(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011656
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20161006BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-33457(P2015-33457)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-158342(P2016-158342A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年5月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誉人
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第766504(EP,A2)
【文献】
米国特許第5835362(US,A)
【文献】
特開平07−298641(JP,A)
【文献】
特開2011−172469(JP,A)
【文献】
特開2004−056984(JP,A)
【文献】
特開2002−044949(JP,A)
【文献】
特開平09−308267(JP,A)
【文献】
特開2006−310490(JP,A)
【文献】
特表平8−510112(JP,A)
【文献】
特開2014−54103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路の正,負極間に直列接続されて相毎の相アームを形成する複数の半導体パワーモジュールと、半導体パワーモジュールに取り付けられるヒートシンクと、直流回路の正,負極用の接続導体と、平滑コンデンサ及び相毎の出力導体の各部材を主体として構成されるインバータ装置の配置において、
前記直列接続される半導体パワーモジュールの各相アームのうち、同極性毎に半導体パワーモジュールを積み重ね、且つ積み重ねた正極側および負極側の各ヒートシンク間に間隙を設けて半導体パワーモジュールを配置し、
前記各ヒートシンク間の間隙に、絶縁部材を挟んで並行状態に前記直流回路の正,負極用の接続導体を配置し、
前記直流回路の各接続導体の一端側に、それぞれ正,負極に対応する極性の半導体パワーモジュールの端子を固着し、直流回路の各接続導体の他端は前記ヒートシンク間の間隙を通して導出し、
導出された直流回路の接続導体に前記平滑コンデンサを取り付けると共に、
前記半導体パワーモジュールが固着された接続導体との接続端子近辺で、直流回路の正,負極の接続導体と直交して、沿った状態の前記出力導体に各半導体パワーモジュールの交流出力側の端子を接続して構成することを特徴としたインバータ装置。
【請求項2】
前記平滑コンデンサは、正、負極用の接続導体に互いに千鳥状に配置したことを特徴とした請求項1記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記正、負極用の接続導体は、板状の導体で形成され、前記半導体パワーモジュールの接続端子部近辺で略90度に屈曲されたことを特徴とした請求項1又は2記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置に係わり、特に回路インダクタンスを低減したインバータ装置の部材配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置として、例えば単相インバータの場合、
図3で示すように、相毎の複数の半導体パワーモジュール(以下はIGBTを例とする)IGBT1〜IGBT4と、平滑コンデンサC及び直流回路用の接続導体P,N、出力導体(出力端子)U,Vの各部材を主体として構成される。この装置における各部材の配置構造は、
図4で示すように構成されているのが一般的である。
【0003】
すなわち、U相アームとなる直列接続されたIGBT1とIGBT2が対向して前後方向(平面図では上下方向)に配置され、これと平行隣接してV相アームとなる直列接続されたIGBT3とIGBT4が対向してそれぞれ正極及び負極の接続導体P,Nに各別に接続される。接続導体P,Nは図面左方向に導出されて直角方向に屈曲し、出力導体U,Vは図面右方向に導出されている。
また、平滑コンデンサCは、IGBTと屈曲された接続導体P,N間に配置されている。Inは絶縁部材、Hはヒートシンクである。
【0004】
なお、回路インダクタンスを低減したインバータ装置については特許文献1や特許文献2などか公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−42663
【特許文献2】特開2006−262623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4で示すような部材配置の場合、特に各IGBTの接続端子部近辺で、次の2つの理由により回路のインダクタンスが大きくなる問題を有している。
(1)電流の導通経路が屈折するため回路ループが大きくなり、回路のインダクタンスが増える。
(2)対向する電流方向の導体を沿わせて配置することで回路インダクタンスを打ち消し合うことは周知であるが、実際には接続導体が分岐するため電流方向の導体を沿わせて配置することが難しい。
【0007】
図4の構成では、接続導体Pにねじ等の固定部材1,2を介して取り付けられる平滑コンデンサCと、例えば接続導体Pに固定部材3,4を介して取り付けられるIGBT1,IGBT3までの距離を比較すると、固定部材4,すなわち、IGBT3までの方が長い距離となっており、同じ接続導体P間に接続されるIGBT1とIGBT3の距離が不均等となっている。このため、スイッチング時におけるコンデンサCとIGBT1,IGBT2間を流れる電流のループと、コンデンサCとIGBT3,IGBT4間を流れる電流のループとが不均衡となって回路インダクタンス発生の原因となっている。
【0008】
特に、高周波インバータ装置においては、直流回路のインダクタンスの縮小に加えて、IGBTの出力と負荷端までのインダクタンスを小さくして装置としての回路ループを小さくしたり、対向する電流方向の導体を沿わせて配置したりすることで回路のインダクタンスを減らすことが必須の課題となっている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、回路インダクタンスを小さくしたインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、直流回路の正,負極間に直列接続されて相毎の相アームを形成する複数の半導体パワーモジュールと、
半導体パワーモジュールに取り付けられるヒートシンクと、直流回路の正,負極用の接続導体と、平滑コンデンサ及び相毎の出力導体の各部材を主体として構成されるインバータ装置の配置において、
前記
直列接続される半導体パワーモジュールの各相アームのうち、同極性毎に半導体パワーモジュールを積み重ね、且つ積み重ねた正極側および負極側の各ヒートシンク間に間隙を設けて半導体パワーモジュールを配置し、
前記各ヒートシンク間の間隙に、絶縁部材を挟んで並行状態に前記直流回路の正,負極用の接続導体を配置し、
前記直流回路の各接続導体の一端側に、それぞれ正,負極に対応する極性の半導体パワーモジュールの端子を固着し、直流回路の各接続導体の他端は前記ヒートシンク間の間隙を通して導出し、
導出された直流回路の接続導体に前記平滑コンデンサを取り付けると共に、
前記
半導体パワーモジュールが固着された接続導体との接続端子近辺で、直流回路の正,負極の接続導体と直交して、沿った状態の前記出力導体に各半導体パワーモジュールの交流出力側の端子を接続して構成するものである。
【0011】
本発明の平滑コンデンサは、正、負極用の接続導体に互いに千鳥状に配置したことを特徴としたものである。
【0012】
また、本発明の正、負極用の接続導体は、板状の導体で形成され、前記半導体パワーモジュールの接続端子部近辺で略90度に屈曲されたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、スイッチング時における平滑コンデンサCとIGBT1,IGBT2間を流れる電流と、平滑コンデンサCとIGBT3,IGBT4の回路ループが小さくなると共に、流れる電流が均衡して回路インダクタンスを打ち消す合い、回路インダクタンスの低減が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態を示すインバータ装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明による部材配置の構成図で、単相インバータ装置の例を示したものである。正面図のようにU相アームとV相アームを重ねた状態で配置され、各相の直列接続されたIGBTはヒートシンクHが取り付けられて図面奥行き方向に配置される。各IGBTのうち、正極の接続導体Pに接続されるIGBT1,3(
図3の)と、負極の接続導体Nに接続されるIGBT2,4は、平面図で示すように間隔を有して左右に分かれて配置され、その間隔の中央部分に絶縁部材Inを挟んで接続導体P,Nが並行して延長される。延長された接続導体P,Nの片面、又は両面に複数の平滑コンデンサCを配設し、平滑コンデンサCの正、負極端子は各別に接続導体P,Nに接続される。なお、平滑コンデンサC数が多くなって接続導体P,Nの両側に設ける場合には、左右で千鳥状配置として平滑コンデンサCの取り付けに互いに干渉しないよう配設される。
【0016】
接続導体P,Nはそれぞれ板状の部材よりなり、両者間に板状の絶縁部材Inを挟んで並行した状態で各IGBTの接続端子部近辺まで伸び、この接続端子部近辺で一度、正,負極が左右略90度に曲げられて分かれて、各IGBTの正,負極の各端子が接続される。
【0017】
同様に、U相,V相の出力導体U,Vも、絶縁部材Inを挟んで正面図の手前方向から延伸されてIGBTの接続端子部近辺で左右に分かれる。IGBTの接続端子部近辺では、接続導体PとNに対して出力導体UとVが直交して沿った状態で各IGBTの交流出力側の端子と接続される。この状態で平滑コンデンサCはヒートシンクHの後ろ側に配設されており、IGBTの端子部分の螺子締め等の阻害とならないようになっている。
【0018】
上記実施例では単層インバータについて説明してきたが、三相インバータ装置でも同様に構成される。
図2は三相インバータ装置の模式図を示したもので、接続導体Pに接続されるIGBT1,3,5は図面右側に配設され、また、接続導体Nに接続されるIGBT2,4,6は図面右側に配設される。三相インバータの場合、単層インバータと比較してU,W相でV相に比較してインバータ出力から負荷端までのリアクタンス分は少し大きくなるが、従来と比較して回路インダクタンスの低減が十分に可能となるものである。
【0019】
上記のように本発明によれば、正極の接続導体Pに接続されるIGBTのグループと、負極の接続導体Nに接続されるIGBTの各グループは、それぞれ接続導体P,Nに沿って等距離に配置される。これにより、スイッチング時における平滑コンデンサCとIGBT1,IGBT2間を流れる電流と、平滑コンデンサCとIGBT3,IGBT4の回路ループが小さくなると共に、流れる電流が均衡して回路インダクタンスを打ち消す合い、回路インダクタンスの低減が可能となるものである。
【符号の説明】
【0020】
1〜6… 固定部材
IGBT1〜6… 半導体パワーモジュール
C… 平滑コンデンサ
H… ヒートシンク
In… 絶縁部材
P… 正極の接続導体
N… 負極の接続導体