(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導通スルーホールが形成される第1の領域と前記非導通スルーホールが形成される第2の領域との間の第3の領域に形成され、信号を伝達するマイクロストリップ配線に接続される結合アンテナを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の誘電体共振器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下では、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本発明にかかる誘電体共振器は、複数個を多段接続して利用することで誘電体フィルタ又は誘電体デュプレクサとして利用できるものである。このとき、本発明にかかる誘電体共振器は、1つ基板(例えば、誘電体基板)に多段接続した複数個の誘電体共振器を形成することができる。これは、本発明にかかる誘電体共振器が多段接続可能な構成を有しているためである。そこで、実施の形態1では、本発明にかかる誘電体共振器の単体での構成について説明する。
【0013】
請求項1
図1に、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の斜視図を示す。
図1に示すように、実施の形態1にかかる誘電体共振器1は、基板20に複数の導通スルーホール10及び複数の非導通スルーホール11が形成される。詳しくは後述するが、基板20は、表面側に第1の導体層を設け、裏面側に第2の導体層を設け、第1の導体層と第2の導体層との間に誘電体層を設けたものである。
【0014】
導通スルーホール10は、基板20を貫通し、少なくとも側壁が導体によって覆われたスルーホールである。実施の形態1では導通スルーホールは、側壁が例えば、基板20の第1、第2の導体層と同じ材量の導体で覆われるものを利用する。なお、導通スルーホール10は、導体が充填されていても構わない。そして、複数の導通スルーホール10は、第1の環状線に沿って形成される。実施の形態1では、第1の環状線は、円形の形状とした。また、
図1では、第1の環状線については明示していないが、導通スルーホール10が形成されている領域の内側に沿って規定されているものである。
【0015】
非導通スルーホール11は、基板20を貫通し、側壁が非導体によって覆われる又は誘電体層が露出するスルーホールである。実施の形態1では、非導通スルーホール11は、側壁が基板20の誘電体層が露出するように形成されるものを利用する。なお、非導通スルーホール11は、側壁が非導体の部材で覆われていても良い。そして、複数の非導通スルーホール11は、第1の環状線の内側に規定される第2の環状線に沿って形成される。実施の形態1では、第2の環状線は、円形の形状とした。つまり、第1の環状線と第2の環状線は相似形状を有する。また、
図1では、第2の環状線については明示していないが
非導通スルーホール11が形成されている領域の内側に沿って規定されているものである。
【0016】
続いて、
図2に実施の形態1にかかる誘電体共振器1の上面図を示す。
図2に示すように、誘電体共振器1では、複数の導通スルーホール10が形成される第1の環状線の内径をφ2、複数の非導通スルーホール
11が形成される第2の環状線の内径をφ1とした場合、2つの環状線の関係がφ1<φ2となる。
【0017】
続いて、
図3に実施の形態1にかかる誘電体共振器1の断面図を示す。
図3に示す例は、
図2に示した誘電体共振器1のIII−III線に沿った断面を示すものである。
図3に示すように、誘電体共振器1の基板20は、第1の導体層21、第2の導体層22、誘電体層23を有する。第1の導体層21は、基板20の表面側に形成される。第2の導体層22は基板20の裏面側に形成される。誘電体層23は、第1の導体層21及び第2の導体層22に挟まれる領域に設けられる。
【0018】
そして、導通スルーホール10及び非導通スルーホール11は、基板20を貫通するように形成される。ここで、実施の形態1では、導通スルーホール10の側壁は、第1の導体層21及び第2の導体層22と同じ素材の部材で覆われている。これにより、第1の導体層21と第2の導体層22は導通するホール10を介して電気的に接続される状態となる。また、非導通スルーホール11の側壁は、誘電体層23が露出する状態となっている。
【0019】
実施の形態1にかかる誘電体共振器1では、上記構成によって共振器を形成することで、第1の導体層21及び第2の導体層22により形成される電極の大きさが制限されない。また、実施の形態1にかかる誘電体共振器1では、第1の環状線に沿って導通スルーホール10を複数設けることで、信号
を導通スルーホール10で囲まれる領域に閉じ込めることができる。そして、実施の形態1では、導通スルーホール10で囲まれる領域内に形成された複数の非導通スルーホール11で囲まれる領域を共振器として機能させることができる。
【0020】
実施の形態1にかかる誘電体共振器1では、マイクロストリップ配線及びマイクロストリップ配線に接続される結合アンテナを介して共振器への信号の入出力を行う。そこで、マイクロストリップ配線及び結合アンテナの配置について以下で説明する。
図4に実施の形態1にかかる誘電体共振器1のマイクロストリップ配線及び結合アンテナの配置例を示す上面図を示す。
【0021】
マイクロストリップ配線は、基板20の内部配線、又は、基板20の表面に設けられる表面配線として形成することができる。そこで、
図4では、入力側のマイクロストリップ配線30を内部配線で形成し、出力側のマイクロストリップ配線31を表面配線で形成した例を示した。
【0022】
続いて、
図4に示した上面図のV−V線に沿った実施の形態1にかかる誘電体共振器1の断面図を
図5に示す。
図5に示すように、マイクロストリップ配線30は、誘電体層23内に形成される。このマイクロストリップ配線30は、導通スルーホール10が形成される第1の領域の外側から、導通スルーホール10が形成される第1の領域と非導通スルーホール11が形成される第2の領域との間の第3の領域まで延在するように形成される。そして、マイクロストリップ配線30の端部近傍に結合アンテナ32が設けられる。結合アンテナ
32は、棒状の形状であって、導体で形成されるものである。結合アンテナ
32は、マイクロストリップ配線30と接続される。また、結合アンテナ32と、非導通スルーホール11との間の距離d1の大きさによって結合アンテナ32と共振器との結合係数が決定される。
【0023】
また、マイクロストリップ配線31は、基板20の表面に形成される。このマイクロストリップ配線31は、導通スルーホール10が形成される第1の領域と非導通スルーホール11が形成される第2の領域との間の第3の領域から、導通スルーホール10が形成される第1の領域の外側、まで延在するように形成される。そして、マイクロストリップ配線31の端部近傍に結合アンテナ33が設けられる。結合アンテナ33は、棒状の形状であって、導体で形成されるものである。結合アンテナ33は、マイクロストリップ配線
31と接続される。また、結合アンテナ33と、非導通スルーホール11との間の距離d2の大きさによって結合アンテナ33と共振器との結合係数が決定される。
【0024】
続いて、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の特性について説明する。ここでは、第1の環状線の内径φ2を29mm、第2の環状線の内径φ1を17mm、導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の内径を1.5mm、基板20を一辺の長さが40mmの正方形とした場合の誘電体共振器1の特性について説明する。
【0025】
なお、第2の環状線の内径φ1を大きくすることで共振周波数を低くすることができ、内径φ1を小さくすることで共振周波数を高くすることができる。また、内径φ1と内径φ2との差を大きくすることでQ値を大きくすることができる。つまり、内径φ1と内径φ2との差を大きくすることで、基本モード(例えば、基本波)に対する高次モード(例えば、2次以上の高調波)との差を大きくすることができる。
【0026】
図6に基板20の誘電体層23の厚さ(以下、基板厚と称す)を変化させた場合の無負荷Q値の変動を示すグラフを示す。
図6に示すように、実施の形態1にかかる
誘電体共振器1は、基板厚が厚くなるほどQ値を高めることができる。
【0027】
図7に基板20の基板厚を変化させた場合の基本波の周波数f1と二次高調波の周波数f2の変動を示すグラフを示す。
図7に示すように、実施の形態1にかかる
誘電体共振器1は、基板厚を厚くするほど基本波の周波数f1と二次高調波の周波数f2との共振周波数を高めることができるが、この周波数は一定の周波数に対して漸近するような変化となる。
図7に示す例では、基板厚を2mm以上にしても共振周波数の変化は小さくなる。
【0028】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1は、電極の大きさに制限がない誘電体共振器を実現することができる。また、実施の形態1にかかる誘電体共振器1は、共振器の大きさが導通スルーホール10の配置位置を決定する第1の環状線の内径により規定される。つまり、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いることで、1つの基板20に複数の共振器を設けても、複数の共振器を共通の電極で
動作させることが可能になる。また、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いることで、1つの基板20内で複数の共振器を多段接続することで誘電体フィルタ或いは誘電体デュプレクサを構成することができる。
【0029】
また、実施の形態1にかかる誘電体共振器1は、基板20に導通スルーホール10及び非導通スルーホール11を設けることで形成されるため、小さな体積で共振器を実現することができる。また、
図6及び
図7に示すように、実施の形態1にかかる誘電体共振器1は、薄い基板厚で共振器を実現できるため、共振器の薄型化を実現することができる。
【0030】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の第1の環状線と第2の環状線の別の形態について説明する。そこで、
図8に実施の形態2にかかる誘電体共振器2の斜視図を示す。また、
図9に実施の形態2にかかる誘電体共振器2の上面図を示す。
【0031】
図8及び
図9に示すように、実施の形態2にかかる誘電体共振器2は、複数の導通スルーホール10が形成される第1の領域の内径を規定する第1の環状線、及び、複数の非導通スルーホール11が形成される第2の領域の内径を規定する第2の環状線が多角形の形状(
図8、9に示す例では、四角形)を有する。なお、第1の環状線及び第2の環状線の形状は、多角形であれば良く、例えば六角形或いは八角形
であっても良い。
【0032】
実施の形態2にかかる誘電体共振器2では、第1の環状線及び第2の環状線の形状が多角形であるが、第2の環状線の内径φ1の大きさにより共振周波数を設定し、第1の環状線の内径φ2の大きさにより共振器のQ値を調節することができる。
【0033】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の第1、第2の環状線の形状は、円形に限られず多角形であっても、実施の形態1にかかる誘電体共振器1と同様な誘電体共振器を実現することができることがわかる。
【0034】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の別の形態について説明する。そこで、
図10に実施の形態3にかかる誘電体共振器3の斜視図を示す。また、
図11に実施の形態3にかかる誘電体共振器3の上面図を示す。
【0035】
図10及び
図11に示すように、実施の形態3にかかる誘電体共振器3は、導通スルーホール10の一部が複数のスルーホールが連結されたスリット状に形成される。また、実施の形態3にかかる誘電体共振器3は、非導通スルーホール11に関しても、一部が
複数の非導通スルーホールが連結されたスリット状に形成される。ここで、誘電体共振器3においても、導通スルーホール10及び非導通スルーホール11は複数のスルーホールに分割されている必要がある。これは、共振部として機能する非導通スルーホールで囲まれた領域が、導通スルーホール10の外側の領域
とを連続した電極及び誘電体としなければ1つの基板20において共振器を多段構成とすることが出来ないためである。
【0036】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の形状は、一部がスリット形状であっても、実施の形態1にかかる誘電体共振器1と同様な誘電体共振器を実現することができることがわかる。
【0037】
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の別の形態について説明する。そこで、
図12に実施の形態4にかかる誘電体共振器4の斜視図を示す。また、
図13に実施の形態4にかかる誘電体共振器4の上面図を示す。
【0038】
図12及び
図13に示すように、実施の形態4にかかる誘電体共振器4は、導通スルーホール10の一部が複数のスルーホールが連結されたスリット状に形成される。また、実施の形態4にかかる誘電体共振器4は、スリット状に形成された
導通スルーホールと扇形に形成された非導通スルーホールとを有する。誘電体共振器4では、複数の非導通スルーホールで囲まれる領域を規定する第2の環状線は円形の形状となる。誘電体共振器4においても、導通スルーホール10及び非導通スルーホール11は複数のスルーホールに分割されている必要がある。これは、共振部として機能する非導通スルーホールで囲まれた領域が、導通スルーホール10の外側の領域
とを連続した電極及び誘電体としなければ1つの基板20において共振器を多段構成とすることが出来ないためである。
【0039】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の形状は、一部がスリット形状又は扇形であっても、実施の形態1にかかる誘電体共振器1と同様な誘電体共振器を実現することができることがわかる。
【0040】
実施の形態5
実施の形態5では、実施の形態2にかかる誘電体共振器2の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の別の形態について説明する。そこで、
図14に実施の形態5にかかる誘電体共振器5の斜視図を示す。また、
図15に実施の形態5にかかる誘電体共振器5の上面図を示す。
【0041】
図14及び
図15に示すように、実施の形態5にかかる誘電体共振器5は、導通スルーホール10の一部が複数のスルーホールが連結されたスリット状に形成される。また、実施の形態5にかかる誘電体共振器5は、非導通スルーホール11に関しても、一部が
複数の非導通スルーホールが連結されたスリット状に形成される。ここで、誘電体共振器5においても、導通スルーホール10及び非導通スルーホール11は複数のスルーホールに分割されている必要がある。これは、共振部として機能する非導通スルーホールで囲まれた領域が、導通スルーホール10の外側の領域
とを連続した電極及び誘電体としなければ1つの基板20において共振器を多段構成とすることが出来ないためである。
【0042】
上記説明より、実施の形態2にかかる誘電体共振器2の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の形状は、一部がスリット形状であっても、実施の形態2にかかる誘電体共振器2と同様な誘電体共振器を実現することができることがわかる。
【0043】
実施の形態6
実施の形態6では、実施の形態2にかかる誘電体共振器2の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の別の形態について説明する。そこで、
図16に実施の形態6にかかる誘電体共振器6の斜視図を示す。また、
図17に実施の形態6にかかる誘電体共振器6の上面図を示す。
【0044】
図16及び
図17に示すように、実施の形態6にかかる誘電体共振器6は、導通スルーホール10の一部が複数のスルーホールが連結されたスリット状に形成される。また、実施の形態6にかかる誘電体共振器6は、スリット状に形成された
導通スルーホールとL字型に形成された非導通スルーホールとを有する。誘電体共振器6では、複数の非導通スルーホールで囲まれる領域を規定する第2の環状線は多角形(例えば、四角形)の形状となる。誘電体共振器6においても、導通スルーホール10及び非導通スルーホール11は複数のスルーホールに分割されている必要がある。これは、共振部として機能する非導通スルーホールで囲まれた領域が、導通スルーホール10の外側の領域
とを連続した電極及び誘電体としなければ1つの基板20において共振器を多段構成とすることが出来ないためである。
【0045】
上記説明より、実施の形態
6にかかる誘電体共振器
6の導通スルーホール10及び非導通スルーホール11の形状は、一部がスリット形状又はL字型であっても、実施の形態2にかかる誘電体共振器2と同様な誘電体共振器を実現することができることがわかる。
【0046】
実施の形態7
実施の形態7では、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を利用した誘電体フィルタ7について説明する。そこで、
図18に実施の形態7にかかる誘電体フィルタ7の斜視図を示し、
図19に誘電体フィルタ7の上面図を示す。
【0047】
図18に示すように、実施の形態7にかかる誘電体フィルタ7は、1つの基板20に、1組の複数の導通スルーホール10と複数の非導通スルーホール11とにより形成される共振部が複数個形成される。また、誘電体フィルタ7は、共振部が多段接続される。
【0048】
図19では、共振部に40a〜40fの符号を付した。実施の形態7にかかる誘電体フィルタ7は、共振部40a〜40fのうち隣り合う第1の共振部と第2の共振部が
対向する領域の一部に導通スルーホールが形成されない開口部を有する。そして、誘電体フィルタ7は、第1の共振部の開口部と第2の共振部の開口部とを接続し、第1の環状線の幅よりも狭い幅で配置される第1、第2の接続線に沿って複数の導通スルーホールが形成される接続部41a〜
41eを有する。
図19に示す例では、共振部40a、40bとの間を接続部41aが接続する。共振部40b、40cとの間を接続部41bが接続する。共振部40c、40dとの間を接続部41cが接続する。共振部40d、40eとの間を接続部41dが接続する。共振部40e、40fとの間を接続部41eが接続する。
【0049】
図19に示す例では、誘電体フィルタ7は、共振部40aから信号が入力され、共振部40fから信号を出力する。また、誘電体フィルタ7では接続部41a〜41eの幅及び長さを調節することにより共振部間の結合係数を調節することができる。
【0050】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いることで1つの基板20に複数の共振器を配置し、かつ、複数の共振器を多段接続して誘電体フィルタを構成することができる。これは、実施の形態1にかかる誘電体共振器1が電極に大きさの制限がなく、複数の共振器に対して同一の電極を用いることができるためである。実施の形態7にかかる誘電体フィルタ7によれば、1つの基板20上に誘電体フィルタを構成できるため、誘電体フィルタの小面積化及び薄型化を実現することができる。
【0051】
実施の形態8
実施の形態8では、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を利用した誘電体デュプレクサ8について説明する。そこで、
図20に実施の形態8にかかる誘電体デュプレクサ8の斜視図を示し、
図21に誘電体デュプレクサ8の上面図を示す。
【0052】
図20に示すように、実施の形態8にかかる誘電体デュプレクサ8は、1つの基板20に、2組の誘電体フィルタが形成される。そして、2組の誘電体フィルタは、それぞれ1組の複数の導通スルーホール10と複数の非導通スルーホール11とにより形成される共振部が複数個形成される。また、誘電体フィルタは、それぞれ共振部が多段接続される。
【0053】
また、
図21に示すように、実施の形態8にかかる誘電体デュプレクサ8は、共振部42a〜42dにより第1の誘電体フィルタ(例えば、送信用誘電体フィルタ)を構成し、共振部44a〜44dにより第2の誘電体フィルタ(例えば、受信用誘電体フィルタ)を構成する。また、送信用誘電体フィルタ及び受信用誘電体フィルタは、それぞれ複数の共振部のうち隣り合う第1の共振部と第2の共振部が、
対向する領域の一部に導通スルーホールが形成されない開口部を有する。そして、誘電体フィルタ7は、第1の共振部の開口部と第2の共振部の開口部とを接続し、第1の環状線の幅よりも狭い幅で配置される第1、第2の接続線に沿って複数の導通スルーホールが形成される接続部を有する。
図21に示す例では、共振部42a、42bとの間を接続部43aが接続する。共振部42b、42cとの間を接続部43bが接続する。共振部42c、42dとの間を接続部43cが接続する。共振部44a、44bとの間を接続部45aが接続する。共振部44b、44cとの間を接続部45bが接続する。共振部44c、44dとの間を接続部45cが接続する。
【0054】
また、
図21に示すように、誘電体デュプレクサ8は、複数の誘電体フィルタ
において、一端に配置される共振部が1つのマイクロストリップ配線に接続される結合アンテナをそれぞれ有し、他端に配置される共振部が異なるマイクロストリップ配線に接続される結合アンテナをそれぞれ有する。なお、
図21では、結合アンテナについては明示していないが、
共振部42aが送信入力信号IN1を伝達する結合アンテナ及びマイクロストリップ配線を有し、
共振部42dが送信出力信号OUT1を伝達する結合アンテナ及びマイクロストリップ配線を有する。また、
共振部44aが受信入力信号IN2を伝達する結合アンテナ及びマイクロストリップ配線を有し、
共振部44dが受信出力信号OUT2を伝達する結合アンテナ及びマイクロストリップ配線を有する。そして、
共振部42dの結合アンテナ及び
共振部44aの結合アンテナが接続されるマイクロストリップ配線は、送信出力信号OUT1及び受信入力信号IN1により共有される。
【0055】
また、誘電体デュプレクサ8では、接続部
43a〜
43c、45a〜45cの幅及び長さを調節することにより共振部間の結合係数を調節することができる。
【0056】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いることで1つの基板20に複数の共振器を配置し、かつ、複数の共振器を多段接続して複数の誘電体フィルタを構成することができる。これは、実施の形態1にかかる誘電体共振器1が電極に大きさの制限がなく、複数の共振器に対して同一の電極を用いることができるためである。実施の形態8にかかる誘電体デュプレクサ8によれば、1つの基板20上に誘電体デュプレクサを構成できるため、誘電体デュプレクサの小面積化及び薄型化を実現することができる。
【0057】
実施の形態9
実施の形態9では、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いて無線信号を送信する送信機のバンドパスフィルタを構成する例について説明する。そこで、実施の形態9にかかる送信機のブロック図を
図22に示す。なお、送信機は、マイクロストリップ配線に接続され、所定の機能を発揮する機能回路の一例を示したものである。実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いて構成されるフィルタ回路を利用する回路であれば本発明を利用可能である。
【0058】
図22に示すように、実施の形態9にかかる送信機は、DAC(Digital to Analog Converter)50、信号形式変換回路51、アッテネータ52、55、57、発振器53、ミキサ54、プリアンプ56、パワーアンプ58、アイソレータ59、バンドパスフィルタ60を有する。
【0059】
図22に示す送信機は、DAC50を用いてデジタル信号によりI信号及びQ信号をアナログ信号に変換する。このとき、DAC50の出力信号は差動信号となっているため、信号形式変換回路51は、この差動信号をシングルエンド信号に変換する。そして、アッテネータ52で信号を減衰させた後、ミキサ54において発振器53で生成されるローカル信号を用いて送信信号を変調する。この変調信号はアッテネータ55において減衰処理された後にプリアンプ56により増幅される。プリアンプ56によって増幅された信号は、アッテネータ57で減衰された後にパワーアンプ58で増幅された後に送信信号となる。そして、送信信号は、アイソレータ59、バンドパスフィルタ60及びアンテナ(不図示)を介して送信される。なお、アイソレータ59は、アンテナにより受信された受信信号が送信機側に漏れることを防止するものである。また、バンドパスフィルタ60は、送信信号のノイズを除去するものである。また、
図22に示すように、送信機を構成する各素子は、マイクロストリップ配線MSLにより接続される。
【0060】
実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いることで、このバンドパスフィルタ60を含む送信機を1つの基板上に形成することが可能になる。そこで、実施の形態9にかかる送信機9の斜視図を
図23に示す。
図23に示すように、実施の形態9にかかる送信機9は、第1の基板L1にバンドパスフィルタ60を除く送信機の回路が形成される。また、実施の形態9にかかる送信機9は、第1の基板L1が積層される第2の基板L2にバンドパスフィルタ60が形成される。また、第1の基板L1と第2の基板L2との間には、第2の基板L2の表面を覆うように導体層LGが形成される。なお、
図23に示す例では、バンドパスフィルタ60を除く送信機の回路が形成される第1の基板と、バンドパスフィルタ60が形成される第2の基板とを積層した例を示したが、バンドパスフィルタ60を含む送信機を1層の基板に形成することも可能である。
【0061】
続いて、第2の基板L2の構造を示す実施の形態9にかかる送信機9の斜視図を
図24に示す。
図24に示すように、実施の形態9にかかる送信機9では、第2の基板L2に複数の共振部が接続部により接続されるバンドパスフィルタ60が形成される。また、
図24に示すように、第1の基板L1のマイクロストリップ配線とバンドパスフィルタ60とは、第1の基板L1を貫通し、第2の基板L2のバンドパスフィルタ60の初段の共振部に達するように形成される結合アンテナCantが形成される。また、
図24に示すように、第2の基板L2の表面には、第2の基板L2を覆うように導体層LGが形成される。
【0062】
上記説明より、実施の形態1にかかる誘電体共振器1を用いることで、送信機9を多層化された基板に形成することができる。これにより、実施の形態9にかかる送信機9は小型化及び薄型化が可能になる。
【0063】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0064】
この出願は、2013年1月24日に出願された日本出願特願2013−011297を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。