12に固定されている。湾曲している長孔42は、凹となる側が支点13を向くように設けられている。長孔42の内面はカム面として機能する。長孔42において、支点13に近い側の内面は内側カム面43、支点13から遠い側の内面は外側カム面44である。
【0055】
前述したように、内側カム面43は、先の
図4に示されるカム面43に相当する。また、長孔42には、第1〜第3のカム領域A1c〜A3cが設定されている。内側カム面43及び外側カム面44のいずれか一方には、ダンパステー15の弾性力により、カムフォロア41が常に押し当てられる。
【0056】
<操作特性>
本例では所望の操作特性として、
図8に示される操作特性が得られるように、長孔42の形状を設定することもできる。なお、同図の横軸はバックドア12の開度θ、縦軸はバックドア12を操作するために必要とされる操作力を示す。また、バックドア12の開度θが0°〜θ2である開け始めの領域を第1の開度領域A1、バックドア12の開度θがθ2〜θ4である中間領域を第2の開度領域A2、バックドア12の開度θがθ4〜θmaxである開け終わりの領域を第3の開度領域A3として区分する。
【0057】
カム22はバックドア12と一体的に回転するので、長孔42についてもバックドア12の開度θと同様に区分する。すなわち、
図7に示すように、開度θが第1の開度領域A1であるときにカムフォロア41が摺動する領域を第1のカム領域A1c、開度θが第2の開度領域A2であるときにカムフォロア41が摺動する領域を第2のカム領域A2c、開度θが第3の開度領域A3であるときにカムフォロア41が摺動する領域を第3のカム領域A3cとして区分する。
【0058】
さて、
図7に示すように、長孔42の第1のカム領域A1cは、全閉から全開へ向けて、支点13からの距離が徐々に小さくなる直線状に形成されている(すなわち、内側カム面43及び外側カム面44が平面状に形成されている)。長孔42の第2のカム領域A2cは、支点14からの距離が第1のカム領域A1cよりも小さく、かつカム22の回転角に関わらず一定となる曲線状、具体的には円弧状に形成されている(すなわち、内側カム面43及び外側カム面44が曲面状、具体的には円弧面状に形成されている)。長孔42の第3のカム領域A3cは、全閉から全開へ向けて、第1のカム領域A1cと同じ割合で支点13からの距離が徐々に大きくなる直線状に形成されている(すなわち、内側カム面43及び外側カム面44が平面状に形成されている)。
【0059】
このため、ロッド21の第2の端部(正確には、カムフォロア41)が第1のカム領域A1cに存在している間、およびロッド21の第2の端部が第3のカム領域A3cに存在している間のカム反力によるアシストモーメントMcは、それぞれロッド21の第2の端部が第2のカム領域A2cに存在している間のアシストモーメントMcよりも大きくなる。すなわち、バックドア12を開け始める際、および開け終わる際には、より大きなカム反力によるアシストモーメントMcがバックドア12に印加される。このように長孔42の形状を設定することにより、
図8に示される操作特性が得られる。
【0060】
<開閉補助装置の動作>
つぎに、前述のように構成した開閉補助装置の動作を説明する。なお、バックドア12に対する操作力は、ユーザによって、支点13と反対側に位置するバックドア12の端部に印加される。
【0061】
<全閉→全開>
バックドア12を全閉位置から全開位置に移動させる場合、バックドア12には、2つのアシストモーメントMa,Mcが作用する。すなわち、バックドア12を開けるために必要とされるユーザによる操作力は、2つのアシストモーメントMa,Mcによりそれぞれ補助される。
【0062】
バックドア12の開度θが増大するにつれてピストンロッド18は伸長し、ダンパステー15の弾性力は徐々に小さくなる。バックドア12には、ダンパステー15の軸線とバックドア12とのなす角度αに応じたアシストモーメントMaが印加される。
【0063】
また、バックドア12の開度θ(回転角度)が増大するにつれて、カム22はバックドア12と同じ方向へ回転する。開度θが第1および第3の開度領域A1,A3であるとき、それぞれカム反力によるアシストモーメントMcは、開度θが第2の開度領域A2であるときに比べて大きくなる。
【0064】
すなわち、ロッド21の第2の端部(正確には、カムフォロア41)が長孔42の第1および第3のカム領域A1c,A3cをそれぞれ摺動するときには、ロッド21の第2の端部が第2のカム領域A2cを摺動するときよりも大きなアシストモーメントMcが得られる。換言すれば、バックドア12を開けるために必要とされる操作力は、バックドア12を開け始める際および開け終わる際に、より大きく補助される。このため、ひときわ軽い操作力でバックドア12を開けることができる。
【0065】
図8のグラフに白抜きの四角形を破線で結んで示されるように、カム22によるアシストモーメントMcが存在しない場合、すなわちダンパステー15の第2の端部15b(車体側連結点)をスライド移動させない場合、バックドア12の開度θが増大するにつれて、操作力は徐々に大きくなっている。これに対して、同グラフに白抜きの四角形を実線で結んで示されるように、カム22によるアシストモーメントMcが存在する場合、とくに、バックドア12の開け始めに対応する第1および第3の開度領域A1,A3における操作力は、アシストモーメントMcが存在しない場合に比べて、明らかに小さくなっている。第2の開度領域A2での操作力は、アシストモーメントMcが存在しない場合と同じ程度に維持される。
【0066】
ちなみに、カム22の接触角θcを大きくするほど、カム22の反力Fc、ひいてはアシストモーメントMcが大きくなるので、バックドア12を小さい力で開けることができる。逆に、接触角θcを小さくするほど、カム22の反力Fc、ひいてはアシストモーメントMcが小さくなるので、バックドア12を開けにくくなる。これらのことは、前記式(E)からも明らかである。
【0067】
<全開>
全開位置に至ったバックドア12は、2つのアシストモーメントMa,Mcにより当該全開位置に保持される。バックドア12が全開位置にある場合、ピストンロッド18の伸長量は最大となる。ピストンロッド18の伸長量が増大するほど、シリンダ17に内蔵された圧縮コイルばねの弾性力は減少する。この減少するダンパステー15によるアシストモーメントMaがカム22によるアシストモーメントMcにより補われる。開度θが第3の開度領域A3であるときには、ひときわ大きなカム反力によるアシストモーメントMcがバックドア12に印加される。このため、バックドア12を好適に全開位置に保持することが可能である。
【0068】
<全開→全閉>
全開位置のバックドア12を閉める場合、開閉補助装置14はバックドア12を開けるときと逆に動作する。
【0069】
バックドア12に対しその閉方向へ操作力を印加することによりバックドア12は全閉位置へ至る。この際、開度θが第1および第3の開度領域A1,A3であるときには、ひときわ大きなカム反力によるアシストモーメントMcがバックドア12に印加される。これらアシストモーメントMcはバックドア12の開方向へ向けて作用する。このため、
図8のグラフに黒塗りの三角形を実線で結んで示されるように、バックドア12を閉じる際、ユーザに要求される操作力は、ほぼ一定となる。
【0070】
カム22によるアシストモーメントMcが存在しない場合、バックドア12を閉じるために必要とされる操作力を、
図8のグラフに黒塗りの三角形を破線で結んで示す。当該グラフに示されるように、第3の開度領域A3から第2の開度領域A2の中間付近までは、開度θが減少するにつれて、必要操作力は徐々に増加する。第2の開度領域A2の中間付近から第1の開度領域A1までは、開度θが減少するにつれて、必要操作力は徐々に減少する。
【0071】
すなわち、全開位置のバックドア12を保持する力は小さいにもかかわらず、バックドア12を閉めていく過程で操作力が大きくなる。そして、全閉位置に近づくにつれて再び操作力が減少する。このように、バックドア12を閉じるために必要とされる操作力が、閉じ始めてから閉じ終わるまでの間に大きく変化する。
【0072】
この点、本例によれば、前述したように、バックドア12を閉じる際、ユーザに要求される操作力はほぼ一定となる。このため、バックドア12を閉じる際に必要とされる操作力の変化が少ないので、バックドア12を閉じる際の操作性を向上させることが可能である。
【0073】
また、
図9に示される全閉位置にあるバックドア12を開くときは、
図8のグラフに示されるように、カム反力によるアシストモーメントMcにより、開け始めのバックドア12の操作力が補助される。また、バックドア12が全開位置に至った際には、カム反力によるアシストモーメントMcによりバックドア12の全開状態が補助される。バックドア12を閉じるときは、
図8のグラフに示されるように、バックドア12を閉じる際、ユーザに要求される操作力はほぼ一定となる。
【0074】
ただし、バックドア12の支持状態などによっては、バックドア12の開閉途中においてダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向が上下反転し、当該押圧力Fが下方へ働くことも考えられる。たとえば、
図10に示されるように、バックドア12が大きく上方へ開かれる場合である。また、カムフォロア41は、外側カム面44に押し付けられる。このように、長孔42の内面をカム面として使用することにより、カムフォロア41がカム22から脱落することがない。なお、押圧力Fが下方へ向いている場合であれ、カム22によるアシストモーメントMcは、バックドア12を開ける方向へ作用する。すなわち、アシストモーメントMcは、上方へ大きくはね上がったバックドア12を全開位置に保持する力を補助する。
【0075】
ここで、
図10に示す例において、バックドア12を全開位置に保持する力は、カム面の形状を制御することにより調節することができる。
【0076】
すなわち、
図7に示すように、カムフォロア41と外側カム面44との接触角θc2を大きくするほど、全開状態のバックドア12を保持する力が大きくなる。カム22の反力が大きくなるからである。逆に、接触角θc2を小さくするほど、バックドア12を保持する力が小さくなる。なお、接触角θc2は、バックドア12が全開位置に保持されているときのカムフォロア41と外側カム面44との接点における接線と、当該カムフォロア41に対してダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fが作用する方向に直交する直線とがなす角度である。
【0077】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0078】
(1)カム22の形状を設定することにより、開閉補助装置14によるアシストモーメント、すなわち2つのアシストモーメントMa,Mcの合計と、バックドア12の自重モーメントMgとを釣り合わせることができる。このため、バックドア12の開閉に必要とされる操作力を軽減させることが可能である。
【0079】
(2)カム22の形状により、ダンパステー15のドア側連結点である第2の端部15bの位置を制御できる。このため、バックドア12の開度に応じたドア側連結点の位置の微調整が可能である。また、カム面43の形状を設定するだけで、所望の操作特性を自在に得ることが可能である。
【0080】
(3)モータなどの駆動源を使用することなく、ロッド21およびカム22などの簡素な部品でスライド機構16を構成した。また、部品点数も少ないため、安価である。
【0081】
(4)ダンパステー15は、弾性力を発揮させる手段として高圧ガスではなく圧縮コイルばねを使用している。このため、ダンパステー15の弾性力は、温度変化に依存しない。安定した弾性力が得られる。
【0082】
(5)ロッド21の長さを調節することにより、カム22の大きさを制御することも可能である。
【0083】
(6)カム径を設定することにより、ダンパステー15の車体側連結点である第2の端部15bの車体11に対する位置を簡単に制御することができる。
【0084】
(7)長孔42にカムフォロア41を挿入し、長孔42の内面をカム面とした。このため、バックドア12の開閉に伴いカムフォロア41がカム面から脱落することがない。また、内側カム面43および外側カム面44は、バックドア12が全閉状態にあるときであれ、全開状態にあるときであれ、有効に利用することができる。
【0085】
(8)カム22はバックドア12に、スライド機構16は車体11に設けられる。このため、組立誤差、あるいはバックドア12の開閉に伴う位置ずれの発生などに起因して、カム22とスライド機構16(ロッド21など)との相対位置が変化することが想定される。たとえば、
図7に二点鎖線で示されるように、カム22が左右に傾く場合である。この点、カムフォロア41を太鼓状とすることにより、カム22が左右に傾いたとしても、カムフォロア41の太鼓状曲面と長孔42の内面とは好適に接触する。ダンパステー15の弾性力が好適にカム22に伝達されるので、バックドア12の開閉操作性の維持向上が図られる。
【0086】
(9)ロッド21を四角柱とした。このため、ロッド21が自身の軸線周りへ回転することがない。したがって、腕34、ひいてはカムフォロア41が傾くことを抑制することができる。カムフォロア41と長孔42の内面との接触状態が良好に維持される。
【0087】
<第2の実施の形態>
つぎに、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部材については同一の符号を付し、その重複した説明を省略する。
【0088】
図11に示すように、カム22は、車体11
(第1部材)における支点13の近傍に固定されている。また、ダンパステー15のドア側連結点と車体側連結点とが第1の実施の形態と逆である。すなわち、ダンパステー15の第1の端部15aは、バックドア12
(第2部材)に沿って直線的に往復移動するロッド21
(接触子)の第1の端部に対して回転可能に連結されている。ダンパステー15の第2の端部15bは、車体11に対して回動可能に連結されている。ロッド21の第2の端部は、ダンパステー15の弾性力(正確には、ロッド21の軸方向成分)によってカム22のカム面24に常時押し付けられる。バックドア12の開閉に伴い、ロッド21の先端はカム面24に対して摺動する。
【0089】
バックドア12の自重モーメントと開閉補助装置14によるアシストモーメントとを釣り合わせるという考え方は、第1の実施の形態と同じである。ここでは、バックドア12を閉じる際に、支点13と反対側に位置するバックドア12の端部(自由端)に加えるべき操作力F0に着目する。操作力F0は、次式(G)で表される。式(G)は前述の式(A)と同義である。
【0090】
F0=Fa−Fc−Fg …(G)
ただし、「Fa」はダンパステー15の弾性力によって、バックドア12の端部に作用する荷重、「Fc」はカム22の反力によってバックドア12の端部に作用する荷重、「Fg」はバックドア12の自重によってバックドア12の端部に作用する荷重である。
【0091】
本例においても、所望の操作特性となるように、カム面24の形状が設定される。
【0092】
<カム面の形状>
つぎに、カム面24の形状について説明する。
図12の線図に示されるように、車体11の前後方向における座標を横軸に、車体11の上下方向における座標を縦軸とする。また、支点13を中心としてバックドア12を全閉位置と全開位置との間で一定の開度θずつ移動させたときのバックドア12の移動軌跡を複数の線分Tで、ダンパステー15の移動軌跡を複数の線分Sでそれぞれ示す。各線分T,Sの各交点P0〜P10は、ダンパステー15のドア側連結点である第1の端部15aの移動軌跡である。同図に示されるように、各交点P0〜P10を滑らかに結ぶことにより得られる第1の端部15aの移動軌跡は円弧状をなす。ただし、バックドア12の全閉位置における開度θを開度θ0としたとき、開度θ0〜開度θ3の範囲における第1の端部15aの軌跡半径は、開度θ3〜開度θ10の範囲における第1の端部15aの軌跡半径よりも少し大きい。
【0093】
カム面24の形状は、第1の端部15aの移動軌跡に準じた形状とされている。すなわち、開度θ0〜開度θ3の範囲におけるカム径は、開度θ3〜開度θ10の範囲におけるカム径よりも大きく設定される。このようにカム面24の形状を設定することにより、
図13のグラフに示される操作特性が得られる。同グラフは、バックドア12を閉じるときの操作特性を示すものである。
【0094】
図13のグラフにおいて、横軸はバックドア12の開度θ、縦軸はバックドア12を閉じる際に必要とされる操作力を示す。
【0095】
同グラフに黒塗りの三角形を実線で結んで示されるように、カム22によるアシストモーメントMcが存在しない場合、すなわちダンパステー15の第1の端部15a(ドア側連結点)をスライド移動させない場合、開度θが減少するにつれて、操作力は徐々に小さくなる。バックドア12が全開の開度θmaxに対して2/3程度だけ閉じたときの開度θ4の辺りを境として、必要とされる操作力は正の値から負の値へ変化する。
【0096】
これに対して、同グラフに黒塗りの三角形を一点鎖線で結んで示されるように、カム22によるアシストモーメントMcが存在する場合には、開度θ4の辺りに達した以降においても、操作力は開度θの減少に伴い徐々に減少しながら開度θ0に至る。これは、開度θ0〜開度θ4に対応する部分のカム径が他の開度に対応する部分よりも大きく設定されているからである。すなわち、カム径が大きくなっている分だけ、カム22によるアシストモーメントMcが大きくなる。
【0097】
本例のようにドア側連結点をスライド移動させる場合、開度θ4〜開度θ0における操作力の落ち込みが抑制される。このため、ドア側連結点をスライド移動させない場合と比較して、バックドア12を閉じる際に必要とされる操作力の変化が小さい。バックドア12を閉じるために必要とされる操作力が全開から全閉までの全範囲にわたって平坦化されることにより、良好な操作フィーリングが得られる。また、全開から全閉までの全範囲にわたって、必要とされる操作力が0(零)に近似する低いレベルに維持されるので、バックドア12を軽く一定の力で閉じることができる。
【0098】
ちなみに、ダンパステーとして、圧縮コイルばねではなく高圧ガスの弾性力を利用するガスダンパーも存在する。ガスダンパーを採用し、かつドア側連結点をスライド移動させない場合、バックドア12を閉じる際に必要とされる操作力は、
図13に黒塗りの三角形を破線で結んで示されるように変化する。すなわち、バックドア12を閉じ始めたとき、操作力は徐々に増大して中間位置である開度θ5の辺りで最大となる。その後、バックドア12の開度θが減少するにつれて操作力は徐々に減少する。バックドア12を閉じる途中で大きな操作力が要求されるので、良好な操作フィーリングが得られない。
【0099】
また、ガスダンパーの特性は温度変化により変化する。シリンダに封入される高圧ガスの体積が変化するからである。たとえば、低温時においてバックドア12を全開位置に保持できる程度にガスダンパーの弾性力を調節した場合、常温時あるいは高温時において要求される操作力が大きくなる。すなわち、バックドア12を開閉しにくくなる。
【0100】
この点、圧縮コイルばねの弾性力を利用するダンパステーであれば、その特性が温度変化の影響を受けにくい。
【0101】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、バックドア12の開度θに応じてダンパステー15のドア側連結点である第1の端部15aをスライド移動させる。当該スライド移動を通じてカム反力によるモーメントの腕の長さが調整されることにより、バックドア12の自重モーメントMgと開閉補助装置14によるアシストモーメントMa,Mcとを釣り合わせることができる。したがって、バックドア12のすべての開度θにおいて、バックドア12を開閉させる際に必要とされる操作力を軽減することが可能である。
【0102】
<第3の実施の形態>
つぎに、開閉体の開閉補助装置の第3の実施の形態を説明する。
【0103】
図14に示すように、スライド機構16は、ロッド51
(接触子)およびカム52を備えている。
【0104】
ロッド51は、車体11(正確には、後面上部)に固定された案内部材53に取り付けられている。案内部材53は、金属板材が折り曲げられるなどして一体に設けられている。案内部材53は、車体11に固定される矩形の固定板54および固定板54の上面に設けられた角筒状の案内枠55を備えている。案内枠55の車幅方向における外側の側壁には開口部56が設けられている。案内枠55の軸方向における第1の端部55aおよび第2の端部55bにはそれぞれ角筒状の樹脂ブッシュ57,58が嵌め込まれている。固定板54の下部(
図14中の右斜め下の端部)には、ストッパ59が設けられている。ストッパ59は、案内枠55の第2の端部55b、正確には樹脂ブッシュ58の開口部分に対向している。
【0105】
ロッド51も金属板材が折り曲げられるなどして一体に設けられている。ロッド51は、車幅方向において対向する2つの側壁61a,61bおよびこれら側壁61a,61bを連結する底壁62を有し、全体として直方体状をなしている。2つの側壁61a,61bの第1の端部(
図14中の左斜め上の端部)は、自身の延びる方向において底壁62からはみだすことによってそれぞれカム52を挟む腕63a,63bとして機能する。また、2つの側壁61a,61bの第2の端部(
図14中の右斜め下の端部)には、直方体状の筒部64が設けられている。筒部64には蓋65が取り付けられている。さらに、2つの側壁61a,61bのうち車幅方向における外側の側壁61aにおける筒部64寄りの部位には、ダンパステー15の連結部66が設けられている。連結部66は、軸状をなしている。
【0106】
このように構成されたロッド51は、案内枠55に対して2つの樹脂ブッシュ57,58を介して摺動可能に挿通されている。ロッド51は、2つの樹脂ブッシュ57,58の並ぶ方向において、直線的に往復移動する。ロッド51の蓋65は、ストッパ59に対向している。また、ロッド51の連結部66は、案内枠55の開口部56を介して外方へ突出している。連結部66には、ダンパステー15の第2の端部15b(車体側連結点)が回転可能に連結される。
【0107】
図15に示すように、2つの腕63a,63bの互いに対向する内面には、それぞれ樹脂ブッシュ71,71が設けられている。樹脂ブッシュ71は、2つの腕63a,63bにそれぞれ設けられた孔74,74に嵌め込まれる軸部72および軸部72の一の端部に設けられた鍔部73を有している。2つの樹脂ブッシュ71は、それぞれの軸部72が2つの腕63a,63bの内側から孔74,74に嵌め込まれることにより固定されている。鍔部73,73と2つの腕63a,63bの内面との間には、それぞれ板ばね75,75が介在されている。互いに対向する2つの鍔部73,73の間の距離は、カム52の車幅方向における厚みと同程度、あるいは若干短く設定される。
【0108】
2つの側壁61a,61bの間には、第1の実施の形態と同様に、軸受40および軸受40の外周面に嵌められたカムフォロア41が介在されている。軸受40およびカムフォロア41は、それぞれ樹脂ブッシュ71,71に対して筒部64寄りの部位に設けられている。軸受40は、2つの側壁61a,61bのうち一方の側壁61aの外側からボルト38が挿入され他方の側壁61bの外側からナット39が締め付けられることによって、2つの側壁61a,61bの間に固定されている。前述したように、カムフォロア41は太鼓状をなしている。カムフォロア41は、軸受40の外周面に対して摺動回転する。カムフォロア41は、ダンパステー15の弾性力によりカム面24に常に押し当てられる。
【0109】
図16に示すように、蓋65は、筒部64に挿入される四角柱状の挿入部81、および挿入部81の筒部64と反対側の端部に設けられた四角板状の頭82を備えている。蓋65は、挿入部81が筒部64に嵌め込まれることにより筒部64に固定されている。頭82は筒部64の開口端縁に当接している。蓋65の筒部64と反対側の側面には、穴83が設けられている。穴83はストッパ59に対向している。また、穴83には、圧縮コイルばね84が挿入されている。圧縮コイルばね84の第1の端部は穴83の内底面に、同じく第2の端部はストッパ59にそれぞれ接した状態に維持されている。また、圧縮コイルばね84は、若干圧縮された状態に維持されている。ロッド51は、圧縮コイルばね84の弾性力に抗して、ストッパ59に近接する方向へ変位可能とされている。
【0110】
<カム>
つぎに、カム52について説明する。
【0111】
図17に示すように、カム52は、車体11に対する固定部分である孔90を有している。同図では便宜上、孔90と支点13とを同軸上に示している。カム52のカム面91には、ダンパステー15の弾性力により、カムフォロア41が常に押し当てられる。前述したように、カム52は支点13を中心としてバックドア12と一緒に回転する。カム52の回転に伴い、カムフォロア41はカム面91に摺接する。また、カム52の回転に伴い、カムフォロア41は、
図17に実線で示す全閉位置P11と、同じく二点鎖線で示す全開位置P15との間をカム面91に対して相対的に移動する。ロッド21、ひいてはダンパステー15の車体側連結点である第2の端部15b(
図14参照)は、カム面91の起伏に応じて、案内枠55、正確には2つの樹脂ブッシュ57,58に沿って移動する。
【0112】
カム面91には、全閉側(
図17中の右側)から順に、第1〜第4のカム領域A1c〜A4cがそれぞれ設定されている。
【0113】
第1のカム領域A1cは、バックドア12が全閉状態のとき、カムフォロア41が接触する領域を含んでいる。第1のカム領域A1cは、全閉側から全開側へ向けて、カム反力によるモーメントの腕の長さLcが徐々に小さくなる平面状に設けられている。前述したように、モーメントの腕の長さLcとは、カム52の回転中心である支点13と、カム面91におけるカムフォロア41との接触点Pとの間の距離をいう。
【0114】
第2のカム領域A2cは、腕の長さLcが第1のカム領域A1cよりも小さく、かつカム52の回転に関わらず一定となる曲面状(円弧面)に設定されている。
【0115】
第3のカム領域A3cは、全閉側から全開側へ向けて、腕の長さLcが徐々に大きくなる平面状に設定されている。
【0116】
第4のカム領域A4cは、バックドア12が全開状態のとき、カムフォロア41が接触する領域を含んでいる。第4のカム領域A4cは、全閉側から全開側へ向けて、腕の長さLcが緩やかに大きくなる平面状に設定されている。
【0117】
このため、カムフォロア41が第1のカム領域A1cおよび第3のカム領域A3cに接触している間のカム反力によるアシストモーメントMcは、それぞれカムフォロア41が第2のカム領域A2cに接触している間のアシストモーメントMcよりも大きくなる。すなわち、バックドア12を開け始める際、および開け終わる際には、より大きなカム反力によるアシストモーメントMcがバックドア12に印加される。第1の実施の形態と同様に、カム面91の形状(カム径)を設定することにより、
図8に示される操作特性と近似した操作特性が得られる。
【0118】
<開閉補助装置の動作>
つぎに、前述のように構成した開閉補助装置の動作を説明する。ここでは、バックドア12の状態を全閉状態から全開状態へ移行させる場合について説明する。
【0119】
図18に示すように、バックドア12が全閉状態に維持されているとき、カムフォロア41は
図17に実線で示される全閉位置P11に位置している。
図18に示すように、このとき、蓋65とストッパ59との間にはわずかな隙間δが形成される。また、ダンパステー15の弾性力に基づくロッド51のカム面91に対する押圧力Fの働く方向は、ロッド51の軸線に沿った上向きである。
【0120】
図19に二点鎖線で示すように、バックドア12が開き始めたとき、カムフォロア41は、カム面91に対してつぎのように変位する。すなわち、
図17に示されるように、カムフォロア41は、カム52の回転に伴い第1のカム領域A1cを摺動し、全閉位置P11から第1のカム領域A1cと第2のカム領域A2cとの境界位置P12へ至る。全閉位置P1から第2のカム領域A2cへ向かうにつれて、腕の長さLc(カム径)が短くなるので、その短くなる分、ロッド51はダンパステー15の弾性力によって徐々に上方へ移動する。その結果、蓋65とストッパ59との間の隙間δも徐々に大きくなる。このとき、ダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向は、ロッド51の軸線に沿った上向きである。
【0121】
図19に実線で示すように、バックドア12がさらに開いたとき、カムフォロア41は、カム面91に対してつぎのように変位する。すなわち、
図17に示されるように、カムフォロア41は、カム52の回転に伴い第2のカム領域A2cを摺動し、第1のカム領域A1cと第2のカム領域A2cとの境界位置P12から第2のカム領域A2cと第3のカム領域A3cとの境界位置P13へ至る。第2のカム領域A2cにおいては、腕の長さLc(カム径)は一定であるので、カムフォロア41が第2のカム領域A2cを摺動している間、ロッド51が上下に移動することはない。すなわち、蓋65とストッパ59との間の隙間δも一定に保持される。このときも、ダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向は、ロッド51の軸線に沿った上向きである。
【0122】
図20に示すように、バックドア12がさらに開いたとき、カムフォロア41は、カム面91に対してつぎのように変位する。すなわち、
図17に示されるように、カムフォロア41は、カム52の回転に伴い第3のカム領域A3cを摺動し、第2のカム領域A2cと第3のカム領域A3cとの境界位置P13から第3のカム領域A3cと第4のカム領域A4cとの境界位置P14の付近へ至る。第3のカム領域A3cを摺動して境界位置P14へ向かうにつれて、腕の長さLc(カム径)が長くなるので、その長くなる分、ロッド51はダンパステー15の弾性力および圧縮コイルばね84の弾性力に抗して徐々に下方へ移動する。その結果、蓋65とストッパ59との間の隙間δも徐々に小さくなる。このときの隙間δは、バックドア12が全閉状態に維持されているときの隙間δ(
図18を参照。)よりも小さい。また、カムフォロア41が境界位置P14に至ったときも、ダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向は、ロッド51の軸線に沿った上向きである。
【0123】
図21に示すように、バックドア12がさらに開いたとき、カムフォロア41は、カム面91に対してつぎのように変位する。すなわち、
図17に示されるように、カムフォロア41は、カム52の回転に伴い、第3のカム領域A3cと第4のカム領域A4cとの境界位置P14を越えて第4のカム領域A4cを摺動し全開位置P15に至る。第4のカム領域A4cを摺動して全開位置P15へ向かうにつれて、腕の長さLc(カム径)が長くなるので、その長くなる分、ロッド51はダンパステー15の弾性力および圧縮コイルばね84の弾性力に抗して徐々に下方へ移動する。そしてカムフォロア41が全開位置P15に到達するタイミングで蓋65はストッパ59に当接する。すなわち、蓋65とストッパ59との間の隙間δは0(零)になる。
【0124】
ここで、カム面91に対するカムフォロア41の位置が、第3のカム領域A3cから第4のカム領域A4cへ移動するタイミングで、ダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向は、ロッド51の軸線に沿ったこれまでの上向きから下向きへと切り替わる。このとき、ロッド51は下方へ移動しようとするものの、ロッド51の下方への移動はロッド51の下端(正確には、蓋65)がストッパ59に当接することにより規制される。
【0125】
当該押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わるタイミングに合わせて、カムフォロア41がカム面91の第3のカム領域A3cおよび第4のカム領域A4cにそれぞれ案内されることによりロッド51は徐々にストッパ59に近づく。すなわち、第3のカム領域A3cおよび第4のカム領域A4cの傾斜の度合い、正確には腕の長さLc(カム径)は、それぞれロッド51を徐々にストッパ59に近づける観点に基づき設定されている。
【0126】
そして前述したように、ダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わるとき、ロッド51とストッパ59との隙間δは、バックドア12が全閉状態に維持されているときの隙間δよりも小さくなっている。また、ロッド51は、圧縮コイルばね84の弾性力に抗して下方(ストッパ59)へ向けて移動する。このように、押圧力Fの働く方向が切り替わるタイミングで隙間δをなるべく小さくし、しかも圧縮コイルばね84の上向きの弾性力を作用させながらロッド51を下方へ移動させることによって、ロッド51が急激に下方へ移動することが抑制される。ロッド51がストッパ59に当接する際の衝撃も緩和される。
【0127】
したがって、バックドア12を開ける際に、ダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わる場合であれ、ロッド51が案内部材53(正確には案内枠55、あるいは樹脂ブッシュ57,58)から抜け落ちることが抑制される。バックドア12を閉じるときのスライド機構16の動作は、バックドア12を開けるときの動作と反対の動作となる。
【0128】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、第1の実施の形態の(1)〜(6),(8),(9)に加え、以下の効果を得ることができる。
【0129】
(10)先の
図7に示される長孔42を有するカム22と異なり、本例のカム52は長孔を有していない。カム52に長孔(カム溝)を設ける場合に比べて、カム52の体格(サイズ)を小さくすることが可能である。このため、車両に対する搭載性が向上する。
【0130】
(11)バックドア12が上方へ大きく開かれる場合など、ロッド51に対して作用するダンパステー15の弾性力に基づく押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わる場合がある。この場合、カムフォロア41、ひいてはロッド51は下方へ移動しようとする。本例のカム52は、先の
図7に示されるカム22と異なり、カムフォロア41が係止される長孔を有していないので、ロッド51が案内部材53から抜け落ちることが懸念される。この点、本例では、ロッド51の下端、正確には蓋65に対向するストッパ59が設けられている。このため、ロッド51がストッパ59に当接することにより、ロッド51が案内部材53から抜け落ちることが防止される。
【0131】
(12)また、ロッド51の下端とストッパ59との間には、圧縮コイルばね84が介在されている。このため、押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わることによって、ロッド51が下方へ移動するとき、ロッド51は圧縮コイルばね84の弾性力に抗して下方へ移動することになる。したがって、ロッド51が急激に下方へ移動することが抑制される。また、ロッド51はストッパ59に対して緩やかに当接する。すなわち、ロッド51がストッパ59に当接する際の衝撃、あるいは衝撃による異音の発生などが抑制される。
【0132】
(13)さらに、押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わるタイミングに至る少し前の時点から、カム52の回転に伴いロッド51を徐々に下方へ移動させるべく、カム面91における第3のカム領域A3cおよび第4のカム領域A4cの傾斜の度合いがそれぞれ設定されている。このため、押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わるときには、ロッド51とストッパ59との間の隙間δは小さくなっている。すなわち、ロッド51がストッパ59に近接した状態で、押圧力Fの働く方向が上向きから下向きへ切り替わっても、ロッド51が移動する距離はわずかなものである。このため、前述した圧縮コイルばね84の弾性力による作用と相まって、ロッド51がストッパ59に当接する際の衝撃などがいっそう緩和される。
【0133】
<他の実施の形態>
なお、前記各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0134】
・第1の実施の形態における長孔42は、貫通しない長溝としてもよい。この場合、一の腕34にカムフォロア41を片持ち状に、かつ回転可能に支持し、このカムフォロア41を長溝に挿入する。
【0135】
・第1および第2の実施の形態では、ロッド21を四角柱としたが、三角柱、5角柱などの他の多角柱としてもよい。また、楕円柱状としてもよい。このようにしても、ロッド21の回転を抑制することができる。
【0136】
・第3の実施の形態において、ロッド51および案内部材53は、先の
図5に示される第1の実施の形態と同様の構成、すなわちロッド21および案内部材31に置換してもよい。この場合、ロッド21の先端部分には2つの腕34,34を連結し、これら腕34,34によりカム52を挟み込む。
【0137】
・第3の実施の形態において、圧縮コイルばね84を省略してもよい。この場合、蓋65には穴83を設ける必要はない。このようにしても、ロッド51がストッパ59に当接することにより、ロッド51が案内部材53から抜け落ちることが防止される。
【0138】
・第3の実施の形態において、
図22(a)に示すように、緩衝部材として機能する圧縮コイルばね84を、ゴムあるいはスポンジなどの弾性体92に置換してもよい。また、
図22(b)に示すように、圧縮コイルばね84を省略するとともに穴83を埋め、蓋65の底面とストッパ59との間に弾性体92を介在させてもよい。この場合、弾性体として圧縮コイルばね84を採用してもよい。このようにしても、弾性体92の弾性力によって、ロッド51がストッパ59に当接する際の緩衝効果が得られる。弾性体92は、緩衝部材に相当する。
【0139】
・第3の実施の形態において、ストッパ59は案内部材53の一部として一体に設けたが、案内部材53とは別の部材として設けてもよい。たとえば
図23に示すように、ストッパ59は車体11に設けてもよい。そして、蓋65とストッパ59との間には圧縮コイルばね84を介在させる。
【0140】
・第3の実施に形態において、ストッパ59は案内部材53の一部として一体に設けたが、案内部材53ではなく、他の箇所に設けてもよい。たとえば
図14に二点鎖線で示すように、ロッド51にストッパ93を設ける。ストッパ93は、たとえば円柱状をなし、2つの側壁61a,61bの少なくとも一方に設ける。ストッパ93が案内部材53(正確には、樹脂ブッシュ57)に当接することにより、ロッド51が下方(カム52と反対側)へ向けて移動することが規制される。
【0141】
・第3の実施の形態では、カム52をバックドア12に設けたが、第2の実施の形態と同様に、車体11における支点13の近傍に設けてもよい。この場合、ロッド51はバックドア12に対してスライド可能に設ける。また、ダンパステー15のドア側連結点と車体側連結点とを第3の実施の形態と逆にする。すなわち、ダンパステー15の第1の端部15aはバックドア12に沿って直線的に往復移動するロッド51に対して回転可能に連結するとともに、同じく第2の端部15bは車体11に対して回動可能に連結する。なお、この場合には、ストッパ59を別部材としてバックドア12に設けてもよい。
【0142】
・各実施の形態では、バックドア12を手動で開閉する例を示したが、バックドア12を自動で開閉する、いわゆるパワーバックドアに適用してもよい。この場合、ダンパステー15にモータなどの駆動源を組み込み、この駆動源の駆動を通じてピストンロッド18を伸ばしたり縮めたりする。バックドア12の重量が重いほど大きなモータによる推力が必要となる。モータによる推力とは、たとえばピストンロッド18を伸ばす方向へ押しやる力をいう。
【0143】
各実施の形態によれば、カム面の形状の制御を通じて、バックドア12の全閉と全開とのすべての開度において、バックドア12の自重モーメントMgと開閉補助装置14によるアシストモーメントMa,Mcとの釣り合いをとることが可能である。このため、バックドアの開閉に必要とされるモータによる推力を低減させることができる。モータとして、より小型のものを採用することが可能になるので、たとえば全車種に対して同一のダンパステーを採用することも可能となる。
【0144】
また、従来、モータを持ったダンパステーを車体11の左右二箇所に設ける必要があったところ、一方はモータを持ったダンパステー、他方はモータを持たないダンパステーとすることも可能である。モータをもったダンパステーは、モータを持たないものに比べて高価である。このため、2つのうち一方を、モータを持たないダンパステーとすることにより、その分、開閉補助装置14の製品コストを抑えることが可能である。
【0145】
たとえば第1の実施の形態をパワーバックドアに適用する場合について、
図24のグラフを参照しつつ検討する。当該グラフにおいて、横軸はバックドア12の開度θ、縦軸はバックドア12を開ける際に必要とされるモータによる推力を示す。また、当該グラフに示されるように、一つのモータでバックドア12の開閉が可能となるモータ推力の目標値Fmを設定する。
【0146】
同グラフに白抜きの四角形を破線で結んで示されるように、カム22によるアシストモーメントMcがない場合、バックドア12を開け始める際に必要とされるモータによる推力は、目標値Fmを大きく超える。このため、一つのモータではバックドア12を開けることが困難である。
【0147】
これに対し、当該グラフに白抜きの四角形を実線で結んで示されるように、カム22によるアシストモーメントMcがある場合、バックドア12を開け始める際に必要とされるモータによる推力は、目標値Fm未満とすることが可能である。このため、一つのモータでバックドア12を開けることが可能である。
【0148】
また、ダンパステー15にモータなどの駆動源を組み込む例を示したが、ダンパステー15以外の場所に駆動源を設置する場合に適用してもよい。たとえばピラーあるいはルーフに駆動源を設置してもよい。
【0149】
・各実施の形態では、開閉補助装置14によってバックドア12の開閉操作力を補助するようにしたが、車両に設けられる何らかの蓋体またはカバーなど、バックドア以外の開閉体であって、上下方向に開閉するものの操作力を補助するようにしてもよい。また、開閉補助装置14の適用先は、車両に限られない。車両以外の構造物または建築物などの他の取付け対象に設けられるドアなどの開閉体であって、上下方向に開閉するものの操作力を補助するようにしてもよい。開閉補助装置14は、上下方向に開閉する開閉体全般の開閉操作力を補助するために使用することが可能である。
【0150】
・開閉補助装置14の開閉補助対象は、重力に沿った上下方向へ回転する開閉体に限られない。すなわち、開閉補助装置14は、開閉体の開閉方向に関わらず当該開閉体の開閉補助を行うことが可能である。たとえば車体11または車体11以外の他の取付け対象に設けられて地面などの水平面(重力方向に対して直交する面)に沿って左右方向へ回転する開閉体を、開閉補助装置14の開閉補助対象としてもよい。開閉体の回転方向へ重力(自重)が作用しない場合であれ、カム22,52の形状の設定を通じて、開閉体の開閉補助を行うことが可能である。