(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質炭素生成工程、前記第1の金属還元工程、前記金属炭化物生成工程、及び前記第2の金属還元工程を繰り返し行うとともに、前記金属炭化物生成工程によって取り出された前記金属炭化物を前記多孔質炭素生成工程に用い、前記第2の金属還元工程によって取り出された前記塩素ガスを前記多孔質炭素生成工程に用い、前記第2の金属還元工程によって取り出された前記第2の金属を前記第1の金属還元工程に用いる
ことを特徴とする、請求項1に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
前記多孔質炭素生成工程を、前記塩素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気、若しくは前記塩素ガス雰囲気に前記金属炭化物を置き、前記混合ガス雰囲気若しくは前記塩素ガス雰囲気を500℃以上1500℃以下の温度に加熱して行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
前記多孔質炭素生成工程において、金属炭化物がSiCであり、前記塩素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気、若しくは前記塩素ガス雰囲気に前記金属炭化物を置き、前記混合ガス雰囲気若しくは前記塩素ガス雰囲気を900℃以上1300℃以下の温度に加熱して行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
前記多孔質炭素生成工程において、金属炭化物がTiCであり、前記塩素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気、若しくは前記塩素ガス雰囲気に前記金属炭化物を置き、前記混合ガス雰囲気若しくは前記塩素ガス雰囲気を600℃以上1000℃以下の温度に加熱して行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
前記第2の金属が、第1族元素、第2族元素、第11族元素、及び第12族元素のうち何れかであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
前記多孔質炭素生成工程において、金属炭化物がSiCであり、前記第2の金属がZnであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
前記多孔質炭素生成工程において、金属炭化物がTiCであり、前記第2の金属が、Mgであることを特徴とする、請求項1〜5、7のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、実施形態に係る多孔質炭素材料の製造方法の各工程を示す図である。
図1に示されるように、本実施形態による製造方法は、多孔質炭素生成工程S11と、第1の金属還元工程S12と、金属炭化物生成工程S13と、第2の金属還元工程S14とを備えており、これらの工程S11〜S14を繰り返し行うことにより、例えば内径数ナノメートルの多数の空孔を有する多孔質炭素材料を連続的に生産する。
【0025】
多孔質炭素生成工程S11では、第1の金属と炭素との化合物である金属炭化物と、塩素ガス(Cl
2)とを互いに接触させて加熱処理を行うことにより、多孔質炭素材料を生成する。第1の金属をM
1とすると、この多孔質炭素生成工程S11は次の化学式(1)で表される。なお、Xは1以上の整数である。
M
1C+XCl
2 → M
1Cl
2X+C ・・・(1)
第1の金属M
1が例えばSiである場合、この多孔質炭素生成工程S11は次の化学式(2)で表される。
SiC+2Cl
2 → SiCl
4+C ・・・(2)
【0026】
この工程では、第1の金属M
1及び炭素から成る結晶において第1の金属M
1と塩素ガスCl
2とが反応し、これにより第1の金属M
1のみが結晶から抜け出て、多孔質の炭素構造が形成される。この工程では、例えば、塩素ガスCl
2と不活性ガス(N
2、He、Ar、Ne、Xeなど)との混合ガス雰囲気、若しくは実質的に100%の塩素ガス雰囲気に粉末状の金属炭化物M
1Cを置き、混合ガス雰囲気若しくは塩素ガス雰囲気を高温に加熱する。このとき、混合ガス雰囲気若しくは塩素ガス雰囲気の可能な温度は、例えば500℃以上1500℃以下である。
【0027】
ここで、金属炭化物M
1Cは、Al
4C
3、B
4C、CaC
2、Cr
3C
2、Fe
3C、SiC、ThC
2、TiC、UC
2、WC、及びMoCのうち少なくとも一つを含むことが可能である。その場合、第1の金属M
1は、Al、B、Ca、Cr、Fe、Si、Th、Ti、U、W、及びMoのうち少なくとも一つである。特に、金属炭化物M
1CがSiC、TiC、B
4C、及びWCの何れかであると尚良い。これらの炭化物の塩素化で生成する塩化物の融点が
図7の表(金属塩化物と融点・沸点を示す表)のように、比較的低温であり凝縮処理が行いやすいため有利となる。WCl
5の沸点は300℃以上であるが、希少金属であり付加価値の観点で、有利に働く。
【0028】
また、この工程では、多孔質炭素材料と共に、第1の金属塩化物(化学式(1)におけるM
1Cl
2x、化学式(2)におけるSiCl
4)が得られる。この第1の金属塩化物M
1Cl
2xは、例えば冷却器などにおいて室温付近まで冷却されることにより回収される。
【0029】
また、この工程では、粉末状の金属炭化物M
1Cを用いることが可能である。金属炭化物M
1Cから第1の金属M
1が抜け出す際、金属炭化物M
1Cの表面から深い位置にある第1の金属M
1ほど、抜け出すために長時間を要する。粉末状の金属炭化物M
1Cを用いることにより、金属炭化物M
1Cの表面積が増し、金属炭化物M
1Cから第1の金属M
1が効率良く抜けるので、多孔質炭素材料の製造時間を短縮することができる。なお、金属炭化物M
1Cの可能な平均粒径は、0.1μm〜10μmである。用途により、それよりも大きい粒子径は可能であるが、粒子径500μmを超えると、生成する塩化物の拡散反応律速が顕著になるため望ましくない。
【0030】
多孔質炭素生成工程S11ののち、第1の金属還元工程S12を行う。第1の金属還元工程S12では、多孔質炭素生成工程S11において多孔質炭素材料と共に生成される第1の金属塩化物M
1Cl
2Xと、第2の金属とを反応させることにより第1の金属を還元させて、第1の金属M
1を取り出す。第2の金属をM
2とすると、この第1の金属還元工程S12は次の化学式(3)で表される。なお、Yは1以上の整数である。
M
1Cl
2X+YM
2 → YM
2Cl
2X/Y+M
1 ・・・(3)
第1の金属M
1が例えばSiであり、第2の金属M
2が例えばZnである場合、この第1の金属還元工程S12は次の化学式(4)で表される。
SiCl
4+2Zn → 2ZnCl
2+Si ・・・(4)
【0031】
この工程では、いわゆる亜鉛還元法を用いて、第1の金属塩化物M
1Cl
2Xから高純度の第1の金属M
1を取り出す。第2の金属M
2は、第1の金属塩化物M
1Cl
2Xとの反応により塩化物化して第1の金属M
1を還元することができ、且つ、後述する第2の金属還元工程S14における電気分解によってその塩化物を塩素ガスと第2の金属M
2とに分離することができる元素であればよい。例えば、第2の金属M
2は、第1族元素(第1A族元素、アルカリ金属とも呼ばれる)、第2族元素(第2A族元素、アルカリ土類金属とも呼ばれる)、Cuなどの第11族元素(第1B族元素とも呼ばれる)、及び、Znなどの第12族元素(第2B族元素とも呼ばれる)のうち何れかであることが可能である。具体的に例示すると、第1族元素はLi、Na、K、Rb、Cs、の何れかであり、第2族元素はMg、Ca、Sr、Ba、及びRaの何れかであり、第11族元素はCu、Ag、Auの何れかであり、第12族元素はZn、Cd、Hgの何れかである。特に、ZnはSiCl
4との組み合わせで、シリコンと固溶体を作らない上塩化物の融点が比較的低く、金属の蒸気圧も高い点から望ましい材料である。金属としては蒸気圧が高いものが可能でありZn,Mg,Na,K,Sr,Baも可能である。塩化物になったとき、融点が低く、基材と反応しない金属塩化物が可能である。それにはZn、Mg,Na,K,Ca,Srが適している(
図8の表(金属とその金属塩化物の融点・沸点を示す表)を参照)。
【0032】
第1の金属還元工程S12ののち、金属炭化物生成工程S13および第2の金属還元工程S14を行う。なお、これらの工程は、何れかを先に行われてもよく、或いは並行して行われても良い。
【0033】
金属炭化物生成工程S13では、第1の金属還元工程S12において取り出された第1の金属M
1と炭素とを相互に反応させることにより、金属炭化物M
1Cを生成する。ここで、金属炭化物生成工程S13に使用される炭素原料は、例えばカーボンブラックや天然黒鉛といった、低コストで入手が容易なものであることが可能である。この金属炭化物生成工程S13は次の化学式(5)で表される。
M
1+C → M
1C ・・・(5)
第1の金属M
1が例えばSiである場合、この金属炭化物生成工程S13は次の化学式(6)で表される。
Si+C → SiC ・・・(6)
この金属炭化物生成工程S13によって取り出された金属炭化物M
1Cは、前述した多孔質炭素生成工程S11において再び用いられる。
【0034】
また、第2の金属還元工程S14では、第1の金属還元工程S12において第1の金属M
1と共に生成される第2の金属塩化物(化学式(3)におけるM
2Cl
2X/Y、化学式(4)におけるZnCl
2)の第2の金属M
2を還元させることにより、第2の金属M
2および塩素ガスCl
2を取り出す。この第2の金属還元工程S14は次の化学式(7)で表される。
M
2Cl
2X/Y → M
2+(X/Y)Cl
2 ・・・(7)
第2の金属M
2が例えばZnである場合、この第2の金属還元工程S14は次の化学式(8)で表される。
ZnCl
2 → Zn+Cl
2 ・・・(8)
【0035】
この工程では、例えば第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yを高温溶融状態で電気分解することにより、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yを第2の金属M
2と塩素ガスCl
2とに分離させる。そして、この第2の金属還元工程S14によって取り出された塩素ガスCl
2は、前述した多孔質炭素生成工程S11において再び用いられる。更に、この第2の金属還元工程S14によって取り出された第2の金属M
2は、前述した第1の金属還元工程S12において再び用いられる。
【0036】
ここで、上述した多孔質炭素材料の製造方法において好適に用いられる製造装置の例について説明する。
図2は、多孔質炭素生成工程S11において用いられる多孔質炭素生成装置10の構成を概略的に示す図である。また、
図3は、第1の金属還元工程S12および第2の金属還元工程S14において用いられる亜鉛還元装置20の構成を簡略化して示す図であり、
図4は、亜鉛還元装置20の具体的な構成を示す図である。また、
図5は、金属炭化物生成工程S13において用いられる金属炭化物生成装置30の構成を概略的に示す図である。
【0037】
まず
図2を参照すると、多孔質炭素生成装置10は、反応炉11と、冷却トラップ12と、貯留タンク13とを備えている。反応炉11には複数段にわたって金属炭化物M
1Cを載置する載置棚11aが収容されており、載置棚11aは支持棒11bによって上方から吊り下げて支持されている。反応炉11における載置棚11aよりも下の部分にはガス導入口11cが設けられており、このガス導入口11cから、塩素ガスCl
2と不活性ガスとの混合ガス、若しくは実質的に100%の塩素ガスCl
2が反応炉11内に導入される。また、反応炉11の外側には、載置棚11aを囲むようにヒーター11dが設けられている。このヒーター11dによって、金属炭化物M
1Cの周囲の混合ガス若しくは塩素ガスが例えば500℃以上1500℃以下の所定温度となるように加熱される。なお、このときの可能な温度範囲は金属炭化物M
1Cの種類によって異なり、例えば金属炭化物M
1CがSiCである場合、可能な温度範囲は900℃以上1600℃以下である。
【0038】
上記処理によって、前述した化学式(1)または(2)の反応が生じて、金属炭化物M
1Cから第1の金属M
1が抜け、載置棚11aにおいて多孔質炭素材料が生成される。また、反応により生じた第1の金属塩化物M
1Cl
2X(図ではSiCl
4を例示)および混合ガス(若しくは塩素ガス)は、反応炉11の上部に設けられたガス排出口11eから反応炉11の外部へ排出される。ガス排出口11eは冷却トラップ12に接続されており、この冷却トラップ12内を循環する冷媒12aによって、反応炉11からの排気が冷却される。そして、冷却された第1の金属塩化物M
1Cl
2Xは、貯留タンク13に貯留されたのち、亜鉛還元装置20へ送られる。また、冷却トラップ12を通過した混合ガス(若しくは塩素ガス)は、三方弁14を介して、多孔質炭素生成装置10の外部へ排気されるか、若しくは再び反応炉11のガス導入口11cへ送られる。
【0039】
次に、
図3を参照すると、亜鉛還元装置20は、気化器21及び22と、反応炉23と、溶融塩電解槽24とを備えている。上述した多孔質炭素生成装置10の貯留タンク13に貯留された第1の金属塩化物M
1Cl
2X(図ではSiCl
4を例示)は、気化器21に送られて気化する。一方、気化器22では、第2の金属M
2(図ではZnを例示)が気化する。こうして気化した第1の金属塩化物M
1Cl
2Xおよび第2の金属M
2は、反応炉23に送られる。そして、反応炉23において第1の金属塩化物M
1Cl
2Xおよび第2の金属M
2を高温で反応させることにより、前述した化学式(3)または(4)の反応が生じ、第1の金属M
1(図ではSiを例示)が取り出されるとともに、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Y(図ではZnCl
2を例示)が生成される。第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yは溶融塩電解槽24に送られ、電気分解により化学式(7)または(8)の反応が生じ、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yが第2の金属M
2と塩素ガスCl
2とに分離する。こうして取り出された塩素ガスCl
2は多孔質炭素生成装置10に送られ、第2の金属M
2は気化器22に送られる。
【0040】
図4を参照して、具体的な亜鉛還元装置20について説明する。この亜鉛還元装置20では、気化器22が、系内投入用気化器22aと、連続運転用気化器22bと、集合管22cとを有している。系内投入用気化器22aはゲート弁22dを有しており、亜鉛還元装置20の外部から第2の金属M
2(図ではZnを例示)を投入することが可能となっている。第2の金属M
2は、系内投入用気化器22aの気化室22eに収容され、気化する。気化室22eと集合管22cとは、配管22fによって互いに連結されている。また、連続運転用気化器22bは、溶融塩電解槽24から取り出された第2の金属M
2を収容し、気化する気化室22gを有している。気化室22gと集合管22cとは、配管22hによって互いに連結されている。
【0041】
系内投入用気化器22a、および連続運転用気化器22bの配管22hは、例えばセラミックス(アルミナ等)によって構成される。また、連続運転用気化器22bの気化室22g、および集合管22cは、例えばカーボンによって構成される。系内投入用気化器22a、連続運転用気化器22b、及び集合管22cは、900℃〜1000℃といった高温に加熱される。
【0042】
反応炉23は、例えば石英製の容器である。反応炉23の上部は、石英製の配管23aを介して気化器22の集合管22cと連結されており、気化された第2の金属M
2が配管23aを介して反応炉23へ送られる。また、反応炉23の上部には、石英製の配管23bを介して第1の金属塩化物M
1Cl
2Xが流入する。反応炉23は1200℃〜1400℃といった高温に加熱されており、反応炉23の内部において、第2の金属M
2と第1の金属塩化物M
1Cl
2Xとが互いに反応する。その結果生じた第1の金属M
1は、反応炉23の内部に設けられた加熱されていない容器23cに収容される。また、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yは、第1の金属M
1の微粒子を除去する為の微粒子トラップ25を通過したのち、溶融塩電解槽24に送られる。微粒子トラップ25は例えば石英製であり、900℃〜1000℃といった高温に加熱される。
【0043】
溶融塩電解槽24は、本体部26及び電極構造体27を備えている。本体部26は、溶融した第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yを収容し、電解するための電解槽26aと、電解槽26aの内部を加熱するための熱源であるヒータ(不図示)とを有する。電解槽26aの上方には空間26bが設けられ、空間26bの水平方向の一端には微粒子トラップ25に連結された配管26cが配置され、他端には配管26d(デミスタ)が配置されている。配管26cから導入された第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yは、電解槽26aへ導かれる。電解槽26aにおいて発生した塩素ガスCl
2は、空間26bを通って配管26dから排出される。なお、図に示されるように、配管26dの先端にはテフロン樹脂製のフィルタ28が設けられている。また、電解槽26aの底部には配管26eが連結されており、電解槽26aの底部に堆積した高純度の第2の金属M
2は、この配管26eを通って連続運転用気化器22bへ送られる。
【0044】
電極構造体27は、複数の電極板27aを有する。複数の電極板27aは、隙間をあけて板厚方向に並置され、該板厚方向を水平方向として電解槽26a内に配置されている。複数の電極板27aは、例えば高純度炭素材料といった、高温に強く塩素に対し耐食性を有する導電性物質からなり、水平方向に延設された一または複数の棒状部材27bによって貫通され、相互の位置関係が保持されている。
【0045】
複数の電極板27aのうち、水平方向の一端に位置する電極板27aには、該電極板27aと電気的に接続された通電部材27cを介して所定の正電圧が印加され、この電極板27aは陽極として機能する。また、水平方向の他端に位置する電極板27aには、該電極板27aと電気的に接続された通電部材27dを介して所定の負電圧が印加され、この電極板27aは陰極として機能する。これら陽極および陰極の間に配置された電極板27aには、図示しない通電部材を介して、上記した正電圧および負電圧の間で電位勾配が与えられ、これらの電極板27aはそれぞれ中間電極として機能する。
【0046】
配管26cから導入された第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yは、電解槽26aに取り込まれる。電解槽26a内はヒータによって例えば500℃〜700℃といった高温に保たれるので、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yは溶融状態のまま維持される。また、電解槽26aの内部には複数の電極板27aが配置されており、溶融した第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Y中に複数の電極板27aが浸される。そして、所定の電位差が各電極板27aに与えられると、隣り合う電極板27a同士の対向する面(電解面)を介して第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Y中に電流が流れ、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yが塩素Cl
2と第2の金属M
2とに電気分解される。こうして生成された第2の金属M
2は、第2の金属塩化物M
2Cl
2X/Yの融液より比重が大きいので電解槽26aの底部に堆積し、配管26eを通って連続運転用気化器22bへ送られる。また、生成された塩素Cl
2は、塩素ガスとなって電解槽26aの上方へ移動し、配管26dを通って多孔質炭素生成装置10へ送られる。
【0047】
続いて、
図5を参照すると、金属炭化物生成装置30は、上下方向に延びる反応炉31と、反応炉31の側壁に埋め込まれたヒーター32と、反応炉31内に配置された載置棚33とを備えている。載置棚33には、第1の金属M
1と炭素原料(例えばカーボンブラックや天然黒鉛など)との混合物34が、複数段にわたって載置される。なお、載置棚33は、支持棒33aによって上方から吊り下げて支持されている。
【0048】
反応炉31の下部には吸気口31aが設けられており、この吸気口31aから不活性ガス(N
2、He、Ar、Ne、Xeなど)が導入される。この不活性ガスは、反応炉31内を上方へ移動したのち、反応炉31の上部に設けられた排気口31bから排出される。
【0049】
ヒーター32は載置棚33の周囲を囲むように配置されており、載置棚33に載置された混合物34を加熱する。なお、本工程における混合物34の可能な温度は、1400℃〜1800℃である。これにより、化学式(5)または(6)の反応が生じ、第1の金属M
1と炭素とが互いに結合して金属炭化物M
1Cが生成される。
【0050】
以上に説明した、本実施形態に係る多孔質炭素材料の製造方法によって得られる効果について説明する。前述したように、本実施形態では、多孔質炭素生成工程S11において金属炭化物(例えばSiC)と塩素ガス(Cl
2)とが反応し、多孔質炭素が生成される。このとき、第1の金属塩化物(例えばSiCl
4)が同時に生成される。この第1の金属塩化物は、第1の金属還元工程S12によって還元され、第1の金属(例えばSi)が取り出される。こうして取り出された第1の金属は、金属炭化物生成工程S13において炭化され、金属炭化物(例えばSiC)が生成される。この金属炭化物は、上述した多孔質炭素生成工程S11で再び使用される。
【0051】
また、第1の金属還元工程S12では第2の金属塩化物(例えばZnCl
2)も生成されるが、この第2の金属塩化物は、第2の金属還元工程S14において還元され、第2の金属(例えばZn)と塩素ガス(Cl
2)とに分離される。こうして得られた第2の金属は、上述した第1の金属還元工程S12で再び使用される。また、塩素ガスは、上述した多孔質炭素生成工程S11で再び使用される。
【0052】
このように、本実施形態による多孔質炭素材料の製造方法では、多孔質炭素の生成に使用される、炭素以外の各材料を全て循環させて再利用できる。したがって、この製造方法によれば、原料効率を高め、環境負荷を低減し、生産コストを抑えることができる。なお、本方法により製造された多孔質炭素材料は、例えば電池や電気二重層キャパシタ等の電極、触媒担体、活性炭等として広く利用され得る。
【0053】
(変形例)
図6は、上記実施形態の一変形例の各工程を示す図である。
図6に示されるように、本変形例による製造方法は、上記実施形態と同様に、多孔質炭素生成工程S11と、第1の金属還元工程S12と、金属炭化物生成工程S13と、第2の金属還元工程S14とを備えており、これらの工程S11〜S14を繰り返し行うことによって多孔質炭素材料を生産する。
【0054】
本変形例では、多孔質炭素生成工程S11において、金属炭化物としてTiCを用いる。すなわち、この多孔質炭素生成工程S11は次の化学式(9)で表される。
TiC+2Cl
2 → TiCl
4+C ・・・(9)
この工程では、多孔質炭素材料と共に、第1の金属塩化物としてTiCl
4が得られる。このTiCl
4は、例えば冷却器などにおいて室温付近まで冷却されることにより回収される。
【0055】
多孔質炭素生成工程S11ののち、第1の金属還元工程S12を行う。本変形例では、第2の金属としてMgを用いる。すなわち、この第1の金属還元工程S12は次の化学式(10)で表される。
TiCl
4+2Mg → 2MgCl
2+Ti ・・・(10)
この工程では、TiCl
4から高純度のTiが取り出される。
【0056】
第1の金属還元工程S12ののち、金属炭化物生成工程S13および第2の金属還元工程S14を行う。なお、これらの工程は、何れかを先に行われてもよく、或いは並行して行われても良い。
【0057】
金属炭化物生成工程S13では、第1の金属還元工程S12において取り出されたTiと炭素とを相互に反応させることにより、TiCを生成する。この金属炭化物生成工程S13は次の化学式(11)で表される。
Ti+C → TiC ・・・(11)
この金属炭化物生成工程S13によって取り出されたTiCは、前述した多孔質炭素生成工程S11において再び用いられる。
【0058】
また、第2の金属還元工程S14では、第1の金属還元工程S12においてTiと共に生成されるMgCl
2のMgを還元させることにより、Mgおよび塩素ガスCl
2を取り出す。この第2の金属還元工程S14は次の化学式(12)で表される。
MgCl
2 → Mg+Cl
2 ・・・(12)
この第2の金属還元工程S14によって取り出された塩素ガスCl
2は、前述した多孔質炭素生成工程S11において再び用いられる。更に、この第2の金属還元工程S14によって取り出されたMgは、前述した第1の金属還元工程S12において再び用いられる。
【0059】
本変形例のように、第1の金属がSiからTiに変更された場合でも、炭素以外の各材料を全て循環させて再利用し、前述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
(実施例1)
上記実施形態により多孔質炭素材料を実際に製造した実施例について説明する。この実施例では、金属炭化物生成工程S13に用いられる炭素原料として、活性炭を用いた。この活性炭の平均粒子径は20μmであり、比表面積は80m
2/gであった。この炭素原料と金属シリコン粒子との混合物をカーボン製の載置棚に設置し、900℃に設定した反応炉の中にこの載置棚を挿入した。このとき、反応炉内の雰囲気ガスは、窒素ガス(N
2)であった。挿入後、昇温速度10℃/分にて1450℃まで反応炉内を昇温することにより金属シリコン粒子を溶融させた状態で、5時間にわたり反応を継続した。こうして得られた生成物は、ベータ型のSiCであった。
【0061】
こうして得られたSiCを、その粒子径が10μmとなるまで粉砕した後、石英ガラス製の炉心管を有する電気炉のカーボン製載置棚に設置した。そして、塩素ガス流量を1000ml/分とし、Arガス流量を5000ml/分として、所定温度で1時間の処理を行った。このとき、−20℃に設定された冷却トラップを炉心管の排気口に設け、この冷却トラップによってSiCl
4を液化し、容器に滴下させた。また、炉心管内においてSiCと反応しなかったCl
2を、冷却トラップの出口側に設置した三方弁によって炉心管へ還流させた。このSiCl
4の生成を、昇温後約50分で終了した。その後、炉心管内の塩素ガスをArガスによって除去し、カーボン製載置棚を上方に引き上げて400℃まで降温した後、大気中に取り出した。処理温度を、900℃から1500℃の範囲で100℃刻みに変えて、得られた多孔質材料について窒素吸着法による吸着等温線を測定し、得られた吸着量より細孔容積と、BET法による比表面積と、t法による平均細孔径とを算出した結果を、
図9の表(塩素処理温度による表面物性の変化(SiC原料、処理時間1時間)に示す。
図9の表によれば、処理温度が低い場合、反応が完全に進まず製造に適正な時間で大きな表面積は得られない。また、1300℃以上では、比表面積と細孔容積の減少と、細孔径の増大と、が確認される。これらのことから、比表面積を大きくするには適正な温度条件が必要になり、SiC原料では1000〜1300℃が1100m
2/g以上の値をとることが確認できた。
図11に、生成したカーボン材料の結晶相のX線回折図を示す。
図11には、SiC原料の多孔質炭素材料のX線回折波形(CuK
α)が示されており、各線は異なる処理温度のものの結果を示している。
図11において、縦軸はX線回折強度を相対表示しており、横軸は回折角度2θ(deg)となる。
図11において、波形G1は処理温度1000℃における測定結果であり、波形G2は処理温度1100℃における測定結果であり、波形G3は処理温度1200℃における測定結果であり、波形G4は処理温度1400℃における測定結果であり、波形G5は処理温度1500℃における測定結果である。
図11において用いられるカーボン材料の生成過程は、次の化学式(13)で表される。
SiC+2Cl
2 → SiCl
4+C ・・・(13)
SiC原料の場合、回折角度20〜30度の領域のブロードなピークと、43度付近のピークとが確認される。22度、26.2度のシャープなピークは原料に含まれるSiO
2成分(水晶ないしはクリストバライト)の結晶相である。グラファイトの(002)回折線は26度付近に生じるが、10度以下の小角散乱を除去した20〜30度のピーク位置は20〜22度となり、グラファイト結晶とは異なる面間隔となっている。細孔サイズなどは大きく変化しているが、1500℃までの範囲で、X線回折波形には大きな差は見られない。
【0062】
続いて、冷却トラップにより液化されたSiCl
4を80℃に加熱して気化させたのち、950℃に保温した反応容器内においてこのSiCl
4とZn蒸気とを反応させた。この反応により、反応容器内には針状の金属シリコン(Si)が生成した。また、反応容器から排出されたZnCl
2をトラップ槽(550℃)にて液化させたのち、直流電気分解(電極間隔10mm、電圧1.5V)にてZnCl
2を分解した。この分解により生成した塩素ガスをフィルタを介して取り出し、塩素ガス保存槽にて圧縮(10気圧)して液化した。また、電解槽の下部に溜まった溶融状態のZnを、気化器へ送った。
【0063】
上記工程により得られた金属シリコン(Si)を回収した後、真空中において1450℃まで昇温して溶融させ、その後降温して固化させた。固化した金属シリコン(Si)を分析したところ、純度が99.9995%といった極めて高い数値となり、不純物としてZnと酸素が確認された。
【0064】
(実施例2)
多孔質炭素材料をTiCとした実施例について次に説明する。この実施例では、金属炭化物生成工程S13に用いられる炭素原料として、活性炭を用いた。この活性炭の平均粒子径は20μmであり、比表面積は800m
2/gであった。この炭素原料と金属チタン粒子との混合物をカーボン製の載置棚に設置し、900℃に設定した反応炉の中にこの載置棚を挿入した。このとき、反応炉内の雰囲気ガスは、窒素ガス(N
2)であった。挿入後、昇温速度10℃/分にて1550℃まで反応炉内を昇温することにより金属シリコン粒子を溶融させた状態で、5時間にわたり反応を継続した。こうして得られた生成物は、TiCであった。
【0065】
こうして得られたTiCを、その粒子径が10μmとなるまで粉砕した後、石英ガラス製の炉心管を有する電気炉のカーボン製載置棚に設置した。そして、塩素ガス流量を1000ml/分とし、Arガス流量を5000ml/分として、所定温度で1時間の処理を行った。このとき、−20℃に設定された冷却トラップを炉心管の排気口に設け、この冷却トラップによってTiCl
4を液化し、容器に滴下させた。また、炉心管内においてTiCと反応しなかったCl
2を、冷却トラップの出口側に設置した三方弁によって炉心管へ還流させた。このTiCl
4の生成を、昇温後約50分で終了した。その後、炉心管内の塩素ガスをArガスによって除去し、カーボン製載置棚を上方に引き上げて400℃まで降温した後、大気中に取り出した。処理温度を、800℃から1400℃の範囲で100℃刻みに変えて、得られた多孔質材料について窒素吸着法による吸着等温線を測定し、得られた吸着量より細孔容積と、BET法による比表面積と、t法による平均細孔径とを算出した結果を、
図10の表(塩素処理温度による表面物性の変化(TiC原料、処理時間1時間)に示す。
図10の表によれば、1000℃以上では、比表面積と細孔容積の減少と、細孔径の増大と、が確認される。これらのことから、比表面積を大きくするには適正な温度条件が必要になり、TiC原料では800〜1100℃が1100m
2/g以上の値をとることが確認できた。
図12に、生成したカーボン材料の結晶相のX線回折図を示す。
図12には、TiC原料の多孔質炭素材料のX線回折波形(CuK
α)が示されており、各線は異なる処理温度のものの結果を示している。
図12において、縦軸はX線回折強度を相対表示しており、横軸は回折角度2θ(deg)となる。
図12において、波形G6は処理温度1000℃における測定結果であり、波形G7は処理温度1100℃における測定結果であり、波形G8は処理温度1200℃における測定結果であり、波形G9は処理温度1300℃における測定結果であり、波形G10は処理温度1400℃における測定結果である。
図12において用いられるカーボン材料の生成過程は、次の化学式(14)で表される。
TiC+2Cl
2 → TiCl
4+C ・・・(14)
TiC原料の場合、回折角度26度の領域のブロードなピークと、43度付近のピークとが確認される。グラファイトの(002)回折線は26度付近に生じるが、処理温度を高めるとグラファイト結晶が成長していくことにより、比表面積の減少が生じていることを確認できた。
【0066】
続いて、冷却トラップにより液化されたTiCl
4を90℃に加熱して気化させた後、950℃に保温した反応容器内においてこのTiCl
4とMg蒸気とを反応させた。この反応により、反応容器内には針状の金属チタン(Ti)が生成された。また、反応容器から排出されたMgCl
2をトラップ槽(750℃)にて液化させたのち、直流電気分解(電極間隔10mm、電圧1.5V)にてMgCl
2を分解した。この分解により生成した塩素ガスを、フィルタを介して取り出し、塩素ガス保存槽にて圧縮(10気圧)して液化した。また、電解槽の下部に溜まった溶融状態のMgを、気化器へ送った。
【0067】
上記工程により得られた金属チタン(Ti)を回収した後、真空中において1750℃まで昇温して溶融させ、その後降温して固化させた。固化した金属チタン(Ti)を分析したところ、純度が99.95%といった極めて高い数値となり、不純物としてMgと酸素が確認された。
【0068】
本発明による多孔質炭素材料の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、多孔質炭素生成工程に使用される金属炭化物や、第1の金属還元工程において使用される第2の金属は、上記実施形態において例示されたものに限られない。