(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011620
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20161006BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20161006BHJP
H01L 29/80 20060101ALI20161006BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
H01L29/78 301B
H01L29/80 Z
H01L21/316 X
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-524720(P2014-524720)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2013067319
(87)【国際公開番号】WO2014010405
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-157583(P2012-157583)
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】荒木 聖人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】高尾 将和
【審査官】
小堺 行彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0047798(US,A1)
【文献】
特開2004−288923(JP,A)
【文献】
特開2012−015304(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/088062(WO,A1)
【文献】
特開2010−267925(JP,A)
【文献】
特開2012−134311(JP,A)
【文献】
特開2011−171468(JP,A)
【文献】
特開2009−152640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/316
H01L 29/78
H01L 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層を準備する工程と、
前記半導体層上に、第1の反応物質および第2の反応物質を用いた第1の原子層堆積法により、第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に、第1の反応物質および第2の反応物質を用いた第2の原子層堆積法により、第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記半導体層上に前記ゲート電極を挟んでソース電極およびドレイン電極を形成する工程を備え、
前記第2の原子層堆積法に用いた前記第2の反応物質が、前記第1の原子層堆積法に用いた前記第2の反応物質よりも反応性が高く、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第1のゲート絶縁膜に比べて不純物の濃度が小さく、
前記第1の反応物質がトリメチルアルミニウムであり、
前記第1の原子層堆積法に用いた第2の反応物質がオゾンであり、
前記第2の原子層堆積法に用いた第2の反応物質が酸素プラズマであることを特徴とするトランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記不純物が水素原子および炭素原子の少なくとも一方であり、
前記第1のゲート絶縁膜および前記第2のゲート絶縁膜が酸化アルミニウムからなることを特徴とする請求項1に記載されたトランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート絶縁膜を備えたトランジスタおよびトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1(特開2010−98141号)に開示されるようなトランジスタが、電子回路における信号増幅器として用いられている。
【0003】
図4に、従来のトランジスタの一例を示す。なお、
図4は従来のトランジスタ200の断面図である。
【0004】
図4に示すトランジスタ200は、基板101上に、GaN層102aおよびAlGaN層102bからなる半導体層102を備えている。
【0005】
半導体層102上には、ソース電極105およびドレイン電極106が形成されている。
【0006】
ソース電極105およびドレイン電極106上には、接続用電極112が形成されている。
【0007】
半導体層102上の一部には、ゲート絶縁膜107が形成されている。
【0008】
ゲート絶縁膜107上の一部には、ゲート電極108が形成されている。
【0009】
ゲート絶縁膜107上の一部には、保護膜109が形成されている。
【0010】
ゲート電極108、保護膜109、接続用電極112上には、ポリイミド樹脂等からなる表面保護樹脂115が形成されている。
【0011】
上述した従来のトランジスタ200において、酸化アルミニウム等からなるゲート絶縁膜107は、段差被膜性、膜厚均一性、膜厚制御性に優れた原子
層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法で形成されることが一般的である。
【0012】
以下に、原子
層堆積法によるゲート絶縁膜107の形成方法の一例について説明する。
【0013】
まず、第1の反応物質であるTMA(トリメチルアルミニウム、Tri Methyl Aluminum、化学式:Al(CH
3)
3)を半導体層102上へ供給することにより、TMAを半導体層102の表面に吸着させる。次に、吸着せずに残ったTMAを排除する。次に、第2の反応物質であるO
3を半導体層102上へ供給することにより、半導体層102に吸着したTMAと反応させる。次に、反応せずに残ったO
3を排除することで、1原子層の酸化アルミニウムを形成する。この一連のサイクルを繰り返すことによって、複数原子層の酸化アルミニウムからなる所望のゲート絶縁膜107を形成する。
【0014】
しかしながら、O
3は反応性が高くないため、O
3がTMAと充分に反応せず、酸化アルミニウム中にH原子やC原子等の不純物が残ってしまう場合があった。その結果、酸化アルミニウム膜の密度が小さくなり、ゲート絶縁膜107の絶縁破壊電圧が小さくなってしまうことがあった。
【0015】
そこで、ゲート絶縁膜107の絶縁破壊電圧を向上させるために、上記の原子
層堆積法における第2の反応物質として、O
3の代わりに、O
2プラズマを供給する方法があった。
【0016】
あるいは、ゲート絶縁膜107の絶縁破壊電圧を向上させるための方法として、特許文献2(特開2009−152640号)に示されているように、上記の原子
層堆積法における第2の反応物質として、O
3を供給した後、適宜、O
2プラズマを照射する方法があった。
【0017】
O
2プラズマはO
3に比べてTMAとの反応性が高い。そのため、酸化アルミニウム膜中にH原子やC原子等の不純物が残りにくくなり、酸化アルミニウム膜の密度が大きくなる。
【0018】
図5は、上述した従来の方法で形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧(MV/cm)の一例を示している。
図5中の(A)は、第2の反応物質としてO
3を用いて形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を示している。また、
図5中の(B)は、第2の反応物質としてO
2プラズマを用いて形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を示している。ゲート絶縁膜の膜厚はいずれも、30nmである。
図5から分かるように、原子
層堆積法における第2の反応物質としてO
2プラズマを用いることによって、O
3を用いる場合に比べてゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−98141号
【特許文献2】特開2009−152640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述したO
2プラズマを用いてゲート絶縁膜107を形成した場合、O
2プラズマの反応性が高いため、半導体層102が損傷を受けやすい。このため、損傷を受けた半導体層102中の電子濃度が減少し、トランジスタ200のドレイン・ソース電極間を流れる電流が減少してしまうという問題があった。
【0021】
本発明の目的は、ドレイン・ソース電極間を流れる電流の低下を抑制しつつ、ゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧が高いトランジスタおよび、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明にかかるトランジスタの製造方法は、半導体層を準備する工程と、半導体層上に、第1の反応物質および第2の反応物質を用いた第1の原子層堆積法により、第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、第1のゲート絶縁膜上に、第1の反応物質および第2の反応物質を用いた第2の原子層堆積法により、第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、第2のゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、半導体層上に、ゲート電極を挟んでソース電極およびドレイン電極を形成する工程を備え、第2の原子層堆積法に用いた第2の反応物質が、第1の原子層堆積法に用いた第2の反応物質よりも反応性が高く、第2のゲート絶縁膜は、第1のゲート絶縁膜に比べて不純物の濃度が小さく、第1の反応物質がトリメチルアルミニウムであり、第1の原子層堆積法に用いた第2の反応物質がオゾ
ンであり、第2の原子層堆積法に用いた第2の反応物質が酸素プラズマであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ドレイン・ソース電極間を流れる電流の低下を抑制しつつ、ゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧が高いトランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1(A)〜(E)は、本発明の実施形態にかかるトランジスタ100の製造方法において適用する各工程を示す断面図である。
【
図2】
図2(F)〜(I)は、
図1の続きであり、本発明の実施形態にかかるトランジスタ100の製造方法において適用する各工程を示す断面図である。なお、
図2(I)は完成したトランジスタ100の断面図でもある。
【
図3】
図3は、本発明の方法で形成したゲート絶縁膜と、従来の方法で形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を比較したグラフである。
【
図4】
図4は、従来のトランジスタ200の断面図である。
【
図5】
図5は、従来の方法で形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下において、図面とともに、本発明を実施するための形態の一例について説明する。
【0027】
図2(I)に、本発明の実施形態にかかるトランジスタ100の断面図を示す。
【0028】
トランジスタ100は、窒化ガリウム、シリコン、炭化ケイ素等からなる基板1上に、窒化ガリウム層2aおよび窒化アルミニウムガリウム層2bからなる半導体層2を備えている。
【0029】
半導体層2上には、チタンやアルミニウム等を含む材料からなるソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
【0030】
ソース電極5およびドレイン電極6上には、金等を含む材料からなる接続用電極12が形成されている。
【0031】
半導体層2上の一部には、酸化アルミニウム等からなる第1のゲート絶縁膜7aが形成されている。第1のゲート絶縁膜7aは、不純物として水素原子および炭素原子の少なくとも一方を含んでいる。
【0032】
第1のゲート絶縁膜7a上には、酸化アルミニウム等からなる第2のゲート絶縁膜7bが形成されている。第2のゲート絶縁膜7bは、第1のゲート絶縁膜7aと同様に、不純物として水素原子および炭素原子の少なくとも一方を含んでおり、その濃度は第1のゲート絶縁膜7aよりも小さくなっている。この不純物濃度の小さいゲート絶縁膜7bをゲート絶縁膜7中に備えることによって、トランジスタ100におけるゲート絶縁膜7の絶縁破壊電圧が高くなっている。
【0033】
ここで、第1のゲート絶縁膜7aは、第1の反応物質としてTMA、第2の反応物質としてオゾンを用いた原子
層堆積法により形成されている。第1のゲート絶縁膜7aにおいては、原子
層堆積法に反応性の低いオゾンを用いているため、オゾンの照射による半導体層2の損傷はほとんどない。
【0034】
一方、第2のゲート絶縁膜7bは、第1のゲート絶縁膜7aとは異なり、第1の反応物質としてTMA、第2の反応物質として酸素プラズマを用いた原子
層堆積法により形成されている。第2のゲート絶縁膜7bは、第1のゲート絶縁膜7a上に形成されるため、反応性の高い酸素プラズマを用いても、酸素プラズマの照射による半導体層2への損傷を少なくすることができる。すなわち、本発明によれば、第1のゲート絶縁膜7aおよび第2のゲート絶縁膜7bの形成の際に、半導体層2への損傷を少なくし、半導体層2中の電子濃度の減少を抑制することができる。したがって、電子濃度の減少に伴うドレイン・ソース電極間を流れる電流の低下を抑制することができる。
【0035】
本発明の実施形態にかかるトランジスタ100は、上述したゲート絶縁膜7を備えることにより、ドレイン・ソース電極間を流れる電流の低下を抑制しつつ、ゲート絶縁膜7の絶縁破壊電圧を高くすることができる。
【0036】
第2のゲート絶縁膜7b上の一部には、金やニッケル等を含む材料からなるゲート電極8が形成されている。
【0037】
第2のゲート絶縁膜7b上の一部には、窒化ケイ素等からなる保護膜9が形成されている。
【0038】
保護膜9および接続用電極12上には、ポリイミド樹脂等の表面保護樹脂15が形成されている。
【0039】
次に、上述した構成からなる、本発明の実施形態にかかるトランジスタ100の製造方法の一例を説明する。
【0040】
図1(A)〜
図2(I)はそれぞれ、本実施形態にかかるトランジスタ100の製造法において適用する各工程を示す断面図である。なお、
図1(C)〜
図2(I)においては、
図1(B)におけるA領域を拡大して示している。
【0041】
まず、
図1(A)に示すように、窒化ガリウム、シリコン、炭化ケイ素等からなる基板1上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、窒化ガリウム層2aを形成する。続いて、窒化ガリウム層2a上に、MOCVD法により、窒化アルミニウムガリウム層2bを形成し、半導体層2を完成させる。
【0042】
次に、
図1(B)に示すように、ドライエッチング等により、半導体層2の一部に必要な深さの溝3を形成し、半導体層2をAの領域ごとに電気的に分離する。
【0043】
必要であれば、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、半導体層2の一部を除去し、トランジスタ100にノーマリオフ化等の機能を持たせるためのゲートリセス(図示せず)を形成する。
【0044】
次に、
図1(C)に示すように、半導体層2上にフォトリソグラフィと真空蒸着法により、チタン、アルミニウム等を含む材料からなるソース電極5およびドレイン電極6を形成する。その後、必要であれば、熱処理により、ソース電極5およびドレイン電極6のそれぞれと半導体層2の接触面をオーミック接触にする。
【0045】
次に、
図1(D)に示すように、以下に示すステップ1〜4よりなる第1の原子
層堆積法により、半導体層2およびソース電極5およびドレイン電極6上に、酸化アルミニウムからなる第1のゲート絶縁膜7aを形成する。
【0046】
まず、ステップ1では、基板1が収容された処理室内に、第1の反応物質であるTMAを供給する。この時、1原子層分のTMAが半導体層2およびソース電極5およびドレイン電極6上に吸着する。
【0047】
ステップ2では、吸着せずに残ったTMAを処理室内からドライポンプ等で排除する。また、窒素ガス等の不活性ガスを処理室内に一定時間供給する。
【0048】
ステップ3では、オゾンを処理室内に導入する。この時、ステップ1において吸着したTMAとオゾンとが反応をして、1原子層の酸化アルミニウムが形成される。
【0049】
ステップ4では、処理室内からオゾンをドライポンプ等で排除する。また、窒素ガス等の不活性ガスを処理室内に一定時間供給する。
【0050】
ステップ1から4を所定の回数にわたって繰り返すことにより、所定の膜厚の酸化アルミニウムからなる第1のゲート絶縁膜7aが形成される。
【0051】
次に、
図1(E)に示すように、以下に示すステップ1から4よりなる第2の原子
層堆積法により、酸化アルミニウムからなる第2のゲート絶縁膜7bを、第1のゲート絶縁膜7a上に形成する。
【0052】
まず、ステップ1では、上記の第1の原子
層堆積法と同様に、第1の反応物質であるTMAを処理室内に供給する。この時、第1のゲート絶縁膜7a上に、TMAが堆積する。
【0053】
ステップ2では、吸着せずに残ったTMAを処理室内からドライポンプ等で排除する。また、窒素ガス等の不活性ガスを処理室内に一定時間供給する。
【0054】
ステップ3では、酸素ガスを処理室内に導入し、処理室内に設けられた電極間に高周波電力を印加することにより、酸素ガスをプラズマ励起する。プラズマ励起された酸素ガス(酸素プラズマ)は、第1のゲート絶縁膜7a上に堆積されたTMAと反応する。
【0055】
ステップ4として、処理室から酸素ガスをドライポンプ等で排除し、電極間への高周波電力の印加を停止する。また、窒素ガス等の不活性ガスを一定時間処理室内に流す。
【0056】
ステップ1から4を所定の回数にわたって繰り返すことにより、所定の膜厚の第2のゲート絶縁膜7bが第1のゲート絶縁膜7a上に形成される。
【0057】
酸素プラズマはオゾンに比べて反応性が高いため、酸化アルミニウムからなる第2のゲート絶縁膜7bの水素原子や炭素原子等の不純物濃度は、第1のゲート絶縁膜7aに比べて小さくなる。つまり、トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜7aおよび第2のゲート絶縁膜7bに含まれる不純物の濃度は、第1のゲート絶縁膜7aの半導体層2側の表面から第2のゲート絶縁膜7bのゲート電極8側の上面にかけて減少することになる。この結果、上記のように、ゲート絶縁膜7中に不純物濃度の小さい第2のゲート絶縁膜7bを形成することができるため、トランジスタ100におけるゲート絶縁膜7の絶縁破壊電圧が高くなる。
【0058】
なお、本実施形態の製造方法では、第1のゲート絶縁膜7aを形成した後に酸素プラズマを用いて第2のゲート絶縁膜7bを形成しているので、酸素プラズマが第1のゲート絶縁膜7aに遮られて半導体層2まで到達しにくい。したがって、半導体層2は、酸素プラズマの照射によって損傷しにくい。
【0059】
次に、
図2(F)に示すように、フォトリソグラフィと真空蒸着法により、第2のゲート絶縁膜7b上に、金やニッケル等を含む材料からなるゲート電極8を形成する。
【0060】
次に、
図2(G)に示すように、CVD法により、ソース電極5およびドレイン電極6間に窒化ケイ素等からなる保護膜9を形成する。続いて、ゲート電極8上の保護膜9と、ソース電極5およびドレイン電極6上の第1のゲート絶縁膜7aおよび第2のゲート絶縁膜7bおよび保護膜9を、フォトリソグラフィとドライエッチングにより除去することで開口10を形成し、ゲート電極8
の一部、およびソース電極5
の一部、およびドレイン電極6の一部を露出させる。
【0061】
次に、
図2(H)に示すように、ソース電極5およびドレイン電極6の抵抗を低減させるために、フォトリソグラフィと真空蒸着法により金やアルミニウム等を含む材料からなる接続用電極12、12を形成する。
【0062】
最後に、
図2(I)に示すように、保護膜9および接続用電極12上に、接続用電極12,12の一部を露出させて、ポリイミド樹脂等の表面保護樹脂15を形成し、トランジスタ100を完成させる。
【0063】
以上のように、本発明においては、ゲート絶縁膜7を第1のゲート絶縁膜7aおよび第2のゲート絶縁膜7bで形成することにより、半導体層2への損傷を抑制しつつ、ゲート絶縁膜7中に不純物濃度が小さい層を形成することができる。その結果、トランジスタ100のドレイン・ソース電極間を流れる電流の低下を抑制しつつ、ゲート絶縁膜7の絶縁破壊電圧を向上させることができる。
【0064】
図3は、本発明の方法で形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧と、従来の方法で形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を比較したグラフである。
図3中の(A)は、第1の反応物質としてTMAを、第2の反応物質としてオゾンを用いた従来の原子
層堆積法により形成したゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を示している。
図3中の(B)は、第1の反応物質としてTMAを、第2の反応物質として酸素プラズマを用いた従来の原子
層堆積法により形成したゲート絶縁膜の
絶縁破壊電圧を示している。
図3中の(C)は、本実施形態で示した方法により形成した、第1のゲート絶縁膜および第2のゲート絶縁膜からなるゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧を示している。
【0065】
図3中の(A)〜(C)におけるゲート絶縁膜の膜厚はそれぞれ、同一の30nmである。
図3中の(C)における第1のゲート絶縁膜および第2のゲート絶縁膜の膜厚はそれぞれ15nmである。
【0066】
図3から分かるように、
図3中の(C)のゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧は、
図3中の(A)のゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧に比べて高く、
図3中の(B)のゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧と比べても遜色がない。
【0067】
なお、本発明にかかるトランジスタおよび、その製造方法は本実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0068】
例えば、本実施形態では、半導体層2として窒化ガリウム層2aや窒化アルミニウムガリウム層2bを用いているが、砒化ガリウム層や砒化アルミニウムガリウム層等であっても良い。また、第1の原子
層堆積法において、第2の反応物質としてオゾンを用いているが、水蒸気等を用いても良い。また、第2の原子
層堆積法において、第2の反応物質として酸素プラズマを用いているが、プラズマ励起した二酸化炭素、水蒸気等を用いても良い。また、第1のゲート絶縁膜7a、第2のゲート絶縁膜7bの材料として、酸化アルミニウムを用いているが、酸化ケイ素、酸化ハフニウム等の酸化物や、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物等の絶縁物材料を用いても良い。また、窒化物材料の形成には、第1の原子層堆積法における第2の反応物質に窒素やアンモニア等を用い、第2の原子層堆積法における第2の反応物質にプラズマ励起した窒素やアンモニア等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 基板
2 半導体層
2a 窒化ガリウム層
2b 窒化アルミニウムガリウム層
3 溝
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 ゲート絶縁膜
7a 第1のゲート絶縁膜
7b 第2のゲート絶縁膜
8 ゲート電極
9 保護膜
10 開口
12 接続用電極
15 表面保護樹脂
100 トランジスタ